(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085761
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】樹脂粒子、及びその用途
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20220601BHJP
C08F 283/12 20060101ALI20220601BHJP
C08F 283/02 20060101ALI20220601BHJP
C08F 259/08 20060101ALI20220601BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20220601BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20220601BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20220601BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20220601BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20220601BHJP
C10M 105/32 20060101ALI20220601BHJP
C10M 107/50 20060101ALI20220601BHJP
C10M 107/38 20060101ALI20220601BHJP
C10M 105/02 20060101ALI20220601BHJP
C10M 107/02 20060101ALI20220601BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20220601BHJP
【FI】
C08L101/00
C08F283/12
C08F283/02
C08F259/08
C08L91/00
C08L83/04
C08L67/00
C08L27/12
C08F2/44 Z
C10M105/32
C10M107/50
C10M107/38
C10M105/02
C10M107/02
C10N30:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197617
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安永 智彦
(72)【発明者】
【氏名】徳村 幸子
(72)【発明者】
【氏名】青木 貴之
【テーマコード(参考)】
4H104
4J002
4J011
4J026
【Fターム(参考)】
4H104BA01A
4H104BA07A
4H104BB31A
4H104CD01A
4H104CD04A
4H104LA03
4H104PA01
4J002AA01W
4J002AE05X
4J002BD15X
4J002BG05W
4J002BG10W
4J002CF00X
4J002CP03X
4J002FA08W
4J002GM00
4J011AA05
4J011PA26
4J011PA30
4J011PA47
4J011PA99
4J011PB40
4J011PC02
4J011PC07
4J026AA11
4J026AA26
4J026AB07
4J026AB44
4J026BA25
4J026BA27
4J026BA28
4J026BA31
4J026BB03
4J026BB04
4J026DB03
4J026DB08
4J026DB14
4J026GA08
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、摺動性を付与することができ、かつ、摺動性の長期持続性に優れる樹脂粒子、及びその用途を提供する。
【解決方法】 潤滑剤と熱可塑性樹脂を含む樹脂粒子であって、n-ヘキサンによる抽出率が0~30%である、樹脂粒子。前記熱可塑性樹脂が単量体(A)と単量体(B)から選ばれる少なくとも1つを含む重合性成分の重合体であって、前記単量体(A)が重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体であり、前記単量体(B)が重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体であると、好ましい。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤と熱可塑性樹脂を含む樹脂粒子であって、
n-ヘキサンによる抽出率が0~30%である、樹脂粒子。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が単量体(A)と単量体(B)から選ばれる少なくとも1つを含む重合性成分の重合体であって、前記単量体(A)が重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体であり、前記単量体(B)が重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体である、請求項1に記載の樹脂粒子。
【請求項3】
前記重合性成分が前記単量体(A)と前記単量体(B)を含む、請求項2に記載の樹脂粒子。
【請求項4】
前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が50~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~50重量%である、請求項3に記載の樹脂粒子。
【請求項5】
前記単量体(A)が(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基を有する単量体、ニトリル系単量体、アミド基を有する単量体、塩化ビニリデン、ビニルエステル系単量体、及びスチレン系単量体から選ばれる少なくとも1つの単量体を含む、請求項2~4のいずれかに記載の樹脂粒子。
【請求項6】
樹脂粒子全体に占める前記潤滑剤の重量割合が5~70重量%である、請求項1~5のいずれかに記載の樹脂粒子。
【請求項7】
前記潤滑剤の25℃における動粘度が10~100000mm2/sである、請求項1~6のいずれかに記載の樹脂粒子。
【請求項8】
前記潤滑剤がシリコーン系オイル、フッ素系オイル、エステル系オイル、及び炭化水素系オイルから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~7のいずれかに記載の樹脂粒子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の樹脂粒子と、基材成分を含む、組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の組成物を成形してなる、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムや樹脂は、自動車、建材、家電、OA機器等の部材として、様々な分野・用途で使用されている。部材によっては、摩擦抵抗が少なく、摺動性に優れることが求められる。
摺動性を付与する方法としては、部材に潤滑剤を直接塗布する方法、潤滑性のフィルムを部材に接着させる方法、基材と潤滑剤の混合物を成形して部材を作成する方法等があげられる。例えば、熱可塑性樹脂等の基材に、ウレタン系塗料やシリコン系塗料等を塗布して潤滑性被膜を形成する方法がある。しかし、形成される潤滑性被膜が基材と比べて硬いという問題があり、また、有機溶剤の使用制限や、多くの手間がかかる等の問題がある。
特許文献1には、摺動耐久性に優れた潤滑被膜形成用樹脂組成物として、液体潤滑剤を内包する熱硬化性樹脂からなるマイクロカプセルを含有する潤滑被膜形成用樹脂組成物が例示されている。しかし、特許文献1における方法においても、上記問題は解決できておらず、さらに、摺動性が長期間維持できない問題がある。また、熱可塑性樹脂等にシリコーンオイル等の滑剤を添加し、成形して得られる摺動部材が提案されているが、部材表面に滑剤がブリードアウトしやすく、時間経過とともに外観が損なわれ、また、繰り返し摩擦により、滑剤が除去され、摺動性が低下するという問題がある。
【0003】
特許文献2には、熱可塑性樹脂中にシリコーンオイルおよび/またはシリコーンポリマーとシリコーンパウダーとを混在させたことを特徴とする耐摩耗性熱可塑性樹脂組成物が例示されている。シリコーンパウダーを混在させることにより、シリコーンオイルがシリコーンパウダーに吸収されブリードアウトが抑制される。
また、特許文献3には、基材であるPPとEPDMにPE粒子を混練した摺動材が例示されている。PE粒子により、摺動材表面が凹凸化し、接触面を減らすため、摩擦係数や摩耗量が減少し、摺動性が良好となる。
しかし、特許文献2や特許文献3においても、十分な摺動性が得られないか、または摺動性を長期間持続できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-73609号公報
【特許文献2】特開2000-109702号公報
【特許文献3】国際公開第2016/052029号 パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、摺動性を付与することができ、かつ、摺動性の長期持続性に優れる樹脂粒子、及びその用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、潤滑剤を含む熱可塑性樹脂からなる樹脂粒子であり、特定の物性を有する樹脂粒子であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち本発明は、潤滑剤と熱可塑性樹脂を含む樹脂粒子であって、n-ヘキサンによる抽出率が0~30%である、樹脂粒子である。
【0008】
本発明の樹脂粒子は、前記熱可塑性樹脂が単量体(A)と単量体(B)から選ばれる少なくとも1つを含む重合性成分の重合体であって、前記単量体(A)が重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体であり、前記単量体(B)が重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体であると、好ましい。
本発明の樹脂粒子は、前記重合性成分が前記単量体(A)と前記単量体(B)を含むと、好ましい。
本発明の樹脂粒子は、前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が50~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~50重量%であると、好ましい。
本発明の樹脂粒子は、前記単量体(A)が(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基を有する単量体、ニトリル系単量体、アミド基を有する単量体、塩化ビニリデン、ビニルエステル系単量体、及びスチレン系単量体から選ばれる少なくとも1つの単量体を含むと、好ましい。
本発明の樹脂粒子は、樹脂粒子全体に占める前記潤滑剤の重量割合が5~70重量%であると、好ましい。
本発明の樹脂粒子は、前記潤滑剤の25℃における動粘度が10~100000mm2/sであると、好ましい。
本発明の樹脂粒子は、前記潤滑剤がシリコーン系オイル、フッ素系オイル、エステル系オイル、及び炭化水素系オイルから選ばれる少なくとも1種を含むと、好ましい。
【0009】
本発明の組成物は、上記樹脂粒子と、基材成分を含む。
本発明の成形体は、上記組成物を成形してなるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂粒子は、摺動性を付与し、摺動性の長期持続性に優れる。
本発明の組成物は、上記樹脂粒子を含んでいるため、摺動性を有し、摺動性が長期間持続し、優れた外観を有する成形体を得ることができる。
本発明の成形体は、上記組成物を成形して得られるので、摺動性を有し、摺動性が長期間持続し、優れた外観を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔樹脂粒子〕
本発明の樹脂粒子は潤滑剤と熱可塑性樹脂を含むものであり、熱可塑性樹脂に潤滑剤が担持されていればよく、細孔に潤滑剤が保持されていてもよく、独立した孔に潤滑剤が内包されていてもよい。摺動性の長期持続性の効果を高める点で、熱可塑性樹脂内部に1つ以上の独立した孔を有する構造であると好ましく、その内部の孔に潤滑剤を含む樹脂粒子であると好ましい。特に、潤滑剤を含む内包物をコアとし、熱可塑性樹脂のシェルからなるコアシェル構造を有する樹脂粒子であると、摺動性の長期持続性が高く、好ましい。
【0012】
本発明の樹脂粒子は、n-ヘキサンによる抽出率が0~30%である。n-ヘキサンによる抽出率が0~30%である樹脂粒子であると、摺動性を付与し、摺動性の長期持続性に優れる。抽出率が30%超であると、摺動性の長期持続性が劣る。抽出率の上限は、(1)25%、(2)20%、(3)15%、(4)10%、(5)8%、(6)6%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。なお、本発明のn-ヘキサンによる抽出率は、実施例に記載の方法で測定されたものを意味する。
【0013】
本発明の樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂は、単量体(A)と単量体(B)から選ばれる少なくとも1つを含む重合性成分の重合体であって、単量体(A)が重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体であり、単量体(B)が重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体であると、好ましい。
【0014】
単量体(A)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-クロルエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を有する単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基を有する単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリル、α-エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等のアクリルアミド系単量体や、N-フェニルマレイミド、N-(2-クロロフェニル)マレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ラウリルマレイミド等のマレイミド系単量体等のアミド結合を有する単量体;塩化ビニリデン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単量体;塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等の不飽和モノオレフイン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニル-2-エチルヘキシルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、ビニル-4-ヒドロキシブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン系単量体;N-ビニルピロール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドン等のN-ビニル系単量体、ビニルナフタリン塩等が挙げられる。カルボキシル基を有する単量体については、一部または全部のカルボキシル基が重合時に中和されていてもよい。なお本発明では、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。上記単量体(A)は、1種または2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基を有する単量体、ニトリル系単量体、アミド基を有する単量体、塩化ビニリデン、ビニルエステル系単量体、及びスチレン系単量体から選ばれる少なくとも1つの単量体を含むと、樹脂微粒子の強度が向上する点で好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステルを含むと、樹脂微粒子が基材中での分散性に優れるため、好ましい。
【0015】
単量体(B)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物、ブタジエン等が挙げられる。上記単量体(B)は、1種または2種以上を併用してもよい。また上記で、「PEG#○○○ジ(メタ)アクリレート」と表記されている一連の化合物は、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートで、そのポリエチレングリコール部分の平均分子量が○○○であることを意味する。
【0016】
熱可塑性樹脂のTg(Glass Transition Temperatures)は、特に限定はないが、好ましくは-50℃~250℃である。熱可塑性樹脂のTgはPOLYMER HANDBOOK等に記載されており、また単量体成分が2種以上から構成されている重合体の場合は、構成成分比から計算することができる。熱可塑性樹脂のTgの上限は、(1)220℃、(2)200℃、(3)170℃、(4)150℃、(5)130℃、の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。一方、熱可塑性樹脂のTgの下限は、(1)-30℃、(2)-10℃、(3)0℃、(4)30℃、(5)50℃、(6)100℃の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。
【0017】
熱可塑性樹脂が単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体であると、樹脂粒子の強度や耐熱性が向上し、好ましい。強度や耐熱性が向上することで、特に成形加工時の樹脂粒子の潰れによる潤滑剤の漏出が抑制でき、好ましい。
【0018】
重合性成分に占める単量体(A)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは50~100重量%である。単量体(A)の重量割合が50重量%未満であると、樹脂粒子から潤滑剤が放出しにくくなることがある。単量体(A)の重量割合の上限は、(1)99.999重量%、(2)99.99重量%、(3)99.9重量%、(4)99.7重量%、(5)99.5重量%、(6)99重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。単量体(A)の重量割合の下限は、(1)60重量%、(2)70重量%、(3)80重量%、(4)85重量%、(5)90重量%、(6)93重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。
【0019】
重合性成分に占める単量体(B)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは0~50重量%である。単量体(B)の重量割合が50重量%超であると、樹脂粒子から潤滑剤が放出しにくくなることがある。単量体(B)の重量割合の上限は、(1)40重量%、(2)30重量%、(3)20重量%、(4)15重量%、(5)10重量%、(6)7重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。単量体(B)の重量割合の下限は、(1)0.001重量%、(2)0.01重量%、(3)0.1重量%、(4)0.3重量%、(5)0.5重量%、(6)1重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。
【0020】
本発明の樹脂粒子に含まれる潤滑剤は、樹脂粒子から放出されることで摺動性を付与することができる成分である。
潤滑剤としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、変性シリコーンオイル等のシリコーン系オイル;フルオロエチレン、3フッ素塩化エチレン、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロポリアルキルエーテル等のフッ素系オイル;ジブチルセバケート、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジイソトリデシルアジペート、ジトリデシルグルタレート、メチルアセチルリシノレート等のジエステルオイル、トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート、一塩基酸及び二塩基酸の混合脂肪酸と多価アルコールとのオリゴエステルであるコンプレックスエステルオイル等のエステル系オイル;ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1-デセンオリゴマー、1-デセンとエチレンとのコオリゴマー、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、ポリアルキルベンゼン、モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等の炭化水素系オイル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテル、モノアルキルトリフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル等のエーテル系オイル;グラファイト;二硫化モリブデン(MoS2);二硫化タングステン(WS2);窒化ホウ素(BN);ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
また潤滑剤としては、上記オイルと増ちょう剤を含んだグリースを用いてもよい。増ちょう剤は、例えば、石鹸、ウレア、ナトリウムテレフタラート、有機ベントナイト、シリカゲル等の一般的なものが挙げられる。上記潤滑剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0021】
潤滑剤は、シリコーン系オイル、フッ素系オイル、エステル系オイル、炭化水素系オイル、及びエーテル系オイルから選ばれる少なくとも1種を含むと、摺動性を長期間持続できる点で好ましい。
シリコーン系オイル、フッ素系オイル、エステル系オイル、炭化水素系オイル、及びエーテル系オイルから選ばれる少なくとも1種を含む場合、それらの重量割合の合計は潤滑剤全体に対して、特に限定はないが、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上、特に好ましくは40重量%以上、最も好ましくは50重量%以上であり、上限は100重量%である。
【0022】
潤滑剤の25℃における動粘度は、特に限定はないが、好ましくは10~100000mm2/sである。潤滑剤の動粘度が10mm2/s未満であると、潤滑剤が漏出しやすく、長期持続性に劣ることがある。一方、潤滑剤の動粘度が100000mm2/s超であると、樹脂粒子から潤滑剤が放出されるために強い外力が必要となり、十分な摺動性が得られないことがある。潤滑剤の動粘度の上限は、(1)50000mm2/s、(2)25000mm2/s、(3)10000mm2/s、(4)5000mm2/sの順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。一方、潤滑剤の動粘度の下限は、(1)50mm2/s、(2)100mm2/s、(3)200mm2/s、(4)500mm2/s、(5)700mm2/s、(6)1000mm2/sの順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。動粘度の異なる2種類以上の潤滑剤を併用してもよく、併用した際の動粘度が上記範囲であると好ましい。なお潤滑剤の25℃における動粘度は、例えば、ウベローデ粘度計を用いて測定することができる。
【0023】
樹脂粒子全体に占める潤滑剤の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5~70重量%である。潤滑剤の重量割合が5重量%未満であると、十分な摺動性を付与できないことがある。一方、潤滑剤の重量割合が70重量%超であると、摺動性の長期持続性が劣ることがある。潤滑剤の重量割合の上限は、(1)60重量%、(2)55重量%、(3)50重量%、(4)45重量%、(5)40重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。一方、潤滑剤の重量割合の下限は、(1)10重量%、(2)13重量%、(3)15重量%、(4)18重量%、(5)20重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。
【0024】
本発明の樹脂粒子は潤滑剤以外に、低温で気化する成分(以下、気化成分ということがある)を含んでいてもよい。気化成分を含むことで、より効率的に潤滑剤を放出できる点で、好ましい。
気化成分としては、例えば、プロパン、(イソ)ブタン、(イソ)ペンタン、(イソ)ヘキサン、(イソ)ヘプタン、(イソ)オクタン等の炭化水素;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の炭化水素のハロゲン化物;アゾジカルボンアミド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等の加熱により熱分解してガスを生成する化合物等が挙げられる。
【0025】
気化成分の沸点は、特に限定はないが、好ましくは-30~150℃である。気化成分の沸点の上限は、より好ましくは130℃、さらに好ましくは110℃、特に好ましくは100℃、最も好ましくは80℃である。一方、気化成分の沸点の下限は、より好ましくは-15℃、さらに好ましくは-5℃、特に好ましくは0℃、最も好ましくは5℃である。
気化成分の重量割合は、特に限定はないが、潤滑剤100重量部に対して、好ましくは0~400重量部である。重量割合の上限は、より好ましくは300重量部、さらに好ましくは200重量部、特に好ましくは100重量部である。重量割合の下限は、より好ましくは、1重量部、さらに好ましくは5重量部、特に好ましくは10重量部である。
【0026】
樹脂粒子全体に占める潤滑剤を含む内包物の重量割合(以下、内包率ということもある)は、特に限定はないが、好ましくは5~80重量%である。内包率が5重量%未満であると、十分な摺動性を付与できないことがある。一方、内包率が80重量%超である、摺動性の長期持続性が劣ることがある。内包率の上限は、(1)70重量%、(2)60重量%、(3)55重量%、(4)50重量%、(5)45重量%、(6)40重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。一方、内包率の下限は、(1)10重量%、(2)13重量%、(3)15重量%、(4)18重量%、(5)20重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。
【0027】
本発明の樹脂粒子の平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは0.1~200μmである。樹脂粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、十分な摺動性を付与できないことがある。一方、樹脂粒子の平均粒子径が200μm超であると、摺動性の長期持続性が劣ることがある。樹脂粒子の平均粒子径の上限は、(1)150μm、(2)120μm、(3)100μm、(4)75μm、(5)60μm、(6)50μm、(7)45μmの順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。一方、樹脂粒子の平均粒子径の下限は、(1)0.5μm、(2)1μm、(3)3μm、(4)5μm、(5)10μmの順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。なお、本発明の樹脂粒子の平均粒子径は、実施例に記載の方法で測定されたものを意味する。
【0028】
〔樹脂粒子の製造方法〕
本発明の樹脂粒子について、製造方法としては、特に制限はなく、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、液中乾燥法、スプレードライ法等により製造することができる。
中でも、重合性単量体と潤滑剤を混合して、水性分散媒体中で懸濁重合して樹脂粒子を得る方法が特に好ましい。
【0029】
本発明の樹脂粒子について、その製造方法としては、水性分散媒体中に、(ラジカル)重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体(A)と(ラジカル)重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体(B)から選ばれる少なくとも1つを含む重合性成分と、潤滑剤を含む油性混合物を分散させて、重合性成分を重合させる工程(重合工程)を含む方法であると、好ましい。油性混合物は、重合性成分と潤滑剤以外に、重合体を含んでいてもよく、気化成分を含んでいてもよい。
【0030】
重合工程では、重合性成分を重合開始剤の存在下で重合させることが好ましい。重合開始剤は、重合性成分や潤滑剤とともに油性混合物に含まれると好ましい。
重合開始剤としては、例えば、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド等の過酸化物;アゾニトリル、アゾエステル、アゾアミド、アゾアルキル、高分子アゾ開始剤等のアゾ化合物;レドックス開始剤等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種または2種以上を併用してもよい。なお重合開始剤としては、重合性成分に対して可溶な油溶性の重合開始剤が好ましい。
使用する重合開始剤の量は、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.05~10重量部、より好ましくは0.1~8重量部、さらに好ましくは0.2~5重量部である。
【0031】
水性分散媒体は、例えば、水(イオン交換水)に、必要に応じて、分散安定剤、分散安定補助剤、重合助剤、電解質等を配合して調製される。
本発明の樹脂粒子について、その製造方法としては、液滴を安定させ、粒子径を制御するために、分散安定剤を添加することが好ましい。分散安定剤は、特に制限されず、有機系分散安定剤、無機系分散安定剤が好ましい。有機系分散安定剤としては、微粒子安定剤や水溶性高分子、ナノセルロース等が挙げられる。微粒子安定剤としては、例えば、ピッカリングエマルションに用いられているものが挙げられる。水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸等が挙げられる。無機系分散安定剤としては、例えば、粘土鉱物、第三リン酸カルシウム、複分解生成法により得られるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウムや、コロイダルシリカ、アルミナゾル、水酸化マグネシウム等の無機化合物が挙げられる。
これらの分散安定剤は、1種または2種以上を併用してもよい。使用する分散安定剤の量は、油溶性性成分100重量部に対して、好ましくは0.05~100重量部、さらに好ましくは0.2~70重量部である。
【0032】
液滴の安定性および粒子径の制御のために、さらに分散安定補助剤を併用してもよい。分散安定補助剤としては、高分子タイプの分散安定補助剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤が挙げられる。これらの分散安定補助剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0033】
水性分散媒体は、電解質を含有してもよい。電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。これらの電解質は、1種または2種以上を併用してもよい。
電解質の含有量は、特に限定はないが、水性分散媒体100重量部に対して、好ましくは0.1~50重量部である。
【0034】
水性分散媒体は、重合助剤を含有してもよい。重合助剤を使用することで、樹脂粒子の凝集や重合反応器内のスケール発生を抑制することができる。
重合助剤としては、例えば、亜硝酸塩、亜硫酸ナトリウム、塩化銅、塩化鉄、重クロム酸塩、塩化第二スズ、ヒドロキノン、エチレンジアミン四酢酸塩、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類等が挙げられる。これらの重合助剤は1種または2種以上を併用してもよい。
【0035】
重合工程では、所定粒子径の球状油滴が調製されるように油性混合物を水性分散媒体中に分散させる。油性混合物を分散させる方法としては、例えば、ホモミキサー(例えば、プライミクス社製)等により攪拌する方法や、スタティックミキサー(例えば、株式会社ノリタケエンジニアリング社製)等の静止型分散装置を用いる方法、膜懸濁法、超音波分散法等の一般的な分散方法が挙げられる。
次いで、油性混合物が球状油滴として水性分散体媒に分散された分散液を加熱することにより、重合を開始する。重合反応中は、分散液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、例えば、油性混合物や重合後の樹脂粒子の浮上や沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
【0036】
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは30~100℃、より好ましくは40~90℃の範囲で制御されるとよい。反応温度を保持する時間は、1~20時間程度が好ましい。重合初期圧力については、特に限定はないが、ゲージ圧で好ましくは0~5MPa、より好ましくは0.02~3MPaの範囲であるとよい。
【0037】
本発明の樹脂粒子は、スラリーの状態でもよく、湿粉の状態でもよく、乾燥した粉末の状態でもよい。本発明の樹脂粒子が湿粉の状態のものである場合、例えば、上記製造方法によって得られた樹脂粒子を含有するスラリーを遠心分離機、加圧プレス機、真空脱水機等を用いて脱水し、得ることができる。このような湿粉の含水率は、特に限定はないが、通常10~50重量%、好ましくは15~45重量%、より好ましくは20~40重量%である。
また、上記で得られた湿粉を、棚型乾燥機、間接加熱乾燥機、流動乾燥機、真空乾燥機、振動乾燥機、気流乾燥機等により乾燥し、乾燥粉体とすることができる。また、スラリーを噴霧乾燥機、流動乾燥機等により乾燥し、乾燥粉体を得てもよい。
【0038】
〔組成物〕
本発明の組成物は上記樹脂粒子と基材成分を含むものであり、摺動性を有し、摺動性が長期間持続し、且つ優れた外観を有する成形体を得ることができる。
基材成分としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ポリエーテルゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等のゴム類;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミドイミド等の熱硬化性樹脂;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)、変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、変性ポリプロピレン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、(メタ)アクリレート・スチレン共重合体、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66等)、変性ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂;エチレン系アイオノマー、ウレタン系アイオノマー、スチレン系アイオノマー、フッ素系アイオノマー等のアイオノマー樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ポリ乳酸(PLA)、酢酸セルロース、PBS、PHA、澱粉樹脂等のバイオプラスチック等が挙げられる。これらの基材成分は、1または2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物は、樹脂粒子と基材成分以外に、用途に応じて、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、充填剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤等の添加剤、溶剤、潤滑剤、本発明の樹脂粒子以外の樹脂粒子、有機粉末、無機粉末等を含んでいてもよい。
【0039】
本発明の組成物に含まれる樹脂粒子の量は、特に限定はないが、基材成分100重量部に対して、好ましくは0.1~400重量部である。樹脂粒子の含有量の下限は、より好ましくは0.3重量部、さらに好ましくは0.5重量部、特に好ましくは1重量部である。樹脂粒子の含有量の上限は、より好ましくは250重量部、さらに好ましくは150重量部、特に好ましくは100重量部である。
樹脂粒子の含有量が上記範囲内であると、十分な摺動性を有し、摺動性の長期持続性に優れる成形体を得ることができるため好ましい。
【0040】
組成物は、例えば、樹脂粒子と基材成分および必要に応じて各種添加剤を混合することで得られる。また、樹脂粒子と基材成分を含む組成物(マスターバッチ)を作成した後、さらに基材成分と混合して組成物とすることもできる。
混合方法としては、例えば、混合攪拌機、ミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンミキサー、リボンブレンダー、ニーダー、ロール、ミキシングロール、単軸混練機、二軸混練機、多軸混練機等により混合することができる。
【0041】
本発明の成形体は、上記組成物を成形してなるものである。
成形方法としては、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の違いにより、押出成形法、射出成形法、真空成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、トランスファー成形法、RIM成形、注型成形法、等の、広く一般的に用いられている成形方法を採用することができる。
本発明の成形体に含まれる樹脂粒子の量は、特に限定はないが、基材成分100重量部に対して、好ましくは0.1~20重量部、より好ましくは0.3~15重量部、さらに好ましくは0.5~10重量部、特に好ましくは1~8重量部である。
【0042】
本発明の成形体は、優れた摺動性を有するため、自動車分野、建材分野、OA機器分野、家電、電子機器分野等の様々な部材として、工業的に広く利用することができる。中でも、車両用シール材や建築用シール材として好適に用いることができる。
【実施例0043】
以下に、本発明の樹脂粒子の実施例について、具体的に説明する。なお本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における物性の測定方法、評価項目と評価方法は以下に示す通りである。以下では、「%」および「部」は、それぞれ「重量%」および「重量部」ということがある。
【0044】
<樹脂粒子の平均粒子径>
レーザー回折散乱式粒度分析計(Microtrac ASVR、日機装株式会社製)を用いて測定し、その体積基準の累積50%粒子径(D50)を平均粒子径とした。
【0045】
<樹脂粒子全体に占める内包物の重量割合(内包率)>
乾燥した樹脂粒子1.0gを直径80mm、深さ15mmのステンレス製蒸発皿に入れ、その重量を測定した(W1(g))。アセトニトリル30mLを加え均一に分散させ、24時間室温で放置して浸漬させた後に、130℃で2時間減圧乾燥し、その重量を測定した(W2(g))。減圧乾燥後の試料をn-ヘキサン30mLで3回洗浄後、100℃で10分乾燥し、その重量を測定した(W3(g))。
また、カールフィッシャー水分計(MKA-510N型、京都電子工業株式会社製)を用いて乾燥した樹脂粒子の含水率を測定し、Cw(重量%)とした。
上記W1、W3、Cwより、樹脂粒子全体に占める内包物の重量割合(内包率)(C(重量%))を下記式(1)から算出した。
C=100×[(W1―W3)-CW/100]/(1.0-CW/100) (1)
【0046】
<n-ヘキサンによる抽出率>
乾燥した樹脂粒子1.0gにn-ヘキサン30mLを加えて25℃で5分間振盪して均一分散させて浸漬させた後に、濾過を行い樹脂粒子とn-ヘキサン抽出液を分離した。濾過後の樹脂粒子について同様の操作を2回行った。得られた樹脂粒子を100℃で10分間乾燥し、その重量を測定した(W4(g))。
上記CW,W4より、n-ヘキサンへの浸漬による重量減量率(E(重量%))を下記式(2)から算出した。
E=100×(1.0-W4-CW/100)/(1.0-CW/100) (2)
n-ヘキサンによる抽出率(CE(%))について、内包率(C(重量%))、n-ヘキサンへの浸漬による重量減量率(E(重量%))より、下記式(3)から算出した。
CE=100×E/C (3)
【0047】
<摺動性付与評価>
得られた樹脂粒子3部とミラストマー8032BS(三井化学株式会社製、熱可塑性オレフィン系エラストマー)97部を混合し、組成物を得た。
次に、ラボプラストミル(2軸押出成形機ME-25、東洋精機工業株式会社製)およびTダイ(リップ幅150mm、厚み0.7mm)を用いて、押出成形機およびTダイの設定温度(成形温度)を180℃に設定し、スクリュー回転数を50rpmに設定した。
得られた組成物をラボプラストミルの原料ホッパーから投入し、成形体であるシートを作成した。作成したシートの動摩擦係数を、摩擦測定器(FRICTION TESTER TR-2、東洋精機工業株式会社製)を用いて測定速度100mm/分で測定し、以下の基準より樹脂粒子の摺動性付与評価を行った。
なお、樹脂粒子を配合しないシートの動摩擦係数は0.92であった。
○○○:動摩擦係数が0.5未満で、摺動性付与効果に優れる。
○○:動摩擦係数が0.5以上0.65未満で、摺動性付与効果が良い。
○:動摩擦係数が0.65以上0.8未満で、摺動性付与効果がやや良い。
×:動摩擦係数が0.8以上で、摺動性付与効果に劣る。
【0048】
<摺動性持続評価1>
上記摺動性付与評価にて評価したシートの表面を、上記摺動性付与評価にて使用した摩擦測定器にて、測定速度100mm/分における動摩擦係数が0.85~0.95になるまで乾布で拭取り、40℃で1ヶ月間保管した。保管後のシートの動摩擦係数を上記摺動性付与評価にて使用した摩擦測定器により、測定速度100mm/分で測定し、以下の基準より樹脂粒子の摺動性持続評価(摺動性持続評価1)を行った。
○○:動摩擦係数が0.4未満で、摺動性持続効果に優れる。
○:動摩擦係数が0.4以上0.6未満で、摺動性持続効果にやや優れる。
△:動摩擦係数が0.6以上0.8未満で、摺動性持続効果にやや劣る。
×:動摩擦係数が0.8以上で、摺動性持続効果に劣る。
【0049】
<摺動性持続評価2>
上記摺動性持続評価1にて評価したシートの表面を、上記摺動性付与評価にて使用した摩擦測定器にて、測定速度100mm/分における動摩擦係数が0.85~0.95になるまで乾布で拭取り、40℃で1ヶ月間保管した。保管後のシートの動摩擦係数を上記摺動性付与評価にて使用した摩擦測定器により、測定速度100mm/分で測定し、以下の基準より樹脂粒子の摺動性持続評価(摺動性持続評価2)を行った。
○○:動摩擦係数が0.4未満で、摺動性持続効果に優れる。
○:動摩擦係数が0.4以上0.6未満で、摺動性持続効果にやや優れる。
△:動摩擦係数が0.6以上0.8未満で、摺動性持続効果にやや劣る。
×:動摩擦係数が0.8以上で、摺動性持続効果に劣る。
【0050】
<樹脂粒子の分散性評価>
作成したシートの状態を目視で確認し、樹脂粒子の分散性を以下の基準より評価した。○:樹脂粒子が凝集して視認できる粒子塊が確認されない。
×:樹脂粒子が凝集して視認できる粒子塊が多く確認される。
【0051】
<成形体の外観評価>
作成したシートを40℃で2ヶ月保管後、シート表面を目視で確認し、成形体の外観を以下の基準より評価した。なお、ブランクとは、添加剤を加えず、ミラストマー8032BSのみを成形したシートである。
○:ブランクの外観と差がなく、外観に優れる。
△:テカリや液体による濡れが確認され、外観にやや劣る。
×:白化などの色目の変化が確認され、外観に劣る。
【0052】
(実施例1)
メタクリル酸メチル140部、ジメタクリル酸エチレングリコール2部、ジラウロリルパーオキサイド1.5部、ジメチルポリシロキサン(シリコーンKF-96-100cs、信越化学工業株式会社製、25℃における動粘度100mm2/s)63部を混合し、油性混合物を調製した。
これとは別に、イオン交換水550部、塩化ナトリウム110部、ポリビニルピロリドン0.8部、有効成分20重量%であるコロイダルシリカ60部を加え、pH2~4に調整し、水性分散媒を調製した。
水性分散媒と油性混合物を混合し、得られた混合液をホモミキサーで攪拌し、懸濁液を調製した。この懸濁液を窒素ガスで0.3MPaに加圧した重合容器内で、70℃で6時間重合させた。
重合後に得られた生成物から樹脂粒子をろ過、乾燥して、樹脂粒子を製造した。製造した樹脂粒子の物性の測定と、樹脂粒子の評価を上記に示す方法にて実施した。結果を表1、3に示す。
【0053】
(実施例2~13)
油性混合物を表1~2に示すものに変更すること以外は実施例1と同様にして樹脂粒子をそれぞれ得た。得られた樹脂粒子の物性の測定及び評価を実施例1と同様に行った。結果を表1~4に示す。なお実施例11にて使用した潤滑剤の25℃における動粘度は400mm2/sであった。
【0054】
【0055】
【0056】
表1~2に記載の使用原料の略号の詳細を以下に示す。
EDMA:ジメタクリル酸エチレングリコール
TMP:トリメチロールプロパントリメタクリレート
1,9ND-A:1,9-ノナンジオールジアクリレート
KF-96-100cs:シリコーンKF-96-100cs、ジメチルポリシロキサン、信越化学工業株式会社製、25℃における動粘度が100mm2/s
KF-96-1000cs:シリコーンKF-96-1000cs、ジメチルポリシロキサン、信越化学工業株式会社製、25℃における動粘度が1000mm2/s
KF-96H-1万cs:シリコーンKF-96H-1万cs、ジメチルポリシロキサン、信越化学工業株式会社製、25℃における動粘度が10000mm2/s
KF-96H-10万cs:シリコーンKF-96H-10万cs、ジメチルポリシロキサン、信越化学工業株式会社製、25℃における動粘度が100000mm2/s
フッ素オイル:1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、
エステルオイル:ジイソトリデシルアジペート、25℃における動粘度が250mm2/s
なお上記略号は以下の記載においても、それぞれの原料を示す。
【0057】
(実施例14)
ミラストマー8032BSを85部と実施例1で得られた樹脂粒子15部を二軸混練機にて混練し、ペレット状に裁断して、マスターバッチを作成した。次に、ミラストマー8032BSを80部と作成したマスターバッチ20部を混合し、混合物を得た。得られた混合物を使用して、上記摺動性付与評価に記載された方法と同様にして成形し、シートを作成した。作成したシートの摺動性付与評価、摺動性持続評価1、摺動性持続評価2及び成形体の外観評価と、樹脂粒子の分散性評価を実施例1と同様にして行った。結果を表4に示す。
【0058】
(比較例1、2)
油性混合物を表2に示すものに変更すること以外は実施例1と同様にして樹脂粒子をそれぞれ得た。得られた樹脂粒子の物性の測定及び評価を実施例1と同様に行った。結果を表4に示す。
【0059】
(比較例3)
ポリエチレン無水マレイン酸3.5gをイオン交換水50gに溶解した後、pHを約4に調整し、水性混合液を得た。この水性混合液にジメチルポリシロキサン(KF-96-1000cs)35gを加え、攪拌し、乳化液を調整した。この乳化液に、pH12に調整したメラミン6g、37%ホルムアルデヒド水溶液11gの混合溶液を添加し、pHを約4に調整した。80℃で3時間界面重合を実施し、重合後に得られた生成物から樹脂粒子をろ過、乾燥して、樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子の平均粒子径は8μmであった。
得られた樹脂粒子を使用して、上記摺動性付与評価に記載された方法と同様にして成形し、シートを作成した。作成したシートの摺動性付与評価、摺動性持続評価1、摺動性持続評価2及び成形体の外観評価と、樹脂粒子の分散性評価を実施例1と同様にして行った。結果を表4に示す。
【0060】
(比較例4)
99部のミラストマー8032BSと、1部のKF-96-100csを混合して、混合物を得た。得られた混合物を使用して、上記摺動性付与評価に記載された方法と同様にして成形し、シートを作成した。作成したシートの摺動性付与評価、摺動性持続評価1、摺動性持続評価2及び成形体の外観評価を実施例1と同様にして行った。結果を表4に示す。
【0061】
【0062】
【0063】
表3~4より、本発明における樹脂粒子は、摺動性を付与し、摺動性の長期持続性に優れる。さらに成形体中の分散性にも優れる。
一方、潤滑剤を含有していない比較例1では、十分な摺動性が得られない。また、n-ヘキサンによる抽出率が30%超の樹脂粒子である比較例2、熱硬化性樹脂からなる潤滑剤内包粒子である比較例3では、初期の摺動性には優れているものの、長期持続性は十分ではない。
【0064】
本発明によれば、摺動性を付与し、摺動性の長期持続性に優れ、さらには成形体中の分散性にも優れる樹脂粒子が提供される。
本発明による成形体は、摺動性を有し、摺動性が長期間持続し、優れた外観を有する。