(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085316
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】車両の制御装置および車両の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B60T 8/1755 20060101AFI20220601BHJP
B60T 8/26 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
B60T8/1755 Z
B60T8/26 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196935
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(71)【出願人】
【識別番号】519373914
【氏名又は名称】株式会社J-QuAD DYNAMICS
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】村松 宗太郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 陽介
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246BA02
3D246DA01
3D246GB04
3D246GB12
3D246HA02A
3D246HA08A
3D246HA48A
3D246HA64A
3D246HA84A
3D246HA85A
3D246JA12
3D246JB22
(57)【要約】
【課題】車両の制動中に制動力の前後配分比を調整することによって車両の姿勢を制御する制御装置に関して、姿勢の急な変動を抑制する。
【解決手段】制御装置10は、車両の制動力を前輪制動力と後輪制動力とに配分する比率である制動力配分比を調整することができる車両に適用される。制御装置10は、車両が目標とする姿勢を示す値を目標姿勢値として算出する算出部を備える。制御装置10は、車両の姿勢を目標姿勢値が示す姿勢に追従させるように、車両の制動時に制動力配分比を基本制動力比率から変化させる配分設定部13を備える。配分設定部13は、制動力配分比が基本制動力比率とは異なる際に目標姿勢値が変動した場合には、制動力配分比を単位時間当りに変化させる変化量を制限量以下にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を制動する際に車輪に付与する制動力を前輪に付与する制動力と後輪に付与する制動力とに配分する比率を制動力配分比として、該制動力配分比を調整することができる車両に適用され、
前記車両が目標とする姿勢を示す値を目標姿勢値として算出する算出部と、
前記車両の姿勢を前記目標姿勢値が示す姿勢に追従させるように、前記車両の制動時に、前記制動力配分比を調整する制御が介入しない場合における当該制動力配分比の値である基本制動力比率から前記制動力配分比を変化させる配分設定部と、を備え、
前記配分設定部は、前記制動力配分比が前記基本制動力比率とは異なる際に前記目標姿勢値が変動した場合には、前記制動力配分比を単位時間当りに変化させる変化量を制限量以下にする
車両の制御装置。
【請求項2】
前記配分設定部は、前記制限量を「0」に設定する
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記制限量は、第1制限量であり、
前記車両は、当該車両の駆動力を前記前輪と前記後輪とに配分できるものであり、
前記配分設定部は、
前記車両の駆動力を前記前輪に付与する駆動力と前記後輪に付与する駆動力とに配分する比率を駆動力配分比として、
前記目標姿勢値が示す姿勢に前記車両の姿勢を追従させるように、前記車輪に駆動力を付与する場合に、前記駆動力配分比を調整する制御が介入しない場合における当該駆動力配分比の値である基本駆動力比率から前記駆動力配分比を変化させ、
前記駆動力配分比が前記基本駆動力比率とは異なる際に前記目標姿勢値が変動した場合には、前記駆動力配分比を単位時間当りに変化させる変化量を第2制限量以下にする
請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記配分設定部は、前記第2制限量を「0」に設定する
請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記目標姿勢値が変動したか否かを判定する状態判定部を備え、
前記状態判定部は、前記目標姿勢値の変動を判定するための当該目標姿勢値の領域として、前記車両が直進している場合に目標とする姿勢を示す前記目標姿勢値の第1領域と、前記車両が旋回している場合に目標とする姿勢を示す前記目標姿勢値の第2領域と、を区分して、前記目標姿勢値が前記第1領域および前記第2領域のうち一方の領域から他方の領域に移動した場合に前記目標姿勢値が変動したと判定する
請求項1~4のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
車両を制動する際に車輪に付与する制動力を前輪に付与する制動力と後輪に付与する制動力とに配分する比率を制動力配分比として、該制動力配分比を調整する機能と、
前記車両が目標とする姿勢を示す値を目標姿勢値として算出する機能と、
前記車両の姿勢を前記目標姿勢値が示す姿勢に追従させるように、前記車両の制動時に、前記制動力配分比を調整する制御が介入しない場合における当該制動力配分比の値である基本制動力比率から前記制動力配分比を変化させる機能と、をコンピュータに実行させる車両の制御プログラムであって、
前記制動力配分比を前記基本制動力比率から変化させる機能では、前記制動力配分比が前記基本制動力比率とは異なる際に前記目標姿勢値が変動した場合には、前記制動力配分比を単位時間当りに変化させる変化量を第1制限量以下にする
車両の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の車両の姿勢を制御する車両の制御装置および車両の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のピッチ角を目標ピッチ角に近づけるように制動力の前後配分比を調整する制御装置が開示されている。前後配分比は、車両の制動力を前輪に付与する制動力と後輪に付与する制動力とに配分する比率を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両では、前輪に制動力が付与されるときには車両前部を上方に変位させる力であるアンチダイブ力が発生する。また、車両では、後輪に制動力が付与されるときには車両後部を下方に変位させる力である後輪アンチリフト力が発生する。制動力の大きさに対するアンチダイブ力の大きさは、車両のサスペンションジオメトリによって設定されている。また同様に、制動力の大きさに対する後輪アンチリフト力の大きさは、車両のサスペンションジオメトリによって設定されている。このため、制動力の前後配分比が変更されると、アンチダイブ力の大きさと後輪アンチリフト力の大きさとの比率も変わることになる。アンチダイブ力の大きさと後輪アンチリフト力の大きさとの比率が変化することによって、車両のピッチングモーメントが変動する。すなわち、制動力の前後配分比の変更に応じて、車両のピッチングモーメントが変動してピッチ角速度が変化する。
【0005】
特許文献1に開示されている制御装置では、制動が継続されている場合に目標ピッチ角が変動すると、変動後の目標ピッチ角にピッチ角を近づけるために前後配分比が調整される。このため、制動中において目標ピッチ角の変動量が大きい場合には、前後配分比が調整されることによってピッチ角速度が大きくなることがある。すなわち、前後配分比が調整されることによって制動中である車両の姿勢が急激に変動することがある。車両の姿勢変化が急であると、車両の乗員に不快感を与えるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための車両の制御装置は、車両を制動する際に車輪に付与する制動力を前輪に付与する制動力と後輪に付与する制動力とに配分する比率を制動力配分比として、該制動力配分比を調整することができる車両に適用され、前記車両が目標とする姿勢を示す値を目標姿勢値として算出する算出部と、前記車両の姿勢を前記目標姿勢値が示す姿勢に追従させるように、前記車両の制動時に、前記制動力配分比を調整する制御が介入しない場合における当該制動力配分比の値である基本制動力比率から前記制動力配分比を変化させる配分設定部と、を備え、前記配分設定部は、前記制動力配分比が前記基本制動力比率とは異なる際に前記目標姿勢値が変動した場合には、前記制動力配分比を単位時間当りに変化させる変化量を制限量以下にすることをその要旨とする。
【0007】
上記構成によれば、制動力配分比が基本制動力比率とは異なる場合には、制動力配分比の変化量が制限される。これによって、制動力配分比を変化させることによるピッチ角速度が小さくなる。すなわち、車両の急なピッチ角の変化を抑制できる。急なピッチ角の変化が抑制されることによって、車両の乗員に与えるおそれのある不快感が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の車両の制御装置と、同制御装置の制御対象である車両と、を示す模式図。
【
図2】制動力によって車両に作用する力、および駆動力によって車両に作用する力を説明する模式図。
【
図3】同制御装置が実行する処理の流れを示すフローチャート。
【
図4】同制御装置が実行する処理の流れを示すフローチャート。
【
図5】第2実施形態の車両の制御装置と、同制御装置の制御対象である車両と、を示す模式図。
【
図6】同制御装置が実行する処理の流れを示すフローチャート。
【
図7】同制御装置が実行する処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〈第1実施形態〉
第1実施形態の車両の制御装置について、
図1~
図4を参照して説明する。
図1は、駆動装置71を搭載している車両90を示す。駆動装置71は、動力源を備えている。駆動装置71が備える動力源の一例は、内燃機関である。駆動装置71が備える動力源は、モータジェネレータでもよい。駆動装置71は、動力源の駆動によって出力される駆動力を伝達する動力伝達機構を備えている。動力伝達機構は、変速機を含んでいてもよい。
【0010】
車両90は、四つの車輪を備えている。車両90は、前輪として左前輪FLおよび右前輪FRを備えている。車両90は、左前輪FLおよび右前輪FRが取り付けられている前輪車軸73Fを備えている。車両90は、後輪として左後輪RLおよび右後輪RRを備えている。車両90は、左後輪RLおよび右後輪RRが取り付けられている後輪車軸73Rを備えている。
【0011】
車両90は、車輪を懸架するサスペンション装置を備えている。車両90は、左前輪FLおよび右前輪FRに取り付けられている前輪FL,FR用のサスペンション装置を備えている。車両90は、左後輪RLおよび右後輪RRに取り付けられている後輪RL,RR用のサスペンション装置を備えている。
【0012】
車両90は、前輪駆動の車両である。車両90は、駆動力を前輪車軸73Fに伝達するデファレンシャルギア72を備えている。すなわち、駆動力は、デファレンシャルギア72および前輪車軸73Fを介して、前輪FL,FRに伝達される。
【0013】
車両90は、制動操作部材61を備えている。制動操作部材61は、車両の運転者が操作可能な位置に取り付けられている。制動操作部材61は、たとえばブレーキペダルである。
【0014】
車両90は、車輪に制動力を付与する制動装置80を備えている。制動装置80は、各車輪に対応した制動機構84を備えている。制動機構84は、車輪と一体回転する回転体87、摩擦材86およびホイールシリンダ85によって構成されている。制動機構84では、ホイールシリンダ85内の液圧に応じて摩擦材86が回転体87に押し付けられる。制動機構84は、摩擦材86を回転体87に押し付ける力が大きいほど車輪に付与する制動力を大きくすることができる。
【0015】
制動装置80は、液圧発生装置81および制動アクチュエータ83を備えている。制動装置80は、液圧発生装置81において発生させた液圧を、制動アクチュエータ83を介してホイールシリンダ85に供給することができる。
【0016】
液圧発生装置81は、制動操作部材61が運転者によって操作されているときに、その操作量に応じた液圧を発生させることができる。運転者によって制動操作部材61の操作が行われている場合には、液圧発生装置81で発生した液圧に応じた量のブレーキ液が制動アクチュエータ83を介してホイールシリンダ85に供給される。
【0017】
制動アクチュエータ83は、各ホイールシリンダ85に供給する液圧を各別に調整することができる。すなわち、制動装置80は、各車輪に付与する制動力を各別に調整することができる。
【0018】
図2は、側方から見た車両90を示している。
図2には、車輪のうち左前輪FLおよび左後輪RLを図示している。
図2には、車両90の車両重心GCを表示している。
図2には、車両重心GCから路面までの距離である重心高さHを表示している。
図2には、車両90の前後方向における車両重心GCと前輪車軸73Fとの間の水平距離を第1距離Lfと表示している。
図2には、車両90の前後方向における車両重心GCと後輪車軸73Rとの間の水平距離を第2距離Lrと表示している。第1距離Lfと第2距離Lrとの和は、車両90のホイールベースに相当する。
【0019】
図2には、車両90の制動時に車両重心GCの周りに発生するピッチングモーメントMを例示する矢印を表示している。ピッチングモーメントMは、車両重心GCに作用する慣性力、車両90の重心高さH、第1距離Lfおよび第2距離Lrに基づいて算出することができる。車両90の制動時には、車両重心GCに前向きの慣性力が作用する。このため、ピッチングモーメントMは、車体91における前輪FL,FR側の部分である車体前部91Fを下方に変位させる力となる。ピッチングモーメントMは、車体91における後輪RL,RR側の部分である車体後部91Rを上方に変位させる力でもある。すなわち、ピッチングモーメントMは、車体91を前傾させる力である。
【0020】
車両90が前傾する度合いをピッチ角θyとして表す。ピッチ角θyは、車両90が水平である場合よりも車両前部が下方に位置するほど、大きい値となる。すなわち、ピッチ角θyが大きいほど、車両90が大きく前傾した姿勢であることを示す。ピッチ角θyが「0」に近いほど、前傾の度合いが小さいことを示す。言い換えれば、ピッチ角θyが「0」に近いほど、車両90が水平に近い姿勢であることを示す。
【0021】
以下、
図2を参照する説明では、左前輪FLに関して説明して、左前輪FLに対して対称な右前輪FRに関する説明を省略することがある。同様に、左後輪RLに関して説明して、左後輪RL対して対称な右後輪RRに関する説明を省略することがある。
【0022】
車両90の各車輪に作用する制動力および駆動力について説明する。
図2には、前輪FL,FRに作用する制動力を前輪制動力BFfと表示している。前輪FL,FRに作用する駆動力を前輪駆動力DFfと表示している。
図2には、後輪RL,RRに作用する制動力を後輪制動力BFrと表示している。後輪RL,RRに作用する駆動力を後輪駆動力DFrと表示している。前輪制動力BFfと後輪制動力BFrとの和を車両90の総制動力という。前輪駆動力DFfと後輪駆動力DFrとの和を車両90の総駆動力という。
【0023】
図2には、車輪の瞬間回転中心を表示している。制動時における前輪FL,FRの瞬間回転中心を第1回転中心Cfbと表示している。前輪FLと路面とが接する点と第1回転中心Cfbとを繋ぐ直線と、路面とがなす角度を第1角度θfと表示している。駆動時における前輪FLの瞬間回転中心を第2回転中心Cfdと表示している。前輪FLと路面とが接する点と第2回転中心Cfdとを繋ぐ直線と、路面とがなす角度を第2角度φfと表示している。また、制動時における後輪RLの瞬間回転中心を第3回転中心Crbと表示している。後輪RLと路面とが接する点と第3回転中心Crbとを繋ぐ直線と、路面とがなす角度を第3角度θrと表示している。駆動時における後輪RLの瞬間回転中心を第4回転中心Crdと表示している。後輪RLと路面とが接する点と第4回転中心Crdとを繋ぐ直線と、路面とがなす角度を第4角度φrと表示している。
【0024】
なお、各瞬間回転中心の位置は、サスペンション装置の特性によって定まる。
図2に示した各瞬間回転中心の位置は、一例であり、実際の瞬間回転中心の位置を表すものではない。このため、第1角度θf、第2角度φf、第3角度θrおよび第4角度φrの大きさについても、実際の角度の大きさを示すものではない。
【0025】
図2を用いて、車両90の姿勢を変化させる力について説明する。
図2には、前輪FL,FR用のサスペンション装置によって車両90に作用する力として、アンチダイブ力FbADおよび前輪アンチリフト力FdALを白抜き矢印で表示している。
図2には、後輪RL,RR用のサスペンション装置によって車両90に作用する力として、アンチスクォート力FdASおよび後輪アンチリフト力FbALを白抜き矢印で表示している。なお、白抜き矢印は、力の方向を示すものであり、実際の力の大きさを表すものではない。
【0026】
アンチダイブ力FbADについて説明する。アンチダイブ力FbADは、前輪FL,FRに制動力が付与されることによって作用する力である。アンチダイブ力FbADは、車体前部91Fが沈み込むことを抑制する力である。アンチダイブ力FbADが作用する方向は、車両前部を路面から離すように変位させる方向である。
【0027】
前輪アンチリフト力FdALについて説明する。前輪アンチリフト力FdALは、前輪FL,FRに駆動力が伝達されることによって作用する力である。前輪アンチリフト力FdALは、車体前部91Fが浮き上がることを抑制する力である。前輪アンチリフト力FdALが作用する方向は、車両前部を路面に近づけるように変位させる方向である。
【0028】
後輪アンチリフト力FbALについて説明する。後輪アンチリフト力FbALは、後輪RL,RRに制動力が付与されることによって作用する力である。後輪アンチリフト力FbALは、車体後部91Rが浮き上がることを抑制する力である。後輪アンチリフト力FbALが作用する方向は、車両後部を路面に近づけるように変位させる方向である。
【0029】
アンチスクォート力FdASについて説明する。アンチスクォート力FdASは、後輪RL,RRに駆動力が伝達されることによって作用する力である。アンチスクォート力FdASは、車体後部91Rが沈み込むことを抑制する力である。アンチスクォート力FdASが作用する方向は、車両後部を路面から離すように変位させる方向である。
【0030】
アンチダイブ力FbADは、前輪制動力BFfおよび第1角度θfを用いて、下記の関係式(式1)として表すことができる。前輪アンチリフト力FdALは、前輪駆動力DFfおよび第2角度φfを用いて、下記の関係式(式2)として表すことができる。
【0031】
FbAD=BFf・tanθf…(式1)
FdAL=DFf・tanφf…(式2)
関係式(式1)に示すように、アンチダイブ力FbADは、前輪制動力BFfが大きいほど大きな力となる。アンチダイブ力FbADは、第1角度θfに基づくtanθfが大きいほど大きな力となる。関係式(式2)に示すように、前輪アンチリフト力FdALは、前輪駆動力DFfが大きいほど大きな力となる。前輪アンチリフト力FdALは、第2角度φfに基づくtanφfが大きいほど大きな力となる。
【0032】
後輪アンチリフト力FbALは、後輪制動力BFrおよび第3角度θrを用いて、下記の関係式(式3)として表すことができる。アンチスクォート力FdASは、後輪駆動力DFrおよび第4角度φrを用いて、下記の関係式(式4)として表すことができる。
【0033】
FbAL=BFr・tanθr…(式3)
FdAS=DFr・tanφr…(式4)
関係式(式3)に示すように、後輪アンチリフト力FbALは、後輪制動力BFrが大きいほど大きな力となる。後輪アンチリフト力FbALは、第3角度θrに基づくtanθrが大きいほど大きな力となる。関係式(式4)に示すように、アンチスクォート力FdASは、後輪駆動力DFrが大きいほど大きな力となる。アンチスクォート力FdASは、第4角度φrに基づくtanφrが大きいほど大きな力となる。
【0034】
車両のサスペンション装置では、前輪制動力BFfと後輪制動力BFrとが互いに同じ大きさであるときに、アンチダイブ力FbADおよび後輪アンチリフト力FbALのうち一方の力が他方の力よりも大きくなるようにサスペンションジオメトリが設定されている。車両90が備える前輪FL,FR用のサスペンション装置および後輪RL,RR用のサスペンション装置では、前輪制動力BFfと後輪制動力BFrとが互いに同じ大きさであるときに、アンチダイブ力FbADよりも後輪アンチリフト力FbALの方が大きくなるようにサスペンションジオメトリが設定されている。すなわち、第3角度θrが第1角度θfよりも大きい関係が成立するようにサスペンションジオメトリが設定されている。
【0035】
車両のサスペンション装置では、前輪駆動力DFfと後輪駆動力DFrとが互いに同じ大きさであるときに、前輪アンチリフト力FdALよりもアンチスクォート力FdASのうち一方の力が他方の力よりも大きくなるようにサスペンションジオメトリが設定されている。車両90が備える前輪FL,FR用のサスペンション装置および後輪RL,RR用のサスペンション装置では、前輪駆動力DFfと後輪駆動力DFrとが互いに同じ大きさであるときに、前輪アンチリフト力FdALよりもアンチスクォート力FdASの方が大きくなるようにサスペンションジオメトリが設定されている。すなわち、第4角度φrが第2角度φfよりも大きい関係が成立するようにサスペンションジオメトリが設定されている。
【0036】
車両90のピッチングに関する運動方程式は、下記の関係式(式5)として表すことができる。
Iy・θy′′={(BFf+BFr)-(DFf+DFr)}・H-FbAD・Lf-FbAL・Lr+FdAL・Lf+FdAS・Lr…(式5)
関係式(式5)における「Iy」は、ピッチ慣性モーメントを表す。関係式(式5)における「θy′′」は、ピッチ角θyの二階微分値を表す。すなわち「θy′′」は、ピッチ角加速度を表す。
【0037】
以上のように車両90では、前輪制動力BFfおよび後輪制動力BFrを調整することによって、車両90に作用するアンチダイブ力FbADおよび後輪アンチリフト力FbALを調整することができる。アンチダイブ力FbADおよび後輪アンチリフト力FbALは、ピッチングモーメントMを抑制する方向に働く力である。前輪制動力BFfおよび後輪制動力BFrを調整することによって、ピッチングモーメントMを調整することができる。
【0038】
図1に示す車両90は、各種センサを備えている。
図1には、各種センサの一例として、姿勢検出センサ21、ブレーキセンサ22およびアクセルセンサ23を示している。各種センサからの検出信号は、車両90が備える制御装置10に入力される。
【0039】
姿勢検出センサ21は、車両90の姿勢を示すパラメータを検出するセンサである。姿勢検出センサ21の一例は、車両90のピッチ角速度を検出することができる。姿勢検出センサ21は、車両90のロール角を検出することができるセンサでもよい。
【0040】
ブレーキセンサ22は、制動操作部材61の操作量を検出することができる。制動操作部材61の操作量は、車両90における総制動力の目標値を算出する際に参照することができる。ブレーキセンサ22は、制動操作部材61を操作するために制動操作部材61に加えられる圧力を検出するセンサでもよい。
【0041】
アクセルセンサ23は、駆動操作部材の操作量を検出することができる。駆動操作部材は、たとえば、アクセルペダルである。駆動操作部材の操作量は、車両90における総駆動力の目標値を算出する際に参照することができる。
【0042】
車両90は、制御装置10を備えている。制御装置10は、駆動装置71を制御対象とする。また、制御装置10は、制動装置80を制御対象とする。なお、制御装置10は、CPUとROMとを備えている。制御装置10のROMには、CPUが各種の制御を実行するための各種のプログラムが記憶されている。
【0043】
制御装置10は、各種の制御を実行する複数の機能部によって構成されている。
図1には、機能部の一例として、走行状態検出部11、状態判定部12および配分設定部13を示している。
【0044】
走行状態検出部11は、車両90の状態を示すパラメータを算出することができる。走行状態検出部11は、姿勢検出センサ21からの検出信号に基づいて、ピッチ角を算出することができる。走行状態検出部11は、ピッチ角速度を算出することもできる。走行状態検出部11は、ピッチ角加速度を算出することもできる。姿勢検出センサ21が車両90のロール角を検出することができるセンサである場合には、走行状態検出部11は、ロール角を算出することもできる。その他、走行状態検出部11が算出することができるパラメータとしては、車輪速センサからの検出信号に基づく車速、車両90の前後加速度等がある。
【0045】
状態判定部12は、走行中の車両90が目標とする姿勢を示す値を算出する算出部を備えている。算出部は、車両90が目標とする姿勢を示す値として、目標ピッチ角θyTを算出する。算出部は、所定の周期毎に目標ピッチ角θyTを繰り返し算出する。算出部は、車両90の実ピッチ角に基づいて目標ピッチ角θyTを算出することができる。算出部は、目標ピッチ角θyTを算出する際に、車両90の前後加速度を参照してもよい。算出部は、目標ピッチ角θyTを算出する際に、車両90が自動運転制御によって走行されているか否かを参照してもよい。その他、算出部が目標ピッチ角θyTを算出する際に参照することのできるパラメータとしては、制動操作部材61の操作量、駆動操作部材の操作量およびステアリング操作部材の操作量等がある。
【0046】
状態判定部12の算出部は、たとえば、車両90が直進していると判定した場合には、目標ピッチ角θyTを小さく算出する。算出部は、たとえば、車両90が旋回していると判定した場合には、目標ピッチ角θyTを大きく算出する。また、算出部は、車両90が自動運転制御によって走行されている場合には、目標ピッチ角θyTを小さく算出することもできる。
【0047】
状態判定部12の算出部は、目標ピッチ角θyTを算出する際に、車両90に搭乗している乗員の人数、乗員の位置、乗員の姿勢および乗員の視線の中から選択したパラメータを参照してもよい。たとえば、車両90の後部座席に乗員が着座している場合には、目標ピッチ角θyTを小さく算出することができる。たとえば、乗員の視線が手元に向いている場合には、目標ピッチ角θyTを小さく算出することができる。
【0048】
状態判定部12は、目標ピッチ角θyTの大きさを判定する判定部を備えている。判定部は、目標ピッチ角θyTが小さいか否かを判定することができる。判定部は、目標ピッチ角θyTが大きいか否かを判定することもできる。判定部は、目標ピッチ角θyTが小さい状態から目標ピッチ角θyTが大きい状態に移行したか否かを判定することもできる。判定部は、目標ピッチ角θyTが大きい状態から目標ピッチ角θyTが小さい状態に移行したか否かを判定することもできる。
【0049】
配分設定部13は、制動力配分比を設定する。制動力配分比は、車両90を制動する際に車両90に付与する制動力を前輪FL,FRに付与する制動力と後輪RL,RRに付与する制動力とに配分する比率である。すなわち、制動力配分比は、車両90の総制動力を前輪制動力BFfと後輪制動力BFrとに配分する比率である。配分設定部13が制動力配分比を調整することによって、車両90の姿勢制御が行われる。配分設定部13には、制動力配分比を調整する基準となる値として、基本制動力比率が記憶されている。基本制動力比率は、制動力配分比を調整する制御が介入しない場合における制動力配分比の値である。一例として、基本制動力比率は、制動力配分比を調整する制御が介入しない場合に、制動操作部材61の操作に応じて制動装置80によって付与される制動力における前輪制動力BFfと後輪制動力BFrとの比率を示す。なお、制動力配分比を調整する制御とは、本実施形態に例示している制御に限らない。
【0050】
制動力配分比についてさらに説明する。たとえば、総制動力の目標値を一定に維持した状態で制動力配分比における前輪制動力BFfの比率が大きくされる場合には、前輪制動力BFfが増大され後輪制動力BFrが減少される。たとえば、総制動力の目標値を一定に維持した状態で制動力配分比における後輪制動力BFrの比率が大きくされる場合には、後輪制動力BFrが増大され前輪制動力BFfが減少される。たとえば、制動力配分比を一定に維持した状態で総制動力の目標値が増大または減少される場合には、変動後の総制動力が制動力配分比に従って前輪制動力BFfと後輪制動力BFrとに配分されるように、前輪制動力BFfおよび後輪制動力BFrが調整される。
【0051】
制御装置10が実行する他の制御の一例は、制動装置80を作動させる制御である。制御装置10は、制動装置80を作動させることによって車両90の車輪に制動力を付与することができる。当該制御では、配分設定部13によって設定される制動力配分比に基づいて、前輪制動力BFfと後輪制動力BFrとの比率を調整することができる。
【0052】
制御装置10が実行する他の制御の一例は、駆動装置71を作動させる制御である。制御装置10は、駆動装置71を作動させることによって、車両90の車輪に駆動力を伝達することができる。
【0053】
制御装置10は、車両90の姿勢制御を行うための処理を実行する。当該姿勢制御では、車両90の制動中に制動力配分比を調整することによって、車両90のピッチ角θyを制御することができる。以下、
図3および
図4を用いてこの処理について説明する。制御装置10が備えるROMには、
図3および
図4に示す処理を実行するためのプログラムである制御プログラムが記憶されている。
図3および
図4に示す処理は、ROMに記憶された制御プログラムをCPUが実行することによって実現される。
【0054】
図3は、制御装置10が実行する処理の流れを示す。本処理ルーチンは、車両90の制動中に所定の周期毎に繰り返し実行される。本処理ルーチンは、制動の開始が予測される場合に、所定の周期毎に繰り返し実行されてもよい。
【0055】
本処理ルーチンが開始されると、まずステップS101では、制御装置10は、姿勢制御の実行可否を判定する。たとえば、制御装置10は、制動操作部材61の操作速度が規定の判定速度よりも速い場合には、姿勢制御を許可しないようにすることができる。また、制御装置10は、車両90の減速度が規定の判定減速度よりも大きい場合には、姿勢制御を許可しないようにしてもよい。姿勢制御を許可する場合には(S101:YES)、制御装置10は、処理をステップS102に移行する。
【0056】
ステップS102の処理において、制御装置10は、制動力配分比が偏重されていない場合、すなわち制動力配分比が基本制動力比率である場合には(S102:NO)、処理をステップS104に移行する。
【0057】
ステップS104では、制御装置10は、目標ピッチ角θyTが小さいか否かを状態判定部12に判定させる。目標ピッチ角θyTが小さい状態とは、車両90の姿勢の目標が水平に近いことを意味する。たとえば、状態判定部12は、目標ピッチ角θyTが第1判定値よりも小さい場合には、目標ピッチ角θyTが小さいと判定する。一方で、目標ピッチ角θyTが第1判定値以上である場には、状態判定部12は、目標ピッチ角θyTが小さいとは判定しない。第1判定値は、車両90の目標とする姿勢が水平に近いか否かを判定するための判定値として、予め設定されている。第1判定値は、車両90の姿勢が水平である場合のピッチ角に基づいて算出された値である。また、状態判定部12は、目標ピッチ角θyTの判定を行う際に、当該目標ピッチ角θyTの値を前回目標ピッチ角θyT0として記憶することができる。
【0058】
ステップS104の処理において、目標ピッチ角θyTが小さいと判定された場合には(S104:YES)、制御装置10は、処理をステップS105に移行する。
ステップS105では、制御装置10は、配分設定部13に制動力配分比を設定させる。配分設定部13は、車両90のピッチ角θyを目標ピッチ角θyTに追従させるように、制動力配分比を設定する。ここでは、配分設定部13は、制動力配分比が後輪偏重となるように制動力配分比を設定する。後輪偏重とは、基本制動力比率と比較して後輪制動力BFrの比率を大きくして前輪制動力BFfの比率を小さくすることである。一方で、前輪偏重とは、基本制動力比率と比較して前輪制動力BFfの比率を大きくして後輪制動力BFrの比率を小さくすることである。
【0059】
配分設定部13が制動力配分比を設定する構成の一例を説明する。配分設定部13には、制動中における目標ピッチ角θyTと制動力配分比との関係を示す演算マップが記憶されている。配分設定部13は、当該演算マップに基づいて制動力配分比を算出する。当該演算マップでは、入力される目標ピッチ角θyTが大きいほど、より前輪偏重となる制動力配分比が出力される。当該演算マップでは、入力される目標ピッチ角θyTが「0」に近いほど、より後輪偏重となる制動力配分比が出力される。
【0060】
ステップS105の処理によって制動力配分比が後輪偏重に設定されると、制御装置10は、本処理ルーチンを一旦終了する。制動力配分比が後輪偏重にされた結果として、当該制動力配分比に従って制動装置80が制御されると、後輪制動力BFrの比率が大きくされる。たとえば、後輪制動力BFrが増大され、前輪制動力BFfが減少される。
【0061】
一方、ステップS104の処理において、目標ピッチ角θyTが小さいと判定されない場合には(S104:NO)、制御装置10は、処理をステップS106に移行する。
ステップS106では、制御装置10は、目標ピッチ角θyTが大きいか否かを状態判定部12に判定させる。目標ピッチ角θyTが大きい状態とは、車両90の姿勢の目標が前傾であることを意味する。たとえば、状態判定部12は、目標ピッチ角θyTが第2判定値以上である場合には、目標ピッチ角θyTが大きいと判定する。一方で、目標ピッチ角θyTが第2判定値よりも小さい場合には、状態判定部12は、目標ピッチ角θyTが大きいとは判定しない。第2判定値は、車両90の目標とする姿勢が前傾であるか否かを判定するための判定値として、予め設定されている。第2判定値は、車両90の姿勢が前傾である場合のピッチ角に基づいて算出された値である。第2判定値の一例は、第1判定値よりも大きい値である。第2判定値は、第1判定値以上の値であってもよい。また、状態判定部12は、目標ピッチ角θyTの判定を行う際に、当該目標ピッチ角θyTの値を前回目標ピッチ角θyT0として記憶することができる。
【0062】
ステップS106の処理において、目標ピッチ角θyTが大きいと判定された場合には(S106:YES)、制御装置10は、処理をステップS107に移行する。
ステップS107では、制御装置10は、配分設定部13に制動力配分比を設定させる。ここでは、配分設定部13は、制動力配分比が前輪偏重となるように制動力配分比を設定する。たとえば配分設定部13は、ステップS105の処理において説明した演算マップに基づいて制動力配分比を算出することができる。
【0063】
ステップS107の処理によって制動力配分比が前輪偏重に設定されると、制御装置10は、本処理ルーチンを一旦終了する。制動力配分比が前輪偏重にされた結果として、当該制動力配分比に従って制動装置80が制御されると、前輪制動力BFfの比率が大きくされる。たとえば、前輪制動力BFfが増大され、後輪制動力BFrが減少される。
【0064】
一方、ステップS106の処理において、目標ピッチ角θyTが大きいと判定されない場合には(S106:NO)、制御装置10は、処理をステップS108に移行する。たとえば、第2判定値が第1判定値よりも大きい値として設定されている場合に、目標ピッチ角θyTが第1判定値以上であり、且つ目標ピッチ角θyTが第2判定値よりも小さいときに、制御装置10は、処理をステップS108に移行する。すなわち、目標ピッチ角θyTが小さい状態ではなく目標ピッチ角θyTが大きい状態でもない場合に、制御装置10は、処理をステップS108に移行する。
【0065】
ステップS108では、制御装置10は、配分設定部13に制動力配分比を設定させる。ここでは、配分設定部13は、制動力配分比が基本制動力比率となるように制動力配分比を設定する。この結果として、制動装置80が制御されると、基本制動力比率に従って前輪制動力BFfおよび後輪制動力BFrが付与される。制御装置10は、制動力配分比を基本制動力比率に設定させると、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0066】
また、ステップS101の処理において姿勢制御を許可しない場合にも(S101:NO)、制御装置10は、処理をステップS108に移行する。制御装置10は、ステップS108の処理を実行して、その後、本処理ルーチンを終了する。
【0067】
一方で、ステップS102の処理において、制御装置10は、制動力配分比が偏重されている場合、すなわち制動力配分比が基本制動力比率とは異なる場合には、ステップS103に処理を移行する。ステップS103では、制御装置10は、制動配分調整処理を開始する。制動配分調整処理を開始すると、制御装置10は、本処理ルーチンを一旦終了する。続いて、
図4を参照して、制動配分調整処理について説明する。
【0068】
図4は、制御装置10が実行する制動配分調整処理の流れを示す。本処理ルーチンは、
図3におけるステップS103の処理によって実行が開始される。本処理ルーチンが開始されると、まずステップS201では、制御装置10は、目標ピッチ角θyTが小さい状態から目標ピッチ角θyTが大きい状態に移行したか否かを状態判定部12に判定させる。たとえば状態判定部12は、記憶されている前回目標ピッチ角θyT0が第1判定値よりも小さく、且つ、ステップS201の処理を行う時点での目標ピッチ角θyTが第2判定値以上である場合に、目標ピッチ角θyTが大きい状態に移行したと判定する。状態判定部12は、前回目標ピッチ角θyT0が第1判定値以上である場合、または目標ピッチ角θyTが第2判定値よりも小さい場合には、目標ピッチ角θyTが大きい状態に移行していないと判定する。また、状態判定部12は、目標ピッチ角θyTの判定を行う際に、当該目標ピッチ角θyTの値を前回目標ピッチ角θyT0として記憶することができる。
【0069】
ステップS201の処理において、目標ピッチ角θyTが大きい状態に移行している場合には(S201:YES)、制御装置10は、処理をステップS202に移行する。
ステップS202では、制御装置10は、配分設定部13に制動力配分比を設定させる。ステップS202の処理においては、目標ピッチ角θyTが大きいことによって、配分設定部13は、目標ピッチ角θyTに応じて制動力配分比が前輪偏重となるように制動力配分比を設定する。さらに、制御装置10は、配分設定部13に制動力配分比の変化を制限させる。すなわち、配分設定部13は、制動力配分比を後輪偏重から前輪偏重に変化させ、その際に制動力配分比の変化を制限する。
【0070】
制動力配分比の変化を制限する一例では、配分設定部13は、制動力配分比の変化量を制限する。配分設定部13は、目標ピッチ角θyTに応じた制動力配分比に、現在の制動力配分比を追従させるように、制動力配分比の目標値を設定する。さらに、配分設定部13は、制動力配分比の目標値を設定する際には、制動力配分比を単位時間当りに変化させる変化量が第1制限量以下となるようにする。制動力配分比を単位時間当りに変化させる変化量が大きいと、前輪制動力BFfおよび後輪制動力BFrが調整されることによる車両90のピッチ角速度が大きくなることがある。これによって、車両90の乗員に不快感を与えるおそれがある。第1制限量は、制動力配分比の単位時間当りにおける変化量が第1制限量以下であれば、車両90の乗員が不快に感じにくい制限量として予め実験等によって算出された値である。このようにして、配分設定部13は、制動力配分比を後輪偏重から前輪偏重へ徐々に変化させることができる。
【0071】
ステップS202の処理において制動力配分比が徐々に変化される結果として、前輪制動力BFfの比率が徐々に大きくされる。たとえば、前輪制動力BFfが徐々に増大され、後輪制動力BFrが徐々に減少される。制御装置10は、配分設定部13に制動力配分比を設定させると、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0072】
一方、ステップS201の処理において、目標ピッチ角θyTが大きい状態に移行していない場合には(S201:NO)、制御装置10は、処理をステップS203に移行する。
【0073】
ステップS203では、制御装置10は、目標ピッチ角θyTが大きい状態から目標ピッチ角θyTが小さい状態に移行したか否かを状態判定部12に判定させる。たとえば状態判定部12は、記憶されている前回目標ピッチ角θyT0が第2判定値以上であり、且つ、ステップS203の処理を行う時点での目標ピッチ角θyTが第1判定値よりも小さい場合に、目標ピッチ角θyTが小さい状態に移行したと判定する。状態判定部12は、前回目標ピッチ角θyT0が第2判定値よりも小さい場合、または目標ピッチ角θyTが第1判定値以上である場合には、目標ピッチ角θyTが小さい状態に移行していないと判定する。なお、状態判定部12は、目標ピッチ角θyTの判定を行う際に、当該目標ピッチ角θyTの値を前回目標ピッチ角θyT0として記憶することができる。
【0074】
ステップS203の処理において、目標ピッチ角θyTが小さい状態に移行している場合には(S203:YES)、制御装置10は、処理をステップS204に移行する。
ステップS204では、制御装置10は、配分設定部13に制動力配分比を設定させる。ステップS204の処理においては、目標ピッチ角θyTが小さいことによって、配分設定部13は、目標ピッチ角θyTに応じて制動力配分比が後輪偏重となるように制動力配分比を設定する。さらに、制御装置10は、配分設定部13に制動力配分比の変化を制限させる。すなわち、配分設定部13は、制動力配分比を前輪偏重から後輪偏重に変化させ、その際に制動力配分比の変化を制限する。たとえば配分設定部13は、ステップS202の処理と同様の処理によって、制動力配分比の変化量を制限する。こうして配分設定部13は、制動力配分比を前輪偏重から後輪偏重へ徐々に変化させることができる。
【0075】
ステップS204の処理において制動力配分比が徐々に変化される結果として、後輪制動力BFrの比率が徐々に大きくされる。たとえば、後輪制動力BFrが徐々に増大され、前輪制動力BFfが徐々に減少される。配分設定部13に制動力配分比を設定させると、制御装置10は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0076】
一方、ステップS203の処理において、目標ピッチ角θyTが小さい状態に移行していない場合には(S203:NO)、制御装置10は、処理をステップS205に移行する。
【0077】
ステップS205では、制御装置10は、目標ピッチ角θyTに応じて配分設定部13に制動力配分比を設定させる。配分設定部13は、ステップS105の処理において説明した演算マップを用いて、制動力配分比を算出することができる。配分設定部13に制動力配分比を設定させると、制御装置10は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0078】
制御装置10は、制動が終了した場合には、制動力配分比を基本制動力比率に設定させてもよい。制御装置10は、制動が終了した場合には、状態判定部12が記憶している前回目標ピッチ角θyT0を消去させてもよい。たとえば、制動操作部材61の操作が解消された場合に制動が終了したと判定することができる。また、車両90が停止した場合に制動が終了したと判定することもできる。
【0079】
本実施形態の作用および効果について説明する。
制御装置10では、目標ピッチ角θyTが小さい場合には、制動力配分比が後輪偏重に設定される(S105)。すなわち、後輪制動力BFrの比率が大きくされる。車両90では、前輪制動力BFfと後輪制動力BFrとが互いに同じ大きさであるときには、アンチダイブ力FbADよりも後輪アンチリフト力FbALの方が大きくなるようにサスペンションジオメトリが設定されている。このため、後輪制動力BFrの比率を大きくすると、アンチダイブ力FbADが小さくなる量を抑えつつ、より大きな後輪アンチリフト力FbALを車両90に作用させることができる。換言すれば、アンチダイブ力FbADの大きさと後輪アンチリフト力FbALの大きさとの和のうち、後輪アンチリフト力FbALの大きさが占める割合が大きくなる。このため、アンチダイブ力FbADおよび後輪アンチリフト力FbALによって車両90に作用する力、すなわち車両90の前傾を抑制する力が大きくなりやすい。これによって、車両90が前傾姿勢となることを抑制できる。すなわち、車両90の姿勢を水平に近い姿勢にすることができる。車両90の乗り心地を向上させることができる。
【0080】
制御装置10では、車両90が目標とする姿勢を示す目標ピッチ角θyTは、車両90が直進している場合に小さく算出される。このため、制御装置10によれば、車両90の制動時に車両90が直進している場合には、車両90が前傾姿勢となることを抑制できる。
【0081】
制御装置10では、車両90が目標とする姿勢を示す目標ピッチ角θyTは、車両90の自動運転が行われている場合に小さく算出される。このため、制御装置10によれば、自動運転制御中の制動時には、車両90が前傾姿勢となることを抑制できる。
【0082】
制御装置10では、車両90が目標とする姿勢を示す目標ピッチ角θyTは、車両90の乗員が手元に視線を向けている場合に小さく算出される。このため、制御装置10によれば、車両90の制動時に車両90の乗員が手元に視線を向けている場合には、車両90が前傾姿勢となることを抑制できる。これによって、乗員に不快感を与えにくくなる。
【0083】
また、制御装置10では、目標ピッチ角θyTが大きい場合には、制動力配分比が前輪偏重に設定される(S107)。すなわち、前輪制動力BFfの比率が大きくされる。車両90では、前輪制動力BFfと後輪制動力BFrとが互いに同じ大きさであるときには、アンチダイブ力FbADよりも後輪アンチリフト力FbALの方が大きくなるようにサスペンションジオメトリが設定されている。このため、前輪制動力BFfの比率を大きくすると、アンチダイブ力FbADが大きくなる量を抑えつつ、後輪アンチリフト力FbALを小さくすることができる。換言すれば、アンチダイブ力FbADの大きさと後輪アンチリフト力FbALの大きさとの和のうち、後輪アンチリフト力FbALの大きさが占める割合が小さくなる。このため、アンチダイブ力FbADおよび後輪アンチリフト力FbALによって車両90に作用する力、すなわち車両90の前傾を抑制する力が小さくなりやすい。すなわち、ピッチングモーメントMを抑制する方向に働く力を低減することができる。これによって、車体前部91Fを沈み込ませ、車両90を前傾姿勢にすることができる。
【0084】
制御装置10では、車両90が目標とする姿勢を示す目標ピッチ角θyTは、車両90が旋回している場合に大きく算出される。このため、制御装置10によれば、車両90の制動時に車両90が旋回している場合には、車両90を前傾姿勢にすることができる。車両90の旋回時に車両90を前傾姿勢にすると、旋回時に外側に位置する前輪を沈み込ませることになる。これによって、旋回時に外側の前輪にかかる荷重が増大する。このため、車両90は、より小さな舵角で旋回できるようになる。すなわち、制御装置10によれば、制動時に車両90を旋回させる場合の操作性を向上させることができる。また、旋回時に外側の前輪にかかる荷重が増大することによって、旋回中に車両90が安定しやすくなる。
【0085】
さらに制御装置10では、制動力配分比が基本制動力比率とは異なる場合には、制動力配分比の変化が制限される(S202またはS204)。このため、たとえば、車両90の制動時に車両90が直進から旋回に移行した場合に、制動力配分比を徐々に前輪偏重に調整することができる。これによって、ピッチ角θyの急な変化を抑制しつつ、車両90を徐々に前傾姿勢にすることができる。また、たとえば、車両90の制動時に車両90が旋回から直進に移行した場合に、制動力配分比を徐々に後輪偏重に調整することができる。これによって、ピッチ角θyの急な変化を抑制しつつ、車両90を徐々に水平にすることができる。制御装置10によれば、車両90の姿勢を制御する際にピッチ角θyの急な変化を抑制することができる。このため、制御装置10によれば、車両の乗員に与える不快感を軽減できる。
【0086】
〈第2実施形態〉
第2実施形態の車両の制御装置について、
図5~
図7および
図2~
図4を参照して説明する。
【0087】
図5は、第2実施形態の制御装置110と、制御装置110を適用する車両190と、を示す。以下では、第1実施形態と共通の構成については、第1実施形態と同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0088】
図5に示すように、車両190は、第1実施形態における車両90とは異なり、動力源として第1モータジェネレータ171Fおよび第2モータジェネレータ171Rを搭載している。第1モータジェネレータ171Fおよび第2モータジェネレータ171Rは、車両190の駆動装置を構成している。
【0089】
車両190は、四輪駆動の車両である。第1モータジェネレータ171Fから出力される駆動力は、前輪FL,FRに伝達される。第2モータジェネレータ171Rから出力される駆動力は、後輪RL,RRに伝達される。車両190では、前輪FL,FRと後輪RL,RRとに駆動力を配分することができる。
【0090】
車両190は、制動装置80を備えている。制動装置80は、各車輪に対応した制動機構84を備えている。
車両190のサスペンションジオメトリは、車両90と共通である。すなわち、車両190においても、
図2を用いて説明した関係が成立する。
【0091】
車両190は、制御装置110を備えている。制御装置110は、駆動装置を構成する第1モータジェネレータ171Fおよび第2モータジェネレータ171Rを制御対象とする。また、制御装置110は、制動装置80を制御対象とする。なお、制御装置110は、CPUとROMとを備えている。制御装置110のROMには、CPUが各種の制御を実行するための各種のプログラムが記憶されている。
【0092】
制御装置110は、各種の制御を実行する複数の機能部によって構成されている。
図5には、機能部の一例として、走行状態検出部111、状態判定部112および配分設定部113を示している。
【0093】
制御装置110の機能部は、制御装置10の機能部と共通の機能を備えている。走行状態検出部111は、走行状態検出部11と共通の機能を備えている。状態判定部112は、状態判定部12と共通の機能を備えている。配分設定部113は、配分設定部113は、配分設定部13と共通の機能を備えている。
【0094】
さらに、配分設定部113は、駆動力配分比を設定する機能を備えている。駆動力配分比は、車両190の駆動力を前輪FL,FRに付与する駆動力と後輪RL,RRに付与する駆動力とに配分する比率である。すなわち、駆動力配分比は、車両190の総駆動力を前輪駆動力DFfと後輪駆動力DFrとに配分する比率である。配分設定部113が駆動力配分比を調整することによって、車両190の姿勢制御が行われる。配分設定部113には、駆動力配分比を調整する基準となる値として、基本駆動力比率が記憶されている。基本駆動力比率は、駆動力配分比を調整する制御が介入しない場合における駆動力配分比の値である。なお、駆動力配分比を調整する制御とは、本実施形態に例示している制御に限らない。
【0095】
駆動力配分比についてさらに説明する。たとえば、総駆動力の目標値を一定に維持した状態で駆動力配分比における前輪駆動力DFfの比率が大きくされる場合には、前輪駆動力DFfが増大され後輪駆動力DFrが減少される。たとえば、総駆動力の目標値を一定に維持した状態で駆動力配分比における後輪駆動力DFrの比率が大きくされる場合には、後輪駆動力DFrが増大され前輪駆動力DFfが減少される。たとえば、駆動力配分比を一定に維持した状態で総駆動力の目標値が増大または減少される場合には、変動後の総駆動力が駆動力配分比に従って前輪駆動力DFfと後輪駆動力DFrとに配分されるように、前輪駆動力DFfおよび後輪駆動力DFrが調整される。
【0096】
制御装置110は、駆動装置を作動させる制御では、第1モータジェネレータ171Fを制御することによって前輪FL,FRに前輪駆動力DFfを伝達することができる。制御装置110は、駆動装置を作動させる制御では、第2モータジェネレータ171Rを制御することによって後輪RL,RRに後輪駆動力DFrを伝達することができる。駆動装置を作動させる制御では、配分設定部113によって設定される駆動力配分比に基づいて、前輪駆動力DFfと後輪駆動力DFrとの比率を調整することができる。
【0097】
車両190では、前輪駆動力DFfおよび後輪駆動力DFrを調整することによって、車両190に作用する前輪アンチリフト力FdALおよびアンチスクォート力FdASを調整することができる。前輪アンチリフト力FdALおよびアンチスクォート力FdASは、ピッチングモーメントMを大きくする方向に働く力である。前輪駆動力DFfおよび後輪駆動力DFrを調整することによって、ピッチングモーメントMを調整することができる。
【0098】
制御装置110は、車両190の姿勢制御を行うための処理を実行する。当該姿勢制御では、車両190の制動中に制動力配分比を調整することによって、車両190のピッチ角θyを制御することができる。制御装置110が備えるROMには、第1実施形態における
図3および
図4に示す処理を実行するためのプログラムである制御プログラムが記憶されている。
図3および
図4に示す処理は、ROMに記憶された制御プログラムをCPUが実行することによって実現される。
【0099】
さらに、制御装置110は、車両190の姿勢制御では、車両190の制動中に駆動力配分比を調整することによって、車両190のピッチ角θyを制御することができる。制御装置110は、当該処理を
図3および
図4に示す処理と並行して実行することができる。以下、
図6および
図7を用いてこの処理について説明する。制御装置110が備えるROMには、
図6および
図7に示す処理を実行するためのプログラムである制御プログラムが記憶されている。
図6および
図7に示す処理は、ROMに記憶された制御プログラムをCPUが実行することによって実現される。
【0100】
図6は、制御装置110が実行する処理の流れを示す。本処理ルーチンは、車両190の制動中に所定の周期毎に繰り返し実行される。
本処理ルーチンが開始されると、まずステップS301では、制御装置110は、姿勢制御の実行可否を判定する。姿勢制御を許可する場合には(S301:YES)、制御装置110は、処理をステップS302に移行する。
【0101】
ステップS302の処理において、制御装置110は、駆動力配分比が偏重されていない場合、すなわち駆動力配分比が基本駆動力比率である場合には(S302:NO)、処理をステップS304に移行する。
【0102】
ステップS304では、制御装置110は、目標ピッチ角θyTが小さいか否かを状態判定部112に判定させる。状態判定部112は、
図3のステップS104における処理と共通の処理によって、目標ピッチ角θyTが小さいか否かを判定することができる。状態判定部112は、
図3のステップS104における処理の結果を取得してもよい。目標ピッチ角θyTが小さいと判定された場合には(S304:YES)、制御装置110は、処理をステップS305に移行する。
【0103】
ステップS305では、制御装置110は、配分設定部113に駆動力配分比を設定させる。配分設定部13は、車両90のピッチ角θyを目標ピッチ角θyTに追従させるように、駆動力配分比を設定する。ここでは、配分設定部113は、駆動力配分比が前輪偏重となるように駆動力配分比を設定する。前輪偏重とは、基本駆動力比率と比較して前輪駆動力DFfの比率を大きくして後輪駆動力DFrの比率を小さくすることである。一方で、後輪偏重とは、基本駆動力比率と比較して後輪駆動力DFrの比率を大きくして前輪駆動力DFfの比率を小さくすることである。
【0104】
配分設定部113が駆動力配分比を設定する構成の一例を説明する。配分設定部113には、制動中における目標ピッチ角θyTと駆動力配分比との関係を示す演算マップが記憶されている。配分設定部113は、当該演算マップに基づいて駆動力配分比を算出する。当該演算マップでは、入力される目標ピッチ角θyTが大きいほど、より後輪偏重となる駆動力配分比が出力される。当該演算マップでは、入力される目標ピッチ角θyTが「0」に近いほど、より前輪偏重となる駆動力配分比が出力される。
【0105】
ステップS305の処理によって駆動力配分比が前輪偏重に設定されると、制御装置110は、本処理ルーチンを一旦終了する。駆動力配分比が前輪偏重にされた結果として、当該駆動力配分比に従って駆動装置が制御されると、前輪駆動力DFfの比率が大きくされる。たとえば、前輪駆動力DFfが増大され、後輪駆動力DFrが減少される。
【0106】
一方、ステップS304の処理において、目標ピッチ角θyTが小さいと判定されない場合には(S304:NO)、制御装置110は、処理をステップS306に移行する。
ステップS306では、制御装置110は、目標ピッチ角θyTが大きいか否かを状態判定部112に判定させる。状態判定部112は、
図3のステップS106における処理と共通の処理によって、目標ピッチ角θyTが大きいか否かを判定することができる。状態判定部112は、
図3のステップS106における処理の結果を取得してもよい。目標ピッチ角θyTが大きいと判定された場合には(S306:YES)、制御装置110は、処理をステップS307に移行する。
【0107】
ステップS307では、制御装置110は、配分設定部113に駆動力配分比を設定させる。配分設定部113は、駆動力配分比が後輪偏重となるように駆動力配分比を設定する。たとえば配分設定部113は、ステップS305の処理において説明した演算マップに基づいて駆動力配分比を算出することができる。
【0108】
ステップS307の処理によって駆動力配分比が後輪偏重に設定されると、制御装置110は、本処理ルーチンを一旦終了する。駆動力配分比が後輪偏重にされた結果として、当該駆動力配分比に従って駆動装置が制御されると、後輪駆動力DFrの比率が大きくされる。たとえば、後輪駆動力DFrが増大され、前輪駆動力DFfが減少される。
【0109】
一方、ステップS306の処理において、目標ピッチ角θyTが大きいと判定されない場合には(S306:NO)、制御装置110は、処理をステップS308に移行する。
ステップS308では、制御装置110は、配分設定部113に駆動力配分比を設定させる。配分設定部113は、駆動力配分比が基本駆動力比率となるように駆動力配分比を設定する。この結果として、駆動装置が制御されると、基本駆動力比率に従って前輪駆動力DFfおよび後輪駆動力DFrが伝達される。制御装置110は、駆動力配分比を基本駆動力比率に設定させると、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0110】
また、ステップS301の処理において姿勢制御を許可しない場合にも(S301:NO)、制御装置110は、処理をステップS308に移行する。制御装置110は、ステップS308の処理を実行して、その後、本処理ルーチンを終了する。
【0111】
一方で、ステップS302の処理において、制御装置110は、駆動力配分比が偏重されている場合、すなわち駆動力配分比が基本駆動力比率とは異なる場合には、ステップS303に処理を移行する。ステップS303では、制御装置110は、駆動配分調整処理を開始する。駆動配分調整処理を開始すると、制御装置110は、本処理ルーチンを一旦終了する。続いて、
図7を参照して、駆動配分調整処理について説明する。
【0112】
図7は、制御装置110が実行する駆動配分調整処理の流れを示す。本処理ルーチンは、
図6におけるステップS303の処理によって実行が開始される。本処理ルーチンが開始されると、まずステップS401では、制御装置110は、目標ピッチ角θyTが小さい状態から目標ピッチ角θyTが大きい状態に移行したか否かを状態判定部112に判定させる。状態判定部112は、
図4のステップS201における処理と共通の処理によって、目標ピッチ角θyTが小さい状態から目標ピッチ角θyTが大きい状態に移行したか否かを判定することができる。状態判定部112は、
図4のステップS201における処理の結果を取得してもよい。目標ピッチ角θyTが大きい状態に移行している場合には(S401:YES)、制御装置110は、処理をステップS402に移行する。
【0113】
ステップS402では、制御装置110は、配分設定部113に駆動力配分比を設定させる。ステップS402の処理においては、目標ピッチ角θyTが大きいことによって、配分設定部113は、目標ピッチ角θyTに応じて駆動力配分比が後輪偏重となるように駆動力配分比を設定する。さらに、制御装置110は、配分設定部113に駆動力配分比の変化を制限させる。すなわち、配分設定部113は、駆動力配分比を前輪偏重から後輪偏重に変化させ、その際に駆動力配分比の変化を制限する。
【0114】
駆動力配分比の変化を制限する一例では、配分設定部113は、駆動力配分比の変化量を制限する。配分設定部113は、目標ピッチ角θyTに応じた駆動力配分比に、現在の駆動力配分比を追従させるように、駆動力配分比の目標値を設定する。さらに、配分設定部113は、駆動力配分比の目標値を設定する際には、駆動力配分比を単位時間当りに変化させる変化量が第2制限量以下となるようにする。駆動力配分比を単位時間当りに変化させる変化量が大きいと、前輪駆動力DFfおよび後輪駆動力DFrが調整されることによる車両190のピッチ角速度が大きくなることがある。これによって、車両190の乗員に不快感を与えるおそれがある。第2制限量は、駆動力配分比の単位時間当りにおける変化量が第2制限量以下であれば、車両190の乗員が不快に感じにくい制限量として予め実験等によって算出された値である。このようにして、配分設定部113は、駆動力配分比を前輪偏重から後輪偏重へ徐々に変化させることができる。
【0115】
ステップS402の処理において駆動力配分比が徐々に変化される結果として、後輪駆動力DFrの比率が徐々に大きくされる。たとえば、後輪駆動力DFrが徐々に増大され、前輪駆動力DFfが徐々に減少される。制御装置110は、配分設定部113に駆動力配分比を設定させると、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0116】
一方、ステップS401の処理において、目標ピッチ角θyTが大きい状態に移行していない場合には(S401:NO)、制御装置110は、処理をステップS403に移行する。
【0117】
ステップS403では、制御装置110は、目標ピッチ角θyTが大きい状態から目標ピッチ角θyTが小さい状態に移行したか否かを状態判定部112に判定させる。状態判定部112は、
図4のステップS203における処理と共通の処理によって、目標ピッチ角θyTが大きい状態から目標ピッチ角θyTが小さい状態に移行したか否かを判定することができる。状態判定部112は、
図4のステップS203における処理の結果を取得してもよい。目標ピッチ角θyTが小さい状態に移行している場合には(S403:YES)、制御装置110は、処理をステップS404に移行する。
【0118】
ステップS404では、制御装置110は、配分設定部113に制動力配分比を設定させる。ステップS404の処理においては、目標ピッチ角θyTが小さいことによって、配分設定部113は、目標ピッチ角θyTに応じて駆動力配分比が前輪偏重となるように駆動力配分比を設定する。さらに、制御装置110は、配分設定部113に駆動力配分比の変化を制限させる。すなわち、配分設定部113は、駆動力配分比を後輪偏重から前輪偏重に変化させ、その際に駆動力配分比の変化を制限する。たとえば配分設定部113は、ステップS402の処理と同様の処理によって、駆動力配分比の変化量を制限する。こうして配分設定部113は、駆動力配分比を後輪偏重から前輪偏重へ徐々に変化させることができる。
【0119】
ステップS404の処理において駆動力配分比が徐々に変化される結果として、前輪駆動力DFfの比率が徐々に大きくされる。たとえば、前輪駆動力DFfが徐々に増大され、後輪駆動力DFrが徐々に減少される。配分設定部113に駆動力配分比を設定させると、制御装置110は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0120】
一方、ステップS403の処理において、目標ピッチ角θyTが小さい状態に移行していない場合には(S403:NO)、制御装置110は、処理をステップS405に移行する。
【0121】
ステップS405では、制御装置110は、目標ピッチ角θyTに応じて配分設定部113に駆動力配分比を設定させる。配分設定部113は、ステップS305の処理において説明した演算マップを用いて、駆動力配分比を算出することができる。配分設定部113に駆動力配分比を設定させると、制御装置110は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0122】
制御装置110は、制動が終了した場合には、駆動力配分比を基本駆動力比率に設定させてもよい。制御装置110は、制動が終了した場合には、前回目標ピッチ角θyT0を消去させてもよい。
【0123】
本実施形態の作用および効果について説明する。
制御装置110では、車両190の制動時に制動力配分比を調整することができる。制御装置110によれば、第1実施形態における制御装置10が奏する効果と同様の効果を奏する。
【0124】
さらに、制御装置110では、目標ピッチ角θyTが小さい場合には、駆動力配分比が前輪偏重に設定される(S305)。すなわち、前輪駆動力DFfの比率が大きくされる。車両190では、前輪駆動力DFfと後輪駆動力DFrとが互いに同じ大きさであるときには、前輪アンチリフト力FdALよりもアンチスクォート力FdASの方が大きくなるようにサスペンションジオメトリが設定されている。このため、前輪駆動力DFfの比率を大きくすると、前輪アンチリフト力FdALが大きくなる量を抑えつつ、アンチスクォート力FdASを小さくすることができる。これによって、制動時に駆動力を車輪に伝達させていても、車両90の姿勢を水平に近い姿勢にしやすくなり、車両90の乗り心地を向上させることができる。
【0125】
また、制御装置110では、目標ピッチ角θyTが大きい場合には、駆動力配分比が後輪偏重に設定される(S307)。すなわち、後輪駆動力DFrの比率が大きくされる。車両190では、前輪駆動力DFfと後輪駆動力DFrとが互いに同じ大きさであるときには、前輪アンチリフト力FdALよりもアンチスクォート力FdASの方が大きくなるようにサスペンションジオメトリが設定されている。このため、後輪駆動力DFrの比率を大きくすると、前輪アンチリフト力FdALが小さくなる量を抑えつつ、より大きなアンチスクォート力FdASを車両90に作用させることができる。これによって、制動時に駆動力を車輪に伝達させる際に、車体前部91Fを沈み込ませやすくなり、車両90を前傾姿勢にしやすくなる。
【0126】
さらに制御装置110では、駆動力配分比が基本駆動力比率とは異なる場合には、駆動力配分比の変化が制限される(S402またはS404)。このため、たとえば、車両190の制動時に車両190が直進から旋回に移行した場合に、駆動力配分比を徐々に後輪偏重に調整することができる。これによって、ピッチ角θyの急な変化を抑制しつつ、車両190を徐々に前傾姿勢にすることができる。また、たとえば、車両190の制動時に車両190が旋回から直進に移行した場合に、駆動力配分比を徐々に前輪偏重に調整することができる。これによって、ピッチ角θyの急な変化を抑制しつつ、車両190を徐々に水平にすることができる。制御装置110によれば、制動時に駆動力を車輪に伝達させていても、車両190の姿勢を制御する際にピッチ角θyの急な変化を抑制することができる。このため、制御装置110によれば、車両の乗員に与える不快感を軽減できる。
【0127】
〈対応関係〉
上記第1実施形態および第2実施形態では、目標ピッチ角θyTが目標姿勢値に対応する。第1判定値よりも小さい領域が第1領域に対応する。第2判定値以上である領域が第2領域に対応する。目標ピッチ角θyTが小さい状態から目標ピッチ角θyTが大きい状態に移行した場合が、「目標姿勢値が変動した場合」に対応する。「目標姿勢値が変動した場合」は、目標ピッチ角θyTが大きい状態から目標ピッチ角θyTが小さい状態に移行した場合にも対応する。
【0128】
〈その他の実施形態〉
第1実施形態または第2実施形態は、以下のように変更して実施することができる。第1実施形態、第2実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0129】
・上記第1実施形態および第2実施形態では、
図4のステップS202における処理によって、制動力配分比を徐々に前輪偏重に変更した。これに替えて、ステップS202の処理では、基本制動力比率よりも後輪偏重である範囲内で、ステップS105で設定した制動力配分比よりも前輪制動力BFfの比率を大きくしてもよい。すなわち、基本制動力比率と比較して後輪偏重である制動力配分比を維持しつつも、ステップS105で設定した制動力配分比に比して前輪偏重としてもよい。この場合でも、制動力配分比を単位時間当りに変化させる変化量を第1制限量以下にすることが好ましい。
【0130】
・
図4のステップS204における処理では、基本制動力比率よりも前輪偏重である範囲内で、ステップS107で設定した制動力配分比よりも後輪制動力BFrの比率を大きくしてもよい。すなわち、基本制動力比率と比較して前輪偏重である制動力配分比を維持しつつも、ステップS107で設定した制動力配分比に比して後輪偏重としてもよい。この場合でも、制動力配分比を単位時間当りに変化させる変化量を第1制限量以下にすることが好ましい。
【0131】
・第1制限量を「0」に設定してもよい。この場合には、制動力配分比が基本制動力比率とは異なる際に、目標ピッチ角θyTが変動した場合には、制動力配分比を変化させないようにすることになる。すなわち、制動中に制動力配分比が基本制動力比率とは異なるように調整されて以降は、制動力配分比が維持される。
【0132】
たとえば、車両の制動装置として液圧制動装置が採用されている場合には、制動中に制動力配分比を変更すると、制動アクチュエータの作動に伴う振動が制動操作部材に伝わることがある。制動操作部材が振動すると車両の運転者に違和感を与えるおそれがある。上記変更例によれば、こうした制動操作部材の振動を抑制できる。
【0133】
なお、ブレーキ・バイ・ワイヤ方式の液圧発生装置が採用されている場合には、制動アクチュエータの作動に伴う振動が制動操作部材に伝わらない。この場合には、第1制限量を「0」にしなくてもよい。
【0134】
また、仮に、車両が自動運転制御されており、制動時に車両が直進している場合を考える。この場合には、制動中に車両が直進から旋回に移行したとしても、旋回中に操作性を向上させるよりも乗り心地を向上させることを優先した方が好ましいと考えられる。ステップS202の処理において第1制限量を「0」に設定すると、旋回中の乗り心地を向上させることができる。
【0135】
・上記第2実施形態では、
図7のステップS402における処理によって、駆動力配分比を徐々に後輪偏重に変更した。これに替えて、ステップS402の処理では、基本駆動力比率よりも前輪偏重である範囲内で、ステップS305で設定した駆動力配分比よりも後輪駆動力DFrの比率を大きくしてもよい。すなわち、基本駆動力比率と比較して前輪偏重である駆動力配分比を維持しつつも、ステップS305で設定した駆動力配分比に比して後輪偏重としてもよい。この場合でも、駆動力配分比を単位時間当りに変化させる変化量を第2制限量以下にすることが好ましい。
【0136】
・
図7のステップS404における処理では、基本駆動力比率よりも後輪偏重である範囲内で、ステップS307で設定した駆動力配分比よりも前輪駆動力DFfの比率を大きくしてもよい。すなわち、基本駆動力比率と比較して後輪偏重である駆動力配分比を維持しつつも、ステップS307で設定した駆動力配分比に比して前輪偏重としてもよい。この場合でも、駆動力配分比を単位時間当りに変化させる変化量を第2制限量以下にすることが好ましい。
【0137】
・第2制限量を「0」に設定してもよい。この場合には、駆動力配分比が基本駆動力比率とは異なる際に、目標ピッチ角θyTが変動した場合には、駆動力配分比を変化させないようにすることになる。すなわち、制動中に駆動力配分比が基本駆動力比率とは異なるように調整されて以降は、駆動力配分比が維持される。
【0138】
・車両が目標とする姿勢を示す目標姿勢値は、目標ピッチ角θyTに限らない。たとえば、ロール角の目標値を目標姿勢値としてもよい。ロール角の目標値の大小を判定することによって、車両が直進しているか旋回しているかを判別することができる。
【0139】
・上記第1実施形態および第2実施形態では、制動装置80として液圧制動装置を例示した。制動装置80は、液圧制動装置に限らず摩擦制動装置であればよい。制動装置80には、車輪に回生制動力を付与する回生制動装置を採用してもよい。この場合には、基本制動力比率は、実験等によって予め算出された値にされる。回生制動装置は、制動力配分比の調整が行われない場合には、基本制動力比率に従って作動される。たとえば、車両の制動時に所望のピッチング運動を実現できる値が基本制動力比率に設定される。回生制動装置を採用する場合における基本制動力比率は、摩擦制動装置を採用する場合における基本制動力比率とは異なる比率に設定されていてもよい。回生制動装置を採用する場合における基本制動力比率は、摩擦制動装置を採用する場合における基本制動力比率と同じ比率に設定されていてもよい。
【0140】
・制動機構84としてディスクブレーキを例示した。制動機構としては、ディスクブレーキに限られるものではない。たとえば、回転体としてのドラムと摩擦材としてのシューとを備えるドラムブレーキを採用することもできる。
【0141】
・制御装置10または制御装置110は、車両90,190のサスペンションジオメトリとは異なるサスペンションジオメトリが設定されている車両を制御対象とすることもできる。制御装置10または制御装置110は、前輪制動力BFfと後輪制動力BFrとが互いに同じ大きさであるときに、後輪アンチリフト力FbALよりもアンチダイブ力FbADの方が大きくなるようにサスペンションジオメトリが設定されている車両を制御対象としてもよい。以下、当該車両を制御対象とする場合の例を説明する。
【0142】
この場合には、制御装置10または制御装置110は、
図3のステップS105では、ステップS107の処理として説明した内容の処理を替わりに実行する。すなわち、目標ピッチ角θyTが小さい場合に制動力配分比を前輪偏重に設定する。これによって、目標ピッチ角θyTが小さい場合に、より大きなアンチダイブ力FbADを車両に作用させることによってピッチングモーメントMを抑制することができる。すなわち、車両を水平姿勢にしやすくなる。
【0143】
また、制御装置10または制御装置110は、
図3のステップS107では、ステップS105の処理として説明した内容の処理を替わりに実行する。すなわち、目標ピッチ角θyTが大きい場合に制動力配分比を後輪偏重に設定する。これによって、目標ピッチ角θyTが大きい場合に、後輪アンチリフト力FbALが大きくなる量を抑えつつ、アンチダイブ力FbADを小さくすることができる。これによって、ピッチングモーメントMを抑制する方向に働く力を低減することができる。すなわち、車両前部を沈み込ませ、車両を前傾姿勢にすることができる。
【0144】
さらに、制御装置10または制御装置110は、
図4のステップS202では、ステップS204の処理として説明した内容の処理を替わりに実行する。また、制御装置10または制御装置110は、
図4のステップS204では、ステップS202の処理として説明した内容の処理を替わりに実行する。これによって、車両の姿勢を制御する際に、制動力配分比の変化を制限することができる。すなわち、ピッチ角θyの急な変化を抑制することができる。
【0145】
以上のように、車両90,190のサスペンションジオメトリとは異なるサスペンションジオメトリが設定されている車両を制御対象とする場合でも、上記第1実施形態および第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0146】
・制御装置110は、前輪駆動力DFfと後輪駆動力DFrとが互いに同じ大きさであるときに、アンチスクォート力FdASよりも前輪アンチリフト力FdALの方が大きくなるようにサスペンションジオメトリが設定されている車両を制御対象とすることもできる。以下、当該車両を制御対象とする場合の例を説明する。
【0147】
この場合には、制御装置110は、
図6のステップS305では、ステップS307の処理として説明した内容の処理を替わりに実行する。すなわち、目標ピッチ角θyTが小さい場合に駆動力配分比を後輪偏重に設定する。これによって、目標ピッチ角θyTが小さい場合に、アンチスクォート力FdASが大きくなる量を抑えつつ、前輪アンチリフト力FdALを小さくすることができる。これによって、車両を水平姿勢にしやすくなる。
【0148】
また、制御装置110は、
図6のステップS307では、ステップS305の処理として説明した内容の処理を替わりに実行する。すなわち、目標ピッチ角θyTが大きい場合に駆動力配分比を前輪偏重に設定する。これによって、目標ピッチ角θyTが大きい場合に、アンチスクォート力FdASが小さくなる量を抑えつつ、より大きな前輪アンチリフト力FdALを車両に作用させることができる。すなわち、車両前部を沈み込ませ、車両を前傾姿勢にすることができる。
【0149】
さらに、制御装置110は、
図7のステップS402では、ステップS404の処理として説明した内容の処理を替わりに実行する。また、制御装置110は、
図4のステップS404では、ステップS402の処理として説明した内容の処理を替わりに実行する。これによって、車両の姿勢を制御する際に、駆動力配分比の変化を制限することができる。すなわち、ピッチ角θyの急な変化を抑制することができる。
【0150】
以上のように、車両190のサスペンションジオメトリとは異なるサスペンションジオメトリが設定されている車両を制御対象とする場合でも、上記第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0151】
・上記第2実施形態では、第1モータジェネレータ171Fおよび第2モータジェネレータ171Rを搭載した四輪駆動の車両190を例示した。制御装置110は、動力源として内燃機関を搭載した四輪駆動の車両を制御対象とすることもできる。
【0152】
動力源として内燃機関を搭載した四輪駆動の車両の一例は、フロントデファレンシャルギアおよびリアデファレンシャルギアを備える。さらに当該車両は、フロントデファレンシャルギアとリアデファレンシャルギアとを連結するプロペラシャフトと、電子制御カップリング装置と、を備える。制御装置110は、電子制御カップリング装置を制御することによって、前輪駆動力DFfおよび後輪駆動力DFrの調整を行うことができる。
【0153】
・駆動装置71を制御する機能は、制御装置10とは異なる制御装置が備えていてもよい。駆動装置を構成する第1モータジェネレータ171Fおよび第2モータジェネレータ171Rを制御する機能は、制御装置110とは異なる制御装置が備えていてもよい。
【0154】
・配分設定部13が制動力配分比および駆動力配分比を設定する構成を例示した。制御装置10は、制動力配分比を設定する制動配分設定部と、駆動力配分比を設定する駆動配分設定部と、を備えていてもよい。駆動配分設定部は、制御装置10とは異なる制御装置が備えていてもよい。同様に、制御装置110は、制動力配分比を設定する制動配分設定部と、駆動力配分比を設定する駆動配分設定部と、を備えていてもよい。駆動配分設定部は、制御装置110とは異なる制御装置が備えていてもよい。
【0155】
・制御装置10および制御装置110は、以下(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)コンピュータプログラムに従って各種処理を実行する一つ以上のプロセッサを備える。プロセッサは、CPU並びに、RAMおよびROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。(b)各種処理を実行する一つ以上の専用のハードウェア回路を備える。専用のハードウェア回路は、たとえば、特定用途向け集積回路すなわちASIC(Application Specific Integrated Circuit)、または、FPGA(Field Programmable Gate Array)等である。(c)各種処理の一部をコンピュータプログラムに従って実行するプロセッサと、各種処理のうち残りの処理を実行する専用のハードウェア回路と、を備える。
【0156】
上記実施形態および変更例から把握できる技術的思想について記載する。
1.車両を制動する際に車輪に付与する制動力を前輪に付与する制動力と後輪に付与する制動力とに配分する比率を制動力配分比として、該制動力配分比を調整することができる車両を制御する車両の制御方法であって、
前記車両が目標とする姿勢を示す値を目標姿勢値として算出する算出処理と、
前記車両の姿勢を前記目標姿勢値が示す姿勢に追従させるように、前記車両の制動時に、前記制動力配分比を調整する制御が介入しない場合における当該制動力配分比の値である基本制動力比率から前記制動力配分比を変化させる配分設定処理と、を車両の制御装置に実行させるものであり、
前記配分設定処理は、前記制動力配分比が前記基本制動力比率とは異なる際に前記目標姿勢値が変動した場合には、前記制動力配分比を単位時間当りに変化させる変化量を制限量以下にする制限処理を含む車両の制御方法。
【0157】
2.車両が直進しているか否かを判定する状態判定部と、
前記車両の制動時に当該車両が直進している場合には、車両の前傾を抑制するように制動力配分比を設定する配分設定部と、を備える車両の制御装置。
【符号の説明】
【0158】
10…制御装置
11…走行状態検出部
12…状態判定部
13…配分設定部
21…姿勢検出センサ
22…ブレーキセンサ
23…アクセルセンサ
61…制動操作部材
71…駆動装置
73F…前輪車軸
73R…後輪車軸
80…制動装置
84…制動機構
90…車両
91…車体
91F…車体前部
91R…車体後部
110…制御装置
111…走行状態検出部
112…状態判定部
113…配分設定部
171F…第1モータジェネレータ
171R…第2モータジェネレータ
190…車両