(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085326
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】免震装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/04 20060101AFI20220601BHJP
F16F 1/40 20060101ALI20220601BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
F16F15/04 P
F16F1/40
E04H9/02 331A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196948
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桝中 義智
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB13
2E139CA02
2E139CC02
2E139CC11
3J048AA01
3J048AB08
3J048AB13
3J048BA08
3J048DA01
3J048EA38
3J059AE02
3J059BA43
3J059BC06
3J059BD09
3J059GA42
(57)【要約】
【課題】積層体の高さを同じ位置で計測することができる免震装置を提供する。
【解決手段】免震装置は、積層体と、前記積層体の積層方向の両端面に固定された第1端板及び第2端板と、を備え、前記第1端板は、前記積層体に固定される第1内面を備え、前記第1内面は、前記積層体の高さを計測する位置の目印となる目印部を備え、前記目印部は、凹凸部を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体と、前記積層体の積層方向の両端面に固定された第1端板及び第2端板と、を備え、
前記第1端板は、前記積層体に固定される第1内面を備え、
前記第1内面は、前記積層体の高さを計測する位置の目印となる目印部を備え、
前記目印部は、凹凸部を備える、免震装置。
【請求項2】
前記目印部は、前記積層体の高さを計測する位置となる計測面を備え、
前記凹凸部は、前記計測面の少なくとも一部を囲って区画するように、形成される、請求項1に記載の免震装置。
【請求項3】
前記凹凸部は、凹部のみによって構成され、
前記計測面は、平面状に形成され、
前記第1内面は、前記凹部に隣接される隣接面を備え、
前記隣接面は、平面状に形成され、前記計測面と面一である、請求項2に記載の免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
免震装置の設置前後や点検時などにおいて、免震装置の積層体の高さを作業者が計測している(例えば、特許文献1)。そして、免震装置の工場出荷時や点検時などにおいて、積層体の高さを計測する位置の目安として、油性インクなどでマークが付されていた。
【0003】
しかしながら、インクや免震装置に塗布された塗料又はメッキの経年劣化などによりマークが消滅したり、作業者が工場出荷時や点検時にマークを付け忘れたりすることがあった。これにより、積層体の高さを計測する位置が不明確となり、作業者が免震装置の設置前後や点検時などに積層体の高さを計測する際、それぞれの計測時における計測位置にばらつきがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、積層体の高さを同じ位置で計測することができる免震装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の免震装置は、積層体と、前記積層体の積層方向の両端面に固定された第1端板及び第2端板と、を備え、前記第1端板は、前記積層体に固定される第1内面と、前記第1内面に形成され、前記積層体の高さを計測するための目印部と、を備え、前記目印部は、凹凸部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】同実施形態に係る免震装置において、積層体の高さを計測している状態を示す側面図
【
図5】同実施形態に係る免震装置において、補助台を用いて積層体の高さを計測している状態を示す部分拡大図
【
図7】さらに他の実施形態に係る目印部の部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、免震装置における一実施形態について、
図1~
図5を参照しながら説明する。なお、各図(
図6~
図8も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0009】
図1~
図3に示すように、本実施形態に係る免震装置1は、基礎などの第1構造体5(下構造体ともいう)に固定される第1端板2(下端板ともいう)と、建物などの第2構造体6(上構造体ともいう)に固定される第2端板3(上端板ともいう)と、第1端板2及び第2端板3の間に配置される積層体4と、を備える。
【0010】
本実施形態においては、第1端板2は、積層体4の下方に配置され、第2端板3は、積層体4の上方に配置されている。なお、例えば、第1端板2は、積層体4の上方に配置され、第2端板3は、積層体4の下方に配置されてもよい。
【0011】
第1端板2は、積層体4に固定される第1内面21を備え、第2端板3は、積層体4に固定される第2内面31を備える。そして、第1内面21は、積層体4の下端面に固定され、第2内面31は、積層体4の上端面に固定される。本実施形態において、第1内面21及び第2内面31は、平面であるが、例えば、第1内面21及び第2内面31の一部に曲面や段差などを含んでいてもよい。
【0012】
第1端板2は、第1構造体5にボルトなどで固定するための第1貫通孔23を複数備え、第2端板3は、第2構造体6にボルトなどで固定するための第2貫通孔(不図示)を複数備える。そして、第1端板2及び第2端板3の積層体4との接触部分を除く面は、塗料又はメッキが塗布されている。
【0013】
第1端板2及び第2端板3は、円板状に形成されている。そして、第1端板2及び第2端板3は、剛性の高い材質(例えば、金属)で形成されている。ここで、円板状とは、完全な円形状の板でなくてもよく、略円形状の板も含む。積層体4は、ゴムによって上下方向に積層された円柱状に形成されている。そして、第1端板2及び第2端板3の外径は、積層体4の外径よりも大きい。なお、第1端板2及び第2端板3は、例えば、正方形状に形成されてもよい。また、例えば、積層体4は、金属板とゴムとを交互に積層されたものであってもよい。
【0014】
第1内面21は、後述する計測器7(
図4参照)で積層体4の高さを計測する位置の目印となる目印部22を備える。そして、目印部22は、第1内面21に形成された凹凸部221を備える。本実施形態において、目印部22は、円形状の第1内面21の中心と同心である第1円周C1上に複数(本実施形態においては4箇所)設けられ、第1貫通孔23の間に均等に配置されている。
【0015】
目印部22が第1内面21に形成された凹凸部221を備えることにより、凹凸部221が恒久的に存在し、経年劣化などによる目印部22の消滅を防止することができる。これにより、作業者は、目印部22によって積層体4の高さを同じ位置で計測することができる。
【0016】
目印部22が設けられている第1円周C1と積層体4の外周面との距離D1は、第1円周C1と第1端板2の外周面との距離D2よりも小さいことが好ましい。即ち、目印部22は、第1端板2の外周面よりも積層体4の外周面に近い位置に配置されていることが好ましい。第1構造体5又は第2構造体6の圧力による第1端板2又は第2端板3の変形が積層体4から離れた箇所で生じていることがあり、積層体4の高さ(第1端板2と第2端板3との間の距離)を正確に計測できないためである。
【0017】
なお、例えば、作業環境などにより積層体4の外周面に近い位置で積層体4の高さを計測することが困難であると想定される場合、第1円周C1と積層体4の外周面との距離D1は、第1円周C1と第1端板2の外周面との距離D2よりも大きくてもよい。即ち、目印部22は、積層体4の外周面よりも第1端板2の外周面に近い位置に配置されていてもよい。
【0018】
目印部22は、積層体4の高さを計測する位置となる計測面222を備える。そして、凹凸部221は、計測面222の少なくとも一部を囲って区画するように形成される。凹凸部221によって計測面222の少なくとも一部を囲って区画することにより、積層体4の高さの計測位置である計測面222を目立たせることができる。これにより、作業者は、計測面222を容易に見つけることができ、同じ位置で積層体4の高さを計測することができる。
【0019】
凹凸部221は、屈曲、湾曲等により曲がる曲部221cを備えており、計測面222は、凹凸部221によって区画され、曲部221cに対して内側に配置されている。そして、凹凸部221は、例えば、本実施形態のように、四角環状に形成され、計測面22は、凹凸部221によって、正方形状に区画されていてもよい。
【0020】
なお、凹凸部221は、例えば、三角環状、円環状のような無端環状に形成され、計測面222の周囲の全部を囲っていてもよく、また、例えば、略U字状や断続的な環状に形成され、計測面222の周囲の一部を囲っていてもよい。
【0021】
第1内面21は、凹凸部221に隣接される隣接面211を備えており、隣接面211は、平面状に形成されている。そして、計測面222は、平面状に形成されており、隣接面211と面一である。
【0022】
図4に示すように、積層体4の高さを計測するための計測器7は、例えば、計測面222と接触する半球状の下側端部71と、第2内面31と接触する半球状の上側端部72と、上側端部72の位置を調整する調整部73と、計測した計測値を表示する表示部74と、を備える。そして、下側端部71は、計測面222と接触する接触面76を備える。
【0023】
本実施形態において、計測器7は、接触面76が計測面222よりも小さいインサイドマイクロメータであるが、例えば、接触面76が計測面222よりも大きいデジタルノギス、デジタル巻き尺やアダプター付きハイトゲージなどであってもよい。そして、計測器7による積層体4の高さの計測単位は、ミリメートルであり、作業者は、計測値の小数第1位まで確認する。
【0024】
計測器7は、
図5に示すように、計測器7の長手方向が計測面222と垂直となる補助台75を備えていてもよい。補助台75を用いることにより計測器7の長手方向が計測面222と垂直になるので、作業者は、積層体4の高さの計測が容易となる。また、補助台75は、計測面222と接触する接触面76を備える。本実施形態において、補助台75が有する接触面76は、計測面222よりも大きい。
【0025】
図2~
図4に示すように、本実施形態において、凹凸部221は、凹部221aのみによって構成されている。斯かる構成によれば、接触面76が計測面222よりも大きい場合は、接触面76が計測面222と隣接面211とに跨って接触して、積層体4の高さを計測できる(
図5参照)。そして、接触面76が計測面222よりも小さい場合は、接触面76が計測面222に接触して、積層体4の高さを計測できる。
【0026】
第1内面21の径方向における計測面222の幅寸法W1及び第1内面21の周方向における計測面222の幅寸法W2は、積層体4の高さを正確に計測するために接触面76の幅寸法よりも大きいことが好ましい。そして、凹部221a(溝)の幅寸法W3は、接触面76が凹部221aに嵌ることを防止するために接触面76よりも小さいことが好ましい。凹部221aの深さ寸法H1は、第1端板2の強度確保のために、例えば、凹部221aの幅寸法W3よりも小さいことが好ましい。
【0027】
次に積層体4の高さの計測方法について
図4を用いて説明する。
【0028】
計測器7の長手方向が上下方向と一致するように下側端部71の接触面76を計測面222の中央に接触させる(補助台75を用いても可)。そして、調整部73で上側端部72の位置を調整して、上側端部72を第2内面31に接触させる。これにより、作業者は、表示部74に表示された計測値を確認することにより、積層体4の高さを計測することができる。
【0029】
本実施形態においては、4箇所に配置された計測面222での積層体4の高さを上記の方法でそれぞれ計測する。積層体4の高さは、従来から知られている手法(計算式)で計測値を補正することにより、温度による積層体4の熱伸縮を考慮することが好ましい。
【0030】
そして、上記で計測した積層体4の高さと基準となる積層体4の高さとの差をそれぞれの計測面222で算出することにより、免震装置1の設置時からの積層体4の高さ変位を確認することができる。ここで、基準となる積層体4の高さは、例えば、免震装置1の設置時又は免震装置1の工場出荷時などに計測した積層体4の高さである。
【0031】
以上のように、本実施形態のように、免震装置1は、積層体4と、積層体4の積層方向(上下方向)の両端面に固定された第1端板2及び第2端板3と、を備え、第1端板2は、積層体4に固定される第1内面21を備え、第1内面21は、積層体4の高さを計測する位置の目印となる目印部22を備え、目印部22は、凹凸部221を備える、という構成が好ましい。
【0032】
目印部22が第1内面21に形成された凹凸部221を備えることにより、凹凸部221が恒久的に存在し、経年劣化などによる目印部22の消滅を防止することができる。これにより、作業者は、目印部22によって積層体4の高さを同じ位置で計測することができる。
【0033】
また、本実施形態のように、免震装置1は、目印部22は、積層体4の高さを計測する位置となる計測面222を備え、凹凸部221は、計測面222の少なくとも一部を囲って区画するように、形成される、という構成が好ましい。
【0034】
凹凸部221によって計測面222の少なくとも一部を囲って区画することにより、積層体4の高さの計測位置である計測面222を目立たせることができる。これにより、作業者は、計測面222を容易に見つけることができ、同じ位置で積層体4の高さを計測することができる。
【0035】
また、本実施形態のように、免震装置1は、凹凸部221は、凹部221aのみによって構成され、計測面222は、平面状に形成され、第1内面21は、凹部221aに隣接される隣接面211を備え、隣接面211は、平面状に形成され、計測面222と面一である、という構成が好ましい。
【0036】
凹凸部221が凹部221aのみによって構成されていることにより、接触面76が計測面222よりも大きい場合は、接触面76が計測面222と隣接面211とに跨って接触して、積層体4の高さを計測できる。そして、接触面76が計測面222よりも小さい場合は、接触面76が計測面222に接触して、積層体4の高さを計測できる。
【0037】
なお、免震装置1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、免震装置1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0038】
(1)本実施形態に係る免震装置1において、第1内面21は、積層体4の高さを計測する位置の目印となる目印部22を備える、という構成である。しかしながら、免震装置1は、斯かる構成に限られない。例えば、免震装置1において、第1内面21及び第2内面31は、目印部22を備える、という構成であってもよい。
【0039】
(2)本実施形態に係る目印部22において、凹凸部221は、凹部221aのみによって構成されている、という構成である。しかしながら、目印部22は、斯かる構成に限られない。例えば、目印部22において、凹凸部221は、凹部221a及び凸部によって構成されている、という構成であってもよい。また、例えば、
図6に示すように、目印部22において、凹凸部221は、凸部221bのみによって構成されている、という構成であってもよい。
【0040】
(3)本実施形態に係る凹凸部221は、屈曲、湾曲等により曲がる曲部221cを備えており、計測面222は、凹凸部221によって区画され、曲部221cに対して内側に配置され、凹凸部221は、凹部221aのみによって構成されている、という構成である。しかしながら、凹凸部221は、斯かる構成に限られない。例えば、
図7及び
図8に示すように、凹凸部221は、円柱状の凸部221bのみによって構成され、凸部221bの先端に計測面222が配置されている、という構成であってもよい。
【0041】
斯かる構成においては、第1内面21の積層体4と接触する部分(
図1参照)が計測面222と面一であることが好ましい。これにより、作業者は、凹凸部221の高さを考慮せずに、計測器7で積層体4の高さを計測することができる。なお、例えば、凹凸部221は、円柱状の凹部221aのみによって構成され、凹部221aの底面に計測面222が配置されている、という構成であってもよい。
【0042】
また、例えば、凹凸部221は、矢印状、逆三角形状などの積層体4の高さを計測する位置が視覚的に分かる形状であってもよい。斯かる構成においては、隣接面211が計測面222となる。
【0043】
(4)例えば、目印部22においては、凹凸部221に発光塗料が塗布されていてもよい。発光塗料による凹凸部221の発光により、作業者は、免震装置1が設置されている暗い空間でも計測面222を容易に見つけることができる。
【符号の説明】
【0044】
1…免震装置、2…第1端板、21…第1内面、211…隣接面、22…目印部、221…凹凸部、221a…凹部、221b…凸部、221c…曲部、222…計測面、23…第1貫通孔、3…第2端板、31…第2内面、4…積層体、5…第1構造体、6…第2構造体、7…計測器、71…下側端部、72…上側端部、73…調整部、74…表示部、75…補助台、76…接触面、C1…第1円周