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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085524
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/00 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
B65D1/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197259
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 健太郎
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA04
3E033BA13
3E033BA18
3E033BA26
3E033DA03
3E033DD01
3E033FA02
(57)【要約】
【課題】密閉性に優れ、キャップの削りくずも発生しない容器を提供する。
【解決手段】容器は、ネジ山33が形成された嵌合部32を有する本体10と、嵌合部にネジ嵌合される蓋とを備える。ネジ山は、始点から終点まで切れ目なくらせん状に形成されている。本体は合成樹脂の射出成型で形成されてネジ山にバリを有し、バリのある部分の突出長L2は、ネジ山の最大突出長L1の20%以上70%以下である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジ山が形成された嵌合部を有する本体と、
前記嵌合部にネジ嵌合される蓋と、
を備え、
前記ネジ山は、始点から終点まで切れ目なくらせん状に形成され、
前記本体は合成樹脂の射出成型で形成されて前記ネジ山にバリを有し、
前記バリのある部分の突出長は、前記ネジ山の最大突出長の20%以上70%以下である、
容器。
【請求項2】
前記ネジ山は、前記嵌合部からの突出長が相対的に小さい小径部を有し、
前記小径部に前記バリを有する、
請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記バリは、前記射出成型に用いる金型の合わせ目に沿って形成されている、
請求項1に記載の容器。
【請求項4】
前記合成樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルホン、ポリフェニルサルホン、ポリカーボネートの何れかを含む、
請求項3に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器、より詳しくは、蓋をネジ嵌合するためのネジ山を有する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
キャップがネジ嵌合されることにより密閉される樹脂製の容器が広く使用されている。このような容器は、射出成型により形成されることがある。
【0003】
容器を射出成型により製造する場合、金型の合わせ目であるパーティングライン付近にバリが発生することは避けられない。ネジ山にバリが生じると、バリの分だけネジ山の外径が増加する。その結果、バリによりキャップが削られて削りくずが発生する不具合が生じる可能性がある。
【0004】
特許文献1に記載のプラスチックボトルは、開封時のガス抜きのために、不連続なネジ山を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-177336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のネジ山の不連続部分をパーティングライン付近に配置すると、バリの分だけネジ山の外径が増加することを防止できる。
しかし、発明者が検討したところ、詳細は後述するが、この方法では密閉性が十分でなくなる可能性があることが分かった。
発明者は、さらに検討を重ねて本発明を完成させた。
【0007】
本発明は、密閉性に優れ、キャップの削りくずも発生しない容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ネジ山が形成された嵌合部を有する本体と、嵌合部にネジ嵌合される蓋とを備えた容器である。
ネジ山は、始点から終点まで切れ目なくらせん状に形成されている。
本体は、合成樹脂の射出成型で形成されており、ネジ山にバリを有する。
バリのある部分の突出長は、ネジ山の最大突出長の20%以上70%以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る容器は、密閉性に優れ、キャップの削りくずが発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る容器を示す斜視図である。
図2】同容器の本体を示す斜視図である。
図3】同本体の嵌合部を示す部分拡大図である。
図4】同本体を上方から見た状態を示す部分拡大図である。
図5】本発明の変形例に係る本体を上方から見た状態を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について、図1から図5を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る容器1を示す斜視図である。容器1は、略円筒状であり、本体10と、本体10に取り付けられて本体10の内部空間を密閉する蓋20とを備えている。
本実施形態において、容器1の外形は略円柱状であるが、外形には特に制限はない。例えば、本体の上部の直径が小さくなることにより、蓋の最大径が本体よりも小さくてもよいし、本体および蓋の外形を変更することにより、蓋が取り付けられた容器の外形を略多角柱状としてもよい。
【0012】
図2は、蓋20を取り外した本体10を示す図である。本体10は、上部に開口31を有する。本体10の上端から一定の範囲は、図示しない蓋とネジ嵌合される嵌合部32となっている。嵌合部32の外周面には、1本のネジ山33が形成されている。
【0013】
図3は、嵌合部32の拡大図である。ネジ山33は、嵌合部32の外周面上に突出しており、嵌合部32の周囲をらせん状に周回しつつ上下方向に延びている。ネジ山33の外周面からの突出量は、後述するように部位により異なっているものの、下方の始点33aから上方の終点33bまで途切れることなく連続して形成されている。
【0014】
本実施形態において、ネジ山33の長さは、嵌合部32の周囲を1.5周する程度になっているが、これは一例であり、適宜設定できる。蓋20の嵌合による密閉を確実にする観点からは、嵌合部32の周囲を1周以上する長さが好ましい。
図3の左右両端部に示されるように、ネジ山33の断面形状は、略三角形となっている。これにより、ネジ山33は、上下方向における中間部33cが最も嵌合部32の外周面から突出している。このような断面形状も一例であり、例えば、上下方向にわたり概ね同一の突出長を有する断面形状とすることもできる。
【0015】
本体10は、合成樹脂で形成されており、少なくともネジ山33を含む嵌合部32は、2つの金型を用いた射出成型により形成されている。嵌合部32より下側の収容部40は、嵌合部32と同様に射出成型で形成されてもよいし、ブロー成型等の他の方法で形成されてもよい。
【0016】
2つの金型を用いた射出成型で形成されることにより、嵌合部32には、2つの金型の合わせ目であるパーティングラインが2か所に生じる。本実施形態のネジ山33においては、図3に示す前側の1か所と、図3では見えない後側の2か所の、計3か所がパーティングラインPLにかかっている。
【0017】
射出成型においては、パーティングラインに沿った樹脂のバリが必ず発生する。金型を精巧に形成したり、樹脂の注入圧を調節したりすることによりバリを小さくできる可能性はあるが、バリの発生自体をなくすことは、現在の技術では不可能である。
【0018】
ネジ山23に生じるバリは、嵌合部外周面からの突出長を増加させる突起となる。この突起は、本体10を形成する樹脂が比較的柔らかいものである場合はそれほど問題とはならない。しかし、本体10に高い剛性が求められる等により、本体10がポリエチレンテレフタレート(PET)等の硬い樹脂で形成される場合、蓋20の嵌合時に突起が蓋20の内面を強くこすることにより、蓋20が削られる不具合が発生する。蓋20が削られると、開封後の嵌合部に削りくずが付着して外観を損なう。削りの程度が大きい場合は、蓋が破損して再密閉ができなくなる可能性も生じる。
【0019】
発明者は、まず、ネジ山を複数の領域に分割して不連続とし、ネジ山のない部位をパーティングラインに位置させることにより、この問題の解決を試みた。これにより、パーティングラインに起因するバリは、嵌合部の外周面上に生じるもののネジ山よりも低いため、蓋の削りは生じなくなった。
しかし、その一方で、ネジ山に不連続部分を設けることにより、嵌合部の剛性が低下し、外力により変形しやすくなった。その結果、PET等の硬い樹脂を用いているにもかかわらず本体に所望の剛性を付与できないという、本末転倒になりかねない事態が発生した。
【0020】
発明者はさらに検討を重ね、ネジ山を不連続とせずに形状を変更することにより、上記の問題を解決した。
図4は、本体10を上側から見た部分拡大図である。ネジ山33の中間部33cは、嵌合部32の外周面32aから突出長L1だけ突出しているが、パーティングラインにかかる部分を含む一定領域において、突出長が小さくなっている。これにより、ネジ山33は、パーティングラインPLがかかる前後各1か所に、突出長がL1よりも小さい小径部35を有する。
【0021】
具体的に、ネジ山33は、円弧状の基本形状を有するが、本体10を上方から見た状態においてパーティングラインと本体10の中心軸Cとを結ぶ線と直交する方向に、その一部が切り落とされた形状となっている。
【0022】
本実施形態において、本体10の中心軸Cは、嵌合部32の円筒形状の中心軸と一致しているため、嵌合部32の外周面32aおよびネジ山33の中間部33cは、本体10を上方から見た状態において、概ね中心軸Cを中心とした円周上に位置する。したがって、突出長L1は、外周面32aが形成する円の半径と、本体10を上方から見た状態において中間部33cが形成する円の半径との差となる。
小径部35と中心軸との距離は、パーティングラインPLがかかる部分で最も短く、この部分における突出長L2が概ね最小となる。外周面32aからの小径部35の突出長は、パーティングラインPLから離れるにつれて徐々に増加し、L1に近づく。
【0023】
金型の設計により小径部35の形状を変更することにより、突出長L2が変化する。理論的には、パーティングラインに形成されるバリを含めた突出長L2をネジ山の最大突出長であるL1以下にすれば、蓋の削れは生じなくなるが、バリの突出量を制御することは容易ではない。その一方で、発明者は、突出長L2を小さくしすぎると別の問題が生じることを見出した。
【0024】
突出長L2が小さすぎると、ネジ山33と蓋20の内面との接触面積が減少する。この現象が過度となると、蓋20により本体10を密閉することが困難となる。
この現象は、蓋20を本体10にネジ嵌合する際のオーバーラントルクの減少として現れる。オーバーラントルクとは、ネジ嵌合した蓋にネジ山を乗り越えさせ、空回りさせるために必要な力量を意味する。オーバーラントルクが小さいと、蓋は容易に空回りするため、充填機によるキャッピング工程において不具合が生じる上、密閉も不十分であり品質が低下する。
【0025】
発明者が検討した結果、突出長L2が突出長L1の20%以上70%以下であると、蓋の削れ防止と適正なオーバーラントルクの維時による確実な密閉とを両立できることが明らかになった。したがって、パーティングラインに形成されるバリの推定最大突出長を含めた突出長L2が上記の範囲内となるように本体10の金型を形成することで、突出長L2が上記数値範囲を満たす本実施形態の本体10を製造することができる。
【0026】
オーバーラントルクの減少および密閉不良は、嵌合部の剛性不足による変形によっても生じる。本実施形態の容器においては、ネジ山33が小径部35を有するものの、ネジ山自体は始点から終点まで切れ目なく連続しているため、上述した不連続部分を設けた構成よりも嵌合部全体の剛性を高く保つことができる。その結果、オーバーラントルクを好適に保持し、蓋20のネジ嵌合により本体10内を確実に密閉することができる。
【0027】
本実施形態のネジ山に関する実験例を以下に示す。
PETを用いた射出成型により本体を、ポリプロピレン(PP)を用いた射出成型により蓋を、それぞれ作製した。このとき、ネジ山の小径部の態様のみを以下のように異ならせて実験例1から4を作製した。実験例1および2は、上述した数値範囲を満たしている。
実験例1:突出長L2が突出長L1の60%
実験例2:突出長L2が突出長L1の30%
実験例3:突出長L2が突出長L1の80%
実験例4:突出長L2が突出長L1の10%
【0028】
各例の容器をキャッピングマシンにセットし、締め付けトルクを490N・cmに設定してトルクメータでトルク値を計測しつつキャッピングを行った。キャップの空転が生じた場合はその時点のトルク値をオーバーラントルクとし、キャッピングが問題なく行えた場合はオーバーラントルクの値を「490N・cm以上」とした。
さらに、キャッピング後の容器から蓋を取り外し、嵌合部における蓋の削りくずの有無を目視にて評価した。
結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
実験例1および2では蓋の削れは発生せず、450N・cm以上のオーバーラントルク値が確保された。オーバーラントルク値が400N・cm以上であれば、ほとんどの用途で確実な密閉が確保できるため、良好な結果であった。
【0031】
突出長L2が突出長L1の70%を超える実験例3では、オーバーラントルク値は良好であったが、バリによると思われる蓋の削れが認められた。
突出長L2が突出長L1の20%を下回る実験例4では、蓋の削れは認められなかったものの、オーバーラントルク値が300未満であり、密閉が十分できなかった。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。以下にいくつか変更を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。これらの変更が2以上適宜組み合わされてもよい。
【0033】
・小径部の形状は、上述したものには限定されない。図5に示す変形例の小径部35Aは、中心軸CとパーティングラインPLを結ぶ線とは直交せず、ネジ山33からパーティングラインPLに向かって延びる2つの斜面を有している。このような小径部であっても、突出長L2が上述の数値範囲を満たしていれば同様の効果を奏する。
【0034】
・金型の形状変更に代えて、成型後のネジ山の一部を削る等により小径部が形成されてもよい。ただし、金型を形状変更する方法の方が、射出成型のみで本発明に係る本体を作製できるため、好ましい。
【0035】
・本発明に係る技術思想は、本体が比較的硬質な樹脂で形成される場合に特に有効である。例えば、上述したPET以外では、ポリプロピレン、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリフェニルサルホン(PPSU)、ポリカーボネート等で本体が形成される場合等にも好適である。
【0036】
・本発明に係る嵌合部の構造は、PETボトルを製造するための中間製品であるプリフォームにも適用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 容器
10 本体
20 蓋
32 嵌合部
33 ネジ山
33a 始点
33b 終点
35、35A 小径部
L1 ネジ山の最大突出長
L2 バリのある部分の突出長
図1
図2
図3
図4
図5