(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085376
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】機械式駐車装置
(51)【国際特許分類】
E04H 6/42 20060101AFI20220601BHJP
E04H 6/18 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
E04H6/42 Z
E04H6/18 610
E04H6/18 601Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197022
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】松井 達矢
(72)【発明者】
【氏名】大枝 宏志
(57)【要約】
【課題】車両搭載部の劣化を抑制できる機械式駐車装置を提供することを目的とする。
【解決手段】複数の駐車スペース(10)と、車両を搭載可能であり、複数の駐車スペースの間を移動可能に設けられた車両搭載部(20)と、車両搭載部を複数の駐車スペースに移動させることが可能な移動機構(6、13、14)と、車両搭載部(20)を洗浄する洗浄機構(30)とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の駐車スペースと、
車両を搭載可能であり、前記複数の駐車スペースの間を移動可能に設けられた車両搭載部と、
前記車両搭載部を前記複数の駐車スペースに移動させることが可能な移動機構と、
前記車両搭載部を洗浄する洗浄機構と、
を備える機械式駐車装置。
【請求項2】
前記車両搭載部はパレットであり、
前記移動機構は、前記パレットが移動可能な移動枠と、前記パレットを前記移動枠に沿って動かす駆動装置とを有し、
前記洗浄機構は前記パレットを洗浄する、
請求項1記載の機械式駐車装置。
【請求項3】
前記パレットは複数設けられ、
前記複数のパレットの洗浄に関する履歴情報を記憶する記憶部を、更に備える
請求項2記載の機械式駐車装置。
【請求項4】
前記複数のパレットの中から入庫車両を搭載するパレットを選択するパレット制御部を備え、
前記パレット制御部は、前記履歴情報に基づいて前記パレットを選択する、
請求項3に記載の機械式駐車装置。
【請求項5】
前記パレットを入庫口に移動させる入庫口移動スペースを有し、
前記パレット制御部は、前記複数のパレットの中に車両を搭載していない複数の空のパレットを有する場合に、前記履歴情報に基づいて、前記複数の空のパレットのうち洗浄後の経過期間が最も短いパレットを他のパレットよりも前記入庫口移動スペースに近づける、
請求項4記載の機械式駐車装置。
【請求項6】
前記複数の駐車スペースは複数階に設けられ、
前記洗浄機構は、最下階に配置される、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の機械式駐車装置。
【請求項7】
前記複数の駐車スペースのうち前記洗浄機構に隣り合う駐車スペースに車両が駐車していないときに前記洗浄機構を駆動する洗浄制御部を更に備える、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の機械式駐車装置。
【請求項8】
前記洗浄機構は、前記複数の駐車スペースのうちの一つ又は複数の駐車スペースに設けられる、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の機械式駐車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両を搭載可能な複数のケージを有し、複数のケージが複数の駐車スペースにおいて循環移動する循環型の機械式駐車装置がある(例えば特許文献1を参照)。また、車両を搭載可能な複数のパレットと、複数のパレットがスライド移動可能な移動枠と、パレットを前記移動枠に沿って移動させる駆動部とを有するパレット移動型の機械式駐車装置がある(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-048642号公報
【特許文献2】特開平04-327662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の機械式駐車装置は、融雪剤、海塩粒子などの金属腐食を誘発する物質を付着した車両が入庫し、当該物質を駐車スペースに落とすことがあり、このような場合に、機械式駐車装置の車両搭載部が劣化し、車両搭載部の交換周期が短くなることがあった。
【0005】
本発明は、車両搭載部の劣化を抑制できる機械式駐車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
複数の駐車スペースと、
車両を搭載可能であり、前記複数の駐車スペースの間を移動可能に設けられた車両搭載部と、
前記車両搭載部を前記複数の駐車スペースに移動させることが可能な移動機構と、
前記車両搭載部を洗浄する洗浄機構と、
を備える機械式駐車装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両搭載部の劣化を抑制できる機械式駐車装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態の機械式駐車装置を示す図である。
【
図2】
図1の機械式駐車装置における最下階のフロアを示す平面図である。
【
図3】
図1の機械式駐車装置の制御部を示すブロック図である。
【
図4】洗浄制御部が実行する洗浄制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】パレット制御部が実行するパレット移動制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図5のステップS23の入庫処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の機械式駐車装置を示す図である。
図2は、
図1の機械式駐車装置における最下階の駐車室を示す平面図である。
【0010】
本実施形態の機械式駐車装置1は、パレット移動型の機械式駐車装置であり、複数階の駐車室2と、各階の駐車室2に設けられた複数の駐車スペース10と、車両を搭載可能な複数のパレット20と、各パレット20を各駐車スペース10に移動させることが可能な移動枠13及び駆動装置14と、入庫又は出庫する際に車両に人が乗降する乗降室5と、乗降室5と駐車室2との間、並びに、異なる階の駐車室2の間でパレット20を昇降する昇降装置6と、機械式駐車装置1の各駆動部を制御する制御装置50とを備える。
図1及び
図2において、駐車スペース10、移動枠13及び駆動装置14は、幾つかのみに代表して符号を付している。パレット20は、本発明に係る車両搭載部の一例に相当する。移動枠13、駆動装置14及び昇降装置6は、本発明に係る移動機構の一例に相当する。乗降室5は、本発明に係る入庫口の一例に相当する。
【0011】
昇降装置6は、昇降枠63の上にパレット20を載せて昇降することができる。昇降枠63上のスペースを昇降スペース10Xと呼ぶ。昇降スペース10Xは、本発明に係る入庫口移動スペース(パレットを入庫口に移動させる入庫口移動スペース)の一例に相当する。
【0012】
各駐車室2の複数の駐車スペース10は、パレット20をスライド移動させることで、パレット20が配置された状態と、パレット20が配置されない状態とに変更可能である。同様に、昇降スペース10Xは、パレット20が配置された状態と、パレット20が配置されない状態とに変更可能である。パレット20が配置されていない駐車スペース10又は昇降スペース10Xを「空スペース」と呼ぶ。パレット20が配置されている駐車スペース10又は昇降スペース10Xを「非空スペース」と呼ぶ。各階の駐車室2には、空スペースが1つ又は複数設けられる。駆動装置14は、隣接する非空スペースから空スペースへパレット20をスライド移動させることができ、このようなパレット20の移動を繰り返すことで、車両を搭載した特定のパレット20、或いは、車両を搭載しない特定のパレット20を、1つの駐車室2の複数の駐車スペース10の間で移動させることができる。さらに、昇降枠63の昇降を介して特定のパレット20を、複数階の駐車室2間、並びに、乗降室5と各階の駐車室2との間で移動させることができる。
【0013】
制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行する制御プログラムを格納した記憶装置と、CPUと制御対象との間で信号を入出力するインタフェースとを有するコンピュータ50Aと、表示装置53と、タッチパネルなどの入力装置54とを備える(
図3)。
【0014】
コンピュータ50Aは、各駐車スペース10の駆動装置14の駆動と昇降装置6の駆動とを制御するパレット制御部51を備える。パレット制御部51は、CPUが制御プログラムを実行することで実現される機能モジュールである。パレット制御部51は、所定のアルゴリズムで計算した順に駆動装置14及び昇降装置6を駆動し、複数のパレット20の位置を入れ替えることで、特定のパレット20を所望の駐車スペース10又は乗降室5まで動かすことができる。
【0015】
<パレット洗浄装置>
本実施形態の機械式駐車装置1は、さらに、パレット20を洗浄する洗浄機構30を備える。洗浄機構30は、一つの駐車スペース10に配置され、車両を搭載していない状態のパレット20を洗浄することができる。洗浄機構30が設けられた駐車スペース10を、洗浄スペース10aとも記す。洗浄スペース10aは、最下階の駐車室2内の一つの駐車スペース10(例えば駐車室2の角部の駐車スペース10)に適用される。最下階の駐車室2に洗浄スペース10aを設けることで、洗浄機構30による洗浄中に、洗浄液が別の階の駐車スペース10に垂れ落ちてしまうことを防止できる。さらに、角部に設けることで、洗浄スペース10aに隣接する駐車スペース10を少なくして、洗浄スペース10aから洗浄液が飛び散る恐れのある駐車スペース10を低減できる。
【0016】
洗浄機構30は、
図1に示すように、洗浄ブラシ31と、乾拭きブラシ32と、洗浄ブラシ31及び乾拭きブラシ32を駆動する駆動装置33と、洗浄ブラシ31及び乾拭きブラシ32を退避箇所からパレット20の配置箇所まで移動させる移動装置34と、洗浄ブラシ31に洗浄液を供給する供給装置35と、洗浄液及び塵ゴミを受ける防水パン36とを備える。上記退避箇所は、洗浄スペース10aに車両が駐車したときに、洗浄ブラシ31及び乾拭きブラシ32が車両に接触しない位置に設けられる。
【0017】
洗浄ブラシ31及び乾拭きブラシ32は、ローラ式のブラシであるが、どのような形式のブラシであってもよい。防水パン36は、洗浄スペース10aの下方をカバーするように設けられている。防水パン36には、防水パン36から排水設備に洗浄液を流す排水管361が設けられている。防水パン36により、機械式駐車装置1の周囲のコンクリートに洗浄水が侵食することを抑制できる。
【0018】
制御装置50は、さらに、洗浄機構30を制御する洗浄制御部52(
図3)を備える。洗浄制御部52は、コンピュータ50AのCPUが制御プログラムを実行することで実現する機能モジュールである。洗浄制御部52の制御に基づき、移動装置34が洗浄ブラシ31をパレット20の配置箇所まで移動させ、供給装置35が洗浄ブラシ31へ洗浄液を供給し、駆動装置33が洗浄ブラシ31を駆動(例えば回転駆動)することで、洗浄液を含んだ洗浄ブラシ31がパレット20上を洗浄する。その間、洗浄液は防水パン36に流れ落ち、排水管361を介して排出される。続いて、洗浄制御部52の制御に基づき、移動装置34が洗浄ブラシ31を待機箇所へ移す一方、乾拭きブラシ32をパレット20の配置箇所まで移動させ、駆動装置33が乾拭きブラシ32を駆動(例えば回転駆動)することで、乾拭きブラシ32がパレット20を乾拭きする。その後、洗浄制御部52の制御に基づき、移動装置34が乾拭きブラシ32を待機箇所まで移動させることで、1つのパレット20の洗浄処理が完了する。
【0019】
<データ管理>
機械式駐車装置1に備わる複数のパレット20には、各々を識別可能な識別情報がそれぞれ付与されている。パレット制御部51は、各パレット20が複数の駐車スペース10又は昇降スペース10Xのいずれに位置するかを管理するパレット管理データの記憶部511を有する(
図3)。パレット制御部51は、パレット管理データを操作しながらパレット20の移動制御を行っている。パレット管理データは、複数のパレット20の識別情報と、各パレット20が位置する複数の駐車スペース10又は昇降スペース10Xの識別情報と、各パレット20が車両を搭載しているか否かを示す情報とを対応づけたデータである。パレット制御部51は、乗降室5に移動させたパレット20の識別情報を認識した状態で、入庫要求又は出庫要求に基づき、乗降室5のパレット20に車両が搭載又は当該パレット20から車両が退出したことを判別できる。さらに、駐車中、車両は別のパレット20へ移動することはない。したがって、パレット制御部51は、各パレット20が車両を搭載しているか否かを示す情報を作成できる。パレット管理データは、洗浄制御部52から参照可能に構成されている。
【0020】
洗浄制御部52は、各パレット20について前回の洗浄からの経過期間を示すデータ(以下「経過期間データ」と記す)が格納される経過期間データ記憶部521と、上記複数のパレット20の洗浄履歴データが格納される履歴データ記憶部522とを備える(
図3)。経過期間データ及び洗浄履歴データは、本発明に係る洗浄に関する履歴情報の一例に相当する。
【0021】
経過期間データは、各パレット20の識別情報と、当該パレット20について前回の洗浄後の経過期間の情報とが一対一に対応づけられたデータである。洗浄履歴データは、洗浄されたパレット20の識別情報と、洗浄日時情報とが対応づけられ、日時順に登録されたデータである。洗浄制御部52は、パレット20を洗浄する際、記憶部511のパレット管理データを参照することで、洗浄しているパレット20の識別情報を得ることができる。経過期間データは、パレット制御部51から参照可能に構成されている。
【0022】
<洗浄制御処理>
図4は、洗浄制御部が実行する洗浄制御処理の手順を示すフローチャートである。洗浄制御部52は、機械式駐車装置1の制御装置50の起動中、
図4の洗浄制御処理を実行する。
【0023】
洗浄制御処理が開始すると、先ず、洗浄制御部52は、洗浄スペース10aに位置するパレット20が、車両を搭載せず、前回の洗浄後の経過期間が洗浄を要する経過期間として定められた第1閾値以上であるか判別する(ステップS1)。ステップS1の判別は、洗浄制御部52が、パレット管理データと経過期間データとを参照して行うことができる。そして、ステップS1の判別の結果がYESであれば、次に、洗浄制御部52は、パレット管理データを参照することで、洗浄スペース10aに隣接する駐車スペース10に車両が駐車していないか判別する(ステップS2)。
【0024】
ステップS2の判別結果がYESであれば、洗浄制御部52は、パレット制御部51に洗浄開始を通知し(ステップS3)、表示装置53に洗浄中の表示を出力し(ステップS4)、洗浄スペース10aのパレット20を洗浄するように洗浄機構30を駆動する(ステップS5)。そして、洗浄が終了したら、洗浄制御部52は、表示装置53の洗浄中の表示出力を停止し、パレット制御部51へ洗浄終了を通知し、かつ、洗浄履歴データと経過期間データとを更新する一連の処理(洗浄終了時の処理)を実行する(ステップS6)。
【0025】
そして、洗浄を終了したら、洗浄制御部52は、外部からの履歴データの読出し要求が有るか否かの判別(ステップS7)と、次の洗浄に関する判別タイミング(例えば数時間ごとのタイミング)であるか否かの判別(ステップS8)とを繰り返す。洗浄制御部52は、ステップS7の読出し要求があれば、履歴データを読み出して出力し(ステップS9)、その後、処理をステップS8に移す。履歴データは、制御装置50のインタフェース(コンピュータ50Aのインタフェース)に、別のコンピュータを接続し、当該別のコンピュータから読出し要求を送ることで読み出される構成としてもよいし、入力装置54から読出し要求を入力することで、表示装置53に履歴データが読み出される構成としてもよい。また、ステップS8で、次の洗浄の判別タイミングと判別されたら、洗浄制御部52は、処理をステップS1に戻して、ステップS1からの処理を繰り替えす。
【0026】
前述したステップS1の判別処理の結果、NOと判別した場合、洗浄制御部52は、経過期間データを参照することで、前回洗浄後の経過期間が、次の洗浄に適した期間を表わす第2閾値以上であるパレット20を検索し、当該パレット20がある場合に、当該パレット20を洗浄スペース10aに移動させる要求を、パレット制御部51に送る(ステップS10)。ステップS10の要求には優先度が付加され、前回洗浄後の経過期間が長いパレット20があるほど、高い優先度が付加されるようにしてもよい。
【0027】
また、前述したステップS2の判別処理の結果、NOと判別した場合、洗浄制御部52は、洗浄スペース10aに隣接する駐車スペース10に駐車している車両を、別の駐車スペース10に移動させる要求を、パレット制御部51に送る(ステップS11)。ステップS11の要求には優先度が付加され、洗浄スペース10aに位置するパレット20の前回洗浄後の経過期間が長いほど高い優先度が付加されるようにしてもよい。
【0028】
以上のような洗浄制御処理により、複数のパレット20の各々を適宜なタイミング及び適宜な状況で洗浄していくことが可能となる。
【0029】
<パレット移動制御処理>
図5は、パレット制御部が実行するパレット移動制御処理の手順を示すフロチャートである。
図6は、
図5のステップS23の入庫処理の詳細を示すフローチャートである。パレット制御部51は、機械式駐車装置1の制御装置50の起動中、
図5のパレット移動制御処理を実行する。
【0030】
パレット移動制御処理が開始すると、パレット制御部51は、入庫又は出庫の要求が有るか判別し(ステップS21)、要求があれば、入庫又は出庫の要求に応じるパレット20の移動制御を行い、車両の入庫又は出庫を遂行する(ステップS23、S24)。ただし、入庫又は出庫の要求が有っても、パレット20の洗浄中である場合、パレット制御部51は、洗浄の終了を待機し(ステップS22)、その後、ステップS23又はS24の処理を実行する。ステップS23の入庫処理の際、パレット制御部51は、
図6に示すように、入庫車両を搭載するパレット20の候補が複数有るか判別し(ステップS41)、複数有れば、経過期間データに基づいて、上記複数のパレット20のうち前回洗浄後の経過期間が長いパレット20を入庫車両を搭載するパレット20として選択する(ステップS42)。パレット制御部51は、パレット20の候補が1つの場合には、当該パレット20を選択する。そして、選択されたパレット20を乗降室5へ移動させ、車両を搭載した後、いずれかの階の駐車スペース10へ移動させることで入庫を遂行する(ステップS43)。
【0031】
入庫(ステップS23)又は出庫(ステップS24)の遂行後、あるいは、ステップS21の判別の結果が入庫又は出庫の要求無しの場合には、パレット制御部51は、処理をステップS25に移行する。
【0032】
なお、入庫又は出庫の要求が有って、パレット20の洗浄中である場合に、パレット制御部51は、洗浄スペース10aとそれに隣接する駐車スペース10のパレット20を移動せずに、入庫又は出庫の要求に応じることができるか計算してもよい。そして、要求に応じることができる場合には、パレット制御部51は、洗浄の終了を待機せずに、上記計算の結果に従ったパレット20の移動制御を行って、車両の入庫又は出庫を遂行してもよい。
【0033】
処理がステップS25に移行すると、パレット制御部51は、予め設定されたパレット20の配置調整タイミング(例えば数時間ごとのタイミング)であるか判別し(ステップS25)、NOであれば処理をステップS21に戻すが、YESであれば処理を次に進める。YESと判別されて次に処理が進むと、パレット制御部51は、複数の駐車室2の複数のパレット20について、入庫及び出庫が速やかに遂行できるようにどのように配置を並べ替えかえればよいか計算する処理を行う(ステップS26)。当該ステップS26では、パレット制御部51は、例えば、入庫が多い時間帯には、車両を搭載しないパレット20を昇降スペース10Xの近くに多く配置し、出庫の時間を予測できる車両がある場合には、予測される出庫の時間に近づいたら上記車両を載置したパレット20を昇降スペース10Xの近くに配置するといった、理想的なパレット20の配置モデルを計算する。
【0034】
さらに、パレット制御部51は、ステップS26で計算したパレット20の配置モデルに対して、洗浄制御部52からの要求(優先度が付加されている場合には要求と優先度)に応じた補正を加える(ステップS27)。この補正により、計算された配置モデルに、洗浄制御部52の要求が反映される確率が高くなる。
【0035】
さらに、パレット制御部51は、速やかな入庫に応じるために車両を搭載していない空のパレット20を昇降スペース10Xの近くにする配置モデルに対して、経過期間データに基づき、次のような補正を加える(ステップS28)。すなわち、昇降スペース10Xの近くに配置可能な空のパレット20が複数ある場合に、パレット制御部51は、当該ステップS28において、上記の複数の空のパレット20のうち、前回洗浄後の経過期間が短い方のパレット20が、昇降スペース10Xのより近くに移動するように補正を加える。この補正により、前回洗浄後の経過期間が短いパレット20が車両の入庫に使用される確率が高くなる。パレット制御部51は、記憶部511のパレット管理データに基づき、空のパレット20を判別できる。
【0036】
そして、パレット制御部51は、パレット20の洗浄中でないことを確認して(ステップS29)、ステップS26~S28で計算されたパレット20の配置モデルに従って、複数の駐車室2のパレット20を並べ替える(ステップS30)。その後、パレット制御部51は、処理をステップS21に戻し、ステップS21からの処理を繰り返す。
【0037】
なお、ステップS26~S28の計算及びステップS30のパレット20の並べ替えの処理は、ステップS23、ステップS24の入庫又は出庫の要求に基づくパレット20の移動時に行ってもよい。
【0038】
以上のようなパレット移動制御処理により、車両の入庫又は出庫の要求、並びに、洗浄制御部52からの要求に応じたパレット20の移動が実現する。
【0039】
以上のように、本実施形態の機械式駐車装置1によれば、パレット20を洗浄する洗浄機構30を備える。したがって、仮に、融雪剤、海塩粒子などの金属腐食を誘発する物質を付着した車両が入庫し、このような物質をパレット20上に落とすことがあっても、当該物質を洗浄し、パレット20が劣化することを抑制することができる。よって、パレット20の交換周期を長くできる。
【0040】
さらに、本実施形態の機械式駐車装置1によれば、複数のパレット20の洗浄に関する履歴情報(経過期間データ、洗浄履歴データ)を記憶する経過期間データ記憶部521及び履歴データ記憶部522を備える。上記の履歴情報により、複数のパレット20の時間的な洗浄間隔の管理を行うことができ、或るパレット20が必要以上に多く洗浄され、別のパレット20の洗浄が不足するといった、無秩序な洗浄のスケジュールを回避できる。
【0041】
さらに、本実施形態の機械式駐車装置1によれば、パレット制御部51は、経過期間データに基づいて、入庫車両を搭載するパレット20を選択する(
図6のステップS42)。したがって、洗浄が不足しているパレット20が連続して入庫車両を搭載し、当該パレット20の洗浄不足が長く続いてしまうといった事態を低減できる。
【0042】
さらに、本実施形態の機械式駐車装置1によれば、パレット制御部51は、洗浄後の経過期間が短く、車両を搭載していない空のパレット20が、昇降スペース10Xの近くに配置されるように、パレット20の配置を調整する(
図5のステップS28、S30)。このとき、パレット制御部51は、洗浄後の経過期間がより短いパレット20が、昇降スペース10Xにより近く配置されるように調整する。このような配置により、入庫要求があったときに、洗浄後の経過期間が短いパレット20が入庫車両を搭載するのに利用されやすくなる。したがって、洗浄が不足しているパレット20が連続して入庫車両を搭載し、当該パレット20の洗浄不足が長く続いてしまうといった事態を低減しつつ、入庫時のパレット20の移動時間の短縮化を図ることができる。
【0043】
さらに、本実施形態の機械式駐車装置1によれば、複数階の駐車室2を備え、洗浄機構30は最下階の駐車室2に設けられている。したがって、洗浄液が別の階の駐車スペース10に垂れ落ちてしまうことを防止できる。
【0044】
さらに、本実施形態の機械式駐車装置1によれば、洗浄制御部52は、洗浄スペース10aに隣接する駐車スペース10に車両が駐車していないときに、洗浄スペース10aのパレット20を洗浄する(
図4のステップS2、S5)。したがって、パレット20の洗浄中に洗浄液が飛び散っても、隣接する駐車スペース10の車両に洗浄液が付着してしまうことを抑制できる。
【0045】
さらに、本実施形態の機械式駐車装置1によれば、洗浄スペース10aは、駐車スペース10でもある。したがって、機械式駐車装置1に駐車可能な最大台数を低減することなく、パレット20の洗浄を行うことができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、パレット移動型の機械式駐車装置1を示したが、本発明は、車両を搭載する車両搭載部が複数の駐車スペースに循環移動する循環型の機械式駐車装置など、様々な型式の機械式駐車装置に適用されてもよい。また、上記実施形態では、入庫口と出庫口とが共通の乗降室5である例を示したが、入庫口と出庫口とが別々にあってもよい。また、洗浄機構の具体的な構成、制御装置の具体的な機能構成、パレット移動と洗浄の制御処理など、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 機械式駐車装置
2 駐車室
5 乗降室
6 昇降装置(移動機構)
63 昇降枠
10 駐車スペース
10a 洗浄スペース
10X 昇降スペース(入庫口移動スペース)
13 移動枠(移動機構)
14 駆動装置(移動機構)
20 パレット(車両搭載部)
30 洗浄機構
31 洗浄ブラシ
32 乾拭きブラシ
36 防水パン
50 制御装置
51 パレット制御部
511 パレット管理データの記憶部
52 洗浄制御部
521 経過期間データ記憶部
522 履歴データ記憶部
53 表示装置
54 入力装置