(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085767
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】発泡性顆粒、発泡性錠剤、発泡性顆粒の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/16 20060101AFI20220601BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220601BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220601BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220601BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220601BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220601BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20220601BHJP
A23K 40/10 20160101ALI20220601BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/22
A61K47/02
A61K47/12
A23L5/00 D
A23L5/00 A
A23K40/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197627
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】足立 知基
【テーマコード(参考)】
2B150
4B035
4C076
【Fターム(参考)】
2B150AE02
2B150AE11
2B150AE48
2B150DA08
4B035LC05
4B035LE01
4B035LG01
4B035LG04
4B035LG06
4B035LG07
4B035LG19
4B035LG26
4B035LP36
4C076AA31
4C076AA48
4C076DD25V
4C076DD29
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD43V
4C076DD59Q
4C076EE32
4C076FF36
4C076GG12
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、保存安定性が改善された発泡性顆粒又は発泡性錠剤を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、発泡成分、セルロース誘導体、及びカテキン類を含有することを特徴とする、発泡性顆粒を提供する。また、この発泡性顆粒及び発泡助剤を含有することを特徴とする、発泡性錠剤を提供する。これにより、保存安定性が改善された発泡性顆粒又は発泡性錠剤を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成分、セルロース誘導体、及びカテキン類を含有することを特徴とする、発泡性顆粒。
【請求項2】
さらに、脂質成分を含有することを特徴とする、発泡性顆粒。
【請求項3】
さらに、賦形剤を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の発泡性顆粒。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡性顆粒及び発泡助剤を含有することを特徴とする、発泡性錠剤。
【請求項5】
発泡成分、セルロース誘導体、及びカテキン類を含有する発泡性顆粒の製造方法であって、
工程(i)前記発泡成分を含有する粉末組成物を準備する工程、
工程(ii)前記セルロース誘導体を含有するセルロース誘導体含有溶液を準備する工程、
工程(iii)前記粉末組成物に、前記セルロース誘導体含有溶液を添加して造粒する工程、を有し、
前記カテキン類は、前記粉末組成物及び/又は前記セルロース誘導体含有溶液に添加することを特徴とする、発泡性顆粒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性顆粒、発泡性錠剤、及び発泡性顆粒の製造方法に関する。具体的には、保存中の炭酸ガスの発生が抑制された発泡性顆粒、発泡性錠剤、及び発泡性顆粒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小児、高齢者、嚥下困難な患者など固形物の飲み込みが困難な消費者や患者において、医薬品の服用や食品の摂取がし易い剤形として、口腔内の水分により速やかに崩壊するものが適している。また、このような水なしでも服用、摂取できる口腔内速崩壊性の剤形は、健常人においても好まれている。
【0003】
固形物の崩壊性を高める成分としては、発泡成分である炭酸塩、炭酸水素塩、及び発泡助剤である有機酸が混合された発泡性組成物が用いられる。発泡性組成物は、水分の存在下で炭酸塩、炭酸水素塩と有機酸が反応して炭酸ガスを発生させる。発泡性組成物を含有する固形物は、発泡成分及び発泡助剤の発泡作用により崩壊させることができる。
しかしながら、発泡性組成物は、空気中の水分と反応して発泡するなど保存安定性に問題がある。そこで、保存安定性に優れた発泡性組成物が検討されている。保存安定性に優れた発泡性組成物として、例えば、特許文献1には、粉末状態の重炭酸塩含有物と酸含有物の少なくとも一方の粉末表面が被覆材で被覆されているか、又は重炭酸塩含有物と酸含有物の一方のみが粉末状態であって、その表面が被覆材で被覆されている発泡食品材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発泡食品材は、保存安定性がある程度は改善されているものの、保存安定性が十分とはいえない。そして、このような十分な保存安定性を有しない発泡物質を包材に密封して保存した場合、保存中に発泡物質から炭酸ガスが発生することにより包材が膨張するという問題がある。また、錠剤化した場合には、発泡成分と発泡助剤の接触が促進されるため、より保存安定性が低下する。
本発明の課題は、保存安定性が改善された発泡性顆粒又は発泡性錠剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、発泡成分を含有する発泡性顆粒にカテキン類を添加することにより、保存中の炭酸ガスの発生を顕著に抑制し得るという知見に至り、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]を提供する。
[1]発泡成分、セルロース誘導体、及びカテキン類を含有することを特徴とする、発泡性顆粒。
発泡成分を含有する発泡性顆粒にカテキン類を添加することにより、保存中の炭酸ガスの発生を抑制することができる。
[2]さらに、脂質成分を含有することを特徴とする、[1]に記載の発泡性顆粒。
発泡性顆粒に、さらに脂質成分を含有することにより、保存安定性をより向上することができる。
[3]さらに、賦形剤を含有することを特徴とする、[1]又は[2]に記載の発泡性顆粒。
発泡性顆粒に、さらに賦形剤を含有することにより、保存安定性をより向上することができる。
[4][1]~[3]のいずれかに記載の発泡性顆粒及び発泡助剤を含有することを特徴とする、発泡性錠剤。
発泡性顆粒と、発泡性顆粒から独立した発泡助剤を含有する錠剤とすることで、発泡助剤を含有するにもかかわらず、高い保存安定性を有する発泡性錠剤を得ることができる。
[5]発泡成分、セルロース誘導体、及びカテキン類を含有する発泡性顆粒の製造方法であって、
工程(i)前記発泡成分を含有する粉末組成物を準備する工程、
工程(ii)前記セルロース誘導体を含有するセルロース誘導体含有溶液を準備する工程、
工程(iii)前記粉末組成物に、前記セルロース誘導体含有溶液を添加して造粒する工程、を有し、
前記カテキン類は、前記粉末組成物及び/又は前記セルロース誘導体含有溶液に添加することを特徴とする、発泡性顆粒の製造方法。
本発明の発泡性顆粒の製造方法によれば、保存安定性に優れた発泡性顆粒を製造することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、保存安定性が改善された発泡性顆粒又は発泡性錠剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る発泡性顆粒、発泡性錠剤、発泡性顆粒の製造方法の実施形態を詳細に説明する。
なお、実施形態に記載する発泡性顆粒、発泡性錠剤、発泡性顆粒の製造方法については、本発明を説明するために例示したに過ぎず、これに制限されるものではない。
【0010】
[発泡性顆粒]
本発明の発泡性顆粒は、発泡成分、セルロース誘導体、及びカテキン類を含有するものである。本発明の発泡性顆粒においては、セルロース重合体とカテキン類が重合反応を起こす際に水分が消費されるため、発泡性顆粒内部の水分量が減少し、その結果、保存中の発泡成分の発泡が顕著に抑制される。そのため、保存安定性に優れた発泡性顆粒を提供することができる。本発明の発泡性顆粒を、密閉された包材中に保存した場合、炭酸ガスの発生が顕著に抑制されるため包材の膨張が顕著に抑制される。
また、本発明の発泡性顆粒は、セルロース誘導体とカテキン類の重合体の膜が発泡成分の周囲に形成されていることが好ましい。本発明の発泡性顆粒は、造粒により製造されることにより、上記のセルロース誘導体とカテキン類の重合体が、発泡成分の周囲に膜状の被覆膜を形成する。そのため、発泡成分と水分又は発泡助剤との反応がさらに抑制される。
なお、発泡性顆粒は、水分を実質的に含まない。なお、「実質的に含まない」とは、例えば、5質量%未満である。
【0011】
また、本発明の発泡性顆粒は、発泡助剤を実質的に含まないことが好ましい。なお、「実質的に含まない」とは、例えば、5質量%未満である。より好ましくは、3質量%未満であり、さらに好ましくは1質量%未満である。なお、発泡助剤は、発泡成分と反応して炭酸ガスを発生するものであり、例えば、炭素数2~6の有機酸などが挙げられる。
【0012】
まず、発泡性顆粒を構成する各成分について、詳細に説明する。なお、各成分の含有量について、特に断りがない場合は発泡性顆粒における含有量を示す。
【0013】
(発泡成分)
発泡成分は、水の存在下で発泡助剤などの酸と反応して炭酸ガスを発生するものであり、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではない。発泡成分としては、例えば、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、炭酸アンモニウムなどが挙げられる。
発泡成分の具体例としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウムなどが挙げられる。好ましい発泡成分としては、汎用性の観点から、炭酸水素ナトリウムである。また、これらの発泡成分は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0014】
発泡成分の含有量は、特に制限されるものではない。発泡成分の含有量としては、例えば、20質量%以上80質量%以下である。下限値としては、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。一方、上限値としては、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。
発泡成分の含有量を上記範囲とすることで、発泡性組成物の発泡性を向上することができる。
【0015】
(セルロース誘導体)
セルロース誘導体は、多数のβ-グルコースがグリコシド結合により直鎖状に重合した構造を有する高分子化合物であるセルロースの誘導体であり、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容され、顆粒の造粒の際に用いられる溶媒に溶解するものであれば、特に制限されるものではない。セルロース誘導体としては、例えば、セルロース誘導体及びそれらの塩などが挙げられる。
セルロース誘導体の具体例としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース酢酸エステルコハク酸エステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸エステルなどのヒドロキシアルキルセルロース;メチルセルロース、エチルセルロースなどのアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスカルメロースなどのカルボキシアルキルセルロースなどが挙げられる。
好ましいセルロース誘導体としては、発泡性顆粒の保存安定性、製剤化における成形性の向上の観点から、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。また、これらのセルロース類は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0016】
セルロース誘導体の含有量は、特に制限されるものではない。セルロース誘導体の含有量としては、例えば、0.001質量%以上10.0質量%以下である。下限値としては、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.05質量%以上である。一方、上限値としては、より好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下、特に好ましくは1.0質量%以下である。
セルロース誘導体の含有量を上記範囲とすることで、発泡性顆粒の保存安定性を更に向上することができる。
【0017】
(カテキン類)
カテキン類は、フラバン-3-オール骨格を有するフラボノイド化合物であり、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではない。カテキン類としては、例えば、遊離型カテキン、ガレート型カテキン及びそれらの塩などが挙げられる。また、カテキン類は、精製されたものであってもよいし、チャノキの葉などから抽出された粗精製物である緑茶エキスであってもよい。
遊離型カテキンの具体例としては、例えば、カテキン、エピガロカテキン、ガロカテキン、エピカテキンなどが挙げられる。
ガレート型カテキンの具体例としては、例えば、カテキンガレート、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレートなどが挙げられる。
また、これらのカテキン類は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0018】
カテキン類の含有量は、特に制限されるものではない。カテキン類の含有量としては、例えば、0.0001質量%以上20.0質量%以下である。下限値としては、より好ましくは0.001質量%以上、更に好ましくは0.005質量%以上、特に好ましくは0.01質量%以上である。一方、上限値としては、より好ましくは10.0質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下、特に好ましくは3.0質量%以下である。
カテキン類の含有量を上記範囲とすることで、発泡性顆粒の保存安定性を更に向上することができる。
【0019】
カテキン類は、粉末として発泡成分と混合してもよいし、液体に溶解又は分散して液体として発泡成分と混合してもよい。
粉末として発泡成分と混合する場合、カテキン類の含有量の下限値は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上である。
液体として発泡成分と混合する場合、粉末として発泡成分と混合する場合よりも本発明の効果を一層発揮するため、カテキン類の含有量を低減することができる。液体として発泡成分と混合する場合、カテキン類の含有量の上限値は、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。
【0020】
(脂質成分)
本発明の発泡性顆粒は、脂質成分を含有することが好ましい。脂質成分を含有することにより、発泡性顆粒の保存安定性をさらに向上することができる。脂質成分が含有されることにより、その疎水性の性質により発泡性顆粒の吸湿性が低下し、上記したカテキン類とセルロース誘導体の重合により形成される被覆膜の効果をさらに相乗的に向上することができる。脂質成分としては、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではない。このような脂質成分としては、高級脂肪酸又はその塩、脂肪酸エステル、硬化油、固形油脂、ワックス類、高級アルコールなどが挙げられる。高級脂肪酸又はその塩としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等などが挙げられる。脂肪酸エステルとしてはグリセリルモノステアレート、グリセリルモノパルミテート、グリセリルベヘネートなどが挙げられる。硬化油としては、菜種極度硬化油、大豆極度硬化油、水素添加ヒマシ油などが挙げられる。固形油脂類としては、パーム油、カカオ脂などが挙げられる。ワックス類としてはミツロウ、サラシミツロウ、カルナウバワックスなどが挙げられる。高級アルコールとしては、セチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコールなどが挙げられる。これらの脂質成分は、単独で又は二種以上組み合わせて用いられる。
【0021】
脂質成分の含有量は、特に制限されるものではない。脂質成分の含有量としては、例えば、0.1質量%以上20.0質量%以下である。下限値としては、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上である。一方、上限値としては、より好ましくは15.0質量%以下、更に好ましくは10.0質量%以下である。
脂質成分の含有量を上記範囲とすることで、発泡性顆粒の保存安定性を更に向上することができる。
【0022】
(賦形剤)
本発明の発泡性顆粒は賦形剤を含有することが好ましい。賦形剤としては、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではない。賦形剤としては、例えば、デンプン類、糖類、糖アルコール類、水溶性食物繊維、非水溶性食物繊維などの炭水化物、コラーゲンなどのタンパク質である。デンプン類の具体例としては、例えば、デンプン、デキストリン、加工デンプンなどが挙げられる。糖類の具体例としては、例えば、グルコース、白糖、乳糖、麦芽糖などが挙げられる。糖アルコール類の具体例としては、例えば、還元麦芽糖(マルチトール)、エリスリトール、ソルビトール、マンニトールなどが挙げられる。水溶性食物繊維の具体例としては、例えば、グアーガム、グルコマンナン、寒天などが挙げられる。非水溶性食物繊維の具体例としては、例えば、セルロース、ヘミセルロース、キチンなどが挙げられる。賦形剤を添加することにより、発泡性顆粒内の発泡成分を希釈することができるため、保存安定性を向上することができる。
また、賦形剤としては、非水溶性の賦形剤が好ましい。非水溶性の賦形剤とは、1質量%の濃度で水に添加した際に、すべて溶解せずに白濁する物質をいう。このような賦形剤としては、例えばセルロースが挙げられる。
これらの賦形剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0023】
賦形剤の含有量は、特に制限されるものではない。賦形剤の含有量としては、例えば、5質量%以上99質量%以下である。下限値としては、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。一方、上限値としては、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
賦形剤の含有量を上記範囲とすることで、発泡性顆粒の保存安定性を更に向上することができる。
【0024】
(その他の成分)
本発明の発泡性組成物は、上記した発泡成分、セルロース誘導体、カテキン類、脂質成分、賦形剤以外に、必要に応じて医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に用いられる有効成分、添加剤を含有してもよい。添加剤の具体例としては、例えば、崩壊剤、安定剤、保存剤、着色剤などが挙げられ、発泡性組成物の用途に応じて添加される。
【0025】
(発泡性顆粒の用途)
本発明の発泡性顆粒の用途は、特に制限されるものではない。発泡性顆粒の用途としては、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料、トイレタリー用品などに用いられる。
また、発泡性顆粒を含有する医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料、トイレタリー用品などは、ヒト又は非ヒト動物用として使用する。非ヒト動物は、特に制限されるものではないが、例えば、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類などであり、好ましくは、ニワトリ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなどが挙げられる。
【0026】
発泡性顆粒を含有する医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料、トイレタリー用品などの形態は、特に制限されるものではない。発泡性顆粒を含有する製品の形態としては、例えば、経口投与形態として、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤などが挙げられる。また、非経口投与形態としては、うがい用溶解剤や膣錠などの外用錠剤、コンタクトレンズや入歯などの洗浄剤、オーラルケア剤、入浴剤、錠剤型農薬などが挙げられる。食品分野における発泡性顆粒を利用した製品としては、健康食品(栄養補助食品、栄養機能食品、病者用食品、特定保健用食品、機能性表示食品など)、サプリメント、病者向け食品(病院食、病人食、介護食など)、健康補助食品、菓子などが挙げられる。
好ましい形態としては、汎用性、利便性の観点から、錠剤、顆粒剤である。
【0027】
[発泡性顆粒の製造方法]
本発明の発泡性顆粒の製造方法は、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料、トイレタリー用品などの技術分野において使用されている通常の造粒方法を用いることができる。
また、本発明の発泡性顆粒の製造方法について、以下に具体例を挙げて説明する。
【0028】
本発明の発泡性顆粒の製造方法は、発泡成分、セルロース誘導体、及びカテキン類を含有する発泡性顆粒の製造方法であって、以下の工程を備える。また、カテキン類は、粉末組成物及び/又はセルロース誘導体含有溶液に添加することを特徴とする。
工程(i):発泡成分を含有する粉末組成物を準備する工程。
工程(ii):セルロース誘導体を含有するセルロース誘導体含有溶液を準備する工程。
工程(iii):粉末組成物に、セルロース誘導体含有溶液を添加して造粒する工程。
【0029】
工程(i)は、発泡成分を含有する粉末組成物を準備する工程であり、例えば、発泡成分と、カテキン類、脂質成分、賦形剤などのその他の成分を混合して粉末組成物を得る工程である。発泡成分及びその他の成分を混合する手段は、特に制限されるものではなく、本技術分野において使用されている通常の混合手段である。これらの混合手段で用いられる混合機としては、例えば、タンブラー混合機、V型混合機、ダブルコーン混合機、撹拌式混合機、高速流動式混合機、ドラム式混合機、流動層式混合機、無限ミキサーなどが挙げられる。
【0030】
発泡成分及びその他の成分は、混合前に篩過することが好ましい。篩過することにより、均一性に優れた粉末組成物を得ることができる。なお、篩の目開きは、適宜設定することができ、例えば10~30メッシュ程度である。
【0031】
工程(ii)は、セルロース誘導体を含有するセルロース誘導体含有溶液を準備する工程である。セルロース誘導体を溶解するための溶媒は、本技術分野において使用されている通常のものであれば、特に制限されるものではない。セルロース誘導体を溶解するための溶媒としては、例えば、水、エタノール、ヘキサン、酢酸エチル、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。好ましい溶液としては、汎用性の観点から、無水エタノール、又は水とエタノールを混合したエタノール水溶液である。
【0032】
セルロース誘導体含有溶液には、セルロース誘導体の他、カテキン類を含有してもよい。カテキン類をセルロース誘導体含有溶液に溶解又は分散することにより、カテキン類が発泡成分を含む粉末組成物に均一に混合され、発泡性顆粒の保存安定性を更に向上することができる。より均一に混合するという観点から、セルロース誘導体含有溶液にカテキン類を溶解することが好ましい。カテキン類を溶解するための溶媒としては、例えば、水、エタノール水溶液である。
【0033】
エタノール水溶液における水の濃度は、特に制限されるものではないが、例えば、50体積%以下である。上限値としては、より好ましくは45体積%以下、更に好ましくは40体積%以下、特に好ましくは35体積%以下である。
エタノール水溶液における水の濃度を上記範囲とすることで、水分による発泡成分の反応を低減して効率的に発泡性顆粒を製造することができる。また、カテキン類を溶解することができる。
【0034】
工程(iii)は、粉末組成物に、セルロース誘導体含有溶液を添加して造粒する工程である。造粒方法としては、例えば、撹拌造粒法、押出造粒法、流動層造粒法、転動造粒法などが挙げられる。これらの造粒方法で用いられる造粒機としては、例えば、流動層造粒機、転動流動層造粒機、ワースター型造粒機、転動型造粒機、撹拌造粒機などが挙げられる。
【0035】
工程(iii)は、例えば、以下の工程により実施される。
工程(a):粉末組成物に、セルロース誘導体含有溶液を添加して練合する工程。
工程(b):練合した粉末組成物を乾燥する工程。
【0036】
工程(a)は、粉末組成物に、セルロース誘導体含有溶液を添加して練合する工程であり、撹拌造粒法、押出造粒法、転動造粒法などに用いる工程である。粉末組成物に対するセルロース誘導体含有溶液の添加量は、粉末組成物の流動性や粒子の大きさなどの粉末組成物の状態に応じて適宜設定すればよい。工程(a)は、撹拌造粒法を用いることが好ましい。撹拌造粒法は、練合する時間が短く、製造効率を向上することができる。
【0037】
工程(b)は、練合した粉末組成物を乾燥する工程である。練合した粉末組成物を乾燥する方法は、本技術分野において使用されている通常のものであれば、特に制限されるものではない。乾燥方法としては、例えば、流動層乾燥法、棚乾燥法、真空乾燥法、振動乾燥法、マイクロウェーブ乾燥法、凍結乾燥法などが挙げられる。これらの乾燥方法で用いられる乾燥装置としては、流動層式乾燥装置、加熱減圧乾燥機装置、凍結乾燥装置などが挙げられる。工程(b)は、流動層乾燥法を用いることが好ましい。流動層乾燥法は、乾燥時間が短く、製造効率を向上することができる。また、粉末組成物の高温化が抑制されるため、粉末組成物に含まれる成分の状態変化などを抑制することができる。
【0038】
また、工程(iii)は、流動層造粒法により実施してもよい。流動層造粒法では、以下の工程により実施される。
工程(c):流動状態の粉末組成物に、セルロース誘導体含有溶液を噴霧する工程。
【0039】
工程(c)は、流動状態の粉末組成物に、セルロース誘導体含有溶液を噴霧する工程であり、セルロース誘導体含有溶液を噴霧と同時に乾燥する工程である。流動化空気の給気温度は、特に制限されないが、例えば、40~80℃である。流動層造粒法によれば、単一装置により粉末組成物を造粒することができる。
【0040】
[発泡性錠剤]
本発明の発泡性錠剤は、発泡性顆粒及び発泡助剤を含有することを特徴とする。本発明の発泡性錠剤は、発泡性顆粒及び発泡助剤を含有する打錠用組成物を打錠機で打錠することにより得ることができる。発泡性錠剤は、発泡性顆粒と発泡助剤を含有していれば、特に制限されるものではない。発泡性錠剤としては、例えば、発泡性顆粒と発泡助剤のみを含有するものでもよいし、他の有効成分、添加剤などを含有するものでもよい。添加剤としては、賦形剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、着色剤などが挙げられる。
発泡性錠剤の形態としては、例えば、素錠、糖衣錠、フィルムコーティング錠、チュアブル錠、トローチ錠、バッカル錠や舌下錠などの口腔内崩壊錠、有核錠や多層錠、スパスタブ型錠剤などの持続性錠や徐放性錠などが挙げられる。
【0041】
(発泡助剤)
発泡助剤は、発泡成分と反応して炭酸ガスを発生するものであり、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料、トイレタリー用品などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではない。発泡助剤としては、例えば、炭素数2~6の有機酸などが挙げられる。
発泡助剤の具体例としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、コハク酸、フマル酸、シュウ酸、アスコルビン酸などが挙げられる。好ましい発泡助剤としては、汎用性の観点から、クエン酸である。より好ましくは、保存安定性の観点から、クエン酸カルシウムでコーティングされたクエン酸(コーティングクエン酸、CCA)である。また、これらの発泡助剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【実施例0042】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
【0043】
実験1.発泡性顆粒の製造と保存安定性試験
(発泡性顆粒の製造)
実施例の発泡性顆粒の製造においては、セルロース誘導体を除く表1~3に示す配合の原料を準備し、適切なサイズの篩で篩過した。その後、撹拌造粒機(ハイスピードミキサーLFS-GS-2J型、アーステクニカ社製)で粉末組成物を2分間混合した。その後、99%エタノールにセルロース誘導体を溶解したセルロース誘導体含有溶液を適切なスピードで滴下しながら、3分間練合した。次いで、練合した粉末組成物を、流動層造粒機(MP-01、パウレック社製)に投入して乾燥し、顆粒を製造した。乾燥は、給気温度60℃とし、排気温度が45℃以上になった時点で乾燥を終了し、冷却後、発泡性顆粒を得た。
【0044】
比較例1、2の発泡性顆粒の製造においては、実施例と同様に発泡性顆粒を製造した。比較例3は、発泡成分と発泡助剤を混合機で混合した。
それぞれの実施例、比較例で使用した原料の製品名、メーカーを表1に示す。また、配合を表2、3に示す。なお、表中の数値は質量部を示す。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
(保存安定性試験)
製造した実施例1~8、及び比較例1の発泡性顆粒に、発泡成分に対してコーティングクエン酸が質量換算で1:1の割合になるようにコーティングクエン酸を添加し、混合した。その後、アルミ袋(ラミジップAL-E 140mm×100mm,生産日本社製)に上記混合物を5g入れ、封止した。比較例2、3の発泡性顆粒については、発泡性顆粒のみをアルミ袋に5g入れ、同様に封止した。各実施例、比較例の混合物を封入したアルミ袋を50℃で約15時間保管し、15時間後におけるアルミ袋の膨張量を測定した。比較例1の発泡性顆粒については発泡性顆粒のみをアルミ袋に封入し同様の試験を行った。
膨張量の測定は、所定の容量のプラスティック容器の中に各実施例及び各比較例のアルミ袋を保持し、容器内部の空隙に入る水(20℃)の容量を測定した。膨張量は、下記の計算式により算出した。
(初発のアルミ袋の状態の水の容量(mL))-(保存安定試験後のアルミ袋の状態の水の容量(mL))=膨張量(mL)
試験の結果を保存安定性評価として表2、3に示す。
【0049】
保存安定性試験の結果、比較例1と実施例2を比較すると、カテキン類を含有する発泡性顆粒とすることにより膨張量が抑制できること、また、実施例1と実施例2を比較すると、脂質成分を含有することにより、さらに膨張量を抑制することができることが示された。
【0050】
実験2.発泡性錠剤の製造と保存安定性評価
(発泡性顆粒の製造)
実施例9においては、セルロース誘導体とカテキン類を除く表4に示す配合の原料を準備し、適切なサイズの篩で篩過した。その後、撹拌造粒機(ハイスピードミキサーLFS-GS-2J型、アーステクニカ社製)で粉末組成物を2分間混合した。その後、70%エタノール(水の含有量30体積%)にセルロース誘導体とカテキン類を溶解したセルロース誘導体含有溶液を適切なスピードで滴下しながら、3分間練合した。得られた練合物を、流動層造粒機(MP-01、パウレック社製)に投入して造粒し、顆粒を製造した。製造された顆粒を給気温度60度設定で乾燥し、排気温度が45℃以上になった時点で乾燥を終了し、冷却後、発泡性顆粒を得た。
実施例10においては、セルロース誘導体を除く表4に示す配合の原料を準備し、適切なサイズの篩で篩過した。その後、撹拌造粒機(ハイスピードミキサーLFS-GS-2J型、アーステクニカ社製)で粉末組成物を2分間混合した。その後、70%エタノール(水の含有量30体積%)にセルロース誘導体を溶解したセルロース誘導体含有溶液を適切なスピードで滴下しながら、3分間練合した。得られた練合物を、流動層造粒機(MP-01、パウレック社製)に投入して造粒し、顆粒を製造した。製造された顆粒を給気温度60度設定で乾燥し、排気温度が45℃以上になった時点で乾燥を終了し、冷却後、発泡性顆粒を得た。
【0051】
【0052】
(発泡性錠剤の製造)
実施例9、10で得られた発泡性顆粒を、下記の表5に示す配合で有効成分(ビタミンC、緑茶エキス)、コーティングクエン酸、結晶セルロース、エリスリトール、微粒二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウムと混合し、打錠機(HT-AP15SS-II型 小型打錠機、畑鐵工所製、杵臼15mmΦ、20R)で打錠し、発泡性顆粒を10質量%含有する発泡性錠剤(チュアブル錠、1000mg/粒)を製造して錠剤1、2を得た。表の原料の単位は質量%を示す。
【0053】
【0054】
製造したチュアブル錠(錠剤1、2)10粒をアルミ袋(ラミジップAL-G 200mm×140mm,生産日本社製)に入れ、封止し、50℃で5日間保管し、実験1と同様に保存安定性試験を行いアルミ袋の膨張量(mL)を算出した。
【0055】
保存安定性試験の結果、実施例9、10の発泡性顆粒から製造した発泡性錠剤1、2においては、錠剤中に発泡助剤であるコーティングクエン酸を含むにもかかわらずアルミ袋の膨張が観察されず、保存中に炭酸ガスが発生していないことが確認された。
本発明によって、保存安定性及び製造効率に優れた発泡性顆粒、発泡性錠剤を得ることができる。これにより、本発明は、保存安定性に優れた発泡性成分を含有する錠剤などの医薬品、医薬部外品、飲む化粧料、飲む化粧品、食品、健康食品(栄養補助食品、栄養機能食品、病者用食品、特定保健用食品、機能性表示食品など)、サプリメント、動物用薬品、飼料などを提供することができる。