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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085432
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】ワイパ機構
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
B41J2/165 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197117
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】樋口 幸雄
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056FA13
2C056JB04
2C056JB07
(57)【要約】
【課題】ワイパ機構において、ワイプ後のインクジェットヘッドの側面にインクが残留するのを抑制する。
【解決手段】ワイパ機構1は、インクジェットヘッド111のノズル列111aが設けられたヘッド面111bをワイプ方向D1にワイプする第1ワイパ11及び第2ワイパ12を備える。第1ワイパ11は、ワイプ方向D1に直交するヘッド面111aの幅方向D2の幅が第2ワイパ12よりも狭く、且つ、この第2ワイパ12よりもワイプ方向D1における下流側において、ヘッド面111aのうちノズル列111bを含む一部をワイプする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドのノズル列が設けられたヘッド面をワイプ方向にワイプする第1ワイパ及び第2ワイパを備え、
前記第1ワイパは、前記ワイプ方向に直交する前記ヘッド面の幅方向の幅が前記第2ワイパよりも狭く、且つ、当該第2ワイパよりも前記ワイプ方向における下流側において、前記ヘッド面のうち前記ノズル列を含む一部をワイプする
ことを特徴とするワイパ機構。
【請求項2】
前記第1ワイパは、前記ヘッド面のワイプ時に当該ヘッド面の前記幅方向における両端から前記幅方向に間隔を隔てて位置し、
前記第2ワイパは、前記ヘッド面の前記幅方向における全体をワイプする
ことを特徴とする請求項1記載のワイパ機構。
【請求項3】
前記第1ワイパは、前記第2ワイパよりも前記ヘッド面に対する当接圧が弱い
ことを特徴とする請求項1又は2記載のワイパ機構。
【請求項4】
前記ヘッド面のワイプに伴う弾性変形時において、
前記第1ワイパと前記第2ワイパとが接触せず、且つ、前記第1ワイパの少なくとも先端は、ワイプに伴う弾性変形前の前記第2ワイパと同じ位置、又は、当該位置とワイプに伴って弾性変形したときの前記第2ワイパとの間に位置する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のワイパ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドのノズル列が設けられたヘッド面をワイプするワイパ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドのノズル列が設けられたヘッド面(例えば底面)をワイプするワイパ機構を備えるインクジェット印刷装置が知られている。このようなインクジェット印刷装置において、1枚目のワイパが、ヘッド面との間に表面張力でインクを吸着する隙間を隔てて配置され、2枚目のワイパが、インク液滴等を擦り取るようにヘッド面と隙間なく配置されたインクジェット印刷装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-224975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイパ機構において、例えばゴム製ブレードで成る単一のワイパのみによってヘッド面をワイプする場合、ヘッド面に対する当接圧が強いと、ヘッド面のクリーニング性能は向上するが、ヘッド面の耐久性が低下する。
【0005】
そこで、上述のように複数のワイパを用いることによって、クリーニング性能向上及び耐久性維持の両立を図ることが考えられる。但し、上述のように1枚目のワイパをインクジェットヘッドのヘッド面との間に表面張力でインク液滴等を吸着するわずかな隙間を隔てて配置するのは困難であり、また、隙間の大きさのバラつきに起因する効果(吸着性能等)のバラつきが大きい。
【0006】
ところで、単一のワイパのみを用いる場合も、複数のワイパを用いる場合も、ワイプされたインクなどがインクジェットヘッドの側面に回り込み、インクが残留する。このようにインクジェットヘッドの側面にインクが残留すると、用紙の搬送の気流や振動などによってインクがヘッド面に流入することで、吐出不良が生じたり或いは搬送される用紙にインクが付着したりする。
【0007】
本発明の目的は、ワイプ後のインクジェットヘッドの側面にインクが残留するのを抑制することができるワイパ機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様では、ワイパ機構は、インクジェットヘッドのノズル列が設けられたヘッド面をワイプ方向にワイプする第1ワイパ及び第2ワイパを備え、前記第1ワイパは、前記ワイプ方向に直交する前記ヘッド面の幅方向の幅が前記第2ワイパよりも狭く、且つ、当該第2ワイパよりも前記ワイプ方向における下流側において、前記ヘッド面のうち前記ノズル列を含む一部をワイプする。
【発明の効果】
【0009】
前記態様によれば、ワイプ後のインクジェットヘッドの側面にインクが残留するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施の形態に係るインクジェット印刷装置の内部構造を示す正面図である。
図2】一実施の形態に係るインクジェット印刷装置の主要な制御構成を示す図である。
図3】一実施の形態におけるワイプ位置にあるワイパ機構を示す正面図である。
図4】一実施の形態におけるワイパ機構を示す平面図である。
図5図4のV-V断面図である。
図6】一実施の形態における第1ワイパ及び第2ワイパの位置関係を説明するためのインクジェットヘッドの底面図である。
図7】一実施の形態におけるワイプ動作を説明するためのワイパユニットの側面図である。
図8】一実施の形態におけるワイプ動作を説明するための第1ワイパ及び第2ワイパの拡大側面図である。
図9】一実施の形態におけるワイプ動作を説明するためのワイパユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、一実施の形態に係るインクジェット印刷装置100の内部構造を示す正面図である。
【0013】
図2は、インクジェット印刷装置100の主要な制御構成を示す図である。
【0014】
なお、図1及び後述する図3図9に示す前後、上下、及び左右の各方向は、媒体の一例である用紙Pの印刷時における搬送方向を右方向、第1ワイパ11及び第2ワイパ12のワイプ方向D1を前方向とした場合の一例にすぎないが、例えば、前後方向及び左右方向が水平方向であり、上下方向が鉛直方向である。
【0015】
図1に示すように、インクジェット印刷装置100は、ワイパ機構1と、印刷部110と、吸着搬送部120と、外部給紙部130と、内部給紙部141~143と、搬送ローラ対151~155と、レジストローラ対156とを備える。また、図2に示すように、インクジェット印刷装置100は、更に、制御部161と、記憶部162と、操作パネル部163と、スキャナ164と、排紙部165とを備える。なお、図1には、外部給紙部130及び内部給紙部141~143から印刷部110へ続く搬送経路を太い実線で示す。
【0016】
図1に示す印刷部110は、例えばライン型インクジェットヘッドである複数のインクジェットヘッド111を有する。図4に示すように、用紙Pの搬送方向(右方向)に直交する主走査方向(前後方向)に沿って千鳥状に並べられた6個のインクジェットヘッド111が2組、計12個配置されている。すなわち、前後方向に沿って配列された1組6個のインクジェットヘッド111は、それぞれ左右方向における位置を交互にずらして配置されている。一例ではあるが、一方の組の6個のインクジェットヘッド111は、2色(例えば、ブラック(K)及びシアン(C))のインクを吐出し、他方の組の6個のインクジェットヘッド111は、上記一方の組とは異なる色の2色(例えば、マゼンタ(M)及びイエロー(Y))のインクを吐出する。
【0017】
図1に示すように、吸着搬送部120は、印刷部110に対向するように配置されている。搬送部120は、例えば用紙Pを吸着しながら、搬送ベルトによって用紙Pを搬送する。なお、吸着搬送部120は、図1に示す印刷位置と、この印刷位置よりも下方の図3に示すワイプ位置と、このワイプ位置よりも下方の図示しない待機位置とに移動可能であるとよい。また、ワイパ機構1は、図3に示すようにワイプ時において印刷部110の下方に位置し、図1に示すように印刷時において印刷部110の下方から退避した位置に位置する。
【0018】
外部給紙部130及び内部給紙部141~143は、給紙トレイ131,141a,142a,143aと、スクレーパローラ132,141b,142b,143bと、ピックアップローラ133,141c,142c,143cとを有する。
【0019】
給紙トレイ131,141a,142a,143aには、複数の用紙Pが積載される。
【0020】
スクレーパローラ132,141b,142b,143bは、給紙トレイ131,141a,142a,143aに積載された複数の用紙Pのうち最上位に位置する用紙Pを繰り出して搬送する繰り出しローラである。
【0021】
ピックアップローラ133,141c,142c,143cは、スクレーパローラ132,141b,142b,143bによって繰り出された用紙Pを搬送する。
【0022】
搬送ローラ対151~155は、内部給紙部141~143からレジストローラ対156までの間の搬送経路に配置されている。
【0023】
レジストローラ対156には、外部給紙部130及び内部給紙部141~143から搬送される用紙Pが突き当てられる。これにより、用紙Pの斜行が修正される。
【0024】
図2に示す制御部161は、インクジェット印刷装置100全体の動作を制御する演算処理装置として機能するプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit)を有し、ワイパ駆動部40、印刷部110、吸着搬送部120等のインクジェット印刷装置100の各部の動作を制御する。
【0025】
記憶部162は、例えば、所定の制御プログラムが予め記録されている読み出し専用半導体メモリであるROM(Read Only Memory)、プロセッサが各種の制御プログラムを実行する際に必要に応じて作業用記憶領域として使用される随時書き込み読み出し可能な半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)、ハードディスク装置などである。
【0026】
操作パネル部163は、例えば、各種操作を行うための操作キー、タッチパネル、各種情報を表示するディスプレイなどを有することで、インクジェット印刷装置100の入力部及び表示部の一例として機能する。
【0027】
スキャナ164は、原稿から画像データを読み取る。
【0028】
排紙部165は、図1には図示しないが、印刷部110によって印刷が行われた用紙Pが積載される排紙トレイと、この排紙トレイに用紙Pを排出する排出ローラとを有する。
【0029】
図3は、ワイプ位置にあるワイパ機構1を示す正面図である。
【0030】
図4は、ワイパ機構1を示す平面図である。
【0031】
図5は、図4のV-V断面図である。
【0032】
図6は、第1ワイパ11及び第2ワイパ12の位置関係を説明するためのインクジェットヘッド111の底面図である。
【0033】
図3図6及び後述する図7図9に示す前後、上下、及び左右の各方向は、ワイパ機構1が図3に示すように印刷部110と吸着搬送部120との間にある状態の方向である。
【0034】
図4に示すように、ワイパ機構1は、ワイパユニット10と、2つのガイド部20と、インク受け部30と、ワイパ駆動部40とを備える。
【0035】
ワイパユニット10は、例えば4つの第1ワイパ11と、例えば4つの第2ワイパ12と、これらの第1ワイパ11及び第2ワイパ12を支持するワイパ支持部材13とを有する。
【0036】
第1ワイパ11及び第2ワイパ12は、インクジェットヘッド111(ヘッド面111a)との当接により変形する弾性体であり、例えば、ゴム製のワイパブレードである。第1ワイパ11は、第2ワイパ12よりもワイプ方向D1における下流側に設けられている。すなわち、第1ワイパ11は、第2ワイパ12よりも先にヘッド面111aをワイプする。
【0037】
第1ワイパ11及び第2ワイパ12は、図6に示すインクジェットヘッド111のインクを吐出するノズル列111bが設けられたヘッド面111a(例えば底面)を、用紙Pの搬送方向(右方向)とは直交するワイプ方向D1(前方向)にワイプする。なお、図6には、第1ワイパ11及び第2ワイパ12のヘッド面111aとの当接領域を2点鎖線(想像線)で示す。
【0038】
例えば、ヘッド面111aは、図示はしないが、ポリイミド樹脂によって形成されノズル列111bが設けられたノズル面と、このノズル面を保護する保護プレートの底面とを含む。なお、ヘッド面111aは、撥インク膜がコーティングされているとよい。
【0039】
上述のように6個ずつ2組のインクジェットヘッド111が千鳥状に配置されていることによって、インクジェットヘッド111は、図4に示すように左右方向に計4列に並んでいる。そのため、第1ワイパ11及び第2ワイパ12は、1列(3個)のインクジェットヘッド111の図6に示すヘッド面111aをワイプするために4つずつ配置されている。
【0040】
図5に示すように、第1ワイパ11は、ワイプ前の状態で、ヘッド面111aに直交する上方向に対して、ワイパ支持部材13からワイプ方向D1とは反対方向(後方)に傾いて延びる(傾きθ)。一方、第2ワイパ12は、ワイプ前の状態で、ワイパ支持部材13からヘッド面111aに直交する上方向に延びる。ワイプ前における第1ワイパ11の上端及び第2ワイパ12の上端は、ヘッド面111aよりも上方に位置する。これにより、第1ワイパ11及び第2ワイパ12は、ワイプ時に湾曲した状態でヘッド面111aをワイプする。
【0041】
図6に示すように、第1ワイパ11は、ヘッド面111aのワイプ時に、ワイプ方向D1に直交するヘッド面111aの幅方向D2における両端から幅方向D2に間隔Gを隔てて位置し、ヘッド面111aのうちノズル列111bを含む一部をワイプする。一方、第2ワイパ12は、ヘッド面111aよりも幅方向D2に大きく、ヘッド面111aの幅方向D2における全体をワイプする。このように、第1ワイパ11は、ワイプ方向D1に直交するヘッド面111aの幅方向D2の幅が第2ワイパ12よりも狭い。なお、第1ワイパ11は、ヘッド面111aのワイプ時に、ヘッド面111aの幅方向D2における一端のみから幅方向D2に間隔Gを隔てて位置し、ヘッド面111aの片側の端部をワイプしてもよいが、上述のようにヘッド面111aの幅方向D2における両端から幅方向D2に間隔Gを隔てて位置していることが望ましい。また、第2ワイパ12は、ヘッド面111aの幅方向D2における全体をワイプしなくてもよいが、上述のようにヘッド面111aの幅方向D2における全体をワイプすることが望ましい。
【0042】
図5に示すように、第1ワイパ11は、上述のとおり、ワイプ前の状態で、ヘッド面111aに直交する上方向に対して、ワイパ支持部材13からワイプ方向D1とは反対方向(後方)に傾いて延び(傾きθ)、第2ワイパ12は、ワイプ前の状態で、ワイパ支持部材13からヘッド面111aに直交する上方向に延びる。そのため、上方向に対してワイプ方向D1とは反対方向への傾きθを有する第1ワイパ11は、第2ワイパ12よりもヘッド面111aに対する当接圧が弱い。このように、第1ワイパ11の当接圧を第2ワイパ12の当接圧よりも弱くするためには、第1ワイパ11と第2ワイパ12とで角度を変更することのほか、例えば、第1ワイパ11のワイプ前の上下方向の長さ(自由長)を第2ワイパ12との比較で長くすること、第1ワイパ11の厚さ(ワイプ方向D1)を第2ワイパ12の厚さよりも薄くすること、第1ワイパ11と第2ワイパ12とで材質を変更することなども考えられる。
【0043】
図4に示すように、ワイパ支持部材13には、上述の4つの第1ワイパ11及び4つの第2ワイパ12が一体に設けられている。なお、第1ワイパ11及び第2ワイパ12は、ワイパ支持部材13とは別体に設けられ、ワイパ支持部材13に取り付けられていてもよい。
【0044】
図4及び図5に示すように、ワイパ支持部材13には、例えば、左右一対のネジ孔13a,13aが前後方向に貫通して設けられている。
【0045】
2つのガイド部20のそれぞれは、前後方向に延びる例えばネジ軸であり、ワイパ支持部材13のネジ孔13a,13aを貫通するように配置されている。そのため、ガイド部20が回転することによって、ワイパユニット10が前後方向に移動可能となる。
【0046】
インク受け部30は、インクジェットヘッド111から紙粉や埃などとともに落下する図7に示すパージインクPIを受ける。
【0047】
インク受け部30内のインクは、ワイパ機構1が図1に示す退避位置において傾くことにより、図4に示すインク受け部30の排出部30bから、図示はしないが廃液経路を経て廃液収容部へ流れるとよい。インク受け部30は、例えば、上方に開口する直方体形状を呈する。そのため、インク受け部30の内部底面がインク受け面30aとなる。なお、インク受け部30は、ガイド部20の前端を回転可能に支持する。
【0048】
ワイパ駆動部40は、例えば2つのモータ41を有する。
【0049】
モータ41は、ワイパユニット10(第1ワイパ11及び第2ワイパ12)を駆動する駆動手段(アクチュエータ)の一例であり、例えば、ガイド部20に接着によって結合されている。モータ41は、ガイド部20を回転させることによって、上述のようにワイパユニット10を前後に移動させる。なお、単一のモータ41が、例えば駆動ベルトを回転させることによって、この駆動ベルト内のプーリを介して2つのガイド部20を回転させてもよい。或いは、単一のモータ41及び単一のガイド部20のみが配置され、この単一のガイド部20がワイパユニット10を前後方向に移動させてもよい。
【0050】
次に、第1ワイパ11及び第2ワイパ12を用いたワイプ動作について説明する。なお、このワイプ動作は、例えば、所定の印刷枚数ごと若しくは経過時間ごとに、又は図2に示す操作パネル部163におけるユーザの操作に基づいて、行われるとよい。
【0051】
図7は、ワイプ動作を説明するためのワイパユニット10の側面図である。
【0052】
図8は、ワイプ動作を説明するための第1ワイパ11及び第2ワイパ12の拡大側面図である。
【0053】
図9は、ワイプ動作を説明するためのワイパユニット10の斜視図である。
【0054】
まず、第1ワイパ11及び第2ワイパ12がインクジェットヘッド111のヘッド面111aをワイプする前に、図3に示すように、吸着搬送部120が図1に示す印刷位置よりも下方に移動し、ワイパ機構1が印刷部110と吸着搬送部120との間に移動する。また、インクジェットヘッド111は、ノズル列111bから図7に示すようにパージインクPIを吐出する。これにより、ノズル列111bから吐出されたパージインクPIが複数箇所に集まって点在する。
【0055】
その後、図7に示すように、第1ワイパ11及び第2ワイパ12がワイプ方向D1に移動する。これにより、第1ワイパ11及び第2ワイパ12によってワイプされたパージインクPI等(例えば、パージインクPI、もともとヘッド面111aに付着していたインク、これらのインクに含まれる紙粉や埃など)は、第1ワイパ11を伝って、上述の図4及び図5に示すインク受け部30のインク受け面30aに重力方向に落下する。なお、図7図9ではワイプされた後のパージインクPIの図示は省略する。
【0056】
図8に示すように、ヘッド面111aのワイプに伴う弾性変形時において、第1ワイパ11と第2ワイパ12とは接触しない。また、ヘッド面111aのワイプに伴う弾性変形時において、第1ワイパ11の少なくとも先端11aは、ワイプに伴う弾性変形前の第2ワイパ12-1(想像線である2点鎖線で図示)と同じ位置、又は、この位置とワイプに伴って弾性変形したときの第2ワイパ12(変形領域12a)との間に位置するとよい。このように、第1ワイパ11と第2ワイパ12とは、ワイプ時において接近していることが望ましい。
【0057】
一方、ヘッド面111aのワイプ前には、第1ワイパ11の先端11aは、第2ワイパ12の変形領域12aよりもワイプ方向D1の下流側に位置する。なお、第2ワイパ12の変形領域12aは、第2ワイパ12の先端を含む一部であり、上述のように、第2ワイパ12は、ワイプ前の状態で、ワイパ支持部材13からヘッド面111aに直交する上方向に延びるため、第2ワイパ12の変形領域12aよりもワイパ支持部材13側の根元領域12bは、ヘッド面111aに直交する上方向に延びる。そのため、第1ワイパ11の先端11aは、ヘッド面111aのワイプ時において、第2ワイパ12の根元領域12b(又は根元領域12bが延びる方向とヘッド面111aとの交点)よりもワイプ方向D1の上流側に位置するといえる。
【0058】
ここで、上述のとおり、図6に示すように、第1ワイパ11は、ヘッド面111aのワイプ時に、ヘッド面111aの幅方向D2における両端から幅方向D2に間隔Gを隔てて位置する。そのため、第1ワイパ11によってワイプされたパージインクPIは、図9に示すようにインクジェットヘッド111の側面には付着しない。
【0059】
また、上述のように、第1ワイパ11は、第2ワイパ12よりもヘッド面111aに対する当接圧が弱い。そのため、第1ワイパ11によってワイプされた後、パージインクPIは、図8に示すように、ヘッド面111aに薄い液膜として残る。
【0060】
その後、薄い液膜となったパージインクPIは、第2ワイパ12によってワイプされる。第2ワイパ12は、ヘッド面111aの幅方向D2における全体をワイプするが、一部のパージインクPIが既に第1ワイパ11によってワイプされているため、図9に示すようにインクジェットヘッド111の側面に付着するパージインクPIの量は少なく、ヘッド面111aからずり上がる高さも低い。そのため、インク受け部30のインク受け面30aに落下しやすい。なお、第2ワイパ12は、第1ワイパ11によってワイプされないヘッド面111aの幅方向D2の端部に残るパージインクPI等を、第2ワイパ12の幅方向D2における端部においてワイプするため、第2ワイパ12の幅方向D2における端部の側面を伝ってパージインクPI等がインク受け部30のインク受け面30aに重力方向に落下しやすい。
【0061】
第1ワイパ11及び第2ワイパ12がすべてのインクジェットヘッド111のヘッド面111aをワイプした後には、インクジェットヘッド111がピエゾ素子を駆動させて各ノズル列111bからインクを吐出させるフラッシング動作により、ノズル列111bでのインクの混色を改善することが可能である。その後、図3に示す吸着搬送部120が下方に移動し、ワイパ機構1が図1に示す退避位置に移動する。また、吸着搬送部120は、印刷が行われる場合には印刷部110に近接する位置まで上昇し、印刷が行われない場合には更に下方の待機位置へ移動する。なお、ワイパユニット10(第1ワイパ11及び第2ワイパ12)は、図1に示すワイパ機構1の退避位置において、次のワイプ動作に備えてワイプ方向D1の上流側に戻っている状態であることが望ましい。
【0062】
以上説明した本実施の形態では、ワイパ機構1は、インクジェットヘッド111のノズル列111aが設けられたヘッド面111bをワイプ方向D1にワイプする第1ワイパ11及び第2ワイパ12を備える。第1ワイパ11は、ワイプ方向D1に直交するヘッド面111aの幅方向D2の幅が第2ワイパ12よりも狭く、且つ、この第2ワイパ12よりもワイプ方向D1における下流側において、ヘッド面111aのうちノズル列111bを含む一部をワイプする。
【0063】
このように、第1ワイパ11がヘッド面111aのうちノズル列111bを含む一部のみをワイプするため、第1ワイパ11によってワイプされたパージインクPI等(例えば、パージインクPI、もともとヘッド面111aに付着していたインクなど)がインクジェットヘッド111の側面に回り込むのを抑制することができる。よって、本実施の形態によれば、ワイプ後のインクジェットヘッド111の側面にインクが残留するのを抑制することができる。これにより、用紙P等の媒体の搬送の気流や振動などによって、インクジェットヘッド111の側面に残留したインクがヘッド面111aに流入し、吐出不良が生じたり或いは搬送される媒体にインクが付着したりするのを抑制することができる。また、第2ワイパ12は、幅方向D2の幅が第1ワイパ11よりも広いため、第1ワイパ11によってワイプされないヘッド面111aの幅方向D2の端部のパージインクPI等をワイプすることができる。
【0064】
また、本実施の形態では、第1ワイパ11は、ヘッド面111aのワイプ時にヘッド面111aの幅方向D2における両端から幅方向D2に間隔Gを隔てて位置し、第2ワイパ12は、ヘッド面111aの幅方向D2における全体をワイプする。
【0065】
そのため、第1ワイパ11によってワイプされたパージインクPI等がインクジェットヘッド111の幅方向D2における両端においてインクジェットヘッド111の側面に回り込むのを抑制することができる。したがって、インクジェットヘッド111の側面にインクが残留するのを、より一層抑制することができる。また、第2ワイパ12がヘッド面111aの幅方向D2における全体をワイプすることによって、ヘッド面111aの全体においてパージインクPIを確実にワイプすることができる。
【0066】
また、本実施の形態では、第1ワイパ11は、第2ワイパ12よりもヘッド面111aに対する当接圧が弱い。
【0067】
これにより、第1ワイパ11によってワイプされた後のパージインクPI等は、ヘッド面111aに薄い液膜(液残り)として均一に拡がる。そのため、第1ワイパ11の配置が省略され、パージされた液滴のままのパージインクPIを単一の第2ワイパ12によってワイプする態様と比較して、第2ワイパ12によってパージインクPI等を確実にワイプすることができる。また、第1ワイパ11が薄い液膜のパージインクPI等を隔てることでヘッド面111aに当接しないことによって、ヘッド面111aの耐久性を維持することができる。更には、第1ワイパ11の当接圧が第2ワイパ12の当接圧よりも弱いことによって、第1ワイパ11によってワイプされたインクがインクジェットヘッド111の側面に回り込むのを、より一層抑制することができる。
【0068】
また、本実施の形態では、ヘッド面111aのワイプに伴う弾性変形時において、第1ワイパ11と第2ワイパ12とが接触せず、且つ、第1ワイパ11の少なくとも先端11aは、ワイプに伴う弾性変形前の第2ワイパ12と同じ位置、又は、この位置とワイプに伴って弾性変形したときの第2ワイパ12(変形領域12a)との間に位置する。
【0069】
このように、第1ワイパ11の先端11aが第2ワイパ12(変形領域12a)にワイプ時に接近することによって、第1ワイパ11によってワイプされることで薄い液膜となったパージインクPI等が、ヘッド面111aの撥インク性でヘッド面111aの一部に凝集される前に、第2ワイパ12によってワイプされる。そのため、第2ワイパ12がヘッド面111aのパージインクPI等の無い領域をワイプ(空ワイプ)することに起因する、クリーニング性能の低下やヘッド面111aの劣化を防止することができる。また、第1ワイパ11と第2ワイパ12とが接触しないことによって、第1ワイパ11と第2ワイパ12との接触部分の剛性が幅方向D2の一部のみで高まることに起因するクリーニング性能の低下を防止することができるとともに第2ワイパ12によって第1ワイパ11と第2ワイパ12との間のパージインクPI等を確実にワイプすることができる。
【0070】
なお、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0071】
[付記1]
インクジェットヘッドのノズル列が設けられたヘッド面をワイプ方向にワイプする第1ワイパ及び第2ワイパを備え、
前記第1ワイパは、前記ワイプ方向に直交する前記ヘッド面の幅方向の幅が前記第2ワイパよりも狭く、且つ、当該第2ワイパよりも前記ワイプ方向における下流側において、前記ヘッド面のうち前記ノズル列を含む一部をワイプする
ことを特徴とするワイパ機構。
【0072】
[付記2]
前記第1ワイパは、前記ヘッド面のワイプ時に当該ヘッド面の前記幅方向における両端から前記幅方向に間隔を隔てて位置し、
前記第2ワイパは、前記ヘッド面の前記幅方向における全体をワイプする
ことを特徴とする付記1記載のワイパ機構。
【0073】
[付記3]
前記第1ワイパは、前記第2ワイパよりも前記ヘッド面に対する当接圧が弱い
ことを特徴とする付記1又は2記載のワイパ機構。
【0074】
[付記4]
前記ヘッド面のワイプに伴う弾性変形時において、
前記第1ワイパと前記第2ワイパとが接触せず、且つ、前記第1ワイパの少なくとも先端は、ワイプに伴う弾性変形前の前記第2ワイパと同じ位置、又は、当該位置とワイプに伴って弾性変形したときの前記第2ワイパとの間に位置する
ことを特徴とする付記1から3のいずれか記載のワイパ機構。
【符号の説明】
【0075】
1 ワイパ機構
10 ワイパユニット
11 第1ワイパ
11a 先端
12 第2ワイパ
12-1 弾性変形前の第2ワイパ
12a 変形領域
12b 根元領域
13 ワイパ支持部材
13a ネジ孔
20 ガイド部
30 インク受け部
30a インク受け面
30b 排出部
40 ワイパ駆動部
41 モータ
100 インクジェット印刷装置
110 印刷部
111 インクジェットヘッド
111a ヘッド面
111b ノズル列
120 吸着搬送部
130 外部給紙部
131 給紙トレイ
132 スクレーパローラ
133 ピックアップローラ
141,142,143 内部給紙部
141a,142a,143a 給紙トレイ
141b,142b,143b スクレーパローラ
141c,142c,143c ピックアップローラ
151~155 搬送ローラ対
156 レジストローラ対
161 制御部
162 記憶部
163 操作パネル部
164 スキャナ
165 排紙部
D1 ワイプ方向
D2 幅方向
G 間隔
P 用紙
PI パージインク
図1
図2
図3
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図9