(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085449
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220601BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
B41J2/01 209
B41J2/01 451
B41J2/14 611
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197146
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】辻 康仁
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EB06
2C056EB58
2C056FA13
2C056HA52
2C057AG12
2C057AL31
2C057AN05
(57)【要約】
【課題】結線確認専用の配線を設けることなく結線状態を検出することができる。
【解決手段】ノズルからインクを吐出するヘッド部5と、吐出データをヘッド部5へ送信するヘッド制御部4と、ジョブに基づいて吐出データを生成する画像処理部3と、ヘッド制御部4と画像処理部3との間で結線されたケーブル7を介して電気的に接続されている場合に、結線の状態を検出する結線検出手段43と、を備える印刷装置であって、画像処理部3は、ヘッド部5のノズルのうち吐出しないノズルの位置に対応する吐出データに、結線の状態を示す結線状態情報を割り当てて、ケーブル7を介してヘッド制御部4へ送信し、ヘッド制御部4は、画像処理部3により送信された吐出データから割り当てられた結線状態情報を抽出し、抽出した結線状態情報に基づいてケーブル7が断線しているか否かを判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に対してノズルからインクを吐出するヘッド部と、
吐出データを前記ヘッド部へ送信するヘッド制御部と、
ジョブに基づいて前記吐出データを生成する画像処理部と、
前記ヘッド制御部と前記画像処理部との間で結線されたケーブルを介して 電気的に接続されている場合に、前記結線の状態を検出する結線検出手段と、を備える印刷装置であって、
前記画像処理部は、前記ヘッド部のノズルのうち吐出しないノズルの位置に対応する前記吐出データに、前記結線の状態を示す結線状態情報を割り当てて、前記ケーブルを介して前記ヘッド制御部へ送信し、
前記ヘッド制御部は、
前記画像処理部により送信された前記吐出データから前記割り当てられた結線状態情報を抽出し、前記抽出した結線状態情報に基づいて前記ケーブルが断線しているか否かを判定する
ことを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結線状態を検出する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッド制御部と画像処理部がケーブルを介して、コネクタによって接続されるインクジェット印刷装置において、コネクタの接続不良が発生した場合、印刷後に印刷物を確認するまで、コネクタの接続不良と判断できないという課題があった。
【0003】
特許文献1には、コネクタの接続不良を事前に検出するために、画像データの信号線とは別に、コネクタ両端に導通を確認する端子を割り当て、コネクタ両端に導通を確認する信号パターンを配線し、導通確認対象となるコネクタ両端の信号パスをループバックさせ、その一端から導通を確認する信号を入力し、もう一方の端から出力された信号の一致、不一致を確認する方式が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、コネクタの両端と基板上に画像信号とは別に、結線確認を行うためのコネクタ端子と信号の配線パターンを設ける必要があり、その分、コネクタや基板の製造コストが増加するという課題があった。
【0006】
また、特許文献1に記載の技術では、印刷開始前に導通チェックを行う制御であるため、コネクタ接続部が緩み等により、不安定な状態で接続されていた場合、印刷時の振動等により、本来、結線状態である信号がオープン(断線)となり、断線直後も異常な画像の印刷を続けてしまい、次の結線確認フローまで、インクを無駄に消費してしまうという課題があった。
【0007】
さらに、特許文献1に記載の技術では、複数のヘッド毎のコネクタをカスケードに接続し、ループバックさせる方式であるため、断線を検出した場合、どこで異常が発生したかを判別することができず、コネクタ毎に、信号配線を一つずつ確認する作業が発生し手間となっていた。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、結線確認専用の配線を設けることなく結線状態を検出することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷装置の第1の特徴は、
印刷媒体に対してノズルからインクを吐出するヘッド部と、
吐出データを前記ヘッド部へ送信するヘッド制御部と、
ジョブに基づいて前記吐出データを生成する画像処理部と、
前記ヘッド制御部と前記画像処理部との間で結線されたケーブルを介して 電気的に接続されている場合に、前記結線の状態を検出する結線検出手段と、を備える印刷装置であって、
前記画像処理部は、前記ヘッド部のノズルのうち吐出しないノズルの位置に対応する前記吐出データに、前記結線の状態を示す結線状態情報を割り当てて、前記ケーブルを介して前記ヘッド制御部へ送信し、
前記ヘッド制御部は、
前記画像処理部により送信された前記吐出データから前記割り当てられた結線状態情報を抽出し、前記抽出した結線状態情報に基づいて前記ケーブルが断線しているか否かを判定する
ことにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る印刷装置の特徴によれば、結線確認専用の配線を設けることなく結線状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る印刷装置が備えるヘッド部の構成を示した平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る印刷装置が備える画像処理部とヘッド制御部の作用を模式的に悦明した説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る印刷装置における処理内容を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0013】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る印刷装置の実施形態を詳細に説明する。
【0015】
<本実施形態の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置の概略構成を示す説明図である。
【0016】
印刷装置1は、搬送される用紙に対して、ヘッドから黒又はカラーインクを吐出してライン単位で印刷を行うライン式のインクジェットカラープリンタである。
【0017】
印刷装置1は、コントローラ部2と、画像処理部3と、ヘッド制御部4と、ヘッド部5とを備えている。
【0018】
コントローラ部2は、画像処理部3およびヘッド制御部4の動作を制御する。
【0019】
ヘッド部5は、複数のノズルが形成されたヘッドを複数備え、搬送ベルト上で搬送される用紙に対して、ヘッド全ノズル分の画像データ(吐出データ)に基づいてそれぞれのヘッドから黒又はカラーインクを吐出し画像を印刷する。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態に係る印刷装置1が備えるヘッド部5の構成を示した平面図である。
【0021】
図2に示すように、ヘッド部5は、用紙の搬送方向(紙面上方向)にオーバーラップするように千鳥格子状にヘッド51~56が配置されている。
【0022】
図2に示した例では、ヘッド51とヘッド52とは、オーバーラップ領域61において用紙の搬送方向にオーバーラップしている。ヘッド52とヘッド53とは、オーバーラップ領域62において用紙の搬送方向にオーバーラップしている。ヘッド53とヘッド54とは、オーバーラップ領域63において用紙の搬送方向にオーバーラップしている。ヘッド54とヘッド55とは、オーバーラップ領域64において用紙の搬送方向にオーバーラップしている。ヘッド55とヘッド56とは、オーバーラップ領域65において用紙の搬送方向にオーバーラップしている。
【0023】
このオーバーラップ領域61~65において、オーバーラップしているいずれか一方のヘッドからインクが吐出していれば、適切に印刷可能となる。
【0024】
画像処理部3は、ジョブに基づいてヘッド部5がインクを吐出するための画像データを生成する。
【0025】
また、
図1に示すように、画像処理部3は、ヘッド繋ぎ目位置検出手段31と、結線状態情報付加手段32とを有する。
【0026】
ヘッド繋ぎ目位置検出手段31は、画像データに基づいて、ヘッド部5の複数のノズルのうち吐出しないノズルの位置、すなわちオーバーラップ領域61~65に対応する画像データを抽出する。
【0027】
結線状態情報付加手段32は、ヘッド部5の複数のノズルのうち吐出しないノズルの位置に対応する画像データに、画像信号の結線状態を示す結線状態情報を割り当てる。
【0028】
また、画像処理部3は、ヘッド制御部4と、コネクタ6a,6bによりケーブル7を介して電気的に接続されている。
図1では、ケーブル7は1本として描いているが、ヘッド部5の複数のノズルそれぞれに対応するように複数本が束となってケーブル7が構成されている。
【0029】
画像処理部3は、割り当てた結線状態情報を含む画像データを、コネクタ6a,6bとケーブル7とを介してヘッド制御部4へ送信する。このとき、コネクタ6a,6bの接触が不完全であると断線し、画像データが適切にヘッド制御部4へ送信することが困難となる。
【0030】
ヘッド制御部4は、画像データをヘッド部5へ送信し、ヘッド部5からインクを吐出させる。
【0031】
また、ヘッド制御部4は、ヘッド繋ぎ目位置検出手段41と、結線状態情報確認手段42と、結線検出手段43とを有する。
【0032】
ヘッド繋ぎ目位置検出手段41は、画像処理部3により送信された画像データに基づいて、ヘッド部5の複数のノズルのうち吐出しないノズルの位置、すなわちオーバーラップ領域61~65に対応する画像データを抽出する。
【0033】
結線状態情報確認手段42は、ヘッド繋ぎ目位置検出手段41により抽出された画像データから、さらに結線状態情報を抽出し、抽出した結線状態情報に基づいてケーブル7が断線しているか否かを判定する。
【0034】
結線検出手段43は、ヘッド制御部4との間で結線されたケーブル7を介して電気的に接続されている場合に、結線の状態を検出する。
【0035】
図3は、画像処理部3とヘッド制御部4の作用を模式的に説明した説明図である。
【0036】
図3に示すように、ヘッド51の全ノズル分の画像データ101は、印刷対象の画像データ102と、結線状態情報103とを有している。
【0037】
結線状態情報103には、例えば、ヘッドごとに異なる固定値として「0x5」,「0xA」などのコードが付与されている。
【0038】
そのため、ヘッド繋ぎ目位置検出手段41により、オーバーラップ領域61~65に対応する画像データが抽出されると、結線状態情報確認手段42は、画像データから結線状態情報を抽出する。そして、結線状態情報確認手段42は、抽出した結線状態情報が「0x5」,「0xA」などの予め付与されたコードと同一である場合、ケーブル7が断線していないと判定することができる。一方、結線状態情報確認手段42は、抽出した結線状態情報が「0x5」,「0xA」などの予め付与コード以外のコードである場合、ケーブル7が断線していると判定することができる。
【0039】
図4は、本発明の一実施形態に係る印刷装置1における処理内容を示したフローチャートである。
【0040】
図4に示すように、画像データ信号結線確認が開始されると、ステップS103において、ヘッド繋ぎ目位置検出手段31は、ヘッド繋ぎ目位置を設定する。具体的には、ヘッド繋ぎ目位置検出手段31は、画像データに基づいて、ヘッド部5の複数のノズルのうち吐出しないノズルの位置、すなわちオーバーラップ領域61~65に対応する画像データを抽出する。
【0041】
ステップS105において、印刷開始の要求があると、ステップS107において、画像処理部3の結線状態情報付加手段32は、ヘッド部5の複数のノズルのうち吐出しないノズルの位置に対応する画像データに、画像信号の結線状態を示す結線状態情報を割り当て、コネクタ6a,6bとケーブル7とを介してヘッド制御部4へ送信する。
【0042】
ステップS109において、ヘッド制御部4のヘッド繋ぎ目位置検出手段41は、画像処理部3により送信された画像データに基づいて、ヘッド部5の複数のノズルのうち吐出しないノズルの位置、すなわちオーバーラップ領域61~65に対応する画像データを抽出し、結線状態情報確認手段42は、ヘッド繋ぎ目位置検出手段41により抽出された画像データから、さらに結線状態情報を抽出する。
【0043】
ステップS111において、結線状態情報確認手段42は、抽出した結線状態情報に基づいてケーブル7が正常か否かを判定する。
【0044】
具体的には、結線状態情報確認手段42は、抽出した結線状態情報が予め付与されたコードと同一である場合、ケーブル7が断線していない、すなわち正常であると判定し、抽出した結線状態情報が予め付与コード以外のコードである場合、ケーブル7が断線している、すなわち異常であると判定する。
【0045】
ステップS111において、ケーブル7が正常と判定された場合(YES)、ステップS113において、結線状態情報確認手段42は、最後の結線状態情報か否かを判定する。これにより、画像データに含まれる全ての結線状態情報に基づいて、ケーブル7が正常か否かを判定することができる。
【0046】
一方、ステップS111において、ケーブル7が異常と判定された場合(NO)、ステップS115において、ヘッド制御部4は、印刷を中止し、図示しないパネルに、対象となるケーブル7の接続確認依頼を表示する。
【0047】
これにより、ヘッドごとに、いずれのケーブル7の断線が生じたかを検出し、パネルに断線が生じたケーブル7の接続確認依頼を表示することができるので、ユーザは対象となるケーブル7のみの接続確認を行うことで接続不良を早期に解消することができる。
【0048】
また、結線状態情報は、ヘッド部5の複数のノズルのうち吐出しないノズルの位置に対応する画像データに埋め込まれているので、画像データとは別に、結線確認を行うための信号を供給する配線パターンを設ける必要がなく、その分、コネクタや基板の製造コストを低減させることができる。
【0049】
以上のように、本発明の一実施形態に係る印刷装置1によれば、画像データに基づいて印刷媒体に対してノズルからインクを吐出するヘッド部5と、画像データを前記ヘッド部へ送信するヘッド制御部4と、ヘッド制御部4との間で結線されたケーブル7を介して 電気的に接続されている場合に、結線の状態を検出する結線検出手段43と、ヘッド部5のノズルのうち吐出しないノズルの位置に対応する画像データに、結線の状態を示す結線状態情報を割り当てて、ケーブル7を介してヘッド制御部4へ送信する画像処理部3と、を備え、ヘッド制御部4は、画像処理部3により送信された画像データから割り当てられた結線状態情報を抽出し、抽出した結線状態情報に基づいてケーブル7が断線しているか否かを判定するので、結線確認専用の配線を設けることなく結線状態を検出することができる。
【0050】
なお、結線状態情報を、画像データから生成したパリティチェック等の誤り検出符号等とするようにしてもよい。これにより、結線状態情報に基づいて、画像データの誤り検出や誤り補正を行うことができる。
【0051】
ただし、ヘッド部5が、プリカーサ、フラッシング、テストパターン(つなぎ目補正オフ)等の全ノズルを駆動する必要があるときは、ヘッド繋ぎ目位置に対しても有効画像データを割り当てる必要があるため、この機能を無効化することもできる。すなわち、画像データ信号結線確認の処理は、オンオフの切り替えができるようにしてもよい。
【0052】
なお、本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。
【0053】
(付記)
本出願は、以下の発明を開示する。
【0054】
(付記1)
印刷媒体に対してノズルからインクを吐出するヘッド部と、
吐出データを前記ヘッド部へ送信するヘッド制御部と、
ジョブに基づいて前記吐出データを生成する画像処理部と、
前記ヘッド制御部と前記画像処理部との間で結線されたケーブルを介して 電気的に接続されている場合に、前記結線の状態を検出する結線検出手段と、を備える印刷装置であって、
前記画像処理部は、前記ヘッド部のノズルのうち吐出しないノズルの位置に対応する前記吐出データに、前記結線の状態を示す結線状態情報を割り当てて、前記ケーブルを介して前記ヘッド制御部へ送信し、
前記ヘッド制御部は、
前記画像処理部により送信された前記吐出データから前記割り当てられた結線状態情報を抽出し、前記抽出した結線状態情報に基づいて前記ケーブルが断線しているか否かを判定する
ことを特徴とする印刷装置。
【0055】
これにより、画像データに埋め込まれた結線状態情報を確認することでケーブルが断線しているか否かを判定することができるので、別途、結線確認専用の配線を設けることなく、結線状態を検出することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 印刷装置
2 コントローラ部
3 画像処理部
4 ヘッド制御部
5 ヘッド部
6a コネクタ
6b コネクタ
7 ケーブル
31 ヘッド繋ぎ目位置検出手段
32 結線状態情報付加手段
41 ヘッド繋ぎ目位置検出手段
42 結線状態情報確認手段
103 結線状態情報