(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085631
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
A23D7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197407
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】591040144
【氏名又は名称】太陽油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】宮生 祥子
(72)【発明者】
【氏名】江藤 碧
(72)【発明者】
【氏名】土手 慎介
【テーマコード(参考)】
4B026
【Fターム(参考)】
4B026DC02
4B026DC06
4B026DG02
4B026DG03
4B026DG04
4B026DH01
4B026DH02
4B026DH03
4B026DH05
4B026DH10
4B026DP01
4B026DP04
4B026DX02
4B026DX05
(57)【要約】
【課題】製造適性が良く、カット時に形がつぶれにくく、程よい硬さであり、かつ、カット時に割れが生じにくいトッピング油中水型乳化組成物を提供すること。
【解決手段】エステル交換油脂を55質量%~100質量%含む、トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル交換油脂を55質量%以上100質量%以下含む、トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物。
【請求項2】
POP量が15質量%以下である、請求項1に記載のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物。
【請求項3】
液状油脂の含有量が40質量%以下である、請求項1又は2に記載のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物。
【請求項4】
パーム油、パーム油中融点部の含有量の合計が25質量%以下である、請求項1~3の何れか一項に記載のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物。
【請求項5】
前記エステル交換油脂は、ラウリン系油脂とパーム系油脂とを構成成分として含む、請求項1~4の何れか一項に記載のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物。
【請求項6】
前記ラウリン系油脂はパーム核分別軟質油である、請求項5に記載のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物。
【請求項7】
前記パーム系油脂は、パーム油、パーム極度硬化油、パーム分別軟質油、パーム分別硬質油、から選ばれる、請求項5又は6に記載のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物。
【請求項8】
前記エステル交換油脂は、ヨウ素価が20以上50以下のエステル交換油脂である、請求項1~7の何れか一項に記載のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物。
【請求項9】
5℃におけるSFC(固体脂含量)が30%以上60%以下である、請求項1~8の何れか一項に記載のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物。
【請求項10】
融点が30℃以上40℃以下である、請求項1~9の何れか一項に記載のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物を含む、トッピング油中水型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食店などで提供されるラーメンやホットケーキの上にトッピングとして、マーガリン、ファットスプレッドを乗せることがある。このとき、割れがなく、整った形にカットすることができる機能性が求められる。
【0003】
特許文献1には、即席麺に使用される、バターの溶ける様子を再現し見た目にもおいしさを感じさせるカットバター風固形調味料の製造方法が記載されている。しかし、この文献では、油脂は使用されているものの融点以外の規定がなく、また、カット時の硬さやカット時に割れないといった機能性の報告はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トッピング油中水型乳化組成物は、見た目が重要であるため、カット時に割れが生じたり、形がつぶれたりしないことが求められる。
【0006】
すなわち、本発明は、製造適性が良く、カット時に形がつぶれにくく、程よい硬さであり、かつ、カット時に割れが生じにくいトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物は、エステル交換油脂を55質量%以上100質量%以下含む、トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物である。
【0008】
エステル交換油脂を55質量%以上100質量%以下含むトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物を用いることで、トッピング油中水型乳化組成物を製造することができる。
【0009】
本明細書において、「トッピング油中水型乳化組成物」とは、カットして食品の上にトッピングとして乗せる油中水型乳化組成物を指す。ここで、「油中水型乳化組成物」は、好ましくはファットスプレッド、マーガリン、より好ましくはマーガリンである。
また、本明細書において、「トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物」は、トッピング油中水型乳化組成物を製造する際に用いる油脂組成物を指す。
【0010】
また、本発明の好ましい形態では、トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物中のPOPの量が15質量%以下である。ここで、POPとは、1位と3位にパルミチン酸、2位にオレイン酸を有する構造のトリグリセリドのことを指す。
【0011】
また、本発明の好ましい形態では、トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物中の液状油脂の含有量が40質量%以下である。
【0012】
また、本発明の好ましい形態では、トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物中のパーム油、パーム油中融点部の含有量の合計が25質量%以下である。
【0013】
また、本発明の好ましい形態では、前記エステル交換油脂は、ラウリン系油脂とパーム系油脂とを構成成分として含む。前記ラウリン系油脂はパーム核分別軟質油であることが好ましい。また、前記パーム系油脂は、パーム油、パーム極度硬化油、パーム分別軟質油、パーム分別硬質油、から選ばれることが好ましい。
【0014】
また、本発明の好ましい形態では、前記エステル交換油脂は、ヨウ素価が20以上50以下のエステル交換油脂である。
【0015】
また、本発明の好ましい形態では、トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物の5℃におけるSFC(固体脂含量)が30%以上60%以下である。
【0016】
また、本発明の好ましい形態では、トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物の融点が30℃以上40℃以下である。
【0017】
また、本発明は、上記のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物を含むことを特徴とする、トッピング油中水型乳化組成物でもある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、製造適性が良く、カット時に形がつぶれにくく、程よい硬さであり、かつ、カット時に割れが生じにくいトッピング油中水型乳化組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】5℃で2週間保管した、実施例1のトッピング油中水型乳化組成物をカットした際の断面
【
図2】5℃で2週間保管した、実施例2のトッピング油中水型乳化組成物をカットした際の断面
【
図3】5℃で2週間保管した、実施例3のトッピング油中水型乳化組成物をカットした際の断面
【
図4】5℃で2週間保管した、実施例4のトッピング油中水型乳化組成物をカットした際の断面
【
図5】5℃で2週間保管した、実施例5のトッピング油中水型乳化組成物をカットした際の断面
【
図6】5℃で2週間保管した、比較例1のトッピング油中水型乳化組成物をカットした際の断面
【
図7】5℃で2週間保管した、比較例2のトッピング油中水型乳化組成物をカットした際の断面
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0021】
<トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物>
本発明のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物は、エステル交換油脂を55質量%以上100質量%以下含む、トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物である。
【0022】
エステル交換油脂を55質量%以上100質量%以下含むトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物を用いることで、製造適性が良く、カット時に形がつぶれにくく、程よい硬さであり、かつ、カット時に割れが生じにくいトッピング油中水型乳化組成物を製造することができる。
【0023】
トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物中のエステル交換油脂の含有量は、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは63質量%以上である。
また、トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物中のエステル交換油脂の含有量は、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0024】
エステル交換油脂の含有量を上記のようにすることで、製造適性が良く、カット時に形がつぶれにくく、程よい硬さであり、かつ、カット時に割れが生じにくいトッピング油中水型乳化組成物を製造することができる。
【0025】
また、エステル交換油脂は、当該技術分野で公知の方法で油脂をエステル交換処理することで、用意することができる。
具体的には、エステル交換油脂は、ランダムエステル交換反応を用い、製造することができる。
ここで、ランダムエステル交換は、例えば、ナトリウムメチラート、水酸化ナトリウム等を触媒としてエステル交換を行う化学的な方法、非選択的リパーゼ等を触媒としてエステル交換を行う酵素的な方法によって行うことができる。
特に、化学的な方法でランダムエステル交換反応を行うことによって得られたエステル交換油を用いることが、より好ましい。
【0026】
本件の好ましい形態では、エステル交換油脂は、ラウリン系油脂とパーム系油脂とを構成成分として含む。
【0027】
ここで、ラウリン系油脂とは、パーム核油、ヤシ油、及びこれらの分別、配合、硬化、エステル交換等した油脂を意味する。構成脂肪酸としては、ラウリン酸を多く含み、より好ましくはラウリン酸を構成脂肪酸全体の30質量%以上含む油脂であり、さらに好ましくは40質量%以上含む油脂である。
【0028】
エステル交換油脂の構成成分として用いるラウリン系油脂としては、パーム核油、ヤシ油、及び、これらの分別、配合、硬化した油脂が挙げられる。
中でも、エステル交換油脂の構成成分として用いるラウリン系油脂は、パーム核分別軟質油であることが好ましい。
【0029】
パーム系油脂とは、パームの果実由来の油脂の総称であり、パーム油またはパーム油を分別、配合、硬化、エステル交換等した油脂を意味する。
また、エステル交換油脂の構成成分として用いるパーム系油脂は、パーム油またはパーム油を分別、配合、硬化等した油脂から選ばれる二種以上を用いることが好ましい。
【0030】
エステル交換油脂の構成成分を上記のようにすることで、製造適性が良く、カット時に形がつぶれにくく、程よい硬さであり、かつ、カット時に割れが生じにくいトッピング油中水型乳化組成物を製造することができる。
【0031】
また、本発明に用いるエステル交換油脂は、ヨウ素価が20以上50以下のエステル交換油脂であることが好ましい。
【0032】
ここで、トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物には、二種以上のエステル交換油脂を組み合わせて用いることが好ましい。
【0033】
以下、二種のエステル交換油脂(以下、エステル交換油脂1、エステル交換油脂2等と表記する)を用いる形態における、より好ましい形態を説明する。
【0034】
二種のエステル交換油脂を含む形態の場合、本発明のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物は、ヨウ素価35以上50以下のエステル交換油脂1と、ヨウ素価20以上30以下のエステル交換油脂2とを含むことが好ましい。
【0035】
また、エステル交換油脂1とエステル交換油脂2の質量比、すなわち「エステル交換油脂1の含有量/エステル交換油脂2の含有量」の値は、1.0~5.0であることが好ましい。
「エステル交換油脂1の含有量/エステル交換油脂2の含有量」の値の上限は、より好ましくは4.0、さらに好ましくは3.5である。
「エステル交換油脂1の含有量/エステル交換油脂2の含有量」の値の下限は、より好ましくは1.2、さらに好ましくは1.5である。
【0036】
エステル交換油脂の構成成分を上記のようにすることで、製造適性が良く、カット時に形がつぶれにくく、程よい硬さであり、かつ、カット時に割れが生じにくいトッピング油中水型乳化組成物を製造することができる。
【0037】
以下、ヨウ素価35以上50以下のエステル交換油脂1について、より好ましい形態を説明する。
【0038】
エステル交換油脂1のヨウ素価は、より好ましくは40以上50以下、さらに好ましくは45以上50以下である。
【0039】
エステル交換油脂1の構成成分として用いるラウリン系油脂は、パーム核分別軟質油であることが好ましい。
本発明の好ましい実施形態では、エステル交換油脂1中のパーム核分別軟質油の含有量は、好ましくは13質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは18質量%以上である。
また、本発明の好ましい実施形態では、エステル交換油脂1中のパーム核分別軟質油の含有量は、好ましくは33質量%以下、より好ましくは31質量%以下、さらに好ましくは28質量%以下である。
【0040】
また、エステル交換油脂1の構成成分として用いるパーム系油脂は、パーム油及びパーム分別軟質油であることが好ましい。
本発明の好ましい実施形態では、エステル交換油脂1中のパーム油の含有量は、好ましくは57質量%以上、より好ましくは59質量%以上、さらに好ましくは62質量%以上である。
また、本発明の好ましい実施形態では、エステル交換油脂1中のパーム油の含有量は、好ましくは77質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは72質量%以下である。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、エステル交換油脂1中のパーム分別軟質油の含有量は、好ましくは5質量%以上である。
また、本発明の好ましい実施形態では、エステル交換油脂1中のパーム分別軟質油の含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0042】
以下、ヨウ素価20以上30以下のエステル交換油脂2について、より好ましい形態を説明する。
【0043】
エステル交換油脂2のヨウ素価は、より好ましくは20以上28以下、さらに好ましくは20以上26以下である。
【0044】
エステル交換油脂2の構成成分として用いるラウリン系油脂は、パーム核分別軟質油であることが好ましい。
本発明の好ましい実施形態では、エステル交換油脂2中のパーム核分別軟質油の含有量は、好ましくは19質量%以上、より好ましくは21質量%以上、さらに好ましくは24質量%以上である。
本発明の好ましい実施形態では、エステル交換油脂2中のパーム核分別軟質油の含有量は、好ましくは39質量%以下、より好ましくは37質量%以下、さらに好ましくは34質量%以下である。
【0045】
エステル交換油脂2の構成成分として用いるパーム系油脂は、パーム極度硬化油、パーム分別硬質油から選ばれる一種、より好ましくは二種を含む形態であることが好ましい。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、エステル交換油脂2中のパーム極度硬化油の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。
また、本発明の好ましい実施形態では、エステル交換油脂2中のパーム極度硬化油の含有量は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは23質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0047】
本発明の好ましい実施形態では、エステル交換油脂2中のパーム分別硬質油の含有量は、46質量%以上、好ましくは48質量%以上、さらに好ましくは51質量%以上である。
また、本発明の好ましい実施形態では、エステル交換油脂2中のパーム分別硬質油の含有量は、好ましくは66質量%以下、より好ましくは64質量%以下、さらに好ましくは61質量%以下である。
【0048】
ここで、本発明においては、上記の二種のエステル交換油のうち、少なくとも一種を含む形態であってもよい。
【0049】
また、トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物中のPOP量が10質量%以下、好ましくは8.5質量%以下、より好ましくは6.5質量%以下、さらに好ましくは5.0質量%以下である。
【0050】
POPは結晶性が悪く、粗大結晶となりやすい性質を有する。そのため、油脂組成物中に多すぎると油中水型乳化組成物の製造適性の低下やカット時の割れの原因になる。
以上により、本発明において、POP量の上限を上記範囲とすることで、製造適性が良く、割れが生じにくいトッピング油中水型乳化組成物を得ることができる。
【0051】
なお、トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物中のPOP量は、液体クロマトグラフィー質量分析法を用いて算出することができる。
【0052】
また、トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物中の液状油脂の含有量が40質量%以下であることが好ましい。
液状油脂の含有量を上記範囲内とすることで、製造適性が良く、カット時に形がつぶれにくく、程よい硬さのトッピング油中水型乳化組成物を製造することができる。
【0053】
ここで、液状油脂とは、常温で液体の油脂のことである。液状油脂として、好ましくは20℃で液体の油脂を用いる。
【0054】
液状油脂として、大豆油、菜種油、ハイオレイック菜種油(例えば、オレイン酸含有量65質量%以上の菜種油)、ハイエルシン菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、紅花油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油(例えば、オレイン酸含有量65質量%以上のヒマワリ油)、亜麻仁油、胡麻油、これら二種以上の混合油などが例示できる。中でも、液状油脂としては、菜種油を好適に用いることができる。
【0055】
トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物中の液状油脂の含有量は、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
また、液状油脂の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。
【0056】
液状油脂の含有量を上記範囲内とすることで、製造適性が良く、カット時に形がつぶれにくく、程よい硬さのトッピング油中水型乳化組成物を製造することができる。
【0057】
また、トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物中のパーム油、パーム油中融点部の含有量の合計が25質量%以下であることが好ましい。トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物中のパーム油、パーム油中融点部の含有量の合計は、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは12%以下、特に好ましくは7%以下である。
【0058】
パーム油、パーム中融点部は、POPを多く含むため、多すぎると粗大結晶となりやすく、製造適性の低下や割れの原因となる。パーム油、パーム中融点部の含有量を上記範囲内とすることで、製造適性が良く、カット時に割れが生じにくいトッピング油中水型乳化組成物を製造することができる。
【0059】
また、本発明のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物は、トッピング油中水型乳化組成物の基本的性質を損なわない限り、前述した油脂類以外の油脂を含んでいてもよい。例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、動物脂、又はこれらの分別、配合、硬化、エステル交換等した油脂から選択される一種又は二種以上の油脂、が挙げられる。
【0060】
なお、本発明に用いる各油脂には、一般的に入手可能なものを用いることができる。
【0061】
<トッピング油中水型乳化組成物>
本発明のトッピング油中水型乳化組成物は、油相と水相とからなり、上述した本発明のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物を油相に含む。
【0062】
本発明のトッピング油中水型乳化組成物は、一般的な製造方法により製造できるが、代表的な方法を述べると、油相部に水相部を加えて乳化した後、急冷捏和し、レスティングチューブを使用した結晶化と成型を行う方法などが挙げられる。
【0063】
油相における本発明のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物の含有量は特に制限されないが、油相を構成する要素において最も大きい割合を占めることが好ましく、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
【0064】
油相と水相の質量比は適宜設定することができる。油相の割合は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
また、油相の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
【0065】
また、油相には、乳化剤を添加し、溶解ないし分散させることができる。このような親油性の乳化剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド等従来公知の乳化剤のうち低HLBの乳化剤が例示でき、本発明においてはこれらのいずれを組み合わせて使用してもよい。特にレシチンを好ましく用いることができる。
【0066】
また、バターオイル、バター、調製脂を由来とする乳脂肪を用いる場合には、これらを必要に応じて加熱融解して油相部を調製する。乳脂肪を含む油相部は、上述した本発明のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物を含む油相部と混合した後、水相部を添加してもよく、また各々添加してもよい。
【0067】
また、水相部は、水に対し、脱脂粉乳、食塩、カゼインナトリウム、糖類、蔗糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸ナトリウム、トリポリりん酸ナトリウム、第二りん酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ヘキサメタりん酸ナトリウム、増粘多糖類、香料、ホエイパウダーなどを添加し調製することができる。
【0068】
上記のトッピング油中水型乳化組成物は、本発明の効果を妨げない範囲においてその他の成分を含有することができる。
【0069】
また、調製したトッピング油中水型乳化組成物は、ブロック状に成型し、冷蔵保管することができる。使用時には、包丁等を用いて適当な大きさにカットし、ホットケーキやラーメンなどの上にトッピングとして乗せて使用することができる。
【0070】
本発明のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物は、5℃におけるSFCが好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上である。
5℃におけるSFCを30%以上とすることで、カット時に形がつぶれにくい、程よい硬さのトッピング油中水型乳化組成物が得られる。
【0071】
本発明のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物は、5℃におけるSFCが好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下、さらに好ましくは45%以下である。
SFCを60%以下とすることで、人の力で無理なく切れる程よい硬さのトッピング油中水型乳化組成物を製造することができる。
【0072】
また、10℃のSFCの値は、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上である。10℃のSFCの値は、好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下、さらに好ましくは38%以下である。
【0073】
また、15℃のSFCの値は、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上である。15℃のSFCの値は、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下である。
【0074】
また、20℃のSFCの値は、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上である。20℃のSFCの値は、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは25%以下である。
【0075】
また、25℃のSFCの値は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上である。25℃のSFCの値は、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下である。
【0076】
また、30℃のSFCの値は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上である。30℃のSFCの値は、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である。
【0077】
また、35℃のSFCの値は、好ましくは0%以上、より好ましくは5%以上である。35℃のSFCの値は、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下である。
【0078】
また、40℃のSFCの値は、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下である。
【0079】
また、45℃のSFCの値は、好ましくは1%以下、より好ましくは0%である。
【0080】
また、本発明のトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物は、融点が30℃以上40℃以下であることが好ましい。ここで、融点は、35℃以上であることが好ましい。
【0081】
融点を上記範囲とすることで、形がつぶれにくく、人の力で無理なくカットできる程よい硬さのマーガリンを製造することができる。
【実施例0082】
<トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物の調製>
(1)油脂の用意
本実施例では、表1に示す各油脂を用いた。
【0083】
表1に、実施例1~5、及び比較例1~2において使用した各油脂の構成脂肪酸のうち、代表的な脂肪酸組成を示す。ここで、表1に示す各油脂は、一般的に入手可能なものを用いた。
【0084】
【0085】
(2)エステル交換油脂の調製
表2に記載の比率の油脂混合物を、0.1%のナトリウムメチラートを触媒とし、90℃で30分間、ランダムエステル交換反応を行い、エステル交換油脂1、及びエステル交換油脂2を得た。
エステル交換油脂1のヨウ素価は46、エステル交換油脂2のヨウ素価は25である。
ヨウ素価は、基準油脂分析試験法(2.3.4.1-2013ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法))に従い、分析した。
【0086】
【0087】
(3)トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物の調製
表3に記載の比率で油脂を混合した。その後、脱色、脱臭し、実施例1~5、及び比較例1、2の各油脂組成物(本発明における、トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物に相当)を得た。
【0088】
[トッピング油中水型乳化組成物の調製]
実施例1~5、及び比較例1、2のそれぞれのトッピング用油中水型乳化組成物用油脂組成物(油脂合計68質量%)に、バター15質量%、トコフェロール0.02質量%、レシチン0.4質量%、フレーバー及び着色料を適宜加え、油相を調製した。一方、脱脂粉乳1.5質量%、食塩2.2質量%、残部を水とし、水相を調製した。
油相部に水相部を加えて乳化した後、急冷捏和を行った。レスティングチューブを使用した結晶化と成型を行い、トッピング油中水型乳化組成物を調製した。調製したトッピング油中水型乳化組成物を直径約7cm、高さ約6cmに成型し、トッピング用マーガリン(本発明における、トッピング油中水型乳化組成物に相当)を得た。
【0089】
<トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物およびトッピング油中水型乳化組成物の評価>
製造したトッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物、およびトッピング油中水型乳化組成物について、表3に示す項目の測定、評価を行った。
【0090】
また、実施例1~5、比較例1、2のトッピング油中水型乳化組成物のカット時の断面を、それぞれ
図1~
図7に示す。
【0091】
【0092】
[評価方法:POP量]
トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物のPOP量を下記の方法で求めた。
まず、液体クロマトグラフィー質量分析法によって、各構成油脂中のトリグリセリドのPOP量を求めた。液体クロマトグラフィー質量分析装置には、液体クロマトグラフィー部としてAgilent 1260 Infinity バイナリ LCシステムを用いた。質量分析部として、Agilent 6130 Single Quadrupole LC/MSシステムを用いた。カラムはインタクト製、Cadenza CD-C18を使用した。
測定した各構成油脂中のトリグリセリドのPOP量と、各構成油脂の配合割合から、トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物中のPOP量を算出した。
【0093】
[評価方法:SFC(固体脂含量)]
トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物の、各温度におけるSFCを測定した。SFCは基準油脂分析法(2.2.9‐2003 固体脂含量(NMR法))に準じて測定した。
【0094】
[評価方法:融点]
トッピング油中水型乳化組成物用油脂組成物の融点を測定した。ここで、融点は、基準油脂分析法(2.2.4.2‐1996 融点(上昇融点))に準じて測定した。
【0095】
[評価方法:製造適性]
直径約7cmの口金を用いてトッピング油中水型乳化組成物の成型を行い、製造適性の評価を行った。
4…容易
3…やや容易
2…困難
1…非常に困難
【0096】
[評価方法:硬度]
トッピング油中水型乳化組成物を5℃で2週間保管した後、ミクロペネメーター(RIGOSHA製のPENETRO METER、円錐(102.5g))を使用し、針入度(単位は1/10mm)1単位とし、硬度とした。
【0097】
[評価方法:カット時の硬さ]
トッピング油中水型乳化組成物を5℃で2週間保管した後カットし、カットのしやすさを評価した。
4…無理なくカットできる
3…ほぼ無理なくカットできる
2…カットするのにやや力が必要
1…柔らかく、潰れる
【0098】
[評価方法:カット時の割れの評価]
トッピング油中水型乳化組成物を5℃で2週間保管した後のカット時の割れを評価した。
4…割れない
3…やや剥がれあり
2…剥がれあり
1…激しく割れる
【0099】
<結果・考察>
表3に示すとおり、エステル交換油脂を55質量%以上100質量%以下含む油脂組成物を用いたトッピング油中水型乳化組成物(実施例1~5)は、製造が容易であった。また、カット時につぶれず、大きな割れもなく、トッピング用マーガリンとして用いても見た目に問題がなくきれいな形にカットすることができた。
【0100】
特に、エステル交換油脂(エステル交換油脂1、エステル交換油脂2の合計)65質量%、パーム油5質量%、液状油脂30質量%を用いて製造したトッピング油中水型乳化組成物(実施例1)は、製造適性、カット時の硬さ、カット時の割れの評価全てにおいて良好な結果が得られた。
【0101】
また、エステル交換油脂(エステル交換油脂1、エステル交換油脂2の合計)85質量%、液状油脂15質量%を用いて製造したトッピング油中水型乳化組成物(実施例2)は、製造適性、カット時の硬さ、カット時の割れの評価全てにおいて良好な結果が得られた。
【0102】
また、エステル交換油脂(エステル交換油脂1、エステル交換油脂2の合計)100質量%を用いて製造したトッピング油中水型乳化組成物(実施例3)は、製造適性、カット時の割れの評価において、良好な結果が得られた。
【0103】
また、エステル交換油脂(エステル交換油脂1、エステル交換油脂2の合計)75質量%、パーム油、パーム油中融点部の含有量の合計10質量%、液状油脂15質量%を用いて製造したトッピング油中水型乳化組成物(実施例4)は、カット時の硬さ、カット時の割れの評価で良好な結果が得られた。
また、エステル交換油脂(エステル交換油脂1、エステル交換油脂2の合計)65質量%、パーム油、パーム油中融点部の含有量の合計15質量%、液状油脂20質量%を用いて製造したトッピング油中水型乳化組成物(実施例5)は、カット時の硬さの評価で良好な結果が得られた。
【0104】
一方、パーム油100質量%を用いて製造したトッピング油中水型乳化組成物(比較例1)は、成型できるようになるまでに時間がかかり、製造が困難であった。また、硬度も41.5と硬く、カット時にはやや力が必要で、カット時に割れが確認された。
【0105】
また、エステル交換油脂(エステル交換油脂1、エステル交換油脂2の合計)50質量%、液状油脂50質量%を使用し製造したトッピング油中水型乳化組成物(比較例2)は、成型できるようになるまでに時間がかかり、製造が非常に困難であった。また、硬度が133.6と柔らかく、カット時には潰れてしまった。