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  • 特開-磁性部材の製造方法及び磁性部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085472
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】磁性部材の製造方法及び磁性部材
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/025 20190101AFI20220601BHJP
   H01F 1/26 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
B32B7/025
H01F1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197180
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148840
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100191673
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 久典
(72)【発明者】
【氏名】大宮 忠志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 正和
【テーマコード(参考)】
4F100
5E041
【Fターム(参考)】
4F100AB02C
4F100AB31B
4F100AK21C
4F100AK27C
4F100AK29C
4F100AK41B
4F100AK42A
4F100AK42D
4F100AK54B
4F100AK68C
4F100AN02C
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100DE01C
4F100EH46C
4F100EJ65B
4F100EJ86C
4F100GB41
4F100JG06C
4F100JL14D
5E041AA02
5E041AA04
5E041AA07
5E041AA11
5E041BB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基材と磁性層との間に十分な層間強度を有し、かつより薄い磁性部材を製造することができる磁性部材の製造方法、及び該製造方法による、薄く、曲げても破損し難い磁性部材を提供する。
【解決手段】表面と裏面とを有しかつ前記表面の上にアンカーコート層が形成されている基材を用意するステップと、前記基材の裏面に補強部材を貼り付けるステップと、バインダ中に磁性粉末が分散された複合磁性層を前記アンカーコート層の上に形成するステップと、前記複合磁性層を形成した後に、前記補強部材を剥がすステップとを更に備える磁性部材の製造方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性部材の製造方法であって、
表面と裏面とを有しかつ前記表面の上にアンカーコート層が形成されている基材を用意するステップと、
バインダ中に磁性粉末が分散された複合磁性層を前記アンカーコート層の上に形成するステップと
を備える磁性部材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の磁性部材の製造方法であって、
前記複合磁性層を形成する前に、前記基材の前記裏面に補強部材を貼り付けるステップと、
前記複合磁性層を形成した後に、前記補強部材を剥がすステップと
を更に備える磁性部材の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の磁性部材の製造方法であって、
前記補強部材は、表面と裏面とを有しており、
前記補強部材の前記表面は、前記基材に貼り付けられるものであり、
前記補強部材の前記裏面には離型剤が塗布されている
磁性部材の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載の磁性部材の製造方法であって、
前記アンカーコート層の厚みは、0.5μm以上1μm未満である
磁性部材の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一つに記載の磁性部材の製造方法であって、
前記アンカーコート層は、ポリエーテル系樹脂又はポリエステル系樹脂からなる
磁性部材の製造方法。
【請求項6】
基材と、前記基材の上に形成されたアンカーコート層と、前記アンカーコート層の上に形成された複合磁性体層とを備える磁性部材であって、
前記アンカーコート層の厚みは、0.5μm以上1μm未満である
磁性部材。
【請求項7】
請求項6に記載の磁性部材であって、
前記アンカーコート層は、ポリエーテル系樹脂又はポリエステル系樹脂からなる
磁性部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性部材の製造方法及びそれによって製造される磁性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、磁性複合材料からなる磁性層を、支持体上に直接形成した第1の磁性シート(磁性部材)を開示している。また、特許文献1は、磁性複合材料からなる磁性層を、接着層を介して支持体上に形成した第2の磁性シート(磁性部材)を開示している。
【0003】
特許文献2は、シート状の磁場遮蔽ユニット(磁性部材)を開示している。この磁場遮蔽ユニットは、フェライトシートと、フェライトシートの上部に設けられた保護部材とを備えている。
【0004】
特許文献2の磁場遮蔽ユニットにおいて、保護部材は、基材と、基材の一面に形成された接着層とを備えている。基材は、接着層を用いてフェライトシートに接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-031578号公報
【特許文献2】特表2019-503068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シート状の磁性部材は、使用時において対象物の形状に応じて曲げられることが多い。そのため、特許文献1に開示される第1の磁性シートのように、磁性層が直接支持体上に形成されていると、磁性層が支持体から剥がれてしまう虞がある。換言すると、磁性層が支持体に直接形成されている磁性シートには、磁性層と支持体との間において層間強度が不足しがちであるという問題点がある。
【0007】
一方、特許文献1の第2の磁性シートや特許文献2の磁場遮蔽ユニットには、上記のような問題は生じ難い。しかしながら、接着層は、十分な接着力を得るために所定以上の厚み、例えば3~50μmを必要とする。そのため、特許文献1の第2の磁性シートや特許文献2の磁場遮蔽ユニットには、薄型化が困難であるという問題点がある。
【0008】
本発明は、基材と磁性層との間に十分な層間強度を有し、かつより薄い磁性部材を製造することができる磁性部材の製造方法を提供し、もって、薄く、曲げても破損し難い磁性部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の磁性部材の製造方法として、
表面と裏面とを有しかつ前記表面の上にアンカーコート層が形成されている基材を用意するステップと、
バインダ中に磁性粉末が分散された複合磁性層を前記アンカーコート層の上に形成するステップと
を備える磁性部材の製造方法を提供する。
【0010】
本発明は、第2の磁性部材の製造方法として、第1の磁性部材の製造方法であって、
前記複合磁性層を形成する前に、前記基材の前記裏面に補強部材を貼り付けるステップと、
前記複合磁性層を形成した後に、前記補強部材を剥がすステップと
を更に備える磁性部材の製造方法を提供する。
【0011】
本発明は、第3の磁性部材の製造方法として、第2の磁性部材の製造方法であって、
前記補強部材は、表面と裏面とを有しており、
前記補強部材の前記表面は、前記基材に貼り付けられるものであり、
前記補強部材の前記裏面には離型剤が塗布されている
磁性部材の製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、第4の磁性部材の製造方法として、第1から第3までの磁性部材の製造方法のいずれかであって、
前記アンカーコート層の厚みは、0.5μm以上1μm未満である
磁性部材の製造方法を提供する。
【0013】
本発明は、第5の磁性部材の製造方法として、第1から第4までの磁性部材の製造方法のいずれかであって、
前記アンカーコート層は、ポリエーテル系樹脂又はポリエステル系樹脂からなる
磁性部材の製造方法を提供する。
【0014】
本発明は、第1の磁性部材として、
基材と、前記基材の上に形成されたアンカーコート層と、前記アンカーコート層の上に形成された複合磁性体層とを備える磁性部材であって、
前記アンカーコート層の厚みは、0.5μm以上1μm未満である
磁性部材を提供する。
【0015】
本発明は、第2の磁性部材として、第1の磁性部材であって、
前記アンカーコート層は、ポリエーテル系樹脂又はポリエステル系樹脂からなる
磁性部材を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の磁性部材の製造方法によれば、表面にアンカーコート層が形成された基材を用い、そのアンカーコート層上に複合磁性層を形成するようにしたことで、磁性層と基材との間に十分な層間強度を実現しつつ、接着層を用いる場合に比べて薄い磁性部材を製造することができる。また、本発明の磁性部材の製造方法によれば、磁性体としてバインダ中に磁性粉末が分散された複合磁性体を用いたことで、高い柔軟性を持つ磁性部材を製造することができる。こうして、本発明によれば、薄く、曲げても破損し難い磁性部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態による磁性部材の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図2図1の磁性部材の製造方法に用いられる基材を示す断面図である。基材の表面には、アンカーコート層が形成されている。
図3図2の基材の裏面に補強部材を貼り付けた状態を示す断面図である。
図4図3のアンカーコート層の上に複合磁性体層を形成した状態を示す断面図である。
図5図1の磁性部材製造方法により製造される磁性部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1から図5を参照して、本発明の一実施の形態による磁性部材の製造方法について説明する。
【0019】
まず、図2に示されるような基材10を用意する(ステップS101)。基材10は、表面102と裏面104とを有しており、表面102上にはアンカーコート層20が形成されている。即ち、基材10は、アンカーコート層20付き基材10である。
【0020】
基材10として、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用いることができる。または、基材10として、PETフィルムの裏面に導体層を設けた複合フィルムを用いることができる。この場合、導体層は接着剤を用いてPETフィルムの裏面に接着される。導体層は、例えば、アルミニウム箔又は銅箔である。
【0021】
本実施の形態において、基材10のサイズは、実際の製品サイズよりも著しく大きくてよい。例えば、基材10は、長尺且つ幅広のフィルムであってよい。基材10の厚みはできるだけ薄い方がよく、例えば、PETフィルムの厚みは5~20μm、一例として12μm程度とすることができる。また、導体層の厚みは1~15μm、一例として7μm程度とすることができる。
【0022】
本実施の形態において、アンカーコート層20は、例えば、ポリエーテル系樹脂又はポリエステル系樹脂からなる。アンカーコート層20の材料は、想定される磁性部材の使用環境に応じて選択できる。例えば、磁性材料に耐溶剤性や機械的強度が求められる場合は、アンカーコート層20の材料としてポリエステル系樹脂を用いるのが好ましい。また、磁性部材が高湿度の中で使用される等、磁性材料に耐水性が求められる場合には、アンカーコート層20の材料としてポリエーテル系樹脂を用いるのが好ましい。
【0023】
アンカーコート層20の厚みはできるだけ薄い方がよい。例えば、アンカーコート層20の厚みは、1μm未満であることが好ましい。ただし、後述する複合磁性層40(図4参照)の形成を良好に行うためには、アンカーコート層20はある程度の厚みを必要とする。例えば、アンカーコート層20の厚みは、0.5μm以上であることが好ましい。
【0024】
次に、図3に示されるように、基材10の裏面104に補強部材30を貼り付ける(ステップS102)。詳しくは、補強部材30は、表面302及び裏面304を有している。本実施の形態において、補強部材30の裏面304には、離型剤が塗布されていて、補強部材30の表面302が基材10に貼り付けられる。詳しくは、補強部材30は、その表面302に塗布された粘着剤(図示せず)又は貼り付けられた粘着テープ(図示せず)を用いて、基材10の裏面104に貼り付けられる。粘着剤または粘着テープとして適切なものを用いることで、補強部材30の表面302が基材10の裏面104に対して微粘着性をもつようにし、着脱可能とする。特に基材10として薄いものを用いる場合、単体での取り扱いが困難になることがあるため、補強部材30によってその取扱いを容易とすることが望ましい。
【0025】
補強部材30は、例えば、PETフィルムである。補強部材30の裏面304に、離型剤は必ずしも塗布されている必要はない。しかしながら、複合磁性層40を形成した後の半製品の保管を考慮すると、補強部材30の裏面304には離型剤が塗布されていることが望ましい。例えば、基材10が長尺フィルムである場合に、後述する複合磁性層40を形成した後の半製品をロール状に巻いて保管する場合に、複合磁性層40が補強部材30に付着することを防止することができる。
【0026】
後述するように、補強部材30は、後の工程において除去されるものである。換言すると、補強部材30は、本実施の形態による方法によって製造される磁性部材の構成要素ではない。そのため、補強部材30の厚みについて特に制限はない。しかしながら、補強部材30の厚みは、できるだけ薄い方が好ましい。基材10が必要十分な強度を有している場合は、ステップS102省略して、補強部材30を設けなくてもよい。
【0027】
次に、図4に示されるように、アンカーコート層20の上に複合磁性層40を直接形成する(ステップS103)。複合磁性層40は、バインダ中に磁性粉末が分散された塗液を塗布し、乾燥させることにより形成される。詳しくは、軟磁性粉と、結合剤と、有機溶剤と、難燃剤等を混合した塗液を、アンカーコート層20の上に塗布し、乾燥させる。塗液の塗布は、乾燥後の複合磁性層40の厚みが100μm以下となるよう行う。
【0028】
ここで、軟磁性粉には、磁性ステンレス(Fe-Cr-Al-Si系合金)、センダスト(登録商標)等のFe-Si-Al系合金、パーマロイ(Fe-Ni系合金)、ケイ素銅(Fe-Cu-Si系合金)、Fe-Si系合金、Fe-Si-B(-Cu-Nb)系合金、Fe-Ni-Cr-Si系合金、Fe-Si-Cr系合金、Fe-Si-Al-Ni-Cr系合金、Mo-Ni-Feやアモルファス合金等などが好ましい。このような軟磁性粉は一種単独で用いても、または複数種組み合わせて用いても良い。特に、透磁率特性の向上には、磁化が大きい金属合金が望ましい。また、軟磁性粉の形状は特に限定しないが、扁平粉であることが好ましく、複合磁性層40において、扁平形状の軟磁性粉末の殆どが、複合磁性層40の主面と概ね平行になるように向きを揃えて配列していることが望ましい。
【0029】
また、結合剤には、ゴム、エラストマー、樹脂などの高分子バインダが好ましく、熱可塑性樹脂がより好ましい。特に、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、ニトリルゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、アクリルゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム、ポリウレタンなどが好ましい。
【0030】
次に、図5に示されるように、補強部材30を剥がす(ステップS104)。なお、ステップS201が省略された場合、この工程は不要である。
【0031】
以上のようにして、本実施の形態による磁性部材の製造方法によって磁性部材が製造される。なお、基材10が長尺且つ幅広フィルムである場合、製造された磁性部材は、製品サイズに応じてカットされる。例えば、製造された磁性部材は、幅狭の複数の長尺製品に切断されてよい。
【0032】
上述したように、本実施の形態によれば、基材10のアンカーコート層20上に、複合磁性層40を直接形成する。これにより、基材10と複合磁性層40との間に十分な層間強度を実現しつつ、磁性部材の厚みを低減することができる。その結果、曲げても複合磁性層40が剥がれたりせず、破損し難い磁性部材を得ることができる。
【0033】
以上、本発明について実施の形態を掲げて説明してきたが、本発明は、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0034】
10 基材
102 表面
104 裏面
20 アンカーコート層
30 補強部材
302 表面
304 裏面
40 複合磁性層
図1
図2
図3
図4
図5