(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085305
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】燃料電池用渦流式ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 23/00 20060101AFI20220601BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20220601BHJP
H01M 8/04089 20160101ALI20220601BHJP
【FI】
F04D23/00 D
F04D23/00 G
H01M8/04 N
H01M8/04089
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196921
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼荷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 将也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健児
(72)【発明者】
【氏名】福山 了介
(72)【発明者】
【氏名】正木 大輔
【テーマコード(参考)】
3H130
5H127
【Fターム(参考)】
3H130AA12
3H130AB07
3H130AB13
3H130AB22
3H130AB55
3H130AC13
3H130BA68A
3H130BA68C
3H130BA73A
3H130BA73C
3H130CB01
3H130CB05
3H130CB09
3H130DA02X
3H130DD01Z
3H130DJ01X
3H130EB01C
3H130EC08Z
3H130EC17Z
5H127AB04
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA57
5H127BA58
5H127BB02
5H127EE18
(57)【要約】
【課題】燃料電池が低出力のときには、燃料電池からのオフガスを効率良く昇圧することができるとともに、燃料電池が高出力のときには、燃料電池からのオフガスの圧力損失を抑制すること。
【解決手段】移動板40の回転板30に向かう移動は、回転軸の回転に伴うオフガスの傾斜したブレード41への押圧力により行われ、移動板40の回転板30から離れる移動は、回転軸の回転を所定の回転数以下とすることで、回転軸の回転に伴うオフガスの傾斜したブレード41への押圧力を低下させることで行われる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸と一体的に回転するとともに、前記回転軸の回転軸心周りに環状に形成される凹部を有する回転板と、
前記凹部と対向しつつ前記回転板と共にポンプ室を区画する区画部、前記ポンプ室に燃料電池からのオフガスを吸入するための吸入口、及び前記ポンプ室内の前記オフガスを吐出するための吐出口を有する固定壁と、
前記ポンプ室内に前記回転軸心周りに放射状に配置されるとともに前記回転板と一体的に回転する複数のブレードと、を備えている燃料電池用渦流式ポンプであって、
前記回転板には、前記凹部の底壁を貫通する複数のスリットが形成されており、
前記ブレードは、前記ポンプ室の外において共通の移動板から前記回転軸の回転方向へ傾斜して立設されるとともに、前記スリットに嵌挿されており、
前記移動板は、前記スリット及び前記ブレードを介して前記回転軸と一体的に回転され、前記回転板に対して前記回転軸心の方向に移動可能に前記回転軸に挿通されるとともに移動量を当接規制する規制部を備え、
前記ブレードは、前記移動板の前記回転板に対する移動に応じて、前記スリットからの突出量が変化され、前記規制部により移動量が規制されても前記スリットとの係合が維持され、
前記移動板の前記回転板に向かう移動は、前記回転軸の回転に伴う前記オフガスの傾斜した前記ブレードへの押圧力により行われ、前記移動板の前記回転板から離れる移動は、前記回転軸の回転を所定の回転数以下とすることで前記押圧力を低下させることで行われることを特徴とする燃料電池用渦流式ポンプ。
【請求項2】
前記移動板の前記回転板に向かう方向へ前記移動板を付勢する付勢部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用渦流式ポンプ。
【請求項3】
前記付勢部材は、前記回転軸心周りに設けられた環状のゴム部材であることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用渦流式ポンプ。
【請求項4】
前記回転軸心の方向は、重力方向に一致していることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池用渦流式ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用渦流式ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池からのオフガスを吸入して吐出する燃料電池用渦流式ポンプが、例えば特許文献1に開示されている。このような燃料電池用渦流式ポンプは、回転軸と、回転軸と一体的に回転する回転板と、を備えている。回転板は、回転軸の回転軸心周りに環状に形成される凹部を有している。また、燃料電池用渦流式ポンプは、回転板の凹部と対向しつつ回転板と共にポンプ室を区画する区画部、ポンプ室に燃料電池からのオフガスを吸入するための吸入口、及びポンプ室内のオフガスを吐出するための吐出口を有する固定壁を備えている。さらに、燃料電池用渦流式ポンプは、ポンプ室内に回転軸の回転軸心周りに放射状に配置される複数のブレードを備えている。複数のブレードは、回転板と一体的に回転する。そして、回転軸の回転に伴って、回転板及び複数のブレードが回転することにより、吸入口に吸入された燃料電池からのオフガスは、ポンプ室内で渦巻くように流れることにより昇圧されて、吐出口から吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、燃料電池が低出力のときは、燃料電池からのオフガスの圧力が低い。したがって、燃料電池用渦流式ポンプにおいては、回転軸を回転させて、回転板及び複数のブレードを回転させ、吸入口に吸入された燃料電池からのオフガスを、ポンプ室内で効率良く昇圧して、吐出口から吐出することが求められる。燃料電池からのオフガスをポンプ室内で効率良く昇圧するためには、ポンプ室内において各ブレードがある程度の高さを有している必要がある。言い換えれば、各ブレードと区画部との間の隙間をある程度小さくしておく必要がある。
【0005】
一方で、燃料電池が高出力のときは、燃料電池からのオフガスの圧力が高い。したがって、燃料電池が高出力のときに、吸入口に吸入される燃料電池からのオフガスの圧力は高くなっている。よって、燃料電池用渦流式ポンプにおいては、回転軸を回転させて、回転板及び複数のブレードを回転させ、吸入口に吸入された燃料電池からのオフガスを、ポンプ室内で昇圧するといった必要が無い。このとき、ポンプ室内において各ブレードがある程度長いと、言い換えれば、各ブレードと区画部との間の隙間が小さいと、吸入口に吸入された燃料電池からのオフガスが、各ブレードに衝突することでポンプ室を通過し難いため、ポンプ室内を通過して吐出口に至るまでにオフガスの圧力損失が生じてしまい、吐出口から吐出されるオフガスの圧力が低下してしまう虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する燃料電池用渦流式ポンプは、回転軸と、前記回転軸と一体的に回転するとともに、前記回転軸の回転軸心周りに環状に形成される凹部を有する回転板と、前記凹部と対向しつつ前記回転板と共にポンプ室を区画する区画部、前記ポンプ室に燃料電池からのオフガスを吸入するための吸入口、及び前記ポンプ室内の前記オフガスを吐出するための吐出口を有する固定壁と、前記ポンプ室内に前記回転軸心周りに放射状に配置されるとともに前記回転板と一体的に回転する複数のブレードと、を備えている燃料電池用渦流式ポンプであって、前記回転板には、前記凹部の底壁を貫通する複数のスリットが形成されており、前記ブレードは、前記ポンプ室の外において共通の移動板から前記回転軸の回転方向へ傾斜して立設されるとともに、前記スリットに嵌挿されており、前記移動板は、前記スリット及び前記ブレードを介して前記回転軸と一体的に回転され、前記回転板に対して前記回転軸心の方向に移動可能に前記回転軸に挿通されるとともに移動量を当接規制する規制部を備え、前記ブレードは、前記移動板の前記回転板に対する移動に応じて、前記スリットからの突出量が変化され、前記規制部により移動量が規制されても前記スリットとの係合が維持され、前記移動板の前記回転板に向かう移動は、前記回転軸の回転に伴う前記オフガスの傾斜した前記ブレードへの押圧力により行われ、前記移動板の前記回転板から離れる移動は、前記回転軸の回転を所定の回転数以下とすることで前記押圧力を低下させることで行われる。
【0007】
燃料電池が低出力のときは、燃料電池からのオフガスの圧力が低い。このため、燃料電池用渦流式ポンプにおいては、回転軸と一体的に回転板を回転させて、つまり、回転軸の回転数を上昇させて、移動板を、スリット及びブレードを介して回転軸と一体的に回転させ、吸入口に吸入された燃料電池からのオフガスを、ポンプ室内で効率良く昇圧して、吐出口から吐出することが求められる。このとき、ポンプ室の外において共通の移動板から回転軸の回転方向へ傾斜して立設される各ブレードにおける回転板の凹部の底壁側の面に対して、ポンプ室内のオフガスの圧力が作用するため、オフガスが各ブレードを区画部に向けて押圧する力が各ブレードに作用する。回転軸の回転数が高いほど、この押圧力は大きくなる。回転軸の回転数が所定値よりも高いと、この押圧力により、移動板が、回転板に向かう方向に移動する。その結果、各ブレードが区画部に接近するため、各ブレードと区画部との間の隙間を小さくすることができ、吸入口に吸入された燃料電池からのオフガスを、ポンプ室内で効率良く昇圧して、吐出口から吐出することができる。したがって、燃料電池が低出力のときには、燃料電池からのオフガスを効率良く昇圧することができる。
【0008】
一方で、燃料電池が高出力のときは、燃料電池からのオフガスの圧力が高い。したがって、燃料電池が高出力のときに、吸入口に吸入される燃料電池からのオフガス、ひいてはポンプ室内の圧力は高くなっている。よって、燃料電池用渦流式ポンプにおいては、回転軸を回転させて、回転板及び複数のブレードを回転させ、吸入口に吸入された燃料電池からのオフガスを、ポンプ室内で昇圧するといった必要が無い。したがって、回転軸の回転数を低下させている。このとき、ブレードの先端面にポンプ室内のオフガスの圧力が作用するため、オフガスが各ブレードを区画部とは反対側に向けて押圧する力が各ブレードに作用している。回転軸の回転数は先述の所定値より低いため、オフガスが各ブレードを区画部に向けて押圧する力は低下して、オフガスが各ブレードを区画部とは反対側に向けて押圧する力を下回る。これにより、移動板が、回転板から離れる方向に移動する。その結果、各ブレードが区画部に対して離間するため、各ブレードと区画部との間の隙間を大きくすることができ、吸入口に吸入された燃料電池からのオフガスが、ポンプ室を通過し易くなり、ポンプ室内を通過して吐出口に至るまでにオフガスの圧力損失が生じてしまうことが抑制される。以上により、燃料電池が低出力のときには、燃料電池からのオフガスを効率良く昇圧することができるとともに、燃料電池が高出力のときには、燃料電池からのオフガスの圧力損失を抑制することができる。
【0009】
上記燃料電池用渦流式ポンプにおいて、前記移動板の前記回転板に向かう方向へ前記移動板を付勢する付勢部材を備えているとよい。
これによれば、ポンプ室の外において共通の移動板から回転軸の回転方向へ傾斜して立設される各ブレードにおける回転板の凹部の底壁側の面に対して作用するポンプ室内のオフガスからの抵抗に加えて、付勢部材の付勢力によって、移動板が、回転板に向かう方向に移動する。したがって、燃料電池からのオフガスの流量が少なくても、移動板を、回転板に向かう方向に移動させ易くすることができる。
【0010】
上記燃料電池用渦流式ポンプにおいて、前記付勢部材は、前記回転軸心周りに設けられた環状のゴム部材であるとよい。回転軸の回転軸心周りに設けられた環状のゴム部材は、移動板の回転板に向かう方向へ移動板を付勢する付勢部材として好適である。
【0011】
上記燃料電池用渦流式ポンプにおいて、前記回転軸心の方向は、重力方向に一致しているとよい。
これによれば、移動板を、回転板に対して、回転軸の回転軸心の方向に自重で移動させることができるため、移動板における回転板に対する回転軸の回転軸心の方向の移動をスムーズに行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、燃料電池が低出力のときには、燃料電池からのオフガスを効率良く昇圧することができるとともに、燃料電池が高出力のときには、燃料電池からのオフガスの圧力損失を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態における燃料電池システムを示す模式図。
【
図5】燃料電池用渦流式ポンプの一部分を拡大して示す断面図。
【
図7】移動板が回転板に対して回転軸の回転軸心の方向で離れる方向に移動した状態を示す断面図。
【
図9】別の実施形態における燃料電池用渦流式ポンプの一部分を拡大して示す断面図。
【
図10】移動板が回転板に対して回転軸の回転軸心の方向で離れる方向に移動した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、燃料電池用渦流式ポンプを具体化した一実施形態を
図1~
図8にしたがって説明する。本実施形態の燃料電池用渦流式ポンプは、燃料電池システムに組み込まれている。燃料電池システムは、燃料電池自動車に搭載されている。
【0015】
図1に示すように、燃料電池システム10は、燃料電池用渦流式ポンプ11と、燃料電池12と、水素タンク13と、インジェクタ14と、を備えている。燃料電池12は、図示しない酸素供給部から供給される酸素と、水素タンク13から供給される水素とを反応させて直流の電気エネルギー(直流電流)を発生する。
【0016】
水素タンク13とインジェクタ14とは、第1配管15を介して接続されている。インジェクタ14と燃料電池12とは、第2配管16を介して接続されている。燃料電池12と燃料電池用渦流式ポンプ11とは、第3配管17を介して接続されている。燃料電池用渦流式ポンプ11とインジェクタ14とは、第4配管18を介して接続されている。
【0017】
水素タンク13からの水素ガスは、第1配管15、インジェクタ14、及び第2配管16を介して燃料電池12に供給される。燃料電池12で使用されなかった水素ガスを含むオフガスは、燃料電池12から第3配管17内に排出される。そして、燃料電池12から第3配管17内に排出されたオフガスは、第3配管17内を流れて燃料電池用渦流式ポンプ11に吸入される。燃料電池用渦流式ポンプ11に吸入されたオフガスは、燃料電池用渦流式ポンプ11から第4配管18内に吐出される。そして、燃料電池用渦流式ポンプ11から第4配管18内に吐出されたオフガスは、第4配管18内を流れてインジェクタ14に還流され、水素タンク13からの水素ガスと共に、インジェクタ14及び第2配管16を介して燃料電池12に再び供給される。
【0018】
燃料電池システム10は、制御装置19を備えている。制御装置19は、中央処理制御装置(CPU)を備えている。また、制御装置19は、各種プログラムやマップ等を予め記憶した読出専用メモリ(ROM)、CPUの演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)等により構成されるメモリを備えている。さらに、制御装置19は、タイマカウンタ、入力インターフェース、出力インターフェース等を備えている。
【0019】
制御装置19は、インジェクタ14と電気的に接続されている。そして、制御装置19は、インジェクタ14の駆動を制御することにより、インジェクタ14から第2配管16を介して燃料電池12に供給される水素ガスの供給量を制御する。制御装置19は、例えば、燃料電池12の発電量の目標値が大きいほど、インジェクタ14から第2配管16を介して燃料電池12に供給される水素ガスの供給量が大きくなるように、インジェクタ14の駆動を制御する。一方で、制御装置19は、例えば、燃料電池12の発電量の目標値が小さいほど、インジェクタ14から第2配管16を介して燃料電池12に供給される水素ガスの供給量が小さくなるように、インジェクタ14の駆動を制御する。これにより、燃料電池12の発電量が目標値となるように、燃料電池12の発電量、すなわち、燃料電池12の出力が制御される。
【0020】
燃料電池12の発電量の目標値が予め設定された所定値未満のとき、つまり、燃料電池12が低出力のときは、燃料電池12からのオフガスの圧力は低くなっている。一方で、燃料電池12の発電量の目標値が予め設定された所定値以上のとき、つまり、燃料電池12が高出力のときは、燃料電池12からのオフガスの圧力は高くなっている。
【0021】
図2及び
図3に示すように、燃料電池用渦流式ポンプ11のハウジング20は、第1ハウジング部材21と、第2ハウジング部材22と、を有している。第1ハウジング部材21は、板状の第1端壁21aと、第1端壁21aの外周部から円筒状に立設される第1周壁21bと、を有している。第1周壁21bは、第1端壁21aにおける厚み方向の一方に位置する端面211aから立設されている。第1端壁21aの端面211aは、平坦面状である。第1端壁21aの中央部には、挿通孔21hが形成されている。挿通孔21hは、円孔状である。挿通孔21hは、第1端壁21aを厚み方向に貫通している。
【0022】
第2ハウジング部材22は、板状の第2端壁22aと、第2端壁22aの外周部から円筒状に立設される第2周壁22bと、を有している。第2周壁22bは、第2端壁22aにおける厚み方向の一方に位置する端面221aから立設されている。第2端壁22aの端面221aは、平坦面状である。第2ハウジング部材22は、第2周壁22bの先端部が第1ハウジング部材21の第1周壁21bの先端部に突き合わさった状態で、第1ハウジング部材21に接合されている。そして、第1ハウジング部材21の第1端壁21a及び第1周壁と、第2ハウジング部材22の第2端壁22a及び第2周壁22bとによって、収容室23が区画されている。
【0023】
燃料電池用渦流式ポンプ11は、回転軸24と、回転軸24を回転させるモータ25と、を備えている。回転軸24の回転軸心の方向は、重力方向Zに一致している。したがって、本実施形態の燃料電池用渦流式ポンプ11は、回転軸24の回転軸心の方向が、重力方向Zに一致するように、燃料電池自動車に搭載されている。
【0024】
回転軸24は、第2ハウジング部材22の挿通孔21hに挿通されている。回転軸24の第1端部は、挿通孔21hを介して収容室23内に突出している。回転軸24と挿通孔21hとの間には、ベアリング26が設けられている。ベアリング26は、回転軸24を回転可能に支持している。モータ25は、回転軸24の第2端部に設けられている。回転軸24は、モータ25の駆動に基づいて回転する。
【0025】
制御装置19は、モータ25に電気的に接続されている。制御装置19は、燃料電池12の出力に基づいて、モータ25の駆動を制御する。制御装置19には、例えば、燃料電池12の発電量の目標値が予め設定された所定値未満のとき、つまり、燃料電池12が低出力のときは、モータ25を駆動させて、回転軸24を回転させるプログラムが予め記憶されている。なお、制御装置19は、燃料電池12の発電量の目標値が小さくなるほど、モータ25の回転数が大きくなるように、モータ25の駆動を制御する。一方で、制御装置19には、例えば、燃料電池12の発電量の目標値が予め設定された所定値以上のとき、つまり、燃料電池12が高出力のときは、モータ25の駆動を停止させ、回転軸24の回転を停止させるプログラムが予め記憶されている。
【0026】
燃料電池用渦流式ポンプ11は、回転板30と、移動板40と、ゴム部材50と、滑り受け部材51と、を備えている。回転板30、移動板40、ゴム部材50、及び滑り受け部材51は、収容室23内に収容されている。
【0027】
回転板30は、円板状である。回転板30の中央部には、取付孔30hが形成されている。取付孔30hは、円孔状である。取付孔30hは、回転板30を厚み方向に貫通している。回転軸24の第1端部は、取付孔30hの内周面に圧入されている。したがって、回転板30は、回転軸24の第1端部に連結されている。回転板30は、回転軸24と一体的に回転する。
【0028】
回転板30は、凹部31を有している。凹部31は、回転板30における厚み方向の一方に位置する第1端面301に形成されている。第1端面301は平坦面状である。凹部31は、取付孔30hを取り囲むように環状に延びている。したがって、凹部31は、回転板30の第1端面301に、回転軸24の回転軸心周りに環状に形成されている。凹部31の底面は、回転板30の第1端面301から遠ざかる方向へ凹む湾曲面である。また、回転板30における厚み方向の他方に位置する第2端面302は、平坦面状である。
【0029】
回転板30は、回転板30の第1端面301が第2ハウジング部材22の第2端壁22aの端面221aと対向した状態で、収容室23内に収容されている。回転板30の厚み方向と第2ハウジング部材22の第2端壁22aの厚み方向とは一致している。回転板30の第1端面301は、第2端壁22aの端面221aに面接触している。よって、回転板30は、収容室23内で回転する際に、第2端壁22aに対して摺動する。したがって、第2ハウジング部材22の第2端壁22aは、回転板30と摺動可能である。
【0030】
第2ハウジング部材22の第2端壁22aは、凹部31と対向しつつ回転板30と共にポンプ室27を区画する区画部として機能している。第2端壁22aは、凹部31に沿って延びる閉塞凹部22cを有している。閉塞凹部22cは、第2端壁22aの端面221aに形成されている。閉塞凹部22cは、凹部31の周方向で略1周延びている。閉塞凹部22cは、第2端壁22aの厚み方向で凹部31に重なっている。したがって、閉塞凹部22cと凹部31とは連通している。ポンプ室27は、閉塞凹部22cと凹部31とによって区画されている。したがって、ポンプ室27は、凹部31の周方向で略1周延びている。閉塞凹部22cの底面は、第2端壁22aの端面221aから遠ざかる方向へ凹む湾曲面である。
【0031】
第2ハウジング部材22は、吸入口28及び吐出口29を有している。吸入口28及び吐出口29は、第2端壁22aに形成されている。吸入口28及び吐出口29は、第2端壁22aを厚み方向に貫通している。吸入口28は、閉塞凹部22cの周方向の一端に連通している。吐出口29は、閉塞凹部22cの周方向の他端に連通している。したがって、吸入口28は、ポンプ室27の周方向の一端に連通しており、吐出口29は、ポンプ室27の周方向の他端に連通している。
【0032】
吸入口28は、第3配管17に接続されている。吸入口28は、第3配管17からのオフガスをポンプ室27に吸入する。したがって、吸入口28は、ポンプ室27に燃料電池12からのオフガスを吸入する。吐出口29は、第4配管18に接続されている。そして、吐出口29は、ポンプ室27内のオフガスを第4配管18に吐出する。したがって、第2ハウジング部材22は、回転板30と摺動可能であるとともに、凹部31と共にポンプ室27を区画する区画部として機能する第2端壁22a、吸入口28、及び吐出口29を有する固定壁である。
【0033】
図4及び
図5に示すように、移動板40は、円板状である。移動板40の外径は、回転板30の外径と同じである。移動板40の中央部には、貫通孔40hが形成されている。貫通孔40hは、円孔状である。貫通孔40hは、移動板40を厚み方向に貫通している。貫通孔40hの内径は、取付孔30hの内径よりも大きい。回転軸24の第1端部は、貫通孔40hの内側を通過している。したがって、回転軸24の外周面と貫通孔40hの内周面との間には、隙間が形成されている。
【0034】
移動板40は、収容室23内において、回転板30よりも第1ハウジング部材21の第1端壁21a寄りに配置されている。したがって、移動板40は、ポンプ室27の外に配置されている。移動板40の厚み方向は、回転板30の厚み方向に一致している。移動板40における厚み方向の一方に位置する第1端面401は、平坦面状である。移動板40における厚み方向の他方に位置する第2端面402は、平坦面状である。移動板40は、移動板40の第1端面401が回転板30の第2端面302に対向するように収容室23内に配置されている。
【0035】
図3に示すように、移動板40には、複数のブレード41が立設されている。複数のブレード41は、薄板平板状である。複数のブレード41は、移動板40の第1端面401から立設されている。複数のブレード41は、移動板40の第1端面401において、貫通孔40h周りに放射状に配置されている。
【0036】
図6に示すように、複数のブレード41は、移動板40の第1端面401に対して、所定の角度θ分だけ傾いた状態で移動板40の第1端面401から立設されている。複数のブレード41における移動板40の第1端面401に対する傾き方向は、全て同一方向である。なお、
図6は、燃料電池用渦流式ポンプ11の一部分を、凹部31の周方向で切断した状態を示している。
【0037】
回転板30には、複数のスリット32が形成されている。複数のスリット32は、凹部31の底壁31aを貫通している。各スリット32は、各ブレード41が通過可能に形成されている。各スリット32は、回転板30の第2端面302に対して、所定の角度θ分だけ傾いた状態で、第2端面302から凹部31の底面に向けて延びている。
【0038】
複数のブレード41のそれぞれは、複数のスリット32のそれぞれに嵌挿され、回転軸24の回転方向へ傾いた状態でポンプ室27内に突出している。したがって、ブレード41は、ポンプ室27の外において共通の移動板40から回転軸24の回転方向へ傾斜して立設されている。なお、回転軸24の回転方向を矢印Rで示している。複数のブレード41は、凹部31の底壁31aから第2ハウジング部材22の第2端壁22aに向かって突出してポンプ室27内に配置されている。複数のブレード41は、ポンプ室27内に回転軸24の回転軸心周りに放射状に配置されている。移動板40は、回転板30に対して、回転軸24の回転軸心の方向に接離可能な状態で組み付けられているとともに、且つ複数のブレード41と複数のスリット32との係合により、一体的に回転可能に組み付けられている。移動板40は、スリット32及びブレード41を介して回転軸24と一体的に回転され、回転板30に対して回転軸24の回転軸心の方向に移動可能に回転軸24に挿通されている。複数のブレード41は、回転板30と一体的に回転する。
【0039】
図3及び
図5に示すように、滑り受け部材51は、円板状である。滑り受け部材51は、収容室23内において、移動板40よりも第1ハウジング部材21の第1端壁21a寄りに配置されている。滑り受け部材51の中央部には、取付孔51hが形成されている。取付孔51hは、円孔状である。取付孔51hは、滑り受け部材51を厚み方向に貫通している。回転軸24の第1端部は、取付孔51hの内周面に圧入されている。したがって、滑り受け部材51は、回転軸24の第1端部に連結されている。滑り受け部材51は、回転軸24と一体的に回転する。滑り受け部材51は、ゴム部材50を位置決めする環状の位置決め凹部51aを有している。位置決め凹部51aは、滑り受け部材51における第1ハウジング部材21の第1端壁21aとは反対側の面に形成されている。
【0040】
ゴム部材50は、円環状である。ゴム部材50は、位置決め凹部51aに嵌め込まれた状態で、移動板40と滑り受け部材51との間に介在されている。ゴム部材50は、移動板40の第2端面402に密着している。ゴム部材50は、滑り受け部材51に密着している。ゴム部材50は、回転軸24の回転軸心周りに設けられている。
【0041】
ゴム部材50は、移動板40が、回転板30に対して離れる方向へ移動しようとすると、移動板40と滑り受け部材51との間で押し潰され、移動板40における回転板30に対して離れる方向への移動を許容する。一方で、ゴム部材50は、移動板40と滑り受け部材51との間で押し潰される前の原形状に復帰しようとすることにより、回転板30に向けて接近する方向へ移動板40を付勢する。したがって、ゴム部材50は、移動板40の回転板30に向かう方向へ移動板40を付勢する付勢部材である。
【0042】
次に、本実施形態の作用について説明する。
上記構成の燃料電池用渦流式ポンプ11において、モータ25が駆動して、回転軸24が回転すると、回転軸24と一体的に回転板30が回転する。すると、移動板40及び複数のブレード41が、回転板30と一体的に回転する。そして、回転軸24の回転に伴って、回転板30及び複数のブレード41が回転することにより、吸入口28に吸入された燃料電池12からのオフガスが、ポンプ室27内で渦巻くように流れることにより昇圧されて、吐出口29から吐出される。
【0043】
ここで、燃料電池12が低出力のときは、燃料電池12からのオフガスの圧力が低い。このため、燃料電池用渦流式ポンプ11においては、回転軸24と一体的に回転板30を回転させて、つまり、回転軸24の回転数を上昇させて、移動板40を、スリット32及びブレード41を介して回転軸24と一体的に回転させ、吸入口28に吸入された燃料電池12からのオフガスを、ポンプ室27内で効率良く昇圧して、吐出口29から吐出することが求められる。
【0044】
図6に示すように、ポンプ室27の外において共通の移動板40から回転軸24の回転方向へ傾斜して立設される各ブレード41における回転板30の凹部31の底壁31a側の面41aに対して、
図6において矢印F1で示すように、ポンプ室27内のオフガスの圧力が作用する。このため、
図6において矢印F2で示すように、オフガスが各ブレード41を第2ハウジング部材22の第2端壁22aに向けて押圧する力が各ブレード41に作用する。回転軸24の回転数が高いほど、この押圧力は大きくなる。回転軸24の回転数が所定値よりも高いと、この押圧力により、移動板40が、回転板30に向かう方向に移動する。このように、移動板40の回転板30に向かう移動は、回転軸24の回転に伴うオフガスの傾斜したブレード41への押圧力により行われる。移動板40は、移動板40の第1端面401が回転板30の第2端面302に当接すると、回転板30に向かう方向への移動が規制される。
【0045】
また、ゴム部材50の付勢力によっても、移動板40が、回転板30に向かう方向に移動する。その結果、各ブレード41が第2ハウジング部材22の第2端壁22aに接近するため、各ブレード41と第2端壁22aとの間の隙間が小さくなり、吸入口28に吸入された燃料電池12からのオフガスが、ポンプ室27内で効率良く昇圧され、吐出口29から吐出される。
【0046】
一方で、燃料電池12が高出力のときは、燃料電池12からのオフガスの圧力が高い。したがって、燃料電池12が高出力のときに、吸入口28に吸入される燃料電池12からのオフガス、ひいてはポンプ室27内の圧力は高くなっている。よって、燃料電池用渦流式ポンプ11においては、回転軸24を回転させて、回転板30及び複数のブレード41を回転させ、吸入口28に吸入された燃料電池12からのオフガスを、ポンプ室27内で昇圧するといった必要が無い。したがって、本実施形態では、燃料電池12が高出力のときには、モータ25の駆動を停止させ、回転軸24の回転を停止させる。つまり、回転軸24の回転数を低下させている。
【0047】
図7及び
図8に示すように、ブレード41の先端面に、
図8において矢印F3で示すように、ポンプ室27内のオフガスの圧力が作用する。このため、
図8において矢印F3で示すように、オフガスが各ブレード41を第2ハウジング部材22の第2端壁22aとは反対側に向けて押圧する力が各ブレード41に作用している。回転軸24の回転数は先述の所定値より低いため、オフガスが各ブレード41を第2ハウジング部材22の第2端壁22aに向けて押圧する力は低下して、オフガスが各ブレード41を第2ハウジング部材22の第2端壁22aとは反対側に向けて押圧する力を下回る。これにより、移動板40が、ゴム部材50の付勢力に抗して、回転板30から離れる方向に移動する。このように、移動板40の回転板30から離れる移動は、回転軸24の回転を所定の回転数以下とすることで、回転軸24の回転に伴うオフガスの傾斜したブレード41への押圧力を低下させることで行われる。移動板40は、移動板40の第2端面402と滑り受け部材51との間でゴム部材50が押し潰されるまで移動すると、回転板30から離れる方向への移動が規制される。
【0048】
このとき、回転軸24の回転軸心の方向は、重力方向Zに一致しているため、移動板40が、回転板30に対して、回転軸24の回転軸心の方向で離れる方向に自重でも移動する。その結果、各ブレード41が第2ハウジング部材22の第2端壁22aに対して離間するため、各ブレード41と第2端壁22aとの間の隙間が大きくなり、吸入口28に吸入された燃料電池12からのオフガスが、ポンプ室27を通過し易くなる。その結果、ポンプ室27内を通過して吐出口29に至るまでにオフガスの圧力損失が生じてしまうことが抑制される。
【0049】
このように、ブレード41は、移動板40の回転板30に対する移動に応じて、スリット32からの突出量が変化される。そして、ブレード41は、移動板40の第1端面401及び第2端面402により移動量が規制されてもスリット32との係合が維持されている。したがって、移動板40の第1端面401及び第2端面402は、移動板40の移動量を当接規制する規制部である。
【0050】
なお、複数のブレード41における移動板40の第1端面401に対する傾きは、移動板40が、回転板30に対して、回転軸24の回転軸心の方向で離れる方向にスムーズに移動するように、燃料電池12が高出力のときの燃料電池12からのオフガスの流量と、ゴム部材50の弾性係数とから、最適な傾きに予め設定されている。複数のブレード41における移動板40の第1端面401に対する最適な角度は、例えば、実験等によって予め求められている。
【0051】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)移動板40の回転板30に向かう移動は、回転軸24の回転に伴うオフガスの傾斜したブレード41への押圧力により行われ、移動板40の回転板30から離れる移動は、回転軸24の回転を所定の回転数以下とすることで、回転軸24の回転に伴うオフガスの傾斜したブレード41への押圧力を低下させることで行われる。例えば、燃料電池12が低出力のときには、ポンプ室27の外において共通の移動板40から回転軸24の回転方向へ傾斜して立設される各ブレード41における回転板30の凹部31の底壁31a側の面41aに対して、ポンプ室27内のオフガスの圧力が作用する。このため、オフガスが各ブレード41を第2ハウジング部材22の第2端壁22aに向けて押圧する力が各ブレード41に作用する。回転軸24の回転数が高いほど、この押圧力は大きくなる。回転軸24の回転数が所定値よりも高いと、この押圧力により、移動板40が、回転板30に向かう方向に移動する。その結果、各ブレード41が第2ハウジング部材22の第2端壁22aに接近するため、各ブレード41と第2端壁22aとの間の隙間を小さくすることができ、吸入口28に吸入された燃料電池12からのオフガスを、ポンプ室27内で効率良く昇圧して、吐出口29から吐出することができる。したがって、燃料電池12が低出力のときには、燃料電池12からのオフガスを効率良く昇圧することができる。
【0052】
一方で、例えば、燃料電池12が高出力のときには、ブレード41の先端面にポンプ室27内のオフガスの圧力が作用する。このため、オフガスが各ブレード41を第2ハウジング部材22の第2端壁22aとは反対側に向けて押圧する力が各ブレード41に作用している。回転軸24の回転数は先述の所定値より低いため、オフガスが各ブレード41を第2ハウジング部材22の第2端壁22aに向けて押圧する力は低下して、オフガスが各ブレード41を第2ハウジング部材22の第2端壁22aとは反対側に向けて押圧する力を下回る。これにより、移動板40が、回転板30から離れる方向に移動する。その結果、各ブレード41が第2ハウジング部材22の第2端壁22aに対して離間するため、各ブレード41と第2端壁22aとの間の隙間を大きくすることができ、吸入口28に吸入された燃料電池12からのオフガスが、ポンプ室27を通過し易くなり、ポンプ室27内を通過して吐出口29に至るまでにオフガスの圧力損失が生じることが抑制される。以上により、燃料電池12が低出力のときには、燃料電池12からのオフガスを効率良く昇圧することができるとともに、燃料電池12が高出力のときには、燃料電池12からのオフガスの圧力損失を抑制することができる。
【0053】
(2)燃料電池用渦流式ポンプ11は、移動板40の回転板30に向かう方向へ移動板40を付勢するゴム部材50を備えている。これによれば、ポンプ室27の外において共通の移動板40から回転軸24の回転方向へ傾斜して立設される各ブレード41における回転板30の凹部31の底壁31a側の面41aに対して作用するポンプ室27内のオフガスからの抵抗に加えて、ゴム部材50の付勢力によって、移動板40が、回転板30に向かう方向に移動する。したがって、燃料電池12からのオフガスの流量が少なくても、移動板40を、回転板30に向かう方向に移動させ易くすることができる。
【0054】
(3)回転軸24回転軸心周りに設けられた環状のゴム部材50は、移動板40の回転板30に向かう方向へ移動板40を付勢する付勢部材として好適である。
(4)回転軸24の回転軸心の方向は、重力方向Zに一致している。これによれば、移動板40を、回転板30に対して、回転軸24の回転軸心の方向に自重で移動させることができるため、移動板40における回転板30に対する回転軸24の回転軸心の方向の移動をスムーズに行うことができる。
【0055】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0056】
○
図9及び
図10に示すように、燃料電池用渦流式ポンプ11は、ゴム部材50を備えていない構成であってもよい。この場合であっても、
図9に示すように、例えば、燃料電池12が低出力のときには、ポンプ室27の外において共通の移動板40から回転軸24の回転方向へ傾斜して立設される各ブレード41における回転板30の凹部31の底壁31a側の面41aに対して、
図9において矢印F1で示すように、ポンプ室27内のオフガスの圧力が作用する。このため、
図9において矢印F2で示すように、オフガスが各ブレード41を第2ハウジング部材22の第2端壁22aに向けて押圧する力が各ブレード41に作用する。回転軸24の回転数が高いほど、この押圧力は大きくなる。回転軸24の回転数が所定値よりも高いと、この押圧力により、移動板40が、回転板30に向かう方向に移動する。その結果、各ブレード41が第2ハウジング部材22の第2端壁22aに接近するため、各ブレード41と第2端壁22aとの間の隙間が小さくなり、吸入口28に吸入された燃料電池12からのオフガスが、ポンプ室27内で効率良く昇圧され、吐出口29から吐出される。
【0057】
図10に示すように、例えば、燃料電池12が高出力のときには、ブレード41の先端面に、
図10において矢印F3で示すように、ポンプ室27内のオフガスの圧力が作用する。このため、
図10において矢印F3で示すように、オフガスが各ブレード41を第2ハウジング部材22の第2端壁22aとは反対側に向けて押圧する力が各ブレード41に作用している。回転軸24の回転数は先述の所定値より低いため、オフガスが各ブレード41を第2ハウジング部材22の第2端壁22aに向けて押圧する力は低下して、オフガスが各ブレード41を第2ハウジング部材22の第2端壁22aとは反対側に向けて押圧する力を下回る。これにより、移動板40が、回転板30から離れる方向に移動する。移動板40は、移動板40の第2端面402が滑り受け部材51に当接すると、回転板30から離れる方向への移動が規制される。
【0058】
このとき、回転軸24の回転軸心の方向は、重力方向Zに一致しているため、移動板40が、回転板30に対して、回転軸24の回転軸心の方向で離れる方向に自重でも移動する。その結果、各ブレード41が第2ハウジング部材22の第2端壁22aに対して離間するため、各ブレード41と第2端壁22aとの間の隙間が大きくなり、吸入口28に吸入された燃料電池12からのオフガスが、ポンプ室27を通過し易くなる。その結果、ポンプ室27内を通過して吐出口29に至るまでにオフガスの圧力損失が生じてしまうことが抑制される。
【0059】
○ 実施形態において、ゴム部材50に代えて、例えば、皿バネや波形状のバネ部材であってもよい。要は、回転板30に向けて接近する方向へ移動板40を付勢する付勢部材として機能する部材であれば、その具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0060】
○ 実施形態において、回転軸24の回転軸心の方向が、重力方向Zに一致していなくてもよい。
【符号の説明】
【0061】
11…燃料電池用渦流式ポンプ、12…燃料電池、22…固定壁である第2ハウジング部材、22a…区画部として機能する第2端壁、24…回転軸、27…ポンプ室、28…吸入口、29…吐出口、30…回転板、31…凹部、31a…底壁、32…スリット、40…移動板、41…ブレード、50…付勢部材であるゴム部材、401…規制部である第1端面、402…規制部である第2端面。