(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085247
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20220601BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20220601BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220601BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20220601BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20220601BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20220601BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20220601BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20220601BHJP
【FI】
H02J3/38 170
H02J7/35 K
H02J7/00 303E
H02J3/32
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/00 A
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196837
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 翔太
(72)【発明者】
【氏名】安藤 泰明
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5G066AA04
5G066AD04
5G066HA15
5G066HB07
5G066HB09
5G066JA02
5G066JA05
5G066JB03
5G503AA05
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA10
5G503DA04
5G503DA05
5G503GB03
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB02
5H127AB23
5H127AB29
5H127AC05
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127DB63
5H127DB67
5H127DC42
5H127DC43
5H127DC46
5H127GG03
5H127GG09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】燃料電池装置の出力の急変を抑制しつつ、出力をMPPT制御に良好に追従が可能な電力システムを提供する。
【解決手段】電力システムは、燃料電池装置にコンバータ装置を介して接続される直流リンク部の直流電力をMPPT制御により給電する給電制御装置と、電力消費機器と、直流リンク部と電力消費機器との接続および接続解除が可能なスイッチと、スイッチを制御する制御装置と、を備える。制御装置は、燃料電池装置の発電電力に基づいて電流電圧特性を設定S200し、電流電圧特性と直流リンク部から給電制御装置へ出力される出力電流とに基づいて直流リンク部の目標電圧を設定S230、S240し、直流リンク部の電圧が目標電圧となるようスイッチを制御するMPPT協調制御S250を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を発電する燃料電池装置と、
前記燃料電池装置からの直流電力を変換して直流リンク部に出力するコンバータ装置と、
前記直流リンク部に接続されたコンデンサと、
電力を消費する電力消費機器と、
前記直流リンク部と前記電力消費機器との接続および接続解除が可能なスイッチと、
前記直流リンク部に接続され、前記直流リンク部からの直流電力をMPPT制御により給電する給電制御装置と、
前記燃料電池装置の発電電力と前記直流リンク部の電圧とに基づいて前記直流リンク部の電流電圧特性を設定し、前記電流電圧特性と前記直流リンク部から前記給電制御装置へ出力される出力電流とに基づいて前記直流リンク部の目標電圧を設定し、前記直流リンク部の電圧が前記目標電圧となるよう前記スイッチを制御するMPPT協調制御を実行する制御装置と、
を備える電力システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力システムであって、
前記制御装置は、前記燃料電池装置の発電電力よりも所定量または所定割合低い電力が最大電力となるよう前記電流電圧特性を設定する、
電力システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電力システムであって、
前記制御装置は、前記燃料電池装置の発電電力に基づいて最大電力を設定すると共に前記燃料電池装置の出力電圧に基づいて開放端電圧と最大電圧とを設定し、前記最大電力をP
peakとし、前記開放端電圧をV
ocvとし、前記最大電圧をV
peakとし、前記直流リンク部の電圧をV
linkとし、前記出力電流をI
batteryとしたとき、次式(1)により計算されるV
link_
tagを前記目標電圧に設定する、
電力システム。
【数1】
【請求項4】
請求項3に記載の電力システムであって、
前記制御装置は、前記最大電圧よりも低い電圧範囲において、値0よりも大きく前記燃料電池装置の発電電力よりも小さい定数をP
dとしたとき、次式(2)により計算されるV
link_
tagを前記目標電圧に設定する、
電力システム。
【数2】
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項に記載の電力システムであって、
前記直流リンク部の直流電力を交流電力に変換して系統電源に連系するインバータ装置と、
充放電可能な蓄電池と、
前記直流リンク部と前記蓄電池とに接続され、MPPT制御により前記蓄電池へ給電する蓄電池用コンバータ装置と、
を備え、
前記給電制御装置は、前記蓄電池用コンバータ装置を含み、
前記制御装置は、前記系統電源が停電して前記燃料電池装置を自立運転する場合において、前記MPPT協調制御を実行する、
電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電力システムとしては、太陽電池装置と、太陽電池装置の発電電力をMPPT(最大電力点追従)制御によって受電するMPPT制御装置と外部からの直流電力をMPPT制御によって受電する外部受電用MPPT制御装置とを含む電力制御装置と、発電機や燃料電池装置などの発電装置と、発電装置の発電電力を外部受電用MPPT制御装置へ送電する送電装置と、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。送電装置は、電圧電流特性データを記憶する記憶装置と、電圧電流特性データが示す曲線に沿って直流電力に応じた電圧と電流とに変換する電圧電流変換部と、を備え、発電装置で発電された直流電力の電圧電流特性を、太陽電池装置によって発電される直流電力の電圧電流特性と同様の特徴をもった電圧電流特性に変換して外部受電用MPPT制御装置へ送電する。これにより、発電装置で発電された電力をMPPT制御によって受電することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池装置は、出力を急増させると劣化する特性を有しており、これを防止するため、一般に、パワーコンディショナ(DC/DCコンバータ)により出力変化率に制限(例えばレートリミットなど)がかけられている。パワーコンディショナの出力をMPPT制御する際、MPPT制御によって取り出される電力の増加速度はレートリミットよりも速いため、出力をMPPT制御に追従できなくなる場合が生じる。
【0005】
本発明の電力システムは、燃料電池装置の出力の急変を抑制しつつ、出力をMPPT制御に良好に追従させることができる電力システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電力システムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の電力システムは、
直流電力を発電する燃料電池装置と、
前記燃料電池装置からの直流電力を変換して直流リンク部に出力するコンバータ装置と、
前記直流リンク部に接続されたコンデンサと、
電力を消費する電力消費機器と、
前記直流リンク部と前記電力消費機器との接続および接続解除が可能なスイッチと、
前記直流リンク部に接続され、前記直流リンク部からの直流電力をMPPT制御により給電する給電制御装置と、
前記燃料電池装置の発電電力と前記直流リンク部の電圧とに基づいて前記直流リンク部の電流電圧特性を設定し、前記電流電圧特性と前記直流リンク部から前記給電制御装置へ出力される出力電流とに基づいて前記直流リンク部の目標電圧を設定し、前記直流リンク部の電圧が前記目標電圧となるよう前記スイッチを制御するMPPT協調制御を実行する制御装置と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の電力システムでは、燃料電池装置の発電電力に基づいて設定した電流電圧特性に従って電力消費機器の電力消費によって直流リンク部の電圧を制御することにより、燃料電池装置の発電電力の範囲内で、直流リンク部から任意の最大電圧で任意の最大電力を出力することができる。この結果、燃料電池装置の出力の急変を抑制しつつ、出力をMPPT制御に良好に追従させることができる電力システムとすることができる。
【0009】
こうした本発明の電力システムにおいて、前記制御装置は、前記燃料電池装置の発電電力よりも所定量または所定割合低い電力が最大電力となるよう前記電流電圧特性を設定してもよい。こうすれば、発電電力の低下を伴う燃料電池装置の経年劣化に適切に対応することができる。
【0010】
また、本発明の電力システムにおいて、前記制御装置は、前記燃料電池装置の発電電力に基づいて最大電力を設定すると共に前記燃料電池装置の出力電圧に基づいて開放端電圧と最大電圧とを設定し、前記最大電力をPpeakとし、前記開放端電圧をVocvとし、前記最大電圧をVpeakとし、前記直流リンク部の電圧をVlinkとし、前記出力電流をIbatteryとしたとき、次式(1)により計算されるVlink_tagを前記目標電圧に設定してもよい。計算式を用いて目標電圧を算出することで、最大電力ごと、最大電圧ごとに多数のマップを記憶する必要がなくなり、メモリの容量を削減することが可能となる。
【0011】
【0012】
この態様の本発明の電力システムにおいて、前記制御装置は、前記最大電圧よりも低い電圧範囲において、値0よりも大きく前記燃料電池装置の発電電力よりも小さい定数をPdとしたとき、次式(2)により計算されるVlink_tagを前記目標電圧に設定してもよい。MPPT制御によって最大電力(最適動作点)をサーチする際、最大電圧未満の電圧範囲において、電流電圧特性と出力電流とに基づいて目標電圧を設定しようとすると、上述した式(1)の電流電圧特性では、出力電流の変化に対する電圧の変化が大きく、目標電圧が大きく脈動するおそれがある。このため、最大電圧未満の電圧範囲において、式(2)により算出されるVlink_tagを目標電圧に設定することで、目標電圧の脈動を抑制することができる。
【0013】
【0014】
さらに、本発明の電力システムにおいて、前記直流リンク部の直流電力を交流電力に変換して系統電源に連系するインバータ装置と、充放電可能な蓄電池と、前記直流リンク部と前記蓄電池とに接続され、MPPT制御により前記蓄電池へ給電する蓄電池用コンバータ装置と、を備え、前記給電制御装置は、前記蓄電池用コンバータ装置を含み、前記制御装置は、前記系統電源が停電して前記燃料電池装置を自立運転する場合において、前記MPPT協調制御を実行するものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の電力システムの概略構成図である。
【
図2】系統電源停止時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図3】MPPT協調制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】最大電圧V
peak以上の電圧範囲で直流リンク電圧目標値V
link_
tagを設定する場合に用いられる直流リンク部のP-V特性およびI-V特性の一例を示す説明図である。
【
図5】最大電圧V
peak未満の電圧範囲で直流リンク電圧目標値V
link_
tagを設定する場合に用いられる直流リンク部のP-V特性およびI-V特性の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本実施形態の電力システム10の概略構成図である。本実施形態の電力システム10は、住宅等に設置され、系統電源1と連系して家庭内負荷(外部負荷)に電力を供給するシステムとして構成されるものであり、燃料電池装置20と、燃料電池パワーコンディショナ30と、制御装置40と、蓄電池50と、蓄電池パワーコンディショナ51と、を備える。
【0017】
燃料電池装置20は、図示しないが、改質水を気化させて水蒸気を生成する気化器や、原燃料ガス(例えば、天然ガスやLPガス)を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質器、燃料ガスと空気との電気化学反応により発電する燃料電池スタック(固体酸化物形燃料電池スタック)などを含む燃料電池モジュールと、燃料電池モジュールの排熱を熱交換器によって温水にして貯湯タンクへ回収する排熱回収装置と、を有する。また、燃料電池装置20は、これを運転するための補機として、改質器へ原燃料ガスを供給するガスポンプや、水タンクから改質水を汲み上げて気化器へ供給する水ポンプ、燃料電池スタックへ空気を供給するエアポンプ、上述の熱交換器と貯湯タンクとを接続する循環配管内で湯水を循環させる循環ポンプ、循環路に設置されたヒータ41、循環路におけるヒータ41の下流に設置されたラジエータおよびラジエータファンなどを有する。これらの補機類は、制御装置40による制御を受けて動作する。また、燃料電池スタックの出力端子には、燃料電池スタックから出力される電流(燃料電池電流Ifc)を検出する電流センサ36aが取り付けられ、燃料電池スタックの出力端子間には、燃料電池スタックの端子間電圧(燃料電池電圧Vfc)を検出する電圧センサ36bが取り付けられている。
【0018】
燃料電池パワーコンディショナ30は、DC/DCコンバータ31と、インバータ32と、リレー33と、直流リンク部34とを備える。
【0019】
DC/DCコンバータ31は、図示しないスイッチング素子やリアクトル等を有し、当該スイッチング素子をスイッチング制御することにより、燃料電池装置20からの直流電力を所定電圧(例えばDC250V)の直流電力に変換(昇圧)して直流リンク部34へ出力する。燃料電池装置20は出力を急増させると劣化が進行し易い特性を有していることから、本実施形態において、DC/DCコンバータ31は、所定の出力変化率を超えて燃料電池装置20の出力が変化しないようにレートリミット処理(緩変化処理)によって当該出力変化率の範囲内で電力の変換を行なう。
【0020】
インバータ32は、図示しないスイッチング素子やダイオード等を有し、当該スイッチング素子をスイッチング制御することにより、直流リンク部34の直流電力を交流電力に変換して外部負荷へ供給する。
【0021】
リレー33は、常開式の開閉器であり、系統電源1の対応する相に接続された各電線の連系点(インバータ32の出力側)にそれぞれ設置されている。
【0022】
直流リンク部34には、平滑用のコンデンサ35が接続されており、当該コンデンサ35の端子間には、コンデンサ35の端子間電圧(直流リンク電圧Vlink)を検出する電圧センサ37が取り付けられている。また、直流リンク部34には、上述したヒータ41がヒータスイッチ42(FET)を介して接続されると共に、燃料電池装置20のその他の補機や制御装置40が図示しないDC/DCコンバータを介して接続されており、これらの補機や制御装置40は、直流リンク部34からの直流電力の供給を受けて動作するようになっている。
【0023】
蓄電池50は、例えばリチウムイオン二次電池として構成され、蓄電池パワーコンディショナ51を介して直流リンク部34に接続されている。蓄電池パワーコンディショナ51は、DC/DCコンバータを含み、当該DC/DCコンバータをスイッチング制御することにより、直流リンク部34からの直流電力により蓄電池50を充電したり、蓄電池50からの直流電力を直流リンク部34へ放電したりする。直流リンク部34と蓄電池50とを接続する電力ラインには、蓄電池50を流れる電流(蓄電池電流Ibattery)を検出する電流センサ38が取り付けられている。
【0024】
蓄電池パワーコンディショナ51の制御は、制御装置40とは別の制御装置(図示せず)によるMPPT(最大電力点追従)制御によって行なわれる。MPPT制御は、電力が最大となる出力電圧で電流を取り出すための制御であり、例えば、電力が最大電力(最適動作点)に追従するように出力電圧を所定量ずつ変化させる山登り法を用いることができる。
【0025】
制御装置40は、図示しないが、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、各種プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、入力ポートおよび出力ポートを備える。制御装置40には、電流センサ36aからの燃料電池電流Ifcや電圧センサ36bからの燃料電池電圧Vfc、電圧センサ37からの直流リンク電圧Vlink、電流センサ38からの蓄電池電流Ibatteryなどが入力ポートを介して入力されている。一方、制御装置40からは、DC/DCコンバータ31のスイッチング素子への制御信号や、インバータ32のスイッチング素子への制御信号、リレー33への駆動信号、ヒータスイッチ42への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0026】
次に、こうして構成された電力システム10の動作について説明する。特に、系統電源1が停止(停電)した際の動作について説明する。
図2は、制御装置40のCPUにより実行される系統電源停止時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、図示しない電圧センサにより系統電圧の低下、すなわち系統電源1の停止(停電)が検出されたときに実行される。
【0027】
系統電源停止時制御ルーチンが実行されると、制御装置40のCPUは、まず、燃料電池装置20の自立発電を開始する(ステップS100)。自立発電は、外部負荷が要求する要求出力の全てを電力システム10から出力する電力で賄う運転状態であり、本実施形態では、燃料電池装置20が定格最大出力(例えば700W)で発電するよう燃料電池装置20が運転制御される。自立発電状態においては、要求出力が燃料電池装置20の発電電力以下である場合、燃料電池装置20の発電電力により要求出力に見合う電力が外部負荷へ供給されると共に余剰電力がヒータ41で消費されたり蓄電池50に充電されるよう燃料電池パワーコンディショナ30と蓄電池パワーコンディショナ50とが制御される。また、要求出力が燃料電池装置20の発電電力を超えると、燃料電池装置20からの発電電力に加えて蓄電池50からの放電電力により要求出力に見合う電力が外部負荷へ供給されるよう燃料電池パワーコンディショナ30と蓄電池パワーコンディショナ50とが制御される。
【0028】
自立発電を開始すると、ヒータ41の電力消費により直流リンク電圧Vlinkが所定電圧Vset(例えば、230Vや240V、250V)となるようヒータスイッチ42を駆動制御する(ステップS110)。そして、燃料電池装置20の発電電力Pfcを入力し(ステップS120)、入力した発電電力Pfcが閾値Pref以上であるか否かを判定する(ステップS130)。ここで、発電電力Pfcは、電流センサ36aにより検出される燃料電池電流Ifcと電圧センサ36bにより検出される燃料電池電圧Vfcとに基づいて演算されたものを入力することができる。閾値Prefは、燃料電池装置20の出力が安定したか否かを判定するための閾値であり、本実施形態では、定格最大出力近傍の値に定められる。発電電力Pfcが閾値Pref以上でないと判定すると、ステップS110に戻る。
【0029】
一方、発電電力P
fcが閾値Pref以上であると判定すると、MPPT協調制御を開始する(ステップS140)。MPPT協調制御は、直流リンク部34の出力を蓄電池パワーコンディショナ51で行なわれるMPPT制御に追従させるための制御であり、
図3のMPPT協調制御処理により実行される。以下、MPPT協調制御処理について説明する。
【0030】
MPPT協調制御では、まず、発電電力Pfcや電圧センサ36bからの燃料電池電圧Vfc、電圧センサ37からの直流リンク電圧Vlink、電流センサ38からの蓄電池電流Ibatteryを入力する(ステップS200)。続いて、入力した発電電力Pfcから所定電力ΔPを減じた値(Pfc-ΔP)を最大電力Ppeakに設定し、入力した燃料電池電圧Vfcに係数kを乗じた値(k・Vfc)を開放端電圧Vocvに設定し、設定した開放端電圧Vocvから所定電圧ΔVを減じた値(Vocv-ΔV)を最大電圧Vpeakに設定する(ステップS210)。ここで、最大電力Ppeakと開放端電圧Vocvと最大電圧Vpeakは、直流リンク部34の電力電圧特性(P-V特性)を規定するパラメータである。最大電力Ppeakは、燃料電池装置20の発電電力Pfcの範囲内で設定され、所定電力ΔPは、MPPT協調制御における最大電力Ppeakの調整代であり、例えば、50Wや60Wなどのように定められる。なお、最大電力Ppeakは、発電電力Pfcに値0よりも大きく値1よりも小さい係数を乗じたものが設定されもよい。係数kは、DC/DCコンバータ31の変圧率である。所定電圧ΔVは、MPPT制御によって直流リンク部34に電圧低下が生じても当該直流リンク部34に接続される補機類や制御装置40が電源喪失しない範囲で、例えば、20Vや30Vなどのように定められる。
【0031】
次に、入力した蓄電池電流I
batteryが所定電流Iref未満であるか否かを判定する(ステップS220)。この処理は、最大電圧V
peak以上の電圧範囲で直流リンク電圧目標値V
link_
tagが設定されるか否かを判定するための処理である。蓄電池電流I
batteryが所定電流Iref未満であると判定すると、最大電力P
peakと最大電圧V
peakと開放端電圧V
ocvと直流リンク電圧V
linkと蓄電池電流I
batteryとに基づいて次式(1)により直流リンク電圧目標値V
link_
tagを算出する(ステップS230)。そして、算出した直流リンク電圧目標値V
link_
tagとステップS200で入力した直流リンク電圧V
linkとの偏差に基づくフィードバック制御(例えば、比例積分制御)によりヒータスイッチ42のオンオフデューティ比を設定し、設定したオンオフデューティ比に基づいてヒータスイッチ42をスイッチング制御して(ステップS250)、MPPT協調制御処理を終了する。
図4は、最大電圧V
peak以上の電圧範囲で直流リンク電圧目標値V
link_
tagを設定する場合に用いられる直流リンク部のP-V特性およびI-V特性の一例を示す説明図である。式(1)は、
図4中、実線に示す直流リンク部34の電力電圧特性(P-V特性)および電流電圧特性(I-V特性)に対応した式(第1計算式)であり、第1計算式を用いて直流リンク電圧目標値V
link_
tagを算出することで、当該P-V特性およびI-V特性に沿って直流リンク部34から電力を取り出すことができる。P-V特性およびI-V特性を燃料電池装置20の発電電力P
fc等に基づいて決定することにより、これらの特性に沿って直流リンク電圧V
linkを制御することで、発電電力P
fcの範囲内で、直流リンク部34から任意の最大電圧V
peakで任意の最大電力P
peakを取り出すことができる。これにより、MPPT制御を行なう蓄電池パワーコンディショナ51に対して供給する電力を能動的に制御することが可能となる。また、燃料電池装置20の発電電力P
fcのうち最大電力P
peakに対して余剰な電力は、ヒータ41によって消費されるため、燃料電池装置20の出力が急増することがなく、出力の急増による燃料電池装置20の劣化の進行を抑制することができる。さらに、任意の最大電圧V
peakを設定することができるため、最大電圧V
peakとして比較的高い電圧を設定しておくことで、MPPT制御による最大電力(最適動作点)のサーチの過程において、直流リンク電圧Vlinが大きく低下するのを抑制することができ、直流リンク部34に接続される補機や制御装置40の電源喪失のリスクを回避することが可能となる。
【0032】
【0033】
一方、蓄電池電流I
batteryが所定電流Iref未満でなく所定電流Iref以上であると判定すると、最大電力P
peakと最大電圧V
peakと開放端電圧V
ocvと直流リンク電圧V
linkと蓄電池電流I
batteryと定数P
dとに基づいて次式(2)により直流リンク電圧目標値V
link_
tagを算出する(ステップS240)。そして、算出した直流リンク電圧目標値V
link_
tagとステップS200で入力した直流リンク電圧V
linkとの偏差に基づくフィードバック制御によりヒータスイッチ42をスイッチング制御して(ステップS250)、MPPT協調制御処理を終了する。
図5は、最大電圧V
peak未満の電圧範囲で直流リンク電圧目標値V
link_
tagを設定する場合に用いられる直流リンク部のP-V特性およびI-V特性の一例を示す説明図である。なお、図中、実線は、最大電圧V
peak未満の電圧範囲で直流リンク電圧目標値V
link_
tagを設定する場合に用いられる特性を示し、一点鎖線は、上述した最大電圧V
peak以上の電圧範囲で直流リンク電圧目標値V
link_
tagを設定する場合に用いられる特性を示す。式(2)は、
図5中、実線に示す電力電圧特性(P-V特性)および電流電圧特性(I-V特性)に対応した式(第2計算式)であり、第2計算式を用いて直流リンク電圧目標値V
link_
tagを算出することで、当該P-V特性およびI-V特性に沿って直流リンク部34から電力を取り出すことができる。式(2)中、「P
d」は、P-V特性において、V
link_
tagが値0のときの出力電力の値を示し、値0よりも大きく定格最大出力よりも小さな値(例えば、100や200)に定められる。これにより、最大電圧V
peak未満の電圧範囲において、I-V特性に傾きをもたせることができる。上述した第1計算式では、最大電圧V
peak未満の電圧範囲でI-V特性の傾きがフラットになっているため、蓄電池電流I
batteryの僅かな変化に対して直流リンク電圧目標値V
link_
tagが大きく脈動する。これに対して、第2計算式では、第1計算式に比して、I-V特性に傾きをもたせることができるため、蓄電池電流I
batteryの変化に対して直流リンク電圧目標値V
link_
tagが大きく脈動するのを抑制することができ、直流リンク電圧V
linkを適正範囲に保つことができる。例えば、直流リンク電圧V
linkが大きく低下することによる、補機類や制御装置40の電源喪失のリスクを回避することができる。
【0034】
【0035】
系統電源停止時制御ルーチンに戻って、MPPT協調制御を開始すると、系統電圧に基づいて系統電源1が復帰するまでMPPT協調制御を継続させ(ステップS150)、系統電源1が復帰したと判定すると、MPPT協調制御を停止すると共に(ステップS160)、自立発電を停止して(ステップS170)、本ルーチンを終了する。
【0036】
以上説明した本実施形態の電力システム10では、燃料電池装置20の発電電力Pfcに基づいて電流電圧特性(計算式)を設定し、電流電圧特性と直流リンク電圧Vlinkと蓄電池電流Ibatteryとに基づいて直流リンク電圧目標値Vlink_tagを設定し、直流リンク電圧Vlinkが直流リンク電圧目標値Vlink_tagに一致するようヒータスイッチ42を制御するMPPT協調制御を実行する。燃料電池装置20の発電電力Pfcに基づいて設定した電流電圧特性に従って電力消費機器としてのヒータ41の電力消費によって直流リンク電圧Vlinkを制御することにより、発電電力Pfcの範囲内で、直流リンク部34から任意の最大電圧Vpeakで任意の最大電力Ppeakを出力することができる。この結果、燃料電池装置20の出力の急変を抑制しつつ、出力をMPPT制御に良好に追従させることができる電力システム10とすることができる。
【0037】
また、本実施形態の電力システム10では、燃料電池装置20の発電電力Pfcよりも所定電力ΔPだけ低い電力を最大電力Ppeakに設定した電流電圧特性を用いてMPPT協調制御を実行する。これにより、簡易な処理によって燃料電池装置20の経年劣化に適切に対応することができる。
【0038】
さらに、本実施形態の電力システム10では、燃料電池装置20の発電電力Pfcに基づく最大電力Ppeakを設定し、最大電力Ppeakと直流リンク電圧Vlinkと蓄電池電流Ibatteryとに基づいて計算式(第1計算式,第2計算式)により直流リンク電圧目標値Vlink_tagを算出する。これにより、最大電力Ppeak毎および最大電圧Vpeak毎に多数のI-V特性マップを記憶しておき、発電電力Pfcに基づいて選択したI-V特性マップを用いて直流リンク電圧目標値Vlink_tagを設定するものに比して、多数のマップを記憶する必要がなく、メモリの記憶容量を削減することができる。
【0039】
また、本実施形態の電力システム10では、蓄電池電流Ibatteryが所定電流Iref以上である場合には、最大電圧Vpeak未満の電圧範囲において、第1計算式に比してI-V特性に傾きをもたせた第2計算式を用いて直流リンク電圧目標値Vlink_tagを算出する。これにより、MPPT制御によって最適動作点をサーチする過程において、直流リンク電圧目標値Vlink_tagが大きく脈動するのを抑制することができる。
【0040】
上述した実施形態では、蓄電池電流Ibatteryが所定電流Iref未満である場合には第1計算式を用いて直流リンク電圧目標値Vlink_tagを算出し、蓄電池電流Ibatteryが所定電流Iref以上である場合には第2計算式を用いて直流リンク電圧目標値Vlink_tagを算出するものとした。しかし、蓄電池電流Ibatteryに拘らず第1計算式を用いて直流リンク電圧目標値Vlink_tagを算出してもよい。
【0041】
上述した実施形態では、計算式を用いて直流リンク電圧目標値V
link_
tagを設定するものとしたが、上述した
図4や
図5に示す特性をマップ化したものを用いて直流リンク電圧目標値V
link_
tagを設定してもよい。この場合、燃料電池装置20の発電電力P
fcや燃料電池電圧V
fcに応じて異なるマップを用いて直流リンク電圧目標値V
link_
tagを設定すればよい。
【0042】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、燃料電池装置20が「燃料電池装置」に相当し、直流リンク部34が「直流リンク部」に相当し、DC/DCコンバータ31が「コンバータ装置」に相当し、コンデンサ35が「コンデンサ」に相当し、ヒータ41が「電力消費機器」に相当し、ヒータスイッチ42が「スイッチ」に相当し、蓄電池パワーコンディショナ51が「給電制御装置」に相当し、制御装置40が「制御装置」に相当する。また、インバータ32が「インバータ装置」に相当し、蓄電池50が「蓄電池」に相当し、蓄電池パワーコンディショナ51が「蓄電池コンバータ装置」に相当する。
【0043】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0044】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、電力システムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 系統電源、10 電力システム、20 燃料電池装置、30 燃料電池パワーコンディショナ、31 DC/DCコンバータ、32 インバータ、33 リレー、34 直流リンク部、35 コンデンサ、36a 電流センサ、36b 電圧センサ、37 電流センサ、38 電流センサ、40 制御装置、41 ヒータ、42 ヒータスイッチ、50 蓄電池パワーコンディショナ、50 蓄電池、51 蓄電池パワーコンディショナ。