(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085726
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】ヒンジ並びにこのヒンジを用いた事務機器
(51)【国際特許分類】
G03B 27/62 20060101AFI20220601BHJP
F16C 11/04 20060101ALI20220601BHJP
F16C 11/10 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
G03B27/62
F16C11/04 F
F16C11/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197550
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】513014628
【氏名又は名称】株式会社ナチュラレーザ・ワン
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】小川 覚司
(72)【発明者】
【氏名】山元 建彦
【テーマコード(参考)】
2H012
3J105
【Fターム(参考)】
2H012CB12
3J105AA12
3J105AB02
3J105AB13
3J105AC06
3J105DA15
3J105DA23
(57)【要約】
【課題】圧縮コイルスプリングを縦方向に3個以上用い、スライダーに設置する受圧カム部を装置本体側にずらせて配置しても、スライダーのスライド動作に支障をきたさない構造簡単なヒンジを提供せんとするにある。
【解決手段】ヒンジを装置本体側に取り付けられるところの前後方向に長いケース部を有する取付部材と、この取付部材にヒンジシャフトを介して回転可能に取り付けられ原稿圧着板を取り付ける支持部材と、この支持部材に前記取付部材側に向けて設けられた作動カム部と、この作動カム部に接して前記取付部材のケース部内にスライド可能に設けられ、装置本体側に片寄って受圧カム部を設けたスライダーと、このスライダーと前記取付部材の内底部との間に弾設された3本以上の圧縮コイルスプリングと、で構成することで解決し、さらに事務機器にあっては、上記ヒンジを事務機器に用いることで解決した。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体側に取り付けられるところの前後方向に長いケース部を有する取付部材と、
この取付部材にヒンジシャフトを介して回転可能に取り付けられ原稿圧着板を取り付ける支持部材と、
この支持部材に前記取付部材側に向けて設けられた作動カム部と、
この作動カム部に接して前記取付部材内にスライド可能に設けられ、装置本体側に片寄って受圧カム部を設けたスライダーと、
このスライダーと前記取付部材の内底部との間に弾設された3本以上の圧縮コイルスプリングと、で構成したことを特徴とする、ヒンジ。
【請求項2】
前記ケース部の上部の前記ヒンジシャフトを設けた側には、前記支持部材の連結部に当接し、当該支持部材の開成角度を規制するストッパー部が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のヒンジ。
【請求項3】
前記スライダーには、その上端部の前側に原稿の汚れや指挟みを防止するオイル汚れ乃至指挟み防止片が設けられていることを特徴とする、請求項1~2のいずれか1項に記載のヒンジ。
【請求項4】
前記ケース部の後部下端部側には、当該ケース部を装置本体へ取り付ける取付ネジ孔が設けられていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のヒンジ。
【請求項5】
請求項1~4に各記載のヒンジを装置本体と原稿圧着板との間に設けたことを特徴とする、事務機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば比較的小型の複写機のような事務機器に用いられる原稿圧着板を、装置本体に対して開閉可能に連結する際に用いて好適なヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、複合機、ファクシミリ、スキャナー、印刷機等、オフィスで使用される事務機器の多くは、その装置本体の上面にコンタクトガラスを具備した原稿載置台が設けられると共に、当該原稿載置台上を開閉可能に覆う原稿圧着板を備えている。原稿圧着板は、原稿載置台に載置された原稿を当該原稿載置台に密着させ、外光がコンタクトガラスを介して装置本体内の露出系に影響を及ぼすことを防止している。この原稿圧着板を装置本体に対して開閉可能に取り付けるために、様々な構成のヒンジが知られているが、本発明に係るヒンジは、その中でも比較的に構造が簡単であって、従来あまり例がないが、圧縮コイルスプリングをヒンジシャフトと直交に複数用いた小型のヒンジに関する。
【0003】
このようなヒンジにおいて、例えば下記先行技術文献の特許文献1に記載されているものが公知である。この下記特許文献1に記載されたヒンジは、装置本体側へ取り付けられる取付部材に対しヒンジシャフトを介して原稿圧着板を支持する支持部材を取り付けたもので、取付部材に設けたケース部をヒンジシャフトに対して直交する方向へ長い平面長方形状を呈したものとし、このケース部の中に同じく平面長方形状を呈したスライダーをスライド可能に設け、このスライダーとケース部の底部との間に2本の圧縮コイルスプリングを弾設し、このスライダーの上面に装置本体側に片寄らせて設けた受圧カム部に支持部材に設けた作動カム部を圧接させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のヒンジによれば、圧縮コイルスプリングの径を小さくし、ヒンジを小型にできた上で、圧縮コイルスプリングを横方向に配置するものに比べて、ヒンジシャフトに加わる力が軸方向へ均等なものになるという利点がある。しかるに、この特許文献1に記載のものは、支持部材の開閉操作を行うと、作動カム部が受圧カム部を押圧した際にスライダーに対する押圧力が、装置本体側に配置した圧縮コイルスプリングに片寄ってかかることになる結果、スライダーのスライド動作に影響を及ぼし、スライダーのスムーズな動作に支障をきたすという問題が生じた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、圧縮コイルスプリングを縦型に複数個用い、スライダーに設置する受圧カム部を装置本体側に片寄らせて配置しても、スライダーのスライド動作に支障をきたさないヒンジを提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載のヒンジは、装置本体側に取り付けられるところの前後方向に長いケース部を有する取付部材と、この取付部材にヒンジシャフトを介して回転可能に取り付けられ原稿圧着板を取り付ける支持部材と、この支持部材に前記取付部材側に向けて設けられた作動カム部と、この作動カム部に接して前記取付部材内にスライド可能に設けられ、装置本体側に片寄って受圧カム部を設けたスライダーと、このスライダーと前記取付部材の内底部との間に弾設された3本以上の圧縮コイルスプリングと、で構成したことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載のヒンジにあっては、前記ケース部の上部の前記ヒンジシャフトを設けた側に、前記支持部材の連結部に当接し、当該支持部材の開成角度を規制するストッパー部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
さらに、請求項3に記載のヒンジにあっては、前記スライダーには、その上端部の前側に原稿の汚れや指挟みを防止するオイル汚れ乃至指挟み防止片が設けられていることを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項4に記載のヒンジにあっては、前記ケース部の後部下端部側には、当該ケース部を装置本体へ取り付ける取付ネジ孔が設けられていることを特徴とする。
【0011】
そして、請求項5に記載の事務機器にあっては、ヒンジを装置本体と原稿圧着板との間に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願発明は以上のように構成したので、圧縮コイルスプリングを縦型に複数個用い、スライダーに設置する受圧カム部を装置本体側に片寄らせて配置しても、スライダーのスライド動作に支障をきたさないヒンジを提供することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るヒンジを用いた事務機器の一例である複写機を左側から見た図である。
【
図4】
図2に示したヒンジの閉成状態を左側から見た側断面図である。
【
図5】
図2に示したヒンジの開成状態を左側から見た側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明に係るヒンジとこのヒンジを用いた事務機器の一例としての複写機の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図面によれば
図1において、指示記号1で示したものは、事務機器の一例である複写機を示す。図面によれば、この複写機1は、装置本体2と、この装置本体2にヒンジ10を介して開閉可能に取り付けられ原稿圧着板3を有する。本発明に係るヒンジ10は、複写機1の装置本体2へ原稿圧着板3を開閉可能に連結するために用いられるものであり、装置本体2側に設けられた取付孔2aへ挿入固定される取付部材5と、この取付部材5にヒンジシャフト6を介して回転可能に取り付けられる原稿圧着板3を支持する支持部材7とを有する。複写機1は通常ヒンジ10を左右一対具備するが、同じ構造であるので、その一つを説明する。また、本実施形態においては、複写機1がヒンジ10を具備する構成とするが、複写機1以外にも複合機、ファクシミリ、スキャナー、印刷機等の事務機器が、その装置本体と原稿圧着板乃至蓋体との間にヒンジ10を具備する構成とすることも可能である。
【0016】
本発明に係るヒンジ10は、
図2以降に詳しく示されているように、複写機1の装置本体2側に取り付けられるところの前後方向に長いケース部5aを有する取付部材5と、この取付部材5にヒンジシャフト6を介して回転可能に取り付けられ、原稿圧着板3を支持する支持部材7と、この支持部材7に前記取付部材5側に向けて設けられた作動カム部7aと、この作動カム部7aに接して前記取付部材5内にスライド可能に設けられ、装置本体2側に片寄って受圧カム部8aを設けたスライダー8と、このスライダー8と前記取付部材5の内底部8cとの間に弾設された3本の圧縮コイルスプリング11,12,13とで構成されている。
【0017】
本発明に係るヒンジ10の取付部材5は、実施の形態のものは、機械的強度に富むPOMなどの樹脂成型品であり、平面長方形状を呈した上部側開放のケース部5aと、このケース部5aの両サイドの上端部から上方へ所定間隔を空けて突設させた一対の取付片部5b、5bと、この取付片部5b、5bの間でケース部5aの後板部5cに設けたところの後部下方に向けて傾斜させて成るストッパー部5dと、後板部5c側の下端部に前後方向に向けて設けた雌ネジ部5eと、底板部5gに上方に向けて所定間隔を空けて設けた3本のガイド突起部5h、5h、5hとを有している。
【0018】
この取付部材5は、
図1に示したように、そのケース部5aを複写機1の装置本体2の後端部に下方に向けて設けた装入孔2bに挿入され、装置本体2側から捻じ込んだ取付ネジが雌ネジ孔5eに捻じ込まれることによって、送入孔2bへ固着されるようになっている。尚、ここのところは、ケース部5aを単に送入孔2bへ挿入固定させるようにしても良い。
【0019】
次に、本発明に係る支持部材7は、実施の形態のものは、取付部材5と同じく、機械的強度に富むPOMなどの樹脂成型品で、ケース部5aの取付片部5b、5bの間に挿入されている連結部7aと、この連結部7aの後端部から上方へ突設したところの取付孔7cを設けた取付片7bと、連結部7aから前方に向けて設けられた支持部7dと、この支持部7dから下方に向けて突設した作動カム部7eとを有しており、連結部7aの部分を取付部材5の取付片部5b、5bに対しヒンジシャフト6を介して回転可能となるように取り付けられている。
【0020】
次に、前記ケース部5aの中には、平面長方形状を呈した中空のスライダー8が上下方向へスライド可能に収容されており、このスライダー8は、その内頂部8aから下方に向けて取付部材5側のガイド突起部5h、5h、5hに対向させて同じく等間隔に3本のガイド突起8b、8b、8bが設けられると共に、その外側の頂部には、その中心から前方の装置本体2側へ片寄らせた位置に上方へ突出させて受圧カム部8cが設けられており、さらに、この受圧カム部8cより前方に位置させて、上方へオイル汚れ乃至指挟み防止用の防止片8dが突設されている。
【0021】
次に、ケース部5aとスライダー8との間には、それぞれその下部側と上部側に、ケース部5a側の下部側ガイド突起5h、5h、5hとスライダー8側の上部側ガイド突起8c、8c、8cをそれぞれ内部に収容させて3本の圧縮コイルスプリング11,12,13が弾設されている。
【0022】
今、
図3と
図4に示したように、原稿圧着板3を閉じた状態においては、当該原稿圧着板3は、原稿載置台2aの上面を覆い、支持部材7の作動カム部7eは、スライダー8の受圧カム部8aを押圧し、圧縮コイルスプリング11,12,13は、最大限圧縮された状態にあるが、原稿圧着板3がその重みでヒンジシャフト6の回りに発生させる回転トルクは、原稿圧着板3の重量の方が勝っているので、当該原稿圧着板3は圧縮コイルスプリング11,12,13の合計弾力に抗して閉成状態を保っている。
【0023】
そこで、複写を行うべく操作者が原稿を原稿載置台2a上へセットするために、原稿圧着板3を開くべくその前側の一端部に手指を掛けて持ち上げると、最初のうちは、原稿圧着板3の重さを感じるが、次第に圧縮コイルスプリング11,12,13の合計弾力が勝り始め、スライダー8の受圧カム部8aが支持部材7の作動カム部7eを上方へ押し上げるので、原稿圧着板3は、それ本来の重さを感じさせることなく、ヒンジシャフト6を支点にして支持部材7が反時計方向へ回転することによって開かれる。
【0024】
原稿圧着板3は、原稿載置台2aに対し、
図6のトルク曲線図に示されたように、およそ10°前後の開成角度で自立保持できるように、圧縮コイルスプリング11,12,13の合成弾力と原稿圧着板3がヒンジシャフト6の周りに創出させる回転トルクが均衡するように設定し、しかる後、同じく
図6に示したように、ヒンジ10の回転トルクが、原稿圧着板3の回転モーメントより勝って推移することから、原稿圧着板3から手を離しても自然落下することなく自立保持されるので、操作者は自由となった両手を用いて原稿を原稿載置台2a上へ載置させることが可能になる。
【0025】
ここのところは、原稿圧着板3を、圧縮コイルスプリング10,11,12の合成弾力を、当該原稿圧着板3の所定開成角度(例えば35°以上)で自動的に原稿圧着板3を押し上げるように設定することもできる。この場合には原稿圧着板3は、35°以上の開成角度で自動的に支持部材7の連結部7a側の下端面が取付部材5側に設けたストッパー部5dに当接するまで開かれて、その開成角度で停止することになる。
【0026】
次に、原稿を原稿載置台2a上へ載置セットした後、原稿圧着板3を閉じ方向へ下押しすると、支持部材7がヒンジシャフト6を支点に時計方向へ回転することにより、作動カム部7eがスライダー8の受圧カム部8aを圧縮コイルスプリング11,12,13の弾力にして抗して押し下げるので、急激に閉じられることなく閉じられ、原稿を原稿載置台2a上へ密着させることができる。
【0027】
以上詳細に説明したうに、本発明に係るヒンジ10は、圧縮コイルスプリングを横方向に並べたヒンジに比べ、ヒンジシャフト6に対する押圧力がスライダー8を介して軸方向へ均等に加わるため、ヒンジシャフトに捩じれ方向の押圧力が加わることがないので、長期間使用の後においても、ヒンジシャフト6のトルク変動を押えることができるものである。
【0028】
また、本発明においては、原稿圧着板3の開閉操作時に取付部材5のケース部5a内に上下方向へスライド可能に設置されたスライダー8は、受圧カム部8aの設置位置がスライダー8の装置本体2a側に片寄って設けられ、この受圧カム部8aに支持部材7の側に設けた作動カム部7eが圧接する構成となっているため、作動カム部8aによる押圧力がスライダー8に対して片寄って加わることになるが、本発明に係るヒンジにおいては、作動カム部と8a受圧カム部7eの接触位置の下側は、真ん中の圧縮コイルスプリング12側に位置することになることから、押圧力が比較的に均等にスライダー8へ加えられることになり、これが片寄ってしまう従来技術のものよりは、スライダー8のスライド動作がスムーズになるものとなるものである。
尚、本発明に係るヒンジ10においては、圧縮コイルスプリングを3本以上用いることは可能である。
【0029】
以上、本発明は上記の如く構成したので、複写機の中でも比較的に小型のものに用いる原稿圧着板の開閉用のヒンジとして好適に用いられるものであり、小型かつ構成が簡単で操作性の良いヒンジを持つ事務機器を提供できるものである。
【符号の説明】
【0030】
1 複写機
2 装置本体
2a 原稿載置台
3 原稿圧着板
5 取付部材
5a ケース部
5b、5b 取付片部
6 ヒンジシャフト
7 支持部材
7a 連結部
7e 作動カム部
8 スライダー
8c 受圧カム部
10 ヒンジ
11、12、13 圧縮コイルスプリング