(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085609
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】足関節装具
(51)【国際特許分類】
A43B 23/02 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
A43B23/02 105Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197377
(22)【出願日】2020-11-27
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 幸俊
(72)【発明者】
【氏名】板花 俊希
(72)【発明者】
【氏名】金子 靖仙
(72)【発明者】
【氏名】船橋 祐美子
(72)【発明者】
【氏名】見邨 康平
(72)【発明者】
【氏名】岡村 尚美
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050BC04
4F050FA30
4F050GA30
4F050HA53
4F050JA30
(57)【要約】
【課題】長時間または長距離歩行時に疲労軽減効果を得ることができる足関節装具を提供する。
【解決手段】足関節装具1は、下腿前面101aから足背102にかけて配置される弾性体10と、弾性体10を下腿前面101aおよび足背102に保持するための保持部材20とを備えている。弾性体10は、保持部材20によって弾性体10が下腿前面101aおよび足背102に保持された状態において、立位姿勢時に下腿前面101aおよび足背102に沿う形状に変形可能な剛性を有しており、かつ背屈運動に対して底屈運動よりも制限を大きくかけるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下腿前面から足背にかけて配置される弾性体と、
前記弾性体を前記下腿前面および前記足背に保持するための保持部材とを備え、
前記弾性体は、前記保持部材によって前記弾性体が前記下腿前面および前記足背に保持された状態において、立位姿勢時に前記下腿前面および前記足背に沿う形状に変形可能な剛性を有しており、かつ背屈運動に対して底屈運動よりも制限を大きくかけるように構成されている、足関節装具。
【請求項2】
前記弾性体は、1.4Nm以下の曲げモーメントを有する、請求項1に記載の足関節装具。
【請求項3】
前記弾性体は、前記下腿前面に向かい合う第1面と、前記第1面と反対側に位置する第2面とを含み、
前記弾性体に切込みが設けられており、
前記切込みは、前記第2面から前記第1面に向けて延びており、前記第1面と距離をあけて配置されている、請求項1または2に記載の足関節装具。
【請求項4】
前記切込みは、前記第2面から前記第1面に向けて隙間が小さくなるように楔形に設けられている、請求項3に記載の足関節装具。
【請求項5】
前記弾性体は、第1部と、第2部とを含み、
前記第1部および前記第2部は、前記足背の幅方向に互いに隙間をあけて並ぶように配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の足関節装具。
【請求項6】
前記弾性体は、第1部と、第2部とを含み、
前記第1部および前記第2部は、前記足背の幅方向に互いに交差するように配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の足関節装具。
【請求項7】
前記第1部および前記第2部は、足関節の前で互いに交差するように配置されている、請求項6に記載の足関節装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は足関節装具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歩行者がウォーキングなどで長時間または長距離歩行すると、疲労が蓄積する。この疲労を軽減することが求められている。
【0003】
特開2018-19745号公報(特許文献1)には、筋や腱の負荷を小さくし得るランニング用の履物が記載されている。このランニング用の履物では、甲上面から脚前面に沿って延びる剛性パーツは、甲およびスネにフィットした状態で足関節が背屈するのを抑制する。この背屈抑制により、アキレス腱、ヒラメ筋および筋膜が伸び過ぎるのが抑制されるため、筋や腱の負荷が小さくなることが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報に記載されたランニング用の履物では、足関節が背屈するのが抑制されるだけでなく、背屈抑制と同じく足関節が底屈するのも抑制される。そのため、本来制限されるべきでない足関節の底屈運動が阻害される。
【0006】
また、長時間または長距離歩行時には、足関節底屈筋群の筋活動が低下することを発明者らは見出した。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、長時間または長距離歩行時に疲労軽減効果を得ることができる足関節装具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の足関節装具は、下腿前面から足背にかけて配置される弾性体と、弾性体を下腿前面および足背に保持するための保持部材とを備えている。弾性体は、保持部材によって弾性体が下腿前面および足背に保持された状態において、立位姿勢時に下腿前面および足背に沿う形状に変形可能な剛性を有しており、かつ背屈運動に対して底屈運動よりも制限を大きくかけるように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の足関節装具によれば、長時間または長距離歩行時に疲労軽減効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る足関節装具が足関節に装着された状態を概略的に示す側面図である。
【
図2】実施の形態1に係る足関節装具が足関節に装着された状態を概略的に示す斜視図である。
【
図3】実施の形態1に係る足関節装具が足関節に装着された状態で足関節が底屈するときの様子を概略的に示す側面図である。
【
図4】実施の形態1に係る足関節装具が足関節に装着された状態で足関節が背屈するときの様子を概略的に示す側面図である。
【
図5】実施の形態1に係る足関節装具が足関節に装着された状態で足関節が底屈から背屈したときの弾性体の様子を概略的に示す側面図である。
【
図6】実施の形態1に係る足関節装具の歩行時における状態を概略的に示す側面図である。
【
図7】実施の形態2に係る足関節装具が足関節に装着された状態を概略的に示す側面図である。
【
図8】実施の形態2に係る足関節装具が足関節に装着された状態を概略的に示す斜視図である。
【
図9】実施の形態2に係る足関節装具の構成を概略的に示す分解側面図である。
【
図10】実施の形態3に係る足関節装具が足関節に装着された状態を概略的に示す斜視図である。
【
図11】実施の形態4に係る足関節装具が足関節に装着された状態を概略的に示す斜視図である。
【
図12】実施の形態4に係る足関節装具の変形例が足関節に装着された状態を概略的に示す斜視図である。
【
図13】実施例1および比較例の足関節角度と足関節モーメントとの関係を示すグラフである。
【
図14】歩行時の下肢の動きを概略的に示す模式図である。
【
図15】実施例1および比較例の腓腹筋の筋活動を示すグラフである。
【
図16】実施例1および比較例のヒラメ筋の筋活動を示すグラフである。
【
図17】実施例2および比較例の足関節角度と足関節モーメントとの関係を示すグラフである。
【
図18】実施例2および比較例の腓腹筋の筋活動を示すグラフである。
【
図19】実施例1および実施例2の弾性体を3点曲げした時、弾性体が圧子によってたわませられたことによってできる角度と曲げモーメントとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、特に言及しない限り、以下の図面において同一または対応する部分には同一の参照符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0012】
(実施の形態1)
図1および
図2を参照して、実施の形態1に係る足関節装具1の構成について説明する。本実施の形態に係る足関節装具1は、足関節(足首の関節)に装着される装具である。
【0013】
本実施の形態に係る足関節装具1は、弾性体10と、保持部材20とを備えている。弾性体10は、下腿101の下腿前面101aから足背102にかけて配置される。保持部材20は、弾性体10を下腿前面101aおよび足背102に保持するためのものである。
【0014】
弾性体10は、保持部材20によって弾性体10が下腿前面101aおよび足背102に保持された状態において、立位姿勢時に下腿前面101aおよび足背102に沿う形状に変形可能な剛性を有しており、かつ背屈運動に対して底屈運動よりも制限を大きくかけるように構成されている。
【0015】
弾性体10は、第1端部11と、第2端部12とを含んでいる。第1端部11は、下腿前面101aに配置されている。第2端部12は、第1端部11と反対側に配置されている。第2端部12は、足背102に配置されている。第2端部12は、リスフラン関節Lに配置されていてもよい。
【0016】
弾性体10は、1.4Nm以下の曲げモーメントを有する。
【0017】
弾性体10は、第1面S1と、第2面S2とを含んでいる。第1面S1は下腿前面101aに向かい合っている。第2面S2は、第1面S1と反対側に位置する。弾性体10に切込みSが設けられている。切込みSは、第2面S2から第1面S1に向けて延びており、第1面S1と距離をあけて配置されている。切込みSは、第2面S2から第1面S1に向けて隙間が小さくなるように楔形に設けられている。
【0018】
弾性体10の材料は、たとえば、ゴム系の素材である。ゴム系の素材は、たとえば、ニトリルゴム(NBR)である。また、弾性体10の材料は、たとえば、オレフィン系素材であってもよい。
【0019】
保持部材20は、ベルト21と、台座22と、第1固定具23と、第2固定具24とを含んでいる。ベルト21は、下腿101に保持可能に構成されている。ベルト21は、下腿101を周方向に覆うように構成されている。ベルト21は、たとえば、ゴムベルトである。台座22は、足背102に保持可能に構成されている。台座22は、平板状に構成されている。台座22の材料は、たとえば、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)である。
【0020】
第1固定具23は、ベルト21に取り付けられている。第1固定具23は、弾性体10の第1端部11に取り付けられている。第1固定具23は、天面部23aと、一対の第1側面部23bと、第1背面部23cとを含んでいる。天面部23aは、一対の第1側面部23bおよび第1背面部23cの各々に接続されている。天面部23a、一対の第1側面部23bおよび第1背面部23cは、弾性体10の第1端部11を取り囲むように構成されている。第1背面部23cにベルト21が取り付けられている。具体的には、第1背面部23cに設けられた孔にベルト21が挿通されている。
【0021】
第2固定具24は、台座22に取り付けられている。第2固定具24は、弾性体10の第2端部12に取り付けられている。第2固定具24は、底面部24aと、一対の第2側面部24bと、第2背面部24cとを含んでいる。底面部24aは、一対の第2側面部24bおよび第2背面部24cの各々に接続されている。底面部24a、一対の第2側面部24bおよび第2背面部24cは、弾性体10の第2端部12を取り囲むように構成されている。第2背面部24cに台座22が取り付けられている。具体的には、台座22の上面に第2背面部24cが取り付けられている。底面部24aと第2側面部24bとの間に隙間Gが設けられている。第2固定具24の内部に溜まった雨水をこの隙間Gから排出することができる。
【0022】
次に、
図3~
図6を参照して、歩行時における足関節装具の状態について説明する。
【0023】
図3に示されるように、足関節が底屈するときに、弾性体10は伸びる。足関節が足底に向けて屈曲されると、下腿前面101aと足背102との距離が広がるため、第1固定具23と第2固定具24との距離が広がる。このため、弾性体10の第1端部11と第2端部12との距離が長くなる。
【0024】
図4に示されるように、足関節が背屈するときに、弾性体10は縮む。足関節が背屈すると、下腿前面101aと足背102との距離が狭まるため、第1固定具23と第2固定具24との距離が狭まる。このため、弾性体10の第1端部11と第2端部12との距離が短くなる。
【0025】
図5に示されるように、足関節が底屈した状態から背屈した状態になることで、図中実線矢印で示されるように、弾性体10は圧縮される。これにより、図中破線矢印で示されるように、弾性体10に反力が生じる。
【0026】
図6に示されるように、歩行時において、足が地面に着地するときに足関節が底屈する。このため、弾性体10は伸びる。足が着地してから前方に進むときに足関節が背屈する。このため、弾性体10は縮む。これにより、図中実線矢印で示されるように弾性体10が圧縮されることにより、図中破線矢印で示されるように弾性体10に反力が生じる。このとき、足関節が背屈するのが抑制される。
【0027】
次に、本実施の形態に係る足関節装具1の作用効果について説明する。
【0028】
歩行時における片脚支持期の歩行動作は逆振り子運動である。倒れ込むことで位置エネルギーが運動エネルギーに変換される。片脚支持期後半において、下肢の筋は、姿勢を保つために力学的エネルギーを吸収する役割を担う。主に、股関節屈曲筋群、足関節底屈筋群がその役割を担う。
【0029】
発明者が鋭意検討したところ、以下の知見が得られた。片脚支持期後半において下肢全体のエネルギー吸収能力の変化は少ない。疲労が増すと、片脚支持期後半において、股関節のエネルギー吸収能力は低下し、足関節がよりエネルギーを吸収する役割を担う。パワーは関節トルクと関節角速度の積である。股関節のパワーを補うために足関節がより働く。足関節の底屈筋群の疲労に伴い、筋収縮力の発揮能力が低下する。つまり、足関節底屈トルクが低下する。そのため、パワーを一定に保つためには、足関節がより大きな背屈運動をすることが必要となる。このため、背屈方向への角速度が増加する。
【0030】
したがって、長時間または長距離歩行をアシストするために、足関節底屈筋群のサポートおよび足関節背屈運動の抑制が求められる。
【0031】
本実施の形態に係る足関節装具1によれば、弾性体10は、下腿前面101aから足背102にかけて配置される。弾性体10は、保持部材20によって弾性体10が下腿前面101aおよび足背102に保持された状態において、立位姿勢時に下腿前面101aおよび足背102に沿う形状に変形可能な剛性を有しており、かつ背屈運動に対して底屈運動よりも制限を大きくかけるように構成されている。このため、歩行時の下腿101の倒れ込みを弾性体10の圧縮に対する反力で制御することができる。よって、足関節背屈運動を抑制することができる。これにより、足関節底屈筋群の活動量を減らすことができ、長時間または長距離歩行時に疲労軽減効果を得ることができる。
【0032】
本実施の形態に係る足関節装具1によれば、弾性体10は、1.4Nm以下の曲げモーメントを有する。これにより、長時間または長距離歩行時に疲労軽減効果を得ることができるように、弾性体10の剛性を設定することができる。
【0033】
本実施の形態に係る足関節装具1によれば、切込みSは、第2面S2から第1面S1に向けて延びており、第1面S1と距離をあけて配置されている。このため、足関節が背屈運動する際には、背屈角度が大きくなるにつれて、弾性体10の断面積が徐々に大きくなり、圧縮されることで反力が増大する。反対に足関節が底屈運動する際は、弾性体の断面積が小さくなるので、弾性体による足関節の底屈を制限する力を小さくすることができる。
【0034】
本実施の形態に係る足関節装具1によれば、切込みSは、第2面S2から第1面S1に向けて隙間が小さくなるように楔形に設けられている。このため、弾性体10が曲げられたときの弾性体10の角度を制御することができる。
【0035】
(実施の形態2)
実施の形態2は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1と同一の構成および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0036】
図7~
図9を参照して、実施の形態2に係る足関節装具1の構成について説明する。
【0037】
本実施の形態に係る足関節装具1では、弾性体10は、保持部材20に着脱可能に構成されている。弾性体10は、保持部材20の内側に挿入されるように構成されている。
【0038】
弾性体10は、長手方向に延びる棒状に構成されている。弾性体10は、短手方向の中央が前方に突き出すように構成されている。弾性体10の短手方向の中央の窪みに下腿前面101aが対向するに、保持部材20によって弾性体10は下腿前面101aおよび足背102に保持される。
【0039】
保持部材20は、サポーター25と、バンド26とを含んでいる。サポーター25は、下腿101および足背102に保持可能に構成されている。サポーター25は、足首に保持可能に構成されている。サポーター25には、第1孔25aと、第2孔25bと、第3孔25cとが設けられている。第1孔25aは、下腿101を挿入可能に構成されている。第2孔25bは、足背102を露出可能に構成されている。第3孔25cは、踵を露出可能に構成されている。
【0040】
バンド26は、下腿101を周方向に覆うように構成されている。バンド26は、面ファスナーによって周方向の長さを調整可能に構成されている。サポーター25が足首に装着された状態で、下腿前面101aとサポーター25との間に弾性体10が挟まれている。バンド26は、この状態でサポーター25を周方向に覆うように構成されている。したがって、バンド26によって弾性体10はしっかりと固定される。
【0041】
次に、本実施の形態に係る足関節装具1の作用効果について説明する。
【0042】
本実施の形態に係る足関節装具1によれば、弾性体10は、保持部材20の内側に挿入されるため、弾性体10による見た目の違和感を抑制することができる。
【0043】
(実施の形態3)
実施の形態3は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1と同一の構成および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0044】
図10を参照して、実施の形態3に係る足関節装具1の構成について説明する。
【0045】
実施の形態3に係る足関節装具1では、弾性体10は、第1部10aと、第2部10bとを含んでいる。第1部10aおよび第2部10bの各々は円柱状に構成されている。第1部10aおよび第2部10bは、足背102の幅方向に互いに隙間をあけて並ぶように配置されている。第1部10aおよび第2部10bは、足背102の幅方向に隙間をあけて等間隔に配置されている。
【0046】
保持部材20の第1固定具23は、第1背面部23cを備えている。第1背面部23cの上面に第1部10aおよび第2部10bの各々が固定されている。保持部材20の第2固定具24は、第2背面部24cを備えている。第2背面部24cの上面に第1部10aおよび第2部10bの各々が固定されている。
【0047】
本実施の形態に係る足関節装具1の作用効果について説明する。
【0048】
本実施の形態に係る足関節装具1によれば、第1部10aおよび第2部10bは、足背102の幅方向に互いに隙間をあけて並ぶように配置されている。このため、第1部10aから第2部10bまで連続して弾性体10が構成されている実施の形態1、2のような場合よりも弾性体10の断面積が小さくなる。これにより、図中両矢印で示すねじり方向(足関節内外旋の動き)の抵抗を小さくすることができる。
【0049】
(実施の形態4)
実施の形態4は、特に説明しない限り、上記の実施の形態3と同一の構成および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態3と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0050】
図11を参照して、実施の形態4に係る足関節装具の構成について説明する。
【0051】
実施の形態4に係る足関節装具1は、弾性体10は、第1部10aと、第2部10bとを含んでいる。第1部10aおよび第2部10bは、足背102の幅方向に互いに交差するように配置されている。
【0052】
本実施の形態に係る足関節装具1の作用効果について説明する。
【0053】
本実施の形態に係る足関節装具1によれば、第1部10aおよび第2部10bは、足背102の幅方向に互いに交差するように配置されている。このため、第1部10aおよび第2部10bの交差部のねじれ剛性が小さくなるため、図中両矢印で示すねじれ方向(足関節内外旋の動き)への制限を少なくすることができる。
【0054】
続いて、
図12を参照して、実施の形態4に係る足関節装具1の変形例について説明する。
【0055】
実施の形態4に係る足関節装具1の変形例では、第1部10aおよび第2部10bは、足関節の前で互いに交差するように配置されている。
【0056】
本実施の形態に係る足関節装具1の変形例の作用効果について説明する。
【0057】
本実施の形態に係る足関節装具1の変形例によれば、第1部10aおよび第2部10bは、足関節の前で互いに交差するように配置されている。このため、第1部10aおよび第2部10bの交差部が足関節の軸に近づくため、図中両矢印で示すねじれ方向への制限をより少なくすることができる。
【実施例0058】
以下、本発明の実施例について比較例と対比して説明する。
【0059】
まず、実施例1および比較例について足関節角度と足関節モーメントとの関係の検証結果を説明する。
図13は、足関節角度(deg)と足関節モーメント(Nm/kg)との関係を示すグラフである。
図13の縦軸は、足関節モーメント(底背屈)である。
図14の横軸は、足関節角度(底背屈)である。
図14は、歩行時の下肢の動きを概略的に示す模式図である。足関節角度(deg)と足関節モーメント(Nm/kg)とを次のように測定した。光学式モーションキャプチャーMAC3D System(Motion Analysis社、500Hz)で全身動作と床反力を計測した。動作解析ソフトCortex(Motion Analysis社、ver.6.03.03)とViusal3D(C-Motion社、ver.5.3)でデータ処理を行った。
【0060】
図13を参照して、実施例1は本発明の実施例であり、比較例は本発明に対する比較例である。
図13に示される実線は比較例を示しており、破線は実施例1を示している。実施例1は、実施の形態1に係る足関節装具1を装着した状態での検証結果を示している。比較例は、本発明の足関節装具1を装着していない状態での検証結果を示している。つまり、比較例は、本発明の足関節装具1が装着されていない状態での通常歩行での検証結果を示している。
【0061】
図13の領域Aは、
図14の領域Aに対応している。領域Aは、右脚が着地してから前方に進むときの状態である。
図13に示されるように、比較例と実施例1とでは、領域Aにおいて足関節角度に大きな変化はなかった。したがって、実施例1は、通常歩行と対比して歩容を大きく変化させなかった。
【0062】
次に、実施例1および比較例について足関節底屈筋群の筋活動の検証結果を説明する。
図15および
図16は、筋電計の試験結果を示している。
図15および
図16の縦軸は、筋活動(EMG:mV)を示している。
図15および
図16の横軸は、右脚の接地を基準として歩行1サイクル(1~1001frame)を示している。
図15は、腓腹筋の筋活動を示すグラフである。
図16は、ヒラメ筋の筋活動を示すグラフである。
図15および
図16の実線は比較例の筋活動を示しており、破線は実施例1の筋活動を示している。足関節底屈筋群の筋活動を次のように測定した。Delsys社製ワイヤレス筋電計システム(TrignoワイヤレスEMGシステム、DS-T03-A16014、2000Hz)を用いてデータを取得した。取得したデータを数値解析ソフトウェアMATLABを用いて処理した。
【0063】
図15を参照して、腓腹筋については、実施例1の筋活動は、比較例の筋活動と同程度であった。
図16を参照して、ヒラメ筋については、実施例1の筋活動は、比較例の筋活動よりも少なかった。したがって、実施例1は、通常歩行と対比して、ヒラメ筋の筋活動が少なかった。よって、実施例1は、通常歩行と対比して、疲労軽減効果が期待できることがわかった。
【0064】
続いて、実施例2および比較例について足関節角度と足関節モーメントとの関係の検証結果を説明する。
【0065】
図17は、足関節角度(deg)と足関節モーメント(Nm/kg)との関係を示すグラフである。
図17の縦軸は、足関節モーメント(底背屈)である。
図17の横軸は、足関節角度(底背屈)である。足関節角度(deg)と足関節モーメント(Nm/kg)とを次のように測定した。光学式モーションキャプチャーMAC3D System(Motion Analysis社、500Hz)で全身動作と床反力を計測した。動作解析ソフトCortex(Motion Analysis社、ver.6.03.03)とViusal3D(C-Motion社、ver.5.3)でデータ処理を行った。
【0066】
図17に示される実線は比較例を示しており、一点鎖線は実施例2を示している。実施例2は、実施の形態2に係る足関節装具1を装着した状態での検証結果を示している。比較例は、本発明の足関節装具1を装着していない状態での検証結果を示している。つまり、比較例は、本発明の足関節装具1が装着されていない状態での通常歩行での検証結果を示している。
【0067】
図17に示されるように、実施例2は、比較例と対比して背屈し難かった。したがって、実施例2は、通常歩行と対比して足関節背屈角度を制御できることがわかった。
【0068】
次に、実施例2および比較例について足関節底屈筋群の筋活動の検証結果を説明する。
図18は、筋電計の試験結果を示している。
図18の縦軸は、筋活動(EMG:mV)を示している。
図18の横軸は、右脚の接地を基準として歩行1サイクル(1~1001frame)を示している。
図18は、腓腹筋の筋活動を示すグラフである。
図18の実線は比較例の筋活動を示しており、一点鎖線は実施例2の筋活動を示している。足関節底屈筋群の筋活動を次のように測定した。Delsys社製ワイヤレス筋電計システム(TrignoワイヤレスEMGシステム、DS-T03-A16014、2000Hz)を用いてデータを取得した。取得したデータを数値解析ソフトウェアMATLABを用いて処理した。
【0069】
図18を参照して、腓腹筋について、実施例2の筋活動は、比較例の筋活動よりも少なかった。したがって、実施例2は、通常歩行と対比して、腓腹筋の筋活動が少なかった。よって、実施例2は、通常歩行と対比して、疲労軽減効果が期待できることがわかった。
【0070】
さらに、実施例1および実施例2について弾性体角度とモーメントとの関係の検証結果を説明する。
図19は、弾性体角度(deg)とモーメント(Nm)との関係を示すグラフである。
図19の縦軸は、モーメント(底背屈)である。
図19の横軸は、弾性体角度(底背屈)である。
図19に示される破線は実施例1を示しており、一点鎖線は実施例2を示している。弾性体角度とモーメントとの関係は、次のように測定した。支持点距離130mmで3点曲げ試験を実施し、その測定結果より曲げモーメントを算出した。変位と荷重中心から各支持点までの距離をもとに、弾性体がたわむことでできる角度を算出した。実施例の装着静止立位時の写真をもとに、弾性体基準角度を選定し(この時の弾性体角度は132度である。)、弾性体角度がこれより小さくなる状態を背屈とし、大きくなる状態を底屈とした。背屈は15度まで計算し、底屈は10度まで計算した。
【0071】
図19に示されるように、弾性体の曲げモーメントは最大背屈時1.4Nm以下となるように構成されていることが望ましいことがわかった。
【0072】
なお、上記の本実施の形態および各変形例は適宜組み合わせることができる。
【0073】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
1 足関節装具、10 弾性体、10a 第1部、10b 第2部、11 第1端部、12 第2端部、20 保持部材、21 ベルト、22 台座、23 第1固定具、24 第2固定具、25 サポーター、30 付勢部材、101 下腿、101a 下腿前面、102 足背、S 切込み、S1 第1面、S2 第2面。