(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085584
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】水陸境界部用作業台船および設置方法
(51)【国際特許分類】
E02B 17/00 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
E02B17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197343
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】594125576
【氏名又は名称】協和機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】有泉 真二
(57)【要約】
【課題】作業床を陸域と水域とに跨って簡便かつ効率的に構築する水陸境界部用作業台船および設置方法を提供する。
【解決手段】水陸境界部2の陸上部分3において陸上用台船10を組み立てる。水上部分4において水上用台船20を組み立てる。水上用台船20に、第1レグ40と、第1レグ40を昇降させる第1昇降装置41とを組み立てる。水上用台船20を水陸境界部2を挟んで陸上用台船10の正面に移動させる。第1レグ40と第1昇降装置41とを用いて水上用台船20を陸上用台船10の高さに上昇させる。陸上用台船10を水上用台船20に向けて移動させる。陸上用台船10と水上用台船20とを連結する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸上部分において陸上用台船を組み立て、
水上部分において水上用台船を組み立て、
前記水上用台船に、第1レグと、前記第1レグを昇降させる第1昇降装置とを組み立て、
前記水上用台船を水陸境界部を挟んで前記陸上用台船の正面に移動させ、
前記第1レグと前記第1昇降装置とを用いて前記水上用台船を前記陸上用台船の高さに上昇させ、
前記陸上用台船を前記水上用台船に向けて移動させ、
前記陸上用台船と前記水上用台船とを連結する、水陸境界部用作業台船の設置方法。
【請求項2】
前記水上用台船に、第2レグと、前記第2レグを昇降させる第2昇降装置とを組み立てることをさらに含み、
前記水上用台船を、前記第1レグ、前記第1昇降装置、前記第2レグ、および前記第2昇降装置を用いて前記陸上用台船の高さに上昇させる、
請求項1に記載の水陸境界部用作業台船の設置方法。
【請求項3】
前記陸上用台船と前記水上用台船とを連結した後、前記第2レグと前記第2昇降装置とを前記水上用台船から取り除くことをさらに含む、
請求項2に記載の水陸境界部用作業台船の設置方法。
【請求項4】
前記水上用台船を水面から上昇させた後、前記水上用台船の前記陸上用台船側の側面に連結用台船を連結することをさらに含み、
前記陸上用台船の前記水上用台船への前記連結は、前記連結用台船を介して連結される、
請求項1から3のいずれかに記載の水陸境界部用作業台船の設置方法。
【請求項5】
前記陸上用台船に、第3レグと、前記第3レグを昇降させる第3昇降装置とを組み立てることをさらに含み、
前記水上用台船と前記陸上用台船とを連結した後、前記第1レグ、前記第1昇降装置、前記第3レグ、および前記第3昇降装置を用いて前記陸上用台船を前記水上用台船と共に陸上より上方に持ち上げる、
請求項1から4のいずれかに記載の水陸境界部用作業台船の設置方法。
【請求項6】
陸上部分において下方から支持されている陸上用台船と、
水上部分において下方から支持されており、第1レグと、前記第1レグを昇降させる第1昇降装置とを備える水上用台船と
を備え、
前記水上用台船は、水陸境界部を挟んで前記陸上用台船の正面に位置しており、前記第1レグと前記第1昇降装置とによって、前記陸上用台船の高さに上昇されており、
前記水上用台船と前記陸上用台船とが直接又は間接的に連結されている、水陸境界部用作業台船。
【請求項7】
前記陸上用台船と前記水上用台船とは、連結用台船を介して連結されている、請求項6に記載の水陸境界部用作業台船。
【請求項8】
前記水上用台船は、第2レグと、前記第2レグを昇降させる第2昇降装置とをさらに備え、
前記水上用台船は、前記第1レグ、前記第1昇降装置、前記第2レグ、および前記第2昇降装置によって、前記陸上用台船の高さに上昇されている、請求項6又は7に記載の水陸境界部用作業台船。
【請求項9】
前記陸上用台船は、第3レグと、前記第3レグを昇降させる第3昇降装置とを備え、
前記第1レグ、前記第1昇降装置、前記第3レグ、および前記第3昇降装置によって、前記陸上用台船および前記水上用台船が陸上より上方に持ち上げられている、請求項6から8のいずれかに記載の水陸境界部用作業台船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水陸境界部用作業台船および設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水上作業台船は、例えば、海洋、河川、又はダム等の水域で安定した基礎土木工事を施工するために広く用いられている。水上作業台船は、工場等で製造されたフロータと呼ばれる台船のそれぞれを作業現場で連結する、いわゆるブロック工法によって構築される。
【0003】
特許文献1に記載の水上作業台船は、複数のフロータのそれぞれを水上で連結し、レグを海底や河床等に立て、昇降装置によって作業台船を水面より上方に持ち上げることで構築される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような水上作業台船は、水上で組立てられた後、水上に浮遊している状態でレグを海底等に立て、垂直に持ち上げるといった工程を経ることから、従来、水域でしか構築されてこなかった。一方で陸域と水域とに跨って作業場を構築する場合、H形鋼と鋼板とを主構造とした作業構台を構築することが一般的に行われている。しかしこの方法では構築期間が長くなる。
【0006】
本発明は、作業床を陸域と水域とに跨って簡便かつ効率的に構築する水陸境界部用作業台船および設置方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、陸上部分において陸上用台船を組み立て、水上部分において水上用台船を組み立て、前記水上用台船に、第1レグと、前記第1レグを昇降させる第1昇降装置とを組み立て、前記水上用台船を水陸境界部を挟んで前記陸上用台船の正面に移動させ、前記第1レグと前記第1昇降装置とを用いて前記水上用台船を前記陸上用台船の高さに上昇させ、前記陸上用台船を前記水上用台船に向けて移動させ、前記陸上用台船と前記水上用台船とを連結する、水陸境界部用作業台船の設置方法を提供する。
【0008】
本発明によれば、陸域と水域とに跨って作業台船を簡便かつ効率的に構築でき、構築期間の短縮と作業の高効率化とを図ることができる。また、陸域と水域とにおいて陸上用台船と水上用台船とを並行して構築することができ、より一層構築期間の短縮と作業の高効率化とを図ることができる。
【0009】
前記水上用台船に、第2レグと、前記第2レグを昇降させる第2昇降装置とを組み立てることをさらに含み、前記水上用台船を、前記第1レグ、前記第1昇降装置、前記第2レグ、および前記第2昇降装置を用いて前記陸上用台船の高さに上昇させてもよい。
【0010】
第2レグと第2昇降装置とを用いることによって、水上用台船の安定性を向上させることができる。第2レグによって、例えば水上用台船の転倒等に対する安定性が向上する。また、第2レグを、主に水上用台船の自重を支えることができる程度の耐荷重を有するように構成する場合、第2レグを第1レグよりも小型化できる。この場合、第2レグは設置と除去とが簡易に行われ得る。第2昇降装置は、小型の第2レグを昇降できればよいので、例えばパワーケーシングジャッキ等の既製品を用いることができる。
【0011】
前記陸上用台船と前記水上用台船とを連結した後、前記第2レグと前記第2昇降装置とを前記水上用台船から取り除くことをさらに含んでもよい。
【0012】
第2レグと第2昇降装置とを取り除くことによって、水上用台船上に作業スペースを広く確保できる。第2レグおよび第2昇降装置は、水上用台船を持ち上げる際の安定性の向上に寄与する。しかし一方で、水上用台船が陸上用台船と連結された後は、作業台船は水上用台船の第1レグと陸上用台船とによって安定的に支持される。よって、陸上用台船と水上用台船とが連結された後、第2レグおよび第2昇降装置は不要となるので、取り除くことができる。
【0013】
前記水上用台船を水面から上昇させた後、前記水上用台船の前記陸上用台船側の側面に連結用台船を連結することをさらに含み、前記陸上用台船の前記水上用台船への前記連結は、前記連結用台船を介して連結されてもよい。
【0014】
陸上用台船を水上用台船に連結する際、陸上用台船の安定性の観点から陸上用台船の移動可能距離、換言すると陸上用台船が水域に向かって突出できる距離には制限がある。そのため水上用台船を、陸上用台船の移動可能距離の範囲内まで接近させる必要がある。しかし水陸境界部の形状等により、水上用台船を陸上用台船の移動可能距離の範囲内まで接近できない場合、陸上用台船と水上用台船とを直接的に連結できない。しかしながら、連結用台船を用いることによって、水上用台船を陸上用台船の移動可能距離の範囲内まで接近できない場合であっても、陸上用台船と水上用台船とを間接的に連結できる。
【0015】
前記陸上用台船に、第3レグと、前記第3レグを昇降させる第3昇降装置とを組み立てることをさらに含み、前記水上用台船と前記陸上用台船とを連結した後、前記第1レグ、前記第1昇降装置、前記第3レグ、および前記第3昇降装置を用いて前記陸上用台船を前記水上用台船と共に陸上より上方に持ち上げてもよい。
【0016】
陸上用台船と水上用台船とを一体的に持ち上げることで、例えば高所作業が必要になる場合に作業床の高さを任意に調整できる。
【0017】
本発明はさらに、陸上部分において下方から支持されている陸上用台船と、水上部分において下方から支持されており、第1レグと、前記第1レグを昇降させる第1昇降装置とを備える水上用台船とを備え、前記水上用台船は、水陸境界部を挟んで前記陸上用台船の正面に位置しており、前記第1レグと前記第1昇降装置とによって、前記陸上用台船の高さに上昇されており、前記水上用台船と前記陸上用台船とが直接又は間接的に連結されている、水陸境界部用作業台船を提供する。
【0018】
前記の構成によれば、ブロック工法によって構築期間の短縮と作業効率の高効率化とが図られた水陸境界部用作業台船を陸域と水域とに跨って構築できる。
【0019】
前記陸上用台船と前記水上用台船とは、連結用台船を介して連結されていてもよい。
【0020】
前記の構成によれば、水陸境界部の形状等により、水上用台船を陸上用台船の移動可能距離の範囲内まで接近できない場合であっても、水陸境界部用作業台船を陸域と水域とに跨って構築できる。
【0021】
前記水上用台船は、第2レグと、前記第2レグを昇降させる第2昇降装置とをさらに備え、前記水上用台船は、前記第1レグ、前記第1昇降装置、前記第2レグ、および前記第2昇降装置によって、前記陸上用台船の高さに上昇されていてもよい。
【0022】
前記の構成によれば、水上用台船を陸上用台船の高さに上昇させる際、安定した姿勢で昇降できる。
【0023】
前記陸上用台船は、第3レグと、前記第3レグを昇降させる第3昇降装置とを備え、前記第1レグ、前記第1昇降装置、前記第3レグ、および前記第3昇降装置によって、前記陸上用台船および前記水上用台船が陸上より上方に持ち上げられていてもよい。
【0024】
前記の構成によれば、陸上用台船と水上用台船とを一体的に持ち上げることで、例えば高所作業が必要になる場合に作業床の高さを任意に調整できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の水陸境界部用作業台船および設置方法によれば、作業床を陸域と水域とに跨って簡便かつ効率的に構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る水陸境界部用作業台船の斜視図。
【
図3A】陸上用台船と水上用台船とを組み立てる際の概略図。
【
図3B】水上用台船に第1レグと第1昇降装置とを組み立てる際の概略図。
【
図3C】水上用台船を陸上用台船の高さに上昇させる際の概略図。
【
図3D】陸上用台船と水上用台船とを連結する際の概略図。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る水陸境界部用作業台船の斜視図。
【
図5A】水上用台船に第2レグと第2昇降装置とを組み立てる際の概略図。
【
図5B】水上用台船を陸上用台船の高さに上昇させる際の概略図。
【
図5C】陸上用台船と水上用台船とを連結する際の概略図。
【
図5D】水上用台船から第2レグと第2昇降装置とを取り除く際の概略図。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る水陸境界部用作業台船の斜視図。
【
図7A】水上用台船を陸上用台船の高さに上昇させる際の概略図。
【
図7B】水上用台船に連結用台船を連結する際の概略図。
【
図7C】陸上用台船と水上用台船とを連結用台船を介して連結する際に概略図。
【
図7D】水上用台船から第2レグと第2昇降装置とを取り除く際に概略図。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る水陸境界部用作業台船の斜視図。
【
図9A】陸上用台船に第3レグと第3昇降装置とを組み立てる際の概略図。
【
図9B】陸上用台船と水上用台船とを上昇させる際の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。以下の説明において、水陸境界部用作業台船1は陸域と海域とに跨って設置されることとして説明する。また、以下の説明において、陸上部分3とは、陸上用台船10が直接、又はレグ等を介して間接的に支持され得る部分(地面)を指す。水上部分4とは、水上用台船20が直接、又はレグ等を介して間接的に支持され得る部分(海底又は水面)を指す。ここで水上用台船20が水面に直接的に支持されているとは、水上用台船20が水面に浮遊していることを指す。水陸境界部2とは、地面と海底とを結ぶ部分である。
【0028】
(第1実施形態)
図1を参照すると、水陸境界部用作業台船1は、陸上用台船10と水上用台船20とを備える。
【0029】
陸上用台船10は、複数のフロータ30のそれぞれが互いに連結されることで陸上部分3に構成され、陸上部分3において下方(地面)から支持されている。フロータ30の側面には、連結手段として、複数の凸部31と、その凸部31と係合する凹部32が設けられている。凸部31を凹部32に差し込むことで、各フロータ30は連結されている。各フロータ30の連結方法は特に限定されず、周知の方法でよい。
【0030】
図2を参照すると、陸上用台船10は移動機構を有する。移動機構には、陸上部分3に敷設された敷鉄板11、油圧シリンダ12、及びエンドレスコロ13が含まれる。油圧シリンダ12の一端は敷鉄板11に固設され、他端は、陸上用台船10を水上用台船20に向かって(
図2の矢印L方向に)押し出せるように、陸上用台船10の水上用台船20から最も離間した側面に固設されている。エンドレスコロ13は陸上用台船10の下面に設けられている。
【0031】
陸上用台船10の移動機構は特に限定されず、周知の機構でよい。例えば、エンドレスコロ13の代わりにレールを敷設してもよい。また例えば、クレーンで吊り上げることによって移動させてもよい。
【0032】
なお、陸上用台船10を水上用台船20に向けて移動する際、陸上用台船10の安定性の観点から陸上用台船10の移動可能距離、換言すると陸上用台船10が水域に向かって突出できる距離には制限がある。例えば、移動可能距離は、
図3Aに示されている陸上用台船10の長さaの30%である。
【0033】
再び
図1を参照すると、水上用台船20は、陸上用台船10と同様に、複数のフロータ30のそれぞれが互いに連結されることで水上部分4に構成されている。また、水上用台船20は、第1レグ40と、第1レグ40を昇降させる第1昇降装置41とを備える。2組の第1レグ40および第1昇降装置41がそれぞれ、水上用台船20の角部のうち、陸上用台船10と最も離間した角部に設けられている。
【0034】
水上用台船20は、第1レグ40と第1昇降装置41とによって、陸上用台船10の高さに上昇され、水上部分4において下方(海底)から支持されている。なお、水上用台船20は、水陸境界部2を挟んで陸上用台船10の正面に位置している。第1昇降装置41による第1レグ40の昇降機構は特に限定されず、例えば第1昇降装置41は、尺取り虫方式で第1レグ40を昇降させてもよい。
【0035】
水上用台船20と陸上用台船10とが直接又は間接的に連結されている。本実施形態では、陸上用台船10の側面の凸部31が水上用台船20の側面の凹部32に差し込まれることによって、陸上用台船10と水上用台船20とが直接的に連結されている。
【0036】
次に、水陸境界部用作業台船1を陸域と海域とに跨って組み立てる方法を説明する。なお、組み立てには、例えばクレーンが用いられる。
【0037】
図3Aから
図3Dは、本発明に係る水陸境界部用作業台船1の設置方法を説明するために水陸境界部用作業台船1を横から見た概略図である。本実施形態では、陸上用台船10および水上用台船20は、
図3Aの矢印L方向で距離bだけ離間している。ここで距離bは、移動可能距離以下である。すなわち換言すると、水上用台船20を陸上用台船10の移動可能距離の範囲内まで接近できている。
【0038】
なお、距離bは水陸境界部2の形状によって異なる。例えば、水陸境界部2が垂直(断崖)である場合、距離bは小さくなり、水陸境界部2がなだらかに傾斜している遠浅の海岸である場合、距離bは大きくなる。また水陸境界部2が下に凸の湾曲形状や段差を有している等によっても距離bの値は異なる。すなわち距離bは、陸上部分3および水上部分4の水平方向の距離、並びに陸上部分3および水上部分4の間の水深によって決定される。
【0039】
図3Aに示されているように、陸上部分3において陸上用台船10を組み立て、水上部分4において水上用台船20を(海面に浮遊させた状態で)組み立てる。なお、陸上用台船10と水上用台船20とを、並行して組み立ててもよい。続いて、
図3Bに示されているように、水上用台船20に、第1レグ40と、第1レグを昇降させる第1昇降装置41とを組み立てる。
【0040】
その後、
図3Cに示されているように、水上用台船20を水陸境界部2を挟んで陸上用台船10の正面に移動させ、第1レグ40と第1昇降装置41とを用いて水上用台船20を陸上用台船10の高さに上昇させる。そして、
図3Dに示されているように、(油圧シリンダ12を伸長させることで、)陸上用台船10を水上用台船20に向けて移動させ、陸上用台船10と水上用台船20とを連結する。以上より、本実施形態に係る水陸境界部用作業台船1は陸域と海域とに跨って設置され得る。
【0041】
以上より、本実施形態の水陸境界部用作業台船1および設置方法によれば、陸域と水域とに跨って作業台船を簡便かつ効率的に構築でき、構築期間の短縮と作業の高効率化とを図ることができる。また、陸域と水域とにおいて陸上用台船10と水上用台船20とを並行して構築することができ、より一層構築期間の短縮と作業の高効率化とを図ることができる。
【0042】
(第2実施形態)
図4を参照すると、本発明の第2実施形態に係る水陸境界部用作業台船1の構成は、以下の点で第1実施形態と異なる。本実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0043】
本実施形態に係る水上用台船20は、第2レグ(仮設用レグ)42と、第2レグ42を昇降させる第2昇降装置(仮設用昇降装置)43とをさらに備える。1組の第2レグ42および第2昇降装置43が、水上用台船20の陸上用台船10側の幅方向(
図4の矢印W方向)中央に設けられている。
【0044】
水上用台船20は、第1レグ40、第1昇降装置41、第2レグ42、および第2昇降装置43によって、陸上用台船10の高さに上昇されている。ここで第2レグ42は、水上用台船20を海面より上方に持ち上げる際の倒れ止めを意図して設けられている(安定性の向上に寄与する)。そのため第2レグ42は、主に持ち上げられた際の水上用台船20の自重を第1レグ40と共に支えることができる程度の耐荷重を有していればよい。
【0045】
一方で第1レグ40は、水上用台船20の自重に加えて、護岸工事等で台船上に載置され得る重機等による荷重も支持する必要がある。従って、第2レグ42は、第1レグ40に比べ小型であってもよい。また第2昇降装置43は、小型の第2レグ42を昇降できればよいので、例えばパワーケーシングジャッキ等の既製品を用いることができる。
【0046】
第2レグ42および第2昇降装置43はそれぞれ、陸上用台船10および水上用台船20が連結された後、取り除かれてもよい。前述の通り、第2レグ42は、倒れ止めを意図して設けられているため、陸上用台船10および水上用台船20が連結され、水上用台船20が第1レグ40と陸上用台船10とによって安定的に支持された後は不要となる。
【0047】
次に、
図5Aから
図5Dを用いて、本実施形態における水陸境界部用作業台船1を陸域と海域とに跨って組み立てる方法を説明する。
【0048】
第1実施形態と同様、海面に水上用台船20を浮遊させ、水上用台船20に第1レグ40と第1昇降装置41とを組み立てる。続いて、
図5Aに示されているように、水上用台船20に、第2レグ42と、第2レグ42を昇降させる第2昇降装置43とを組み立てる。その後、
図5Bに示されているように、水上用台船20を、第1レグ40、第1昇降装置41、第2レグ42、および第2昇降装置43を用いて陸上用台船の高さに上昇させる。
【0049】
そして、
図5Cに示されているように、第1実施形態と同様、陸上用台船10と水上用台船20とを連結する。その後、
図5Dに示されているように、第2レグ42と第2昇降装置43とを水上用台船20から取り除く。以上より、本実施形態に係る水陸境界部用作業台船1は陸域と海域とに跨って設置され得る。
【0050】
以上より、水上用台船20を陸上用台船10の高さに上昇させる際、安定した姿勢で昇降できる。また、連結後に第2レグ42と第2昇降装置43とを取り除くことで、作業スペースを広く確保できる。加えて、第2レグ42および第2昇降装置43がそれぞれ小型である場合、それらの設置と除去とが簡易に行われ得る。
【0051】
(第3実施形態)
図6を参照すると、本発明の第3実施形態に係る水陸境界部用作業台船1の構成は、以下の点で第2実施形態と異なる。本実施形態のその他の構成は第2実施形態と同様であり、第2実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0052】
本実施形態における距離b(
図7Aを参照)は、第1実施形態または第2実施形態における距離bより大きく、移動可能距離よりも大きい。すなわち換言すると、水上用台船20を陸上用台船10の移動可能距離の範囲内まで接近できていない。そのため、陸上用台船10と水上用台船20とを直接連結できない。
【0053】
そこで本実施形態に係る水陸境界部用作業台船1は、連結用台船50をさらに備え、陸上用台船10と水上用台船20とは、連結用台船50を介して連結されている。連結用台船50は、距離bのうち移動可能距離だけでは不足している部分を補うように構成されている。具体的には、
図6の矢印L方向における連結用台船50の長さと移動可能距離との合計値が、距離b以上となるように、連結用台船50は構成されている。
【0054】
なお、連結される連結用台船50は任意の数であってよい。例えば、距離bが長い場合、水陸境界部用作業台船1の長さ方向(
図6の矢印L方向)に複数の連結用台船50を連結してもよい。その場合、
図6の矢印L方向における複数の連結用台船50の長さと移動可能距離との合計値が、距離b以上となればよい。また例えば、水陸境界部用作業台船1が幅方向(
図6の矢印W方向)に長い場合は、幅方向に複数の連結用台船50を連結してもよい。
【0055】
連結用台船50は、フロータ30と同様の連結手段を有する。すなわち、連結用台船50はフロータ30と同様に凸部31と凹部32とを備え、凹部32に凸部31を挿入することによって、連結用台船50は陸上用台船10と水上用台船20とに連結されている。
【0056】
次に、
図7Aから
図7Dを用いて、本実施形態における水陸境界部用作業台船1を陸域と海域とに跨って組み立てる方法を説明する。
【0057】
図7Aに示されているように、第2実施形態と同様、水上用台船20を、第1レグ40、第1昇降装置41、第2レグ42、および第2昇降装置43を用いて水面から上昇させる。その後、
図7Bに示されているように、例えばクレーンを用いて、水上用台船20の陸上用台船10側の側面に連結用台船50を連結する。
【0058】
次に、
図7Cに示されているように、陸上用台船10を水上用台船20に向けて移動させることで、陸上用台船10の水上用台船20への連結は、連結用台船50を介して連結される。続いて、
図7Dに示されているように、第2実施形態と同様、第2レグ42と第2昇降装置43とを取り除く。以上より、本実施形態に係る水陸境界部用作業台船1は陸域と海域とに跨って設置され得る。
【0059】
以上より、水陸境界部2の形状等により、水上用台船を陸上用台船の移動可能距離の範囲内まで接近できない場合であっても、水陸境界部用作業台船1を陸域と水域とに跨って構築できる。
【0060】
(第4実施形態)
図8を参照すると、本発明の第4実施形態に係る水陸境界部用作業台船1の構成は、以下の点で第3実施形態と異なる。本実施形態のその他の構成は第3実施形態と同様であり、第3実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0061】
本実施形態に係る水陸境界部用作業台船1において、陸上用台船10は、第3レグ44と、第3レグ44を昇降させる第3昇降装置45とをさらに備える。2組の第3レグ44および第3昇降装置45が、陸上用台船10の角部のうち、水上用台船20と最も離間した角部に設けられている。本実施形態では、第3レグ44および第3昇降装置45はそれぞれ、第1レグ40および第1昇降装置41と同一のものである。
【0062】
第1レグ40、第1昇降装置41、第3レグ44、および第3昇降装置45によって、陸上用台船10および水上用台船20が陸上(陸上部分3)より上方に持ち上げられている。
【0063】
次に、
図9Aと
図9Bとを用いて、本実施形態における水陸境界部用作業台船1を陸域と海域とに跨って組み立てる方法を説明する。
【0064】
図9Aに示されているように、陸上用台船10を組み立てた後、任意の工程で、陸上用台船10に、第3レグ44と、第3レグ44を昇降させる第3昇降装置45とを組み立てる。
図9Bに示されているように、水上用台船20と陸上用台船10とを連結した後、第1レグ40、第1昇降装置41、第3レグ44、および第3昇降装置45を用いて陸上用台船10を水上用台船20と共に陸上より上方に持ち上げる。以上より、本実施形態に係る水陸境界部用作業台船1は陸域と海域とに跨って設置され得る。
【0065】
以上より、陸上用台船10と水上用台船20とを一体的に持ち上げることで、例えば高所作業が必要になる場合に作業床の高さを任意に調整できる。
【0066】
本発明の第1実施形態から第4実施形態に係る水陸境界部用作業台船1および設置方法によれば、作業床を陸域と水域とに跨って簡便かつ効率的に構築できる。
【0067】
以上より、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態や変形例の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 水陸境界部用作業台船
2 水陸境界部
3 陸上部分
4 水上部分
10 陸上用台船
11 敷鉄板
12 油圧シリンダ
13 エンドレスコロ
20 水上用台船
30 フロータ
31 凸部
32 凹部
40 第1レグ
41 第1昇降装置
42 第2レグ
43 第2昇降装置
44 第3レグ
45 第3昇降装置
50 連結用台船