(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085517
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】地盤注入材及び地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
C09K 17/14 20060101AFI20220601BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20220601BHJP
C09K 103/00 20060101ALN20220601BHJP
【FI】
C09K17/14 P ZAB
E02D3/12 101
C09K103:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197251
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391003598
【氏名又は名称】富士化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】笹原 茂生
(72)【発明者】
【氏名】松山 雄司
【テーマコード(参考)】
2D040
4H026
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB01
2D040CA02
2D040CA10
2D040CB03
4H026CA03
4H026CB02
4H026CB08
4H026CC03
4H026CC04
(57)【要約】
【課題】コロイダルシリカを添加しなくても、耐久性の良好な改良地盤とすることが可能な地盤注入材を提供する。
【解決手段】水ガラスを含む主剤と硬化剤との組み合わせからなる地盤注入材であって、前記主剤と前記硬化剤とを混合し、ゲル化してから1時間後のゲル状体を構成する凝集粒子のポロド体積が4000nm3以下であり、前記凝集粒子の回転半径が9.5nm以下である地盤注入材である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水ガラスを含む主剤と硬化剤との組み合わせからなる地盤注入材であって、
前記主剤と前記硬化剤とを混合し、ゲル化してから1時間後のゲル状体を構成する凝集粒子のポロド体積が4000nm3以下であり、前記凝集粒子の回転半径が9.5nm以下である地盤注入材。
【請求項2】
前記水ガラスにおける酸化ナトリウムと二酸化珪素とのモル比(SiO2/Na2O)が2.6~5である請求項1に記載の地盤注入材。
【請求項3】
前記主剤と前記硬化剤とを混合しゲル化した直後の水の量が55質量%以上である請求項1又は2に記載の地盤注入材。
【請求項4】
前記主剤と前記硬化剤とを混合しゲル化した直後のシリカ濃度が5~25質量%である請求項1~3のいずれか1項に記載の地盤注入材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤注入材及び地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱な地盤の改良や止水を行うために、薬液を地盤に注入する薬液注入工法が利用されている(例えば、特許文献1参照)。この工法は、シリカを含む地盤中でゲル化させることで地盤を固結して改良効果を得ているため、ゲルの物性によって改良体の強度や長期耐久性が影響される。
【0003】
耐久性の高いゲルを得るためには、ゲルからシリカが溶出してくる量(シリカ溶脱率)を抑制するか、ゲルの収縮を抑制する必要があると言われている。これまでの技術では、シリカのコロイド粒子(コロイダルシリカ)を添加することでシリカの溶脱がなく収縮の少ないゲルを得ていたが、水ガラスと硬化剤に新たにコロイダルシリカを添加しなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、水ガラスと硬化剤だけの組み合わせに比べて設置スペースが多く必要となったり、コロイダルシリカを添加する工程が増えたりして、作業量が増え、さらにはコスト増加に繋がる問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、コロイダルシリカを添加しなくても、耐久性の良好な改良地盤とすることが可能な地盤注入材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記のような問題を解決するために鋭意研究を行った結果、ゲルの小角X線散乱測定を行い解析することで、ゲルを構成する凝集体の体積に相当するポロド体積と一次粒子が凝集してできた粒子の回転半径とを算出し、これらがシリカの溶脱やゲルの収縮にどのように影響しているかを調べ、シリカの溶脱量の少なくなる回転半径、ゲルの収縮が小さくなるポロド体積の検討を行った。そして、コロイダルシリカを添加しなくてもゲルの回転半径及びポロド体積を制御することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記のとおりである。
【0008】
[1] 水ガラスを含む主剤と硬化剤との組み合わせからなる地盤注入材であって、
前記主剤と前記硬化剤とを混合し、ゲル化してから1時間後のゲル状体を構成する凝集粒子のポロド体積が4000nm3以下であり、前記凝集粒子の回転半径が9.5nm以下である地盤注入材。
水ガラスを含む主剤と硬化剤との組み合わせからなる地盤注入材であって、
前記主剤と前記硬化剤とを混合し、ゲル化してから1時間後のゲル状体を構成する凝集粒子のポロド体積が4000nm3以下であり、前記凝集粒子の回転半径が9.5nm以下である地盤注入材。
水ガラスを含む主剤と硬化剤との組み合わせからなる地盤注入材であって、
前記主剤と前記硬化剤とを混合し、ゲル化してから1時間後のゲル状体を構成する凝集粒子のポロド体積が4000nm3以下であり、前記凝集粒子の回転半径が9.5nm以下である地盤注入材。
水ガラスを含む主剤と硬化剤との組み合わせからなる地盤注入材であって、
前記主剤と前記硬化剤とを混合し、ゲル化してから1時間後のゲル状体を構成する凝集粒子のポロド体積が4000nm3以下であり、前記凝集粒子の回転半径が9.5nm以下である地盤注入材。
[2] 前記水ガラスにおける酸化ナトリウムと二酸化珪素とのモル比(SiO2/Na2O)が2.6~5である[1]に記載の地盤注入材。
[3] 前記主剤と前記硬化剤とを混合しゲル化した直後の水の量が55質量%以上である[1]又は[2]に記載の地盤注入材。
[4] 前記主剤と前記硬化剤とを混合しゲル化した直後のシリカ濃度が5~25質量%である[1]~[3]のいずれかに記載の地盤注入材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コロイダルシリカを添加しなくても、耐久性の良好な改良地盤とすることが可能な地盤注入材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態(本実施形態)に係る地盤注入材は、水ガラスを含む主剤と硬化剤との組み合わせからなる。これらは地盤注入材として使用するまでは混合しないように別々に分離されている。
【0011】
そして、主剤と硬化剤とを混合し、ゲル化してから1時間後のゲル状体を構成する凝集粒子のポロド体積が4000nm3以下であり、この凝集粒子の回転半径が9.5nm以下となっている。
なお本明細書において「ゲル化」とは、流動性がなくなり、自重でも崩れない程度に固まることをいう。
【0012】
ポロド体積が4000nm3を超えると、ゲルの収縮に伴って放出される水、すなわち、離ショウ水の量が多くなって耐久性の良好な改良地盤が得られなくなる。ポロド体積は、100~4000nm3であることが好ましく、600~3900nm3であることがより好ましい。
【0013】
凝集粒子の回転半径が9.5nmを超えると、シリカの溶脱率が高くなって耐久性の良好な改良地盤が得られなくなる。回転半径は、7.0~9.5nmであることが好ましく、8.0~9.3nmであることがより好ましい。
【0014】
ポロド体積及び回転半径は、主剤と硬化剤の混合後の水の量を調整することで制御することができる。例えば、水の量が大きくなるとポロド体積及び回転半径が小さくなる傾向がある。また、上記に加えて、水ガラスにおける酸化ナトリウムと二酸化珪素とのモル比(SiO2/Na2O)を適宜調整することでもポロド体積及び回転半径を制御することができる。
【0015】
ポロド体積及び回転半径は下記のようにして求めることができる。
水ガラスを含む主剤と硬化剤とを混合して地盤注入材を調製し、ゲル化してから1時間後に小角X線散乱(SAXS)測定を行う。小角X線散乱測定には、例えば、(株)リガク製のX線回折装置SmartLabを用いることができる。このときのX線源にはCuKα線(λ=0.15418nm)を用い、測定したSAXSプロファイルから回転半径(Guinier半径)とポロド(Porod)体積を算出する。
回転半径は下記式(1)の低角領域の散乱プロファイルに適用して得られる粒子の回転体の半径であり、ギニエ半径とも呼ばれる。
【0016】
【0017】
散乱ベクトルq=4πsinθ/λが十分に小さい領域においては、均一粒子であれば散乱体の形状に関わらず適用することができる。ここで、θ:散乱角、λ:X線の波長、I(q):qにおける散乱強度、I(0):q=0 nm-1における散乱強度の外挿値、Rg:粒子の回転半径である。
【0018】
ポロド体積Vpは下記式(2)を広角領域の散乱プロファイルに適用して得られる散乱体の体積である。
【0019】
【0020】
実際の解析には、解析ソフトウェアATSASのAUTORG、DATPOROD、DammifもしくはSasViewやSASfitなどのプログラムを使って解析することができる。解析範囲は、回転半径はq=0.1~0.4nm-1とし、ポロド体積はq=0.1~4.8nm-1とする。
【0021】
主剤と硬化剤とを混合しゲル化した直後の水の量は55質量%以上であることが好ましい。水の量が55質量%以上であることで、ポロド体積及び回転半径を所定の範囲制御しやすくなる。水の量は55~90質量%であることがより好ましい。当該水の量は実施例に記載の方法で求めることができる。
【0022】
また、主剤と硬化剤とを混合しゲル化した直後のシリカ濃度は5~25質量%であることが好ましく、6~24質量%であることがより好ましい。シリカ濃度が5~25質量%であることで、地盤改良材としての止水性や実用強度を得ることができる。当該シリカ濃度は実施例に記載の方法で求めることができる。
【0023】
以下、主剤及び硬化剤等について説明する。
(主剤)
主剤は水ガラスを含み、地盤中で溢流の防止及び良好な浸透性の観点から、20℃における粘度が40~2000mPa・sであることが好ましい。
本実施形態に係る水ガラスは、ケイ酸アルカリの水溶液であり、具体的には、ケイ酸ナトリウムやケイ酸カリウムの水溶液であり、ケイ酸ナトリウムの水溶液であることが好ましい。
【0024】
主剤の20℃における粘度は40~1000mPa・sであることがより好ましく、50~500mPa・sであることがさらに好ましい。20℃における粘度は音叉型振動式粘度計や回転式粘度計(B型粘度計)にて測定することができる。上記粘度は、後述のモル比(SiO2/Na2O)を調整したり、水等で希釈したりすることで調整することができる。また、シリカ源とナトリウム源とから、最終的に加熱溶解反応させる際の加熱温度や加熱時間を調整することで上記粘度を所望の範囲にすることができる。例えば、加熱温度が高く、加熱時間が長いほど粘度が上昇する。
【0025】
水ガラスがケイ酸ナトリウムである場合の酸化ナトリウムと二酸化珪素とのモル比(SiO2/Na2O)は2.6~5であることが好ましく、2.9~4であることがより好ましい。当該モル比が2.6~5であることで、初期強度をより向上させることができる。このような水ガラスとしては、JIS規格(JIS-K-1408)にて規定されている、又は、JIS規格に準拠して配合された、3号珪酸ソーダ(3号水ガラス)、もしくはそれを超えるモル比のケイ酸ソーダが好ましく、例えば富士化学株式会社から販売されている4号珪酸ソーダ(4号水ガラス)、5号珪酸ソーダ(5号水ガラス)が好ましい。
なお、上記の酸化ナトリウムと二酸化珪素とのモル比をMRと表記する場合がある。
【0026】
特に本実施形態においては、上記モル比(SiO2/Na2O)が2.6~5で水の量が55~90質量%の範囲であるときに、凝集粒子のポロド体積が大きくなり過ぎず、かつ凝集粒子の回転半径も小さくすることすることができる。すなわちシリカの溶脱が少なく収縮の少ない耐久性の高い地盤注入材が得られる。これは、ポロド体積が大きすぎると、凝集した粒子中にはシリカの1次粒子が密に集まっているため、凝集粒子自体は密だが、全体としては疎な状態となる。このためポロド体積が大きい場合は体積の収縮が大きいと考えられる。
【0027】
また、水ガラスの固形分濃度は、20~60質量%であることが好ましく、25~50質量%であることがより好ましい。20~60質量%であることで、高い強度を得ることができる。水ガラスの固形分濃度は、水溶液の形態にある水ガラスから、水や溶剤等の揮発する物質を除いたもの(固形成分)であって、この固形成分が、珪酸ナトリウム等の珪酸化合物に実質的に相当するものであり、固形分濃度(%)=[乾燥後の質量(g)/乾燥前の質量(g)]×100で求めることができる。
【0028】
(硬化剤)
硬化剤は、無機塩及び酸放出性有機化合物の少なくともいずれかを含む。これらは例えば水溶液や当該水溶液に増粘剤等を混合した状態で主剤と組み合わせることが好ましい。
ここで、無機塩とは、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩が挙げられ、炭酸水素ナトリウムが好ましい。
【0029】
酸放出性有機化合物とは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート、グリオキザール等の水溶性アルデヒド化合物、γ-ブチロラクトン等の環状ラクトン、コハク酸ジメチルエステル等のジカルボン酸アルキルエステル、エチレングリコールジアセテート等のアルキレングリコールのアセチル化物等が挙げられ、アルキレンカーボネート、水溶性アルデヒド化合物が好ましい。
【0030】
例えば、アルキレンカーボネートであるエチレンカーボネートは水の存在によりエチレングリコールと炭酸(H2CO3)に分解し、この溶液中に電離して存在する炭酸(CO3
2-)と主剤の水ガラス中のNa+とが反応してシリカが重合することで、より良好な強度が発現されると考えられる。また、高濃度(高シリカ濃度)の水ガラスであれば、シリカの量が多いためゲル化した際に骨格構造が比較的成長し高い強度が得られると考えられる。このような観点から酸放出性有機化合物は、アルキレンカーボネートがより好ましく、エチレンカーボネートがさらに好ましい。
【0031】
硬化剤中の無機塩又は酸放出性有機化合物の含有量は、固結速度や強度の観点から、1~99質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。
【0032】
硬化剤はイソシアネート化合物を含まないことが好ましい。イソシアネート化合物としては、イソシアネートを用いた注入材に用いられる当該イソシアネートであり、例えば、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI(C-MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等が挙げられる。イソシアネート化合物を含まないことで取り扱いの安全性を高めることができる。
【0033】
硬化剤の水溶液では、既述のようにさらに増粘剤を含むことが好ましい。増粘剤を含むことで20℃における粘度を40~2000mPa・sの範囲とすることが好ましく、50~500mPa・sとすることが好ましい。20℃における粘度は音叉型振動式粘度計にて測定することができる。
増粘剤としては、アクリル系増粘剤、デンプン系増粘剤、ビニル系増粘剤、セルロース系増粘剤、ガム系増粘剤、及び無機系増粘剤等が挙げられ、セルロース系増粘剤、ガム系増粘剤、及び無機系増粘剤の少なくともいずれかであることが好ましく、セルロース系増粘剤がより好ましい。
【0034】
セルロース系増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースナノファイバー等が挙げられる。
ガム系増粘剤としては、グアーガム、リュータンガム等が挙げられる。
無機系増粘剤としては、ベントナイト、カオリナイト、セピオライト、タルク、シリカフューム等が挙げられる。
【0035】
本実施形態に係る地盤注入材は、既述の主剤の粘度と硬化剤の粘度との比(硬化剤の粘度/主剤の粘度)が0.1~10となるように組み合わされることが好ましく、0.1~3となるように組み合わされることがより好ましい。当該比が0.1~10となるように組み合わされることで、それぞれの効果が発揮されやすくなって、実用的なゲルタイムと高い初期強度がより効率よく得られやすくなる。
【0036】
主剤と硬化剤とは、使用時に混合されて、地盤や岩盤等に対して注入や流し込み等によって導入されて良好に反応硬化される。より良好に反応硬化させる観点から、これらの混合質量比は、主剤:硬化剤=1:0.5~1:3であることが好ましく、1:0.5~1:1であることがより好ましい。
【0037】
本実施形態に係る地盤注入材を用いた地盤改良方法は、例えば、当該地盤注入材(すなわち主剤と硬化剤)を、地盤中に1.5ショット方式又は2ショット方式で注入する方法を採用することができる。
【0038】
1.5ショット方式とは主剤と硬化剤とを注入管入口附近で衝突混合させてその混合液を注入する方法であり、2ショット方式とは主剤と硬化剤とを二重管からなる注入管を介して別々に供給し、該注入管の先端部で衝突混合させ、吐出させる方法である。主剤と硬化剤とを予め混合し、その混合液を注入する1ショット方式に比べ、早く固結し高強度性を得ることができる。
【実施例0039】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、下記の実施例に限定されるものではない。
【0040】
[使用材料]
・水ガラス:富士化学(株)製の水ガラス
・酸放出性有機化合物:東亜合成(株)製のエチレンカーボネート
・炭酸水素ナトリウム:富士フィルム和光純薬(株)製の試薬
・水:水道水
【0041】
[主剤の調製]
水ガラスにおける酸化ナトリウムと二酸化珪素とのモル比(SiO2/Na2O)を、原料組成により調整し、また、原料を加熱溶解反応させる際の加熱温度及び加熱時間を調整することで、20℃における粘度を調整して、MR=1.4の水ガラスを含む主剤(20℃における粘度:280mPa・s)、MR=2.1の水ガラスを含む主剤(20℃における粘度:460mPa・s)、及びMR=3.1の水ガラスを含む主剤(20℃における粘度:190mPa・s)をそれぞれ調製した。
なお、主剤粘度(20℃)は、音叉型振動式粘度計で測定した。
【0042】
[硬化剤の調製]
(1)炭酸水素ナトリウム系の硬化剤
炭酸水素ナトリウムを水に混合し炭酸水素ナトリウム系の硬化剤を作製した。
(2)エチレンカーボネート系の硬化剤
エチレンカーボネートを水に混合しエチレンカーボネート系の硬化剤を作製した。
【0043】
[地盤注入材の調製]
下記表1に示す配合(質量基準)となるように主剤と硬化剤とを混合し、ゲル化した直後の水の量及びシリカ濃度が下記表2に示す地盤注入材を調製した。
【0044】
【0045】
なお、水の量、シリカ濃度は下記のようにして求めた。
(水の量)
水の量は、[水ガラスに含まれる水分量+加えた水の量]を地盤注入材中の水分量として、これを地盤注入材の全重量で割って求めた。
[水ガラス中の水の量(質量%)/100×水ガラス量(g)+添加した水の量(g)]/[地盤注入材の質量(g)]×100=[水の量(質量%)]
【0046】
(シリカ濃度)
シリカの濃度は水ガラスに含まれるシリカ濃度から、硬化剤を混合した後の地盤注入材中のシリカ濃度を計算して求めた。
[水ガラス中のシリカ濃度(質量%)/100×水ガラス重量(g)]/[地盤注入材の重量(g)]×100=[地盤注入材のシリカ濃度(質量%)]
【0047】
各地盤注入材について、離ショウ水量、シリカ溶脱率、ゲル化してから1時間後のゲル状体を構成する凝集粒子のポロド体積、及びその凝集粒子の回転半径を下記のようにして求めた。結果を表1に示す。
(離ショウ水量)
離ショウ水量は、封緘養生で材齢1日におけるゲルから発生する離ショウ水の重量を測定して求めた。
(シリカ溶脱率)
シリカ溶脱率は、上記離ショウ水を0.45μmメンブレンフィルターで吸引濾過後、ICP-AESを用いて測定して、離ショウ水中のシリカ濃度を求め、地盤注入材中のシリカ濃度と離ショウ水中のシリカ濃度とから、[離ショウ水中のシリカ濃度/地盤注入材中のシリカ濃度]より求めた。
(ポロド体積及び回転半径)
ゲル化してから1時間後のゲル状体を構成する凝集粒子のポロド体積、及びその凝集粒子の回転半径は、(株)リガク製のX線回折装置SmartLabを用い既述の方法で求めた。
【0048】
調製した各地盤注入材について、下記のようにして耐久性の試験を行った。結果を下記表1に示す。
(耐久性の試験)
封緘養生で材齢28日におけるゲルの体積を測定し、ゲル化直後の体積と比較し、体積の減少率((1-材齢28日におけるゲルの体積/ゲル化直後の体積)×100(体積))を求めた。
【0049】