(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085368
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B65H 23/032 20060101AFI20220601BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220601BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20220601BHJP
B41J 15/16 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
B65H23/032
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J15/04
B41J15/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197006
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100143960
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 早百合
(72)【発明者】
【氏名】田中 貢
【テーマコード(参考)】
2C056
2C060
3F104
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA23
2C056EB12
2C056EB29
2C056EC12
2C056EC28
2C056EC34
2C056HA29
2C056HA47
2C060CB04
2C060CB41
3F104AA02
3F104CA00
3F104EA01
3F104EA16
3F104FA07
3F104FA11
(57)【要約】
【課題】印刷装置の大型化を回避しつつ、印刷媒体の斜行を従来よりも効率的に補正できる印刷装置を提供すること。
【解決手段】印刷装置は、保持部、印刷ヘッド、第一搬送部、バックテンション付与部、第一搬送駆動部、及び制御部を備える。バックテンション付与部は、印刷媒体を保持する保持部と第一搬送との間の印刷媒体にバックテンションを付与する。制御部は、第一搬送と、第二搬送とを順に複数回繰り返す補正処理を実行する(S3からS7)。制御部は、第一搬送において、第一搬送駆動部を制御して、バックテンション付与部により印刷媒体にバックテンションを付与した状態で印刷媒体Mを搬送方向に搬送する(S4)。制御部は、第二搬送において、バックテンション付与部により印刷媒体にバックテンションを付与せずに印刷媒体を戻し方向に搬送する(S6)。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の印刷媒体を保持する保持部と、
前記保持部から繰り出される前記印刷媒体に画像を印刷する印刷ヘッドと、
前記印刷媒体を前記保持部から前記印刷ヘッドに向かう搬送方向と、前記搬送方向とは反対の戻し方向とに搬送する第一搬送部と、
前記保持部と前記第一搬送部との間の前記印刷媒体にバックテンションを付与するバックテンション付与部と、
前記第一搬送部を駆動する第一搬送駆動部と、
前記印刷ヘッドと、前記第一搬送駆動部とを制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記第一搬送駆動部を制御して、前記バックテンション付与部により前記印刷媒体に前記バックテンションを付与した状態で前記印刷媒体を前記搬送方向に搬送する第一搬送と、前記バックテンション付与部により前記印刷媒体に前記バックテンションを付与せずに前記印刷媒体を前記戻し方向に搬送する第二搬送とを順に複数回繰り返す補正処理を実行することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記第一搬送部よりも前記戻し方向に設けられ、前記印刷媒体を前記戻し方向に搬送する第二搬送部と、
前記制御部の制御により、前記第二搬送部を駆動する第二搬送駆動部とを更に備え、
前記制御部は、前記第二搬送において、前記第一搬送駆動部と、前記第二搬送駆動部とを制御して、前記第一搬送部と前記第二搬送部とにより、前記印刷媒体を前記戻し方向に搬送し、前記印刷媒体を前記保持部に搬送することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記印刷媒体が巻回されたロールを保持し、
前記第二搬送部は、前記保持部に保持された前記ロールを回動して、前記印刷媒体を前記戻し方向に搬送して、前記ロールに巻き取ることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第二搬送時の前記第二搬送部による前記ロールの回転速度を、前記ロールに巻回された前記印刷媒体の量に応じて調整することを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第一搬送駆動部と、前記第二搬送駆動部とを制御して、前記第一搬送時の前記第一搬送部と前記第二搬送部との間の前記印刷媒体の第一長さは、前記第二搬送時の前記第一搬送部と前記第二搬送部との間の前記印刷媒体の第二長さよりも短くすることを特徴とする請求項2から4の何れかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記補正処理を行う指令を取得したことに応じて、前記第一搬送部による前記印刷媒体の搬送を停止した状態で、前記第二搬送駆動部を制御して、第一条件を満たすまで前記第二搬送部による前記印刷媒体の前記戻し方向への搬送する第一調整を行い、
前記第一調整が終了したことに応じて、前記第一搬送駆動部と前記第二搬送駆動部とを制御して、前記第一搬送部と前記第二搬送部とにより前記印刷媒体に所定範囲の前記バックテンションを付与した状態で前記印刷媒体を前記搬送方向へ搬送して前記第一搬送を行い、
前記第一搬送後、前記第二搬送部による前記印刷媒体の前記搬送方向への搬送を停止した状態で、前記第一搬送駆動部を制御して、第二条件を満たすまで前記第一搬送部による前記印刷媒体の前記戻し方向への搬送する第二調整を行い、
前記第二調整が終了したことに応じて、前記第一搬送駆動部と、前記第二搬送駆動部とを制御して、前記第一搬送部と前記第二搬送部とにより、前記印刷媒体を前記戻し方向に搬送して、前記第二搬送を行い、
前記第一調整と、前記第一搬送と、前記第二調整と、前記第二搬送とを順に前記複数回繰り返すことを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記バックテンション付与部は、前記第一搬送部に対し前記搬送方向上流側且つ前記第二搬送部に対し前記搬送方向下流側に配置され、前記印刷媒体に当接して前記印刷媒体を前記搬送方向と交差する方向に付勢することを特徴とする請求項2から6の何れかに記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺の印刷媒体に画像を印刷する印刷装置において、印刷媒体の装着不良等に起因する斜行を補正する技術が種々開発されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。斜行は、印刷媒体が基準方向に対して斜めに搬送されることを言う。特許文献1の印刷装置は、印刷に先立って、印刷媒体を搬送方向に対し反対方向に付勢した状態で、搬送方向と戻し方向とに数回往復搬送することで斜行を補正する。特許文献2に記載の印刷装置は、印刷に先立って、印刷媒体を印刷媒体の進行方向に対し反対方向に付勢した状態で、搬送方向と戻し方向とに数回往復搬送することで斜行を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-100066号公報
【特許文献2】特許第5678618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の印刷装置では、斜行補正中に印刷媒体を戻し方向に搬送することで、印刷媒体が基準方向に対し傾くことがある。
【0005】
本発明は、印刷装置の大型化を回避しつつ、印刷媒体の斜行を従来よりも効率的に補正できる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る印刷装置は、長尺状の印刷媒体を保持する保持部と、前記保持部から繰り出される前記印刷媒体に画像を印刷する印刷ヘッドと、前記印刷媒体を前記保持部から前記印刷ヘッドに向かう搬送方向と、前記搬送方向とは反対の戻し方向とに搬送する第一搬送部と、前記保持部と前記第一搬送部との間の前記印刷媒体にバックテンションを付与するバックテンション付与部と、前記第一搬送部を駆動する第一搬送駆動部と、前記印刷ヘッドと、前記第一搬送駆動部とを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記第一搬送駆動部を制御して、前記バックテンション付与部により前記印刷媒体に前記バックテンションを付与した状態で前記印刷媒体を前記搬送方向に搬送する第一搬送と、前記バックテンション付与部により前記印刷媒体に前記バックテンションを付与せずに前記印刷媒体を前記戻し方向に搬送する第二搬送とを順に複数回繰り返す補正処理を実行する。
【0007】
本態様の印刷装置は、第一搬送時に斜行の補正を行い、第二搬送時は、第一搬送により印刷媒体の基準方向に対する傾きが補正された状態を維持した状態で、戻し方向に搬送できる。つまり、印刷装置は、第二搬送時にバックテンションが付与されることに起因して、印刷媒体が基準方向に対し傾くことを回避できる。故に、印刷装置は、第一搬送と第二搬送とを順に繰り返すことで、印刷装置の大型化を回避しつつ、印刷媒体の斜行を従来よりも効率的に補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】(A)はバックテンション付与部8の当接部材81が移動可能範囲の前端部に位置する場合の断面図であり、(B)はバックテンション付与部8の当接部材81が移動可能範囲の後端部に位置する場合の断面図である。
【
図5】印刷装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【
図7】変形例の印刷装置60の内部構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る印刷装置1について、図面を参照して順に説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載される装置の構成などは、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。本実施形態の説明では、
図1の左下側、右上側、右下側、左上側、上側、及び下側を各々、印刷装置1の左側、右側、前側、後側、上側、及び下側とする。
【0010】
図1から
図4を参照して、印刷装置1の物理的構成を説明する。
図1及び
図2に示すように、印刷装置1は、長尺状の印刷媒体Mに印刷を行うインクジェットプリンタである。印刷媒体Mは、例えば、筒状の紙管Kにロール状に巻回された長尺状の紙である。印刷装置1は、筐体2、表示部3、操作部4、隔壁55、保持部5、印刷ヘッド6、第一搬送部7、第一搬送駆動部9(
図3参照)、第二搬送部10、第二搬送駆動部11(
図3参照)、バックテンション付与部8、定着ユニット40、第三搬送部15、第三搬送駆動部38(
図3参照)、第四搬送部19、及び第四搬送駆動部39(
図3参照)を備える。
【0011】
筐体2は、前壁24、右壁25、後壁26、左壁(図示略)、下壁27、上壁28、及びカバー23を有し、卓上に載置可能な大きさの直方体状である。筐体2には、排出口21及び開口22が形成される。排出口21は、筐体2の前壁24に、正面視左右方向に長い矩形状に形成される。開口22は、筐体2の右壁25の後下部に、右側面視矩形状に形成される。カバー23は、右側面視矩形状の板であり、開口22を塞ぐ閉位置(
図1中実線で図示)と、開口22を解放する開位置(
図1中一点鎖線で図示)とに回動可能に筐体2の右側面の後下部に支持される。
図2に示すように、印刷装置1は、筐体2の内部に、保持部5、印刷ヘッド6、第一搬送部7、バックテンション付与部8、第一搬送駆動部9(
図3参照)、第二搬送部10、及び第二搬送駆動部11(
図3参照)を収容する。表示部3は、筐体2の前壁24の前面右上部に設けられ、画像を表示する。操作部4は、筐体2の前壁24の前面右上部の内、表示部3の下方に設けられ、各種指示を入力する複数のボタンである。表示部3及び操作部4は、排出口21の上方に設けられる。
【0012】
隔壁55は、筐体2の下壁27から上方に延びる第一壁部56と、第一壁部56の上端から後方に延びる第二壁部57とを有し、筐体2の内部空間を仕切る。第二壁部57は、筐体2の後壁26と前後方向に離隔する。保持部5は、閉位置にあるカバー23の左方、且つ、印刷装置1の後下部の、隔壁55と筐体2とによって囲まれた空間に設けられ、長尺状の印刷媒体Mを保持する。保持部5は、印刷媒体Mが巻回されたロールRを保持する。本実施形態の保持部5は、軸部51、及びマガジン52を備える。軸部51は、左右方向に延び、ロールRの紙管Kに挿通される。マガジン52は、正面視U字状の支持台であり、軸部51の左右両端部を、軸部51が左右方向に延びる軸周りに回動可能に支持する。軸部51は、マガジン52に取り外し可能に支持される。マガジン52は、印刷装置1に取り外し可能に支持される。ユーザはロールRを交換する場合、カバー23を開位置に配置して、マガジン52を筐体2の内部から取り出し、ロールRの交換作業を行う。ロールRは、紙管Kを有さず、保持部5に装着可能にロール状に巻回されてもよい。
【0013】
印刷ヘッド6は、保持部5から繰り出される印刷媒体Mに画像を印刷する。本実施形態の印刷ヘッド6は、液体Gを吐出方向に吐出する複数のノズル(図示略)を備え、複数のノズルから液体Gを吐出することで、印刷媒体Mに画像に印刷を行うインクジェットヘッドである。本実施形態の吐出方向は下方であり、印刷ヘッド6は、印刷媒体Mの搬送経路Qの上方に、複数のノズルが下方を向く姿勢で設けられる。搬送経路Qは、保持部5から繰り出され、排出口21から筐体2の外部に排出されるまでの、印刷媒体Mが搬送される経路である。液体Gは、チューブ(図示略)を介して筐体2の内部に配置されたタンク20から印刷ヘッド6に供給される。
【0014】
第一搬送部7は、印刷媒体Mを保持部5から印刷ヘッド6に向かう搬送方向Dと、搬送方向Dとは反対の戻し方向Eとに搬送する。搬送方向Dは保持部5から印刷ヘッド6に向かう搬送経路Qに沿った方向である。搬送方向Dは、ロールRの回転軸の延設方向である左右方向に交差する方向であり、搬送経路Q上の位置に応じて変化する方向である。保持部5からバックテンション付与部8までの搬送方向Dは、印刷媒体Mの残量に応じて変化する方向であり、
図2に示すように印刷媒体Mの残量が初期値(ロールR交換直後の残量)である場合、概ね上方である。バックテンション付与部8から排出口21までの搬送方向Dは、概ね前方である。つまり印刷装置1では、印刷媒体Mがバックテンション付与部8に当接する部分で、搬送経路Qが屈曲し、搬送方向Dが上方から前方に変化する。
【0015】
第一搬送部7は、印刷ヘッド6に対し搬送方向上流側、且つ 保持部5に対し搬送方向下流側に設けられる。つまり第一搬送部7は、印刷媒体Mの搬送経路Qにおいて、印刷ヘッド6と、保持部5との間に設けられる。本実施形態の第一搬送部7は、左右方向に延びる軸を中心に回転する搬送ローラ71と、ピンチローラ72とを有し、搬送ローラ71と、ピンチローラ72とで印刷媒体Mを上下に挟んでニップ搬送を行う。第一搬送駆動部9は、第一搬送部7を回転駆動する。第一搬送駆動部9は、例えば、正逆回転可能なステッピングモータである。
【0016】
第二搬送部10は、第一搬送部7よりも戻し方向E(搬送方向下流側)に設けられ、印刷媒体Mを戻し方向Eに搬送する。本実施形態の第二搬送部10は、保持部5に保持されたロールRを回動して、印刷媒体Mを戻し方向Eに搬送して、ロールRに巻き取る。本実施形態の第二搬送部10は、保持部5の軸部51と取り外し可能に係合し、後述する第二搬送駆動部11の駆動力を軸部51に伝達して軸部51を回転させる。本実施形態の第二搬送部10は、印刷媒体Mを搬送方向D及び戻し方向Eに搬送する。第二搬送部10は、保持部5に保持されたロールRを回動して、印刷媒体Mを搬送方向Dに搬送して、ロールRを印刷ヘッド6に向けて繰り出す。第二搬送駆動部11は、制御部30の制御により、第二搬送部10を回転駆動する。第二搬送駆動部11は、例えば、正逆回転可能なステッピングモータである。
【0017】
バックテンション付与部8は、搬送経路Qにおいて、保持部5と第一搬送部7との間の印刷媒体Mにバックテンションを付与する。バックテンションは、印刷媒体Mの進行方向とは逆方向に作用する張力である。バックテンション付与部8は、第一搬送部7よりも搬送方向下流側、且つ、第二搬送部10よりも搬送方向上流側に配置され、印刷媒体Mに当接して印刷媒体Mを搬送方向Dと交差する方向に付勢する。つまり、バックテンション付与部8は、搬送経路Qにおいて、第一搬送部7と、第二搬送部10との間に設けられる。バックテンション付与部8は、第一搬送部7の後方、且つ、保持部5の上方に設けられる。
【0018】
図3及び
図4に示すように、バックテンション付与部8は、当接部材81、案内部材96、支持部材82、及び付勢部材83を備える。当接部材81は、当接部75、左右一対の側壁76、及び二組の前後一対のコロ78を有する。当接部75は、印刷媒体Mの下面と当接する当接面84を有する。当接部75は、屈曲部73と、直線部74とを備える。屈曲部73は、右側面視後方に凸となるように屈曲した部分である。直線部74は、屈曲部73の前端から前方に延びる部分である。当接部75の左右方向の長さは、印刷媒体Mの幅方向の長さよりも長い。当接面84の上端位置は、ピンチローラ72の上端位置、つまり、第一搬送部7により印刷媒体Mがニップされる部分の上下位置と略同じである。上下方向において、当接面84の上端位置は、排出口21の上端と下端との間にある。左右一対の側壁76は、当接部75の左右両端から下方に延びる板状である。一対の側壁76には、側面視、上下方向に長い矩形状の案内孔77が形成されている。右側の側壁76の右面下部には、前後一対のコロ78が左右方向に延びる軸を中心に回転可能に支持されている。左側の側壁76の左面下部には、前後一対のコロ78が左右方向に延びる軸を中心に回転可能に支持されている。
【0019】
案内部材96は、左右方向において、当接部材81の左右一対の側壁76の間に配置された、当接部材81の前後方向の移動を案内する。案内部材96は、板部95、左右一対の側壁89、及び二組の上下一対のピン90を備える。左右一対の側壁89は、板部95の左右両端部から下方に延びる。右側の側壁89の右面には、右方に突出する上下一対のピン90が設けられる。上側のピン90は、右側の側壁76の案内孔77に左方から挿通される。下側のピン90は、後述の支持部材82の右側の側壁85の孔88に左方から挿通される。左側の側壁89の左面には、左方に突出する上下一対のピン90が設けられる。上側のピン90は、左側の側壁76の案内孔77に右方から挿通される。下側のピン90は、後述の支持部材82の左側の側壁85の孔88に右方から挿通される。案内部材96は、下側の左右一対のピン90を中心に回動に支持部材82に支持されている。
【0020】
支持部材82は、当接部材81を前後方向に移動可能に支持する。支持部材82は、本体部86及び左右一対の側壁85を備える。本体部86は、当接部材81及び案内部材96の下方に設けられた、水平方向に延びる板状である。左右一対の側壁85は、本体部86の左右両端部から上方に延びる。左右方向において、当接部材81は、左右一対の側壁85の間に配置される。各側壁85は、前後一対の案内孔87、及び孔88を備える。前後一対の案内孔87は、側面視前後方向に長い矩形状である。孔88は、前側の案内孔87の後下方に設けられた側面視円状である。右側の側壁85の前後一対の案内孔87には各々、右側の側壁76の前後一対のコロ78が左方から挿通される。右側の側壁85の孔88には、右側の側壁89の下側のピン90が左方から挿通される。左側の側壁85の前後一対の案内孔87には各々、左側の側壁76の前後一対のコロ78が右方から挿通される。左側の側壁85の孔88には、左側の側壁89の下側のピン90が右方から挿通される。当接部材81は、支持部材82に対し、案内孔87によって規定される範囲、前後方向に移動できる。
【0021】
付勢部材83は、当接部材81を搬送方向と交差する方向に付勢する。付勢部材83は、例えば、コイルバネである。付勢部材83の一端部は、支持部材82の本体部86の後端部に固定され、付勢部材83の他端部は、案内部材96の板部95の上端部に固定される。当接部材81は案内部材96を介して、後方に付勢される。
図4(A)は、付勢部材83の付勢力に抗して、当接部材81が移動可能範囲の前端部に配置されている状態であり、
図4(B)は、付勢部材83の付勢力により、当接部材81が移動可能範囲の後端部に配置されている状態である。バックテンション付与部8は、付勢部材83の付勢力により、バックテンション付与部8と第一搬送部7との間を搬送方向Dに搬送される印刷媒体Mに戻し方向に作用する張力を付与する。
【0022】
図2に示すように、定着ユニット40は、印刷ヘッド6に対し搬送方向下流側且つ第一搬送部7に対し搬送方向上流側に配置される。定着ユニット40は、ハロゲンヒータであり、ハロゲンランプ41、反射板42、及び筐体43を有する。筐体43の下壁には、左右方向に沿った開口44が形成されている。定着ユニット40は、開口44を通じて赤外光を輻射し、開口44の直下を通過する印刷媒体Mを加熱する。これにより、印刷ヘッド6により印刷媒体M上に吐出された液体Gは印刷媒体Mに定着する。
【0023】
第三搬送部15は、印刷ヘッド6の下方、且つ、第一搬送部7に対し搬送方向下流側に設けられ、印刷媒体Mを搬送方向Dに搬送する。第三搬送部15は、駆動ローラ13、従動ローラ14、及び無端ベルト16を備える。駆動ローラ13と、従動ローラ14とは、前後方向に互いに離隔している。無端ベルト16は、駆動ローラ13と、従動ローラ14とに掛け渡される。駆動ローラ13は、第三搬送駆動部38からの駆動力により回転し、無端ベルト16を回転させる。無端ベルト16の回転に伴い、従動ローラ14が回転する。無端ベルト16の外周面の上端は、第一搬送部7により印刷媒体Mがニップされる部分の上下位置と略同じであり、印刷ヘッド6の複数のノズルと対向する。無端ベルト16の外周面の上端は、搬送方向Dにおいて、第一搬送部7と、第四搬送部19との間で搬送される印刷媒体Mを下方から支持して搬送する。第三搬送駆動部38は、例えば、ステッピングモータである。
【0024】
第四搬送部19は、印刷ヘッド6及び定着ユニット40に対し搬送方向下流側、且つ、排出口21に対し搬送方向上流側に設けられ、印刷媒体Mを搬送方向Dと、戻し方向Eとに搬送する。第四搬送部19は、左右方向に延びる軸を中心に回転する搬送ローラ17と、ピンチローラ18とを有し、搬送ローラ17と、ピンチローラ18とで印刷媒体Mを上下に挟んでニップ搬送を行う。第四搬送駆動部39は、例えば、正逆回転可能なステッピングモータである。
【0025】
図5を参照し、印刷装置1の電気的構成を説明する。印刷装置1は、制御部30と、制御部30に電気的に接続された記憶部31、操作部4、表示部3、第一搬送駆動部9、第二搬送駆動部11、第三搬送駆動部38、第四搬送駆動部39、印刷ヘッド6、ハロゲンランプ41、エンコーダ33から36、及び検出器37を備える。制御部30は、印刷装置1の制御を司り、印刷ヘッド6、ハロゲンランプ41、第一搬送駆動部9、第二搬送駆動部11、第三搬送駆動部38、及び第四搬送駆動部39を制御する。記憶部31は、制御部30による各種プログラムの実行時に必要な各種パラメータ等を記憶するROM、RAM、及びフラッシュメモリ等を含む。
【0026】
エンコーダ33は、第一搬送駆動部9に駆動量に応じた値を制御部30に入力する。エンコーダ34は、第二搬送駆動部11に駆動量に応じた値を制御部30に入力する。エンコーダ35は、第三搬送駆動部38に駆動量に応じた値を制御部30に入力する。エンコーダ36は、第四搬送駆動部39に駆動量に応じた値を制御部30に入力する。検出器37は、バックテンション付与部8により、バックテンション付与部8と、第一搬送部7との間の印刷媒体Mに付与されたバックテンションに応じた検出結果を制御部30に出力する。
【0027】
図6を参照して、印刷装置1の制御部30によって実行される交換後印刷処理について説明する。交換後印刷処理は、印刷装置1において印刷媒体Mが交換された後、最初に印刷の指示が検出された場合に実行される。指示には、印刷媒体Mの斜行の補正処理を行う指令と、印刷データとが含まれる。本実施形態の斜行は、印刷媒体Mの長手方向が搬送方向Dに対して傾いた姿勢で印刷媒体Mが搬送されることを言う。つまり、本実施形態では、搬送方向Dを基準方向とする。以下の説明において、各処理のステップを「S」と略記する。交換後印刷処理開始時において、印刷媒体Mは、第一搬送部7に挟まれている。
【0028】
図6に示すように、制御部30は、印刷媒体Mの残量を取得する(S1)。印刷媒体M交換直後の印刷媒体Mの残量は、初期値が設定され記憶部31に記憶される。残量は、印刷媒体Mの印刷毎に印刷長さに応じて更新される。印刷媒体M交換直後の印刷媒体Mの残量は、操作部4を介して入力されたユーザにより指定された値であってもよい。制御部30は、S1で取得された残量に応じて、第二搬送駆動部11による第二搬送部10の回転速度を決定する(S2)。印刷媒体Mの残量と、回転速度との関係は、予め記憶部31に記憶されている。制御部30は、印刷媒体Mの残量が多いほど、残量が少ない場合に比べ、回転速度に遅い値を設定する。制御部30は、第一搬送駆動部9を制御して、バックテンション付与部8により印刷媒体Mにバックテンションを付与した状態で印刷媒体Mを搬送方向Dに搬送する第一搬送と、バックテンション付与部8により印刷媒体Mにバックテンションを付与せずに印刷媒体Mを戻し方向Eに搬送する第二搬送とを順に複数回繰り返す補正処理を実行する(S3からS7)。本実施形態の制御部30は、第一搬送駆動部9と、第二搬送駆動部11とを制御して、第一搬送時の第一搬送部7と第二搬送部10との間の印刷媒体Mの第一長さを、第二搬送時の第一搬送部7と第二搬送部10との間の印刷媒体Mの第二長さよりも短くする。
【0029】
具体的には制御部30は、第一搬送部7による印刷媒体Mの搬送を停止した状態で、第二搬送駆動部11を制御して、第一条件を満たすまで第二搬送部10による印刷媒体Mの戻し方向Eへの搬送する第一調整を行う(S3)。第一条件は、第一長さが第二長さよりも短くなる所定の条件であればよく、例えば、検出器37の検出結果が所定範囲内になる条件である。第一条件は、第二搬送部10により戻し方向Eへの搬送量で規定されてもよい。第一調整により、バックテンション付与部8の当接部材81は、
図2の一点鎖線で示す、移動可能範囲の前端部に位置する。
図2に点線で示す搬送経路Qの第一搬送部7と第二搬送部10との間の部分の第一長さは、
図2に一点鎖線で示す搬送経路Qの第一搬送部7と第二搬送部10との間の部分の第二長さよりも短くなる。
【0030】
制御部30は、第一調整(S3)が終了したことに応じて、第一搬送駆動部9と第二搬送駆動部11とを制御して、第一搬送部7と第二搬送部10とにより印刷媒体Mに所定範囲のバックテンションを付与した状態で印刷媒体Mを搬送方向Dへ搬送して第一搬送を行う(S4)。制御部30は、第二搬送駆動部11による第二搬送部10の回転速度をS2で決定された回転速度に設定する。所定範囲は、記憶部31に記憶されている。制御部30は、第一搬送実行中、検出器37の検出結果を定期的に取得し、取得された検出結果に基づき、バックテンション付与部8と、第一搬送部7との間の印刷媒体Mに付与されたバックテンションが所定範囲に収めるフィードバック制御を行う。取得された検出結果が所定範囲に収まっていない場合、制御部30は、第二搬送駆動部11を制御し、取得された検出結果に応じて第二搬送部10によるロールRの回転速度を調整する。制御部30が、ロールRの回転速度を現在の回転速度よりも遅くした場合、印刷媒体Mに付与されたバックテンションは現在の値よりも大きくなる。制御部30が、ロールRの回転速度を現在の回転速度よりも速くした場合、印刷媒体Mに付与されたバックテンションは現在の値よりも小さくなる。第一搬送で、バックテンションが付与された状態で印刷媒体Mが搬送方向Dに搬送されることにより、印刷媒体Mの長手方向が搬送方向Dと平行になるように、印刷媒体Mの斜行が補正される。制御部30は、所定長さ印刷媒体Mを搬送したことに応じて、第一搬送を終了する。
【0031】
制御部30は、第一搬送後(S4)、第二搬送部10による印刷媒体Mの搬送方向Dへの搬送を停止した状態で、第一搬送駆動部9を制御して、第二条件を満たすまで第一搬送部7による印刷媒体Mの戻し方向Eへの搬送する第二調整を行う(S5)。第二条件は、第一長さが第二長さよりも短くなる所定の条件であればよく、例えば、検出器37の検出結果にもとづきバックテンション付与部8が印刷媒体Mに張力を付与していないと判断される条件である。第二条件は、第二搬送部10により戻し方向Eへの搬送量で規定されてもよい。第二調整により、バックテンション付与部8の当接部材81は、
図2の実線で示す、移動可能範囲の後端部に位置し、第二長さは、第一長さよりも長くなる。本実施形態では、第二調整を行うことで、印刷媒体Mはバックテンション付与部8から部分的に離隔した、浮き上がった状態となる。
【0032】
制御部30は、第二調整が終了したことに応じて(S5)、第一搬送駆動部9と、第二搬送駆動部11とを制御して、第一搬送部7と第二搬送部10とにより、印刷媒体Mを戻し方向Eに搬送して、第二搬送を行う(S6)。本実施形態の制御部30は、第二搬送において、第一搬送駆動部9と、第二搬送駆動部11とを制御して、第一搬送部7と第二搬送部10とにより、印刷媒体Mを戻し方向Eに搬送し、印刷媒体Mを保持部5に搬送する。制御部30は、第二搬送時の第二搬送部10によるロールRの回転速度を、S2で設定された値に調整することで、ロールRに巻回された印刷媒体Mの量に応じて調整する。制御部30は、所定長さ印刷媒体Mを搬送したことに応じて、第二搬送を終了する。所定長さは、S4の所定長さと互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0033】
制御部30は、補正処理が終了したかを判断する(S7)。制御部30は、例えば、記憶部31に記憶された所定回数第一調整から第二搬送までの処理を行った場合に補正処理が終了したと判断する。所定回数は、一回の第一搬送により搬送可能な搬送量と、印刷媒体Mの斜行を補正するのに必要な搬送方向Dの搬送量とを考慮して設定され、例えば、予め実験により設定される。印刷装置1が、第一搬送部7よりも搬送方向下流側に、印刷媒体Mの基準方向に対する傾きを検出可能な検出部を設ける場合、制御部30は、検出部により、印刷媒体Mの基準方向の傾きは所定範囲に収まると判断される場合に補正処理が終了すると判断してもよい。補正処理が終了していない場合(S7:NO)、制御部30は処理をS3に戻す。
【0034】
補正処理が終了している場合(S7:YES)、制御部30は、開始指示に含まれる印刷データを取得する(S8)。制御部30は、S8で取得された印刷データに基づき、印刷ヘッド6、第一搬送駆動部9、第二搬送駆動部11、第三搬送駆動部38、第四搬送駆動部39、及びハロゲンランプ41を駆動し、印刷処理を行う(S9)。具体的には制御部30は、第一搬送駆動部9、第二搬送駆動部11、第三搬送駆動部38、第四搬送駆動部39を駆動して、印刷媒体Mを搬送する。制御部30は、第二搬送駆動部11の回転速度をS1で取得された残量に応じた値にしてもよい。制御部30は、印刷媒体Mの搬送と同期して、印刷ヘッド6を駆動して、印刷媒体Mに液体Gを吐出する。制御部30は、ハロゲンランプ41を駆動して、印刷媒体M上の液体Gを印刷媒体Mに定着させる。制御部30は、S9での印刷に応じた印刷媒体Mの使用量に応じて、S1で取得された残量を更新し、記憶部31に記憶する(S10)。制御部30は、以上で交換後印刷処理を終了する。
【0035】
上記実施形態において、印刷装置1、保持部5、印刷ヘッド6、第一搬送部7、バックテンション付与部8、第一搬送駆動部9、第二搬送部10、第二搬送駆動部11、及び制御部30は各々、本発明の印刷装置、保持部、印刷ヘッド、第一搬送部、バックテンション付与部、第一搬送駆動部、第二搬送部、第二搬送駆動部、及び制御部の一例である。S3の処理は、本発明の第一調整の一例であり、S4の処理は、本発明の第一搬送の一例であり、S5の処理は、本発明の第二調整の一例であり、S6の処理は、本発明の第二搬送の一例である。S3からS7の処理は、本発明の補正処理の一例である。
【0036】
上記実施形態の印刷装置1は、保持部5、印刷ヘッド6、第一搬送部7、バックテンション付与部8、第一搬送駆動部9、及び制御部30を備える。保持部5は、長尺状の印刷媒体Mを保持する。印刷ヘッド6は、保持部5から繰り出される印刷媒体Mに画像を印刷する。第一搬送部7は、 印刷媒体Mを保持部5から印刷ヘッド6に向かう搬送方向Dと、搬送方向Dとは反対の戻し方向Eとに搬送する。バックテンション付与部8は、保持部5と第一搬送部7との間の印刷媒体Mにバックテンションを付与する。第一搬送駆動部9は、第一搬送部7を駆動する。制御部30は、印刷ヘッド6と、第一搬送駆動部9とを制御する。制御部30は、第一搬送と、第二搬送を順に複数回繰り返す補正処理を実行する(S3からS7)。制御部30は、第一搬送において、第一搬送駆動部9を制御して、バックテンション付与部8により印刷媒体Mにバックテンションを付与した状態で印刷媒体Mを搬送方向Dに搬送する(S4)。制御部30は、第二搬送において、バックテンション付与部8により印刷媒体Mにバックテンションを付与せずに印刷媒体Mを戻し方向Eに搬送する(S6)。印刷装置1は、第一搬送時に斜行の補正を行い、第二搬送時は、第一搬送により印刷媒体Mの基準方向に対する傾きが補正された状態を維持した状態で、戻し方向Eに搬送できる。つまり、印刷装置1は、第二搬送時にバックテンションが付与されることに起因して、印刷媒体Mが基準方向に対し傾くことを回避できる。故に、印刷装置1は、第一搬送と第二搬送とを順に繰り返すことで、印刷装置1の大型化を回避しつつ、印刷媒体Mの斜行を従来よりも効率的に補正できる。
【0037】
印刷装置1は、第一搬送部7よりも戻し方向Eに設けられ、印刷媒体Mを戻し方向Eに搬送する第二搬送部10と、制御部30の制御により、第二搬送部10を駆動する第二搬送駆動部11とを備える。制御部30は、第二搬送において、第一搬送駆動部9と、第二搬送駆動部11とを制御して、第一搬送部7と第二搬送部10とにより、印刷媒体Mを戻し方向Eに搬送し、印刷媒体Mを保持部5に搬送する(S6)。印刷装置1は、第二搬送部10を有しない場合よりも、第二搬送時に、印刷媒体Mをより確実に保持部5に搬送できる。故に、印刷装置1は、第二搬送時に第一搬送部7よりも搬送方向D下流側に送られた印刷媒体Mを収容するスペースを確保するために印刷装置1が大型化することを回避できる。
【0038】
保持部5は、印刷媒体Mが巻回されたロールRを保持する。第二搬送部10は、保持部5に保持されたロールRを回動して、印刷媒体Mを戻し方向Eに搬送して、ロールRに巻き取る。印刷装置1は、第二搬送時に、印刷媒体MをロールRに巻き取ることができる。故に、印刷装置1は、第二搬送時に第一搬送部7よりも搬送方向D下流側に送られた印刷媒体Mを収容するスペースを確保するために印刷装置1が大型化することを回避できる。
【0039】
制御部30は、第二搬送時の第二搬送部10によるロールRの回転速度を、ロールRに巻回された印刷媒体Mの量に応じて調整する(S1、S2、S6)。印刷装置1は、ロールRに巻回された印刷媒体Mの量によらず、一定の速度でロールRを回転する場合に比べ、ロールRに巻回された印刷媒体Mの量に応じて印刷媒体Mの戻し速度が変化することを抑制できる。
【0040】
制御部30は、第一搬送駆動部9と、第二搬送駆動部11とを制御して、第一搬送時の第一搬送部7と第二搬送部10との間の印刷媒体Mの第一長さは、第二搬送時の第一搬送部7と第二搬送部10との間の印刷媒体Mの第二長さよりも短くする。印刷装置1は、第一長さが第二長さ以上である場合に比べ、第一搬送と、第二搬送とを行うための構成を簡単にできる。
【0041】
制御部30は、補正処理を行う指令を取得したことに応じて、第一搬送部7による印刷媒体Mの搬送を停止した状態で、第二搬送駆動部11を制御して、第一条件を満たすまで第二搬送部10による印刷媒体Mの戻し方向Eへの搬送する第一調整を行う(S3)。制御部30は、第一調整が終了したことに応じて、第一搬送駆動部9と第二搬送駆動部11とを制御して、第一搬送部7と第二搬送部10とにより印刷媒体Mに所定範囲のバックテンションを付与した状態で印刷媒体Mを搬送方向Dへ搬送して第一搬送を行う(S4)。制御部30は、第一搬送後(S4)、第二搬送部10による印刷媒体Mの搬送方向Dへの搬送を停止した状態で、第一搬送駆動部9を制御して、第二条件を満たすまで第一搬送部7による印刷媒体Mの戻し方向Eへの搬送する第二調整を行う(S5)。制御部30は、第二調整が終了したことに応じて、第一搬送駆動部9と、第二搬送駆動部11とを制御して、第一搬送部7と第二搬送部10とにより、印刷媒体Mを戻し方向Eに搬送して、第二搬送を行い(S6)。制御部30は、第一調整(S3)と、第一搬送(S4)と、第二調整(S5)と、第二搬送(S6)とを順に複数回繰り返す(S7)。印刷装置1は、第一搬送時の第一搬送部7と、第二搬送部10との駆動時機を調整することで、第一長さを第二長さよりも短くできる。
【0042】
バックテンション付与部8は、第一搬送部7に対し搬送方向上流側且つ第二搬送部10に対し搬送方向下流側配置され、印刷媒体Mに当接して印刷媒体Mを搬送方向Dと交差する方向に付勢する。印刷装置1は、第一搬送時に第一搬送部7と、第二搬送部10との搬送速度を制御して、印刷媒体Mにバックテンションを付与する構成に比べ、印刷媒体Mに付加されるバックテンションを安定させることができる。これにより、印刷装置1は、第一搬送時に安定して印刷媒体Mの斜行を補正できる。
【0043】
本発明の印刷装置は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、以下の変形が適宜加えられてもよい。
【0044】
保持部5は長尺状の印刷媒体を保持すればよく、適宜構成を変更されてよい。第一搬送部7は、搬送ベルトなどの他の搬送部材により、印刷媒体Mを搬送してもよい。第二搬送部10は、戻し方向Eのみに印刷媒体Mを搬送可能でもよいし、保持部5の構成に応じて構成が変更されてもよいし、省略されてもよい。第二搬送時の第二搬送部65の回転速度は印刷媒体Mの残量によらず同じでもよい。
【0045】
印刷媒体Mは、用紙に刻まれたミシン目に沿って折りたたまれているファンフォールド紙でもよく、その場合、例えば、
図7に示す変形例の印刷装置60のように、印刷装置1の保持部5に替えて保持部61を備え、第二搬送部10に替えて、第二搬送部65を備えてもよい。
図7では、上記実施形態と同様の構成には同じ符号を付与している。変形例の印刷装置60の他の構成は、上記実施形態の印刷装置1と同様である。
図7に示すように、保持部61は、隔壁55と筐体2とによって囲まれた空間であり、ファンフォールド紙を折りたたんだ状態で保持する。第二搬送部65は、保持部61の搬送方向下流側、且つ、バックテンション付与部8の搬送方向上流側に設けられる。第二搬送部65は、印刷媒体Mを搬送方向Dと、戻し方向Eとに搬送する。第二搬送部65は、左右方向に延びる軸を中心に回転する搬送ローラ63と、ピンチローラ64とを有し、搬送ローラ63と、ピンチローラ64とで印刷媒体Mを左右に挟んでニップ搬送を行う。変形例の第二搬送駆動部11は、例えば、搬送ローラ63を正逆回転可能なステッピングモータであればよい。
【0046】
印刷ヘッド6の構成は適宜変更されてよく、カラー印刷可能なインクジェットヘッドでもよいし、電子写真式又は感熱式のサーマルヘッドでもよい。定着ユニット40は、印刷装置1の印刷方式に応じて、省略されてもよいし、構成が変更されてもよい。印刷装置1は、印刷後の印刷媒体Mを幅方向に沿って切断可能な切断装置を備えてもよい。第三搬送部15及び第四搬送部19の少なくとも何れかは、必要に応じて省略されてもよいし、構成が変更されてもよい。
【0047】
バックテンション付与部8の構成は適宜変更されてよい。バックテンション付与部8は、例えば、ロールRが印刷媒体Mを繰り出す方向(右側面視反時計方向)に回転する場合に、軸部51に所定の摩擦力を加えることで、印刷媒体Mにバックテンションを付与してもよい。バックテンション付与部8が付勢部材83を備える場合、付勢部材83は、例えば、板バネ等適宜変更されてよい。印刷装置1は、第一搬送部7による印刷媒体Mの搬送速度と、第二搬送部10による印刷媒体Mの搬送速度を調整することで、印刷媒体Mにバックテンションを付与してもよい。この場合、第一搬送駆動部9と、第二搬送駆動部11とが、バックテンション付与部として機能する。第一長さと、第二長さとの関係は、バックテンション付与部8の構成に応じて適宜変更されてよく、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0048】
図6の交換後印刷処理を実行させるための指令を含むプログラムは、制御部30がプログラムを実行するまでに、印刷装置1の記憶装置に記憶されればよい。従って、プログラムの取得方法、取得経路及びプログラムを記憶する機器の各々は、適宜変更してもよい。制御部30が実行するプログラムは、ケーブル又は無線通信を介して、他の装置から受信し、フラッシュメモリ等の記憶装置に記憶されてもよい。他の装置は、例えば、PC、及びネットワーク網を介して接続されるサーバを含む。
【0049】
印刷装置1の交換後印刷処理の各ステップは、制御部30によって実行される例に限定されず、一部又は全部が他の電子機器(例えば、ASIC)によって実行されてもよい。交換後印刷処理の各ステップは、複数の電子機器(例えば、複数のCPU)によって分散処理されてもよい。交換後印刷処理の各ステップは、必要に応じて順序の変更、ステップの省略、及び追加が可能である。印刷装置1上で稼動しているオペレーティングシステム(OS)等が、制御部30からの指令に基づき交換後印刷処理の一部又は全部を行う態様も、本発明の範囲に含まれる。例えば、交換後印刷処理に以下の変更が適宜加えられてもよい。
【0050】
補正処理を行うための指令は、操作部4を介して、ユーザにより実行されてもよいし、ロールRの交換が終了したことを検出された場合に、自動的に入力されてもよい。制御部30は、補正処理を行うための指令に応じて、S3からS7の処理を行ってもよい。第一調整及び第二調整の少なくとも何れかは、バックテンション付与部8の構成に応じて省略されてもよい。制御部30は、第一調整時に、第二搬送部による印刷媒体の搬送を停止した状態で、第一搬送駆動部9を制御して、所定条件を満たすまで第一搬送部7による印刷媒体Mの搬送方向Dへ搬送を行ってもよい。制御部30は、第二調整時に、第一搬送後、第一搬送部7による印刷媒体Mの搬送を停止した状態で、第二搬送駆動部11を制御して、第二搬送部10による印刷媒体Mの搬送方向Dへ搬送してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1、60:印刷装置、5、61:保持部、6:印刷ヘッド、7:第一搬送部、8:バックテンション付与部、9:第一搬送駆動部、10、65:第二搬送部、11、第二搬送駆動部、30:制御部、31:記憶部