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特開2022-85527植物育成用照明手段、植物育成用照明装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085527
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】植物育成用照明手段、植物育成用照明装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
A01G7/00 601A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197263
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000201582
【氏名又は名称】前澤化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(72)【発明者】
【氏名】野口 大輝
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022AA03
2B022DA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】育成する植物に対して照射光の照射角度や照射距離を部分的に調整することが可能な植物育成用照明手段、植物育成用照明装置を提供する。
【解決手段】育成する植物Hに対して、照射角度、または照射距離のうち、少なくとも何れか一方を調整可能に配された植物成長用の光源13を有する。さらに、育成する植物Hが配される育成空間Sに対面して配される1または複数の支持部11と、支持部11に対して可動状態に支持される光源保持部12と、光源保持部12に取り付けられる、植物成長用の光源13と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
育成する植物に対して、照射角度、または照射距離のうち、少なくとも何れか1つを調整可能に配された植物成長用の光源を有することを特徴とする植物育成用照明手段。
【請求項2】
育成する植物が配される育成空間に対面して配される1または複数の支持部と、
前記支持部に対して可動状態に支持される光源保持部と、
前記光源保持部に取り付けられる、植物成長用の光源と、を有することを特徴とする植物育成用照明装置。
【請求項3】
前記光源保持部は、前記育成空間との距離を調整可能なように前記支持部に支持されることを特徴とする請求項2に記載の植物育成用照明装置。
【請求項4】
前記光源保持部は、前記植物が成長する方向に対する、前記光源の照射光軸の角度を調整可能なように前記支持部に支持されることを特徴とする請求項2または3に記載の植物育成用照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の光合成を促進させて植物を育成する植物育成用照明手段、植物育成用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
外部の天候、例えば日照条件によらず、安定して植物を育成させるために、光合成を促進させる波長域の光(人工光)を植物に照射する光源を備えた植物栽培システムが知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に開示された植物栽培システムは、人工光を併用して野菜等の植物を水耕栽培するシステムとして、栽培床を略垂直に設け、栽培床の裏側に露出する植物根に養液を噴霧する構成となっている。こうした構成により、狭小なスペースであっても、植物の育成効率を向上させることが可能となるとされている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示された植物栽培システムは、植物の植付姿勢に制約があるため、育成可能な植物の種類に制約があるという課題があった。
このため、例えば特許文献2では、栽培植物が植え付けられる栽培ベッドと、この栽培ベッドの上方に設けられ、栽培植物の成長に応じて上下に移動させられる人工光源を有する天井部と、を備えた家庭用の植物栽培装置が開示されている。こうした家庭用の植物栽培装置によれば、狭小なスペースであっても、生産効率を格段に向上させることが可能であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-92859号公報
【特許文献2】特許第4314316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示されたような家庭用の植物栽培装置は、天井部に保持された光源が、天井部の動きと連動する構成であるため、光源の位置を変更可能な範囲が限定的であり、育成する植物に対する照射光の照射角度や照射距離を部分的に調整することができないという課題があった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、育成する植物に対して照射光の照射角度や照射距離を部分的に調整することが可能な植物育成用照明手段、植物育成用照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明の植物育成用照明手段は、育成する植物に対して、照射角度、または照射距離のうち、少なくとも何れか1つを調整可能に配された植物成長用の光源を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の植物育成用照明装置は、育成する植物が配される育成空間に対面して配される1または複数の支持部と、前記支持部に対して可動状態に支持される光源保持部と、前記光源保持部に取り付けられる、植物成長用の光源と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の植物育成用照明装置によれば、育成する植物に対して照射光の照射角度や照射距離を部分的に調整することができる。例えば、植物の生育状態に合わせて、それぞれの光源からの照射光が植物の葉部分にそれぞれ当たるように調整すれば、外部の日照等に影響されることなく、効率的に光合成を促進させ、育成速度を高めて効率的に野菜等を栽培することができる。
【0010】
また、本発明では、前記光源保持部は、前記育成空間との距離を調整可能なように前記支持部に支持されていてもよい。
【0011】
また、本発明では、前記光源保持部は、前記植物が成長する方向に対する、前記光源の照射光軸の角度を調整可能なように前記支持部に支持されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、育成する植物に対して照射光の照射角度や照射距離を部分的に調整することが可能であり、これにより、植物の育成状態に応じて高精度に照射光を調節可能な植物育成用照明手段、植物育成用照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態の植物育成用照明手段、植物育成用照明装置を示す外観斜視図である。
図2】支持部及び光源保持部を示す要部拡大斜視図である。
図3】ソケット部を示す要部拡大斜視図である。
図4】第1実施形態の変形例を示す斜視図である。
図5】本発明の第2実施形態の植物育成用照明装置を示す外観斜視図である。
図6】支持柱と枠体との結合部分を示す要部拡大斜視図である。
図7】第2実施形態の変形例を示す斜視図である。
図8】本発明の第3実施形態の植物育成用照明装置を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の植物育成用照明手段、植物育成用照明装置について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の植物育成用照明手段、植物育成用照明装置を示す外観斜視図である。図2は、支持部及び光源保持部を示す要部拡大斜視図である。図3は、ソケット部を示す要部拡大斜視図である。
【0016】
植物育成用照明手段を有する本実施形態の植物育成用照明装置10は、4つの支持部11,11…と、それぞれの支持部11に支持される光源保持部12と、この光源保持部12に取り付けられる光源13と、4つの支持部11を支持する枠体14と、を備えている。
【0017】
支持部11は、互いに離間して配された一対のスライドレール21,21と、このスライドレール21,21の一端側でスライドレール21,21どうしを繋ぐ結合材22と、から構成され、上から見た時に略コ字状に形成されている。支持部11は、絶縁性で軽量な材料、例えば、樹脂によって一体に形成されていても良い。
【0018】
スライドレール21,21には、長手方向Mに延びる凹部21a,21aがそれぞれ形成され、凹部21a,21aどうしは互いに開口部分が対面するように形成されている。また、結合材22には、後述する光源13から延びる電源ケーブル28を支持する窪み22aが形成されている。
【0019】
枠体14は、複数の支持部11を支持する。本実施形態では、枠体14はリング状に形成され、4つの支持部11を互いに90゜ずつ間隔を空けて配されている。これら4つの支持部11に囲まれた中心領域に育成空間Sが形成される。それぞれの支持部11は、この育成空間Sに対向し、育成空間Sを囲うように配される。
なお、枠体14と支持部11は、本実施形態では一体に形成されているが、枠体14と支持部11とを別部材として形成することもできる。
【0020】
育成空間Sには、育成対象の植物Hが配される。育成対象の植物は、限定されるものではなく、野菜、果物、観賞用植物など、どのようなものであってもよい。例えば、野菜としては、レタス、ホウレンソウなどの葉物野菜、ナス、ピーマン、トマト、オクラなどが挙げられる。また、豆類などのつる性の野菜にも適用できる。
【0021】
光源保持部12は、例えば樹脂からなる保持部本体23と、後述する光源13を差し込むソケット部24と、このソケット部24から延びる電源ケーブル28とを有する。保持部本体23には、支持部11に形成されたスライドレール21,21の凹部21a,21aにそれぞれ入り込み、摺動可能に嵌合する嵌合部23a,23aが一体に形成されている。
これにより、光源保持部12は、育成空間Sに対する距離を任意に調整可能なように支持部11に支持される。
【0022】
また、保持部本体23には、ソケット部24を保持部本体23に係止する固定具26と、保持部本体23をスライドレール21,21の長手方向の任意の位置で固定する留め具27とが形成されている。
【0023】
図3に示すように、ソケット部24は、保持部本体23に対して、回転軸24aによって植物が成長する高さ方向Gに回動可能に軸着されている。これにより、保持部本体23は、育成空間Sに配される植物が成長する高さ方向Gに対して、光源13の照射光軸Lの角度を調整可能なように支持部11に支持される。
【0024】
また、ソケット部24は、保持部本体23に対して、長手方向Mと平行な回転軸24b回りで回動可能に軸着されている。これにより、光源13の照射光軸Lの高さ方向Gに対する角度を回転軸24a回りで調整した後、更に光源13を回転軸24b回りで回動させることで、高さ方向Gに対して斜め上方向や斜め下方向など、光源13の照射光軸Lの方向を半球状の範囲の何れの方向にも調整することができる。
【0025】
光源13は、光源保持部12のソケット部24に着脱可能に係止される。光源13は、育成空間Sに配された育成対象の植物の光合成を促進させる光線(照射光)を照射するものである。本実施形態では、光源13として発熱の少ないLED素子、例えばLED電球が用いられる。光源13は、太陽光と同様の赤外域~可視光域~紫外域までの幅広い波長域の光を照射するLED電球や、光合成に有効な波長域である赤色域または青紫色域の光を照射するLED電球などを用いることができる。
【0026】
本実施形態のように、光源13をソケット部24に着脱可能にすることによって、植物の成長具合に応じて、任意の光源13をソケット部24に新たに取り付けて照射光量を増加させたり、あるいは、照射光が不要になった部分の光源13をソケット部24から取り外すこともできる。また、天面から下方に向けて一律に光を照射する従来の植物成長装置と比較して、より低い位置にある光源13の着脱が容易であり、従来の植物成長装置では困難であった、部分的な照射光の調節を可能にする。
【0027】
また、光源13として、印加電圧に応じて、照射光の波長を変化させることができるLED素子を用いることもできる。これにより、例えば、日中の太陽光や、夕方の太陽光など、赤色域の光の割合が異なる照射光を任意の時間ごとに変化させて育成対象の植物に照射することができる。
【0028】
本実施形態の植物育成用照明装置10は、土壌栽培、水耕栽培のいずれの栽培方法にも適用できる。植物育成用照明装置10の育成空間Sの下部には、育成対象の植物が植えられた土壌、あるいは、育成対象の植物が支持された水耕栽培の培養液が配されればよい。
【0029】
以上のような構成の本実施形態の植物育成用照明装置10の作用、効果を説明する。
本実施形態の植物育成用照明装置10を用いて植物を栽培する際には、育成対象の植物、例えば野菜の植物を育成空間Sに配するように、植物育成用照明装置10を設置する。
【0030】
次に、植物の生育状態に合わせて、光源13の調整を行う。まず、光源保持部12を支持部11のスライドレール21,21の長手方向に沿ってスライドさせ、光源13の前端(照射面)と、植物との距離(照射距離)を適切に調整する。光源13と植物との距離を調整することにより、植物に照射される照射光の光量や、照射範囲を適切に変えることができる。
【0031】
次に、ソケット部24を保持部本体23に対して回動させて、高さ方向Gに対する光源13の照射光軸Lの角度(照射角度)を調整する。これにより、高さ方向Gに対する照射光軸Lの角度を90°以外の角度にして、例えば、植物の葉部分に照射光軸Lを合わせるようにする。
【0032】
こうした照明光の照射距離や照射角度の調整を、植物を取り巻くように配された4つの支持部11,11…に支持された光源13,13…のそれぞれについて個別に行う。そして、光源13に電圧を印加して、光源13を点灯させる。
【0033】
このように、本実施形態の植物育成用照明装置10によれば、育成する植物に対して照射光の照射角度や照射距離を部分的に調整することができる。例えば、植物の生育状態に合わせて、それぞれの光源13,13…からの照射光が植物の葉部分にそれぞれ当たるように調整すれば、外部の日照等に影響されることなく、効率的に光合成を促進させ、育成速度を高めて効率的に野菜等を栽培することができる。こうした照射光の照射角度や照射距離の調整は、植物の育成が進むにつれて、定期的に行うことが好ましい。
【0034】
(第1実施形態の変形例)
図4に示すように、支持部11を構成する1つのスライドレール21に、2つの凹部21a,21aを平行に形成することもできる。これにより、1つの支持部11に対して2つの光源13を高さ方向Gに重ねられるように設けることができる。これにより、1つの枠体14に対して、より多くの光源13(図4では8つ)を設けることができ、光源13の配置数の自由度を高めることができる。
【0035】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態の植物育成用照明装置を示す外観斜視図である。
なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と同様の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態の植物育成用照明装置20では、支持部11は、植物が成長する高さ方向Gに沿って複数配される。具体的には、本実施形態では、4つの支持部11が支持ざれた枠体14を植物が成長する高さ方向Gに沿って複数支持する4本の支持柱16を備えている。
【0036】
図6に示すように、支持柱16は、シャフト16aと、シャフト16aおよび枠体14を接続する係止具16bと、係止具16bのシャフト16aに対する高さ位置を任意の位置で固定する固定具16cとを有している。
【0037】
このような本実施形態の構成によれば、図5に示すように、植物が高さ方向Gへの成長に伴って、支持部11が支持された枠体14を複数、重ねるように設置することができる。これにより、植物の成長度合いに応じて、光源13の照射光を部分的に調整して、例えば全ての葉部分に向けて光合成のための照射光を照射して、効率的に植物を育成することが可能になる。
【0038】
(第2実施形態の変形例)
図7に示すように、支持柱16のシャフト16aに対して、支持部11を直接係止させることもできる。こうした構成であれば、複数の支持部11を支持する枠体は不要であり、高さ方向Gに対して全ての支持部11を互いに異なる高さ位置に固定するなど、より自由度の高い光源13の配置を実現することができる。
【0039】
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態の植物育成用照明装置を示す外観斜視図である。
なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と同様の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態の植物育成用照明装置30では、枠体34は、育成空間Sを囲む円環状に形成されている。枠体34は、平板リング状の本体部34aと、この本体部34aの上面に円環状に突設されたレール34bとが一体に形成されてなる。
【0040】
そして、光源13を保持する光源保持部12を備えた支持部11は、枠体34のレール34bに対して摺動可能に嵌合され、育成空間Sを囲む円環状にレール34b上を移動可能に支持されている。
【0041】
また、枠体34は、支持柱36によって、植物の高さ方向Gへの成長に伴って、支持部11が支持された枠体34を複数、重ねるように設置することができる。本実施形態の植物育成用照明装置30によれば、支持部11が育成空間Sを囲む円環状に移動可能に支持されているので、育成する植物の周囲の任意の方向から光合成のための照射光を照射することができる。これにより、植物の育成状況に応じて、部分的に照射光をコントロールして、植物を効率的に育成することが可能になる。
【0042】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0043】
10…植物育成用照明装置(植物育成用照明手段)
11…支持部
12…光源保持部
13…光源
14…枠体
21…スライドレール
22…結合材
23…保持部本体
24…ソケット部
S…育成空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8