(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085768
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】ペアシンカー、ペアシンカーを備える丸編機及びペアシンカーを備える丸編機によるダブルフリース編地の編成方法
(51)【国際特許分類】
D04B 15/06 20060101AFI20220601BHJP
D04B 9/12 20060101ALI20220601BHJP
D04B 1/00 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
D04B15/06 Z
D04B9/12
D04B1/00 Z
D04B1/00 B
D04B1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197628
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000154510
【氏名又は名称】株式会社福原精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】柴田 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】江西 克
(72)【発明者】
【氏名】西川 和宏
【テーマコード(参考)】
4L002
4L054
【Fターム(参考)】
4L002BA00
4L002BA06
4L002BB01
4L002EA00
4L054AA01
4L054AB01
4L054AB04
4L054AB08
4L054BB04
4L054KA23
4L054NA07
(57)【要約】
【課題】糸の状態、ペアシンカーの状態及び周囲の環境が変化した場合でも、基礎編地の表面におけるレイイン糸の突出を抑制することができるペアシンカー、前記ペアシンカーを備える丸編機及びダブルフリース編地の編成方法を得る。
【解決手段】ペアシンカー11は、丸編機1の同一のシンカー溝7aに基部が挿入され、第1シンカー12と第2シンカー13とから構成され、第1シンカー12は、レイイン糸r、タイイン糸t及びニットイン糸kを支持する上支持部12c及び上支持部12cよりも下方に位置する下支持部12bを有し、第2シンカー13は、レイイン糸rのループRrに挿入される挿入部13bと、レイイン糸r及びタイイン糸tを押し込む第2シンカー係合部13cとを有し、挿入部13bの上端面13eが上支持部12cの上端面12gよりも下方且つ下支持部12bの上端面12hよりも上方に配置される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸編機によって、タイイン糸とニットイン糸とから基礎編地を編成し、前記タイイン糸によってレイイン糸を絡めて前記基礎編地の裏面に前記レイイン糸のループを形成するダブルフリース編地を編成するためのペアシンカーであって、
前記ペアシンカーは、
前記丸編機の同一のシンカー溝に基部が挿入され、且つ互いに独立して前記丸編機の回転シリンダの径方向に移動可能な板状部材である第1シンカーと第2シンカーとから構成され、
前記第1シンカーは、
前記第1シンカーの基部から前記回転シリンダの径方向に延び、前記レイイン糸、前記タイイン糸及び前記ニットイン糸を支持する上支持部及び前記上支持部よりも下方に位置する下支持部を有し、
前記第2シンカーは、
前記第2シンカーの基部から前記回転シリンダの径方向に延び、前記レイイン糸のループに挿入される挿入部と、前記挿入部の基端から上方に延び、前記レイイン糸及び前記タイイン糸を押し込む第2シンカー係合部とを有し、前記挿入部の上端面が前記上支持部の上端面よりも下方且つ前記下支持部の上端面よりも上方に配置される、ペアシンカー。
【請求項2】
請求項1に記載のペアシンカーにおいて、
前記第1シンカーは、
前記第2シンカーの挿入部が挿入されている前記レイイン糸のループを前記第2シンカーの挿入部から押し出す第1シンカー係合部が前記上支持部の先端部に形成されている、ペアシンカー。
【請求項3】
請求項2に記載のペアシンカーにおいて、
前記第1シンカー係合部は、
前記第1シンカーの板面に垂直な方向に見て、前記上支持部の上端面から下端面まで前記回転シリンダの径方向に膨出する陥没のない外縁を有するように形成され、
前記第2シンカー係合部は、
前記回転シリンダの径方向に向いた端面であって、前記挿入部の上端面と接続され、前記上支持部の上端面よりも下方から前記上支持部の上端面よりも上方に亘るように配置され、
前記挿入部の上端面は、前記上支持部の上端面よりも低く、且つ前記上支持部の下端面以上になるように配置される、ペアシンカー。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のペアシンカーを備える丸編機であって、
前記レイイン糸に絡ませた前記タイイン糸と供給された前記ニットイン糸を前記丸編機の編針によって前記第1シンカーの上支持部よりも下方に引き込んだ状態において、
前記上支持部によって前記タイイン糸及び前記ニットイン糸を支持している前記第1シンカーを前記回転シリンダの径方向外方に移動させて前記タイイン糸及び前記ニットイン糸を前記第1シンカーの上支持部から前記第1シンカーの下支持部に落としつつ、前記第2シンカーを前記回転シリンダの径方向内方に移動させて、前記第2シンカーの挿入部を前記レイイン糸のループに挿入し、前記第2シンカーの第2シンカー係合部によって前記レイイン糸のループを前記回転シリンダの径方向内方に押し出す、丸編機。
【請求項5】
請求項4に記載の丸編機において、
前記レイイン糸のループに前記挿入部が挿入されている前記第2シンカーを前記回転シリンダの径方向外方に移動させるとともに前記第1シンカーを前記回転シリンダの径方向内方に移動させて、前記第1シンカーの第1シンカー係合部によって前記レイイン糸のループの前記回転シリンダの径方向外方への移動を止める、丸編機。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の丸編機によるレイイン糸、タイイン糸及びニットイン糸を用いたダブルフリース編地の編成方法であって、
前記第1シンカーを前記回転シリンダの径方向外方に移動させて前記レイイン糸、前記タイイン糸及び前記ニットイン糸を前記第1シンカーの上支持部から外し、前記編針によって前記タイイン糸と前記ニットイン糸とを前記第1シンカーの下支持部よりも下方に引き込んで前記タイイン糸と前記ニットイン糸とを前記第1シンカーの下支持部に支持されている既に編成されたオールドループに絡ませる編成工程と、
前記編成工程において前記レイイン糸、前記タイイン糸及び前記ニットイン糸を前記第1シンカーの上支持部から外した際に、前記レイイン糸のループに前記第2シンカーの挿入部を挿入し、前記第2シンカーの第2シンカー係合部によって前記レイイン糸のループを前記回転シリンダの径方向内方に押し出すレイイン糸調整工程と、
前記第2シンカーを前記回転シリンダの径方向外方に移動させるとともに前記第1シンカーを前記回転シリンダの径方向内方に移動させて、前記第1シンカーの第1シンカー係合部によって前記レイイン糸のループを前記第2シンカーの挿入部から外すとともに前記編針よりも前記回転シリンダの径方向内方に押し出すことで前記タイイン糸と前記ニットイン糸によるニューループを形成するニューループ形成工程と、を有するダブルフリース編地の編成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペアシンカー、ペアシンカーを備える丸編機及びペアシンカーを備える丸編機によるダブルフリース編地の編成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイイン糸とニットイン糸とから基礎編地を編成し、前記基礎編地の裏面に前記レイイン糸によってループを形成するダブルフリース編地が知られている。ダブルフリース編地は、2枚のシンカーから構成されるペアシンカーを備える丸編機によって編成されるものが知られている。前記丸編機には、前記レイイン糸、前記タイイン糸及び前記ニットイン糸が順に供給される。前記レイイン糸は、編針と前記ペアシンカーとの間に供給される。前記レイイン糸は、一方のシンカーによって前記編針に向かって押し出されることで、前記編針と前記一方のシンカーとによってループが形成される。次に、前記タイイン糸が前記編針のフックに供給される。前記タイイン糸は、前記編針によって前記レイイン糸のループに絡められる。次に、前記ニットイン糸が前記編針のフックに供給される。前記編針に供給されたニットイン糸は、タイイン糸とともにオールドループに絡められる。
【0003】
上述のダブルフリース編地の編成方法において、前記レイイン糸は、前記タイイン糸が絡められてから前記タイイン糸と前記ニットイン糸とが前記オールドループに絡められるまで、シンカーによって押し出されていない。つまり、前記レイイン糸のループは、緩みが生じている。このため、前記タイイン糸と前記ニットイン糸とが前記オールドループに絡められる際、前記レイイン糸のループの根元部分が前記タイイン糸によって前記オールドループ内に引き込まれる場合がある。前記レイイン糸のループの根元部分が前記オールドループ内に引き込まれた場合、前記ダブルフリース編地は、前記レイイン糸のループの根元部分が前記基礎編地の表面に突出する。このようなダブルフリース編地において、前記基礎編地の表面から前記レイイン糸のループが突出しないようにする編成方法が知られている。例えば特許文献1の如くである。
【0004】
特許文献1には、前記編針の下降によって前記レイイン糸に前記タイイン糸が絡められてから、前記ニットイン糸を捉えるために前記編針が上昇するまでの間、ペアシンカーのうち一方のシンカーに形成されているパイル糸(レイイン糸)押え用段部によって前記レイイン糸が緩まないように押える編成方法が記載されている。これにより、前記レイイン糸のループの根元部分は、前記編針の上昇時に前記タイイン糸のループ内に引き込まれ難くなる。また、前記編成方法は、前記レイイン糸に前記タイイン糸が絡められてから前記タイイン糸と前記ニットイン糸とが前記オールドループに絡められるまで前記レイイン糸が緩まないように一方のシンカーを前記レイイン糸のループの根元部分に接触させる編成方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のペアシンカーによるダブルフリース編地の編成方法は、レイイン糸の移動を前記レイイン糸と前記シンカーとの間の摩擦力によって抑制するものである。前記レイイン糸と前記シンカーとの間の摩擦力は、前記レイイン糸及び前記シンカーの表面の状態、前記レイイン糸と前記シンカーとの接触状態、気温、湿度、潤滑剤の有無等によって変動する。従って、前記編成方法は、前記基礎編地の表面から前記レイイン糸のループの根元が突出しないように調整されていても、前記レイイン糸及び前記シンカーの状態、周囲の環境の状態によって前記基礎編地の表面から前記レイイン糸のループの根元が突出する場合がある。また、前記編成方法は、前記タイイン糸及び前記ニットイン糸を前記編針で前記シンカーの上端よりも下方に引き込む際に前記レイイン糸から前記シンカーが離隔する。従って、前記レイイン糸のループは、前記オールドループに引き込まれて前記レイイン糸のループの根元が前記基礎編地の表面から突出する場合がある。
【0007】
上述のようなダブルフリース編地の編成方法は、前記レイイン糸、前記タイイン糸及び前記ニットイン糸の状態、前記ペアシンカーの状態及び周囲の環境が変化した場合でも前記基礎編地の表面から前記レイイン糸のループの根元が突出しないことが求められている。
【0008】
本発明は、前記レイイン糸、前記タイイン糸及び前記ニットイン糸の状態、前記ペアシンカーの状態及び周囲の環境が変化した場合でも、前記基礎編地の表面における前記レイイン糸の突出を抑制することができるペアシンカー、ペアシンカーを備える丸編機及びペアシンカーを備える丸編機によるダブルフリース編地の編成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記レイイン糸、前記タイイン糸及び前記ニットイン糸の状態、前記ペアシンカーの状態及び周囲の環境が変化した場合でも、前記基礎編地の表面における前記レイイン糸の突出を抑制することができるペアシンカー、ペアシンカーを備える丸編機及びペアシンカーを備える丸編機によるダブルフリース編地の編成方法について検討した。鋭意検討の結果、本発明者らは、以下のような構成に想到した。
【0010】
本発明の一実施形態に係るペアシンカーは、丸編機によって、タイイン糸とニットイン糸とから基礎編地を編成し、前記タイイン糸によってレイイン糸を絡めて前記基礎編地の裏面に前記レイイン糸のループを形成するダブルフリース編地を編成するためのペアシンカーである。
【0011】
前記ペアシンカーは、前記丸編機の同一のシンカー溝に基部が挿入され、且つ互いに独立して所定の移動量だけ前記丸編機の回転シリンダの径方向に移動可能な板状部材である第1シンカーと第2シンカーとから構成されている。前記第1シンカーは、前記第1シンカーの基部から前記回転シリンダの径方向に延び、前記レイイン糸、前記タイイン糸及び前記ニットイン糸を支持する上支持部及び前記上支持部よりも下方に位置する下支持部を有している。前記第2シンカーは、前記第2シンカーの基部から前記回転シリンダの径方向に延び、前記レイイン糸のループに挿入される挿入部と、前記挿入部の基端から上方に延び、前記レイイン糸及び前記タイイン糸を押し込む第2シンカー係合部とを有している。前記第2シンカーは、前記挿入部の上端面が前記第1シンカーの上支持部の上端面よりも下方且つ前記第1シンカーの下支持部の上端面よりも上方に配置される。
【0012】
上述のように、前記第1シンカーは、前記回転シリンダの径方向外方に移動されることで前記上支持部によって支持している前記レイイン糸、前記タイイン糸及び前記ニットイン糸を前記下支持部に落とす。前記第2シンカーの挿入部は、前記回転シリンダの径方向内方に移動されることで前記上支持部から落とされた前記レイイン糸のループに挿入される。前記第2シンカーの挿入部は、前記上支持部の上端面よりも下方にあるので、前記レイイン糸のループが前記挿入部の位置に到達するまでの間に前記回転シリンダの径方向内方に移動することができる。更に、前記挿入部は、所定の移動量だけ前記回転シリンダの径方向内方に移動され、前記レイイン糸のループを前記回転シリンダの径方向内方に押し出す。つまり、前記第2シンカーは、前記レイイン糸のループを前記タイイン糸及びニットイン糸によって編成される前記基礎編地の裏面に向かって確実に所定量だけ引っ張っている。これにより、前記ペアシンカーは、前記レイイン糸、前記タイイン糸及び前記ニットイン糸の状態、前記ペアシンカーの状態及び周囲の環境が変化した場合でも、前記基礎編地の表面における前記レイイン糸の突出を抑制することができる。
【0013】
他の観点によれば、本発明のペアシンカーは、以下の構成を含むことが好ましい。前記第1シンカーは、前記第2シンカーの挿入部が挿入されている前記レイイン糸のループを前記第2シンカーの挿入部から押し出す第1シンカー係合部が前記上支持部の先端部に形成されている。
【0014】
上述のように、前記レイイン糸のループは、前記第2シンカーの挿入部が引き抜かれながら、前記第1シンカーの第1シンカー係合部によって前記回転シリンダの径方向内方に押し出される。つまり、前記レイイン糸のループは、前記第1シンカー係合部によって前記回転シリンダの径方向内方に押し出された状態を維持されながら前記第2シンカーの挿入部が抜かれるので緩みが発生しない。これにより、前記ペアシンカーは、前記レイイン糸、前記タイイン糸及び前記ニットイン糸の状態、前記ペアシンカーの状態及び周囲の環境が変化した場合でも、前記基礎編地の表面における前記レイイン糸のループの突出を抑制することができる。
【0015】
他の観点によれば、本発明のペアシンカーは、以下の構成を含むことが好ましい。前記第1シンカー係合部は、前記第1シンカーの板面に垂直な方向に見て前記上支持部の上端面から下端面まで前記回転シリンダの径方向に膨出する陥没のない外縁を有するように形成される。前記第2シンカー係合部は、前記回転シリンダの径方向に向いた端面であって、前記挿入部の上端面と接続され、前記上支持部の上端面よりも下方から前記上支持部の上端面よりも上方に亘るように配置される。前記挿入部の上端面は、前記上支持部の上端面よりも低く、且つ前記上支持部の下端面以上になるように配置される。
【0016】
上述のように形成することで、前記第2シンカーは、前記回転シリンダの径方向への移動によって前記レイイン糸のループに前記挿入部が挿入されるとともに前記第2シンカー係合部によって前記レイイン糸のループを引っ張る。また、前記第1シンカーは、前記第1シンカー係合部によって前記レイイン糸のループを引っかけることなく、前記第2シンカーの挿入部から押し出し、前記第1シンカーの下支持部に移動させる。これにより、前記ペアシンカーは、前記レイイン糸、前記タイイン糸及び前記ニットイン糸の状態、前記ペアシンカーの状態及び周囲の環境が変化した場合でも、前記基礎編地の表面における前記レイイン糸のループの突出を抑制することができる。
【0017】
他の観点によれば、本発明の前記ペアシンカーを備える丸編機は、以下の構成を含むことが好ましい。前記レイイン糸に絡ませた前記タイイン糸と供給された前記ニットイン糸を前記丸編機の編針によって前記第1シンカーの上支持部よりも下方に引き込んだ状態の丸編機において、前記上支持部によって前記タイイン糸及び前記ニットイン糸を支持している前記第1シンカーを前記回転シリンダの径方向外方に移動させて前記タイイン糸及び前記ニットイン糸を前記第1シンカーの上支持部から前記第1シンカーの下支持部に落としつつ、前記第2シンカーを前記回転シリンダの径方向内方に移動させて、前記第2シンカーの挿入部を前記レイイン糸のループに挿入する。前記第2シンカーは、前記第2シンカー係合部によって前記レイイン糸のループを前記回転シリンダの径方向内方に押し出す。
【0018】
上述のように、前記ペアシンカーを備える丸編機は、前記第1シンカーを前記回転シリンダの径方向外方に移動させて、前記第1シンカーの上支持部によって支持している前記レイイン糸、前記タイイン糸を及び前記ニットイン糸を前記第1シンカーの下支持部に落とす。さらに、前記丸編機は、前記第2シンカーを前記回転シリンダの径方向内方に移動させることで前記第1シンカーの上支持部から落ちてくる前記レイイン糸のループに前記第1シンカーの上支持部の上端面よりも下にある前記第2シンカーの挿入部を挿入する。
【0019】
前記丸編機は、前記第2シンカーの挿入部によって前記レイイン糸のループを所定の移動量だけ前記回転シリンダの径方向内方に押し出す。つまり、前記丸編機は、前記第2シンカーによって前記レイイン糸のループを前記タイイン糸によって編成される前記基礎編地の裏面に向かって確実に所定量だけ引っ張っている。これにより、前記ペアシンカーを備える丸編機は、前記レイイン糸、前記タイイン糸及び前記ニットイン糸の状態、前記ペアシンカーの状態及び周囲の環境が変化した場合でも、前記基礎編地の表面における前記レイイン糸のループの突出を抑制することができる。
【0020】
他の観点によれば、本発明の前記ペアシンカーを備える丸編機は、以下の構成を含むことが好ましい。前記レイイン糸のループに前記挿入部が挿入されている前記第2シンカーを前記回転シリンダの径方向外方に移動させるとともに前記第1シンカーを前記回転シリンダの径方向内方に移動させて、前記第1シンカーの第1シンカー係合部によって前記レイイン糸のループの前記回転シリンダの径方向外方への移動を止める。
【0021】
上述のように、前記ペアシンカーを備える丸編機は、前記レイイン糸のループから前記第2シンカーの挿入部を引き抜きながら、前記第1シンカーの第1シンカー係合部によって前記レイイン糸のループを前記回転シリンダの径方向内方に押し出す。つまり、前記レイイン糸は、前記第1シンカー係合部によって前記回転シリンダの径方向内方に押し出された状態を維持しながら前記第2シンカーの挿入部が抜かれるので緩みが発生しない。これにより、前記ペアシンカーを備える丸編機は、前記レイイン糸、前記タイイン糸及び前記ニットイン糸の状態、前記ペアシンカーの状態及び周囲の環境が変化した場合でも、前記基礎編地の表面における前記レイイン糸のループの突出を抑制することができる。
【0022】
他の観点によれば、本発明の前記ペアシンカーを備える丸編機によるレイイン糸、タイイン糸及びニットイン糸を用いたダブルフリース編地の編成方法は、以下の工程を含むことが好ましい。
【0023】
前記編成方法は、前記第2シンカーを前記丸編機の編針よりも前記回転シリンダの径方向外方に移動させ、前記編針を前記第1シンカーの上支持部よりも上方に移動させた状態において、前記レイイン糸を前記第1シンカーの上支持部よりも上方且つ前記編針と前記第2シンカーとの間に供給し、前記レイイン糸を前記第2シンカーの第2シンカー係合部によって前記編針よりも前記回転シリンダの径方向内方に押し出して前記レイイン糸のループを形成するレイイン糸ループ形成工程を含む。
【0024】
前記編成方法は、前記タイイン糸を前記第2シンカーよりも上方に供給し、前記第2シンカーを前記回転シリンダの径方向外方に移動させた後に前記タイイン糸を前記編針によって前記第1シンカーの上支持部の上端面よりも下方に引き込み、その後前記レイイン糸と前記タイイン糸を前記第2シンカー係合部によって前記編針よりも前記回転シリンダの径方向内方に押し出すとともに前記編針を前記上支持部まで持ち上げて前記タイイン糸を前記レイイン糸に絡ませることで前記レイイン糸よりも前記回転シリンダの径方向外方に前記タイイン糸のループを形成するタイイン糸ループ形成工程を含む。
【0025】
前記編成方法は、前記第2シンカーを前記回転シリンダの径方向外方に移動させて前記ニットイン糸を前記第1シンカーの上支持部よりも上方に供給し、前記タイイン糸と前記ニットイン糸とを前記編針によって前記第1シンカーの上支持部の上端面よりも下方に引き込んで前記ニットイン糸のループを形成するニットイン糸ループ形成工程を含む。
【0026】
前記編成方法は、前記第1シンカーを前記回転シリンダの径方向外方に移動させて前記レイイン糸、前記タイイン糸及び前記ニットイン糸を前記第1シンカーの上支持部から外し、前記編針によって前記タイイン糸と前記ニットイン糸とを前記第1シンカーの下支持部よりも下方に引き込んで前記タイイン糸と前記ニットイン糸とを前記第1シンカーの下支持部に支持されている既に形成されたオールドループに絡ませる編成工程を含む。
【0027】
前記編成方法は、前記編成工程において前記レイイン糸、前記タイイン糸及び前記ニットイン糸を前記第1シンカーの上支持部から外した際に、前記レイイン糸のループに前記第2シンカーの挿入部を挿入し、前記第2シンカーの第2シンカー係合部によって前記レイイン糸のループを前記回転シリンダの径方向内方に押し出すレイイン糸調整工程を含む。
【0028】
前記編成方法は、前記第2シンカーを前記回転シリンダの径方向外方に移動させるとともに前記第1シンカーを前記回転シリンダの径方向内方に移動させて、前記第1シンカーの第1シンカー係合部によって前記レイイン糸のループを前記第2シンカーの挿入部から外すとともに前記編針よりも前記回転シリンダの径方向内方に押し出すことで前記タイイン糸と前記ニットイン糸によるニューループを形成するニューループ形成工程を含む。
【0029】
上述のように、前記ペアシンカーを備える丸編機によるダブルフリース編地の編成方法は、レイイン糸ループ形成工程と、タイイン糸ループ形成工程と、ニットイン糸ループ形成工程と、編成工程と、レイイン糸調整工程と、ニューループ形成工程とを含む。レイイン糸調整工程において、前記第1シンカーの上支持部上の前記レイイン糸のループは、前記回転シリンダの径方向外方に前記第1シンカーを移動させることで、前記第1シンカーの下支持部に落ちる。前記レイイン糸のループには、前記第2シンカーを前記回転シリンダの径方向内方に移動させることで前記第2シンカーの挿入部が挿入される。更に、前記レイイン糸のループは、前記第2シンカーを前記回転シリンダの径方向内方に所定の移動量だけ移動させることで前記回転シリンダの径方向内方に所定量だけ引っ張られる。つまり、前記レイイン糸のループは、前記タイイン糸によって編成される前記基礎編地の裏面に向かって確実に所定量だけ引っ張られる。これにより、前記編成方法は、前記レイイン糸、前記タイイン糸及び前記ニットイン糸の状態、前記ペアシンカーの状態及び周囲の環境が変化した場合でも、前記基礎編地の表面における前記レイイン糸のループの突出を抑制することができる。なお、高さについては第一シンカーと第二シンカーを1つのシンカー溝に挿入したときの上下位置関係を表している。
【0030】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施例のみを定義する目的で使用されるのであって、前記専門用語によって発明を制限する意図はない。
【0031】
本明細書で使用される「及び/または」は、一つまたは複数の関連して列挙された構成物のすべての組み合わせを含む。
【0032】
本明細書において、「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」または「有する(having)」及びそれらの変形の使用は、記載された特徴、工程、要素、成分、及び/または、それらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/または、それらのグループのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0033】
本明細書において、「取り付けられた」、「接続された」、「結合された」、及び/または、それらの等価物は、広義の意味で使用され、“直接的及び間接的な”取り付け、接続及び結合の両方を包含する。さらに、「接続された」及び「結合された」は、物理的または機械的な接続または結合に限定されず、直接的または間接的な接続または結合を含むことができる。
【0034】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0035】
一般的に使用される辞書に定義された用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0036】
本発明の説明においては、いくつもの技術及び工程が開示されていると理解される。これらの各々は、個別の利益を有し、他に開示された技術の1つ以上、または、場合によっては全てと共に使用することもできる。
【0037】
したがって、明確にするために、本発明の説明では、不要に個々のステップの可能な組み合わせをすべて繰り返すことを控える。しかしながら、本明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせがすべて本発明の範囲内であることを理解して読まれるべきである。
【0038】
本明細書では、本発明に係るペアシンカー、ペアシンカーを備える丸編機及びペアシンカーを備える丸編機によるダブルフリース編地の編成方法の実施形態について説明する。
【0039】
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な例を述べる。しかしながら、当業者は、これらの具体的な例がなくても本発明を実施できることが明らかである。
【0040】
よって、以下の開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0041】
[ダブルフリース編地]
本明細書において、ダブルフリース編地とは、表のループ、裏のループ及び編地の裏面に編み込まれるループ状の裏毛から構成される編地を意味する。前記ダブルフリース編地は、タイイン糸によって前記表のループが編成され、ニットイン糸によって前記裏のループが編成され、レイイン糸によって前記裏毛が編成される。前記ダブルフリース編地は、前記レイイン糸に前記タイイン糸を絡めた後、前記タイイン糸に前記ニットイン糸を重ねて編み込まれる。
[ループ]
本明細書において、ループとは、編針とシンカーとによって糸の途中部を湾曲させて輪状に形成された部分を意味する。ループは、輪状に形成された部分の一部か開口したΩ状に形成されている。
[オールドループ]
本明細書において、オールドループとは、上流の編成工程によって既に輪状に形成されている部分を意味する。前記ダブルフリース編地において、前記オールドループは、既に編み込まれたニットイン糸とタイイン糸とから構成されている。前記ダブルフリース編地は、新たに形成した前記ニットイン糸と前記タイイン糸とからなるニューループを前記オールドループに編み込む。
[レイイン糸]
本明細書において、レイイン糸とは、前記ダブルフリース編地の編成において裏毛のループを形成する糸を意味する。前記レイイン糸は、レイイン糸、タイイン糸及びニットイン糸を編み込みの単位とした場合、最初に丸編機に供給される糸である。
[タイイン糸]
本明細書において、タイイン糸とは、前記ダブルフリース編地の編成において前記表のループを形成する糸を意味する。タイイン糸は、レイイン糸の次に丸編機に供給される糸である。
[ニットイン糸]
本明細書において、ニットイン糸とは、前記ダブルフリース編地の編成において前記裏のループを形成する糸を意味する。ニットイン糸は、タイイン糸の次に丸編機に供給される糸である。
[丸編機]
本明細書において、丸編機とは、筒形の編地を作る装置を意味する。前記丸編機は、複数の編針を収納した状態において回転する円筒形の回転シリンダ(針床)及び複数のシンカーを収納した状態において回転する円盤形のシンカーダイアル(針床)を備える。前記丸編機は、前記編針と前記シンカーとを用いて筒形の編地を編成する。前記丸編機には、複数の糸が供給される。前記丸編機は、供給された複数の糸をらせん状に積み重ねることで効率的に円筒状の編地を編成することができる。
【0042】
[絡める、絡ませる]
本明細書において、「絡める、絡ませる」とは、一の糸の周りに他の糸を接触させた状態を意味する。一の糸のループに他の糸をくぐらせて他の糸のループが形成されている場合、一の糸のループには、他の糸が絡んでループが形成される。ループは、糸同士を絡ませて形成することにより、摩擦力などでループの大きさが容易に変わらないよう一定の制限がかかる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の一実施形態によれば、前記レイイン糸、前記タイイン糸及び前記ニットイン糸の状態、前記ペアシンカーの状態及び周囲の環境が変化した場合でも、前記基礎編地の表面における前記レイイン糸のループの突出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の一実施形態に係る丸編機の編成要部の断面図を示す。
【
図2】本発明の一実施形態に係るシンカー溝に挿入された第1シンカーの側面図を示す。
【
図3】本発明の一実施形態に係るシンカー溝に挿入された第2シンカーの側面図を示す。
【
図4】本発明の一実施形態に係るシンカー溝に挿入されたペアシンカーの側面図及び上面図を示す。
【
図5】本発明の一実施形態に係るダブルフリース編地の編成方法における各工程のフローチャートを示す。
【
図6】本発明の一実施形態に係るダブルフリース編地の編成方法における編針、第1シンカー及び第2シンカーの動作線図を示す。
【
図7】レイイン糸ループ形成工程におけるレイイン糸の供給時の模式図を示す。
【
図8】レイイン糸ループ形成工程におけるレイイン糸の押し出し時とタイイン糸ループ形成工程におけるタイイン糸tの供給時の模式図を示す。
【
図9】タイイン糸ループ形成工程におけるタイイン糸の引き込み時の模式図を示す。
【
図10】タイイン糸ループ形成工程におけるタイイン糸の押し出し時の模式図を示す。
【
図11】ニットイン糸ループ形成工程におけるニットイン糸の供給時の模式図を示す。
【
図12】ニットイン糸ループ形成工程におけるニットイン糸の引き込み時の模式図を示す。
【
図13】編成工程におけるレイイン糸を第1シンカーの上支持部から糸を外す時の模式図を示す。
【
図14】編成工程におけるタイイン糸とニットイン糸とをオールドループに絡め、レイイン糸調整工程におけるレイイン糸を引っかけた時の模式図を示す。
【
図15】レイイン糸調整工程におけるレイイン糸の押し出し時の模式図を示す。
【
図16】オールドループ形成工程におけるレイイン糸のループを外す時の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下で、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一部分には同一の符号を付して、その同一部分の説明は繰り返さない。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0046】
<丸編機1の全体構成>
図1から
図3を用いて本発明の一実施形態に係る丸編機1を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る丸編機1の編成要部の断面図である。
図2は、第1シンカー12の側面図である。
図3は第2シンカー13の側面図である。本実施形態において、
図4は、ペアシンカー11の側面図である。丸編機1は、レイイン糸r、タイイン糸t及びニットイン糸kによってダブルフリース編地を編成するものとする。
【0047】
図1に示すように、丸編機1は、円筒状の編地を編成する編機である。丸編機1は、主に、フレーム2と、回転シリンダ3と、編針用カムフォルダ4と、編針用カム5と、編針6と、シンカーダイアル7と、シンカーキャップ8と、第1シンカー用カム9と、第2シンカー用カム10と、ペアシンカー11と、ヤーンキャリアリングサポート14と、ヤーンキャリアリング15と、ヤーンキャリアホルダ16と、ヤーンキャリア17とを備える。丸編機1は、回転シリンダ3の軸心が上下方向に向くように設置されている。
【0048】
フレーム2は、丸編機1の主な構成部材を支持する。フレーム2は、略円筒状に構成されている。フレーム2の内部には、回転シリンダ3及びシンカーダイアル7が支持されている。またフレーム2の内部には、図示しない巻取装置、回転シリンダ3等の図示しない動力源等が設けられている。フレーム2の外周部分には、シンカーキャップ8及びヤーンキャリアリングサポート14が設けられている。
【0049】
回転シリンダ3は、複数の編針6を連続して移動させる部材である。回転シリンダ3は、略円筒状に形成されている。また、回転シリンダ3は、軸心を回転中心として図示しない動力源によって回転可能に構成されている。回転シリンダ3の外周には、編針6を収納且つ案内する溝である複数の編針溝3aが形成されている。編針溝3aは、回転シリンダ3の軸心方向に延びるように形成されている。また、編針溝3aは、回転シリンダ3の周方向に等間隔に形成されている。つまり、編針溝3aは、回転シリンダ3の軸心を中心として等しい中心角度毎に回転シリンダ3の外周面に形成されている。
【0050】
編針用カムフォルダ4は、編針6を移動させる編針用カム5を収納する部材である。編針用カムフォルダ4は、略円筒状に形成されている。編針用カムフォルダ4は、回転シリンダ3の軸心と編針用カムフォルダ4の軸心とが重複するようにフレーム2に支持されている。これにより、編針用カムフォルダ4の内周と回転シリンダ3の外周とは、軸心方向から見て同心円状に配置される。編針用カムフォルダ4の内周には、編針用カム5が着脱自在に収納されている。編針用カム5は、回転シリンダ3の回転角度毎の編針6の上下方向(回転シリンダ3の軸心方向)の位置を決定する円筒溝カムである。編針用カム5は、回転シリンダ3の編針溝3aと対向するように配置されている。
【0051】
編針6は、糸の途中部をオールドループRoにくぐらせる(ノックオーバーさせる)ことで糸を編み込む編地編成用の針である。編針6は、棒状に形成された板材から形成されている。編針6の先端部には、糸を捉えるフック6aが形成されている。フック6aには、開口部分を開閉可能なラッチ6bが設けられている。編針6は、フック6aの開口部分がラッチ6bによって閉じられている場合、フック6aに糸が引っかからない。編針6の途中部分には、編針6の長手方向に垂直な方向且つ板材の板面に沿って突出する編針突出部6cが形成されている。編針6は、回転シリンダ3の編針溝3aにそれぞれ挿入されている。また、編針突出部6cは、編針用カム5のカム溝に挿入されている。これにより、各編針6は、回転シリンダ3と一体に回転するとともに、編針用カム5のカム溝に沿って上下方向に移動される。
【0052】
シンカーダイアル7は、複数のペアシンカー11を連続して移動させる部材である。シンカーダイアル7は、略円板状に形成されている。シンカーダイアル7は、回転シリンダ3の軸心にシンカーダイアル7の軸心が重複するように回転シリンダ3に固定されている。つまり、シンカーダイアル7は、回転シリンダ3と一体に回転する。シンカーダイアル7の上面には、ペアシンカー11を収納且つ案内する溝である複数のシンカー溝7aが形成されている。また、シンカー溝7aは、シンカーダイアル7の周方向に等間隔に形成されている。シンカー溝7aは、シンカーダイアル7の軸心を中心として等しい中心角度毎にシンカーダイアル7の径方向に延びている。また、シンカーダイアル7は、回転シリンダ3の隣接する編針溝3aの間にシンカー溝7aが位置するように、回転シリンダ3に固定されている。
【0053】
シンカーキャップ8は、ペアシンカー11を移動させる第1シンカー用カム9および第2シンカー用カム10を収納する部材である。シンカーキャップ8は、略円板状に形成されている。シンカーキャップ8は、回転シリンダ3の軸心にシンカーキャップ8の軸心が重複するようにフレーム2に配置されている。シンカーキャップ8の下面は、シンカーダイアル7の上面に対向している。シンカーキャップ8の下面には、第1シンカー用カム9および第2シンカー用カム10が着脱自在に収納されている。第1シンカー用カム9および第2シンカー用カム10は、シンカーダイアル7の径方向におけるペアシンカー11の回転角度毎の位置を決定する板カムである。第1シンカー用カム9および第2シンカー用カム10は、シンカーダイアル7のシンカー溝7aと対向するように配置されている。
【0054】
ペアシンカー11は、供給される糸の編針6への分配、オールドループRoの保持、編針6のオールドループRoのくぐり抜けの補助などを行う部材である。ペアシンカー11は、シンカーダイアル7の複数のシンカー溝7aにそれぞれ移動可能な状態で収納されている。また、各ペアシンカー11は、回転シリンダ3に収納されている隣り合う編針6の間に配置されている。ペアシンカー11は、第1シンカー12と第2シンカー13とから構成される。従って、一のシンカー溝7aには、第1シンカー12と第2シンカー13とがそれぞれ挿入されている。第1シンカー12には、シンカー溝7aよりも上方に突出する第1シンカー突出部12f(
図2参照)が形成されている。同様に第2シンカー13には、シンカー溝7aよりも上方に突出する第2シンカー突出部13d(
図3参照)が形成されている。第1シンカー突出部12fは、第1シンカー用カム9のカム溝に挿入されている。第2シンカー突出部13dは、第2シンカー用カム10のカム溝に挿入されている。これにより、第1シンカー12及び第2シンカー13は、シンカーダイアル7と一体に回転するとともに、第1シンカー用カム9および第2シンカー用カム10によって回転シリンダ3の径方向(シンカーダイアル7の径方向)にそれぞれ独立して移動される。
【0055】
ヤーンキャリアリングサポート14は、ヤーンキャリアリング15を支持する部材である。ヤーンキャリアリングサポート14は、複数の棒状部材から構成されている。ヤーンキャリアリングサポート14は、フレーム2の外周部分から上方に延びるようにしてフレーム2の周方向に複数固定されている。複数のヤーンキャリアリングサポート14は、先端部分にヤーンキャリアリング15が固定されている。ヤーンキャリアリング15には、複数のヤーンキャリアホルダ16が設けられている。さらに、ヤーンキャリアホルダ16には、糸を編針6及びペアシンカー11の近傍に案内するヤーンキャリア17が設けられている。ヤーンキャリア17は、編針6及びペアシンカー11の上方に配置されている。
【0056】
このように構成される丸編機1は、複数のヤーンキャリアホルダ16からヤーンキャリア17を介して複数の糸を編針6及びペアシンカー11の近傍に供給する。丸編機1は、回転シリンダ3を回転させることで編針6によってそれぞれの糸を捉えるとともに、ペアシンカー11によって糸の編針6への分配、ループの支持を行う。更に丸編機1は、回転シリンダ3を回転させることで編針6を上下に移動させつつ、ペアシンカー11を回転シリンダ3の径方向に移動させて複数の糸をオールドループRoに絡ませて編地を連続的に編成していく。
【0057】
<ペアシンカー11>
次に、
図2及び
図3を用いてダブルフリース編地用のペアシンカー11について具体的に説明する。第1シンカー12と第2シンカー13とは、同一のシンカー溝7aに挿入されている。
図2は、ペアシンカー11を構成する第1シンカー12の側面図である。
図3は、ペアシンカー11を構成する第2シンカー13の側面図である。
図4は、シンカー溝7aに挿入されたペアシンカーの側面図及び上面図である。
【0058】
図2に示すように、第1シンカー12は、レイイン糸r、タイイン糸t及びニットイン糸kを支持する板状部材である。第1シンカー12は、第1シンカー基部12a、下支持部12b、上支持部12c、第1シンカー係合部12d、溝部12e及び第1シンカー突出部12fを有する。第1シンカー12は、シンカーダイアル7のシンカー溝7a内で、回転シリンダ3の径方向内方(以下、単に「径方向内方」と記す)である矢印Ar1方向と回転シリンダ3の径方向外方(以下、単に「径方向外方」と記す)である矢印Ar2方向とに移動可能に構成されている。
【0059】
第1シンカーの基部である第1シンカー基部12aは、第1シンカー12の各部を支持する基礎となる板状部分である。第1シンカー基部12aは、側面視で略長方形状に形成されている。第1シンカー基部12aは、シンカー溝7aに挿入されている。第1シンカー基部12aの一方の板面は、シンカー溝7aの側面に摺動自在に接触している。
【0060】
図4に示すように、第1シンカー基部12aの他方の板面は、第2シンカー13(薄墨部分)における第2シンカー基部13aの一方の板面に摺動自在に接触している。第1シンカー基部12aの下端面は、シンカー溝7aの底面に摺動自在に接触している。つまり、第1シンカー12は、シンカーダイアル7における周方向の位置と、上下方向の位置とが定められる。このように、長方形状の第1シンカー基部12aは、シンカー溝7a内に挿入されることで第1シンカー12の姿勢及び移動状態を安定させる。
【0061】
図2に示す下支持部12bは、オールドループRo、レイイン糸r、タイイン糸t及びニットイン糸kを支持する部分である。下支持部12bは、側面視において略長方形状に形成されている。下支持部12bは、第1シンカー基部12aよりも上方であって、第1シンカー基部12aから径方向内方(矢印Ar1方向)に延びるように配置されている。下支持部12bの上端面12hは、シンカー溝7aよりも上方に突出している。下支持部12bは、上端面12hによってオールドループRo、レイイン糸r、タイイン糸t及びニットイン糸kを支持する。
【0062】
上支持部12cは、レイイン糸r、タイイン糸t及びニットイン糸kを支持する部分である。上支持部12cは、側面視において下支持部12bよりも短い略長方形状に形成されている。上支持部12cは、下支持部12bよりも上方であって、第1シンカー基部12aから径方向内方に延びるように配置されている。上支持部12cは、上端面12gによってレイイン糸r、タイイン糸t及びニットイン糸kを支持する。また、上支持部12cの上端面12gの先端は、レイイン糸r、タイイン糸t及びニットイン糸kを下方に落とすための傾斜面が形成されている。更に、上支持部12cの前端面には、第2シンカー13に引っかけられているレイイン糸rのループRrを下方に落とすための第1シンカー係合部12dが形成されている。第1シンカー係合部12dは、第1シンカー12の板面に垂直な方向に見て上支持部12cの上端面12gから上支持部12cの下端面まで径方向内方に膨出する陥没のない外縁を有するように形成されている。これにより、第1シンカー係合部12dは、径方向内方及び下方の端面に接触したレイイン糸r、タイイン糸t及びニットイン糸kを下支持部12bに案内するガイドとしての機能を有している。
【0063】
溝部12eは、オールドループRoを捉える部分である。溝部12eは、下支持部12bの上端面12hと上支持部12cの下端面とから構成されている。つまり、溝部12eは、下支持部12bと上支持部12cとの間に形成されている。溝部12eは、下支持部12bの上端面12hに支持されているオールドループRoが編針6の上方向の移動に連れられて上方に浮き上がらないように下支持部12bの上端面12hと上支持部12cの下端面とで捉える。
【0064】
第1シンカー突出部12fは、第1シンカー用カム9からの力を第1シンカー12に伝達する部分である。第1シンカー突出部12fは、第1シンカー基部12aの途中部に形成されている。第1シンカー突出部12fは、第1シンカー12の板面に沿うように第1シンカー基部12aからシンカー溝7aよりも上方に突出している。第1シンカー突出部12fは、第1シンカー用カム9のカム溝に挿入されている。
【0065】
図3に示す第2シンカー13は、レイイン糸r及びニットイン糸kを押し出す板状部材である。第2シンカー13は、第2シンカー基部13a、挿入部13b及び第2シンカー係合部13cを有する。第2シンカー13は、シンカーダイアル7のシンカー溝7a内で、径方向内方である矢印Ar1方向と径方向外方である矢印Ar2方向とに移動可能に構成されている。
【0066】
第2シンカーの基部である第2シンカー基部13aは、第2シンカー13の各部を支持する基礎となる板状部分である。第2シンカー基部13aは、側面視において略長方形状に形成されている。第2シンカー基部13aは、シンカー溝7aに挿入されている。
【0067】
図4に示すように、第2シンカー基部13aの一方の板面は、第1シンカー基部12aの他方の板面に摺動自在に接触している。第1シンカー基部12aの他方の板面は、シンカー溝7aの側面に摺動自在に接触している。第2シンカー基部13aの下端面は、シンカー溝7aの底面に摺動自在に接触している。つまり、第2シンカー13は、シンカーダイアル7における周方向の位置と、上下方向の位置とが定められる。このように、長方形状の第2シンカー13支持部は、シンカー溝7a内に挿入されることで第2シンカー13の姿勢及び移動状態を安定させる。
【0068】
図3に示す挿入部13bは、レイイン糸rのループRrに挿入される部分である。挿入部13bは、側面視において径方向内方(矢印方向)に突出している。挿入部13bの先端は、レイイン糸rのループRrの内径よりも小さく形成されている。挿入部13bは、第2シンカー基部13aよりも上方であって第1シンカー基部12aから径方向内方に延びるように配置されている。
【0069】
図3と
図4とに示すように、挿入部13bの上端面13eは、側面視においてシンカー溝7aに挿入されている第1シンカー12における上支持部12cの上端面12gよりも下方に位置している。更に、挿入部13bの下端面13fは、側面視において第1シンカー12における下支持部12bの上端面12hよりも上方に位置している。このように構成することで、挿入部13bの先端は、上支持部12cの上端面12gから下支持部12bの上端面12hまでの間に位置するレイイン糸rのループRrの内径部分の範囲に含まれる。挿入部13bは、レイイン糸rのループRrが上支持部12cの上端面12gから離隔した直後からレイイン糸rのループRrに挿入することができる。これにより、ペアシンカー11は、レイイン糸rのループRrに挿入部13bを挿入可能な時間を増大させることができる。
【0070】
図3に示す第2シンカー係合部13cは、レイイン糸r及びタイイン糸tを押し出す部分である。第2シンカー係合部13cは、挿入部13bの第2シンカー基部13a側の端部である基端から上方且つ径方向内方に向かって延びるように形成されている。つまり、第2シンカー係合部13cは、径方向内方に傾いた端面である。第2シンカー係合部13cの下端は、前記挿入部13bの上端面13eに接続されている。また、第2シンカー係合部13cは、第1シンカー12における上支持部12cの上端面12gよりも下方から上支持部12cの上端面12gよりも上方に亘るように配置されている。このように構成されることで、径方向内方に傾いた第2シンカー係合部13cは、回転シリンダ3の内方にレイイン糸r及びタイイン糸tを係合して押し出すことができる。また、シンカー溝7aに挿入されている第1シンカー及び第2シンカーの側面視において、第2シンカー係合部13cは、第1シンカー12における上支持部12cの上端面12gよりも下方から上端面12gよりも上方に亘るように位置している。このように、第2シンカー係合部13cは、第1シンカー12における上支持部12cの上端面12gに支持されているレイイン糸rおよびタイイン糸tを押し出すことができるように構成されている。
【0071】
第2シンカー突出部13dは、第2シンカー用カム10からの力を第2シンカー13に伝達する部分である。第2シンカー突出部13dは、側面視において第1シンカー突出部12fに重複しない位置に形成されている。本実施例では、第2シンカー突出部13dは、第2シンカー基部13aの途中部に形成されているが、これは端でもよく、限定されない。第2シンカー突出部13dは、第2シンカー13の板面に沿うように第2シンカー基部13aからシンカー溝7aよりも上方に突出している。第2シンカー突出部13dは、第2シンカー用カム10のカム溝に挿入されている。
【0072】
<ダブルフリース編地の編成方法>
次に、ペアシンカー11を備える丸編機1によるダブルフリース編地の編成方法について説明する。ダブルフリース編地は、タイイン糸tとニットイン糸kとから編成される基礎編地裏面にレイイン糸rのループRrが形成されている編地である。丸編機1は、レイイン糸r、タイイン糸t、ニットイン糸kの順で供給される各糸によってダブルフリース編地を編成する。また、丸編機1は、一の編針6と、一の編針6における回転シリンダ3の周方向一方に位置する第1シンカー12と一の編針6における回転シリンダ3の周方向他方に位置する第2シンカー13とによってレイイン糸r、タイイン糸t及びニットイン糸kのループを形成する。
【0073】
図5は、ダブルフリース編地の編成方法における各工程のフローチャートを示す図である。ペアシンカー11を備える丸編機1によるダブルフリース編地の編成方法は、レイイン糸ループ形成工程S1と、タイイン糸ループ形成工程S2と、ニットイン糸ループ形成工程S3と、編成工程S4と、レイイン糸調整工程S5と、オールドループ形成工程S6とを含む。
図6は、ダブルフリース編地の編成方法における編針6、第1シンカー12及び第2シンカー13の動作線図である。
図6における実線は、第1シンカー12の動作線図である。破線は、第2シンカー13の動作線図である。2点鎖線は、編針6の動作線図である。第1シンカー12の動作線図と第2シンカー13の動作線図とは、基準線から矢印Ar3の方向に向かうにつれて丸編機1の径方向外方に移動している。編針6の動作線図は、基準線から矢印Ar4の方向に向かうにつれて丸編機1の上方向に移動している。
【0074】
図7は、レイイン糸ループ形成工程S1におけるレイイン糸rの供給状態を示す図である。
図5から
図7に示すように、レイイン糸ループ形成工程S1において、第1シンカー12は、可動範囲内において最も径方向内方の前進位置P1に配置される。第2シンカー13(薄墨部分)は、可動範囲内において最も径方向外方の後進位置P6に移動される(
図6におけるA参照)。第2シンカー13は、編針6よりも径方向外方に位置している。フック6aとラッチ6bは、第1シンカー12の上支持部12cよりも上方に移動される。この際、フック6aとラッチ6bは、オールドループRoを通過している状態である。つまり、オールドループRo内には、編針6が配置されている。この位置関係において、レイイン糸rは、ヤーンキャリア17から第1シンカー12の上支持部12cよりも上方且つ編針6と第2シンカー13との間に供給される。このとき、レイイン糸rは、開いたラッチ6bよりも下に供給される。
【0075】
図8は、レイイン糸ループ形成工程S1におけるレイイン糸rの押し出し状態とタイイン糸ループ形成工程S2におけるタイイン糸tの供給状態を示す図である。
図5、
図6及び
図8に示すように、レイイン糸ループ形成工程S1において、第2シンカー13は、移動される(
図6におけるB参照)。第2シンカー13の第2シンカー係合部13cは、編針6よりも径方向内方まで移動される。レイイン糸rは、第2シンカー13の第2シンカー係合部13cによって編針6よりも径方向内方に押し込まれる。レイイン糸rには、編針6と第2シンカー13によってループRrが形成される。
【0076】
図5、
図6及び
図8に示すように、タイイン糸ループ形成工程S2において、タイイン糸tは、第2シンカー13よりも上方、且つ編針6のフック6aよりも下方に供給される。
【0077】
図9は、タイイン糸ループ形成工程S2におけるタイイン糸tの引き込み状態を示す図である。
図5、
図6及び
図9に示すように、タイイン糸ループ形成工程S2において、第2シンカー13は、前進位置P3よりも径方向外方の前中間位置P4まで移動される(
図6におけるC参照)。タイイン糸tは、編針6のフック6aに捉えられた状態で編針6によって第1シンカー12の上支持部12cの上端面12gよりも下方に引き込まれる(
図6におけるC参照)。この際、タイイン糸tは、レイイン糸rをくぐりぬける。編針6のラッチ6bは、オールドループRoによって閉じられる。これにより、タイイン糸のループRtが形成される。
【0078】
図10は、タイイン糸ループ形成工程S2におけるタイイン糸tの押し出し状態を示す図である。
図5、
図6及び
図10に示すように、タイイン糸ループ形成工程S2において、第2シンカー13は、前中間位置P4よりも径方向内方の前進位置P3まで移動される(
図6におけるD参照)。レイイン糸rとタイイン糸tとは、第2シンカー係合部13cによって編針6よりも径方向内方に押し込まれる。同時に、タイイン糸tは、第1シンカー12の上支持部12cまで持ち上げられる(
図6におけるD参照)。これより、タイイン糸tのループRtは、略上下方向の姿勢から略水平方向の姿勢になる。更に、タイイン糸tは、レイイン糸rとともに編針6よりも径方向内方に押し出される。編針6のラッチ6bは、タイイン糸のループRtによって開かれる。
【0079】
図11は、ニットイン糸ループ形成工程S3におけるニットイン糸kの供給状態を示す図である。
図5、
図6及び
図11に示すように、ニットイン糸ループ形成工程S3において、ニットイン糸kは、ヤーンキャリア17から第1シンカー12の上支持部12cよりも上方であって編針6のフック6aよりも下方に供給される(
図6におけるE参照)。
【0080】
図12は、ニットイン糸ループ形成工程S3におけるニットイン糸kの引き込み状態を示す図である。
図5、
図6及び
図12に示すように、ニットイン糸ループ形成工程S3において、第2シンカー13は、前進位置P3よりも径方向外方の後中間位置P5まで移動される(
図6におけるF参照)。タイイン糸tのループRtとニットイン糸kとは、編針6によって第1シンカー12の上支持部12cの上端面12gよりも下方に引き込まれる(
図6におけるF参照)。この際、ニットイン糸kは、フック6aの内周面にそって移動することでタイイン糸tのループRtよりも径方向外方に配置される。これにより、ニットイン糸kは、タイイン糸tのループRtよりも径方向外方にニットイン糸kのループRkが形成される。編針6のラッチ6bは、オールドループRoで閉じられる。
【0081】
図13は、編成工程S4における第1シンカー12の上支持部12cから糸を外す状態を示す図である。
図5、
図6及び
図13に示すように、編成工程S4において、第1シンカー12は、可動範囲内で最も径方向外方の後進位置P2に向かって矢印の方向に移動される(
図6におけるG参照)。第1シンカー12の上支持部12cに支持されているレイイン糸r、タイイン糸tのループRt及びニットイン糸kのループRkは、第1シンカー12の上支持部12cから下支持部12bに向かって落とされる(外される)。同時に、タイイン糸tのループRt及びニットイン糸kのループRkとは、編針6によって第1シンカー12の下支持部12bよりも下方に引き込まれる(
図6におけるG参照)。この際、タイイン糸tのループRt及びニットイン糸kのループRkは、オールドループRoをくぐりぬける(ノックオーバーする)。つまり、タイイン糸tのループRt及びニットイン糸kのループRkは、第1シンカー12の下支持部12bに支持されている既に編成されたオールドループRoに絡まる。
【0082】
図14は、編成工程S4におけるタイイン糸tとニットイン糸kとのオールドループRoへの絡みとレイイン糸調整工程S5におけるレイイン糸rを引っかけた状態を示す図である。
図5、
図6及び
図14に示すように、レイイン糸調整工程において、編成工程S4で第1シンカー12の上支持部12cからレイイン糸rのループRr、タイイン糸tのループRt及びニットイン糸kのループRkが落とされた際、第2シンカー13は、後中間位置P5よりも径方向内方の前進位置P3に向かって矢印の方向に移動される(
図6におけるH参照)。レイイン糸rのループRrには、第2シンカー13の挿入部13bが挿入される。
【0083】
図15は、レイイン糸調整工程S5におけるレイイン糸rの押し出しを示す図である。
図5、
図6及び
図15に示すように、レイイン糸r調整工程において、第2シンカー13は、後中間位置P5よりも径方向内方の前進位置P3に移動される(
図6におけるI参照)。にレイイン糸rのループRrは、第2シンカー13の第2シンカー係合部13cによって径方向内方に押し出される(
図6におけるI参照)。これにより、タイイン糸tのループRtに絡んでいるレイイン糸rのループRrの根元は、タイイン糸tのループRtによって編成される基礎編地の表面からニットイン糸kのループRkによって編成される基礎編地の裏面側に引かれる。レイイン糸rのループRrの根元が基礎編地の表面に突出している場合、レイイン糸rのループRrの根元は、基礎編地の表面から基礎編地の裏面側に引きこまれる。
【0084】
図16は、オールドループ形成工程S6におけるレイイン糸rのループRrを外す状態を示す図である。
図5、
図6及び
図16に示すように、オールドループ形成工程S6において、第1シンカー12は、後進位置P2よりも径方向内方の前進位置P1に移動される。合わせて、第2シンカー13は、径方向外方に向かって矢印の方向に移動される(
図6におけるJ参照)。これにより、レイイン糸rのループRrは、第1シンカー12によって径方向外方への移動が止められる。そして第2シンカー13の挿入部13bからレイイン糸rのループRrが脱がされる。これにより、移動第2シンカー13の挿入部13bから第1シンカー12の下支持部12bに落とされる。タイイン糸tのループRt及びニットイン糸kのループRkによるニューループRnは、編針6に捉えられており、次のフィーダでオールドループRoとなる。
【0085】
このように丸編機1が備えるダブルフリース編地用のペアシンカー11を構成する第2シンカー13の挿入部13bは、第1シンカー12の上支持部12cの上端面12gよりも下方、且つ第1シンカー12の下支持部12bの上端面12hよりも上方に位置している。従って、編成工程S4において、第1シンカー12の上支持部12cから落とされたレイイン糸rのループRrは、第1シンカー12の下支持部12bに到達するまでの間に径方向内方に移動される第2シンカー13の挿入部13bが挿入される。レイイン糸rのループRrは、第2シンカー13によって所定の移動量だけ径方向内方に押し出される。つまり、レイイン糸rのループRrは、第2シンカー13によって確実に所定量だけ基礎編地の裏面側に引っ張っている。
【0086】
また、レイイン糸rのループRrは、第2シンカー13の挿入部13bが引き抜かれながら、第1シンカー12の第1シンカー係合部12dによって径方向内方に押し出される。つまり、レイイン糸rのループRrは、第1シンカー係合部12dによって径方向内方に押し出された状態を維持されながら第2シンカー13の挿入部13bが抜かれるので緩みが発生しない。これにより、ペアシンカー11、ペアシンカー11を備える丸編機1及びダブルフリース編地の編成方法は、レイイン糸r、タイイン糸t及びニットイン糸kの状態、ペアシンカー11の状態及び周囲の環境が変化した場合でも、ペアシンカー11によって基礎編地の表面におけるレイイン糸rのループRrの突出を抑制することができる。
【0087】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0088】
本実施形態において、ペアシンカー11、ペアシンカー11を備える丸編機1、丸編機1によるダブルフリース編地の編成方法は、レイイン糸r、タイイン糸t、ニットイン糸kの順で供給される各糸によってダブルフリース編地を編成している。しかしながら、ペアシンカー、前記ペアシンカーを備える丸編機、前記丸編機によるダブルフリース編地の編成方法によって編成されるダブルフリース編地は、2本の糸から表のループと裏のループとから構成される基礎編地を編成するとともにうろこ状の裏毛を裏の編地に別の糸で編成されていればよい。
【符号の説明】
【0089】
1 丸編機
3 回転シリンダ
11 ペアシンカー
12 第1シンカー
12b 下支持部
12c 上支持部
13 第2シンカー
13b 挿入部
13c 第2シンカー係合部
r レイイン糸
t タイイン糸
k ニットイン糸
Rr レイイン糸のループ