(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085459
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】免震建物
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20220601BHJP
E02D 27/34 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
E04H9/02 331A
E04H9/02 331E
E04H9/02 351
E02D27/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197163
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中川 太郎
【テーマコード(参考)】
2D046
2E139
【Fターム(参考)】
2D046DA12
2E139AA01
2E139AC06
2E139AC08
2E139AC10
2E139AC19
2E139AC26
2E139AC27
2E139AC33
2E139AC43
2E139CA02
2E139CB04
2E139CC02
(57)【要約】
【課題】擁壁を含む免震ピットの内部に免震装置が配置され、免震装置にて建物の下部構造体が支持されている免震建物に関し、擁壁と下部構造体の間に設定されている隙間が設計相対水平変位量を概ね確保しながら、想定外の極大地震時において擁壁と下部構造体が衝突した際の衝撃を抑制することのできる、免震建物を提供すること。
【解決手段】基礎底盤10と、基礎底盤10の周縁に立設している擁壁20と、を備えている免震ピット30の内部に免震装置35が設置され、免震装置35にて建物の下部構造体40が支持され、擁壁20と下部構造体40の間に第1隙間が設けられている、免震建物70であり、擁壁20における免震ピット30の内部に臨む内側面20a、もしくは、下部構造体40における擁壁20に臨む外側面41aの少なくとも一方に、滑り材25,27が取り付けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎底盤と、前記基礎底盤の周縁に立設している擁壁と、を備えている免震ピットの内部に免震装置が設置され、前記免震装置にて建物の下部構造体が支持され、前記擁壁と前記下部構造体の間に第1隙間が設けられている、免震建物であって、
前記擁壁における前記免震ピットの内部に臨む内側面、もしくは、前記下部構造体における前記擁壁に臨む外側面の少なくとも一方に、滑り材が取り付けられていることを特徴とする、免震建物。
【請求項2】
前記滑り材の厚みは、前記第1隙間の1%以下の厚みであることを特徴とする、請求項1に記載の免震建物。
【請求項3】
前記滑り材は、ポリテトラフルオロエチレンの圧縮成形シートであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の免震建物。
【請求項4】
前記下部構造体は、複数のフーチングと、前記複数のフーチングと相互に接合され、かつ前記フーチングよりも狭幅の地中梁とを有し、
前記免震装置は、鉛直方向において前記フーチングと前記基礎底盤との間に設けられていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の免震建物。
【請求項5】
前記擁壁は、平面視における第1方向に延設し、
前記フーチングと前記地中梁は前記第1方向に沿って相互に接合されており、
前記フーチングと前記擁壁は前記平面視において前記第1方向と直交する第2方向に前記第1隙間を空けて配置され、かつ、前記地中梁と前記擁壁は前記第2方向において第2隙間を空けて配置され、
前記第1隙間は前記第2隙間よりも狭く、
相互に対向する前記フーチングの前記外側面、もしくは、前記擁壁の前記内側面の少なくとも一方に前記滑り材が取り付けられていることを特徴とする、請求項4に記載の免震建物。
【請求項6】
前記フーチングと前記擁壁は、いずれもコンクリート構造体であり、
前記滑り材と前記フーチング及び/又は前記擁壁が、接着、もしくは、打ち込み固定手段、もしくは、前記滑り材に予め取り付けられているアンカーの埋設、のいずれか一種により固定されていることを特徴とする、請求項4又は5に記載の免震建物。
【請求項7】
前記滑り材は、前記コンクリート構造体の表面の一部に取り付けられており、
前記滑り材に予め取り付けられている前記アンカーが前記コンクリート構造体に埋設される形態において、
前記コンクリート構造体が、現場施工にて形成される現場施工構造体であり、コンクリートの硬化に応じて前記アンカーと前記コンクリート構造体が一体となっており、
前記滑り材が、その一方の広幅面を前記下部構造体に臨ませながら、前記コンクリート構造体の内部に埋設され、前記滑り材の前記広幅面とその周囲の前記コンクリート構造体の表面が面一となっていることを特徴とする、請求項6に記載の免震建物。
【請求項8】
前記滑り材が、少なくとも前記擁壁の前記内側面に取り付けられている形態において、
前記フーチングを前記第2方向に沿って前記擁壁に投影した投影領域において、前記滑り材が取り付けられていることを特徴とする、請求項5、請求項5に従属する請求項6又は7のいずれか一項に記載の免震建物。
【請求項9】
前記投影領域における前記第1方向の両端部に、前記第1隙間の1/2の幅の追加領域を加えた拡大投影領域において、前記滑り材が取り付けられていることを特徴とする、請求項8記載の免震建物。
【請求項10】
前記第1隙間は、レベル2相当の大地震時における前記下部構造体と前記免震ピットとの間の設計相対水平変位量以上に設定されており、
レベル3相当の極大地震時において、前記設計相対水平変位量を超える超過相対水平変位量により前記フーチングが前記擁壁に衝突する領域が、想定衝突領域として設定されており、
前記擁壁に前記滑り材が取り付けられている形態において、前記滑り材が前記想定衝突領域のみに取り付けられていることを特徴とする、請求項6乃至9のいずれか一項に記載の免震建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震建物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高層ビルや超高層ビル等の高層建物(高層建築物)においては、耐用年数内に発生する可能性のある地震動に対して継続的な使用を可能とする一方で、想定外の最大級の地震である、極大地震に対しても、可及的に倒壊させない耐震性能が求められている。このような高層建物では、地盤下に免震ピットが設けられ、免震ピットの内部に積層ゴム支承式の免震装置や、滑り免震装置といった各種の免震装置が配設され、免震装置にて建物を支持するようにしている。地震時に作用する地震力により、免震ピットは激しく振動する一方で、免震装置にて地震力が低減されることにより、建物の振動は大きく低減される。建物に作用する振動加速度が大きく低減されて建物は緩やかに振動(横揺れ)することになり、必要に応じて免震ピットに装備されているダンパーにより、建物の振幅も低減されることになる。
【0003】
免震ピットは一般に、基礎底盤と、基礎底盤の周縁に立設している擁壁とを備えており、免震装置にて直接支持されている建物の下部構造体と、免震ピットを構成する擁壁との間には、所定の隙間(クリアランス)が設けられている。この隙間は、設計段階における最大の地震である、大地震(レベル2相当の地震)の際の、下部構造体と免震ピットとの間の相対水平変位量(設計相対水平変位量)以上に設定されるのが一般的であり、このような隙間が建物の下部構造体と擁壁の間に確保されていることにより、建物の耐用年数内に発生する可能性の少ない(例えば数百年に一度の発生確率)大地震においても、建物の下部構造体と擁壁との衝突を抑止することができる。このような大地震までを想定した耐震設計を前提として免震ピットを含む免震建物が設計されるが、想定外の極大地震(レベル3相当の地震)時に建物の下部構造体と擁壁が衝突することを想定し、この衝突の際の衝撃を緩和したり、あるいは衝突そのものを解消するための様々な技術が提案されている。
【0004】
例えば、一つ目の従来技術として、特許文献1には、相互に対向する建物の側壁と擁壁の少なくとも一方に、衝撃吸収部材が設けられている免震建物が提案されている。具体的には、基礎と、基礎に配置された免震装置と、免震装置の上に配置された建物とを備え、免震装置は基礎に対する建物の水平移動を許容し、建物の側壁に対して間隔を空けて対向する擁壁が基礎に設けられている。これらの側壁と擁壁の少なくとも一方に、衝撃吸収部材が設けられており、衝撃吸収部材は、20℃における等価粘性減衰定数heqが0.10以上の高減衰ゴムによって形成され、かつ、圧縮変形に対して降伏した後に荷重が大きくなる圧縮特性を有する、中実のブロック状の成形体である。そして、この衝撃吸収部材として、その衝撃吸収性能を保証するべく、その水平方向の幅が10cm(ここでは100mm)程度である実施例が例示されている。
【0005】
また、二つ目の従来技術として、特許文献2には、免震装置が備えてある免震ピットの周囲を囲む山留め壁が、免震ピットの底盤部の周縁部分から一体として立設する鉄筋コンクリート製の擁壁であり、擁壁には、内側からの衝突荷重によって擁壁が外側に折れ曲がるように誘導する、易損傷部が設けられている、免震建築物が提案されている。
【0006】
また、三つ目の従来技術として、特許文献3には、建物の免震化のために底盤上に設置された複数の免震装置の周囲を取り巻く擁壁が提案されている。この擁壁は、底盤上に載置され矩形の四辺上に位置する4つの壁板と、各壁板をその周囲地盤の土水圧に抗して鉛直に支持し、また、各壁板の周囲地盤に向けての傾倒又は移動を許す支持手段とを備えており、支持手段は、各壁板と底盤とに連結された、周囲地盤に向けての傾倒を許すストッパー付きヒンジにより形成されている。
【0007】
さらに、四つ目の従来技術として、その他、想定外の極大地震時における、建物の下部構造体と擁壁の相対水平変位量(設計相対水平変位量を超える超過相対水平変位量)でも双方の衝突を回避するのに十分な隙間を確保するといった技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6146791号公報
【特許文献2】特許第6172804号公報
【特許文献3】特許第6291288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の免震建物では、建物の側壁と擁壁の間に、双方の対向する方向に10cm程度と比較的幅の大きな衝撃吸収部材が設けられていることから、設計相対水平変位量に基づいて設定されている建物の側壁と擁壁の間の隙間が極端に狭くなるといった課題がある。大地震までを考慮した設計相対水平変位量に基づく隙間としては、50cm乃至60cm程度の幅が見込まれるのが一般的であるが、この中に10cm程度の幅(隙間全体の20%程度)の衝撃吸収部材が配設されることにより、設計相対水平変位量以下の30cm乃至40cm程度の相対水平変位量でも衝撃吸収部材と側壁もしくは擁壁が接触し、建物に対して衝撃を付与する等の影響が懸念される。
【0010】
また、特許文献2に記載の免震建築物では、内側からの衝突荷重によって擁壁が外側に折れ曲がるように誘導する、易損傷部が擁壁に設けられていることから、構造が複雑で施工に手間のかかる擁壁となることは否めない。
【0011】
また、特許文献3に記載の擁壁では、擁壁を構成する壁板の周囲地盤に向けての傾倒又は移動を許すストッパー付きヒンジが設けられていることから、特許文献2と同様に構造が複雑で施工に手間のかかる擁壁となることは否めない。
【0012】
さらに、極大地震時における相対水平変位量を回避するのに十分な隙間を確保する技術では、隙間が大き過ぎることに起因して、免震建物の過大な変形が許容されることになり、免震建物自体の破損が危惧される。
【0013】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、擁壁を含む免震ピットの内部に免震装置が配置され、免震装置にて建物の下部構造体が支持されている免震建物に関し、擁壁と下部構造体の間に設定されている隙間が設計相対水平変位量を概ね確保しながら、想定外の極大地震時において擁壁と下部構造体が衝突した際の衝撃を抑制することのできる、免震建物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成すべく、本発明による免震建物の一態様は、
基礎底盤と、前記基礎底盤の周縁に立設している擁壁と、を備えている免震ピットの内部に免震装置が設置され、前記免震装置にて建物の下部構造体が支持され、前記擁壁と前記下部構造体の間に第1隙間が設けられている、免震建物であって、
前記擁壁における前記免震ピットの内部に臨む内側面、もしくは、前記下部構造体における前記擁壁に臨む外側面の少なくとも一方に、滑り材が取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、免震ピットを構成する擁壁における免震ピットの内部に臨む内側面、もしくは、下部構造体における擁壁に臨む外側面の少なくとも一方に滑り材が取り付けられていることにより、滑り材を介して下部構造体の外側面が擁壁の内壁に沿って水平方向に滑ることによって、極大地震時において、下部構造体が擁壁に衝突した際の衝撃荷重を低減することが可能になる。
【0016】
ここで、「擁壁における免震ピットの内部に臨む内側面、もしくは、下部構造体における擁壁に臨む外側面の少なくとも一方に、滑り材が取り付けられている」とは、擁壁の内側面にのみ滑り材が取り付けられている形態、下部構造体の外側面にのみ滑り材が取り付けられている形態、擁壁の内側面と下部構造体の外側面の双方に滑り材が取り付けられている形態を含む意味である。擁壁の内側面に滑り材が取り付けられている形態では、擁壁の水平方向の全域に滑り材が取り付けられている形態や、下部構造体の中でも擁壁側に張り出している箇所が衝突する領域のみに滑り材が取り付けられている形態などがある。
【0017】
また、「第1隙間」とは、設計段階における最大の地震である、大地震(レベル2相当の地震)の際の、下部構造体と擁壁との間の相対水平変位量(設計相対水平変位量)、もしくは、この設計相対水平変位量に安全代を加味した水平変位量に相当する。
【0018】
また、本発明による免震建物の他の態様において、前記滑り材の厚みは、前記第1隙間の1%以下の厚みであることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、滑り材の厚みが第1隙間の1%以下の厚みに設定されていることにより、滑り材が第1隙間を殆ど犯すことなく、滑り材による衝撃荷重の低減効果を得ることができる。
【0020】
また、本発明による免震建物の他の態様において、前記滑り材は、ポリテトラフルオロエチレンの圧縮成形シートであることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、滑り材がポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)の圧縮成形シートであることにより、滑り材の厚みを第1隙間の1%以下の厚みに設定でき、かつ、良好な滑り性能を奏することができる。
【0022】
また、本発明による免震建物の他の態様において、前記下部構造体は、複数のフーチングと、前記複数のフーチングと相互に接合され、かつ前記フーチングよりも狭幅の地中梁とを有し、
前記免震装置は、鉛直方向において前記フーチングと前記基礎底盤との間に設けられていることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、極大地震時において、下部構造体を構成するフーチングが擁壁に衝突した際の衝撃荷重を低減することができる。ここで、フーチングは、建物の上部構造体の例えば柱の直下に配設され、各フーチングを地中梁が繋いでいる。また、「フーチングよりも狭幅の地中梁」とは、フーチングと擁壁を結ぶ水平方向の幅を対象として、フーチングよりも地中梁の幅が狭幅であることを意味しており、従って、下部構造体の振動(横移動)により、フーチングが擁壁と衝突することになる。尚、免震装置は、基礎底盤の表面に直接設置されてもよいし、基礎底盤の上面において上方に突設する下方フーチングが設けられ、この下方フーチングと下部構造体を構成するフーチングの間に免震装置が設置されてもよい。
【0024】
また、本発明による免震建物の他の態様において、前記擁壁は、平面視における第1方向に延設し、
前記フーチングと前記地中梁は前記第1方向に沿って相互に接合されており、
前記フーチングと前記擁壁は前記平面視において前記第1方向と直交する第2方向に前記第1隙間を空けて配置され、かつ、前記地中梁と前記擁壁は前記第2方向において第2隙間を空けて配置され、
前記第1隙間は前記第2隙間よりも狭く、
相互に対向する前記フーチングの前記外側面、もしくは、前記擁壁の前記内側面の少なくとも一方に前記滑り材が取り付けられていることを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、極大地震時に擁壁と衝突し得るフーチングの外側面と擁壁の内側面のいずれか一方もしくは双方に滑り材が取り付けられていることにより、極大地震時において、下部構造体を構成するフーチングが擁壁に衝突した際にフーチングを側方に効果的に滑らせることができ、衝撃荷重を効果的に低減することができる。
【0026】
また、本発明による免震建物の他の態様において、前記フーチングと前記擁壁は、いずれもコンクリート構造体であり、
前記滑り材と前記フーチング及び/又は前記擁壁が、接着、もしくは、打ち込み固定手段、もしくは、前記滑り材に予め取り付けられているアンカーの埋設、のいずれか一種により固定されていることを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、滑り材とフーチング及び/又は擁壁との固定手段として、接着、打ち込み固定手段、滑り材に予め取り付けられているアンカーの埋設が適用されることにより、滑り材をフーチング及び/又は擁壁に対して強固に固定することができる。ここで、打ち込み固定手段には、ビスや釘、後施工アンカー等が含まれる。
【0028】
また、本発明による免震建物の他の態様において、前記滑り材は、前記コンクリート構造体の表面の一部に取り付けられており、
前記滑り材に予め取り付けられている前記アンカーが前記コンクリート構造体に埋設される形態において、
前記コンクリート構造体が、現場施工にて形成される現場施工構造体であり、コンクリートの硬化に応じて前記アンカーと前記コンクリート構造体が一体となっており、
前記滑り材が、その一方の広幅面を前記下部構造体に臨ませながら、前記コンクリート構造体の内部に埋設され、前記滑り材の前記広幅面とその周囲の前記コンクリート構造体の表面が面一となっていることを特徴とする。
【0029】
本態様によれば、コンクリートを打設して擁壁やフーチングを施工するに当たり、型枠を設置する際に、滑り材に予め取り付けられているアンカーを型枠内に突設させておき、打設されたコンクリートの硬化によって滑り材とコンクリート構造体が一体となることにより、滑り材の取り付け性が良好になる。また、擁壁の内側面に取り付けられる滑り材が、その一方の広幅面を下部構造体に臨ませながら、コンクリート構造体の内部に埋設され、滑り材の広幅面とその周囲のコンクリート構造体の表面が面一となっていることにより、滑り材による当初の第1隙間の低減が防止できる。
【0030】
また、本発明による免震建物の他の態様は、前記滑り材が、少なくとも前記擁壁の内側面に取り付けられている形態において、
前記フーチングを前記第2方向に沿って前記擁壁に投影した投影領域において、前記滑り材が取り付けられていることを特徴とする。
【0031】
本態様によれば、フーチングを第2方向(フーチングから擁壁に向かう方向)に沿って擁壁に投影した投影領域において、滑り材が取り付けられていることにより、極大地震時にフーチングが横移動して擁壁と衝突した際に、滑り材を介してフーチングの外側面が擁壁の内壁に沿って水平方向に滑ることによって、極大地震時において、フーチングが擁壁に衝突した際の衝撃荷重を低減することが可能になる。ここで、「フーチングを第2方向に沿って擁壁に投影した投影領域」とは、フーチングが擁壁に対向する外側面を側方から見た側面視形状が、擁壁に投影された領域を意味している。例えば、側面視形状が500mm×500mmの正方形である場合は、この正方形を擁壁に投影し、この投影された正方形の投影領域に滑り材が取り付けられることになる。
【0032】
また、本発明による免震建物の他の態様は、前記投影領域における前記第1方向の両端部に、前記第1隙間の1/2の幅の追加領域を加えた拡大投影領域において、前記滑り材が取り付けられていることを特徴とする。
【0033】
本態様によれば、投影領域における第1方向の両端部に、第1隙間の1/2の幅の追加領域を加えた拡大投影領域において滑り材が取り付けられていることにより、極大地震時にフーチングが横移動して擁壁に衝突し得る可能性の高い範囲において、滑り材を設置することができる。すなわち、極大地震時において、フーチングは様々な方向に横移動し得ることから、水平方向である第2方向に沿って擁壁に衝突することはむしろ稀であることに鑑み、滑り材を設置する領域として、投影領域における第1方向の両端部に拡大投影領域を含めることとした。
【0034】
また、本発明による免震建物の他の態様において、前記第1隙間は、レベル2相当の大地震時における前記下部構造体と前記免震ピットとの間の設計相対水平変位量以上に設定されており、
レベル3相当の極大地震時において、前記設計相対水平変位量を超える超過相対水平変位量により前記フーチングが前記擁壁に衝突する領域が、想定衝突領域として設定されており、
前記擁壁に前記滑り材が取り付けられている形態において、前記滑り材が前記想定衝突領域のみに取り付けられていることを特徴とする。
【0035】
本態様によれば、擁壁に滑り材が取り付けられている形態において、滑り材が想定衝突領域のみに取り付けられていることにより、滑り材の使用量を可及的に低減しながら、極大地震時において、下部構造体を構成するフーチングを擁壁の内側面の滑り材に確実に当接させ、双方の衝突の際の衝撃荷重を低減することが可能になる。
【発明の効果】
【0036】
以上の説明から理解できるように、本発明の免震建物によれば、擁壁を含む免震ピットの内部に免震装置が配置され、免震装置にて建物の下部構造体が支持されている免震建物に関し、擁壁と下部構造体の間に設定されている隙間が設計相対水平変位量を概ね確保しながら、想定外の極大地震時において擁壁と下部構造体が衝突した際の衝撃を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】各実施形態に共通する免震建物の一例の全体構成を示す正面図である。
【
図2】
図1のII-II矢視図であって、第1実施形態に係る免震建物の下部構造体の一部の天端面と擁壁の高さ方向の途中位置で水平方向に切断して示した図である。
【
図3】
図2のIII方向矢視図であって、擁壁の内側面の正面図である。
【
図4】
図2のIV-IV矢視図であって、地中梁と擁壁の途中位置で鉛直方向に切断して示した図である。
【
図5】極大地震時において、下部構造体が横移動して擁壁に衝突している状態を示す図である。
【
図6】第2実施形態に係る免震建物の下部構造体の一部と擁壁を示す図である。
【
図7】第3実施形態に係る免震建物の下部構造体の一部と擁壁を示す図である。
【
図8】第4実施形態に係る免震建物の下部構造体の一部と擁壁を示す図である。
【
図9】第5実施形態に係る免震建物の下部構造体の一部と擁壁を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、各実施形態に係る免震建物について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0039】
[免震建物の全体構成]
はじめに、
図1を参照して、各実施形態に共通する免震建物の全体構成について説明する。ここで、
図1は、各実施形態に共通する免震建物の一例の全体構成を示す正面図である。
【0040】
図1において、紙面に対して直交するX1方向を第1方向とし、この第1方向に直交する紙面の左右方向を第2方向とする。擁壁20は、建物本体60の周囲を包囲するように設けられているが、
図1に示す擁壁20は、第1方向に延設している。
【0041】
免震建物70は、地盤Gの掘削領域に設けられている免震ピット30と、免震ピット30の上方に立設する建物本体60とを有する。図示例の免震建物70は、高層ビルや超高層ビル等の高層建物を対象としてその途中階を省略して図示しているが、免震建物70には、その他、一階もしくは低層階の大型の物流倉庫や、大型のショッピングモールやホール、体育館等、平面規模と階層が多様な建物が含まれる。
【0042】
免震ピット30は、基礎底盤10と、基礎底盤10の周縁に立設している擁壁20とを有し、擁壁20が周辺の地盤Gから作用する土圧や土水圧に抗する山留め壁となっている。基礎底盤10と擁壁20はいずれも鉄筋コンクリート製であり、擁壁20には、以下で詳説するように様々な形態がある。また、図示例の基礎底盤10は直接基礎であるが、その他、PHC杭や鋼管杭等の既製杭、もしくは場所打ち杭等を備えた杭基礎であってもよい。
【0043】
基礎底盤10の上面には、上方に突設する複数の下方フーチング12が設けられており、各下方フーチング12の上面に免震装置35が固定されている。図示例の免震装置35は、積層ゴム支承式の免震装置であるが、免震装置にはその他、球面滑り装置や平面滑り装置等の免震装置が適用されてもよい。
【0044】
各免震装置35には、建物本体60を構成する下部構造体40が支持される。建物本体60は、上部構造体50と下部構造体40とを有する。複数階の上部構造体50において、各階はいずれも、下床版51と、柱52(もしくは壁)と、上床版53とを有し、例えば柱52の直下に免震装置35が配置されている。
【0045】
また、上部構造体50の下には、平面視において、複数の格点に配設されている複数のフーチング41と、各フーチング41を例えば格子状に繋ぐ複数の地中梁45が設けられている。
【0046】
建物本体60を構成する上部構造体50と下部構造体40は、S造(鉄骨造)、RC造(鉄筋コンクリート造)、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)のいずれであってもよいが、図示例はRC造の建物本体として説明する。尚、ピット空間31において、下部構造体40と基礎底盤10を繋ぐ一基もしくは複数基のダンパーが設けられてもよい。
【0047】
擁壁20と下部構造体40の間には、所定幅の隙間Sが設けられている。以下で詳説するように、隙間Sにおいて、相互に平行な下部構造体40を構成するフーチング41と擁壁20の間の、第2方向に平行な第1隙間の長さ(双方の壁面に直交する長さ)をt1とする。
【0048】
この第1隙間の長さt1は、レベル2相当の大地震時までを考慮した、下部構造体40と擁壁20の間の設計相対水平変位量に基づく長さであり、例えば、50cm乃至60cm程度の長さが設定される。
【0049】
次に、以下、擁壁の構造に特徴を有する様々な形態の免震建物に関し、擁壁の構造を中心に説明する。
【0050】
[第1実施形態の免震建物]
次に、
図2乃至
図5を参照して、第1実施形態に係る免震建物について説明する。ここで、
図2は、
図1のII-II矢視図であって、第1実施形態に係る免震建物の下部構造体の一部の天端面と擁壁の高さ方向の途中位置で水平方向に切断して示した図である。また、
図3は、
図2のIII方向矢視図であって、擁壁の内側面の正面図であり、
図4は、
図2のIV-IV矢視図であって、地中梁と擁壁の途中位置で鉛直方向に切断して示した図である。
【0051】
図2に示すように、本実施形態に係る免震建物70の備える免震ピット30を構成する擁壁20は、背面の地盤Gから作用する土圧や土水圧に抗する、鉄筋コンクリート製のコンクリート構造体である。
【0052】
擁壁20において、ピット空間31に臨む内側面の所定位置には、滑り材25が取り付けられている。滑り材25は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンの圧縮成形シートにより形成される。このポリテトラフルオロエチレンの圧縮成形シートとして、一般に市販されているテフロン(登録商標)シートが挙げられる。
【0053】
滑り材25の背面には、複数のアンカー26が接着等により固定されている。コンクリート構造体である擁壁20の施工に際して、アンカー26を擁壁用の型枠(図示せず)に位置決めし、型枠内にコンクリートを打設する。コンクリートの硬化によって現場施工構造体である擁壁20が形成されるに際し、擁壁20内にアンカー26が埋設固定されることにより、擁壁20の内側面20aの所定位置に滑り材25が固定される。尚、図示例の他にも、頭付きアンカーを適用してもよいし、側面に凹凸を備えたアンカーを適用してもよく、いずれも擁壁20との固定強度が高まる。
【0054】
擁壁20に対する滑り材25の固定方法としては、その他、施工済みの擁壁20の内側面20aに対して、滑り材25を接着により、もしくは、ビスや釘、後施工アンカー等の固定手段により固定してもよい。いずれの固定方法であっても、滑り材25が軽量であることから、良好な施工性の下で滑り材25の取り付けを行うことができる。
【0055】
下部構造体40において、地中梁45は、フーチング41に対して第2方向に幅狭であり、従って、地中梁45に比べて、フーチング41の外側面41aは擁壁20の内側面22aに対して相対的に近接している。
【0056】
フーチング41の外側面41aと、擁壁20の内側面22aに取り付けられている滑り材25との間の第2方向に平行な隙間である、第1隙間の長さをt1で示し、地中梁45の外側面45aと滑り材25との間の第2方向に平行な隙間である、第2隙間の長さをt2で示す(t1<t2)。また、フーチング41のうち、第1方向に平行な幅をb1とし、高さをb2とする(
図3。
図4参照)。
【0057】
擁壁20において、滑り材25を設置する領域は、各フーチング41がそれぞれ、
図3に示すように、投影領域A1とその左右の追加領域A2を合わせた拡大投影領域Aとなる。この拡大投影領域Aは、レベル3相当の極大地震時において、レベル2相当の大地震までを考慮した設計相対水平変位量以上に設定されている、第1隙間の長さt1を超える超過相対水平変位量によってフーチング41が擁壁20の内側面20aに衝突する、想定衝突領域となる。
【0058】
ここで、投影領域A1は、フーチング41を第2方向に沿って擁壁20の内側面20aに投影した領域であり、フーチング41の外側面41aを側方から見た側面視形状を示しており、図示例は、幅b1,高さb2の長方形の面積となる。尚、フーチングの側面視形状に応じて、投影領域A1は変化し得る。
【0059】
また、追加領域A2は、幅が第1隙間の長さt1の1/2であり、高さがb2の長方形の面積を有する。尚、追加領域A2の設定方法には様々な方法があり、図示例以外にも、地震応答解析の結果に基づき、例えば、追加領域A2の幅を第1隙間の長さt1の1/2倍から1倍の範囲で適宜設定してもよい。
【0060】
極大地震時において、フーチング41(を含む下部構造体40)は様々な方向に横移動し得ることから、水平方向である第2方向に沿って擁壁20の内側面20aに衝突することはむしろ稀であることに鑑み、滑り材25を設置する領域として、投影領域A1における第1方向の両端部に追加領域A2を含めた拡大投影領域Aを設定している。拡大投影領域Aは、第1方向の幅がb1+t1、高さがb2の長方形となる。
【0061】
このように、拡大投影領域Aに滑り材25が設けられていることにより、極大地震時にフーチング41が横移動して擁壁20の内側面20aに衝突し得る可能性の高い範囲において、滑り材25が設置されることを保証できる。
【0062】
図示例の免震ピット30によれば、極大地震時において、下部構造体40のフーチング41が擁壁20の内側面20aに衝突した際に、滑り材25を介してフーチング41の外側面41aが擁壁20の内壁に沿って水平方向に滑ることにより、極大地震時において、下部構造体40が擁壁20に衝突した際の衝撃荷重を低減することが可能になる。
【0063】
ここで、滑り材25の厚みは、第1隙間の長さt1の1%以下の厚みに設定されている。滑り材25が上記テフロンシートにて形成されている場合、このテフロンシートには、厚みが1mm乃至50mm程度と多様な厚みのシートが存在する。そこで、第1隙間の長さt1に50乃至60cmが設定されている場合には、その1%に相当する5mm乃至6mm以下の厚みのテフロンシートを適用するのがよい。
【0064】
このように、滑り材25が、第1隙間の長さt1の1%以下の厚みのポリテトラフルオロエチレンの圧縮成形シートであることにより、滑り材25が隙間Sにおける第1隙間の長さt1を殆ど犯すことがない。従って、例えば、特許文献1に示すように水平方向に厚みのある衝撃吸収部材が設けられている場合と異なり、大地震までを考慮した設計相対水平変位量に基づく隙間(例えば、50cm乃至60cm程度)を概ね確保しながら、滑り材25による衝撃荷重の低減効果を得ることができる。
【0065】
また、滑り材25が、擁壁20の内側面20aの必要最小限の範囲に設けられていることにより、例えば、擁壁20の内側面20aの第1方向の全域に帯状に滑り材が設けられる形態に比べて、滑り材25の材料コストを大幅に削減することができる。
【0066】
次に、
図5を参照して、極大地震時に下部構造体40が横移動して擁壁20に衝突した際の衝撃を緩和する、免震ピット30の衝撃緩和性能について説明する。ここで、
図5は、極大地震時において、下部構造体が横移動して擁壁に衝突している状態を示す図である。
【0067】
既に説明したように、極大地震時には、フーチング41を含む下部構造体40は様々な方向に横移動し得ることから、例えば、
図5に示すように第1方向と第2方向の間の水平斜め方向であるZ1方向にフーチング41が横移動し、擁壁20の内側面材22に衝突することが想定される。
【0068】
しかしながら、図示例の免震ピット30では、想定衝突領域A(
図3参照)に滑り材25が取り付けられていることから、擁壁20の内側面20aにある滑り材25にフーチング41が衝突した際に、滑り材25を介して擁壁20の内壁に沿って第1方向にフーチング41が滑ることになる。
【0069】
滑り材25がない場合には、水平斜め方向であるZ1方向に横移動してきたフーチング41の衝突により、衝撃荷重の第2方向成分は
図5に一点鎖線で示すZ
X2'となり、衝撃荷重の第1方向成分は
図5に一点鎖線で示すZ
X1'となる。これに対して、フーチング41が滑り材25を介して擁壁20の内壁に沿って第1方向に滑ることにより、衝撃荷重の第2方向成分は
図5に実線で示すZ
X2(<Z
X2')となり、衝撃荷重の第1方向成分は
図5に実線で示すZ
X1(>Z
X1')となる。
【0070】
従って、フーチング41に作用する衝撃荷重の元になる第2方向成分(フーチング41の外側面41aに対する垂直成分)であるZX2が低減されることにより、建物本体60に生じる応力や加速度が低減される。このように、建物本体60に生じる応力や加速度が低減されることにより、建物本体60の内部にいる人の負傷や什器等の破損等、様々な被害が軽減される。
【0071】
[第2乃至第5実施形態の免震建物]
次に、
図6乃至
図9を参照して、第2乃至第5実施形態に係る免震建物について説明する。ここで、
図6乃至
図9はそれぞれ、第2乃至第5実施形態に係る免震建物の下部構造体の一部と擁壁を示す図である。
【0072】
図6に示す免震ピット30Aを構成する擁壁20Aは、
図2等に示す擁壁20の備える滑り材25と同様の形状及び寸法の滑り材25を適用するものの、滑り材25が、その一方の広幅面を下部構造体40に臨ませながら、擁壁20の内側面20aの内部に埋設されている点において相違する。そして、滑り材25の広幅面とその周囲の擁壁20Aの内側面20aは面一となっている。
【0073】
免震ピット30Aによれば、滑り材25がその広幅面を露出させつつ、その周囲の擁壁20Aの内側面20aと面一となっていることにより、滑り材25による当初の第1隙間の長さt1の低減を防止できる。
【0074】
一方、
図7に示す免震ピット30Bは、免震ピット30と同様に、擁壁20の内側面20aに滑り材25が設けられているものの、フーチング41の外側面41aにも別途の滑り材27が設けられている点において免震ピット30と相違する。
【0075】
滑り材27の背面にもアンカー28が取り付けられており、アンカー28がフーチング41の内部に埋設されることにより、滑り材27が固定される。
【0076】
免震ピット30Bによれば、擁壁20とフーチング41の双方が滑り材25,27を備えることにより、擁壁20にフーチング41が衝突した際に、双方の滑り材25,27同士が当接する。このことにより、フーチング41の第1方向への滑り性が一層良好になり、衝撃荷重低減効果が一層高まる。
【0077】
一方、
図8に示す免震ピット30Cは、擁壁20の内側面20aの第1方向の全域に、フーチング41の高さb2(
図3,4参照)の帯状の滑り材25Aがアンカー26を介して取り付けられている点において、免震ピット30と相違する。
【0078】
免震ピット30Cによれば、擁壁20Bの内側面20aに、第1方向に延びる帯状の滑り材25Aを効率的に取り付けることができ、想定衝突領域Aを擁壁の内側面20aに設定し、この設定された領域に滑り材を取り付ける際の手間を解消することができる。
【0079】
一方、
図9に示す免震ピット30Dは、フーチング41の外側面41aにのみ滑り材27が設けられている点において免震ピット30と相違する。
【0080】
免震ピット30Dによれば、フーチング41の外側面41aに滑り材27を取り付けることにより、想定衝突領域Aを擁壁の内側面20aに設定し、この設定された領域に滑り材を取り付ける際の手間を解消することができる。また、免震ピット30と同様に、例えば、擁壁20の内側面20aの第1方向の全域に帯状に滑り材が設けられる形態に比べて、滑り材27の材料コストを大幅に削減することができる。
【0081】
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0082】
10:基礎底盤
12:下方フーチング
20,20A,20B,20C:擁壁
20a:内側面
25,27:滑り材
26,28:アンカー(固定手段)
30,30A,30B,30C,30D:免震ピット
31:ピット空間
35:免震装置
40:下部構造体
41:フーチング
41a:外側面
45:地中梁
50:上部構造体
51:下床版
52:柱
53:上床版
60:建物本体
70:免震建物
S:隙間
K:中空(間隔)
G:地盤
A:想定衝突領域(拡大投影領域)
A1:投影領域
A2:追加領域