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特開2022-85219レチノールを含有するO/W/O型乳化組成物
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  • 特開-レチノールを含有するO/W/O型乳化組成物 図1
  • 特開-レチノールを含有するO/W/O型乳化組成物 図2
  • 特開-レチノールを含有するO/W/O型乳化組成物 図3
  • 特開-レチノールを含有するO/W/O型乳化組成物 図4
  • 特開-レチノールを含有するO/W/O型乳化組成物 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085219
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】レチノールを含有するO/W/O型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20220601BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220601BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20220601BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 31/07 20060101ALI20220601BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
A61K8/67
A61K8/06
A61K8/34
A61K8/81
A61Q19/08
A61Q19/00
A61K31/07
A61P17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196792
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖塩 久美
【テーマコード(参考)】
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB051
4C083AB352
4C083AB442
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC171
4C083AC172
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC472
4C083AC532
4C083AC692
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD332
4C083AD621
4C083AD622
4C083AD662
4C083CC03
4C083CC05
4C083DD34
4C083EE01
4C083EE12
4C206AA01
4C206CA10
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA42
4C206MA83
4C206NA03
4C206ZA89
4C206ZC52
(57)【要約】
【課題】レチノールを含有するO/W/O型乳化組成物の提供。
【解決手段】レチノール、水、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体シリコーン油、及びバチルアルコールを含有するO/W/O型乳化組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチノール、
水、
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体
シリコーン油、及び
バチルアルコールを含有するO/W/O型乳化組成物。
【請求項2】
前記アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体のアルキル基の炭素数が8~35である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
外用組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
レチノール、水、及びアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を含有するO/W型乳化組成物を、
シリコーン油及びバチルアルコールと混合することを含む、O/W/O型乳化組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レチノールを含有するO/W/O型乳化組成物及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
レチノールは、シワ改善効果や肌荒れ改善効果などを有することが知られているビタミンの1種であり、医薬部外品などにおいて広く利用されている。
【0003】
しかし、レチノールは、熱、光、酸素等に弱く、非常に不安定な物質であるため、レチノールを安定に配合できる製剤の開発が望まれている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-100599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、レチノールを安定に含有し得る組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、レチノール、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、及びバチルアルコールを含むO/W/O型の乳化組成物が、経時的なレチノールの減少を抑制することを見出し、さらに改良を重ねた。
【0007】
本開示は、例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
レチノール、
水、
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体
シリコーン油、及び
バチルアルコールを含有するO/W/O型乳化組成物。
項2.
前記アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体のアルキル基の炭素数が8~35である、項1に記載の組成物。
項3.
外用組成物である、項1又は2に記載の組成物。
項4.
レチノール、水、及びアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を含有するO/W型乳化組成物を、
シリコーン油及びバチルアルコールと混合することを含む、O/W/O型乳化組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
レチノールを安定に含有し得るO/W/O型乳化組成物が提供される。また、レチノールを安定に含有し得るO/W/O型乳化組成物の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】レチノール含有量の経時的変化を示す。
図2】レチノール含有量の経時的変化を示す。
図3】レチノール含有量の経時的変化を示す。
図4】レチノール含有量の経時的変化を示す。
図5】レチノール含有量の経時的変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。
本開示に包含されるO/W/O型乳化組成物は、レチノール、水、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、シリコーン油、及びバチルアルコールを含有する。本明細書において、当該組成物を「本開示のO/W/O型乳化組成物」と表記することがある。
【0011】
本明細書において、「O/W/O型乳化組成物」とは、内油相(本明細書において、Oと表記することがある)、水相(本明細書において、Wと表記することがある)、外油相(本明細書において、Oと表記することがある)から構成される乳化組成物を意味する。本明細書において、O/W/O型乳化組成物を、O/W/O型乳化組成物と表記することがある。内油相(O)は水相中に分散した油相であり、外油相(O)は当該水相が分散する媒質となる油相である。換言すれば、O/W/O型乳化組成物は、O/W型乳化組成物が、油相(O)に分散した乳化組成物である。
【0012】
レチノールは、本開示のO/W/O型乳化組成物において、内油相(O)、水相(W)、外油相(O)のいずれに含有していてもよく、内油相(O)に含有していることが好ましい。換言すれば、本開示のO/W/O型乳化組成物において、内油相(O)はレチノールを含むことが好ましい。
【0013】
本開示のO/W/O型乳化組成物における、レチノールの含有量は、特に限定されず、例えば、0.001~1質量%程度とすることができる。当該範囲の上限若しくは下限は、例えば、0.01、0.03、0.05、0.1、0.15、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、又は0.9質量%程度であってもよい。より具体的には、例えば、0.01~0.2質量%程度であってもよい。
【0014】
本開示のO/W/O型乳化組成物において、水相(W)は水を含むことが好ましい。
【0015】
本開示のO/W/O型乳化組成物における、水の含有量は、特に限定されず、適宜設定することができる。例えば、5~60質量%程度とすることができ、10~50質量%程度であってもよい。
【0016】
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体としては、アルキル基の炭素数が8~35であるアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体等が例示される。より好ましくは、アルキル基の炭素数が10~30のアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体((アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーなど)等が例示される。
【0017】
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体は、本開示のO/W/O型乳化組成物において、内油相(O)、水相(W)、外油相(O)のいずれに含有していてもよく、水相(W)に含有していることが好ましい。
【0018】
本開示のO/W/O型乳化組成物における、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の含有量は、特に限定されず、例えば、0.001~0.3質量%程度とすることができる。当該範囲の上限若しくは下限は、例えば0.005、0.01、0.05、0.1、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、又は0.25質量%であってもよい。より具体的には、例えば、0.05~0.17質量%であってもよい。
【0019】
シリコーン油としては、25℃で液状又はゲル状のシリコーン油が例示される。例えば、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、カルボキシ変性シリコーン油、ポリエーテル変性シリコーン油、アミノ変性シリコーン油、エポキシ変性シリコーン油、フッ素変性シリコーン油、アルコール変性シリコーン油、アルキル変性シリコーン油、アンモニウム塩変性シリコーン油等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
より具体的には、
メチルポリシロキサン;
デカメチルシクロペンタシロキサン、架橋型シリコーン末、メチルポリシロキサン混合物;
ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)ブチレン・メチルポリシロキサン共重合体;
ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、デカメチルシクロペンタシロキサン混合物;
等を用いることができる。
【0020】
シリコーン油は、本開示のO/W/O型乳化組成物において、内油相(O)、水相(W)、外油相(O)のいずれに含有していてもよく、外油相(O)に含有していることが好ましい。
【0021】
本開示のO/W/O型乳化組成物における、シリコーン油の含有量は、特に限定されず、適宜設定することができる。例えば、30~75質量%程度とすることができ、35~70質量%程度であってもよい。
【0022】
バチルアルコールは、本開示のO/W/O型乳化組成物において、内油相(O)、水相(W)、外油相(O)のいずれに含有していてもよく、外油相(O)に含有していることが好ましい。
【0023】
本開示のO/W/O型乳化組成物における、バチルアルコールの含有量は、特に限定されず、例えば、0.5~5質量%程度とすることができる。当該範囲の上限若しくは下限は、例えば0.7、1、1.5、2、2.5、又は3質量%であってもよい。より具体的には、例えば、0.7~2.0質量%であってもよい。
【0024】
本開示のO/W/O型乳化組成物は、上述した成分の他、他の成分を含むことができる。他の成分としては、例えば、エタノール、グリセリン等の水性溶媒;ツバキ油、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリベヘン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル等のエステル油等の油剤;エデト酸二ナトリウム等のキレート剤;フェノキシエタノール等の防腐剤;α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δトコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)等の抗酸化剤;タルク等の体質顔料;コラーゲン等の保湿剤;エモリエント剤;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤;乳化剤;殺菌剤;香料;色素;pH調整剤;紫外線吸収剤;紫外線散乱剤;生理活性物質;薬効成分等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらは、本開示のO/W/O型乳化組成物において、内油相(O)、水相(W)、外油相(O)のいずれに含有していてもよい。
例えば、内油相(O)は、ツバキ油、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリベヘン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル等のエステル油等の油剤;α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δトコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)等の抗酸化剤;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤などを含んでいてもよい。
【0025】
好ましい1実施形態として、例えば、レチノールは内油相(O)、水及びアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体は水相(W)、シリコーン油及びバチルアルコールは外油相(O)に含まれるO/W/O型乳化組成物が挙げられる。
本開示のO/W/O型乳化組成物において、レチノールの含有量0.01質量部に対する水相(W)の含有量は、特に限定されず、適宜設定することができる。例えば、1~12質量部程度とすることができ、2~10質量部程度であってもよい。
本開示のO/W/O型乳化組成物において、レチノールの含有量0.01質量部に対する外油相(O)の含有量は、特に限定されず、適宜設定することができる。例えば、10~18質量部程度とすることができ、12~16質量部程度であってもよい。
【0026】
本開示のO/W/O型乳化組成物は、外用組成物として好適に用いることができる。より好ましくは、本開示のO/W/O型乳化組成物は、皮膚外用組成物として好適に用いることができる。
【0027】
本開示は、レチノール、水、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、シリコーン、及びバチルアルコール油を含有するO/W/O型乳化組成物の製造方法をも包含する。
【0028】
/W/O型乳化組成物は、レチノール、水、及びアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を含有するO/W型乳化組成物を、シリコーン油及びバチルアルコール(O)と混合することによって製造することができる。
【0029】
/W型乳化組成物の製造方法は、特に限定されず、当該技術分野において公知、慣用の方法および反応条件を採用することができる。例えば、内油相(O)又は水相(W)を構成する成分(例えば、レチノール、水、及びアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体等)を、必要に応じて、例えば、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、高速撹拌機、超音波乳化機などで撹拌することによって、O/W型乳化組成物を調製することができる。得られたO/W型乳化組成物と必要に応じて50~90℃程度に加温した外油相(O)を構成する成分(例えば、シリコーン油及びバチルアルコール)とを、例えば、室温で撹拌することによって、O/W/O型乳化組成物を調製することができる。
【0030】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0031】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0032】
本開示の内容を以下の実施例、参考例を用いて具体的に説明する。しかし、本開示はこれらに何ら限定されるものではない。下記において、特に言及する場合を除いて、実験は大気圧及び常温条件下で行っている。また特に言及する場合を除いて、「%」は「質量%」を意味する。また、各表に記載される各成分の配合量値も特に断らない限り「質量%」を示す。
【0033】
下記の表1に示す処方に従って、乳化組成物を調製した。より詳細には、表1のA~Cに示す成分を4000rpm、10分間混合後、あらかじめ3000rpmで5分間攪拌し乳化したD、E、Fに示す成分を3000rpmで攪拌しながら徐々に添加し、さらに3000rpmで10分攪拌し、組成物を得た。なお、実施例1、2において、Fに示す成分は、D、Eに示す成分を混合した後に、添加し混合した。
D、E、Fに示す成分をあらかじめ乳化することにより、レチノールがO相、他の成分がW相に含まれるO/W型の乳化組成物を調製し、当該O/W型の乳化組成物を、O相を構成するA~Cに示す成分と混合することで、O/W/O型の乳化組成物を調製した。
【0034】
【表1】
【0035】
下記の表2に示す処方に従って、乳化組成物を調製した。より詳細には、表2のA~Eに示す成分を混合後、あらかじめ均一に溶解したFに示す成分を混合し、3000rpmで3分攪拌し、組成物を得た。
参考例1の組成物は、A~Eに示す成分がO相、Fに示す成分がW相を構成するW/O型の乳化組成物である。
【0036】
【表2】
【0037】
下記の表3に示す処方に従って、乳化組成物を調製した。より詳細には、表3のA~Eに示す成分を混合後、あらかじめ均一に溶解したF、Gに示す成分を混合し、2500rpmで5分攪拌し、組成物を得た。
参考例2の組成物は、A~Eに示す成分がO相、F、Gに示す成分がW相を構成するW/O型の乳化組成物である。
【0038】
【表3】
【0039】
実施例1~4、参考例1の組成物を、-5、25、40℃で静置し、レチノールの含有量を以下の条件に従って測定した。配合量を100とした時の測定値の割合(%)を図1(実施例1)、図2(実施例2)、図3(実施例3)、図4(実施例4)、図5(参考例1)に示す。
レチノール定量条件
検出器:紫外吸光光度計
(測定波長:325nm)
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんする。
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相:メタノール/水混液(9:1)
【0040】
図1~5に示す通り、実施例1~4の組成物は、参考例1の組成物と比較して、レチノールの経時的な減少を抑制できることが分かった。
なお、参考例2の組成物についても同様の試験を行ったところ、参考例1の組成物と同等、又はそれ以上にレチノールが経時的に減少することが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5