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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085433
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20220601BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20220601BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20220601BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
B41J2/165 207
B41J2/17 103
B41J2/21
B41J2/01 451
B41J2/165 209
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197118
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】久保田 睦
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA11
2C056EA16
2C056EB12
2C056EB13
2C056EB35
2C056EB38
2C056EB46
2C056EB47
2C056EB49
2C056EB58
2C056EC12
2C056EC24
2C056EC36
2C056EC40
2C056EC54
2C056EC72
2C056FA13
2C056JC17
2C056JC23
(57)【要約】
【課題】インクジェット印刷装置において、画像品質を向上させる。
【解決手段】インクジェット印刷装置1は、媒体Sに向けてインクIKを吐出する複数のノズル11を有するインクジェットヘッド10と、このインクジェットヘッド10を制御する制御部71と、インクIKを吸引するインク回収機構50とを備え、制御部71は、複数のノズル11のうち、印刷を行っていないノズル11に、インク回収機構50により回収できるようにパージインクIK1を吐出させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に向けてインクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを制御する制御部と、
インクを吸引するインク回収機構とを備え、
前記制御部は、前記複数のノズルのうち、印刷を行っていないノズルに、前記インク回収機構により回収できるようにパージインクを吐出させる
ことを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記インクジェットヘッドは、それぞれが前記複数のノズルを有し吐出するインクの色が異なる複数のヘッドモジュールを有し、
前記制御部は、所定の色のインクを吐出する前記ノズルによって印刷を行う領域に対して、前記所定の色とは異なる色のインクを吐出する前記ノズルによって印刷を行わない場合において、前記異なる色のインクを吐出する前記ノズルに、前記領域に着弾するようにパージインクを吐出させる
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記インク回収機構により回収できるように前記ノズルにパージインクを吐出させる場合に、前記異なる色のインクを吐出する前記ノズルに、前記領域に着弾するようにパージインクを吐出させる場合よりも、吐出量を減らし且つ吐出間隔を短くする
ことを特徴とする請求項2記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記異なる色のインクを吐出する前記ノズルに、前記領域に着弾するようにパージインクを吐出させる場合に、前記領域の印字率が高いほど吐出量を増やし且つ吐出間隔を長くし、前記領域の印字率が低いほど吐出量を減らし且つ吐出間隔を短くする
ことを特徴とする請求項2又は3記載のインクジェット印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ノズルに前記インク回収機構により回収できるようにパージインクを吐出させる場合に、前記複数のノズルのうち少なくとも1つが複数の前記媒体間で印刷を中止しているときに前記インク回収機構の吸引力を強める
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェット印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記媒体への印刷内容と前記インク回収機構の吸引力とに基づいて、前記インク回収機構により回収できるように前記ノズルにパージインクを吐出させる場合の吐出量及び吐出間隔を調整する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを回収するインク回収機構を備えるインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷装置のインクジェットヘッドは、ノズル面を解放放置していると、ノズル近傍のインクが乾燥・増粘し、吐出不良や不吐出が発生する。この乾燥・増粘は、特に乾燥しやすい水性インクや、印字エリア外でフラッシング(スピット、予備吐出、空吐出とも言う)による回復ができないライン型ヘッドで起きやすく、印字中であっても、非吐出期間中に乾燥してしまうこともある。
【0003】
そこで、一定の長さごとにライン上に印刷が行われるようにラインフラッシングを行うとともに、紙面上に目視で認識し難い程度にドットを吐出する紙上フラッシング(スターフラッシング)を行う手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、低彩度かつ高濃度の領域内に分散させてフラッシングを行い、低彩度かつ低濃度の領域のエッジにフラッシングを行う印刷システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-59875号公報
【特許文献2】特開2007-1118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の紙上フラッシングを行った場合、拡大すると細かいドットが散りばめられており、目立たないが全体的には薄汚れて見える。そのため、画像品質が低下してしまう。なお、上述のラインフラッシングは、不要部分を裁断できない枚葉紙には適用し難い。
【0007】
上述のように低彩度の領域にフラッシングを行う印刷システムでは、低彩度の領域が存在しない場合には紙上フラッシングを行うことができない。そのため、吐出不良や不吐出が発生すると、画像品質が低下する。また、低彩度かつ低濃度の領域のエッジにフラッシングを行う場合には、1ラインのエッジのみにフラッシングを行うことや全体的に低濃度な画像には適用できないことによって、ノズルの回復効果が弱い。そのため、この観点でも、吐出不良や不吐出に起因して画像品質が低下し得る。
【0008】
本発明の目的は、印刷内容によらず画像品質の低下を抑制することができるインクジェット印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様では、インクジェット印刷装置は、媒体に向けてインクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを制御する制御部と、インクを吸引するインク回収機構とを備え、前記制御部は、前記複数のノズルのうち、印刷を行っていないノズルに、前記インク回収機構により回収できるようにパージインクを吐出させる。
【発明の効果】
【0010】
前記態様によれば、印刷内容によらず画像品質の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施の形態に係るインクジェット印刷装置の内部構造を示す正面図である。
図2】一実施の形態に係るインクジェット印刷装置の制御構成を示す図である。
図3】一実施の形態におけるインク回収機構の内部構造を示す正面図である。
図4】一実施の形態におけるインクジェットヘッドの制御方法を説明するためのフローチャートである。
図5図4の予備吐出内容決定処理を説明するためのフローチャートである。
図6】一実施の形態における、(a)通常吐出、(b)着弾用予備吐出、及び(c)回収用予備吐出を説明するための説明図である。
図7】一実施の形態における印刷領域を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、一実施の形態に係るインクジェット印刷装置1の内部構造を示す図である。
【0014】
図2は、インクジェット印刷装置1の制御構成を示す図である。
【0015】
なお、図1並びに後述する図3及び図6に示す上下、左右、及び前後の各方向は、例えば、上下方向が鉛直方向であり、左右方向及び前後方向が水平方向である。
【0016】
図1に示すように、インクジェット印刷装置1は、インクジェットヘッド10と、搬送部20と、媒体供給部30と、媒体排出部40と、インク回収機構50と、複数の搬送ローラ対61と、切替機構62と、スイッチバックローラ対63とを備える。また、図2に示すように、インクジェット印刷装置1は、制御部71と、記憶部72と、操作パネル部73と、インターフェース部74とを備える。
【0017】
図1に示すインクジェットヘッド10は、一例ではあるが、それぞれに複数のノズル11(図3参照)が配列された複数のヘッドモジュールを有し、例えば用紙である媒体Sが1回通過する際に印刷を行うワンパスのライン型インクジェットヘッドである。複数のノズル11は、媒体SにインクIK(図3参照)を吐出する。インクIKが吐出される際には、媒体Sに付着せずに浮遊するミストM(図3参照)が放出される。
【0018】
例えば、インクジェットヘッド10には、媒体Sの搬送方向D(右方向)に直交する主走査方向(前後方向)に沿って千鳥状に並べられた6個のヘッドモジュールが2組、計12個配置されている。すなわち、主走査方向に沿って配列された1組のヘッドモジュールは、それぞれ搬送方向Dにおける位置を交互にずらして配置されている。各ヘッドモジュールには、搬送方向Dに2列隣接して主走査方向に並ぶようにノズル11が配列されている。一方の組のヘッドモジュールの2列のノズル11は、一方の列と他方の列とで異なる2色(例えば、ブラック(K)及びシアン(C))のインクIKを吐出し、他方の組のヘッドモジュールの2列のノズル11は、一方の列と他方の列とで異なり且つ上記一方の組とも異なる2色(例えば、マゼンタ(M)及びイエロー(Y))のインクIKを吐出する。なお、上述のインクジェットヘッド10の構成は一例にすぎず、インクジェットヘッド10としては、媒体Sに向けてインクIKを吐出する複数のノズル11を有するものであればよく、例えば、単一のヘッドモジュールからなるインクジェットヘッド10であってもよい。
【0019】
搬送部20は、搬送ベルト21と、駆動ローラ22と、従動ローラ23~25と、プラテン26とを有する。搬送部20は、インクジェットヘッド10に対向して配置され、媒体Sを搬送方向(右方向)に搬送する。搬送部20は、例えば、エア吸引による吸引吸着によって、或いは静電吸着によって、媒体Sを吸着しながら搬送するとよい。
【0020】
搬送ベルト21は、例えば、駆動ローラ22及び従動ローラ23~25に掛け渡された無端帯状のベルトであり、回転しながら媒体Sを搬送する。なお、エアの吸引によって媒体Sが搬送ベルト21に吸着される態様では、搬送ベルト21には、吸引ファンによって吸引されるエアを通すための図示しない貫通孔が複数形成される。
【0021】
駆動ローラ22は、図示しない搬送駆動部の一例であるモータ(アクチュエータ)から動力を伝達されることによって回転する。
【0022】
従動ローラ23~25は、駆動ローラ22の回転によって、搬送ベルト21とともに回転する。
【0023】
プラテン26は、搬送ベルト21に囲まれた領域において、搬送ベルト21の上部底面に接触するように配置されている。プラテン26は、例えば樹脂製である。プラテン26は、少なくともインクジェットヘッド10に対向する領域が平板状を呈することが望ましい。一例ではあるが、プラテン26は、図示しないプラテン支持部材に載せられている。このプラテン支持部材は、搬送ベルト21を挟んだ媒体Sの幅方向(前後方向)の両端においてワイヤによって吊り下げられている。このワイヤの巻き取り又は巻き出しが行われることによって、プラテン26が上下動する。このプラテン26の上下動によって、インクジェットヘッド10と搬送路R1(搬送ベルト21,媒体S)とのギャップが変動するが、このギャップはワイヤが巻き取られた状態で規定のギャップとなる。但し、インクジェットヘッド10自体が上下動可能に配置されている場合には、インクジェットヘッド10の上下動によって、インクジェットヘッド10と搬送ベルト21(搬送路R1,媒体S)とのギャップが変動する。なお、エアの吸引によって媒体Sが搬送ベルト21に吸着される態様では、プラテン26及びプラテン支持部材には、搬送ベルト21と同様に、吸引ファンによって吸引されるエアを通すための図示しない貫通孔が複数形成される。
【0024】
媒体供給部30は、供給台31と、スクレーパローラ32と、ピックアップローラ33とを有する。
【0025】
供給台31には、印刷前の媒体Sが積載される。
【0026】
スクレーパローラ32は、供給台31に積載された媒体Sのうち最上位に位置する媒体Sを繰り出して搬送する。
【0027】
ピックアップローラ33は、スクレーパローラ32によって繰り出された媒体Sを搬送路R1へ搬送する。
【0028】
スクレーパローラ32及びピックアップローラ33は、媒体Sを繰り出す繰り出し部材の一例である。
【0029】
媒体排出部40は、排出台41と、排出ローラ対42とを有する。
【0030】
排出台41には、インクジェット印刷装置1の内部(搬送路R1)から排出された印刷済みの媒体Sが積載される。
【0031】
排出ローラ対42は、インクジェット印刷装置1の内部から排出台41へ媒体Sを排出する一対のローラである。
【0032】
インク回収機構50については図3を参照しながら説明する。
【0033】
図3は、インク回収機構50の内部構造を示す正面図である。
【0034】
図3に示すように、インク回収機構50は、ダクト51と、吸引部52と、回転体53とを有し、ノズル11(インクジェットヘッド10)により吐出されたインクIK(ミストM)を回収する。
【0035】
ダクト51は、インクジェットヘッド10よりも媒体Sの搬送方向Dにおける下流側に配置され、インクIKを回収するためのダクトである。なお、ダクト51は、インクジェットヘッド10に対して主走査方向(前後方向)の一方又は両方、すなわち搬送方向Dにおける位置がインクジェットヘッド10と同一の位置などにおいてミストMを回収してもよいが、ミストMが媒体Sの搬送に伴う気流A1で搬送方向Dに流れるため、インクジェットヘッド10よりも搬送方向Dにおける下流側に配置されていることが望ましい。
【0036】
吸引部52は、ダクト51を通してエアを吸引する。吸引部52は、例えばファンである。
【0037】
回転体53は、ダクト51における搬送方向Dの下流側端部との間に、搬送方向Dの上流側へ向かう気流A2の流路を隔てて配置されている。なお、ダクト51には、回転体53が配置されるスペースを確保するために、下流側の一部の下端が切り欠かれているとよい。
【0038】
回転体53の少なくとも一部は、媒体Sの厚さ方向(インクジェットヘッド10のインク吐出方向である上下方向)において、ダクト51の下流側端部と媒体Sとの間に配置されている。但し、回転体53は、ダクト51よりも搬送方向Dの下流側に配置されていてもよい。
【0039】
回転体53は、上述の搬送部20によって媒体Sが搬送されることに伴って回転する従動ガイドローラであるが、搬送駆動部(例えば、モータ等のアクチュエータ)の駆動によって回転することで搬送部20とともに媒体を搬送する駆動ガイドローラであってもよい。また、回転体53は、媒体Sとの間に隙間を隔てて配置されていてもよい。このように回転体53が媒体Sとの間に隙間を隔てて配置されている場合で且つ上述の搬送駆動部の駆動によって回転する場合、回転方向は、媒体Sの搬送に伴って回転する方向(図3における反時計回り)であっても、その反対方向(図3における時計回り)であってもよい。
【0040】
上述のインク回収機構50において、吸引部52のエアの吸引力によって、媒体Sの搬送による慣性力を伴ったミストMを含む気流A1が搬送方向Dの上流側からダクト51に流入する。
【0041】
また、吸引部52のエアの吸引力によって、ダクト51の下流側端部と回転体53との間から、搬送方向Dの上流側へ向かう(すなわち、気流A1に対向する)気流A2がダクト51内に流入する。そして、回転体53は、回転している。
【0042】
そのため、気流A1に含まれるミストMは、回転体53の回転に伴う図示しない気流によって回転体53に付着せず、また、気流A2によって押し返される。これにより、ミストMは、ダクト51の下流側端部の内壁に付着せず、吸引部52に向かってエアとともに吸引される。
【0043】
図1に戻り、搬送ローラ対61は、インクジェット印刷装置1内の搬送路R1に複数対配置され、媒体Sを搬送する。
【0044】
切替機構62は、印刷部10を通過した搬送路R1内の媒体Sの搬送経路を、両面印刷が行われる場合に媒体Sを印刷部10へ再搬送するための循環搬送路R2側と、排出台41側とに切り替える。切替機構62は、例えば、図示しない駆動手段の駆動によって可動するフリッパ等の可動ガイドである。
【0045】
スイッチバックローラ対63は、循環搬送路R2に配置され、媒体Sの表裏を反転させる。
【0046】
制御部71は、インクジェットヘッド10、吸引部52等のインクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する演算処理装置として機能するプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit)を有する。
【0047】
記憶部72は、例えば、所定の制御プログラムが予め記録されている読み出し専用半導体メモリであるROM(Read Only Memory)、プロセッサが各種の制御プログラムを実行する際に必要に応じて作業用記憶領域として使用される随時書き込み読み出し可能な半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)、ハードディスク装置などである。
【0048】
操作パネル部73は、各種操作を行うための操作キー、各種情報を表示する表示部などを有することでインクジェット印刷装置1の入力部及び表示部の一例として機能する。
【0049】
インターフェース部74は、ネットワークを介して無線で又は有線で接続されるパーソナルコンピュータなどの各種機器との間での各種情報の授受を行う。例えば、インターフェース部74は、パーソナルコンピュータなどの外部機器から画像データを含む印刷ジョブを受信可能である。
【0050】
図4は、一実施の形態におけるインクジェットヘッド10の制御方法を説明するためのフローチャートである。
【0051】
図5は、図4の予備吐出内容決定処理(ステップS3)を説明するためのフローチャートである。
【0052】
図4に示す処理は、例えば、図2に示す制御部71が印刷対象の画像データ(印刷ジョブ)を取得した後で、かつ印刷開始前に制御部71によって行われる。
【0053】
まず、制御部71は、取得した画像データと、印刷条件(例えば、印刷対象の媒体Sのサイズ、搬送速度、搬送間隔、印刷設定など)とに基づいて、インクジェットヘッド10の各ノズル11の非吐出期間を算出する(ステップS1)。この非吐出期間は、所定の印刷を行うためにノズル11がインクIKを1度でも吐出すれば、各ノズル11に複数あることになる。また、画像データ及び印刷条件は、媒体Sへの印刷内容の一例である。
【0054】
次に、制御部71は、算出した非吐出期間に閾値を超えるものがあるかを判定する(ステップS2)。この閾値は、ノズル11におけるインクIKの乾燥・増粘を防ぐために予め決定された間隔であるが、例えば、後述する図5に示す着弾用予備吐出(ステップS33)よりも短い間隔で行われる後述する回収用予備吐出(ステップS35)の実行間隔であるとよい。なお、ここでは、制御部71は、すべてのノズル11を対象に閾値を超える非吐出期間があるかを判定し、その後に後述する予備吐出内容決定処理(ステップS3)を行う例について説明するが、ノズル11ごとに、閾値を超える非吐出期間を有するかを判定し、後述する予備吐出内容決定処理(ステップS3)を行ってもよい。
【0055】
閾値を超える非吐出期間がある場合(ステップS2:YES)、制御部71は、閾値を超える非吐出期間のそれぞれについて予備吐出内容決定処理(ステップS3)、すなわち図5に示す処理を行う。
【0056】
まず、制御部71は、各ノズル11の閾値を超える非吐出期間ごとに周辺(ノズル11がインクIKを吐出した場合の媒体Sの着弾位置)に印字率の高い印刷領域(例えば高濃度領域)があるかを判定する(ステップS31)。この印刷領域は、所定の色のインクIKを吐出するノズル11によって印刷が行われる領域の一例であって、複数のノズル11がインクIKを吐出することによって所定の印刷が行われる領域であり、図7に示す四角、円形、三角形のベタ印刷が行われる印刷領域P2などの、所定面積あたりの印字率が所定率以上(例えば、50%以上)の領域である。
【0057】
制御部71は、周辺に印字率の高い印刷領域がある場合(ステップS31:YES)、ノズル11が吐出するインクIKの色と印刷領域の色との組み合わせで、吐出されるインクIKが目立たないかを判定する(ステップS32)。
【0058】
例えば、インクジェットヘッド10がブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)のインクIKを吐出する場合について考える。この場合、ブラック(K)又はシアン(C)のインクIKによって印字率100%の印刷が行われる印刷領域では、4色どのインクIKが吐出されても目立たない。また、マゼンタ(M)のインクIKによって印字率100%の印刷が行われる印刷領域では、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のインクIKを吐出しても目立たないが、ブラック(K)及びシアン(C)のインクIKが吐出されると目立つ。また、イエロー(Y)のインクIKによって印字率100%の印刷が行われる印刷領域では、イエロー(Y)のインクIKが吐出されても目立たないが、ブラック(K)、シアン(C)、及びマゼンタ(M)のインクIKが吐出されると目立つ。
【0059】
なお、例えば印字率100%以上の混色ベタ(RGB等)などの他の印刷領域については、インクIKの種類などに応じてシミュレーション又は実験により得られる基準で、吐出するインクIKの色が目立つか目立たないかを判別するとよい。
【0060】
制御部71は、ノズル11が吐出するインクIKの色と印刷領域の色との組み合わせが目立たないと判定すると(ステップS32:YES)、印刷領域に重なるようにノズル11が非吐出期間にパージインクIK2を吐出する図6(b)に示す着弾用予備吐出(いわゆる紙上フラッシング)をインクジェットヘッド10に行わせることを決定する(ステップS33)。
【0061】
すなわち、制御部71は、所定の色のインクIKを吐出するノズル11によって印刷を行う領域に対して、所定の色とは異なる色のインクIKを吐出すノズル11によって印刷を行わない場合において、上記異なる色のインクIKを吐出するノズル11に、上記領域に着弾するようにパージインクIK2を吐出させる。この着弾用予備吐出におけるパージインクIK2の飛翔速度及び吐出量は、画像データに基づいて所定の印刷を行うための図6(a)に示す通常吐出におけるインクIKの飛翔速度及び吐出量と比較して、飛翔速度が遅く且つ(又は)吐出量が少ない。
【0062】
また、着弾用予備吐出は、印刷領域が大きい場合には単一の印刷領域に対して所定の実行間隔で複数回行われ、複数の印刷領域がある場合には複数の印刷領域のそれぞれで行われるとよい。また、着弾用予備吐出は、ノズル11が吐出するパージインクIK2の印刷領域における目立ちやすさに応じて、飛翔速度及び吐出量のうち少なくとも一方が調整されてもよい。また、着弾用予備吐出は、上記印刷領域の印字率が高いほどパージインクIK2の吐出量を増やし且つ吐出間隔を長くし、上記印刷領域の印字率が低いほどパージインクIK2の吐出量を減らし且つ吐出間隔を短くするとよい。例えば、印字率が50%以上80%未満の領域では、印字率が80%以上の領域よりも吐出量を減らし且つ吐出間隔を短くするなど印字率の範囲ごとに吐出量及び吐出間隔が決定されてもよいし、或いは、印字率が高くなるのに比例して吐出量を増やし且つ吐出間隔を長くしてもよい。
【0063】
なお、着弾用予備吐出は、ベタ印刷が行われる印刷領域P2に限られず、文字・数字などの所定の印刷が行われる他の印刷領域P1などに行われてもよい。また、上述の閾値を超える非吐出期間について、着弾用予備吐出が行われてもなお閾値を超える非吐出期間が残る場合には、後述する回収用予備吐出が所定の実行間隔で行われるとよい。
【0064】
次に、制御部71は、着弾用予備吐出を行うことを決定した非吐出期間以外にも、まだ上述の閾値を超える非吐出期間があるかを判定する(ステップS34)。
【0065】
制御部71は、まだ上述の閾値を超える非吐出期間があれば(ステップS34:YES)、上述のステップS31の処理から処理を繰り返し、上述の閾値を超える非吐出期間がなければ(ステップS34:NO)、図5に示す処理(すなわち、図4におけるステップS3の処理)を終了する。
【0066】
制御部71は、周辺に印字率の高い印刷領域がない場合(ステップS31:NO)及びノズル11が吐出するインクIKの色と印刷領域の色との組み合わせが目立たつと判定した場合(ステップS32:NO)、ノズル11がミスト回収部50に回収される条件でパージインクIK1を吐出する図6(c)に示す回収用予備吐出をインクジェットヘッド10に行わせることを決定し(ステップS35)、上述のステップS34の判定処理を行う。すなわち、制御部71は、複数のノズル11のうち、印刷を行っていないノズル11に、インク回収機構50により回収できるようにパージインクIK1を吐出させる。
【0067】
回収用予備吐出において吐出されるパージインクIK1がインク回収機構50に回収される条件は、吸引部52の吸引力、媒体Sの搬送に伴う気流A1、インクIKの種類などに応じて変動するが、所定の印刷を行うための通常吐出(図6(a)参照)や着弾用予備吐出(図6(b)参照)におけるパージインクIK2の飛翔速度及び吐出量と比較して、飛翔速度が遅く且つ(又は)吐出量が少ない。また、回収用予備吐出においては、媒体Sへの印刷内容(例えば、上述の画像データ及び印刷条件)のみならず、インク回収機構50の吸引力にも基づいて、吐出量及び吐出間隔を調整するとよい。例えば、インク回収機構50の吸引力が相対的に強い設定になっている場合には、相対的に弱い設定になっている場合よりも、吐出量を増やし且つ吐出間隔を長くするとよい。
【0068】
回収用予備吐出において吐出されるパージインクIK1は、少なくとも一部がインク回収機構50に回収されればよく、望ましくは50%以上のパージインクIK1がインク回収機構50に回収されるとよい。
【0069】
また、制御部71は、ノズル11にインク回収機構50により回収できるようにパージインクIK1を吐出させる場合に、複数のノズル11のうち少なくとも1つが印刷を行っているときよりも複数のノズル11のすべてが印刷を行っていないときにインク回収機構50の吸引力を強めるとよい。例えば、すべてのノズル11が、先に搬送される媒体Sの周縁の非印刷範囲、隣接する2枚の媒体Sの間隙、及び、後に搬送される媒体Sの周縁の非印刷範囲のいずれかに対向するときなどの、複数の媒体S間で印刷を中止しているときには、複数のノズル11のすべてが印刷を行っていないといえるため、吸引力を強める(例えば、吸引部52のエアの吸引力を一時的に通常風量から強モードの風量に強める)とよい。ここで、少なくとも1つのノズル11が媒体Sの非印刷範囲に囲まれた印刷範囲に対向していても、上述の印刷領域P1,P2が無い領域に対向している限り、印刷を行っていないといえる。
【0070】
また、制御部71は、ノズル11にインク回収機構50により回収できるようにパージインクIK1を吐出させる場合に、上述のようにすべてのノズル11が印刷を行っていないときに限らず、複数のノズル11のうちの一部のノズル11が複数の媒体S間で印刷を中止しているときに、インク回収機構50の吸引力を強めてもよい。例えば、複数のノズル11のうち搬送方向Dにおける下流側の端部に位置するノズル11を含む一部のノズル11が、先に搬送される媒体Sの印刷範囲に対向する状態から周縁の非印刷範囲に対向する状態に遷移したとき以降(ノズル11が非印刷範囲に対向する状態に遷移する前に各媒体Sの印刷が中止している場合もある)に、制御部71がインク回収機構50の吸引力を強めるとよい。また、制御部71は、上記一部のノズル11が後に搬送される媒体Sの印刷範囲に対向する状態に遷移したとき(或いは、次の媒体Sの印刷を再開したとき)までにインク回収機構50の吸引力を元に戻すとよい。
【0071】
なお、制御部71は、回収用予備吐出を行う設定(ノズル乾燥防止モード設定)がされている場合、この設定がなされていない場合よりも、エアの吸引力を強めるように吸引部52を制御してもよい。また、回収用予備吐出は、着弾用予備吐出よりも短い実行間隔で行われるとよい。また、制御部71は、インク回収機構50に配置されたシャッタの開閉量を調整することでエアの吸引力を調整してもよい。
【0072】
ところで、上述のように、ノズル11が複数の媒体S間で印刷を中止しているときなどにインク回収機構50の吸引力を強めることによって、吸引力を強めているときのパージインクIK1の吐出量を増やすことができる。また、このようにインク回収機構50の吸引力を強めているときに限って、回収用予備吐出が行われてもよい。
【0073】
図4に戻り、制御部71は、予備吐出内容決定処理(ステップS3(ステップS31~S35))が終了した後、及び、もともと閾値を超える非吐出期間がない場合(ステップS2:NO)、インク回収機構50(吸引部52)の吸引力が、上述の回収用予備吐出を行うために通常(回収用予備吐出を行わないとき)より強く設定されているかを判定する(ステップS4)。
【0074】
制御部71は、インク回収機構50の吸引力が通常より強く設定されている場合(ステップS4:YES)、所定の印刷を行うための通常吐出(図6(a)参照)において、ノズル11によるインクIKの飛翔速度をやや速く且つ(又は)吐出量がやや多くなるようにインクジェットヘッド10を制御することを決定し(ステップS5)、図4に示す処理を終了する。また、制御部71は、インク回収機構50の吸引力が通常より強く設定されていない場合(ステップS4:NO)にも、図4に示す処理を終了する。ここで、インクIKの吐出量を増やした場合には、インクIKの乾燥・増粘をより一層防止することができるため、吐出間隔を長くすることができる。一方、相対的にインクIKの吐出量が減らした場合には、吐出間隔を短くするとよい。
【0075】
なお、ノズル11によるインクIKの飛翔速度を速くしたり吐出量を増やしたりするのは、インク回収機構50の吸引力が通常より強く設定されている場合に、ノズル11によって吐出されるインクIKの媒体Sにおける着弾位置がずれやすいためである。但し、着弾位置のずれやすさは、インクIKの飛翔速度や吐出量や種類、媒体Sの搬送に伴う気流A1、ノズル11と媒体Sとのギャップなどに応じて変動するため、飛翔速度及び吐出量の調整処理(ステップS5)は省略されてもよい。また、着弾位置のずれを解消するために、制御部71がノズル11の吐出タイミングを調整したり或いはインクIKを吐出するノズル11を隣接するノズル11などの他のノズル11に変更したりしてもよい。
【0076】
以上説明した本実施の形態では、インクジェット印刷装置1は、媒体Sに向けてインクIKを吐出する複数のノズル11を有するインクジェットヘッド10と、このインクジェットヘッド10を制御する制御部71と、インクIKを吸引するインク回収機構50とを備える。制御部71は、複数のノズル11のうち、印刷を行っていないノズル11に、インク回収機構50により回収できるようにパージインクIK1を吐出させる(例えば、図5のステップS35の回収用予備吐出)。
【0077】
このように印刷を行っていないノズル11がパージインクIK1を吐出すること(回収用予備吐出)によって、ノズル11におけるインクIKの乾燥・増粘を防止することができる。そのため、画像品質の低下を抑制することができる。ところで、予備吐出によって吐出されたパージインクを媒体Sに着弾させる態様(着弾用予備吐出)では、印刷領域P1,P2に着弾させると、印刷内容によっては目立ったり、或いは、予備吐出のタイミングが制限されて乾燥・増粘を防止できなかったりすることで、画像品質が低下するという問題が発生する。また、印刷領域以外の白地や低濃度領域にパージインクが着弾すると、全体的には薄汚れて見えることで画像品質が低下したり、或いは、媒体Sの印刷が行われない非印刷範囲の着弾部分を裁断する必要が生じたりするという問題が発生する。この点、本実施の形態では、予備吐出されたパージインクIK1をインク回収機構50が回収することによって、パージインクIK1が媒体Sに着弾するのを抑制することができるため、上述の問題を回避することができる。よって、本実施の形態によれば、印刷内容によらず画像品質の低下を抑制することができる。更には、パージインクIK1を回収するインク回収機構50を、通常印刷時に発生するミストMを回収するミスト回収機構としても機能させることができる。そのため、簡素な構成で画像品質の低下を抑制することができるとともに、インク回収機構50を用いることでミストMの浮遊による機内汚れに起因する画像品質の低下を抑制することもできる。
【0078】
また、本実施の形態では、インクジェットヘッド10は、それぞれが複数のノズル11を有し吐出するインクIKの色が異なる複数のヘッドモジュールを有し、制御部71は、所定の色のインクIKを吐出するノズル11によって印刷を行う領域(印刷領域P2)に対して、上記所定の色とは異なる色のインクIKを吐出するノズル11によって印刷を行わない場合において、上記異なる色のインクIKを吐出するノズル11に、上記領域に着弾するようにパージインクIK2を吐出させる(例えば、図5のステップS33の着弾用予備吐出)。
【0079】
これにより、インク回収機構50により回収できるようにパージインクIK1を吐出する回収用予備吐出のみならず、印刷が行われる領域に対してパージインクIK2を吐出する着脱用予備吐出も行うことによって、ノズル11におけるインクIKの乾燥・増粘をより確実に防止することができる。また、着弾用予備吐出を行うことで回収用予備吐出の回数を減らすことができるため、回収用予備吐出において吐出されるパージインクIK1の一部が意図せず媒体Sに着弾するのを回避することによっても画像品質の低下を抑制することができる。
【0080】
また、本実施の形態では、制御部71は、上述の着弾用予備吐出(図5のステップS33)を行うか否かを、ノズル11が吐出するインクIKの色と印刷領域P2の色とに基づいて決定する(ステップS32)。
【0081】
これにより、着弾用予備吐出が行われても印刷領域P2において着弾したインクIKが目立たなくなる場合のみに着弾用予備吐出を行うことができるため、画像品質の低下を抑制することができる。また、着弾用予備吐出を行うことで回収用予備吐出の回数を減らすことができるため、回収用予備吐出において吐出されるパージインクIK1の一部が意図せず媒体Sに着弾するのを回避することによっても画像品質の低下を抑制することができる。
【0082】
また、本実施の形態では、制御部71は、インク回収機構50により回収できるできるようにノズル11にパージインクIK1を吐出させる場合(回収用予備吐出)に、複数のノズル11のうち少なくとも1つが複数の媒体S間で印刷を中止しているときにインク回収機構50の吸引力を強める。
【0083】
このように少なくとも1つのノズル11が印刷を中止しているときにインク回収機構50の吸引力を強めることによって、、通常吐出時のインクIKの着弾位置がずれて画像品質が低下するのを抑制することができる。また、インク回収機構50の吸引力を強めている間、回収用予備吐出においてノズル11が吐出するパージインクIK1の吐出量を増やすことができるため、ノズル11におけるインクIKの乾燥・増粘を確実に防止することができる。
【0084】
また、本実施の形態では、制御部71は、インク回収機構50により回収できるようにノズル11にパージインクIK1を吐出させる場合(回収用予備吐出)に、上記領域(例えば印刷領域P2)に着弾するようにノズル11にパージインクIK2を吐出させる場合(着弾用予備吐出)よりも、吐出量を減らし且つ吐出間隔を短くする。
【0085】
このように回収用予備吐出において着弾用予備吐出よりも吐出量を減らすことで、インク回収機構50によりパージインクIK1を回収する場合にパージインクIK1を確実に回収することができる。また、吐出間隔を短くすることで、吐出量を減らしても、ノズル11におけるインクIKの乾燥・増粘を確実に防止することができる。
【0086】
また、本実施の形態では、制御部71は、上記領域(例えば印刷領域P2)に着弾するようにノズル11にパージインクIK2を吐出させる場合(着弾用予備吐出)に、領域の印字率が高いほどパージインクIK2の吐出量を増やし且つ吐出間隔を長くし、領域の印字率が低いほどパージインクIK2の吐出量を減らし且つ吐出間隔を短くする。
【0087】
これにより、印刷領域P2の印字率が高く着弾用予備吐出が行われても印刷領域P2において着弾したパージインクIK2が目立たなくなる場合にパージインクIK2の吐出量を増やすことで、ノズル11におけるインクIKの乾燥・増粘をより確実に防止することができる。また、印刷領域P2の印字率が低くパージインクIK2が目立ちやすい場合には、パージインクIK2の吐出量を減らし、吐出間隔を短くすることで、画像品質が低下するのを回避しながら、ノズル11におけるインクIKの乾燥・増粘をより確実に防止することができる。
【0088】
また、本実施の形態では、制御部71は、媒体Sへの印刷内容とインク回収機構50の吸引力とに基づいて、インク回収機構50により回収できるようにノズル11にパージインクIK1を吐出させる場合(回収用予備吐出)の吐出量及び吐出間隔を調整する。
【0089】
これにより、回収用予備吐出において、インク回収機構50によって回収される範囲でパージインクIK1の吐出量を増やすことで、ノズル11におけるインクIKの乾燥・増粘をより確実に防止することができる。また、吐出量が増えすぎてインク回収機構50によって回収されずにパージインクIK1の一部が意図せず媒体Sに着弾して画像品質が低下するのを回避することができる。また、パージインクIK1の吐出量が少ない場合には、吐出間隔を短くすることで、画像品質が低下するのを回避しながら、ノズル11におけるインクIKの乾燥・増粘を防止することができる。
【0090】
なお、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0091】
[付記1]
媒体に向けてインクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを制御する制御部と、
インクを吸引するインク回収機構とを備え、
前記制御部は、前記複数のノズルのうち、印刷を行っていないノズルに、前記インク回収機構により回収できるようにパージインクを吐出させる
ことを特徴とするインクジェット印刷装置。
【0092】
[付記2]
前記インクジェットヘッドは、それぞれが前記複数のノズルを有し吐出するインクの色が異なる複数のヘッドモジュールを有し、
前記制御部は、所定の色のインクを吐出する前記ノズルによって印刷を行う領域に対して、前記所定の色とは異なる色のインクを吐出する前記ノズルによって印刷を行わない場合において、前記異なる色のインクを吐出する前記ノズルに、前記領域に着弾するようにパージインクを吐出させる
ことを特徴とする付記1記載のインクジェット印刷装置。
【0093】
[付記3]
前記制御部は、前記インク回収機構により回収できるように前記ノズルにパージインクを吐出させる場合に、前記異なる色のインクを吐出する前記ノズルに、前記領域に着弾するようにパージインクを吐出させる場合よりも、吐出量を減らし且つ吐出間隔を短くする
ことを特徴とする付記2記載のインクジェット印刷装置。
【0094】
[付記4]
前記制御部は、前記領域に着弾するように前記ノズルにパージインクを吐出させる場合に、前記領域の印字率が高いほど吐出量を増やし且つ吐出間隔を長くし、前記領域の印字率が低いほど吐出量を減らし且つ吐出間隔を短くする
ことを特徴とする付記2又は3記載のインクジェット印刷装置。
【0095】
[付記5]
前記制御部は、前記ノズルに前記インク回収機構により回収できるようにパージインクを吐出させる場合に、前記複数のノズルのうち少なくとも1つが複数の前記媒体間で印刷を中止しているときに前記インク回収機構の吸引力を強める
ことを特徴とする付記1記載のインクジェット印刷装置。
【0096】
[付記6]
前記制御部は、前記媒体への印刷内容と前記インク回収機構の吸引力とに基づいて、前記インク回収機構により回収できるように前記ノズルにパージインクを吐出させる場合の吐出量及び吐出間隔を調整する
ことを特徴とする付記1から5のいずれか記載のインクジェット印刷装置。
【符号の説明】
【0097】
1 インクジェット印刷装置
10 インクジェットヘッド
11 ノズル
20 搬送部
30 媒体供給部
40 媒体排出部
50 インク回収機構
51 ダクト
52 吸引部
53 回転体
61 搬送ローラ対
62 切替機構
63 スイッチバックローラ対
71 制御部
A1,A2 気流
D 搬送方向
IK インク
IK1,IK2 パージインク
M ミスト
P1,P2 印刷領域
R1 搬送路
R2 循環搬送路
S 媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7