(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085803
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】スポット式換気クリーンシステム、並びに可変式フェイスシールド
(51)【国際特許分類】
F24F 7/10 20060101AFI20220601BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20220601BHJP
A61L 2/232 20060101ALI20220601BHJP
A61L 9/03 20060101ALI20220601BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20220601BHJP
A61L 9/16 20060101ALI20220601BHJP
F24F 6/16 20060101ALI20220601BHJP
F24F 6/00 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
F24F7/10 Z
A61L2/10
A61L2/232
A61L9/03
A61L9/20
A61L9/16 F
F24F6/16
F24F6/00 D
F24F6/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020207953
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】597149951
【氏名又は名称】株式会社三六九
(71)【出願人】
【識別番号】501176303
【氏名又は名称】日環科学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】宮本 久
(72)【発明者】
【氏名】宮本 浩邦
(72)【発明者】
【氏名】永塚 孝幸
【テーマコード(参考)】
3L055
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
3L055AA07
3L055BB01
3L055DA11
3L055DA12
4C058AA23
4C058AA30
4C058BB06
4C058BB07
4C058BB09
4C058CC04
4C058DD16
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4C058KK44
4C180AA07
4C180AA16
4C180CC03
4C180DD03
4C180DD09
4C180EA06X
4C180EC01
4C180EC03
4C180LL20
4C180MM03
4C180MM08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】局所的な空間における環境微生物のポピュレーション制御が可能となる、スポット式加湿・換気クリーンシステム、並びに可変式フェイスシールドを提供する。
【解決手段】局所的な空間に存在しうる病原体感染者由来の微生物のポピュレーションを、加湿、換気、抗菌、濾過などの衛生管理技術を効率的に組み合わせて制御するシステムであり、さらに病原体感染者自体の生体防御機能を賦活化する機能も合わせて促すことによって、感染症の蔓延を制御するスポット式換気クリーンシステム、並びに可変式フェイスシールドである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所空間におけるミスト噴霧による加湿と当該空間の換気を可能とすることを特徴とするスポット式換気クリーンシステム。
【請求項2】
HEPAフィルターユニットをジョイントし、浄化性能を向上させることを特徴とする請求項1記載のスポット式換気クリーンシステム。
【請求項3】
紫外線照射フィルターユニットをジョイントし、殺菌・殺ウイルス性能を向上させることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか一項に記載のスポット式換気クリーンシステム。
【請求項4】
酸化チタンを塗布することによって、抗菌・抗ウイルス性能を向上させることを特徴とする請求項1至乃3のいずれか一項に記載のスポット式換気クリーンシステム。
【請求項5】
銀イオン系抗菌・抗ウイルス製剤を塗布することによって、抗菌・抗ウイルス性能を向上させることを特徴とする請求項1至乃4のいずれか一項に記載のスポット式換気クリーンシステム。
【請求項6】
発酵微生物由来のランチバイオテックを噴霧することによって、空間内の環境微生物叢を制御するとともに、生体における直接的な生体防御性能を向上させることを特徴とする請求項1至乃5のいずれか一項に記載のスポット式換気クリーンシステム。
【請求項7】
植物由来の揮発性成分を噴霧することによって、空間内の環境微生物叢を制御するとともに、生体における直接的な生体防御性能を向上させることを特徴とする請求項1至乃6のいずれか一項に記載のスポット式換気クリーンシステム。
【請求項8】
請求項1至乃7のいずれか一項に記載のスポット式換気クリーンシステムを顔面に装着することが可能なフェイスシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所的な空間に存在しうる病原体感染者由来の微生物のポピュレーションを、加湿、換気、抗菌、濾過などの衛生管理技術を効率的に組み合わせて制御するシステムであり、さらに病原体感染者自体の生体防御機能を賦活化する機能も合わせて促すことによって、感染症の蔓延を制御するスポット式換気クリーンシステム、並びに可変式フェイスシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な未知の感染症に対する対策は、喫緊の課題であり、包括的な対応が望まれている。重要で感染症の予防法として、マスクの装着、フェイスマスク、フェイスシールド、消毒剤として、エタノール、次亜塩素酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウムをはじめとした消毒剤の使用をはじめとして衛生管理に関わる様々な対策が必要となっている(非特許文献1)。
【0003】
また、自然由来の成分としては、一般論として植物由来の揮発性成分は、細菌やウイルスに対する減弱化、あるいは消毒剤的に働きうることが知られており、フィトンチッドなどと言われている。免疫系の賦活化機能や精神的にもリラックス機能などが知られているため森林浴としての重要性も指摘されている(非特許文献2,3,4)
【0004】
さらに、病原性微生物に対する対策としては、ワクチン(vaccine)の開発も進められているが、一般的には生ワクチン、微生物の機能を不活化させたワクチンが主流である。近年では、微生物の遺伝情報を活用したRNAワクチンやDNAワクチン、並びに遺伝子情報を活用して植物で発現させる植物由来ワクチンなどの新しい手法も生まれている(非特許文献5,6,7,8)。これらのワクチンは、対象となる病原性微生物に対して特異的な効果をもたらすIgGを選択的に誘導することを主たる目的としている。
【0005】
一方、力価が弱いものの、病原性微生物に対して効果を有する分泌型IgAを誘導することを目的としたワクチンとして経鼻ワクチンが知られている(非特許文献5,9)。
鼻腔粘膜、並びに気道粘膜においても同様のM細胞による抗原取り込みのシステムが、認められることが示唆されている(非特許文献10,11)。
【0006】
経気道における免疫システムの賦活化においては、細菌由来Heat shock protein 65(HSP65)、特にMycobacterium leprae 由来のHSP65に免疫賦活効果があることが知られている(非特許文献12,13)。一方、これらの効果を活用した結核菌に対するワクチン開発の試みもされている(非特許文献14,15)。このように、粘膜システムでは、HSP60やHSP65が、細胞との結合、あるいはアジュバンド的活性などを有して生体防御を調節する可能性が示唆されている。
【0007】
ハード面では、従来より活用されている紫外線(UV-C、UV222nm)(非特許文献16,17,18)(特許文献1)、銀イオン(特許文献2)、あるいはラジカル反応(特許文献3)、プラズマ放電(特許文献4)などを利用した殺菌、殺ウイルス機能を活用した衛生管理システムも普及し、これらを効率的に使用する必要性が想定されている。また、ウイルス感染しにくい室内環境としては、湿度として40-60%が重要であることが明らかになっているまた、ウイルス感染しにくい室内環境としては、湿度として40-60%が重要であることが明らかになっている(非特許文献19)。
【0008】
動物と細菌との共生関係に目を向けると、近年、常在細菌叢と宿主の生理機能・病態との関係性は急速に明らかになってきている。例えば、ヒト腸管内には1,000種類以上、40兆個を超える腸内細菌が生息しつつ、複雑な腸内生態系を形成し、それらが宿主の組織と相互作用して、健康維持に貢献することが知られている。したがって、これらの腸内生態系のバランスが乱れると、いわゆるdysbiosisによって、さまざま疾患の発症につながるため(非特許文献20,21,22)、腸内を制御するプロバイオティクス、並びにプレバイオティクスの必要性が認知されている。
【0009】
なお、発明者等は、これまでに常温領域で増殖しにくい極限環境微生物の一つである好熱性Bacillus属菌群を活用して、動物の生体に影響するプロバイオティクスの開発に成功しており、特に、鶏、豚、牛などの家畜、魚類、並びにモデル動物としてのげっ歯類として、マウスとラットの腸内細菌叢を制御し、その際に生体に対して好影響を与えうる可能性を示唆している(特許文献5,6,非特許文献22,23)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2018-517488 米国コロンビア大学
【特許文献2】特許第6689613号 マルゼン 抗ウイルス繊維
【特許文献3】特許3680121号 シャープ プラズマクラスター
【特許文献4】特許3775421号 ダイキン ストリーマ
【特許文献5】特許第5578375号
【特許文献6】特許第5041228号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/syoudoku_00001.html
【非特許文献2】トーキン,ボリス・ペトロヴィッチ、神山恵三『植物の不思議な力=フィトンチッド:微生物を殺す樹木の謎をさぐる』講談社〈ブルーバックス B-424〉、1984年
【非特許文献3】https://www.fo-society.jp/therapy/expe.html
【非特許文献4】http://www.fc.chiba-u.jp/research/naturetherapy/
【非特許文献5】第22回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会2019年12月25日「ワクチンの研究開発について」https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000580437.pdf
【非特許文献6】DNAワクチンhttps://ja.wikipedia.org/wiki/DNAワクチン
【非特許文献7】RNAワクチンhttps://www.t.utokyo.ac.jp/shared/press/data/setnws_201710121450382322891478_608693.pdf
【非特許文献8】植物由来ワクチンhttps://www.mt-pharma.co.jp/ir/meeting/pdf/presen170927_M.pdf
【非特許文献9】経鼻ワクチン https://www.amed.go.jp/news/release_20190104.html
【非特許文献10】Shunsuke Kimura,Mami Mutoh,Meri Hisamoto,Hikaru Saito,Shun Takahashi,Takanori Asakura,Makoto Ishii,Yutaka Nakamura,Junichiro Iida,Koji Hase,Toshihiko Iwanaga.Airway M cells arise in the lower airway due to RANKL signaling and reside in the bronchiolar epithelium associated with iBALT in murine models of respiratory disease.Frontiers in Immunology (2019) DOI:10.3389/fimmu.2019.01323
【非特許文献11】氷見徹夫,郷充,高野賢一,黒瀬誠,小泉純一,他:アレルギー性鼻炎における鼻粘膜上皮バリアと抗原認識・提示機構.臨床免疫・アレルギー科47:427~433,2007.
【非特許文献12】Yeong-Ho Rha,Christian Taube,Angela Haczku,Anthony Joetham,Katsuyuki Takeda,Catherine Duez,Marvin Siegel,M.Kemal Aydintug,Willi K.Born,Azzeddine Dakhama and Erwin W.Gelfand.Effect of Microbial Heat Shock Proteins on Airway Inflammation and Hyperresponsiveness.Immunol 2002;169:5300-5307;doi:10.4049/jimmunol.169.9.5300
【非特許文献13】Yoo Seob Shin,Katsuyuki Takeda,Yoshiki Shiraishi,Yi Yeong Jeong,Joanne Domenico,Yi Jia,Junyan Han,Ralf Spallek,Mahavir Singh,Joseph J.Lucas,and Erwin W.Gelfand.Microbial Heat Shock Protein 65 Attenuates Airway Hyperresponsiveness and Inflammation by Modulating the Function of Dendritic Cells.Immunol.2012 October 1;189(7):3404―3410.doi:10.4049/jimmunol.1201138
【非特許文献14】岡田全司.新しい結核ワクチンの開発 Jpn.J.Clin.Immunol.,31 (5) 356-368(2008) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsci/31/5/31_5_356/_pdf
【非特許文献15】Pryscilla Fanini Wowk,Luis Henrique Franco,Denise Morais da Fonseca,Marina Oliveira Paula,Elcio dos Santos Oliveira Vianna,Ana Paula Wendling,Valeria Maria Augusto,Silvana Maria Eloi-Santos,Andrea Teixeira-Carvalho,Flavia Dias Coelho Silva,Solange Alves Vinhas,Olindo Assis Martins-Filho,Moises Palaci,Celio Lopes Silva & Vania Luiza Deperon Bonato.Mycobacterial Hsp65 antigen upregulates the cellular immune response of healthy individuals compared with tuberculosis patients.HUMAN VACCINES & IMMUNOTHERAPEUTICS 2017,VOL.13,NO.5,1040-1050
【非特許文献16】Fukui,T.et al.Exploratory clinical trial on the safety and bactericidal effect of 222-nm ultraviolet C irradiation in healthy humans.PLoS One 15(8),e0235948(2020).
【非特許文献17】https://clean.ushio.com/ja/care222/
【非特許文献18】https://www.aeroshield.co.jp/product/
【非特許文献19】https://40to60rh.com/ja/
【非特許文献20】Claesson,Marcus J.,et al.″Gut microbiota composition correlates with diet and health in the elderly.″Nature 488.7410(2012):178-184.
【非特許文献21】Le Chatelier E,Nielsen T,Qin J,Prifti E,Hildebrand F,Falony G,Almeida M,Arumugam M,Batto JM,Kennedy S,Leonard P,Li J,Burgdorf K,Grarup N,Jorgensen T,Brandslund I,Nielsen HB,Juncker AS,Bertalan M,Levenez F,Pons N,Rasmussen S,Sunagawa S,Tap J,Tims S,Zoetendal EG,Brunak S,Clement K,Dore J,Kleerebezem M,Kristiansen K,Renault P,Sicheritz-Ponten T,de Vos WM,Zucker JD,Raes J,Hansen T;MetaHIT consortium,Bork P,Wang J,Ehrlich SD,Pedersen O.Richness of human gut microbiome correlates with metabolic markers.Nature 500:541-549.(2013)
【非特許文献22】宮本浩邦、「22章 環境微生物と動物」、大野博司編「共生微生物」化学同人(Dojin Bioscience series No.27)、p.247-256(2016)
【非特許文献23】Miyamoto H,Seta M,Horiuchi S,Iwasawa Y,Naito T,Nishida A,Miyamoto H,Matsushita T,Itoh K,Kodama H(2013)Potential probiotic thermophiles isolated from mice after compost ingestion.Journal of Applied Microbiology,114(4):1147-1157
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
一般的に、これらの衛生管理技術は単独で用いている場合が、連携することによる効率的な運用は、消費者に委ねられている。連携した組み合わせによって、これまで活用することのできなかった衛生管理の空間を制御することにある。
【0013】
基本的な対処方法の1つとして室内の換気などが重要視されているが、空間内の換気をどのような条件下においても制御することは非常に困難である。また、対面する人と人との距離を開けずに、会話をせざるを得ない場合、現状ではマスク、通常のフェイスシールドなどが使用されているが、実際には、ある程度の病原体暴露の可能性を秘めている。
【0014】
また、消毒剤であれば、固定された汚染された部分を消毒することによって制御することが可能であり、UV照射などであれば、照射された範囲については、殺菌・殺ウイルスが可能であるが、感染源は人間であることから、特に呼気を介した直接的な感染に対しては、必ずしも効果的とは言えない。飛沫が直接、非感染者に対して曝露した場合、皮膚表面の消毒は、これらで可能だとしても、うがいなどによって、制御できるのは、鼻腔粘膜、並びに咽頭部の一部でしかない。すでに呼吸によって、肺に取り入れてしまった病原体を除去することは、生体防御反応によって制御するより他の方法はない。
【0015】
しかしながら、適切なワクチンが開発されていない場合、自己免疫力の賦活化に依存することとなり、効率的な制御は困難である。
【0016】
さらに、仮にワクチンがあったとしても、100%の効果があるわけではなく、個人差がある。ワクチンの機能を高めるためには、本来の宿主の免疫系が健全である必要がある。ワクチンの効果を引き出すための、薬剤、栄養剤、サプリメントなどとの相乗効果を捉えた上での研究開発はなかなか進められていないのが、現状である。
【解決するための手段】
【0017】
これらの問題点を解決するために、スポット的にエアカーテンができる簡易な換気システムが必要である。また、近年、重要性が指摘されている湿度とウイルス感染との関係においても、局所的に40-60%の湿度が維持されることは極めて重要である。
【0018】
そこで、机の前で着席している条件下の局所空間で、真向かいに人が対峙していても、あるいはフェイスシールドをしていても、簡便に有効な湿度を含むエアカーテンが存在し、かつ仮に病原菌や病原性ウイルスが存在していても、居所的な換気によって取り除くことができるシステムが必要である。
【0019】
さらに、空気清浄機などの既存のシステムを活用し、簡易的に吸引することによって、効率的なスポット換気が可能となれば、汎用性はさらに広がる。
【0020】
また、対人に対する曝露が少ない領域を設けた上で、紫外線などを活用することによって除菌、あるいはウイルス抑制することによって、効率的な換気と清浄化した空気の循環が必要とされる。
【0021】
また、森林由来のフィトンチッドなどを活用し、フィトンチッド自体による除菌、あるいはウイルス抑制効果と合わせて、免疫賦活化機能、あるいはアロマテラピー的なリラックス効果など活用することによって、相乗的な効果が期待できる。
【0022】
さらに、経鼻・経気道的に免疫系を刺激しうる微生物由来の細胞膜・壁成分、heat shock protein(HSP)、あるいはlantibioticsなどを曝露することによって、粘膜システム全体を動かし、腸内細菌叢の健全化をプロバイオティクスやプレバイオティクスとともに図ることによって、生体防御機能全体を高めることは重要である。噴霧する微生物の素材の応用事例としては、好熱菌(NITE国際寄託番号:BP-863)、ならびに好熱菌複合菌(ATCC国際寄託番号:PTA-1773)を含む発酵物は、腸内フローラを改善した上で、ウイルス感染防御に関与するサイトカインであるインターフェロンの発現を誘導する可能性が示唆されている(Journal of Bioscience and Bioengineering,114(5):500-505,2012;the Gene Expression Omnibus(GEO)database(access ID:GSE37732))。また、皮膚の創傷治癒、アレルギーの抑制などの効果が現場レベルで確認されている。これらの微生物由来のheat shock proteinの併用などによって、免疫系の賦活化作用が増強する可能性が期待している。
【0023】
世界的にも有名な衛生仮説(StrachanDP.Hayfever,hygiene,andhouseholdsize.BMJ299:12591260,1989)は、乳幼児期における環境要因の暴露の差によって、その後のアレルギーの発症率に差が生じ、非衛生的環境がその後のアレルギーの発症を低下させることを示した仮説であるが、この仮説は、現在では広く認知され、当該仮説を支持する多くのデータが蓄積され、多くの疾患との関係も指摘されている。すなわち、動物が生きていく上で、環境微生物群と共生できる環境の構築が重要であることを示唆していることになる。そのため、微生物由来の細胞膜・壁成分、heat shock protein(HSP)、あるいはlantibioticsなどの曝露は重要である。
【0024】
そこで、局所的な空間に存在しうる病原体感染者由来の微生物のポピュレーションを、加湿、換気、抗菌、濾過などの衛生管理技術を効率的に組み合わせて制御するシステムを提供する。
【0025】
又、病原体感染者自体の生体防御機能を賦活化する機能も合わせて促すことによって、感染症の蔓延を制御するスポット式換気クリーンシステム、並びに可変式フェイスシールドを提供する。
【0026】
即ち、その手段とするところは、局所空間におけるミスト噴霧による加湿と当該空間の換気を可能とすることを特徴とするスポット式換気クリーンシステムとしたことにある。又、HEPAフィルターユニットをジョイントし、浄化性能を向上させることにある。紫外線照射フィルターユニットをジョイントし、殺菌・殺ウイルス性能を向上させることにある。酸化チタンを塗布することによって、抗菌・抗ウイルス性能を向上させることにある。銀イオン系抗菌・抗ウイルス製剤を塗布することによって、抗菌・抗ウイルス性能を向上させることにある。発酵微生物由来のランチバイオテックを噴霧することによって、空間内の環境微生物叢を制御するとともに、生体における直接的な生体防御性能を向上させることにある。植物由来の揮発性成分を噴霧することによって、空間内の環境微生物叢を制御するとともに、生体における直接的な生体防御性能を向上させることにある。又、前記記載のスポット式換気クリーンシステムを顔面に装着することが可能なフェイスシールドとしたことにある。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、局所的な空間に存在しうる病原体感染者由来の微生物のポピュレーションを、加湿、換気、抗病原体、濾過などの衛生管理技術を効率的に組み合わせて制御するとともに、病原体感染者自体の生体防御機能を賦活化する機能も合わせて促すことによって、感染症の蔓延を制御することを目的としたシステム、あるいは備品である。
【0028】
これによって、対面による人との接触が必須であり、かつマスク着用ができない場合の病原体に対する防除が可能となり、排出されたウイルスが残存し、空気中に浮遊することを防ぐことができるため、包括的な防除が可能であるため、従来の問題を解決する。
又、本発明は、湿度、換気、抗病原体、濾過を効率的に組み合わせているのみならず、植物由来のフィトンチッドによる免疫賦活化機能やリラックス機能を合わせて活用させ、かつ微生物由来の細胞膜・壁成分、heat shock protein(HSP)、あるいはlantibioticsなどを噴霧することによって、免疫賦活化機能を向上させうる点において、従来の技術の存在価値を高めることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】卓上のスポット式クリーン換気システムの概要(正面)
【
図2】卓上のスポット式クリーン換気システムの概要(側面)
【
図3】卓上のスポット式クリーン換気システムと従来のシステムとの関係性を示す概念図
【
図4】クリーン換気システム付きのフェイスシールドの概要(側面)
【
図5】クリーン換気システム付きのフェイスシールドの概要(上面)
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0031】
本発明の卓上のスポット式クリーン換気システムは、病原体感染において比較的有効である40-60%の湿度条件を局所的に実現することを目的とする。また、合わせて局所的な換気を実現する。
【0032】
さらに、これらの換気をHEPAフィルター、紫外線照射などを含めて実施することによって、清浄化した空気が循環するようにする。
【0033】
合わせて、植物由来のフィトンチッド、ならびに微生物由来の微生物由来の細胞膜・壁成分、heat shock protein(HSP)、あるいはlantibioticsなどを噴霧することによって、生体防御機能を高めることを可能とする。
【0034】
さらに、フェイスシールドにおいても局所的にこのような換気可能な概念を集約し、簡便に対人の会話が可能とするとともに、食事なども可能になることが期待される。
【実施例0035】
図1,2に記載したように、卓上において、0.仕切板を透明なアクリル板を設置し、その上部に加湿が可能なユニットを装備する(1-1から1-3)。これによって、効率的な加湿が可能となる。加湿ユニットにおいては、コスト、並びに求める機能に依存してHEPAフィルター、並びに植物由来のフィトンチッド成分、環境共生製剤、具体的には微生物由来の微生物由来の微生物由来の細胞膜・壁成分、heat shock protein(HSP)、あるいはlantibioticsなどを添加できるようにする。また、居所的な換気を可能とするために、0.仕切板の下部に換気ユニットを装備する(2-1から2-3)。これによって、居所的な換気が可能となる。このような換気によって吸引される病原体は、HEPAフィルターを介する前段階で、局所的に紫外線による照射によって死滅させ、フィルターを介して二重で除去できるようにする。
【0036】
紫外線としては、UV222nmが比較的人体に対して安全であることが証明されているため、当該機器から紫外線が漏れないようにして少なくとも空気の流れが生ずるようにする。なお、空気の換気スピードとしては、想定吸引最大値として0.35m3/s以下が想定される。最低限、卓上内の1m3の空気が3分程度で換気されるように設定することが理想である。これによって、食堂やレストランなどの飲食店において使用する場合、顧客管理が比較的しやすくなることが期待される。なお、本システムは、あくまでも空気中に浮遊する飛沫を除去することを目的としているため、仕切板に付着、あるいは卓上の落ちる病原体は存在しうるため、必ず除菌・除ウイルスが可能な消毒剤などで消毒することは必要である。
【0037】
また、
図3に示したように、従来のシステムと併用することによって、清浄化した空気による換気やそのほかの免疫賦活機能、リラックス機能が付与されうることが期待される。
実施例1に記載したスポット式クリーン換気システムと併用することによって、人との食事空間、あるいは人が密集し、会話しうる環境条件下においても、感染リスクは最小限に抑えられることが期待される。