(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085204
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】反転式スロープ構造
(51)【国際特許分類】
B60R 3/00 20060101AFI20220601BHJP
B61D 23/02 20060101ALI20220601BHJP
B60N 3/00 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
B60R3/00
B61D23/02
B60N3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196769
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】303002158
【氏名又は名称】三菱ふそうトラック・バス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】有藤 康
【テーマコード(参考)】
3B088
3D022
【Fターム(参考)】
3B088CA15
3D022AA02
3D022AC02
3D022AC05
3D022AD01
3D022AE09
3D022AE21
(57)【要約】
【課題】反転式スロープの利便性を向上する。
【解決手段】反転式スロープ構造1は、車両10の乗降口11の床面12に設置されたトレイ4と、互いに逆の方向を向く表面23及び裏面24を有し、使用時には表面23が上方を向くように床面12と路面Gとの間に掛け渡される一方で、不使用時には表面23及び裏面24が反転されて裏面24が上方を向くようにトレイ4に重ねて格納されるスロープ板2と、表面23及び裏面24を反転可能にスロープ板2及びトレイ4を連結する少なくとも二つのヒンジ3と、を備える。ヒンジ3は、間隔をおいて設置されて、表面23には、ヒンジ3側に傾斜する側面26aを有する突起部26が設けられる
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗降口の床面に設置されたトレイと、
互いに逆の方向を向く表面及び裏面を有し、使用時には前記表面が上方を向くように前記床面と路面との間に掛け渡される一方で、不使用時には前記表面及び前記裏面が反転されて前記裏面が上方を向くように前記トレイに重ねて格納されるスロープ板と、
前記表面及び前記裏面を反転可能に前記スロープ板及び前記トレイを連結する少なくとも二つのヒンジと、を備え、
前記ヒンジは、間隔をおいて設置されて、
前記表面には、前記ヒンジ側に傾斜する側面を有する突起部が設けられる
ことを特徴とする反転式スロープ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗降口に設けられる反転式スロープ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バスや電車などの車両に搭載される反転式スロープ構造が知られている。反転式スロープ構造は、不使用時にスロープ板が車両内に格納される一方で、使用時にスロープ板が反転して乗降口と車両の外部の路面との間に斜面を形成する。例えば、特許文献1には、スロープ板と、スロープ板の一端部に亘って延在するように一列に配置された複数の軸受及びこの複数の軸受に挿入されるトルクロッドを有するヒンジとを備えるスロープ構造(反転式スロープ構造)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示の反転式スロープ構造では、一列に配置された複数の軸受の軸筒によって段差が形成されるため、使用時に車椅子のタイヤがヒンジを乗り越えるのに力を要する。また、特許文献1に開示の反転式スロープ構造では、雨天時にスロープ板を格納する際に、スロープ板に溜まった雨水がスロープ板及びヒンジを順に流れて室内へ誘導されやすい。よって、反転式スロープの利便性を高めるうえで改善の余地がある。
【0005】
本件の反転式スロープ構造は、前述したような課題に鑑み創案されたものであり、反転式スロープの利便性を向上することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示する反転式スロープ構造は、車両の乗降口の床面に設置されたトレイと、互いに逆の方向を向く表面及び裏面を有し、使用時には前記表面が上方を向くように前記床面と路面との間に掛け渡される一方で、不使用時には前記表面及び前記裏面が反転されて前記裏面が上方を向くように前記トレイに重ねて格納されるスロープ板と、前記表面及び前記裏面を反転可能に前記スロープ板及び前記トレイを連結する少なくとも二つのヒンジと、を備える。前記ヒンジは、間隔をおいて設置されて、前記表面には、前記ヒンジ側に傾斜する側面を有する突起部が設けられることを特徴としている。
【0007】
このように、少なくとも二つのヒンジが間隔をおいて設置されることで、車両への昇降時に車いすのタイヤが少なくとも二つのヒンジの間を通ることができる。また、雨天時にスロープ板を格納する際には、少なくとも二つのヒンジの間からスロープ板上に溜まった雨水を車外に排出しやすくすることができる。加えて、スロープ板の表面に突起部が設けられることで、スロープ板上に溜まった雨水が突起部のヒンジ側に傾斜する側面に沿って流れて、少なくとも二つのヒンジの間に誘導される。これにより、スロープ板上に溜まった雨水の車室内への侵入を抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
開示の反転式スロープ構造によれば、反転式スロープの利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態としての反転式スロープ構造の使用時の状態を示す図であって、反転式スロープ構造が適用された車両の乗降口を外部から見た図である。
【
図2】実施形態としての反転式スロープ構造の不使用時の状態を示す
図1のX-X矢視断面図である。
【
図3】
図1の反転式スロープ構造のスロープ板が雨天時に格納される際に、スロープ板上に溜まった雨水の流れを説明するための反転式スロープの模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、実施形態としての反転式スロープ構造について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0011】
[1.装置構成]
本実施形態の反転式スロープ構造1(以下、単に「スロープ構造」という)は、車両10の乗降口11に適用される。本実施形態では、
図1に示すように、車両10の左側の側面に設けられた乗車口11に適用されたスロープ構造1を例示する。スロープ構造1は、乗車口11の近傍の床面12に取り付けられる。乗降口11よりも車幅方向外側は車両10の外部であり、乗降口11の車幅方向内側には車室が広がっている。
【0012】
スロープ構造1は、使用時に床面12と路面Gとの間に斜面を形成する板状の板部材21を有するスロープ板2と、不使用時にスロープ板2を格納するトレイ4と、スロープ板2及びトレイ4を連結する少なくとも二つのヒンジ3とを備える。本実施形態では、三つのヒンジ3を例示する。三つのヒンジ3は、板部材21の端縁(以下、「基端縁22」とよぶ)及びトレイ4の端縁41にそれぞれ接続して、スロープ板2とトレイ4とを連結する。本実施形態において、板部材21の基端縁22及びトレイ4の端縁41は、いずれも車両前後方向に延設される。また、
図2に示すように、本実施形態において床面12にはスロープ板4が嵌るための凹部が設けられており、トレイ4は床面12の凹部上に設置される。
【0013】
スロープ板2は、上述の板部材21を有する。板部材21は、互いに逆の方向を向く表面23及び裏面24を有する。本実施形態では、矩形状の板部材21を例示する。使用時において、スロープ板2は、
図1に示すように、板部材21の表面23が斜め上方を向くように配置されて、車両10の床面12と路面Gとの間に架け渡される。一方で、不使用時においてスロープ板2は、
図2に示すように、使用時に対して表面23及び裏面24が反転される。すなわち、板部材21の裏面24が上方を向くようにトレイ4に重ねて配置されて、車室内に格納される。本実施形態では、トレイ4が床面12上に設置されているため、不使用時においてスロープ板2は、床面12にも重なる。
【0014】
以下の説明では、板部材21の基端縁22が延在する方向を「幅方向」ともいい、基端縁22の幅方向中央に向かう方向を「幅方向内側」、その逆を「幅方向外側」ともいう。また、板部材21の表面23及び裏面24に対して直交する方向を「表裏方向」ともいい、裏面24から表面23に向かう方向を「表側」ともいう。さらに、板部材21が延在する方向であって幅方向に直交する方向を「径方向」ともいい、径方向において基端縁22に向かう方向(ヒンジ3に近接する方向)を「基端側」ともいう。本実施形態のスロープ構造1は、基端縁22の幅方向中央を通る径方向の中心線C0を基準として対称に形成される。表裏方向及び径方向は、スロープ構造1の使用状態に応じてその向きが変わる。
【0015】
本実施形態のスロープ板2は、板部材21の径方向に延在する二つの端縁のそれぞれから表側に向かって立設された側壁25を有する。側壁25は、板部材21の強度を高めるとともに使用者の乗降をサポートするために設けられる。したがって、本実施形態のスロープ板2は、表側に向かって開口するチャンネル形状に形成される。
【0016】
スロープ板2は、板部材21の表面23から表側に向かって突出した突起部26を備える。本実施形態では、中央線C0上に一列に間隔をあけて設けられた三つの突起部26を例示する。突起部26は、表面23から表側に立設された面であって、幅方向外側かつ基端側に向かって傾斜する平面上の側面26aを有する。本実施形態では、中央線C0に対して対称な二つの側面26aを有する突起部26を例示する。突起部26は、表裏方向視で略三角形状に形成され、側面26aがヒンジ3側に傾斜するように形成される。突起部26の幅方向の長さは後述する第一ヒンジ3Aの幅方向の長さよりも短く設定される。
【0017】
ヒンジ3は、上述の通り、スロープ板2とトレイ4とを連結する連結部材である。ヒンジ3は、板部材21の基端縁22及びトレイ4の端縁41のそれぞれに接続する長い筒状の軸受を有し、この軸受に軸部材が挿通されて、トレイ4に対してスロープ板2を回動可能に連結する。スロープ板2は、これにより、ヒンジ3を介して表面23及び裏面24を反転可能に車両10に取り付けられる。
【0018】
本実施形態では、上述の通り三つのヒンジ3が設けられる。三つのヒンジ3は、それぞれ幅方向に間隔をあけて設置される。本実施形態では、三つのヒンジ3のうち、一つのヒンジ3が中央線C0上に設けられる。以下、中央線C0上に設けられたヒンジ3を第一ヒンジ3Aとよび、第一ヒンジ3Aよりも幅方向外側(
図1において第一ヒンジ3Aよりも右側及び左側のそれぞれ)に設けられた二つのヒンジ3を第二ヒンジ3Bとよぶ。第一ヒンジ3Aは、幅方向の長さが車いすのタイヤの間隔よりも短く設定されて、中央線C0に対して対称に設けられる。二つの第二ヒンジ3Bは、第一ヒンジ3Aとの間に隙間Sを形成して、板部材21の基端縁22の幅方向両端部側にそれぞれ設けられる。
【0019】
トレイ4は、不使用時にスロープ板2を格納するための枠体である。
図2に示すように、トレイ4は、車幅方向で、端縁41が床面12の車幅方向外側の縁部12aと同位置となるように配置されて、床面12に固定される。トレイ4は、例えば、トレイ4に設けられた上下方向に貫通する孔に挿通されたボルトなどにより床面12に対する位置が規制されて、車両10に固定される。
【0020】
トレイ4は、端縁41を有する矩形の底面部42を備える。底面部42は、床面12に対向配置される。また、トレイ4は、ヒンジ3が接続する端縁41を除く底面部42の端縁から上方に突出する壁面部43を備え、スロープ板2を格納するための空間を画成する。不使用時において、スロープ板2は、この空間に嵌め込まれて車両10に格納される。なお、底面部42には、幅方向においてスロープ板2の側壁25が設けられる位置と同位置に車幅方向に沿って溝が切られており、スロープ板2が格納される際に、この溝にスロープ板2の側壁25が嵌る。
【0021】
[2.作用,効果]
以下、本実施形態に係るスロープ構造1の作用と効果を説明する。なお、
図3に示す太い矢印は、雨天時にスロープ板2を格納する際に、スロープ板2上に溜まった雨水の流れを示すものである。
【0022】
スロープ構造1によれば、第一ヒンジ3A及び第二ヒンジ3Bが間隔を置いて設置されている。このため、車両10への昇降時に、車いすのタイヤが、第一ヒンジ3A及び第二ヒンジ3B間の隙間Sを通ることができるので、ヒンジ3の段差を乗り越えるための力を
要さずに、使用者が車両10へ乗り降りすることができる。また、
図3に示すように、雨天時にスロープ板2を格納する際には、隙間Sが雨水の排出口としての機能するため、スロープ板2上に溜まった雨水を車外に排出しやすくすることができる。したがって、スロープ構造1の利便性を高めることができる。
【0023】
さらに、スロープ構造1によれば、板部材21の表面23に突起部26が設けられているため、使用時に使用者が突起部26に足をかけて乗降することができる。また、不使用時には、
図2に示すように、突起部26により板部材21が支えられるため、板部材21を歪みにくくすることができる。加えて、
図3に示すように、雨天時にスロープ板2を格納する際には、スロープ板2上に溜まった雨水が、突起部26の側面26aに沿って流れて、隙間Sに誘導される。したがって、スロープ板2上に溜まった雨水の車室内への侵入をより抑制することができる。よって、スロープ構造1の利便性をより高めることができる。
【0024】
[3.変形例]
上述したスロープ構造1の構成は一例である。スロープ構造1が有するヒンジ3の数は、三つに限らず、二つ以上であればよい。例えば、第一ヒンジ3A,第二ヒンジ3B及び第三ヒンジ3Cのいずれかが省略されてもよい。突起部26の数も三つに限らず、少なくとも一つ設けられていればよい。突起部26の側面26aは、平面に限らず、曲面でもよい。また、側面26aはヒンジ3側に傾斜していればよく、三つの突起部26の側面26aがそれぞれに異なる傾きや形状であってもよい。スロープ構造1は、中央線C0を基準として対称に形成されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 スロープ構造(反転式スロープ構造)
2 スロープ板
3 ヒンジ
4 トレイ
10 車両
11 乗降口
12 床面
23 表面
24 裏面
26 突起部
26a 側面
G 路面
S 隙間