(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085719
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】インク組成物、印刷容器の製造方法、及び、印刷容器
(51)【国際特許分類】
C09D 11/30 20140101AFI20220601BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20220601BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
C09D11/30
B41M5/00 112
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197534
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000239080
【氏名又は名称】福岡パッキング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡田 芳明
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸司
(72)【発明者】
【氏名】則岡 隆行
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FB01
2C056FB09
2C056FC02
2C056HA44
2C056HA46
2H186AB12
2H186BA08
2H186DA09
2H186FA13
2H186FB04
2H186FB11
2H186FB24
2H186FB48
2H186FB53
4J039AD09
4J039AE06
4J039BC07
4J039BC12
4J039BC18
4J039BE02
4J039CA04
4J039EA43
4J039EA46
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】リサイクル性と印刷層の密着性の良好な印刷容器を提供する。
【解決手段】透明なポリエチレンテレフタレート(PET)容器に直接印刷するためのインク組成物であって、着色剤、バインダー樹脂、溶剤を含み、バインダー樹脂のインク組成物中における含有量は30重量%以下であり、バインダー樹脂は、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂を重量比で95:5~20:80の範囲で含むインク組成物を提供する。また、当該インク組成物を用いた印刷容器、及び、印刷容器の製造方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なポリエチレンテレフタレート(PET)容器に直接印刷するためのインク組成物であって、
着色剤、バインダー樹脂、溶剤を含み、
前記バインダー樹脂のインク組成物中における含有量は30重量%以下であり、
前記バインダー樹脂は、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂を重量比で95:5~20:80の範囲で含む、
インク組成物。
【請求項2】
前記アクリル樹脂の重量平均分子量は10,000以下であり、酸価は50以上110mgKOH/g未満である、
請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記アクリル樹脂の重量平均分子量は10,000以上であり、酸価は100mgKOH/g以上である、
請求項1に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記アクリル樹脂の重量平均分子量は1,000~20,000であり、酸価は200mgKOH/g以上である、
請求項1に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂の数平均分子量は1,000~40,000である、
請求項1から4のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記バインダー樹脂のインク組成物中における含有量は0.5~20重量%である、
請求項1から5のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項7】
前記着色剤は染料である、
請求項1から6のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記染料は、親水基を有するアゾ化合物を含む、請求項7に記載のインク組成物。
【請求項9】
前記染料のインク組成物中における含有量は3~10重量%である、
請求項7または8に記載のインク組成物。
【請求項10】
前記PET容器にインクジェット印刷方式により直接印刷するために用いられる、
請求項1から9のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項11】
前記インクジェット印刷方式は、コンティニュアス型である、
請求項10に記載のインク組成物。
【請求項12】
前記インク組成物が硬化したインク硬化物は、
pH10以上の水酸化ナトリウム溶液に、85℃、15分の条件で消色する、
請求項1から11のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項13】
透明なポリエチレンテレフタレート(PET)容器に、請求項1から12のいずれか1項に記載のインク組成物を直接印刷するステップを含む、
印刷容器の製造方法。
【請求項14】
透明なポリエチレンテレフタレート(PET)の容器本体、及び、
前記容器本体の外面の少なくとも一部に設けられ、着色剤及びバインダー樹脂を含む印刷層を含む印刷容器であって、
前記バインダー樹脂は、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂を重量比で95:5~20:80の範囲で含む、
印刷容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物、印刷容器の製造方法、及び、印刷容器法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体の表面にアルカリ可溶性の印刷層を設けた容器が知られている(特許文献1)。しかし、容器本体に直接印刷を施すとインクと容器の密着性が不十分となり、こすれや汚れ等が生じやすかった。
[特許文献1]特開2018-52607号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、透明なポリエチレンテレフタレート(PET)容器に直接印刷するためのインク組成物であって、着色剤、バインダー樹脂、溶剤を含み、バインダー樹脂のインク組成物中における含有量は30重量%以下であり、バインダー樹脂は、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂を重量比で95:5~20:80の範囲で含む、インク組成物を提供する。
【0004】
また、第2の態様においては、透明なポリエチレンテレフタレート(PET)の容器本体、及び、容器本体の外面の少なくとも一部に設けられ、着色剤及びバインダー樹脂を含む印刷層を含む印刷容器であって、バインダー樹脂は、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂を重量比で95:5~20:80の範囲で含む、印刷容器を提供する。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴のすべてを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本実施形態における、印刷容器100の外観の一例を示す。
【
図2】本実施形態における、印刷容器100の層構成の一例を示す。
【
図3】本実施形態の印刷容器100の製造方法のフローの一例を示す。
【
図4】本実施形態における、印刷容器100の層構成の別の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、本実施形態における、印刷容器100の一例を示す。印刷容器100は、透明な外観を有し、少なくとも一部に印刷が施される。印刷容器100は、容器本体10と、印刷層30とを有する。
【0009】
容器本体10は、内容物を保持可能な構造物である。容器本体10は、樹脂又はガラス等のリサイクル可能な透明材料により成形される。例えば、容器本体10は透明なポリエチレンテレフタレート(PET)により成形され、この場合印刷容器100はPET容器となり、ペットボトル等と称される。容器本体10に保持される内容物は、飲料、食品、薬品、又は、工業製品等であってよい。
【0010】
印刷層30は、容器本体10の外面の少なくとも一部に設けられた、着色剤及びバインダー樹脂を含む層である。印刷層30は、インク組成物を印刷し、これを硬化することにより形成される。
【0011】
印刷層30は、種々の印刷により形成された字、識別コード、記号、絵柄、模様等(以下、あわせて「絵柄等」ともいう)を表現するものである。文字として、印刷容器100に係る商品名、商品説明(例えば、内容物の味、原材料、製造者、及び、賞味期限等)及び、容器本体10の説明(容器本体10の材料、リサイクルの可否、及び、リサイクルの方法等)等が挙げられる。識別コードとしてバーコードや2次元コードが挙げられ、文字の代わりに商品名、商品説明、容器本体10の説明、及び、これらの情報を表示するウェブサイト等のリンクを示すものであってよい。
【0012】
図2は、本実施形態における、印刷容器100の層構成の一例を示す。
図2において、上側が印刷容器100の外側面(すなわち外気に触れる面)であり、下側が内側面(すなわち内容物に触れる面)である。
【0013】
印刷層30は、容器本体10の外側面上に形成される。印刷層30は、印刷により形成されたインク組成物の硬化物である。印刷層30は、アルカリ処理により溶解又は剥離される。これにより、印刷容器100は消色された状態となるので、容器本体10のリサイクルを円滑に行うことができる。本実施形態の印刷層30は、容器本体10と強固に密着し、摩擦等によりこすれや汚れが生じにくい。印刷層30を形成するためのインク組成物の詳細は後述する。
【0014】
図3は、本実施形態の容器100の製造方法のフローの一例を示す。本実施形態の容器100は、
図3のS100~S500の処理を行うことによって製造することができる。なお、説明の便宜上、S100~S500の処理を順番に説明するが、これらの処理は少なくとも一部が並列に実行されるものであってもよいし、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各ステップを入れ替えて実行されるものであってもよい。また、一部のステップが省略されてもよい。
【0015】
まず、S100において、プリフォームを成形する。例えば、容器本体10の材料となる樹脂等の透明材料を高温高圧にして溶融し、金型に射出充填し、その後に冷却固化させて、金型の形状のプリフォームを形成してよい。溶融時及び射出時の温度は、材料が十分に軟化する温度であればよく、例えば200℃から300℃の範囲で行ってよい。射出時の圧力は、容器の形状等に応じて適宜設定してよいが、例えば10~40MPaの範囲であってよい。
【0016】
容器本体10の材料として、透明材料を用いることができ、例えば、樹脂が用いられる。容器本体10の材料として、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、及び、生分解性樹脂から選択される1種、又は、2種以上の組み合わせを用いてよい。
【0017】
容器本体10の材料として、後に形成される印刷層30との密着性との観点から、上記の中でも特にポリエステル系樹脂が好ましい。ポリエステル系樹脂の具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステルが好適に使用される。ポリオレフィン系樹脂として、低密度/高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、任意の鎖状又は環状オレフィンのランダム/ブロック共重合体を用いてよい。ポリスチレン系樹脂として、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、又は、α-メチルスチレン・スチレン共重合体等を用いてよい。ポリアミド系樹脂として、ナイロン6、ナイロン6―6、ナイロン6/6-6共重合体、メタキシリレンジアジパミド、ナイロン6-10、ナイロン11、ナイロン12及びナイロン13が挙げられる。アクリル系樹脂として、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルが挙げられる。ポリ塩化ビニル系樹脂としてポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0018】
容器本体10は、各種の添加剤を含んでよい。例えば、容器本体10は、可塑剤、UV吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤、耐候剤、消臭剤、艶消剤、離型剤、イオン交換剤、着色剤、その他の添加剤を含んでよい。
【0019】
射出成形されたプリフォームの口蓋部に熱処理を行って結晶化を行ってよい。プリフォームの口蓋部が結晶化することにより、耐熱性を付与することができる。熱処理の温度は、材料が結晶化する温度であればよく、例えば140℃から200℃の範囲で行ってよい。
【0020】
次に、S200において、プリフォームをブロー成形する。例えば、二軸延伸ブロー成形を行ってよい。一例として、プリフォームを加熱後に金型に挿入し、延伸ロッドでプリフォームの長手方向に延伸(すなわち縦延伸)して長手方向に引き伸ばし、加圧エアーをプリフォームに吹き込んでプリフォームの半径が拡大するように延伸(すなわち横延伸)し、容器本体10の成形を行ってよい。
【0021】
ブロー成形は、材料のガラス転移点(Tg)以上結晶化温度以下の温度でプリフォームを加熱しながら行われてよい。例えば、容器本体10の材料がPETの場合、100~130℃に加熱してよい。加熱方法は、赤外線、高周波誘導、熱風等の公知の手法が採用される。容器本体10の成形が完了した後、加圧エアーを冷却用エアー(例えば、空気、二酸化炭素、窒素ガス、又はこれらの液化物等)に切り替えて容器本体10の内部に送り込み、容器本体10の冷却を行ってよい。これにより、透明なポリエチレンテレフタレート(PET)容器等の容器本体10が形成される。
【0022】
ブロー成形の後に、容器本体10の少なくとも一部又は外側面全体には表面処理が施されてよい。例えば、容器本体10には、プラズマ処理、コロナ処理、オゾン処理、プライマー塗布処理等が行われてよい。これにより、容器本体10と後にS400で形成される印刷層30との密着性を向上させることができる。また、容器本体10の内側面にも表面処理が施されたり、別の層が形成されてもよい。例えば、容器本体10の内側面には酸素バリア膜(例えばSiOx膜)が形成されてよい。容器本体10の厚みは任意であるが、例えば、0.1~1.0mmの範囲であることが望ましい。
【0023】
次に、S400において、容器本体10の外側面の表面に直接インク組成物を印刷して印刷層30を形成する。印刷層30は、容器本体10の外側面の一部又は全体に形成してよい。
【0024】
印刷層30の印刷方法は特に限定されないが、インクジェット印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、電子写真印刷等の各種印刷により印刷してよい、特にオンデマンド印刷可能なインクジェット方式が好ましい。インクジェット方式としてオンデマンド型又はコンティニュアス型を用いることができるが、印刷速度及び高粘度のインクを使用できることからコンティニュアス型が好ましい。また、印刷層30の少なくとも一部は、ロールコート等のコーティングにより形成されてもよい。
【0025】
印刷層30は、インク組成物を印刷等することにより形成する。例えば、S100~S200により形成された容器本体10に、インクジェット印刷方式等によりインク組成物を直接印刷することにより、印刷層30を形成する。
【0026】
例えば、インク組成物は、塗膜乾燥後の硬化物の厚さが1~50μmになるように印刷等で容器本体10に付与される。特に、インク組成物で印字を形成する場合は、インク組成物の乾燥後の硬化物の厚さが1~10μm程度となるように印刷等で容器本体10に付与されてよい。
【0027】
インク組成物は、バインダー樹脂、着色剤、溶剤を含むものであってよい。インク組成物は、UV硬化タイプでなくてよく、光重合開始剤を含まないものであってよい。インク組成物は、熱硬化タイプ又は乾燥硬化タイプ(すなわち溶剤インク)のものであってよい。
【0028】
バインダー樹脂は、アルカリ可溶性樹脂であってよい。例えば、バインダー樹脂は、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂を含むものであってよい。バインダー樹脂は、これ以外の樹脂を更に含んでもよい。
【0029】
アクリル樹脂として、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸エステルとスチレンとの共重合体…を挙げることができる。特にスチレン・アクリル共重合体、及び、変性スチレン・アクリル共重合体を好適に用いることができる。
【0030】
アクリル樹脂の重量平均分子量は1,000以上30,000以下であってよく、好ましくは1,000以上20,000以下であってよい。分子量が低すぎると容器本体10と印刷層30との密着性が不十分になり、分子量が高すぎるとアルカリ処理が円滑に進まなくなる恐れがある。
【0031】
アクリル樹脂の酸価は、重量平均分子量により最適化されてよく、これにより十分なアルカリ可溶性を担保することができ、印刷層30をアルカリ処理により消色させることができる。例えば、アクリル樹脂の重量平均分子量が10,000以下の場合、酸価は50以上110mgKOH/g未満であってよい。アクリル樹脂の重量平均分子量が10,000以上の場合、酸価は100mgKOH/g以上であってよい。酸価は、JIS K0070に準拠した方法より測定してよい。
【0032】
このような酸価を有すると、印刷層30がアルカリ溶液に対して十分な溶解性を有し、アルカリ処理で十分に消色する。すなわち、重量平均分子量が10,000以上と比較的大きいアクリル樹脂は、分子量がこれよりも低いアルカリ樹脂と比較して溶解性が低い。このため、重量平均分子量が10,000以上と比較的大きいアクリル樹脂に対しては酸価を100mgKOH/g以上と高めておくことが望ましい。
【0033】
また、溶剤への溶解性の観点から、アクリル樹脂の重量平均分子量は1,000~20,000であり、酸価は200mgKOH/g以上であってよい。特に好ましくは重量平均分子量1,000~10,000で酸価が200~250mgKOH/gの範囲が好ましい。このような範囲であると溶剤の溶解性、密着性、アルカリ消色性のバランスを良好に保つことができる。
【0034】
ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、非晶性ポリエステル、ポリエステルウレタン等の熱可塑性ポリエステル等を挙げることができる。
【0035】
ポリエステル樹脂の数平均分子量は1,000~40,000である。分子量が低すぎると容器本体10と印刷層30との密着性が不十分になり、分子量が高すぎるとアルカリ処理が円滑に進まなくなる恐れがある。従って、このような範囲とすることで印刷層30の物理的な強度とアルカリ可溶性を両立することができる。
【0036】
バインダー樹脂は、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂を重量比で95:5~20:80の範囲で含むものであってよい。アクリル樹脂とポリエステル樹脂の重量比を上記範囲とすることで、アルカリ溶液により印刷層30を容易に剥離、溶解することができ、印刷容器100のリサイクルを容易にすることができ、かつ、こすれ等を生じることのない印刷層30を形成することができる。アクリル樹脂およびポリエステル樹脂の一方の量が少なすぎるとPET等の樹脂で形成される容器本体10との密着性が不十分になり、こすれ等の原因となる。一方で、さらにアクリル樹脂がポリエステル樹脂80重量部に対して最低20重量部含まれることにより、アルカリ溶液による現像が行いやすくなる。
【0037】
バインダー樹脂のインク組成物中における含有量は30重量%以下であってよい。好ましくは20重量%以下であってよい。バインダー樹脂の含有量が多すぎると溶媒に溶解させることが困難になる、インクが白濁する、インクジェット印刷等においてノズルの目詰まりが生じやすくなる等の問題が生じる可能性がある。
【0038】
バインダー樹脂のインク組成物中における含有量の下限は特に限定されないが0.5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることが更に好ましい。バインダー樹脂の含有量が少なすぎると印刷層30と容器本体10との密着性が悪化する。また、着色剤に対してバインダー樹脂の含有量が少ないと着色剤がアルカリ溶液に溶け残る場合があるので、バインダー樹脂は、着色剤と同じ含有量(重量%)以上か、好ましくは2倍以上の含有量(重量%)としてよい。
【0039】
インク組成物中に含まれるべきバインダー樹脂の量は、上記のように原料を計量することで特定してもよいが、調整済のインク組成物からバインダー樹脂の量を決定することが難しい場合もある。従って、本実施形態の一例においては、原料を計量する方法に代えて固形分測定法、粘度測定法、電導度測定法、又はこれらの2又は3つの組み合わせにより「30重量%以下」に相当する特性が特定されてもよい。
【0040】
例えば、固形分測定法では、インク組成物をハロゲン加熱式水分計を用いて120℃で、50秒間の重量変動が1mgになるまで加熱した際に残存する固形分を測定する。測定された固形分が41.0%以下である場合に、バインダー樹脂のインク組成物中における含有量は30重量%以下であるとしてよい。また、例えば、温度20℃でB型粘度計で測定されたインク組成物の粘度が0.5~8.0mPa・sの場合にバインダー樹脂のインク組成物中における含有量は30重量%以下であるとしてよい。また、例えば、温度20℃で電気伝導率計で測定されたインク組成物の電気伝導率が0.20mS/cm以上の場合にバインダー樹脂のインク組成物中における含有量は30重量%以下であるとしてよい。
【0041】
バインダー樹脂は、容器本体10との密着性やアルカリ可溶性を害さない範囲において、上に挙げたアクリル樹脂及びポリエステル以外の樹脂として、ビニル樹脂、ロジン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、スチレン樹脂、カーボネート樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、オレフィン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、及び、フェノール樹脂等を1種類以上含んでよい。
【0042】
着色剤は、印刷に使用可能な顔料又は染料を含んでよいが、染料を含むことが好ましい。例えば、染料はモノアゾ系、ジスアゾ系等のアゾ化合物を含んでよい。例えば、染料として、ソルベントブラック3、22、27、28、29、43;ソルベントレッド5、8、83、109、125、127、132;ソルベントブルー47、48、70、136;ソルベントイエロー21、88、89、90、146; ベーシクブルー5、7,ベーシクバイオレット1、3;ベーシクレッド1 、8等を用いることができる。特に親水基を有するアゾ化合物が好適に用いられる。親水基を有するとアルカリ処理により溶解しやすく、印刷層30が消色されやすくなる。
【0043】
染料等の着色剤のインク組成物中における含有量は特に限定されないが、例えばインク組成物全体に対して3~10重量%であってよい。着色剤の含有量が少なすぎると印刷層30において色調が薄くなり十分な表現ができず、含有量が多すぎると消色性が低下したり、こすれ等が生じる恐れがある。
【0044】
溶剤は、バインダー樹脂及び着色剤を十分に溶解ないし分散できるものであればよく特に限定されない。例えば、水;アセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン系;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系;グリコールエーテル等のエーテル系;トルエン、ブチルヒドロキシトルエン、キシレンなどの芳香族系;又はヘキサン等の脂肪族系の溶媒を単独又は複数混合して用いることができる。溶剤は、使用する印刷方式等に応じて、インク組成物が適切な粘度を有するように含有量が調整される。例えば、コンティニュアス型のインクジェット印刷装置を用いる場合、溶剤は、インク組成物全体に対して50~95重量%で含まれてよい。
【0045】
インク組成物は、これらに加えて必要に応じて添加剤や他の成分を含んでもよい。例えば、インク組成物は、印刷時の濡れ性を向上するためにレベリング剤を含んでよい。例えば、レベリング剤としてシリコーン系化合物、フッ素系化合物を用いてよい。この他にもインク組成物は、必要に応じて、pH調整剤、離型剤、艶消剤、着色防止剤、滑剤、イオン交換剤、UV吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤、耐候剤又は消臭剤を含んでよい。
【0046】
インク組成物を印刷又はコーティングを行った後に、インク組成物の硬化が行われる。例えば、インク組成物を自然乾燥又は加熱することにより硬化させる工程を行ってよい。硬化は熱硬化等に代えて/加えて紫外線硬化により行われてよい。インク組成物が硬化したインク硬化物が印刷層30となる。
【0047】
インク硬化物は、アルカリ処理を行うことで溶解し、消色する。例えば、上記インク組成物を用いて形成したインク硬化物は、10μm以下の厚みで形成された場合、pH10以上の水酸化ナトリウム溶液に、85℃、15分の条件で消色する。
【0048】
印刷層30は単層又は多層で形成してよい。また、印刷層30の上には必要に応じて別の層がさらに設けられてよい。例えば、印刷層30の上に、印刷層30を物理的/化学的ダメージから保護する保護層が設けられてよい。
【0049】
次にS500において、印刷層の形成を終えた印刷容器100の検査を行う。例えば、印刷容器100の外周面または内周面に凹み、穴、傷、及び汚れ等がないかを検査する。例えば、印刷容器100に形成された絵柄等が十分に鮮明か、印字ずれ、カケ及び滲み等がないか検査する。検査は、検査装置によるものでも、人の目視によるものでもよい。
【0050】
その後、ボトラー等において、印刷容器100に飲料等の中身が充填され、印刷容器100を用いた製品が出荷、販売される。中身が消費された後は、印刷容器100がリサイクルのために回収される。本実施形態により製造された印刷容器100は、インクと容器の密着性を十分に保ちこすれ等を防止しつつ、アルカリ処理により容易に印刷層30を容器本体10から除去できる。
【0051】
図4は、本実施形態における、印刷容器100の層構成の別の一例を示す。図示するように容器本体10は、複数層を含んでよい。例えば、容器本体10は、中間層14と、ポリエチレンテレフタレートからなり、中間層14を挟むPET層12及びPET層16とを有してよい。
【0052】
PET層12及びPET層16は、
図2において説明した容器本体10と同様の構成を有してよい。PET層12及びPET層16の代わりに、容器本体10の材料として挙げたPETとは異なる樹脂の層を設けてもよい。
【0053】
中間層14は、容器100に様々な機能や付加価値を付与する。例えば、中間層14は、酸素バリア性能を有する層であってよい。この場合、中間層14は、ナイロン等のポリアミド系樹脂(例えば、ナイロン6、ナイロン6―6、ナイロン6/6-6共重合体、メタキシリレンジアジパミド、ナイロン6-10、ナイロン11、ナイロン12、及びナイロン13)、又は、エチレンービニルアルコール共重合体(例えば、エチレン- 酢酸ビニル共重合体)であってよく、好ましくはナイロンであってよい。これらの材料を用いることで、内容物の保存性を高めることができる。
【0054】
また、例えば、中間層14は、再生材料を用いた層であってよい。例えば、中間層14は、リサイクルPET等のリサイクル樹脂であってもよい。一例として、中間層14は、メカニカルリサイクルPET又はケミカルリサイクルPETであってよい。再生材料を用いることで、印刷容器100の製造において生じる環境負荷を低減することができる。
【0055】
図4に示すような多層の印刷容器100を形成する場合、多層プリフォームを形成してよい。例えば、
図3のS100において、多層の樹脂を金型内に共射出することにより、多層プリフォームを形成してもよい。共射出に代えて/加えて共圧縮成形、逐次射出等を行うことで多層プリフォームを形成してもよい。
【0056】
多層プリフォームを形成する場合、基材となる樹脂(例えば、PET)の間に、特定の機能を有する樹脂(例えば、ナイロン等の酸素バリア性能がある樹脂やリサイクル樹脂)が位置するように共射出を行ってよい。
【0057】
[実施例]
以下、本実施形態の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0058】
[実施例1]
下記の組成のインク組成物Aを調整した。
・アクリル樹脂(重量平均分子量16500、酸価240mgKOH/g)10.4重量%
・ポリエステル樹脂(数平均分子量15000) 2.6重量%
・錯体系着色剤 5重量部
・エーテルを主成分とし、ケトン及びアルコールを含むエーテル系溶媒 81.5重量%
・レベリング剤 0.5重量%
【0059】
20℃、60%の恒温恒湿室内で、厚さ1mmのポリエチレンテレフタレート(PET)の透明板に、バーコーターでインク組成物Aを塗布した。その後、インク組成物Aを塗布した透明板を20℃、65%の恒温恒湿室内で12時間放置して自然乾燥し、厚さ10~20μmの印刷層を形成して試験対象片Aを得た。
【0060】
[実施例2]
アクリル樹脂の含有量を12.8重量%に変更し、ポリエステル樹脂の含有量を3.2重量%に変更し、溶剤をエーテル系溶媒78.5重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物B及び試験対象片Bを得た。
【0061】
[実施例3]
アクリル樹脂の含有量を8重量%に変更し、ポリエステル樹脂の含有量を2重量%に変更し、溶剤をエーテル系溶媒84.5重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物C及び試験対象片Cを得た。
【0062】
[実施例4]
着色剤の含有量を7.5重量%に変更し、溶剤をエーテル系溶媒79重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物D及び試験対象片Dを得た。
【0063】
[実施例5]
着色剤の含有量を2.5重量%に変更し、溶剤をエーテル系溶媒84重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物E及び試験対象片Eを得た。
【0064】
[実施例6]
アクリル樹脂の含有量を7.8重量%に変更し、ポリエステル樹脂の含有量を5.2重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物F及び試験対象片Fを得た。
【0065】
[実施例7]
アクリル樹脂を重量平均分子量1700、酸価238mgKOH/gのもの10.4重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物G及び試験対象片Gを得た。
【0066】
[実施例8]
アクリル樹脂を重量平均分子量1700、酸価238mgKOH/gのもの7.8重量%に変更したこと以外は実施例6と同様の操作を行ってインク組成物H及び試験対象片Hを得た。
【0067】
[実施例9]
アクリル樹脂の含有量を5.2重量%に変更し、ポリエステル樹脂の含有量を7.8重量%に変更したこと以外は実施例7と同様の操作を行ってインク組成物I及び試験対象片Iを得た。
【0068】
[実施例10]
ポリエステル樹脂を数平均分子量23000のもの2.6重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物J及び試験対象片Jを得た。
【0069】
[実施例11]
ポリエステル樹脂を数平均分子量3000のもの2.6重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物K及び試験対象片Kを得た。
【0070】
[実施例12]
ポリエステル樹脂を数平均分子量30000のもの2.6重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物L及び試験対象片Lを得た。
【0071】
[実施例13]
ポリエステル樹脂を数平均分子量40000のもの2.6重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物M及び試験対象片Mを得た。
【0072】
[実施例14]
ポリエステル樹脂を数平均分子量25000のもの2.6重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物N及び試験対象片Nを得た。
【0073】
[実施例15]
ポリエステル樹脂を数平均分子量16000のもの2.6重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物O及び試験対象片Oを得た。
【0074】
[実施例16]
アクリル樹脂を重量平均分子量4600、酸価108mgKOH/gのもの10.4重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物P及び試験対象片Pを得た。
【0075】
[実施例17]
アクリル樹脂を重量平均分子量5850、酸価278mgKOH/gのもの10.4重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物Q及び試験対象片Qを得た。
【0076】
[実施例18]
アクリル樹脂を重量平均分子量8100、酸価53mgKOH/gのもの10.4重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物R及び試験対象片Rを得た。
【0077】
[実施例19]
アクリル樹脂の含有量を0.6重量%に変更し、ポリエステル樹脂の含有量を0.4重量%に変更し、溶剤をケトンを主成分としエーテル及びアルコールを含むケトン系溶媒93.5重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物S及び試験対象片Sを得た。
【0078】
[実施例20]
アクリル樹脂の含有量を0.9重量%に変更し、ポリエステル樹脂の含有量を0.6重量%に変更し、溶剤をケトン系溶媒93重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物T及び試験対象片Tを得た。
【0079】
[実施例21]
アクリル樹脂の含有量を0.1重量%に変更し、ポリエステル樹脂の含有量を0.2重量%に変更し、溶剤をケトン系溶媒94.2重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物U及び試験対象片Uを得た。
【0080】
[実施例22]
アクリル樹脂を重量平均分子量1700、酸価238mgKOH/gのもの20.0重量%に変更し、ポリエステル樹脂の含有量を5.0重量%に変更し、溶剤をエーテル系溶媒69.5重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物X及び試験対象片Xを得た。
【0081】
[実施例23]
アクリル樹脂の含有量を12.4重量%に変更し、ポリエステル樹脂の含有量を0.6重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物Y及び試験対象片Yを得た。
【0082】
[実施例24]
アクリル樹脂の含有量を0.4重量%に変更し、ポリエステル樹脂の含有量を0.1重量%に変更し、溶剤をエーテル系溶媒94重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物Z及び試験対象片Zを得た。
【0083】
[実施例25]
アクリル樹脂の含有量を4.0重量%に変更し、ポリエステル樹脂の含有量を1.0重量%に変更し、溶剤をエーテル系溶媒89.5重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物α及び試験対象片αを得た。
【0084】
[実施例26]
アクリル樹脂の含有量を16.0重量%に変更し、ポリエステル樹脂の含有量を4.0重量%に変更し、溶剤をエーテル系溶媒74.5重量%に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物β及び試験対象片βを得た。
【0085】
[比較例1]
アクリル樹脂の含有量を13重量%に変更し、ポリエステル樹脂を使用しなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物a及び試験対象片aを得た。
【0086】
[比較例2]
ポリエステル樹脂の含有量を13重量%に変更し、アクリル樹脂を使用しなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物b及び試験対象片bを得た。
【0087】
[比較例3]
アクリル樹脂の含有量を13重量%に変更し、ポリエステル樹脂を使用しなかったこと以外は実施例7と同様の操作を行ってインク組成物c及び試験対象片cを得た。
【0088】
[比較例4]
アクリル樹脂を重量平均分子量17000、酸価94mgKOH/gのもの13重量%に変更し、ポリエステル樹脂を使用しなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行ってインク組成物d及び試験対象片dを得た。
【0089】
[比較例5]
アクリル樹脂の含有量を35.0重量%に変更したこと以外は比較例1と同様の操作を行って、インク組成物e及び試験対象片eを得た。
【0090】
[比較例6]
アクリル樹脂を重量平均分子量1700、酸価238mgKOH/gのもの35.0重量%に変更したこと以外は比較例5と同様の操作を行って、インク組成物f及び試験対象片fを得た。
【0091】
各インク組成物の組成を下記表1~3に示す。
[表1]
【表1】
[表2]
【表2】
[表3]
【表3】
【0092】
試験対象片A~fに対して、以下説明するクロスカット法による剥離試験、鉛筆硬度の測定、アルカリ消色性目視評価、及び、アルカリ消色性色差計評価を行った。
【0093】
[クロスカット法による剥離試験(JIS K5600-5-6)]
以下の作業を20℃、65%の恒温恒湿室内で行う。
(1)クロスカット用治具を用いて、試験対象片の印刷層に1mm格子を形成する。
(2)約75mmの長さにセロハンテープ(ニチバン製LP24)をカットする。
(3)セロハンテープを印刷層に貼り付け、指でこすりつける等でしっかり密着させる。
(4)試験対象片の主面から約60度の角度でセロハンテープを引き、1秒以内に試験対象片から引き離す。
(5)上記(1)から(4)を各試験対象片について2回行う。
(6)剥がれ無しのものを「0」と評価し、セロハンテープに若干の色がつくものを「1」と評価し、セロハンテープに色がつくが板には変化がないものを「2」と評価する。
【0094】
[鉛筆硬度の測定(JIS K5600-5-4)]
以下の作業を20℃、65%の恒温恒湿室内で行う。
(1)試験対象片の印刷層の主面に対し約45度の角度で硬度Fの鉛筆を当てて押し付け、全力で1cmほど押し出す。
(2)鉛筆により印刷層に傷がつくか否かを確認する。
(3)鉛筆で印刷層に傷がつく場合は硬度HB、傷がつかない場合は硬度Hの鉛筆を使用して再度(1)~(2)を行う。
(4)傷がついた硬度の前の硬度を結果として評価する(例えば硬度Hの鉛筆で傷がついた場合は結果は「F」となる)。
【0095】
[アルカリ消色性目視評価]
試験対象片の印刷層に対して、リサイクルの容易性のテストを行った。試験対象片の印刷層を、pH10以上の水酸化ナトリウム溶液に、85℃、15分の条件で浸漬し、消色が認められるかテストした。
〇:印刷層30がほぼすべて溶解し、完全に消色した。
△:印刷層30が一部溶解し、部分的に消色した。
×:消色が生じなかった。
【0096】
[アルカリ消色性色差計評価]
試験対象片をアルカリ消色性目視評価と同様の条件で水酸化ナトリウム溶液に浸漬する前後における試験対象片の色差を、色差計(日本電色工業製微小面分光色差計VSS400)で測定した。消色試験後、塗布面の裏から測定を行い、L値が2以上かつa値が1以上の場合には、評価を〇とし、それ以外の場合を評価を×とした。
【0097】
各試験の結果を以下の表4~6に示す。
[表4]
【表4】
[表5]
【表5】
[表6]
【表6】
【0098】
更にインク組成物A~fに対して、以下説明する印字テストを行った。
【0099】
[印字テスト]
20℃、60%の恒温恒湿室内で、厚さ1mmのペットボトル容器形状に成形したポリエチレンテレフタラート(PET)の容器本体の外側面の表面に、コンティユアス型のインクジェット印刷装置を用いてインク組成物A~fのそれぞれで文字を印刷した。その後、印刷物を20℃、65%の恒温恒湿室内で12時間放置して自然乾燥し、厚さ10~20μmの印刷層を形成して印刷物A~fを得た。
【0100】
印刷物A~β(実施例1~26に対応)及び印刷物b及びd(比較例2及び4に対応)は、指でこすっても剥がれ等が生じることがなかった。一方で、印刷物a、c、e及びf(比較例1、3、5及び6に対応)は、指でこすると印刷層が比較的容易に剥がれてしまった。
【0101】
上記の通り、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂を重量比で95:5~20:80の範囲となる実施例1~26では、各試験において良好な結果が得られた。一方で、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂を重量比で95:5~20:80の範囲外となる比較例1~6では、アルカリ消色性や剥離強度等が劣る結果となった。
【0102】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0103】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示したインク組成物、印刷容器の製造方法及および使用方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先だって」等と明示しておらず、また、前の処理を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0104】
10 容器本体
12 PET層
14 中間層
16 PET層
30 印刷層
100 印刷容器