(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085675
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】転造工具ホルダー
(51)【国際特許分類】
B21H 3/04 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
B21H3/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197474
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000103367
【氏名又は名称】オーエスジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】梅林 義弘
(72)【発明者】
【氏名】浜井 俊行
(72)【発明者】
【氏名】冨永 信夫
(57)【要約】
【課題】被加工物にねじ山を精度良く形成できる転造工具ホルダーを提供すること。
【解決手段】ホルダー100によれば、転造工具1を保持する保持部材110と、保持部材110に配設される規制部材120と、を備え、規制部材120は、台座10の径方向外方側から軸支部材20の頭部22に当接可能に形成されるので、転造時の圧力によって軸支部材20が撓むことを抑制できる。その結果、ダイス30同士の間隔が広がることを抑制して、被加工物のねじ山を精度良く形成できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を受け入れるための受入孔を有する台座と、その台座に配設される複数の軸支部材と、その軸支部材に回転可能に軸支され前記台座の前記受入孔の周囲に配設される複数のダイスとを有する転造工具を保持する転造工具ホルダーにおいて、
前記転造工具を保持する保持部材と、
前記保持部材に配設される規制部材と、を備え、
前記規制部材は、前記台座の径方向外方側から前記軸支部材の頭部に当接可能に形成されることを特徴とする転造工具ホルダー。
【請求項2】
前記保持部材には、外周面におねじが形成され、
前記規制部材は、前記保持部材のおねじが螺合可能なめねじが内周面に形成される外嵌部と、その外嵌部から径方向内方側へ張り出し、内周面が前記軸支部材の頭部に当接可能とされる張出部とを備えることを特徴とする請求項1記載の転造工具ホルダー。
【請求項3】
前記規制部材の張出部の内周面または前記軸支部材の頭部の外周面の少なくとも一方は、前記台座から離間するに従って小径となるテーパー面とされることを特徴とする請求項2記載の転造工具ホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転造工具ホルダーに関し、特に、被加工物にねじ山を精度良く形成できる転造工具ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被加工物を受け入れるための挿入孔2(受入孔)を有するダイス駒1(台座)と、そのダイス駒1(台座)に配設される複数のピン4(軸支部材)と、そのピン4(軸支部材)に回転可能に軸支されダイス駒1(ベース)の挿入孔2(受入孔)の周囲に配設される複数のねじローラ3(ダイス)とを備えたローリングダイス(転造工具)が開示される。特許文献2,3にも、同様の構造の転造工具が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-174566号公報
【特許文献2】特開平3-35927号公報
【特許文献3】実開昭55-148838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術のように、軸支部材が片持ちで台座に配設される構造では、転造時の圧力によって軸支部材に撓みが生じ、ダイス同士の間隔が広がることがあるため、被加工物にねじ山を精度良く形成できないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、被加工物にねじ山を精度良く形成できる転造工具ホルダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の転造工具ホルダーは、被加工物を受け入れるための受入孔を有する台座と、その台座に配設される複数の軸支部材と、その軸支部材に回転可能に軸支され前記台座の前記受入孔の周囲に配設される複数のダイスとを有する転造工具を保持するものであり、前記転造工具を保持する保持部材と、前記保持部材に配設される規制部材と、を備え、前記規制部材は、前記台座の径方向外方側から前記軸支部材の頭部に当接可能に形成される。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の転造工具ホルダーによれば、転造工具を保持する保持部材と、保持部材に配設される規制部材と、を備え、規制部材は、台座の径方向外方側から軸支部材の頭部に当接可能に形成されるので、転造時の圧力によって軸支部材が撓むことを抑制できる。その結果、ダイス同士の間隔が広がることを抑制して、被加工物のねじ山を精度良く形成できる。
【0008】
請求項2記載の転造工具ホルダーによれば、請求項1記載の転造工具ホルダーの奏する効果に加え、保持部材には、外周面におねじが形成され、規制部材は、保持部材のおねじが螺合可能なめねじが内周面に形成される外嵌部と、その外嵌部から径方向内方側へ張り出し、内周面が軸支部材の頭部に当接可能とされる張出部とを備えるので、保持部材に対する規制部材(外嵌部)の螺合量を変更することで、軸支部材の頭部と規制部材の張出部との軸方向における相対位置を調整できる。
【0009】
請求項3記載の転造工具ホルダーによれば、請求項2記載の転造工具ホルダーの奏する効果に加え、規制部材の張出部の内周面または軸支部材の頭部の外周面の少なくとも一方は、台座から離間するに従って小径となるテーパー面とされるので、保持部材に対する規制部材(外嵌部)の螺合量を変更することで、軸支部材の頭部と規制部材の張出部との台座の径方向における相対位置を調整できる。
【0010】
これにより、例えば、軸支部材の頭部と規制部材の張出部とが当接する位置まで規制部材を保持部材に対して螺合する(ねじ込む)ことにより、軸支部材の撓みを規制可能な位置に規制部材を容易に配置できる。また、例えば、軸支部材の頭部と規制部材の張出部とを当接させた後に、規制部材を保持部材に対して更に螺合する(ねじ込む)ことで、軸支部材を台座の径方向内方側へ撓ませて、ダイス同士の間隔を調整(狭く)できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)は、本発明の第1実施形態における転造工具及びホルダーの正面図であり、(b)は、
図1のIb-Ib線における転造工具及びホルダーの部分拡大断面図である。
【
図2】(a)は、台座の正面図であり、(b)は、
図2(a)のIIb-IIb線における台座の断面図である。
【
図3】(a)は、軸支部材の底面図であり、(b)は、
図3(a)の矢印IIIb方向視における軸支部材の側面図である。
【
図4】(a)は、保持部材の正面図であり、(b)は、
図4(a)のIVb-IVb線における保持部材の断面図である。
【
図5】(a)は、規制部材の底面図であり、(b)は、
図5(a)のVb-Vb線における規制部材の断面図である。
【
図6】(a)から(c)は、それぞれ第2から第5実施形態における転造工具の部分拡大正面図である。
【
図7】(a)は、第1の変形例における転造工具の部分拡大断面図であり、(b)は、第2の変形例における座面の正面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、転造工具1及びホルダー100の全体構成について説明する。
図1(a)は、本発明の第1実施形態における転造工具1及びホルダー100の正面図であり、
図1(b)は、
図1のIb-Ib線における転造工具1及びホルダー100の部分拡大断面図である。
【0013】
図1に示すように、転造工具1は、被加工物を受け入れるための受入孔11が中心軸に沿って貫通形成される円板状の台座10と、その台座10に配設される複数の軸支部材20と、その軸支部材20に回転可能に軸支され、台座10の受入孔11の周囲に配設される複数のダイス30と、軸支部材20を台座10に固定するための引込ボルト40とを備え、ホルダー100を介して自動旋盤やタレット旋盤に取り付けられ、小径(例えば、M12以下)のおねじを被加工物に形成(転造)する。なお、本実施形態では、ダイス30の配設数が3個とされる。
【0014】
ダイス30は、中心軸に沿って貫通孔31が貫通される円筒状に形成され、その外周面には、リードを有さない環状のねじ山32が複数条(本実施形態では5山)形成される。即ち、ダイス30のねじ山32は、ダイス30の中心軸に対して直交する平面に沿って延在される。
【0015】
よって、ダイス30は、台座10の中心軸に対して、被加工物に形成するおねじ(以下「被加工ねじ」と称す)のリード角だけ傾斜した姿勢で台座10に取り付けられる。また、ダイス30は、被加工ねじのリードに合うように、取り付け高さ位置を互いに所定量(本実施形態では被加工ねじのリード(ピッチ)の1/3)ずつ異ならせて台座10に取り付けられる。
【0016】
図2(a)は、台座10の正面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のIIb-IIb線における台座10の断面図である。
【0017】
台座10には、受入孔11と、ダイス30の軸方向端面を支える座面12と、軸支部材20が取り付けられる取付孔13と、引込ボルト40を挿通させるための挿通孔14と、引込ボルト40の頭部を支える座面15と、受入孔11から径方向外方側へ向けて放射直線状に延設される複数のスリット16と、六角穴付止めねじ50が締結される締結孔17とが形成される。
【0018】
座面12には、複数条(本実施形態では2条)の溝12aが凹設される。溝12aは、断面半円状の凹溝であり、軸支部材20の中心軸(即ち、ダイス30の回転軸)を中心とした円環状に形成(延設)される。
【0019】
座面12、取付孔13及び挿通孔14は、同心に形成され、それら座面12、取付孔13及び挿通孔14の中心軸は、台座10の中心軸から等距離であって周方向等間隔となる位置に配置される。また、座面12、取付孔13及び挿通孔14の中心軸は、上述したように、台座10の中心軸に対して被加工ねじのリード角だけ傾斜される。
【0020】
座面12,15は、中心軸に垂直な平面として形成される。取付孔13の内径寸法は、挿通孔14の内径寸法よりも大きな寸法とされ、取付孔13の底部には、底面13aが中心軸に垂直な平面(即ち、座面12,15に平行な平面)として形成される。
【0021】
締結孔17は、取付孔13の中心軸へ向けて台座10の径方向に沿って穿設され、その内周面には、めねじが螺刻される。よって、締結孔17に締結された六角穴付止めねじ50の軸方向端面(先端面)を軸支部材20(Dカット面21b)に圧着させることで、軸支部材20が回転されることを規制できる(
図1参照)。
【0022】
なお、台座10には、1のスリット16を横切る形態で調整ボルト(図示せず)が締結され、その調整ボルトの締結量を変更する(スリット16の間隔を変更する)ことで、ダイス30の間隔(台座10の中心軸からの距離)が調整可能に構成される。
【0023】
図3(a)は、軸支部材20の底面図であり、
図3(b)は、
図3(a)の矢印IIIb方向視における軸支部材20の側面図である。
【0024】
軸支部材20は、軸状の軸部21と、その軸部21の上端からフランジ状に張り出す頭部22とを備える。
【0025】
軸部21は、台座10の取付孔13及びダイス30の貫通孔31(
図1(b)参照)に挿通される部位であり、これら取付孔13及び貫通孔31の内径と同等または若干小さい外径に設定される。これにより、ダイス30が軸支部材20(軸部21)により台座10の所定位置に回転可能に配置(軸支)される。
【0026】
頭部22は、台座10の座面12との間でダイス30を保持するための部位であり、ダイス30の貫通孔31の内径よりも大きな外径に設定される。
【0027】
軸部21には、その下端から軸支部材20の中心軸に沿って締結孔21aが凹設されると共に、その外周面の一部が断面D字に切除されることでDカット面21bが形成される。締結孔21aの内周面には、めねじが螺刻され、引込ボルト40が締結可能に構成されると共に、Dカット面21bには、六角穴付止めねじ50の軸方向端面(先端面)が圧着可能とされる(
図1参照)。
【0028】
ここで、軸部21の長さ寸法H3は、ダイス30の厚み寸法H1(
図1(b)参照)と、取付孔13の深さ寸法H2(
図2(b)参照)とを加算した寸法よりも寸法αだけ大きな寸法に設定される(H1+H2=H3+α)。なお、本実施形態では、寸法αは、0.01~0.05mmに設定される。
【0029】
ダイス30の台座10への装着は、軸支部材20の軸部21(締結孔21a)に締結した引込ボルト40により軸支部材20を引き込み、その軸支部材20(軸部21)の先端面(軸方向端面)を取付孔13の底面13aに着座させることで行われる。これにより、装着作業の工数を低減しつつ、座面12に着座したダイス30と軸支部材20の頭部22との間のクリアランスを正確に形成できる。
【0030】
即ち、軸支部材を取付孔に圧入する構造では、軸支部材を圧入し過ぎてダイスの回転が阻害されないように、圧入量を微調整する必要があり、高度な技術が必要とされると共に、調整作業に工数が嵩んでいた。一方、軸支部材の外周面のおねじを取付孔の内周面のめねじ締結する構造では、山頂が相手の谷底に当接(密着または食い込み)可能な形状に形成され、回転抵抗が大きいため、締結力により軸支部材が折損し易かった。また、転造完了後のダイスの逆転時にダイスとの接触圧により軸支部材が回転し脱落することがあった。
【0031】
これに対し、本実施形態の構造によれば、クリアランスの調整作業を不要として、ダイス30を台座10に装着する作業を効率化できる。また、軸支部材20等の破損を抑制できる。更に、転造完了後のダイス30の逆転時における軸支部材20の回転を規制して、軸支部材20(ダイス30)が脱落することを抑制できる。
【0032】
特に、被加工ねじが小径(例えば、M12以下、特に、M10以下)の場合、転造工具1が小型となり、その分、クリアランスの絶対値も小さくなるため、クリアランスの調整に高度な技術が要求される。よって、本実施形態における転造工具1(軸支部材20の引込ボルト40による固定構造)が有効となる。
【0033】
図4(a)は、保持部材110の正面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のIVb-IVb線における保持部材110の断面図である。
【0034】
保持部材110は、自動旋盤やタレット旋盤に保持されるシャンク部111と、そのシャンク部111と同心に形成される胴部112とを備える。シャンク部111及び胴部112には、被加工物を受け入れるための貫通孔113が保持部材110の中心軸に沿って穿設される。
【0035】
胴部112は、円板状の底部と筒状の周壁部とから有底筒状に形成され、胴部112(周壁部)の内径は、台座10の外径と同等または若干小さな寸法に設定される。胴部112(周壁部)には、複数の締結孔112aが穿設され、その締結孔102aに締結された六角穴付止めねじ(図示せず)の先端(とがり先)が台座10の外周面の凹部(図示せず)に嵌入されることで、台座10が保持部材110(胴部112)に固定される。
【0036】
胴部112の外周面には、おねじ112bが螺刻される。おねじ112bは、保持部材110の中心軸を軸として形成されるねじ山であり、規制部材120(外嵌部121)のめねじ121aと螺合可能とされる。
【0037】
図5(a)は、規制部材120の底面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のVb-Vb線における規制部材120の断面図である。
【0038】
規制部材120は、円筒状に形成される外嵌部121と、その外嵌部121の軸方向一側の端部から径方向内方側へ張り出す円板状の張出部122とを備える。
【0039】
外嵌部121の内周面には、めねじ121aが螺刻される。めねじ121aは、規制部材120の中心軸を軸として形成されるねじ山であり、保持部材110のおねじ112bと螺合可能とされる。
【0040】
外嵌部121には、複数の凹部121bが外周面に凹設される。凹部121bは、引掛けピンスパナのピンを受け入れる凹部であり、引掛けピンスパナを使用して、規制部材120を保持部材110に対して回転させることができる。
【0041】
外嵌部121には、規制部材120の中心軸へ向けて複数の締結孔121cが穿設され、その内周面には、めねじが螺刻される。よって、締結孔121cに締結された六角穴付止めねじ(図示せず)の軸方向端面(先端面)を保持部材110(胴部112)の外周面に圧着させることで、保持部材110に対して規制部材120が回転することを規制できる。
【0042】
張出部122には、正面視(軸方向視)円形の開口が規制部材120の中心軸と同心に穿設され、その開口の内周面が規制面122aとされる。規制面122aは、軸支部材20の頭部22に当接する部位であり、外嵌部121(台座10)から離間する方向へ向けて小径となるテーパー面として形成される(
図1参照)。
【0043】
なお、規制面122aの最小内径は、転造工具1の軸方向視において複数の軸支部材20の頭部22のそれぞれに外接する外接円の内径よりも小さい寸法に設定され、規制面122aの最大内径は、上記外接円の内径よりも大きい寸法に設定される(
図1参照)。
【0044】
図1に戻って、転造工具1及びホルダー100の使用方法について説明する。まず、転造工具1に対し、台座10の調整ボルト(図示せず)の締結量(スリット16の間隔)を変更し、ダイス30同士の間隔(各ダイス30と台座10の中心軸との間の距離)を調整する。
【0045】
次いで、転造工具1を保持部材110に保持させた後、保持部材110のおねじ112bに規制部材120のめねじ121aを螺合させ、その螺合量を調整することで、軸支部材20の頭部22の外縁(外周面と軸方向端面との稜線部)に、規制部材120の規制面122aを当接させる。
【0046】
これにより、転造工具1がホルダー100に保持され、被加工物へのねじ山の転造が可能な状態となる。被加工物へのねじ山の転造は、まず、潤滑油を座面12又はダイス30へ供給しつつ、被加工物(丸棒状の素材)を転造工具1(台座10)の受入孔11へ向けて挿入する。これにより、ダイス30の正方向への回転(正回転)に伴い、被加工物の外周面にねじ山が盛り上げられる。次いで、被加工物を挿入方向と反対方向へ移動させる。これにより、ダイス30を逆方向へ回転(逆回転)させつつ被加工物が受入孔11及びダイス30から抜き取られ、転造が完了される。
【0047】
この場合、転造時の圧力により軸支部材20が台座10の径方向外方側へ撓むと、被加工物のねじ山にテーパーが形成され、外径および有効径が規格値から外れる。これに対し、ホルダー100によれば、規制部材120(張出部122)の規制面122aが、台座10の径方向外方側から軸支部材20の頭部22に当接されるので、転造時の圧力によって軸支部材20が径方向外方側へ撓むことを抑制できる。その結果、ダイス30同士の間隔が広がることを抑制して、被加工物のねじ山を精度良く形成できる。
【0048】
また、ホルダー100によれば、保持部材110(おねじ112b)に対する規制部材120(めねじ121a)の螺合量を変更することで、軸支部材20の頭部22と規制部材120の張出部122(規制面122a)との台座10の軸方向における相対位置を調整できる。よって、ホルダー100の汎用性を確保できる。即ち、全長が異なる軸支部材20を使用する場合であっても、同じ規制部材120を使用できる。
【0049】
特に、本実施形態では、規制面122aがテーパー面とされているので、軸支部材20の頭部22と張出部122の規制面122aとの台座10の径方向における相対位置も調整できる。
【0050】
よって、上述したように、台座10の調整ボルトの締結量を変更し、ダイス30同士の間隔(各ダイス30と台座10の中心軸との間の距離)を調整した場合でも、保持部材110(おねじ112b)に対する規制部材120(めねじ121a)の螺合量を変更することで、軸支部材20の頭部22に張出部122の規制面122aを当接させることができる。
【0051】
更に、軸支部材20の頭部22に張出部122の規制面122aを当接させた後に、規制部材120を保持部材110に対して更に螺合する(ねじ込む)ことで、軸支部材20を台座10の径方向内方側へ撓ませて、ダイス30同士の間隔を調整(狭く)することもできる。
【0052】
よって、ダイス30同士の間隔を調整する際に、ホルダー100(保持部材110)から転造工具1を取り外し、上述した調整ボルトによる調整を行うという煩雑な作業を行う必要がなく、保持部材110に対して規制部材120を回転させるだけで良く、自動旋盤やタレット旋盤に取り付けた状態のままで行うことができる。その結果、調整作業の作業性を向上できる。
【0053】
ここで、転造時には、台座10の座面12にダイス30の軸方向端面が押し付けられる。そのため、ダイス30が回転(正回転)する際の台座10とダイス30との間の摩擦抵抗が大きくなり、台座10やダイス30が摩耗し易い。また、転造時に上述した摩擦抵抗によりダイス30の回転が阻害されると、ダイス30に欠けが生じ易くなると共に、被加工物のねじ山に転造不良が生じ易くなる。
【0054】
これに対し、転造工具1によれば、台座10の座面12に溝12aが凹設されるので、台座10(座面12)とダイス30(軸方向端面)との間の接触面積を減らすことができる。また、溝12aに保持された潤滑油を転造時に台座10(座面12)とダイス30(軸方向端面)との間に供給できる。これにより、ダイス30が回転する際の台座10とダイス30との間の摩擦抵抗を抑制できる。その結果、ダイス30の摩耗や欠け、ねじ山の転造不良の発生を抑制できる。
【0055】
特に、本実施形態によれば、溝12aが軸支部材20の中心軸(即ち、ダイス30の回転軸)を中心とした円環状に形成されるので、転造時にダイス30が回転(正回転)される際に、溝12aに保持されている潤滑油を周方向の全周にわたって供給し易くできる。その結果、ダイス30が回転する際の台座10(座面12)とダイス30(軸方向端面)との間の摩擦抵抗を抑制できる。
【0056】
なお、本実施形態では、台座10(座面12)に溝12aが凹設される。ここで、ダイス30はねじ山32の摩耗等に伴って交換することが想定される部品(交換頻度が高い部品)である。そのため、交換頻度の低い台座10に溝12aを凹設する構成とすることで、ダイス30に溝12aを凹設する構成と比較して、製品コストを低減できる。
【0057】
次いで、
図6(a)を参照して、第2実施形態における転造工具201について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図6(a)は、第2実施形態における転造工具201の部分拡大正面図である。なお、
図6(a)の矢印Aは、ダイス30の正回転の方向(受入孔11へ向けて被加工物が挿入される際に、その被加工物の外周面にねじ山を盛り上げつつダイス30が回転する方向)を示す。矢印Aは、以下の各図においても同様であるので、その説明は省略する。
【0059】
図6(a)に示すように、第2実施形態における転造工具201の座面12には、断面半円状の凹溝である溝212aが凹設される。溝212aは、取付孔13の中心軸(ダイス30の回転軸)を中心として渦巻き状に延びる。なお、溝212aの溝幅および溝深さは、溝212aの延設方向において略一定(略同一の寸法)に設定される。
【0060】
溝212a(渦巻き)の巻き方向は、座面12の径方向内方側(座面12の中心軸側)へ向かう際の巻き方向がダイス30の正回転の方向(矢印A方向)に設定される。即ち、溝212aは、ダイス30の正回転の方向(矢印A方向)に沿って溝212aを辿った場合に、溝212aが次第に座面12の径方向内方側へ向かう巻き方向の渦巻きとして形成される。
【0061】
ここで、潤滑油は、座面12とダイス30(軸方向端面)との間の全面に分布されることが好ましいが、ダイス30の径方向外方側と比較して、ダイス30の径方向内方側へは潤滑油が供給され難い。
【0062】
即ち、被加工物が転造工具1から引き抜かれる方向へ移動され、座面12とダイス30との間に隙間が形成された際に、その隙間(座面12とダイス30との間)に潤滑油が流入される。この場合、軸支部材20の軸部21とダイス30の貫通孔31との間の隙間は小さく、また、その隙間は軸支部材20の頭部22により覆われている。そのため、座面12とダイス30との間には、ダイス30の径方向外方から潤滑油が流入されることとなり、ダイス30の径方向内方側へは潤滑油が供給され難い。
【0063】
これに対し、転造工具201によれば、溝212aが、座面12の径方向内方側(座面12の中心軸側)へ向かう際の巻き方向をダイス30の正回転の方向とする渦巻き状に形成されるので、転造時のダイス30の回転(正回転)に伴って、溝212aに保持されている潤滑油を流動させ、ダイス30の径方向内方側へ供給し易くできる。その結果、座面12とダイス30(軸方向端面)との間の全面に潤滑油を分布させ易くでき、ダイス30が回転する際の台座10(座面12)とダイス30(軸方向端面)との間の摩擦抵抗を抑制できる。
【0064】
座面12の径方向外方側に位置する溝212aの端部E1は、ダイス30の軸方向端面の外縁よりも径方向外方側に位置される。これにより、ダイス30の軸方向端面の外縁よりも径方向外方側となる領域に供給された潤滑油を、溝212aの端部E1及びその近傍の溝212aから受け入れることができる。よって、ダイス30の回転に伴って潤滑油をダイス30の径方向内方側へ更に供給しやすくできる。
【0065】
座面12の径方向内方側に位置する溝212aの端部E2は、取付孔13の内周面に接続される。即ち、取付孔13の内周面の一部が溝212a(端部E2)により切り欠かれ、取付孔13の内部空間と溝212aの内部空間とが連通される。これにより、溝212aに保持された潤滑油を端部E2から軸支部材20の軸部21に供給できる。よって、軸支部材20の軸部21及びダイス30の貫通孔31の摩耗を抑制できる。
【0066】
次いで、
図6(b)から
図6(d)を参照して、第3実施形態から第5実施形態における転造工具301~501について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0067】
図6(b)、
図6(c)及び
図6(d)は、第3実施形態における転造工具301、第4実施形態における転造工具401及び第5実施形態における転造工具501の部分拡大正面図である。
【0068】
図6(b)から
図6(d)に示すように、第3実施形態から第5実施形態における転造工具301~501の座面12には、断面半円状の凹溝である溝312a~512aが凹設される。これら溝312a~512aは、座面12の径方向に延びる形態の複数条の凹溝が周方向等間隔に配置される。なお、溝312a~512aの溝幅および溝深さは、溝312a~512aの延設方向において略一定(略同一の寸法)に設定される。
【0069】
溝312aは、
図6(b)に示すように、座面12の中心軸(ダイス30の回転軸)から径方向外方側へ向けて放射直線状に延び、溝412a,512aは、
図6(c)及び
図6(d)に示すように、座面12の中心軸(ダイス30の回転軸)から径方向外方側へ向けて湾曲しつつ放射状に延びる。
【0070】
なお、溝412aは、ダイス30の正回転の方向(矢印A方向)に凸となる円弧状に湾曲する曲線として形成され、溝512aは、ダイス30の逆回転の方向(矢印A方向と反対方向)に凸となる円弧状に湾曲する曲線として形成される。
【0071】
座面12の径方向外方側に位置する溝312a~512aの端部E1は、ダイス30の軸方向端面の外縁よりも径方向外方側に位置され、座面12の径方向内方側に位置する溝312a~512aの端部E2は、取付孔13の内周面に接続される。これにより、転造工具301~501によれば、上述した第2実施形態の場合と同様に、端部E1側から潤滑油を受け入れて、ダイス30の径方向内方側へ供給しやすくできると共に、端部E2側から潤滑油を供給して、軸支部材20の軸部21及びダイス30の貫通孔31の摩耗を抑制できる。
【0072】
また、転造工具401によれば、
図6(c)に示すように、溝412aが、ダイス30の正回転の方向(矢印A方向)に凸となる円弧状に湾曲する曲線として形成されるので、転造時のダイス30の回転(矢印A方向の回転)に伴って、溝412aに保持されている潤滑油を流動させ、ダイス30の径方向内方側へ供給し易くできる。その結果、座面12とダイス30(軸方向端面)との間の全面に潤滑油を分布させ易くでき、ダイス30が回転する際の台座10(座面12)とダイス30(軸方向端面)との間の摩擦抵抗を抑制できる。
【0073】
一方、転造工具501によれば、
図6(d)に示すように、溝512aが、ダイス30の逆回転の方向(矢印A方向と反対方向)に凸となる円弧状に湾曲する曲線として形成されるので、潤滑油を、被加工物を転造工具501から引き抜く方向へ移動させる際のダイス30の回転(矢印Aと反対方向への回転)に伴って、溝512aに保持されている流動させ、ダイス30の径方向内方側へ供給し易くできる。その結果、座面12とダイス30(軸方向端面)との間の全面に潤滑油を分布させ易くでき、ダイス30が回転する際の台座10(座面12)とダイス30(軸方向端面)との間の摩擦抵抗を抑制できる。
【0074】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0075】
上記各実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、ダイス30の配設数や溝12a~512aの条数、或いは、寸法αの大きさは任意であり、適宜設定できる。
【0076】
上記各実施形態または各変形例の一部または全部を他の実施形態または各変形例の一部または全部と組み合わせても良く、入れ替えても良い。例えば、第4実施形態における溝412aと第5実施形態における溝512aとを周方向に交互に配置しても良い。この場合には、ダイス30の正回転時と逆回転時のそれぞれにおいて、溝に保持されている潤滑油を流動させ、ダイス30の径方向内方側へ供給し易くできる。
【0077】
上記各実施形態では、溝12a~512aの断面形状を断面半円状とする場合を説明したが、断面形状は任意である。例えば、断面矩形状であっても良い。上記第3から第5実施形態においては、溝312a~512aの断面形状を、座面12の周方向に対して溝深さが変化する態様としても良い。このような態様の好ましい一例を第1の変形例として
図7(a)を参照して説明する。
【0078】
図7(a)は、第1の変形例における転造工具601の部分拡大断面図であり、
図6(b)のVIIa-VIIa線における断面に対応する。第1の変形例における転造工具601の溝612aは、
図7(a)に示すように、座面12の周方向一側(矢印A方向側)の溝深さが周方向他側(矢印A方向と反対方向側)の溝深さよりも深くされる。
【0079】
転造工具601によれば、転造時のダイス30の回転方向(矢印A方向側)側における溝深さを大きくして、潤滑油の膜厚を厚くできるので、例えば、溝深さが座面12の周方向に略一定とされる場合と比較して、転造時にダイス30(軸方向端面)から座面12が受ける圧力に対して潤滑油(油膜)を効果的に作用させることができる。
【0080】
上記各実施形態では、溝12a~512aの溝幅および溝深さが溝12a~512aの延設方向において略一定(略同一の寸法)に設定される場合を説明したが、溝12a~512aの溝幅および(又は)溝深さを溝12a~512aの延設方向において変化させても良い。例えば、溝12a~512aの延設方向における全域(端部E1から端部E2の範囲)において、溝幅および(又は)溝深さを溝12a~512aの延設方向に沿って連続的に変化させても良く、段階的(階段状)に変化させても良い。或いは、延設方向の一部の領域のみを他の領域と異ならせても良い。
【0081】
上記第3から第5実施形態においては、座面12の径方向内方側における溝312a~512aの溝幅および(又は)溝深さを、座面12の径方向外方側における溝312a~512aの溝幅および(又は)溝深さよりも大きくすることが好ましい。潤滑油が供給され難い座面12の径方向内方側に対し、溝幅を大きくすることにより座面12及びダイス30の間の接触面積を減らすことができ、溝深さを大きくすることにより溝312a~512aに保持される潤滑油の量を多くできる。その結果、ダイス30が回転する際の座面12とダイス30(軸方向端面)との間の摩擦抵抗を抑制できるからである。
【0082】
上記各実施形態では、座面12とダイス30(軸方向端面)との接触面積が座面12の周方向において略同一とされる場合を説明したが、かかる接触面積を座面12の周方向の一部(以下「所定領域」と称す)において小さくしても良い。このような態様の好ましい一例を第2の変形例として
図7(b)を参照して説明する。
【0083】
図7(b)は、第2の変形例における座面12の正面模式図である。第2の変形例では、所定領域が、
図7(b)に示すように、受入孔11に対して取付孔13と反対側に位置する角度θの領域として定義される。即ち、所定領域は、転造時の圧力によって軸支部材20に台座10の径方向外方側への撓みが生じた場合に、ダイス30の軸方向端面が座面12に押し付けられる側の領域である。
【0084】
この第2の変形例によれば、転造時の圧力によって軸支部材20に撓みが生じた場合でも、ダイス30(軸方向端面)が押し付けられ側の領域(即ち、所定領域側)において、座面12及びダイス30(軸方向端面)の間の接触面積を減らすことができる。その結果、ダイス30が回転する際の座面12とダイス30との間の摩擦抵抗を効果的に抑制できる。特に、第2の変形例は、ホルダー100が規制部材120を備えず、軸支部材20の撓みを抑制できない構造において有効となる。
【0085】
なお、角度θは、取付孔13の中心軸を中心とする角度であり、所定領域は、座面12の正面視において台座10(受入孔11)の中心軸と取付孔13の中心軸とを結ぶ仮想線により2等分される。角度θは、60度以上かつ180度以下が好ましく、120度以上かつ180度以下が更に好ましい。接触面積を減らす効果を大きくしつつ、溝を凹設する工数の低減および座面12の強度確保を得るためである。
【0086】
具体的な態様としては、第1に、上記各実施形態において、所定領域のみに溝12a~512aを凹設し、所定領域以外の領域への溝12a~512aの凹設を省略する態様、第2に、第3から第5実施形態において、所定領域における溝312a~512aの周方向間隔を所定領域以外の領域における溝312a~512aの周方向間隔よりも小さくする態様、第3に、第3から第5実施形態において、所定領域における溝312a~512aの溝幅を所定領域以外の領域における溝312a~512aの溝幅よりも大きくする態様が例示される。
【0087】
上記各実施形態では、溝12a~512aを座面12に凹設する場合を説明したが、これに代えて、或いは、これに加えて、ダイス30の軸方向端面の片面または両面に溝12a~512aを凹設しても良い。両面に凹設する場合には、互いが異なる溝12a~512aであっても良い。
【0088】
上記第2実施形態において、溝212a(渦巻き)の巻き方向を上記した巻き方向と逆方向としても良い。座面12の径方向内方側(座面12の中心軸側)へ向かう際の巻き方向を、ダイス30の逆回転の方向(矢印A方向と反対方向)としても良い。
【0089】
上記第3実施形態では、溝312aが直線状に、上記第4及び第5実施形態では、溝412a,512aが円弧状に、それぞれ形成される場合を説明したが、他の形状を採用しても良い。他の形状としては、直線を組み合わせたジグザグ形状(鋸刃形状)、曲線を組み合わせたジグザグ形状(Sin波形状)、これらを組合せた形状が例示される。
【0090】
上記各実施形態では、軸支部材20を取付孔13に固定する構造として、引込ボルト40により引き込む構造を説明したが、他の固定構造を採用しても良い。他の固定構造としては、軸支部材20(軸部21)を取付孔13に圧入する構造や、軸支部材20(軸部21)の外周面に螺刻したおねじを取付孔13の内周面に螺刻しためねじ締結する構造が例示される。
【0091】
上記各実施形態では、説明を省略したが、座面12やダイス30(軸方向端面)にラッピングや窒化コーティングを施しても良い。
【0092】
上記各実施形態では、ホルダー100の規制部材120の規制面122aがテーパー面として形成される場合を説明したが、かかる規制面122aを非テーパー面(規制部材120の中心軸に平行な周面)としても良い。
【0093】
上記各実施形態では、軸支部材20の頭部22の外周面が軸支部材20の中心軸に平行に形成される場合を説明したが、かかる頭部22の外周面を、軸部21から離れるほど小径となるテーパー面としても良い。
【0094】
上記各実施形態では、ダイス30のねじ山32がリードを有さず、軸支部材20がリード角だけ傾斜した姿勢で台座10に配設される場合を説明したが、ダイス30のねじ山32がリードを有し、軸支部材20が垂直な姿勢で台座10に配設される構造であっても良い。
【0095】
上記各実施形態では、保持部材110(胴部112)のおねじ112bと規制部材120(外嵌部121)のめねじ121aとを螺合させる構造を説明したが、おねじ112b及びめねじ121aを省略しても良い。即ち、外嵌部121の内径を胴部112の外径と同等または若干大きな寸法に設定し、保持部材110に対して規制部材120を軸方向に相対移動可能とし、外嵌部121の締結孔121cに締結した六角穴付止めねじにより保持部材110に対して規制部材120を固定するようにしても良い。
【0096】
上記各実施形態では、ホルダー100が規制部材120を備える場合を説明したが、規制部材120を省略してホルダー100を構成しても良い。
【符号の説明】
【0097】
1 転造工具
10 台座
11 受入孔
20 軸支部材
22 頭部
30 ダイス
100 ホルダー(転造工具ホルダー)
110 保持部材
112b おねじ
120 規制部材
121 外嵌部
121a めねじ
122 張出部
122a 規制面(張出部の内周面)