(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085706
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】情報処理装置、プログラム、及び情報処理装置の動作方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20220601BHJP
G06Q 30/00 20120101ALI20220601BHJP
【FI】
G06T7/00 660A
G06T7/00 350C
G06Q30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197515
(22)【出願日】2020-11-27
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FeliCa
2.ZIGBEE
3.BLUETOOTH
4.AirDrop
(71)【出願人】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139491
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 隆慶
(72)【発明者】
【氏名】高杉 順子
(72)【発明者】
【氏名】中村 理恵
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 正治
(72)【発明者】
【氏名】庄野 逸
【テーマコード(参考)】
5L049
5L096
【Fターム(参考)】
5L049BB72
5L096AA02
5L096AA06
5L096CA02
5L096DA01
5L096DA02
5L096GA41
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】熟練評価者による印象評価を高い精度で再現して化粧品の販売を支援する。
【解決手段】情報処理装置は、人物の顔画像と当該顔画像に対する印象評価を教師データとして前記印象評価に寄与する前記顔画像の特徴部分と当該印象評価の対応付けを機械学習したモデルを格納する記憶部と、入力された顔画像の特徴部分と当該特徴部分に対応する印象評価とを、前記モデルを用いて求めて出力する制御部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人物の顔画像と当該顔画像に対する印象評価を教師データとして前記印象評価に寄与する前記顔画像の特徴部分と当該印象評価の対応付けを機械学習したモデルを格納する記憶部と、
入力された顔画像の特徴部分と当該特徴部分に対応する印象評価とを、前記モデルを用いて求めて出力する制御部と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記記憶部は、前記モデルにおいて対応付けられる前記特徴部分と前記印象評価の組み合わせに対し推奨すべき化粧品を示す推奨情報を更に格納し、
前記制御部は、前記モデルを用いて求めた特徴部分と印象評価の組み合わせに対し推奨すべき化粧品を前記推奨情報に基づいて選定し、選定した化粧品を示す情報を更に出力する、
情報処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記教師データでは、年齢が異なる複数の人物の顔画像に同じ印象評価が対応付けられる、
情報処理装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかにおいて、
前記制御部は、前記入力された撮像画像とともに前記モデルを用いて求めた特徴部分を示す画像を生成して出力する、
情報処理装置。
【請求項5】
コンピュータにより実行されることで、当該コンピュータに請求項1~4のいずれかに記載の情報処理装置として動作させる、
プログラム。
【請求項6】
情報処理装置の動作方法であって、
人物の顔画像と当該顔画像に対する印象評価を教師データとして前記印象評価に寄与する前記顔画像の特徴部分と当該印象評価の対応付けを機械学習してモデルを作成する第1の工程と、
入力された顔画像の特徴部分と当該特徴部分に対応する印象評価とを、前記モデルを用いて求めて出力する第2の工程と、
を有する情報処理装置の動作方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記モデルにおいて対応付けられる前記特徴部分と前記印象評価の組み合わせに対し推奨すべき化粧品を示す推奨情報を参照し、前記モデルを用いて求めた特徴部分と印象評価の組み合わせに対し推奨すべき化粧品を選定する第3の工程と、
選定した化粧品を示す情報を更に出力する第4の工程と、
を更に有する情報処理装置の動作方法。
【請求項8】
請求項6又は7において、
前記教師データでは、年齢が異なる複数の人物の顔画像に同じ印象評価が対応付けられる、
情報処理装置の動作方法。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかにおいて、
前記第2の工程では、前記入力された撮像画像とともに前記モデルを用いて求めた特徴部分を示す画像を生成して出力する、
情報処理装置の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、プログラム、及び情報処理装置の動作方法及びに関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品の販売においては、多様化する顧客のニーズに応じた美容手段のカスタマイズが求められる。例えば、肌の状態改善を希望する顧客に対しては、販売員が、調査票により顧客の年齢、肌質、肌悩み等を聴取したり、肌の物理的特徴を機器により測定したりしてカウンセリングを行い、顧客の肌タイプに適した商品を推奨するといった手順が行われる。かかる手順を支援する技術として、例えば、特許文献1には、顧客の顔を撮像した顔画像から顧客の肌年齢を推定する情報処理装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
顧客の満足度をより高めるためには、顧客の容貌が全体として他者に与える印象を客観的に評価し、印象を改善するための美容手段を提供することが望ましい。その点、肌タイプは、肌の物理的特徴の測定、肌の物理的特徴を画像認識して肌年齢を推定するといった従来の手段により定量的に測定されうるものの、印象を左右する要素の一つにすぎない。印象を左右する要素には、若々しさ、活き活き感といった、定量的な測定が困難で、感覚的に把握されるものが多く含まれる。そして、こうした非定量的で感覚的な要素の客観的な評価は、熟練した美容技術者の属人的なスキルに依存する。よって、印象評価の客観化においては、熟練評価者による印象評価の再現性を高い精度で確保することが求められる。
【0005】
上記に鑑み、以下では、熟練評価者による印象評価を高い精度で再現して化粧品の販売を支援することが可能な、情報処理装置等を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における情報処理装置は、人物の顔画像と当該顔画像に対する印象評価を教師データとして前記印象評価に寄与する前記顔画像の特徴部分と当該印象評価の対応付けを機械学習したモデルを格納する記憶部と、入力された顔画像の特徴部分と当該特徴部分に対応する印象評価とを、前記モデルを用いて求めて出力する制御部と、を有する。
【0007】
また、本開示における情報処理装置の動作方法は、人物の顔画像と当該顔画像に対する印象評価を教師データとして前記印象評価に寄与する前記顔画像の特徴部分と当該印象評価の対応付けを機械学習してモデルを作成する第1の工程と、入力された顔画像の特徴部分と当該特徴部分に対応する印象評価とを、前記モデルを用いて求めて出力する第2の工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示における情報処理装置等によれば、熟練評価者による印象評価を高い精度で再現して化粧品の販売を支援することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】情報処理装置による動作例を示すフローチャート図である。
【
図5】情報処理装置による動作例を示すフローチャート図である。
【
図6】情報処理装置による動作例を示すフローチャート図である。
【
図7A】情報処理システムが参照する情報の例を示す図である。
【
図7B】情報処理システムが参照する情報の例を示す図である。
【
図9】推奨化粧品の情報について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、一実施形態における情報処理装置の構成例を示す図である。情報処理システム1は、例えば化粧品の販売店舗において、来店した顧客に対する販売員による美容手段のカウンセリングを支援する。情報処理システム1は、端末装置11及び情報処理装置12を有する。端末装置11及び情報処理装置12は、ネットワーク10を介し、又はネットワーク10を介さずに有線又は近距離無線通信等によりピアツーピアで互いに接続され、情報を送受信する。ネットワーク10は、インターネット、少なくとも1つのWAN(wide area network)、少なくとも1つのMAN(metropolitan area network)、又はこれらの任意の組合せを含む。ネットワーク10は、少なくとも1つの無線ネットワーク、少なくとも1つの光ネットワーク、又はこれらの任意の組合せを含んでもよい。無線ネットワークは、例えば、アドホックネットワーク、セルラーネットワーク、無線LAN(local area network)、衛星通信ネットワーク、又は地上マイクロ波ネットワークである。端末装置11は、化粧品の販売員が使用する、例えば、タブレット端末、スマートフォンといった、撮像機能を備えた情報処理端末装置である。情報処理装置12は、例えば、クラウドコンピューティングシステム又はその他のコンピューティングシステムに属するサーバ等のコンピュータである。
【0012】
情報処理装置12は、人物の顔を撮像して得られる顔画像と、顔画像に対する熟練評価者による印象評価とを教師データとして、印象評価に寄与する顔画像の特徴部分と印象評価の対応付けを予め機械学習したモデル(以下、印象評価モデルという)を格納する。印象評価は、例えば、親しみやすさ、若々しさ、かわいらしさ、明るさ、社交的な、活き活き感といった要素の充足度についての評価である。かかる教師データの機械学習により得られる印象評価モデルは、熟練評価者による印象評価を反映する。販売店舗においては、店舗に配置される販売部員が、来店した顧客の顔を端末装置11により撮像する。情報処理装置12は、端末装置11から顧客の顔画像の入力を受け、入力された顔画像の特徴部分と、その特徴部分に対応する印象評価とを、印象評価モデルを用いて求め、求めた印象評価を端末装置11へ出力する。販売員は、端末装置11により印象評価と特徴部分とを表示等により出力し、顧客に提示する。情報処理装置12は、顧客の顔画像に対する印象評価において、印象評価モデルを用いることで、熟練評価者による印象評価を高い精度で再現することが可能となる。また、印象評価に寄与する特徴部分を提示することで、顧客において印象評価に対する納得感を向上させることが可能となる。
【0013】
また、情報処理装置12は、印象評価モデルにおいて対応付けられる特徴部分と前記印象評価の組み合わせに対し推奨すべき化粧品を示す推奨情報を更に格納する。推奨情報は、例えば、シワ改善スキンケア用の化粧品、目元を整えるアイブロウ用の化粧品、たるみ改善スキンケア用の化粧品、印象改善に必要な効果と商品群情報等を含む。そして、情報処理装置12は、印象評価モデルを用いて求めた特徴部分と印象評価の組み合わせに対し推奨すべき化粧品を推奨情報に基づいて選定し、選定した化粧品を示す情報を更に出力する。販売員は、情報処理装置12が出力する情報を端末装置11により受けて顧客に提示する。これにより、顧客に対し、熟練評価者の印象評価を反映した化粧品の推奨が可能になる。
【0014】
図2は、情報処理装置12の構成例を示す。情報処理装置12は、例えば、各種機能を実装するサーバとして機能するサーバコンピュータである。情報処理装置12は、互いに情報通信可能に接続されて連携動作する一以上のサーバコンピュータであってもよい。情報処理装置12は、入出力部20、通信部21、記憶部22、及び制御部23を有する。
【0015】
入出力部20は、ユーザの入力を検出し、入力情報を制御部23に送る入力インターフェースを有する。入力インターフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、パネルディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、各種ポインティングデバイス等を含む任意の入力インターフェースである。また、入出力部20は、制御部23が生成したり記憶部22から読み出したりする情報を、ユーザに対して出力する出力インターフェースを有する。かかる出力インターフェースは、例えば、情報を画像・映像として出力するディスプレイ、情報を音声として出力するスピーカ、または、外部の出力機器との接続インターフェースを含む、任意の出力インターフェースである。
【0016】
通信部21は、ネットワーク10に接続するための、1つ以上の有線または無線LAN規格に対応する通信モジュールを有する。または、通信部21は、端末装置11とピアツーピアで接続するための、1つ以上の有線または無線規格に対応する通信モジュールを有してもよい。かかる通信モジュールは、Bluetooth、AirDrop、IrDA、ZigBee、Felica、RFID等の近距離通信に対応する通信モジュールを含んでもよい。
【0017】
記憶部22は、1つ以上のメモリを含む。記憶部22に含まれる各メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、または光メモリ等であるが、これらに限られない。各メモリは、例えば主記憶装置、補助記憶装置、またはキャッシュメモリとして機能する。記憶部22は、情報処理装置12の動作に用いられる任意の情報、制御・処理プログラムを記憶する。記憶部22は、ネットワーク10その他のネットワークを介してダウンロードされる各種機能を提供するアプリケーションプログラム等を記憶してもよい。
【0018】
制御部23は、1つ以上のプロセッサを有する。各プロセッサは、汎用のプロセッサ、または特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限られない。制御部23は、記憶部22に格納される制御・処理プログラムに従って情報処理装置12の動作を統括的に制御する。
【0019】
情報処理装置12では、記憶部22は、制御部23が後述する手順により作成する印象評価モデル24を格納する。また、記憶部22は、印象評価モデル24において対応付けられる特徴部分と印象評価の組み合わせに対し推奨すべき化粧品の情報を含む推奨情報25、印象評価に対する判断基準についての基準情報26等を格納する。
【0020】
図3は、端末装置11の構成例を示す。端末装置11は、例えばタブレット端末、スマートフォンといった、情報処理端末装置である。端末装置11は、入出力部30、通信部31、記憶部32、及び制御部33を有する。
【0021】
入出力部30は、ユーザの入力を検出し、入力情報を制御部33に送る入力インターフェースを有する。かかる入力インターフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、パネルディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、各種ポインティングデバイス、音声入力を受け付けるマイクロフォン、撮像画像または画像コードを取り込むカメラ等を含む任意の入力インターフェースである。また、入出力部30は、制御部33が生成したり記憶部32から読み出したりする情報を、ユーザに対して出力する出力インターフェースを有する。かかる出力インターフェースは、例えば、情報を画像・映像として出力するディスプレイ、情報を音声として出力するスピーカ、または、外部の出力機器との接続インターフェースを含む、任意の出力インターフェースである。
【0022】
通信部31は、有線または無線LAN規格に対応する通信モジュール、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応するモジュール、Bluetooth、AirDrop、IrDA、ZigBee、Felica、RFID等の近距離通信に対応する通信モジュール等を含む。端末装置11は、通信部31により、ネットワーク10経由で又はピアツーピアで、情報処理装置12と情報通信を行う。
【0023】
記憶部32は、一つ以上のメモリを含む。記憶部32に含まれる各メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、または光メモリ等であるが、これらに限られない。各メモリは、例えば主記憶装置、補助記憶装置、またはキャッシュメモリとして機能する。記憶部32は、端末装置11の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部32は、制御・処理プログラム、組込みソフトウェア、ネットワーク10その他のネットワークを介してダウンロードされる各種機能を提供するアプリケーションプログラム等を記憶する。
【0024】
制御部33は、一つ以上のプロセッサを有する。各プロセッサは、汎用のプロセッサ、または特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限られない。制御部33は、記憶部32に格納される制御・処理プログラムに従って動作することで、端末装置11の動作を統括的に制御する。
【0025】
端末装置11では、制御部33が、入出力部30への販売員による操作入力に応答して、入出力部30のカメラに顧客の顔を撮像させ、撮像により得られる顔画像を、通信部31を介して情報処理装置12へ送る。また、制御部33は、情報処理装置12から送られる情報を、通信部31を介して受けて入出力部30のディスプレイにより表示する。
【0026】
図4は、情報処理装置12が機械学習により印象評価モデル24を作成するときの、情報処理装置12の動作手順例を示すフローチャート図である。このフローチャート図は、制御部23による情報処理手順に対応する。
【0027】
ステップS400において、制御部23は、教師データを読み込んで記憶部22に格納する。教師データは、人物の顔をデジタルカメラで撮像して得られた顔画像と、顔画像に対し熟練評価者が付与した印象評価とを有する。以下、教師データに含まれる顔画像を、学習用顔画像という。学習用顔画像は、例えば、20代~70代に略均一に分布する数百人の日本人女性の顔を正面方向から撮像して得られる。各人物は、ヘアネットを用いて髪型を統一し、化粧をしていない状態で、真顔で撮像される。印象評価は、各学習用顔画像について所与の要素毎に付与される離散値(以下、評価値という)である。評価値は、学習用顔画像の人物の表情、性格、評価者の嗜好による影響を排除して、示された顔画像に対する熟練評価者の目視評価により付与される。要素は、例えば、親しみやすさ、若々しさ、かわいらしさ、明るさ、社交的な、活き活き感等である。各要素が充足される度合いが高いほど良好な評価がなされる。そして、評価が良好なほど低い値の評価値が、例えば1~7の7段階の離散値として付与される。離散値のダイナミックレンジは、評価者が分類可能な幅に合わせて任意に設定してよい。ここでは、分類モデルによる評価値の学習を例としているが、回帰モデルを用いてもよい。
【0028】
ステップS402において、制御部23は、各学習用顔画像に対し、機械学習の前段階としての画像処理を行う。画像処理は、例えば、学習用顔画像の正規化、学習用顔画像からの顔部位の抽出、ランダムクロップ、水平・垂直方向へのランダムフリップ、ランダム回転、ランダムな彩度調整、垂直方向のドロップアウト等を含む。顔部位の抽出では、学習用顔画像内の髪、首等の部位の影響を排除するために任意のオープンソースライブラリを使用して顔部位を抽出したり、バウンディングボックスの頂点をオペレータが指定して顔部位を抽出したりすることが可能である。また、ランダムクロップでは、一例として、512×512ピクセルの学習用顔画像を256×256ピクセルにリサイズした後、224×224ピクセルでランダムクロップが行われる。
【0029】
ステップS404において、制御部23は、教師データを用いた機械学習により印象評価モデル24を作成する。制御部23は、例えば、畳み込みニューラルネットワークを用いて機械学習を行う。制御部23は、例えば、畳み込み層とプーリング層で学習用顔画像における特徴部分を抽出し、抽出した特徴部分を多層ニューラルネットワークで印象評価と照合することで、学習用顔画像に付与された印象評価に寄与する特徴部分と印象評価とを対応付けて学習し、印象評価モデル24を作成する。
【0030】
図5は、情報処理装置12が、印象評価モデル24を用いて顧客の顔画像の印象評価を行うときの、情報処理装置12の動作手順例を示すフローチャート図である。このフローチャート図は、制御部23による情報処理手順に対応する。
【0031】
ステップS500において、制御部23は、顔画像、顧客情報の入力を受け付ける。例えば、店舗において販売員が来店した顧客の顔を端末装置11で撮像し、端末装置11に顧客の年齢、性別、その他の顧客情報を入力する。端末装置11は、撮像画像および顧客情報を情報処理装置12へ送る。情報処理装置12では、制御部23が、通信部21を介して撮像画像および顧客情報を受け付ける。顔画像と顧客情報は記憶部22に格納される。以下、制御部23が入力を受け付けて印象評価を求める顔画像を、評価用顔画像という。
【0032】
ステップS502において、制御部23は、評価用顔画像に対し、印象評価を求める前段階としての画像処理を行う。画像処理は、評価用顔画像の正規化、評価用顔画像からの顔部位の抽出、ランダムクロップ、水平・垂直方向へのランダムフリップ、ランダム回転、ランダムな彩度調整、垂直方向のドロップアウト等を含む。
【0033】
ステップS504において、制御部23は、印象評価モデル24を用いて、評価用顔画像の印象評価を求める。制御部23は、印象評価モデル24の最終層出力における最大値に対応する評価値のクラスを、印象評価として求める。評価値は、1~7の離散値で付される。
【0034】
ステップS506において、制御部23は、印象評価モデル24を用いて、評価用顔画像の印象評価に寄与する特徴部分を求める。印象評価に寄与する特徴部分は、例えば、ヒートマップとして表される。制御部23は、特徴部分を示すヒートマップを、畳み込みニューラルネットワークを介して作成する。制御部23は、最終出力層における出力の最大値を、シグモイド関数、ソフトマックス関数といった活性化関数を用いて、0~1の数値による確率的表現に変換する。制御部23は、畳み込み最終層の512チャンネルからなる特徴マップにおいて、最終出力層の最大出力値に対する勾配、つまり偏微分値を各特徴マップのピクセル単位で算出する。そして、制御部23は、ピクセル単位の勾配の平均値を算出し、その平均値を特徴マップの各ピクセルに乗算した512チャンネル分の活性化マップを作成する。ここで示す特徴マップのチャンネル数は一例であって、512チャンネル以外のチャンネル数であってもよい。そして、制御部23は、作成した活性化マップを全チャンネルワイズに積算し、積算した活性要素を0~1の値にスケーリングして二次元の活性化マップ、つまりヒートマップを生成する。そして、制御部23は、ヒートマップのサイズを、評価用顔画像サイズにリサイズして、評価用顔画像に対応するヒートマップ画像を作成する。また、制御部23は、ヒートマップ画像を評価用顔画像と足し合わせ、0~255の階調値でスケーリングして、評価用顔画像にヒートマップが重畳された表示用画像を生成してもよい。評価用顔画像にヒートマップを重畳することで、表示用顔画像において特徴部分が任意に設定される所定の色の分布で表示される。なお、制御部23は、ヒートマップのサイズをスケーリングする際、任意に設定される閾値により異常値を排除し、ヒートマップのノイズを除去してもよい。
【0035】
ステップS508において、制御部23は、印象評価と特徴部分とに基づいて推奨化粧品を選定する。評価値が小さいほど良好な印象評価に対応するので、比較的低い評価値に寄与した特徴部分は良好な印象に寄与している部分を示し、比較的高い評価値に寄与した特徴部分は、非良好な印象に寄与している部分を示すと考えられる。よって、制御部23は、印象評価と特徴部分とに基づいて非良好な印象に寄与している顔の部分を特定し、その部分の特性に応じ、印象評価を改善するための推奨化粧品を選定する。そして、制御部23は、推奨化粧品情報の情報を、印象評価、特徴部分と共に出力する。
【0036】
ここで、ステップS508の具体例を、
図6~
図9を用いて説明する。
図6は、ステップS508のサブルーチンを示すフローチャート図である。ここでは、印象の要素として活き活き感の度合いを例として、活き活き度に対する印象評価が1~7の7段階の評価値で表される場合の手順が示される。
【0037】
ステップS600において、制御部23は、活き活き度の評価値が基準値3以上かを判断する。評価値が3以上の場合(Yes)には制御部23はステップS602に進む。一方、評価値が3未満の場合(No)には、制御部23はステップS604に進み、活き活き度の評価値が“活き活き度「十分」群”に属すると判定する。なお、基準値は適宜調整が可能であり、3以外であってもよい。
【0038】
ステップS602において、制御部23は、活き活き度の評価値が顧客の年代平均より高いかを判断する。制御部23は、ステップS500で受け付けた顧客情報に含まれる顧客の年齢を、記憶部22に格納した基準情報26に含まれる判断基準と比較する。例えば、基準情報26には、印象評価に対する判断基準として、学習顔画像の被写体となった人物の、年代毎の評価値の平均が格納されており、評価値との比較に用いられる。
【0039】
図7Aは、基準情報26を模式的に示す。ここには、活き活き度における10代~70代の各年代の評価値の平均が示される。基準情報26は、活き活き感のほかにも、印象の要素毎に、評価値の年代平均を含む。なお、基準情報26が含む判断基準は、年代別の平均以外であってもよく、例えば、中央値であってもよい。また、
図7Bの年代方向における評価値の分布図に示すように、同じ評価値であっても複数の年代にまたがる傾向を有する。別言すれば、例えば肌年齢のように人物の年齢と強い相関を有するような特徴と比べ、年齢との相関が低い要素が印象評価に大きく寄与する傾向が認められる。
【0040】
図6に戻り、評価値が年代平均より高い場合(ステップS602のYes)、つまり印象評価が年代平均より良好でない場合には制御部23はステップS606に進み、活き活き度の評価値が“活き活き度「要改善」群”に属すると判定する。評価値が年代平均以下の場合(ステップS602のNo)、つまり印象評価が年代平均並みかそれより良好な場合には制御部23はステップS608に進み、活き活き度の評価値が“活き活き度「やや不足」群”に属すると判定する。
【0041】
ステップS604、S606、又はS608において評価値の帰属を判定すると、制御部23は、ステップS610において、評価値に寄与した特徴部分と、その寄与度を算出する。例えば、制御部23は、評価用画像を任意の数の領域に分割する。例えば、
図8Aには、評価用顔画像80における額領域80A、目元領域80B、頬領域80C、及び口元領域80Dの4つの領域の例が示される。制御部23は、各領域において、その領域の面積(例えばピクセル数)に対するヒートマップの活性要素の総和をその領域の特徴活性度として算出する。ここにおいて、0~1.0に分布する特徴活性度の値が、寄与度として算出される。そして、制御部23は、特徴部分をヒートマップにおける色分けされた領域として、寄与度を色分けされた領域の面積として表示する表示用画像を生成し、表示用画像を出力する。表示用画像は、通信部21により端末装置11へ送られ、端末装置11にて表示される。
【0042】
図8B~8Dは、情報処理装置12の制御部23にて生成されて端末装置11にて表示される表示用画像の例を模式的に示す。
図8B、8C及び8Dは、それぞれ、活き活き度の評価値「2」、「3」及び「6」の場合の例を示す。ここでは、評価値の年代平均が「3」と「6」の間にあるものとし、
図8Bの例が“活き活き度「十分」群”に、
図8Cの例が“活き活き度「やや不足」群”に、
図8Dの例が“活き活き度「要改善」群”に対応する。
図8Bでは、評価用顔画像80において頬領域80Cにおいて広範にわたる特徴部分82が示される。すなわち、頬領域80Cにおける特徴が良好な(評価値「2」の)活き活き度に高い寄与度で寄与していることが示される。また、
図8Cでは、評価用顔画像80において、額領域80Aと口元領域80Dに特徴部分83が示される。すなわち、額領域80Aと口元領域80Dにおける特徴部分83が中程度の(評価値「3」の)活き活き度に高い寄与度で寄与していることが示される。そして、
図8Dでは、評価用顔画像80において、額領域80A、頬領域80C、及び口元領域80Dに特徴部分84が示される。すなわち、額領域80A、頬領域80C、及び口元領域80Dにおける特徴部分84が非良好な(評価値「6」の)活き活き度に高い寄与度で寄与していることが示される。
【0043】
図6に戻り、ステップS612、S614及びS616において、制御部23は、評価と特徴部分、及び特徴部分の寄与度に基づいて、非良好な印象に寄与している顔の領域を特定し、その部分の特性に応じ、印象評価を改善するための推奨化粧品を選定する。活き活き度の評価値が“活き活き度「十分」群”に属する場合(ステップS604)、制御部23は、ステップS612において、特徴部分の寄与度が最も高い領域を“優良領域”と判定する。例えば、
図8Bで示した例では、頬領域80Cが優良領域と判定される。また、活き活き度の評価値が“活き活き度「やや不足」群”に属する場合(ステップS608)、制御部23は、ステップS614において、特徴部分の寄与度が高い領域を“優良領域”と判定するとともに、特徴部分の寄与度が低い領域を“やや不足領域”と判定する。例えば、
図8Cで示した例では、口元領域80Dが“優良領域”と判定され、額領域80B及び80Cが“やや不足領域”と判定される。例えば、制御部23は、特徴部分の特徴活性度に応じて、“優良領域”、“やや不足領域”の別を判定する。例えば、特徴活性度が0~0.3の場合に“やや不足領域”、0.7~1.0の場合に“優良領域”と判定することが可能である。特徴活性度に応じた判定の種類は3以上であってもよく、判定の基準となる数値範囲は任意に定めることができる。そして、活き活き度の評価値が“活き活き度「要改善」群”に属する場合(ステップS606)、制御部23は、ステップS616において、特徴部分の寄与度が最も高い領域を“要改善領域”と判定する。例えば、
図8Dで示した例では、額領域80Aが要改善領域と判定される。
【0044】
ステップS618において、制御部23は、要改善領域とやや不足領域とについて、推奨情報25を参照して推奨化粧品を選定し、選定した推奨化粧品の情報を表示する。
【0045】
図9は、活き活き感を改善するための推奨化粧品の情報を含む推奨情報25の例を模式的に示す。推奨情報25は、印象の要素毎に
図9に示すような情報を有する。制御部23は、推奨情報25を参照して、“やや不足領域”(評価値が3.0以上年代平均未満)又は“要改善領域”(評価値が年代平均以上、7.0以下)についての推奨化粧品を選定する。例えば、額領域80Aが“やや不足領域”と判定された場合には、額領域80Aに対するスキンケアのために、眉間額のシワ改善スキンケア用の化粧品が選定される。また、額領域80Aが“要改善領域”と判定された場合には、額領域80Aに対するメイクアップのために、こめかみへのハイライト用の化粧品が選定される。さらに、目元領域80Bが“やや不足領域”と判定された場合には、目元領域80Bに対するメイクアップのために、目元を強調するアイメイク用の化粧品が選定される。さらに、目元領域80Bが“要改善領域”と判定された場合には、目元領域80Bに対するメイクアップのために、目元を整えるアイブロウ用の化粧品が選定される。さらに、頬領域80Cが“やや不足領域”と判定された場合には、頬領域80Cに対するメイクアップのために、頬部へのチークカラー用の化粧品が選定される。さらに、頬領域80Cが“要改善領域”と判定された場合には、頬領域80Cに対するスキンケアのために、頬部のタルミ改善スキンケア用の化粧品が選定される。さらに、口元領域80Dが“やや不足領域”と判定された場合には、口元領域80Dに対するスキンケアのために、唇まわりのタルミ改善スキンケア用の化粧品が選定される。そして、口元領域80Dが“要改善領域”と判定された場合には、口元領域80Dに対するスキンケアのために、顎まわりのタルミ改善スキンケア用の化粧品が選定される。このようにして選定された化粧品の情報は、通信部21により端末装置11へ送られ、端末装置11にて表示される。
【0046】
端末装置11では、例えば、活き活き感について、十分である、やや不足又は要改善といった判定結果とともに、判定結果に寄与した特徴部分を示す表示用画像が表示され、更に、スキンケア又はメイクアップについて推奨化粧品の情報が表示される。推奨化粧品の情報は、化粧品の種別であってもよいし、具体的な化粧品名であってもよい。
【0047】
図6~
図9では、活き活き感についての印象評価を例として説明したが、他の印象の要素、つまり、親しみやすさ、若々しさ、かわいらしさ、明るさ、社交的なといった印象の要素についても、上記同様の手順が実行される。
【0048】
本実施形態によれば、非定量的な印象の要素についても熟練評価者の客観的な印象評価を高い精度で再現することができる。また、印象評価に寄与した特徴部分を表示により可視化でき、顧客において印象評価に対する納得感を向上させることが可能となる。さらに、熟練評価者の印象評価を再現する情報処理装置12は、未熟練の評価者による印象評価の訓練に用いることができる。
【0049】
上述の説明では、情報処理装置12は、端末装置11を介して顔画像の取得、各種出力情報の表示を行うが、情報処理装置12の動作として示した情報処理手順を適宜情報処理装置12及び端末装置11で分担してもよい。その場合、情報処理装置12と端末装置11とで「情報処理装置」を構成する。例えば、
図4で示した機械学習手順を情報処理装置12が実行して印象評価モデル24を作成し、端末装置11が情報処理装置12の印象評価モデル24を用いながら
図5で示した手順を実行してもよい。あるいは、例えば、情報処理装置12がスタンドアロンで動作して、入出力部20により顔画像の取得、各種出力情報の表示を行ってもよい。また、端末装置11が店舗に設置されていなくても、例えば、顧客が使用するスマートフォンであってもよい。その場合、顧客は自らの顔を撮像し、顔画像を情報処理装置12へ送る。そして、情報処理装置12からの情報をスマートフォンが受け取って顧客に向けて表示する。そうすることで、例えば、顧客が店舗に赴かなくても、推奨化粧品の情報を取得することが可能となる。
【0050】
また、上述の説明では、情報処理装置12は、印象評価モデル24の生成を一回的に実行した後、顧客の印象評価を実行するが、顧客の同意のもと、評価用撮像画像を教師データに取り込み、情報処理装置12又は情報処理装置12と情報通信可能な端末装置により熟練評価者が印象評価を付与することで、教師データを随時更新することが可能である。
【0051】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 情報処理システム
10 ネットワーク
11 端末装置
12 情報処理装置
20、30 入出力部
21、31 通信部
22、32 記憶部
23、33 制御部