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  • 特開-感光性組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085859
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】感光性組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/033 20060101AFI20220601BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20220601BHJP
   G03F 7/029 20060101ALI20220601BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20220601BHJP
   G03F 7/095 20060101ALI20220601BHJP
   G03F 7/09 20060101ALI20220601BHJP
   G03F 7/00 20060101ALI20220601BHJP
   G03F 7/32 20060101ALI20220601BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20220601BHJP
   B41N 1/06 20060101ALI20220601BHJP
   B41C 1/00 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
G03F7/033
G03F7/027 501
G03F7/029
G03F7/031
G03F7/095
G03F7/09 501
G03F7/00 502
G03F7/32
G03F7/004 501
B41N1/06
B41C1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021175806
(22)【出願日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】2027003
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(71)【出願人】
【識別番号】508373925
【氏名又は名称】フリント グループ ジャーマニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】クンツ, マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ピーチ, クリスチャン
【テーマコード(参考)】
2H084
2H114
2H196
2H225
【Fターム(参考)】
2H084AA30
2H084AA32
2H084BB02
2H084BB04
2H084BB13
2H084CC01
2H114AA01
2H114AA23
2H114AA30
2H114DA04
2H114DA51
2H114DA52
2H114DA56
2H114DA61
2H114DA73
2H114EA02
2H196AA02
2H196BA05
2H196EA02
2H196EA04
2H196GA08
2H225AC21
2H225AD05
2H225AM45P
2H225AM52P
2H225AM53P
2H225AM67P
2H225AN62P
2H225BA17P
2H225CA02
2H225CB01
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
2H225CC29
2H225CD07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】レリーフ構造の製造時間の短縮、印刷品質の改善、パターン化された表面の予測可能性、信頼性及び精度の向上、並びにレリーフ構造の耐久性の向上を達成し、印刷画像の解像度の向上を達成する。
【解決手段】成分Cとしての少なくとも1種のコポリマーと、成分Uとしての少なくとも1種のエチレン性不飽和化合物と、成分Pとしての少なくとも1種の光開始剤又は光開始剤系と、成分Bとしての少なくとも1種の水溶性及び/又は水分散性バインダーとを含み、成分Cとしての少なくとも1種のコポリマーが、-CH-CH-基を含む少なくとも部分的に加水分解されたエチレンビニルアセタートコポリマーであり、部分的に加水分解されたエチレンビニルアセタートコポリマー中の前記-CH-CH-基の含有量が、20mol%未満、好ましくは15mol%未満、より好ましくは10mol%未満である、現像可能なレリーフ前駆体の感光性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分Cとしての少なくとも1種のコポリマーと、
成分Uとしての少なくとも1種のエチレン性不飽和化合物と、
成分Pとしての少なくとも1種の光開始剤又は光開始剤系と、
成分Bとしての少なくとも1種の水溶性及び/又は水分散性バインダーと
を含み、
成分Cとしての前記少なくとも1種のコポリマーが、-CH-CH-基を含む少なくとも部分的に加水分解されたエチレンビニルアセタートコポリマーであり、前記部分的に加水分解されたエチレンビニルアセタートコポリマー中の前記-CH-CH-基の含有量が、20mol%未満、好ましくは15mol%未満、より好ましくは10mol%未満である、
現像可能なレリーフ前駆体の感光性組成物。
【請求項2】
成分Cが、化学式:
【化1】

(式中、m、n及びkは整数であり、
mは、m+n+kの20%未満である)
で表される、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
成分Cが、0.1~40wt%、好ましくは0.5~30wt%、より好ましくは0.5~20wt%、更により好ましくは0.5~10wt%の濃度で存在し、
前記wt%が、前記感光性組成物の総重量に対するものである、
請求項1又は2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
成分Cが一定の加水分解度を有し、前記加水分解度が、60~99.9%、好ましくは80~99.9%、より好ましくは90~99.9%の範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【請求項5】
成分Cが、前記成分を4wt%溶液として水に溶解させた場合に、前記溶液の粘度が1~50mPas、好ましくは3~40mPas、より好ましくは3~30mPasの範囲であることを特徴とし、
前記粘度が、DIN 53 015に準拠して落球式粘度計で20℃で測定したものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【請求項6】
成分Uが、アクリラート基、メタクリラート基、アクリルアミド基、ビニル基、ビニルエーテル基、又はこれらの組合せを含む群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【請求項7】
成分Uが、少なくとも1つのイオン基を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【請求項8】
成分Pが、ベンジルケタール、ヒドロキシケトン、アミノケトン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、チオキサントン、アントラキノン、クマリン、ヘキサアリールビスイミダゾール、ベンゾフェノン、又はこれらの組合せを含む群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【請求項9】
成分Pが、共開始剤を更に含む光開始剤系であり、前記共開始剤が、アミン、チオール、チオエーテル、アミノアルコール、チオエーテルアミン、及びこれらの組合せを含む群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【請求項10】
成分Bが、
ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタート、部分的加水分解ポリビニルアセタート、
官能化されたポリビニルアルコール、
官能化されたポリビニルアセタート、官能化された部分的加水分解ポリビニルアセタート、
ポリビニルアセタール、
ポリビニルアセタートと少なくとも1種の他のモノマーとのコポリマー、
少なくとも1つのグラフト化単位を有するポリビニルアセタートポリマー若しくはコポリマー、
ポリウレタン、ポリアクリラート、ポリアミド、
又はこれらの組合せを含む群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【請求項11】
前記官能化されたポリビニルアルコール及び/若しくは官能化されたポリビニルアセタートが、エチレン性不飽和基で官能化されている、
並びに/又は
ポリビニルアセタートの前記コポリマー中の前記少なくとも1種の他のモノマーが、エチレンである、
並びに/又は
前記ポリビニルアセタートポリマー若しくはコポリマーの前記少なくとも1つのグラフト化単位が、ポリエチレングリコールである、
請求項10に記載の感光性組成物。
【請求項12】
1又は複数種の添加剤を更に含み、
前記1又は複数種の添加剤が、可塑剤、溶媒、追加のバインダー、着色剤、安定剤、接着制御剤、連鎖移動剤、UV吸収剤、分散助剤、非ラジカル架橋性架橋剤、粘度調整剤、及び水素結合受容性添加剤、又はこれらの組合せを含む群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【請求項13】
層L1としての寸法的に安定した担体層と、
層L2としての少なくとも1つの感光層と、
任意選択で、1つ又は複数の追加の層と
を含み、
層L2が請求項1に記載の感光性組成物を含む、現像可能なレリーフ前駆体。
【請求項14】
前記レリーフ前駆体が、275εR%を超え、好ましくは280εR%を超える破断点伸び値を有し、
前記破断点伸び値が、実施例Iに記載の方法に従って測定される、
請求項13に記載の現像可能なレリーフ前駆体。
【請求項15】
前記レリーフ前駆体が、37.5mm未満、好ましくは35mm以下、好ましくは28mm未満のカール値を有し、
前記カール値が、実施例Iに記載の方法に従って決定される、
請求項13又は14に記載の現像可能なレリーフ前駆体。
【請求項16】
前記1つ又は複数の追加の層が、酸素バリア層、レーザーアブレーション可能なマスク層、接着層、UV/VIS光及び/若しくはIR光吸収層、モノマー拡散制御層、表面制御層、保護カバー箔、又はこれらの組合せを含む群から選択される、
請求項13~15のいずれか一項に記載のレリーフ前駆体。
【請求項17】
- 少なくとも1つの寸法的に安定した担体層を用意するステップと;
- 任意選択で、前記寸法的に安定した担体層の上に接着剤層及び/又は接着剤処理を施すステップと;
- 前記少なくとも1つの寸法的に安定した担体層の上に感光性組成物を供給するステップと;
- 任意選択で、1つ又は複数の追加の層及び/又は処理を施すステップと
を含み、
前記感光性組成物が請求項1に記載の感光性組成物である、
現像可能なレリーフ前駆体を作製する方法。
【請求項18】
前記1つ又は複数の処理が、表面処理、接着処理、コロナ処理、火炎処理、化学処理、プラズマ処理、上面コーティング処理、又はこれらの組合せを含む群から選択される、請求項17に記載の水現像可能なレリーフ前駆体を作製する方法。
【請求項19】
レリーフ前駆体及び/又はレリーフ構造の製造のための、請求項1に記載の感光性組成物の使用。
【請求項20】
レリーフ構造の製造のための、請求項13に記載のレリーフ前駆体の使用。
【請求項21】
前記レリーフ構造が、フレキソ印刷版、レタープレス版、凸版印刷版、(フレキシブル)プリント配線基板、電子素子、マイクロ流体素子、マイクロ反応器、フォレティックセル、フォトニック結晶、光学素子又はフレネルレンズである、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
- 請求項1に記載の感光性組成物を含むレリーフ前駆体を用意するステップと;
- 任意選択で、保護層を除去するステップと;
- 前記感光層を、好ましくは像様に電磁放射線に露光するステップと;
- 現像液の力を借りて非露光エリアを除去するステップと、
- 任意の更なるステップと
を含む、レリーフ構造を製造する方法。
【請求項23】
露光する前記ステップが、アブレーションしたマスク層を通して行われる、及び/又は露光する前記ステップが、マスクを通して行われる、請求項22に記載のレリーフ構造を製造する方法。
【請求項24】
前記現像液が水、1又は複数種の水溶液、極性溶媒、又はこれらの組合せである、請求項22又は23に記載のレリーフ構造を製造する方法。
【請求項25】
請求項1に記載の感光性組成物を含むレリーフ構造であって、
- 前記レリーフ構造が、216eR%を超え、好ましくは220eR%を超える破断点伸び値を有し、前記破断点伸び値が、実施例2に記載の方法に従って測定される、
- 前記レリーフ構造が、期間t3後に、41mm未満、好ましくは40mm以下、更により好ましくは39mm未満のカール値を有し、前記カール値が、実施例2に記載の方法に従って決定され、t3が3日である、
のうちの1つ又は複数が当てはまる、レリーフ構造。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明の分野は、現像可能なレリーフ前駆体の感光性組成物、並びに結果として得られるフレキソ印刷、パッド印刷及び活版印刷に使用されるレリーフ構造に関する。
【0002】
[背景]
パッド印刷、フレキソ印刷及び活版印刷の分野では、所望のパターン化された表面を持つレリーフ構造を創出するため、レリーフ前駆体とも呼ばれる現像可能な印刷版が作製され、現像される。次いで、パターン化された表面はインクで覆われ、印刷基材に押し付けられる。こうして、印刷基材、例えば包装体、ラベル、紙ロール、ポリマーフィルム、ボール紙、及び他の多くの製品にインクを転写し、所望の画像を創出することができる。
【0003】
レリーフ前駆体は、電磁放射線に露光すると成分が架橋又は硬化する感光性組成物を典型的に含む。露光中、前駆体は、選択されたエリアが電磁放射線に露光される。感光性組成物が重合し、架橋を形成し、硬化して印刷に使用できるレリーフプロファイルを創出するのは、そのエリアである。この露光は通常、従来の方式で、又はデジタル式に行われる。従来の方法では、レリーフ構造は、フォトグラフィックマスクをレリーフ前駆体の上に、又はレリーフ前駆体を覆うように配置し、続いてフォトグラフィックマスクを通して露光することによって作製される。このフォトグラフィックマスクは、硬化させるべき前駆体の選択されたエリアを決定する透過性領域を有する。電磁放射線は透過性領域を通過し、その下の感光性組成物を硬化させる。デジタル方式では、マスクは、例えば、レーザー光源を用いてモチーフが創出されるレーザーアブレーション可能なマスク層を用いてin situで直接レリーフ前駆体上に作製される。加えて、他の公知の方法、例えばサーモグラフィー書き込みを使用して硬化されたパターンを創出することができる。
【0004】
硬化又は重合及び架橋後、露光させた前駆体は、好適な溶媒又は溶媒混合物を使用して処理又は洗浄され、レリーフ形成層の未露光、未硬化又は未重合領域を溶解させる一方、露光、重合及び架橋された領域は保持され、印刷版のレリーフを形成する。レリーフ構造の製造プロセス全体の中で、最もではないとしても時間の要するステップは、通常はこの処理又は洗浄ステップである。
【0005】
所望の、より要求の高い印刷ニーズ、例えば新しい、様々な、より困難な印刷基材に印刷する能力、より高速での印刷、より良好な印刷品質での印刷、及びそれによるより鮮明な画像又はより明るい色の画像の実現に対処しようとして、レリーフ前駆体及びその成分に関し、いくつかの開発と改変がなされてきた。
【0006】
しかし、これらの開発にもかかわらず、いくつかの問題がまだ解決されておらず、いくつかの追加的な側面を改善する必要があるため、レリーフ前駆体自体だけでなく、前記前駆体の作製方法、及び結果として得られるレリーフ構造の製造方法も、依然として更に改善する必要がある。
【0007】
更に、現像前のレリーフ前駆体を扱う際には、機械的に安定していながら依然として十分な耐久性と柔軟性を持つ前駆体が望まれる。既存の前駆体は、現像後に望ましくない特徴を示すレリーフ構造を生じることが多い。そうしたレリーフ構造は、殊にレリーフ構造を用いて長時間作業や印刷をしていると、機械的品質が低下し、亀裂や他の変形を示すことが多い。加えて、レリーフ前駆体及びレリーフ構造の側端はカールする傾向があり、これはかなり厄介であり、扱いにくいものである。
【0008】
[発明の概要]
本発明の目的は、先に言及した問題を少なくとも解決するか、部分的に解決し、改善されたレリーフ前駆体、より詳細には、先に言及した問題を少なくとも部分的に解決し、更に追加的な側面を改善するレリーフ前駆体の感光性組成物を本技術分野に提供することである。特に、本発明は、レリーフ構造の製造時間の短縮、印刷品質の改善、パターン化された表面の予測可能性、信頼性及び精度の向上、並びにレリーフ構造の耐久性の向上を達成し、印刷画像の解像度の向上を達成することを目的とする。
【0009】
この目的は、請求項1に提示するような発明によって達成される。即ち、発明者は、成分Cとしての少なくとも1種のコポリマーと、成分Uとしての少なくとも1種のエチレン性不飽和化合物と、成分Pとしての少なくとも1種の光開始剤又は光開始剤系と、成分Bとしての少なくとも1種の水溶性及び/又は水分散性バインダーとを含み、成分Cとしての少なくとも1種のコポリマーが、-CH-CH-基を含む少なくとも部分的に加水分解されたエチレンビニルアセタートコポリマーであり、部分的に加水分解されたエチレンビニルアセタートコポリマー中の前記-CH-CH-基の含有量が、20mol%未満、好ましくは15mol%未満、より好ましくは10mol%未満である、現像可能なレリーフ前駆体の感光性組成物を用いて上記目的が達成されることを発見した。更に、任意の添加剤を、成分Aとして添加することができる。
【0010】
発明者は、レリーフ前駆体に上記感光性組成物を含ませることで、前記レリーフ前駆体の特性の強化、例えば柔軟性の向上、及びカールする傾向の低減が実現されることを発見した。加えて、前記レリーフ前駆体のレリーフ構造への加工、及びレリーフ構造自体も、改善される。レリーフ構造の加工、又は製造は、未露光材料を除去するための、より詳細には、感光性組成物の未露光領域における材料を除去するための、時間を要する洗浄ステップを短縮することにより、より短期間で行うことができる。本明細書に記載するような感光性組成物を含む、結果として得られるレリーフ構造も改善を示し、例えば、レリーフ構造は、特に感光性組成物の架橋及び硬化後に、カールする傾向が低減する。更に、レリーフ構造の耐久性が高まり、構造は、機械的損傷及び変形、例えば亀裂が生じにくくなる。レリーフ構造のこれらの特性は、印刷中のインク転写の向上をもたらす。
【0011】
成分Cである少なくとも部分的に加水分解されたエチレンビニルアセタートコポリマーは、好ましくは、下記式:
【化1】

で表される。
【0012】
上記式において、m、n及びkは整数であり、mは、m+n+kの20%未満である。-CH-CH-基をポリマー骨格に導入することにより、硬化及びポリマー鎖とポリマーネットワークの形成中、特に感光性組成物を電磁放射線に露光する際に、形成される結晶構造が減少する。好ましくは、成分Cの骨格中のモノマー単位は統計的に配置されるが、交互、ブロック及び/又はグラフトコポリマーも使用できる。
【0013】
好ましい実施形態において、成分Cは、感光性組成物の総重量に対して、一定の濃度(wt%)で存在する。即ち、成分Cは、好ましくは0.5~40wt%、好ましくは0.5~30wt%、より好ましくは0.5~20wt%、更により好ましくは0.5~10wt%の濃度で存在する。
【0014】
好ましい実施形態において、成分Cは、一定の加水分解度を有し、前記加水分解度は、60~99.9%、好ましくは80~99.9%、より好ましくは90~99.9%の範囲である。感光性組成物がレリーフ前駆体の作製に使用される際に、隣接層に対して所望の接着性が達成されるため、この加水分解度が好ましい。
【0015】
更に、成分Cの特定の粘度、即ち、前記成分を4wt%溶液として水に溶解させた場合に、溶液の粘度が1~50mPas、好ましくは3~40mPas、より好ましくは3~30mPasの範囲であることが好ましく、粘度は、DIN 53 015に準拠して落球式粘度計で20℃で測定したものである。良好な粘度安定性の達成に役立ち、特に、多くの場合水を含む水溶液である洗浄液の取り扱い性を所望のものとするには、これらの範囲が好ましい。これらの範囲外の粘度では、感光性組成物、及び結果として得られるレリーフ前駆体の取り扱い性に悪影響を及ぼす傾向がある。例えば、粘度が高いほど、レリーフ前駆体の未硬化材料の除去時に、特に前記除去ステップでブラシを補助的に使用する場合に、効率が低下することがある。
【0016】
一実施形態において、成分Uとしてのエチレン性不飽和化合物は、アクリラート基、メタクリラート基、アクリルアミド基、ビニル基、ビニルエーテル基、又はこれらの組合せのうちの少なくとも1種を含む。これらの基は、感光性組成物の重合及び架橋に関して所望の結果の達成の助けとなり、存在する他の成分との適度な相溶性を示すため、特に好ましい。好ましくは、成分Uは、アクリラート基又はメタクリラート基を含む。
【0017】
好ましい実施形態において、成分Uは、感光性組成物の全配合物を基準として0.5wt%~50wt%の量で存在する。
【0018】
一実施形態において成分Uは、2種以上のエチレン性不飽和基、又は異なる種類の不飽和基の組合せを含んでもよい。
【0019】
一実施形態において、成分Uは、イオン基を持たない1又は複数種のエチレン性不飽和化合物を含む。別の好ましい実施形態において、成分Uは、イオン基を持つ1又は複数種のエチレン性不飽和イオン性モノマーを含んでもよい。エチレン性不飽和イオン性モノマーは、感光性組成物の総重量を基準として0.5~20wt%の量で存在することが好ましい。別の実施形態において、成分Uは、イオン基を持たない1又は複数種のエチレン性不飽和化合物と、イオン基を持つ1又は複数種のエチレン性不飽和イオン性モノマーとの組合せを含む。このような実施形態は、イオン基を持つイオン性モノマーが利点、例えば環境効果の向上、印刷前駆体及び構造特性の改善、並びにカールの問題の更なる低減をもたらすため、好ましい。
【0020】
本発明の一側面において、成分Pである光開始剤又は光開始剤系は、ベンジルケタール、ヒドロキシケトン、アミノケトン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、チオキサントン、アントラキノン、クマリン、ヘキサアリールビスイミダゾール、ベンゾフェノン、又はこれらの組合せを含む群から選択される。これらの基は、好適な程度のラジカル形成を生じ、低照射量、更に低い範囲も可能な場合があるが好ましくは16~20ワット/cmの間での硬化を可能とするため、好ましい。更に、成分Pは、共開始剤を更に含む光開始剤系であってもよく、前記共開始剤は、アミン、チオール、チオエーテル、アミノアルコール、チオエーテルアミン、及びこれらの組合せを含む群から選択される。
【0021】
成分Bに関しては、水溶性及び/又は水分散性バインダーである。好ましくは、このバインダーは、成分U、即ちエチレン性不飽和モノマーによって形成されるポリマー鎖及び/又は他の添加剤と架橋可能である。これらのバインダーは、直鎖状、分枝、星形又は樹枝状であってもよいポリマーとすることができ、どちらもホモポリマー、統計的コポリマー、ブロックコポリマー、又は交互コポリマーとして存在することができる。言及したポリマーは、非常に多くの場合、溶解度を高める、及び/又は架橋反応に関与できる官能基を有する。これらの基としては、例えば、カルボキシ基、SO基、OH基、チオール基、エチレン性不飽和(メタ)アクリラート基、エポキシ基、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0022】
好ましくは、成分Bは、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタート、部分的加水分解ポリビニルアセタート、官能化されたポリビニルアルコール、官能化されたポリビニルアセタート、官能化された部分的加水分解ポリビニルアセタート、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセタートと少なくとも1種の他のモノマーとのコポリマー、少なくとも1つのグラフト化単位を有するポリビニルアセタートポリマー若しくはコポリマー、ポリウレタン、ポリアクリラート、ポリアミド、又はこれらの組合せを含む群から選択される。好ましくは、官能化されたポリビニルアルコール及び/若しくは官能化された部分的加水分解若しくは非加水分解ポリビニルアセタートは、エチレン性不飽和基で官能化されている、並びに/又はポリビニルアセタートのコポリマー中の少なくとも1種の他のモノマーは、エチレンである、並びに/又はポリビニルアセタートポリマー若しくはコポリマーの少なくとも1つのグラフト化単位は、ポリエチレングリコールである。
【0023】
成分Aに関しては、感光性組成物は、当業者に公知の1又は複数種の添加剤を含んでもよく、その例は、説明の中で更に示されている。これらの添加剤は、可塑剤、溶媒、追加のバインダー、着色剤、安定剤、接着制御剤、連鎖移動剤、UV吸収剤、分散助剤、非ラジカル架橋性架橋剤、粘度調整剤、及び水素結合受容性添加剤、又はこれらの組合せの群から選択されてもよい。
【0024】
更に、本発明によると、層L1としての寸法的に安定した担体層と、層L2としての少なくとも1つの感光層と、任意選択で、1つ又は複数の追加の層とを含む、現像可能なレリーフ前駆体が提供される。層L2は、本明細書に定義されるような本発明による感光性組成物を含み、組成物は、本明細書に記載したような対応する特性を持つ成分を有していてもよい。
【0025】
レリーフ前駆体に前記感光性組成物を含ませることにより、その柔軟性が高まり、レリーフ前駆体は、問題の多いカール現象が生じにくくなる。好ましくは、レリーフ前駆体は、37.5mm未満、好ましくは35mm以下、より好ましくは28mm未満のカール値を有し、前記カール値は、実施例1に記載するような方法に従って決定される。実際、感光性組成物は、レリーフ前駆体に典型的に存在する固有応力の蓄積を低減し、その結果、レリーフ前駆体の角は、殊に保存中のカールする傾向が低減する。
【0026】
好ましくは、層L1は、金属シート、スチール、合金、天然若しくは人工ポリマー、ポリマーブレンド、ポリマーフィルム、又はこれらの任意の組合せを含む。好ましい層は、ポリエチレンテレフタラートを含むPET層である。
【0027】
好ましくは、層L2は、25μm~5000μmの範囲の厚さを有する。
【0028】
任意の追加の層が、層L1とL2の間に、L2の上に、又はその両方に配置されてもよい。これらの層の可能な例としては、バリア層、酸素バリア層、レーザーアブレーション可能なマスク層、接着層、UV/VIS光及び/若しくはIR光吸収層、モノマー拡散制御層、解離層、剥離層、表面制御層、保護層、カバー箔、又はこれらの組合せが挙げられる。
【0029】
更に本発明によると、現像可能なレリーフ前駆体を作製する方法が提供される。方法は、少なくとも1つの寸法的に安定した担体層を用意するステップと;任意選択で、寸法的に安定した担体層の上に接着剤層及び/又は接着剤処理を施すステップと;少なくとも1つの寸法的に安定した担体層の上に感光性組成物を供給するステップと;任意選択で、1つ又は複数の追加の層及び/又は処理を施すステップとを含み、感光性組成物は、本明細書に定義されるような本発明による感光性組成物であり、先に記載したような対応する特性を持つ成分を有していてもよい。結果として得られるレリーフ前駆体は、既に記載し、本明細書において後に更に記載するようなレリーフ構造の製造において特に有用である。任意選択で、レリーフ前駆体の製造中に適用される1つ又は複数の処理は、表面処理、接着処理、コロナ処理、火炎処理、化学処理、プラズマ処理、上面コーティング処理、又はこれらの組合せを含む群から選択される。
【0030】
本明細書に記載するような感光性組成物は、特に先に記載したようなレリーフ前駆体及びレリーフ構造の特性の改善をもたらすため、レリーフ前駆体及び/又はレリーフ構造の製造に特に有用である。製造されるレリーフ構造は、好ましくはフレキソ印刷版、レタープレス版、パッド印刷版、凸版印刷版、フレキシブルプリント配線基板、電子素子、マイクロ流体素子、マイクロ反応器、フォレティックセル(phoretic cell)、フォトニック結晶、光学素子、又はフレネルレンズとして使用される。マイクロ流体素子又はマイクロ反応器は、チャネル及び反応チャンバを形成する追加の層を形成されたレリーフの上に追加することによって得ることができる。
【0031】
更に本発明によると、レリーフ構造を製造する方法が提供される。方法は、- 本明細書に記載するような感光性組成物を含むレリーフ前駆体を用意するステップと;- 感光性組成物を、好ましくは像様に電磁放射線に露光するステップと;- 洗浄液とも呼ぶことができる現像液の力を借りて非露光エリアを除去するステップとを含む。好ましくは、露光するステップは、アブレーションしたマスク層を通して行われる、及び/又は露光するステップは、感光層と電磁放射線源との間に配設されたマスクを通して行われる。非露光エリアの除去に関しては、これは、感光層中の非架橋エリアを除去することができる溶媒ベース又は水ベースの溶液、例えば有機溶媒、その混合物、水、水溶液や、水性有機溶媒混合物を用いて、溶解、乳化及び/又は分散させる処理によって行うことができる。好ましくは、現像液は、水、1若しくは複数種の水溶液、極性溶媒、又はこれらの組合せである。水溶液は、酸、塩基、塩、溶媒、界面活性剤、又はこれらの組合せを含んでもよい。
【0032】
本発明の好ましい側面において、本明細書に記載するような感光性組成物を含むレリーフ構造が提供される。これは、レリーフ構造が、好ましくは216eR%を超え、好ましくは220eR%を超える向上した破断点伸び値を有するという点で有益であり、前記値は、実施例2に記載するような方法に従って測定される。更に、レリーフ構造に、好ましくは感光層L2に感光性組成物を含ませることで、レリーフ構造は、カール値の改善を達成する。即ち、レリーフ構造は、期間t3後に、41mm未満、好ましくは40mm以下、更により好ましくは39mm未満のカール値を有し、前記カール値は、実施例2に記載の方法に従って決定され、t3は、3日である。このカール値は、実施例2に記載するように決定される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】レリーフ前駆体の層を概略的に示す。
図2A図2A及び2Bは、レリーフ前駆体の露光中に使用される原理を示す。
図2B図2A及び2Bは、レリーフ前駆体の露光中に使用される原理を示す。
図3A図3A及び3Bは、望ましくないカール現象を概略的に示す。
図3B図3A及び3Bは、望ましくないカール現象を概略的に示す。
【0034】
[実施形態の詳細な説明]
本発明の様々な側面のより詳細な説明は、当業者が本明細書に記載の発明をよりよく理解し、実施することを可能にするが、本明細書に添付された特許請求の範囲を限定する意図はなく、限定すべきものでもない。更なる指針として、本発明の教示をよりよく理解するために、用語の定義が含まれている。技術的及び科学的用語を含む、本発明の開示に使用される用語は全て、他様に定義されない限り、本発明が属する技術分野の通常の技術者によって一般的に理解される意味を有する。
【0035】
本明細書において使用する場合、「感光層」、「放射線硬化性層」、「光重合性層」、「放射線感受性層」又は「レリーフ形成層」という用語は、交換可能に使用できる。同様に、本明細書において使用する場合、「感光性組成物」、「放射線硬化性層」、「放射線硬化性組成物」、「光重合性組成物」という用語において、「組成物」と「混合物」は交換可能に使用できる。本明細書において使用する場合、「層」という用語は、「複数の層」及び「層状」を含む。
【0036】
本明細書において使用する場合、「成分」という用語は、本明細書において提供されるような感光性組成物、レリーフ前駆体及び/又はレリーフ構造の一部を構成するある特定の分子又はある特定の分子の群を示し、したがって、「成分」という用語は、「複数の成分」の意味も有する。成分は、1又は複数種の下位成分を含むことができ、例えば、成分Uは、1又は複数種のイオン性モノマーであってもよい成分Eと、イオン基を持たない1又は複数種のエチレン性不飽和化合物であってもよい成分EMとを含むことができる。或いは、例えば、添加剤である成分Aは、同じ種類又は異なる種類の添加剤のうちの1又は複数種を含んでもよい。
【0037】
本明細書において先に示したように、本発明の一側面は、-CH-CH-基を含む少なくとも部分的に加水分解されたエチレンビニルアセタートコポリマーであるコポリマーを現像可能なレリーフ前駆体の感光性組成物に導入すると、この材料、及び前記前駆体から得られるレリーフ構造に、とりわけ耐久性、柔軟性、生産性、及びレリーフ構造上に形成されるパターン化された表面の信頼性と精度に関して前例のない利点がもたらされるという知見に基づいている。
【0038】
したがって、本発明の第1の目的は、成分Cとしての少なくとも1種のコポリマーと、成分Uとしての少なくとも1種のエチレン性不飽和化合物と、成分Pとしての少なくとも1種の光開始剤又は光開始剤系と、成分Bとしての少なくとも1種の水溶性及び/又は水分散性バインダーとを含み、成分Cとしての少なくとも1種のコポリマーが、-CH-CH-基を含む少なくとも部分的に加水分解されたエチレンビニルアセタートコポリマーであり、部分的に加水分解されたエチレンビニルアセタートコポリマー中の前記-CH-CH-基の含有量が、20mol%未満、好ましくは15mol%未満、より好ましくは10mol%未満である、現像可能なレリーフ前駆体の感光性組成物を提供することである。好ましくは、現像可能なレリーフ前駆体は、水現像可能なレリーフ前駆体である。
【0039】
本明細書において既に先に言及したように、本明細書において定義したようなコポリマーを感光性組成物に含ませることで、特に、レリーフ前駆体の作製中、より詳細には感光性組成物を含むレリーフ構造の製造中に形成されるポリマー鎖及び/又はポリマーネットワークの形成に関して、感光性組成物の柔軟性能力が向上する。ポリマー鎖及び/又はネットワークの形成は、感光性組成物中に存在する光開始剤又は光開始剤系によって、特に組成物を電磁放射線に露光したときに開始される。このポリマー鎖及び/又はネットワークの形成によって感光性組成物が硬化及び架橋し、それにより未硬化材料を除去した後にレリーフをもたらす構造が創出される。好ましい実施形態において、-CH-CH-基を含む少なくとも部分的に加水分解されたエチレンビニルアセタートコポリマーは、好ましくはコポリマーの骨格に導入されたポリビニルアセタート及びポリビニルアルコール基を含み、ポリビニルアセタート及びポリビニルアルコール基に対する-CH-CH-基の比が、1:4と0.1:19.5の間、より好ましくは1:7と0.1:9.9の間となるようにする。-CH-CH-基、ポリビニルアセタート及びポリビニルアルコール基は、モノマー単位として統計的に配置することができるが、交互、ランダム及び/又はブロックコポリマーを使用してコポリマーを形成してもよい。
【0040】
加水分解(EVA)-コポリマー又はエチレンビニルアルコール(EVOH)-コポリマーとも呼ばれる少なくとも部分的に加水分解されたエチレンビニルアセタートコポリマーを記載したような濃度及び/又は比で使用することで、硬化反応中、特に感光性組成物の露光中に形成される結晶構造が少なくなる。ポリマー鎖及び/又はネットワークの結晶化度が低減するため、レリーフ前駆体、及び結果として得られるレリーフ構造の柔軟性能力が向上する。これは、レリーフ構造において固有応力、応力差及び/又は張力を蓄積する傾向が低下するため、望ましくない厄介な「カール現象」を低減する。後者を、寸法的に安定した担体層L1、例えばPET担体層と、感光層L2とを含むレリーフ前駆体について図3に示す。平坦な状態にあるレリーフ前駆体を図3Aに示す。図3Bでは、レリーフ前駆体がカールしており、典型的には乾燥のため、及び/又は保存後に起こるものである。レリーフ前駆体が置かれている表面40からレリーフ前駆体の角が距離dだけ離れるようにカールしている。感光性組成物の柔軟性能力の向上は、レリーフ構造の特性、例えば使用継続期間及び機械的耐久性に影響を与え、レリーフ構造をより弾力性のあるものとし、機械的破壊現象、例えば亀裂又は他の種類の変形を生じにくくする。
【0041】
更に、加水分解(EVA)-コポリマー中の-CH-CH-基の含有量を低下させることで、無極性基の量を低減することができ、それは、結果として得られる感光性組成物全体の現像液への可溶性に有利に作用する。特に、洗浄液とも呼ばれる現像液が極性を持つもの、例えば、水、水溶液及び極性溶媒であると、可溶性は高まる。水溶液は、酸、塩基、塩、他の溶媒若しくは界面活性剤を含んでもよい。したがって、可溶性が向上することで、洗浄液を用いて未露光エリアを除去する時間を要するステップを短縮することができる。
【0042】
当業者に感光性組成物のより良好な教示を与えるため、以下に成分について更に詳述する。
【0043】
(成分C、加水分解EVAコポリマー)
例示的実施形態において、加水分解EVAコポリマーは、エチレンビニルアセタートコポリマーの加水分解に由来するものとすることができる。後者は、開始モノマーであるエチレンとビニルアセタートから、触媒と熱の力を借りて合成することができ、エチレンビニルアセタートコポリマーの特性は、開始モノマーの比を変えることによって調節することができる。更に、エチレンビニルアセタートコポリマーの加水分解は、加水分解(EVA)-コポリマー又はエチレンビニルアルコール(EVOH)-コポリマーの形成をもたらす。加水分解(EVA)-コポリマー、特に分子中に1~15mol%のエチレン単位、即ち、-CH-CH-基を含有し、少なくとも95mol%の加水分解度を有するポリビニルアルコールを作製するための方法は、例えば欧州特許出願公開第1088835号に記載されている。-CH-CH-基の濃度を選択することで、結果として得られるポリマーの特性に影響を与えることができる。好ましくは、成分Cは、100と10000の間、好ましくは400と900の間、より好ましくは500と700の間の重合度を有する。重合度が低すぎると、レリーフ構造は、脆性となって、特に集中的な印刷の場合に耐久性が損なわれることがある。他方、重合度が高すぎると、粘度が高くなりすぎて、洗浄ステップ、特に感光性組成物の未露光材料の除去がより困難になる。成分Cの特定の粘度、即ち、前記成分を4wt%溶液として水に溶解させた場合に、溶液の粘度が1~50mPas、水現像3~40mPas、より好ましくは3~30mPasの範囲であることが好ましく、粘度は、DIN 53 015に準拠して落球式粘度計で20℃で測定したものである。良好な粘度安定性、及び、特に、感光性組成物の未露光エリアを除去する際の洗浄液の取り扱い性の達成に役立つため、これらの範囲が好ましい。現像液又は洗浄液は多くの場合、必要に応じて水を含む水溶液である。
【0044】
好ましくは、成分Cは、0.1~40wt%、好ましくは0.5~30wt%、より好ましくは0.5~20wt%、更により好ましくは0.5~10wt%の濃度で存在する。
【0045】
好ましい実施形態において、成分Cは、一定の加水分解度を有し、前記加水分解度は、60~99.9%、好ましくは80~99.9%、より好ましくは90~99.9%の範囲である。感光性組成物がレリーフ前駆体の作製に使用される際に、隣接層に対して所望の接着性が達成されるため、この加水分解度が好ましい。
【0046】
(成分U、エチレン性不飽和化合物)
好ましいエチレン性不飽和化合物は、成分Bのポリマーバインダー又は複数のバインダーと相溶性のものである。エチレン性不飽和化合物は、好ましくは少なくとも2つのエチレン性不飽和基、より好ましくは2~6つのエチレン性不飽和基、更により好ましくは厳密に2つのエチレン性不飽和基を含有する。C-C三重結合を有する化合物も、感光性組成物に使用できる。成分Uは、好ましくはアクリラート及び/又はメタクリラート基であるが、アクリルアミド、ビニルエーテル又はスチレン誘導体もエチレン性不飽和化合物として採用できる。
【0047】
一実施形態において、エチレン性不飽和化合物は、イオン基を持たず、モノマー、オリゴマー又はポリマーエチレン性不飽和化合物であってもよく、直鎖状、分枝、星形、又は樹枝状構造を有していてもよい。一実施形態において、成分Uは、5000g/mol未満、好ましくは3000g/mol未満、より好ましくは1000g/mol未満、非常に好ましくは500g/mol未満の低分子量を有し、更には300g/mol未満であってもよいが、好ましくは少なくとも72.06g/mol、より好ましくは少なくとも86g/molである。
【0048】
成分Uとして好ましいエチレン性不飽和化合物は、アクリル及び/又はメタクリル酸の誘導体であって、例えばそれらの一価又は多価アルコールとのエステルであり、その例は、1~20個の炭素原子を有するアルカノールのアクリル又はメタクリル酸エステル、例えばメチルメタクリラート、エチルアクリラート、プロピル(メタ)アクリラート、イソプロピル(メタ)アクリラート、n-ブチル(メタ)アクリラート、イソブチル(メタ)アクリラート、tert-ブチル(メタ)アクリラート、ヘキシル(メタ)アクリラート、シクロヘキシル(メタ)アクリラート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリラート、ラウリル(メタ)アクリラート、2~20個の炭素原子を有する多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、例えば、2ヒドロキシエチル(メタ)アクリラート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラート、エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ブタン-1,4-ジオールジ(メタ)アクリラート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリラート、3メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,1,1-トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、1,4-ブタンジオールジアクリラート、1,6-ヘキサンジオールジアクリラート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリラート、1,9-ノナンジオールジアクリラート、ジ、トリ、及びテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、又はペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリラート、加えて、ポリ(エチレンオキシド)ジ(メタ)アクリラート、mメチルポリ(エチレンオキシド)-イル(メタ)アクリラート、N,N-ジエチルアミノエチルアクリラート、1molのグリセロールと、1molのエピクロロヒドリンと、3molのアクリル酸の反応生成物、また、グリシジルメタクリラート及びビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリラート、カルボン酸基及び/又はアミノ基を持つ(メタ)アクリル酸誘導体である。
【0049】
更に、成分Uとして特に好ましい化合物は、アクリルアミド及びメタクリルアミドの誘導体、例えば、それらのN-メチロール誘導体と一価及び多価アルコール、例えば、エチレングリコール、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパンとのエーテル、オリゴマー又はポリマーエチレンオキシド誘導体である。これらの化合物は、ポリアミド又はポリビニルアルコールを感光性組成物中のバインダーとして使用する場合に特に好ましい。
【0050】
更に、成分Uとして好ましい化合物は、いわゆるエポキシ(メタ)アクリラート及びウレタン(メタ)アクリラートであり、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応によって、又は、ジイソシアナートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリラート、若しくはヒドロキシル含有ポリエステル若しくはポリエーテルとの反応によって得ることができるような種類のものである。
【0051】
成分Uとして使用できる他の好ましい化合物は、エチレン性不飽和化合物、例えばアクリル酸又はメタクリル酸のエステル、殊に蒸気圧が低いもの、及び相溶化剤、例えば、ヒドロキシル、アミド、スルホエステル又はスルホンアミド基で改質されたものである。
【0052】
更に、成分Uとして好ましい化合物は、フェニルグリシジルエーテルアクリラート、グリセロールジメタクリラート、1,4-ブタンジイルビス[オキシ(2-ヒドロキシ-3,1-プロパンンジイル)]ジアクリラート、2-ヒドロキシエチルメタクリラート、2,3-エポキシプロピルメタクリラート、エチルジグリコールアクリラート、ヒドロキシプロピルアクリラート、ブタンジオールジアクリラート、トリエチレングリコールジアクリラート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリラート、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリラート、tert-ブチルアミノエチルメタクリラート、tert-ブチルアクリラート、ポリエチレングリコールメタクリラート、ベンジルアクリラート、テトラヒドロフルフリルアクリラート、フェノキシメチルメタクリラート、ビニルピロリドン、及びビニルアセタート、また、対応するメタクリラートである。
【0053】
更に、成分Uとして好ましい化合物は、フェニルグリシジルエーテルアクリラート、グリセロールジアクリラート、1,4-ブタンジイルビス[オキシ(2-ヒドロキシ-3,1-プロパンンジイル)]ジアクリラート、エチレンジアクリラート、2-ヒドロキシエチルメタクリラート、ブタンジオールジアクリラート、ヘキサンジオールジアクリラート、また、対応するメタクリラートである。一実施形態において、感光性組成物は、フェニルグリシジルエーテルアクリラートを含む。また、成分Uとして先に言及した好ましい化合物の混合物又は組合せを使用してもよく、好ましくは先に記載した共重合性エチレン性不飽和有機化合物の混合物である。
【0054】
好ましい実施形態において、成分Uは、1又は複数種のエチレン性不飽和イオン性モノマーを含み、その場合、対イオンは、感光性配合物全体に存在する。イオン性モノマーは、固形分が50%~85%の間であり、残部が水の水溶液で感光性組成物に添加することができる。イオン性モノマーの総量は、好ましくは感光性組成物の全配合物の0.5~30wt%の間である。
【0055】
更により好ましい実施形態において、成分Uは、イオン基を持たない1又は複数種のエチレン性不飽和化合物と、1つ又は複数のイオン基を持つ1又は複数種のエチレン性不飽和イオン性モノマーとの組合せを含む。
【0056】
好ましくは、イオン性モノマーは、アクリラート基、メタクリラート基、アクリルアミド基、ビニル基、ビニルエーテル基、又はこれらの組合せのうちの少なくとも1種を含む。これらの基は、感光性組成物の重合及び架橋に関して所望の結果の達成の助けとなり、感光性組成物中に存在する他の成分との適度な相溶性を示すため、特に好ましい。好ましくは、イオン性モノマーは、アクリラート基又はメタクリラート基を含む。一実施形態において、イオン性モノマーは、2つ以上のエチレン性不飽和基を含んでもよい。
【0057】
イオン性モノマーの典型的な好ましい特性は、100~1000g/molの範囲、より好ましくは110~500g/molの範囲、更により好ましくは120~300g/molの分子量、20℃、1気圧で、pH7の水に対し、200g/l以上、好ましくは500~1500g/lの範囲の水への溶解度である。
【0058】
一実施形態において、イオン性モノマーは、第四級アンモニウム基、カルボキシラート基、スルホナート基、スルホニウム基、ホスホニウム基、及びこれらの組合せから選択される1つ又は複数のイオン基を持つ。一実施形態において、イオン性モノマーは、2つ以上のイオン基を含んでもよい。複数種のイオン基が存在する場合、前記複数種の基は、アニオン性であってもカチオン性であってもよい。加えて、アニオン基とカチオン基の両方が同じエチレン性不飽和モノマー中に存在するような組合せも可能であり、それぞれの電荷を有する両方の基が分子間塩を形成してもよく、それぞれの電荷に釣り合う対イオンを持っていてもよい。
【0059】
ある特定の好ましい実施形態において、下記のイオン性モノマーうちの1又は複数種が、感光性組成物に使用される:2-トリメチルアンモニウムエチルメタクリラートクロリド(TMAEMC)、3-メタクリルアミド-N,N,N-トリメチルプロパン-1-アミニウムクロリドとしても公知のメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)、アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(ADAMQUAT)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のナトリウム塩(Na-AMPS)、DMAEMDMS、トリメチル({2-[(2-メチルプロパ-2-エノイル)オキシ]エチル})アザニウムメチルスルファート、PSPA、3-スルホプロピルアクリラートカリウム塩。また、双性イオン性モノマー又はベタインモノマーをエチレン性不飽和モノマーとして使用してもよい。好適な双性イオン性モノマーは、ジメチル({2-[(2-メチルプロパ-2-エノイル)オキシ]エチル})(3-スルホプロピル)アザニウムヒドロキシド、2-エテニル-1-(3-スルホプロピル)ピリジン-1-イウムである。
【0060】
更に、好ましいイオン性モノマーは、例えば、メタクリル酸の塩、例えばナトリウム2-メチルプロパ-2-エノアート、アルミニウム(3+)トリス(2-メチルプロパ-2-エノアート)、アンモニウム2-メチルプロパ-2-エノアート、カルシウムビス(2-メチルプロパ-2-エノアート)、ビス(メタクリラト-O)クロム、銅ビス(2-メチルプロパ-2-エノアート)、バリウムビス(2-メチルプロパ-2-エノアート)、2-メチルプロパ-2-エン酸、鉄(III)塩、2-メチルプロパ-2-エン酸、鉛塩、2-メチルプロパ-2-エン酸、リチウム塩、マグネシウムビス(2-メチルプロパン-2-オラート、ニッケル2-メチルプロパ-2-エノアート、カリウム2-メチルプロパ-2-エノアート、2-メチルプロパ-2-エン酸、ルビジウム塩、2-メチルプロパ-2-エン酸、ケイ素塩、2-メチルプロパ-2-エン酸、銀塩、2-メチルプロパ-2-エン酸、ストロンチウム塩、2-メチルプロパ-2-エン酸、チタン(IV)塩、2-メチルプロパ-2-エン酸、亜鉛塩、ジルコニウム(4+)テトラキス(2-メチルプロパ-2-エノアート)である。
【0061】
また、加えて、又は代替として、アクリル酸の塩をイオン性モノマーに使用することができ、例えば、3-スルホプロピルアクリラート、カリウム塩、アンモニウムプロパ-2-エノアート、2-プロペン酸、ナトリウム塩、2-プロペン酸、アルミニウム塩、2-プロペン酸、バリウム塩、2-プロペン酸、カルシウム塩、2-プロペン酸、セシウム塩、2-プロペン酸、クロム(III)塩、2-プロペン酸、銅(II)塩、2-プロペン酸、鉄(III)塩、2-プロペン酸、鉛塩、2-プロペン酸、リチウム塩、2-プロペン酸、マグネシウム塩、2-プロペン酸、ニッケル(II)塩、2-プロペン酸、カリウム塩、2-プロペン酸、銀塩、2-プロペン酸、ストロンチウム塩、2-プロペン酸、亜鉛塩、2-プロペン酸、ジルコニウム塩、アクリル酸カリウム、アクリル酸ルビジウムである。
【0062】
一実施形態において、加えて、又は代替として、ビニル/アリル型塩、例えばアリルトリエチルアンモニウムヨージド、アリルトリメチルアンモニウムブロミド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、1-(3-スルホプロピル)-2-ビニルピリジニウムベタイン、p-ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドを、イオン性モノマーとして使用することができる。
【0063】
言及したように、イオン性モノマーは、対イオンと共に使用される。好適なアニオン性対イオンは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、スルホナート、メチルスルファート、スルファート、トシラート、ニトラート、ハロゲンアニオン、スルホニウムアニオン、トシラートアニオン、ボラートアニオン、ニトラートアニオン、メチルスルファートアニオン、ハロゲンアニオン、又はこれらの組合せである。好適なカチオン性対イオンは、アンモニウム、ナトリウム、アルミニウム、カルシウム、セシウム、クロム、銅、バリウム、鉄、鉛、リチウム、マグネシウム、ニッケル、カリウム、ルビジウム、ケイ素、銀、ストロンチウム、チタン、亜鉛、ジルコニウム、アンモニウムカチオン、アルカリカチオン、土類アルカリカチオン、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン、又はこれらの組合せである。
【0064】
(成分P、光開始剤又は光開始剤系)
光開始剤又は光開始剤系は、特に電磁スペクトルのUV範囲の電磁放射線に反応するように選択される。何らかの特定の重合反応に拘束されることなく、ラジカル重合の原理に従って本発明を説明するが、当業者が理解するように、異なる機構及びいくつかの副反応の可能性があり、例えば、アニオン性又はカチオン性重合反応が多少なりとも存在し得る。光開始剤又は光開始剤系は、典型的には100~400nmの間、より好ましくは約385~395nmの間のUV光の影響下でラジカルを形成することによって重合反応を開始する。それにより、感光性組成物の硬化及び架橋に影響を与える。特に、光開始剤又は光開始剤系は、UV LED技術を用いた硬化及び架橋の原理に従って選択される。当業者は理解するように、例えば標準的なランプ、例えば水銀ランプを使用する典型的な旧来の標準的方法も、それらのランプが広いスペクトルの電磁放射線を放出することから、使用可能である。一実施形態において、成分Pは、1又は複数種の重合光開始剤を含む。好適な開始剤又は開始剤系は、電磁波を照射されると重合及び/又は架橋をもたらすラジカルを生成する少なくとも2成分で構成されている。この種の開始剤は当業者に公知であり、下記の参照文献に記載されている:Bruce M.Monroeら、Chemical Review,93,435(1993)、R.SDavidson,Journal of Photochemistry and Biology A:Chemistry,73,81(1993)、M.Tsunookaら、25 Prog.Polym.Sci.,21,1(1996)、F.D.Saeva、Topics in Current Chemistry,156,59(1990)、G.G.Maslak、Topics in Current Chemistry,168,1(1993)、H.B.Shusterら、JACS,112,6329(1990)、及びI.D.F.Eatonら、JACS,102,3298(1980)、P.Fouassier and J.F.Rabek、Radiation Curing in Polymer Science and Technology,77~117ページ(1993)若しくはK.K.Dietliker、Photoinitiators for free Radical and Cationic Polymerisation,Chemistry&Technology of UV&EB Formulation for Coatings,InksandPaints,Volume,3,Sita Technology LTD,London 1991;又はR.S.Davidson,Exploring the Science,Technology andApplications of U.V.and E.B.Curing,Sita TechnologyLTD,London 1999。更なる開始剤は、JP45-37377、JP44-86516、米国特許第3567453号、米国特許第4343891号、EP109772、EP109773、JP63138345、JP63142345、JP63142346、JP63143537、JP4642363、JP59152396、JP61151197、JP6341484、JP2249及びJP24705、JP626223、JPB6314340、JP1559174831、JP1304453、並びにJP1152109に記載されている。少なくとも2成分で構成される好ましい開始剤又は開始剤系は、開始剤の群としても公知のものであり、一般にノリッシュI型若しくはノリッシュII型、又は照射によって電子移動反応を遂行することができる成分として公知である。ノリッシュI型開始剤としては、例えば、ベンゾイルラジカル形成開始剤、α-ヒドロキシケトン、α-アミノケトン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、トリアジン、及びヘキサアリールビスイミダゾールが挙げられ、これらは、感度を高めるために染料又は増感剤と更に組み合わせてもよい。ノリッシュII型開始剤は、特に、ケトン又はアルデヒドとH-転移剤、例えば、アミン又はチオールなどとの組合せである。
【0065】
成分Pに関しては、ベンジルケタール、ヒドロキシケトン、アミノケトン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、チオキサントン、アントラキノン、クマリン、ヘキサアリールビスイミダゾール、ベンゾフェノン、及びこれらの組合せを含む群から前記成分Pを選択することが好ましい。これらの基は、好適な程度のラジカル形成を生じ、低照射量、更に低い範囲も可能な場合があるが好ましくは16~20ワット/cmの間での硬化を可能とするため、好ましい。好ましい開始剤は、ベンジルジメチルケタール、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィナート、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,-1,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、ミヒラーケトン、及びベンゾフェノン単独、及び/又は増感剤、アミン若しくはチオールとの組合せ、並びにこれらの任意所望の組合せである。更なる好適な開始剤は、オニウム塩、有機過酸化物、チオ化合物、ケトオキシム、ボラート、アジニウム化合物及びアゾ化合物、メタロセン及び炭素-ハロゲン基を有する化合物であり、これらは、同様に、組み合わせて使用しても、増感剤、アミン又はチオールと共に使用してもよい。使用できる増感剤の例は、キサントン、チオキサントン、アントラセン、ペリレン、フェノチアジン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、及び染料である。増感の要件は、増感剤の三重項エネルギーが増感すべき開始剤よりも高いこと、又は増感剤の励起状態からの電子移動が可能なことのいずれかである。更に、成分Pは、アミン、チオール、チオエーテル、アミノアルコール、チオエーテルアミン及びこれらの組合せを含む群から選択される共開始剤を更に含む光開始剤系であってもよい。上記光開始剤のうちのいくつかの組合せを使用して、異なる波長範囲での硬化を開始することができ、そうすると、単一の光開始剤を使用するよりも速く硬化させることができる。電磁放射線の波長は、200~2000nmの範囲、好ましくはUV範囲、より好ましくは250~550nmの範囲、非常に好ましくは300~450nmの範囲である。電磁波の広帯域照射に加えて、対応するフィルター、レーザー又は発光ダイオード(LED)を使用して生成できる種類の狭帯域又は単色の波長範囲の使用が有利な場合がある。こうした場合、350、365、385、395、400、405、532、830、及び1064nmの範囲の波長(及びその上下5~10nm前後)が個別に、又は組合せとして好ましい。成分Pを表す開始剤又は開始剤の組合せは、これらの波長範囲内に少なくとも1つの吸収極大を有し、光開始剤及び/又は光開始剤系の吸収極大の位置が電磁放射線の放射極大と一致する必要はないが、この2つの極大が非常に高い程度に重なっていると有利である。それぞれ異なる吸収極大を有する2種以上の異なる光開始剤を選択することも可能であり、そうすると、様々な波長範囲の組に反応できる。一実施形態において、感光性組成物は、全配合物を基準として0.1~20wt%の量で成分Pを含む。開始剤の濃度は、好ましくは0.1~10wt%、より好ましくは0.1~5wt%、更により好ましくは0.5~5wt%である。
【0066】
(成分B、水溶性及び/又は水分散性バインダー)
感光性組成物に含まれる水溶性及び/又は水分散性バインダーは、反応性及び官能性とすることができ、それにより、重合又は硬化反応中に架橋できる基を持つ。これに加えて、又はこれに代えて、バインダーは、非反応性バインダーであってもよい。好ましくは、バインダーは、成分U、即ちエチレン性不飽和モノマーによって形成されるポリマー鎖と架橋可能である、及び/又は他の添加剤と架橋可能である。レリーフ前駆体及び結果として得られるレリーフ構造の最終特性のバランスをとるため、反応性バインダーと非反応性バインダーの両方を組み合わせてもよい。バインダーは、直鎖状、分枝、星形又は樹枝状とすることができ、どちらもホモポリマー、統計的コポリマー、ブロックコポリマー又は交互コポリマーとして存在することができる。
【0067】
バインダーは、非常に多くの場合、溶解度を高める、及び/又は架橋反応に関与できる官能基を有する。これらの基としては、例えば、カルボキシ基、SO基、OH基、チオール基、エチレン性不飽和(メタ)アクリラート基、エポキシ基、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。一実施形態において、成分Bは、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタート、部分的加水分解ポリビニルアセタート、官能化されたポリビニルアルコール、官能化されたポリビニルアセタート、官能化された部分的加水分解ポリビニルアセタート、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセタートと少なくとも1種の他のモノマーとのコポリマー、少なくとも1つのグラフト化単位を有するポリビニルアセタートポリマー若しくはコポリマー、ポリウレタン、ポリアクリラート、ポリアミド、又はこれらの組合せを含む群から選択される。好ましくは、官能化されたポリビニルアルコール及び/若しくは官能化された部分的加水分解若しくは非加水分解ポリビニルアセタートは、エチレン性不飽和基で官能化されている、並びに/又はポリビニルアセタートのコポリマー中の少なくとも1種の他のモノマーは、エチレンである、並びに/又はポリビニルアセタートポリマー若しくはコポリマーの少なくとも1つのグラフト化単位は、ポリエチレングリコールである。部分的に加水分解された官能化されたポリビニルアセタートの製造は公知であり、例えばUSRE2740、DE3015419、EP0079514、DE3322993、DE3322994、EP849635、EP962828、及び国際公開第2019106082号に記載されており、ここに引用して援用する。感光性組成物及びそれから生成されるレリーフ構造も同様に公知であり、例えばDE3015419、EP0079514、DE3322993、DE3322994、EP849635、及びEP962828に記載されており、ここに引用して援用する。感光性組成物中の成分Bの総量は、感光性組成物の全構成要素の合計を基準として好ましくは30~90重量%、好ましくは40~85重量%、特に好ましくは45~85重量%である。追加的又は代替的な好適なバインダーを、以下に更に記載する。DE3015419は、官能化され、一部加水分解されたポリビニルアセタートの寸法的に安定した担体層と感光層との間の接着促進中間層への使用を記載する。EP0079514は、乾燥後の安定性の改善を目的とした、過剰量の官能化剤によって得られる、官能化され、一部加水分解されたポリビニルアセタートのレリーフ構造への使用を示す。DE3322993及びDE3322994は、触媒の使用による、官能化され、一部加水分解されたポリビニルアセタートの改善された製造プロセスを記載し、レリーフ構造の生成のために官能化され、一部加水分解されたポリビニルアセタートの使用を記載する。EP849635は、2種の異なるバインダーを含む放射線硬化性混合物を記載し、そのうちの一方が、官能化され、一部加水分解された、官能化度が高いポリビニルアセタートである。EP962828は、官能化され、一部加水分解されたポリビニルアセタートの合成の更なる改善、及びレリーフ構造生成のための放射線硬化性混合物におけるその使用を記載する。国際公開第2018141644号は、レリーフ前駆体用の感光性組成物における、好ましくは反応性バインダーとして使用される、官能化され、一部加水分解されたポリビニルアセタートの使用を記載する。バインダーはまた、完全加水分解又は部分的加水分解ポリビニルエステル、例えば一部加水分解されたポリビニルアセタート、ポリビニルアルコール誘導体、例えば一部加水分解されたビニルアセタート/アルキレンオキシドグラフトコポリマーであってもよく、また、これらの混合物であってもよい。バインダーはまた、水又は水/アルコール混合物に可溶なポリアミドであってもよく、例えばEP0085472又はDE1522444に記載されている種類のものを使用してもよい。追加的又は代替的な好適なバインダーの濃度は、存在する場合、感光性組成物の全配合物を基準として一般に1~50wt%の範囲、好ましくは1~40wt%の範囲、より好ましくは1~35wt%の範囲、非常に好ましくは1~30wt%の範囲である。
【0068】
(成分A、任意の添加剤)
一実施形態において、感光性組成物は、可塑剤、溶媒、更なるポリマーバインダー、着色剤、染料、安定剤、阻害剤、熱阻害剤、連鎖移動剤、UV吸収剤、分散助剤、有機又は無機フィラー、更なる非ラジカル架橋剤、粘度調整剤、及び水素結合受容性添加剤からなる群から選択される1又は複数種の添加剤を含んでもよい。一実施形態において、添加剤は、感光性組成物の全配合物を基準として感光性組成物中に0.001~50wt%、より好ましくは0.01~40wt%、更により好ましくは0.1~30wt%、最も好ましくは1~20wt%の範囲で存在する。個々の添加剤は、感光性組成物の全配合物を基準として0.001~30wt%、好ましくは0.001~20wt%の範囲、より好ましくは0.001~10wt%の範囲、非常に好ましくは0.001~5wt%の範囲の濃度で含まれていてもよい。一実施形態において、組成物中に、可塑剤、例えばポリエチレングリコール、グリセロール、エチレングリコール、N-アルキルベンゼンスルホンアミド、フタラート、及びこれらの任意所望の混合物が存在する。好適な可塑剤の他の例は、アリフタル酸エステル、例えばジメチルフタラート、ジエチルフタラート、ジブチルフタラート、ジイソブチルフタラート、ジオシルフタラート、オクチルカプリリルフタラート、ジシクロヘキシルフタラート、ジトリデシルフタラート、ブチルベンジルフタラート、ジイソデシルフタラート又はジアリルフタラート;グリコールエステル、例えばジメチルグリコールフタラート、エチルフタリルエチルグリコラート、メチルフタリルエチルグリコラート、ブチルフタリルブチルグリコラート又はトリエチレングリコールジカプリル酸エステル;リン酸エステル、例えばトリクレジルホスファート又はトリフェニルホスファート;脂肪族ジエステル、例えば、ジイソブチルアジパート、ジオクチルアジパート、ジメチルセバセタート(sebacetate)、ジブチルセバセタート、ジオクチルアゼラート又はジブチルマレアート;ペンタエリトリトールポリオキシエチレンエーテル;ポリグリシジルメタクリラート;トリエチルシトラート;グリセロールトリアセチルエステル、及びブチルラウラートである。可塑剤の含有量は、感光性組成物の全配合物を基準として1~30wt%、好ましくは1~20wt%、より好ましくは1~10wt%、非常に好ましくは3~10wt%である。
【0069】
一実施形態において、好ましくは光開始剤又は光開始剤系の吸光度スペクトルに対応する化学線範囲において顕著な固有吸収を呈さない熱重合阻害剤が存在し、例としては、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ヒドロキノン、p-メトキシフェノール、β-ナフトール、フェノチアジン、ピリジン、ニトロベンゼン、m-ジニトロベンゼン若しくはクロラニル;チアジン染料、例えばチオニンブルーG(C.I.52025)、メチレンブルーB(C.I.52015)若しくはトルイジンブルー(C.I.52040);又はN-ニトロソアミン、例えばN-ニトロソジフェニルアミン、若しくはN-ニトロソシクロヘキシルヒドロキシルアミンの塩、例えば、カリウム、カルシウム若しくはアルミニウム塩が挙げられる。他の好適な阻害剤及び安定剤は、例えばA.Valet、Lichtschutzmittel fur Lacke、33ff、Vincentz Verlag Hannover 1996に記載されている。特に好ましいのは、立体障害フェノール及びアミンである。一実施形態において、着色剤が感光性組成物に添加され、それは、染料、顔料又は光発色性添加物であってもよい。好ましくは、組成物を基準として0.0001~2wt%の量で添加される。好適な着色剤は、例えば、可溶性のフェナジニウム、フェノキサジニウム、アクリジニウム、及びフェノチアジニウム染料、例えばニュートラルレッド(C.I.50040)、サフラニンT(C.I.50240)、ローダニルブルー、ローダミンDの塩若しくはアミド(ベーシックバイオレット10、C.I.45170)、メチレンブルーB(C.I.52015)、チオニンブルーG(C.I.52025)、アクリフラビン(C.I.46000)、アクリジンオレンジ(C.I.46005)又はソルベントブラック3(C.I.26150)である。これらは、連鎖移動剤として露光特性を制御する役割を果たす、及び/又は識別、露光結果の直接制御、又は美観のために使用される。一実施形態において、染料はまた、化学光の非存在下では染料を還元しないが、露光されると励起電子状態の染料を還元できる還元剤と共に使用してもよい。このような還元剤の例は、アスコルビン酸、アネトール、チオ尿素、例えば、ジエチルアリルチオ尿素、殊にN-アリルチオ尿素、また、ヒドロキシルアミン誘導体、殊にN-ニトロソシクロヘキシルヒドロキシルアミンの塩、好ましくはカリウム、カルシウム、及びアルミニウム塩である。還元剤は、熱的に開始される重合の阻害剤として作用することができる。還元剤は一般に、組成物を基準として0.005~5wt%の量で添加してもよく、多くの場合、使用する染料の3~10倍の量の添加が適切であることがわかっている。一実施形態において、硬化反応中のポリマー鎖長を制御するために、改質剤又は調整剤とも呼ばれる連鎖移動剤を添加して、特定の機械的及び加工特性を強化してもよい。好適な連鎖移動剤は、例えば、ヒドロキシルアミン誘導体、殊にN-ニトロソシクロヘキシルヒドロキシルアミンの塩、好ましくはカリウム、カルシウム、及びアルミニウム塩、又は-SH含有化合物、例えばメルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、チオフェノール、チオグリセロール、エチルチオグリコラート、メチルチオグリコラート、ドデシルメルカプタン若しくはメルカプト酢酸、有機ハロゲン化合物、例えばテトラクロロメタンである。一実施形態において、採用されるUV吸収剤は、化合物、例えば、A.Valet、Lichtschutzmittel fur Lacke、20ff、Vincentz Verlag Hannover 1996に記載されているような、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシフェニル-s-トリアジン、オキサルアニリド、ヒドロキシフェニルピリミジン、サリチル酸誘導体、及びシアノアクリラート、並びにこれらの任意所望の組合せである。感光性組成物中のUV吸収剤も同様に利点を有し、レリーフの形成に好影響を与えることができる。一実施形態において、分散助剤を感光性組成物に添加してもよい。これらは、組成物中に存在し得る顔料、染料、ナノ粒子又は無機フィラーのような成分の分散を向上させる。例示的な分散助剤は、単官能性及び多官能性カルボン酸若しくはスルホン酸、アルコール又はアミンである。追加の非ラジカル架橋性架橋剤として、単官能性及び多官能性アルデヒド、多官能性エポキシド、多官能性カルボン酸、及び多官能性カルボン酸無水物、並びに任意所望の組合せを放射線硬化性混合物に使用することが可能である。これらには、特に、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロアルデヒド、ピバルアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド(1,5-ペンタンジアール)、スクシンアルデヒド(ブタンジアール)、テレフタルアルデヒド、1,2,3,4-ジエポキシブタン、1,2:5,6-ジエポキシヘキサン、1,2:7,8-ジエポキシオクタン、エポキシ樹脂、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル及びエポキシフェノールノボラック、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、酒石酸、クエン酸、テレフタル酸、フタル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、並びに無水フタル酸が含まれる。一実施形態において、感光性組成物に粘度調整剤を採用してもよく、例えば水溶性又は分散性ポリマーの他に、又はそれに加えて、界面活性剤又は表面活性物質も使用できる。一実施形態において、感光性組成物は、バインダーと水素結合を形成することができる少なくとも1種の水素結合形成添加剤を含んでもよく、アルコール、ケトン、アルデヒド、アミン、アミド、アミノ酸、カルボン酸、チオエーテル、チオール、ウレタン、エステル、ラクトン、ラクタム、及びこれらの任意所望の組合せからなる群から選択される。好ましくは、水素結合形成添加剤は、ポリオール、ポリアミン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、及びイオン性ポリマー、例えばポリスチレンスルホン酸などのアニオン性ポリマーからなる群から選択される。水素結合形成添加剤として特に好ましいのは、ポリエチレンイミン、エチレングリコール単位を有するポリウレタンである。一実施形態において、BASFから入手可能なポリウレタンアクリラートPUA BIN 200、ポリエチレングリコール、例えばPEG-400及びPEG-2000、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、例えばAlcotex97-5、並びにこれらの任意所望の組合せ。特定の一実施形態において、水素結合形成添加剤は、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールグラフトコポリマーである。水素結合形成添加剤は、全配合物を基準として一般に1~30wt%、好ましくは1~25wt%、より好ましくは5~20wt%、非常に好ましくは10~20wt%の量で存在する。
【0070】
現像可能なレリーフ前駆体について、以下に更に記載する。
【0071】
図1は、寸法的に安定した担体層L1と、少なくとも1つの感光層L2と、任意選択で、1つ又は複数の追加の層、例えば任意の層OLとレーザーアブレーション可能なマスク層MLとを含む現像可能なレリーフ前駆体RPを概略的に示す。層L2は、本明細書に記載するような本発明の感光性組成物を含み、先に記載したような対応する特性を持つ成分を有していてもよい。本明細書に記載するような感光性組成物を本明細書のように構成することで、本明細書に記載したような1つ又は複数の利点を達成することができる。
【0072】
(寸法的に安定した担体層L1)
好ましくは、担体層L1は、金属シート、スチール、合金、天然若しくは人工ポリマー、ポリマーブレンド、ポリマーフィルム、又はこれらの任意の組合せを含む。好適な寸法的に安定した担体の例は、プレート、箔、また、スリーブとして公知の円錐形及び円筒形のチューブで、金属、例えばスチール、アルミニウム、銅若しくはニッケル、プラスチック、例えばポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリアミド若しくはポリカルボナート、織布若しくは不織布、例えばガラス繊維織物、又はガラス繊維とプラスチックで構成される複合材料でできたものである。寸法的に安定した担体として特に好適なのは、寸法的に安定した担体フィルム、箔又は金属シートであり、その例は、ポリエチレン若しくはポリエステル箔、又はスチール若しくはアルミニウムシートである。担体フィルム、箔又は金属シートは、一般的に言えば、50~1500μm、好ましくは75~400μm、例えば約250μmの厚さを有する。担体材料としてスチールを使用する場合、0.05~0.3mmの厚さを有するスチールシートが好ましい。腐食に対する保護のためには、スズめっきを施したスチールシートの使用が好ましい。これらの担体箔又は担体シートは、放射線硬化性レリーフ形成層に面する担体箔の面に薄い接着促進層、例えば厚さ0.1μm~2μmの層をコーティングしてもよい。好ましい実施形態において、担体層は、ポリエチレンテレフタラート製のPET担体層である。
【0073】
(感光層L2)
好ましくは、感光層L2は、25μm~5000μm、好ましくは0.01~4mm、より好ましくは0.02~3mm、非常に好ましくは0.03mm~3mmの範囲の厚さを有する。感光層は、感光性組成物について先に記載したような成分を含む様々な下位層を含んでもよいが、原材料は、異なる濃度で、及び/又は異なる成分として存在してもよい。例えば、ある下位層は、非イオン性モノマーのみを含んでもよく、別の下位層は、イオン基を持つエチレン性不飽和化合物を含む。このようにして、感光層内の特定の位置又は高さに、強化された又は所望の特性を有する感光層をデザインすることができる。例えば、別の下位層よりも高い濃度で成分Uを含むことができる下位層をデザインすることができる。他の下位層は、成分Uの濃度が高い下位層の上側に位置していても、下側に位置していてもよい。理解すべきことであるが、「上」という用語は、印刷版の表面により近く、寸法的に安定した担体層からより遠く離れているものと解釈される。
【0074】
(1つ又は複数の追加の層)
任意の追加の層OLが、層L1とL2の間に、L2の上に、又はその両方に配置されてもよい。追加の層の好ましい例としては、バリア層、レーザーアブレーション可能なマスク層、接着層、剥離層若しくは解離層、UV/VIS光及び/若しくはIR光吸収層、モノマー拡散制御層、表面制御層、保護層、カバーフィルム、カバー箔、又はこれらの組合せが挙げられる。一実施形態において、任意のトップコーティング層を上に有する接着コーティング層が存在してもよい。このような接着コーティング層は、例えば、DE3045516に記載されているようなポリウレタン接着コーティング材料の層であってもよい。このような接着コーティング材料は、ポリイソシアナート架橋ポリエーテル又はポリエステルコーティング材料をベースとするものとすることができる。任意のトップコーティング層を有する接着コーティング層は、0.5と50μmの間、より詳細には2と30μmの間の厚さを有することができる。トップコーティング層は、担体層とは反対側の接着コーティング層の表面上に位置していてもよく、一般に0.1と50の間、より詳細には1と10μmの間の層厚を有し、例えば、一部加水分解された(例えば、80%程度にまで加水分解された)ポリビニルエステル、フェニルグリセロールエーテルモノアクリラート(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリラート)、及びグリオキサールの希薄な水性アルコール性溶液を塗布し、トップコーティング層を乾燥及び焼成することによって得ることができる。寸法的に安定した担体層と感光層との露光又は未露光状態での接着性は、引き剥がし角90°、引き剥がし速度30mm/分での引き剥がしテストでの測定で、0.5N/cmより大きくすべきである。例えば図1に示すように、放射線硬化性及び/又はレリーフ形成層とも呼ばれる感光層L2を保護するために、バリア層OL若しくは保護層、及び/又はカバー層CLがレリーフ前駆体RPに存在してもよい。典型的には、これらの層は、例えば、光、水分、酸素又はオゾンなどの環境影響からの保護を実現する。保存又は操作中に感光層を汚染及び/又は損傷から保護するための追加又は同様のバリア層も、存在してもよい。しかし、異なる特性の異なるバリア層を1つの層に統合することも可能である。バリア層は、独立したバリア層であってもよく、対応するバリア特性を持つ担体層と同様又は同等であってもよい。保護箔又はバリア層は、対応する波長を吸収及び/又は反射するプラスチックからなるものであってもよく、例えば、ポリエチレンナフタラートはUV範囲内で吸収し、EP0504824及びEP0767406には保護バリア層に好適な他の材料が記載されている。水分バリア層が存在してもよく、好ましくは水に対して低拡散係数を呈するポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、及びポリビニルアルコールからなる。露光によってポリマー鎖及び/又はポリマーネットワークを形成するフリーラジカル重合反応が酸素の存在の影響を受けるため、好ましくは、酸素バリア層OLが存在する。成長中のポリマー鎖は、分子状酸素と反応することがあり、それによって酸素ラジカルが生成され、それが伝播速度を低下させる可能性がある。酸素バリア層に好適な材料は、水溶性バインダーと有機溶媒に可溶性のバインダーの両方であり、これらのバインダーは、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルセルロース、エチレン-ビニルアセタートコポリマー、両性インターポリマー、セルロースアセタートブチラート、アルキルセルロース、ブチラール、環状ゴム、及びこれらの組合せである。ポリビニルアルコール、一部加水分解及び高加水分解ポリビニルカルボキシラート、ポリ(エチレンオキシド-ビニルアルコール)グラフトコポリマー、又はポリ(エチレンビニルアルコール)コポリマーの使用が好ましい。バリア層の厚さは一般に、0.2μm~10μm、好ましくは0.3~8μmである。典型的には、バリア層OLは、感光性又は放射線硬化性層L1と直接接触して配置され、望ましくない低分子量物質又は不純物が環境から感光層に移動、拡散又は転移することを防止する。これらの不純物は、例えば、水分、酸素、オゾン、又はこれらの組合せであってもよい。これに加えて、又はこれに代えて、これらの不純物は、他の層に由来するもの、例えば染料又はUV吸収剤であってもよい。また、同じ層又は別の層が、低分子量物質、例えば開始剤又はモノマーなどが感光層から近傍に位置する層、例えば上の層へと拡散することを防止してもよい。バリア層を別の場所に配置するか、2つ以上のバリア層を採用する他の配置構成も同様に可能である。水分、光及び酸素に対する好適なバリア層は、上記のバリア層である。拡散防止バリア層は、移行性の物質、例えば開始剤及びモノマーに対して高い拡散抵抗を有する。一般的に言えば、バリア層は、少なくとも部分的に水溶性又は水分散性である。個々の層同士の接着性を高め、層構成を安定させる接着層が存在してもよい。このような層は、両方の境界層と相互作用を呈する物質を含み、これらの物質は、例えば界面活性剤、疎水性と親水性の領域を有する両親媒性分子、ブロックコポリマー、2つの層又は境界層のポリマーと相溶性のブロックを含むオリゴマーである。個々の層同士の接着力を低減し、例えば引き剥がしによる別の層などの除去を容易にする1つ又は複数の剥離層が存在してもよい。例えば、保護箔の除去を、剥離層によって容易にすることができる。これらの層は、層構成の非常に多様な異なる位置のいずれかに配置することができ、1つ又は複数の層の除去を容易にするために使用してもよい。一実施形態において、表面構造生成層が存在してもよく、これは、放射線硬化性層上に表面構造を生成するためにデザインされる。この層は通常、放射線硬化性層に直接接触させて配置され、前記層の表面の構造又は粗さに影響を与えるようにデザインされる。このような層は、レリーフ前駆体を形成する層状アセンブリの製造中に、エンボス又はインプレス加工によって付与することができる。一実施形態において、マスク層MLは、放射線硬化性層L2の像様露光を可能とし、レリーフ前駆体の露光時に使用される電磁放射線を吸収及び/又は反射する少なくとも1種の材料を含む。加えて、マスク層は、例えば図2Aに示すようなエネルギー源1によって制御される画像転写処理の結果として、マスク層MLを局所的に除去することを可能にする材料を含む。好ましくは、このエネルギー源はレーザーであり、レーザービーム11でマスク層MLをアブレーション除去し、例えば図2Aに示すような開口エリア32を有するオリジナルパターンを創出する。これに加えて、又はこれに代えて、マスク層は、その吸収及び/又は反射特性を変更して、レリーフ前駆体の露光中に使用される電磁放射線を層が少なくとも部分的に透過させるようにすることができる。マスク層は、追加の成分、例えばバインダーと、効果的な加工性、膜形成、及び現像を確実にする添加剤とを更に含んでもよい。マスク層は、好ましくは、例えば図2Aに示すような、高エネルギー入力11の結果としてのレーザー放射1によって除去することができるレーザーアブレーション性マスク層MLである。レーザー除去は、レーザービーム11がマスク層に向けられているか、向けられていた位置32のみで起こる。こうして、画像又はパターン32がマスク層に創出され、これが後に、結果として得られるレリーフ構造上に同等又は類似の画像又はパターンを形成することができる。感光層L2の露光領域22における例えば図2Aに示すような電磁放射線2への連続的な露光により、層L2において架橋及び/又は重合反応が引き起こされる。その後、図2Bに破線で示すように、マスク層MLと感光層L2の未露光材料とが除去され、それにより、硬化及び/又は重合したレリーフ23を上に有するレリーフ構造RSが創出される。マスク層は、好ましくは波長範囲が700nm以上、好ましくは750nm~1mmの赤外線レーザーを使用してアブレーションされる。そして、それに続く露光が、UV範囲の電磁放射線を用いて行われる。前露光と後露光のサイクルを適用することが可能である。好適なレーザーアブレーション性マスク層は、例えば国際公開第9403839号、米国特許第5262275号、国際公開第9403838号、及びEP0767406に記載されている。レーザーアブレーション性マスク層は一般に、1又は複数種の水溶性若しくは水分散性バインダー、又は水性/アルコール系溶媒混合物に可溶性若しくは分散性のバインダーを含み、IR光を吸収するか、750~20000nm、好ましくは750~5000nmの波長範囲で強い吸収を示す材料を含む。マスク層は、可塑剤を含むことができる。IR光に感応するマスク層は、化学光に対して2.5以上、好ましくは3と5の間の光学密度を有する。マスク層に好適なバインダーの例は、一部加水分解されたポリビニルエステル、例えば一部加水分解されたポリビニルアセタート、ポリビニルアルコール誘導体、例えば、一部加水分解されたビニルアセタート/アルキレンオキシドグラフトコポリマー、無水マレイン酸コポリマー、例えば無水マレイン酸とイソブテン若しくは無水マレイン酸とビニルメチルエーテルのコポリマー、水溶性ポリエステル、水溶性ポリエーテル、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルアセタート、アクリルアミド、水溶性ポリウレタン、水溶性若しくは水-アルコール混合物に可溶性のポリアミドのホモ及びコポリマー、又はこれらのポリマーの混合物である。使用するIR吸収材料は、染料及び/又は顔料を含んでもよい。染料としては、例えば、フタロシアニン及び置換フタロシアニン誘導体、シアニン染料及びメロシアニン染料、又はポリメチン染料を使用することが可能である。使用できる顔料の例としては、カーボンブラック、グラファイト、酸化クロム、又は酸化鉄が挙げられる。ML中のIR吸収材料は一般に、マスク層の総重量を基準として1~60wt%の重量濃度で存在する。IR感光性マスク層を化学光に対して不透過性とするため、UV光を吸収する任意の化合物を使用することが可能である。例は、先に言及した染料及び顔料である。感光層中の開始剤の多くはUV光に敏感である。その結果として、カーボンブラックがIR感光層中の顔料として頻繁に使用される。カーボンブラックをIR感光層中の顔料として使用すると、更なるIR吸収材料を使用する必要がない。化学光に対して不透過性の材料の濃度は、必要な光学密度を得るために選択される。一般に、必要な光学密度は、2.5を超える。カーボンブラックをIR感光層中の顔料として使用する場合、その使用量は、IR感光性マスク層の総重量を基準として約1~60wt%、好ましくは1~40wt%である。最外層として、レリーフ前駆体は一般に、保護層、カバー層又はカバー箔CL、好ましくは保護箔を含み、例えば傷、泥又はほこりによって引き起こされる機械的損傷から放射線硬化性層を保護する。この保護層は、典型的には更なる加工ステップの前に除去される。一般に、保護層は、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタラート若しくはポリブチレンテレフタラート、ポリアミド、ポリウレタン又はポリエチレンでできた薄く、好ましくは同様に寸法的に安定したポリマー箔である。放射線硬化性層を光から保護するため、保護層は、光吸収材料も含むことができ、したがって放射線硬化性層の早期の不必要な重合を防止することができる。
【0075】
現像可能なレリーフ前駆体を作製する方法を、以下に更に説明する。
【0076】
更に本発明によると、現像可能なレリーフ前駆体を作製する方法が提供される。方法は、少なくとも1つの寸法的に安定した担体層を用意するステップと;任意選択で、寸法的に安定した担体層の上に接着剤層及び/又は接着剤処理を施すステップと;少なくとも1つの寸法的に安定した担体層の上に感光性組成物を供給するステップと;任意選択で、1つ又は複数の追加の層及び/又は処理を施すステップとを含み、感光性組成物は、本明細書に記載するような本発明による本発明の感光性組成物であり、先に記載したような対応する特性を持つ成分を有していてもよい。レリーフ前駆体RPの例示的な実施形態を、図1に示す。
より詳細な説明において、この方法は、非常に一般的に、a)~g)の順序で
a)担体層L1を用意するステップと、例えば
b)任意選択で、担体を洗浄するステップと、
c)任意選択で、1つ又は複数の任意の層OLを付与するステップと、
d)感光性組成物L2の少なくとも1つの層を塗布するステップと、
e)任意選択で、層状アセンブリを、好ましくは乾燥により更に処理するステップと、
f)任意選択で、1つ又は複数の任意の層OLを付与するステップと、
g)任意選択で、層構成を更に処理するステップと
を含む。
【0077】
ステップa)において、寸法的に安定した担体が用意され、それには、任意の層(例えば、接着促進剤層、バリア層、コーティング層)が更に備えられていてもよい。
【0078】
任意のステップb)において、担体の表面が洗浄され、任意選択で、任意の層で、又は感光性組成物で直接コーティングされる。洗浄操作では、特に、ほこりや異物粒子だけでなく、接着に悪影響を及ぼす種類の表面の汚れ(例えば指紋)も除去される。ここでは、当業者によく知られているあらゆる方法、例えば、ブラッシング、吹き飛ばし、拭き取り(溶媒あり、なし)、すすぎ落とし、及びこれらの任意所望の組合せを採用することが可能である。一般的に言えば、このような洗浄が実行される。
【0079】
任意のステップc)において、1つ又は複数の任意の層、例えば接着促進剤層又は中間層、バリア層又はコーティング層、また、これらの層の好適な組合せを付与することができる。任意の層は、当業者によく知られているいずれかの方法、例えば、カレンダー加工、積層、押し出し、流延、浸漬、噴霧、コーティング又はライニング、また、これらの好適な組合せで付与してもよい。好ましくは、ステップc)において、担体箔又は担体シートに接着層をコーティングし、それを焼成又は乾燥させる。担体フィルム、好ましくはポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリアミド及び/又はポリカルボナートの担体フィルムで、接着促進層のコーティングを有するものを使用することも可能である。
【0080】
ステップd)において、感光性組成物の少なくとも1つの層が付与され;2つ以上の層の付与の間に他の操作ステップ、例えば乾燥、照射又は噴霧、及びこれらの好適な組合せが行われてもよい。感光性組成物は、当業者によく知られているいずれかの方法、例えば、積層、ライニング、流延、浸漬、噴霧、及びこれらの好適な組合せで塗布してもよい。感光性組成物及び/又は層を加熱又は冷却することが可能なこともある。ステップd)における塗布方法に応じ、ステップe)において層構成の更なる処理を実行することが必要な場合もある。殊に、液体混合物又は溶媒含有混合物を塗布する場合、層状アセンブリの加熱、又は例えば1気圧に対して減圧下での溶媒の蒸発による乾燥ステップを実行することが好ましいことがある。層構成を例えばロール又はプレスによる機械的処理に付すことが可能なこともある。更に、この段階で、相応に透過性である少なくとも一方の側から層構成に電磁波を照射することが有利な場合もある。
【0081】
感光性組成物は、例えば一部加水分解されたポリビニルエステル、フェニルグリセロールエーテルモノアクリラート、及びグリオキサールの希薄な水性/アルコール性溶液からなる1つのトップコーティング層を含む、より詳細にはアルミニウム又はスチール製の好ましくは寸法的に安定した金属シートに、又はポリイソシアナート架橋ポリエーテル又はポリエステルコーティング材料をベースとする、例えば独国特許出願公開第3045516号によるポリウレタン接着剤コーティング材料で構成される接着層を有する、好ましくはPETの寸法的に安定した箔に流延し、塗布した混合物を乾燥トンネル内で50~200℃で加熱して乾燥させることによって付与される。
【0082】
付与され、任意選択で処理された感光性放射線硬化性層の厚さは一般に、0.01~5mm、好ましくは0.01~4mm、より好ましくは0.02~3mm、非常に好ましくは0.03mm~3mmである。
【0083】
任意のステップf)において、1つ又は複数の追加の層を放射線硬化性レリーフ形成層に付与してもよい。このような層は、保護層、バリア層、マスク層、接着層、剥離層、表面構造を生成するための層、及びこれらの層の好適な組合せを含んでもよい。任意の層又は複数の層は、当業者によく知られているいずれかの方法、例えば、カレンダー加工、ライニング、積層、圧延、押し出し、流延、浸漬、噴霧、及びこれらの好適な組合せによって付与してもよい。ここでも、層構成の更なる処理を実行する必要がある場合がある。特に液体混合物又は溶媒含有混合物を塗布する場合、層アセンブリの加熱、又は減圧下での溶媒の蒸発による乾燥ステップの実行が必要な場合がある。一般的に言えば、少なくとも1つの保護層、好ましくは保護箔が付与され、その付与は、好ましくは積層又はライニングによって行われる。
【0084】
一実施形態において、感光性組成物は、例えば流延によって担体箔又は保護箔に塗布し、乾燥させ、次いで金属製又はポリマー担体に積層してもよく、その場合、溶媒も採用できる。感光性組成物を担体に塗布し、任意の層を箔に付与し、次いで任意の層を持つ箔を感光性組成物に積層することも可能である。層又は放射線硬化性混合物のいずれかが先行するステップで加熱されていた場合、形成された層構造の能動冷却を実行することが有利な場合がある。任意選択で、ステップg)における層構成を、更なる加工にとって有利な更なる処理に供してもよい。それには、例えば、層構造の両面のうちの相応に透過性のある少なくとも一方の電磁波への露光、欠陥及び/又は不純物に対する光学的品質管理、所定のフォーマットへの切断、熱処理、梱包、保存、及びこれらの任意所望の組合せが含まれる。任意選択で、1つ又は複数の処理は、表面処理、接着処理、コロナ処理、火炎処理、化学処理、プラズマ処理、上面コーティング処理、又はこれらの組合せを含む群から選択される。
【0085】
レリーフ構造を製造する方法を、以下に更に記載する。
【0086】
方法は、本明細書に記載するような本発明による本発明の感光性組成物を含むレリーフ前駆体を用意するステップと;感光性組成物を、好ましくは像様に電磁放射線に露光するステップと;現像液の力を借りて非露光エリアを除去するステップとを含む。好ましくは、露光するステップは、例えば図2Aに示すように、アブレーションしたマスク層を通して行われる、及び/又は感光層L2と電磁放射線源2との間に配設されたマスクを通して行われる。一般に、方法は、
a)本明細書に記載するような感光性組成物を含むレリーフ前駆体を用意するステップと、
b)任意選択で、レリーフ前駆体を洗浄するステップと、
c)任意選択で、第1の側から電磁放射線を照射するステップと、
d)任意選択で、保護層、例えばカバー層を除去するステップと、
e)任意選択で、マスクを付与するステップと、
f)マスク層が存在する場合、例えばレーザーアブレーションを使用することにより、マスク層に画像転写するステップと、
g)アブレーション可能なマスク層を通して電磁放射線を照射する、及び/又はマスクを通して、例えばマスク層MLの開口部32を通して電磁放射線2を照射するステップと
h)任意選択で、マスク層を除去するステップと、
i)非照射領域を除去するステップと、
j)任意選択で、更なる処理を行うステップと
を含む。
【0087】
第1のステップa)において、記載したレリーフ前駆体が用意される。任意選択で、これをステップb)において洗浄してもよく、その場合、当業者によく知られているあらゆる方法、例えば、ブラッシング、吹き飛ばし、拭き取り(溶媒あり、なし)、すすぎ落とし、及びこれらの任意所望の組合せが使用できる。任意のステップc)において、レリーフ前駆体に、少なくとも一方の側から電磁放射線(上記参照)が広範囲に照射される。この照射は、生成すべきレリーフ構造の固定化を達成するために、好ましくはマスク層とは反対側の放射線硬化性層の側から行われる(裏面露光)。この裏面露光は、好ましくは担体材料としての透過性である寸法的に安定した材料、例えばポリマーフィルム、殊にポリエステルフィルムを通して行われる。保護層が存在する場合、任意のステップd)において除去してもよく、これは、機械的に行うことも、溶媒、水及び水溶液での処理によって化学的に行うこともできる。保護層は、好ましくは保護フィルム又は箔であり、引き剥がされる。レリーフ前駆体がマスク層を含有しない場合、このマスク層は、任意のステップe)において付与することができる。ここでは、マスクは既に画像転写されていてもよく、その場合、ステップf)は、省略される。マスクは、マスク層であるか、マスク層とすることができ、当業者に公知のいずれかの方法、例えば、載置、カレンダー加工、積層、圧延、押し出し、流延、浸漬、噴霧、ライニング、及びこれらの好適な組合せによって付与してもよい。任意選択で、特に液体配合物を塗布する場合には、更なる処理ステップ、例えば乾燥、圧延及び/又は冷却などが必要となる場合がある。マスク層は、好ましくはレリーフ前駆体の上に載置又は積層される。ステップb)、c)、d)、及びe)の順序は、好適に変更することができる。ステップf)において、マスク層に画像転写するが、このステップは、ステップe)において画像転写されたマスク層が付与されるか、例えば誘導レーザービーム又は電磁放射線の位置分解投影によって放射線感受性層を直接露光させる場合のみ任意に行われる。マスク層は、層の除去、並びに/又は吸収及び/若しくは反射特性の位置分解変化のいずれかによって画像転写され、そのため、マスク層は、画像転写に使用される波長範囲で少なくとも部分的に透過性になる。IRレーザーによってアブレーションできるマスク層を使用することが好ましい。ステップg)において、寸法的に安定した材料の反対側の放射線感受性層の側からレリーフ前駆体に電磁放射線が照射され、放射線によって誘発される重合及び架橋反応が開始される。画像転写されたマスクが存在する場合、照射は広範囲に行ってもよく、或いは、マスク層なしで操作される場合、照射は、誘導レーザービーム又は電磁放射線の位置分解投影によって、小さな領域(事実上点状)で画像転写する方法で行ってもよい。この場合に照射される電磁波の波長は、200~2000nmの範囲、好ましくは200~450nmの範囲、より好ましくは250nm~405nmの範囲である。照射は、連続的に行ってもパルス状で行ってもよく、短期間の連続放射を複数回行ってもよい。電磁波の広帯域放射に加えて、適切なフィルター、レーザー又は発光ダイオード(LED)を使用して生成できるような狭帯域又は単色の波長範囲の使用が有利な場合がある。こうした場合、350、365、385、395、400、405、532、830、1064nmの範囲の波長(及びその上下約5~10nm)が個別に、又は組合せとして好ましい。ここでの放射強度は、広い範囲にわたって変化させ、後の現像手順のために放射線硬化性層を十分に硬化させるのに十分な線量が使用されることを確実にしてもよい。放射線によって誘発される反応は、場合によっては更なる熱処理後に、放射線感受性層の露光領域が少なくとも部分的に不溶性となり、したがって現像ステップで除去できないように、十分に進行させなければならない。放射強度及び線量は、配合物の反応性及び現像の期間と効率に依存する。放射強度は、1~15000mW/cmの範囲、好ましくは5~5000mW/cmの範囲、より好ましくは10~1000mW/cmの範囲である。
【0088】
放射線量は、0.3~6000J/cmの範囲、好ましくは3~100J/cmの範囲、より好ましくは6~20J/cmの範囲である。エネルギー源への露光は、不活性雰囲気、例えば希ガス、CO及び/若しくは窒素中で、又はレリーフ前駆体を損傷しない液体下で行うこともできる。
【0089】
ステップh)において、任意選択でマスク層を除去してもよく、これは、機械的に行うことも、溶媒、水及び水溶液での処理によって化学的に行うこともできる。マスク層を個別に除去することは、層を全体として機械的に引き剥がすことができる場合、又はマスク層を単に載置又は積層しただけの場合に殊に適している。マスク層無しで操作される場合、このステップは不要である。
【0090】
レリーフ構造を生成するため、ステップg)において露光させなかった放射線硬化性層の領域がステップi)において除去される。この現像ステップにおいて、当業者によく知られているあらゆる方法を採用することができる。照射は放射線硬化性層における重合及び/又は架橋を引き起こし、その可溶性を低下させる。未露光領域を除去するには、溶媒、水及び/若しくは水溶液、又はこれらの組合せが好ましくは現像液として使用される。溶媒及び水溶液は、配合物を安定化させる、及び/又は放射線硬化性層の成分の溶解度を高める助剤を含んでもよい。このような助剤の例は、乳化剤、界面活性剤、塩、酸、塩基、安定剤、腐食防止剤、及びこれらの好適な組合せである。これらの溶液を用いた現像は、当業者に公知のあらゆる方法、例えば、現像媒体での浸漬、洗浄又は噴霧、現像媒体の存在下でのブラッシング、及びこれらの好適な組合せを使用して行うことができる。現像は、好ましくは中性の水溶液又は水を使用して行われ、除去にはブラシ、例えば回転ブラシ、又はプラッシュウェブ(plush web)を補助的に使用する。現像に影響を与える別の方法は、現像媒体の温度を制御すること、例えば温度を高めることにより現像を加速させることである。このステップでは、放射線感受性層上に依然として存在するいずれの層も、現像中にこれらの層を引き離し、現像媒体に十分に溶解及び/又は分散させることができる場合、除去が可能である。図2Bは、感光層L2の未露光領域の除去された材料、及び除去されたマスク層MLを示し、これらの除去された部分は、破線で示されている。
【0091】
先行するステップの後に、任意選択で、更なる処理ステップ(ステップj)を行うことができる。これには、例えば、熱処理、乾燥、電磁放射線での処理、識別特性の取り付け、トリミング、コーティング、及びこれらの任意所望の組合せが含まれる。例えば、反応を開始及び/又は完了させるために、レリーフ構造の機械的及び/又は熱的完全性を高めるために、並びに揮発性構成要素を除去するために、熱処理を利用してもよい。熱処理には、公知の方法、例えば、加熱した気体又は液体による加熱、IR放射、及びこれらの任意の組合せを使用することができる。ここでは、オーブン、ファン、ランプ及びこれらの任意所望の組合せを採用することができる。
【0092】
例えば、レリーフ構造の表面を非粘着性にするために、重合反応及び/又は架橋反応を誘起及び/又は完了させるために、電磁放射線による追加の処理を使用してもよい。この場合、照射される電磁波の波長は、既に先に説明したように、200~2000nmの範囲である。
【0093】
レリーフ構造を作製する別の方法は、レリーフ形成層に照射し、レリーフ形成層の照射硬化領域にレリーフを刻み込むことを含む。このような方法は、殊にパッド印刷版の形成に適しているように思われる。非常に一般的に、この方法は、
a)レリーフ前駆体を用意するステップと、
b)任意選択で、レリーフ前駆体を洗浄するステップと、
c)任意選択で、裏面から電磁放射線を照射するステップと、
d)任意選択で、保護層を除去するステップと、
e)放射線硬化性層に電磁放射線を照射するステップと、
f)放射線硬化性層の少なくとも一部を像様にアブレーションするステップと、
g)任意選択で、更なる処理を行うステップと
を含む。
【0094】
第1のステップa)において、レリーフ前駆体が用意される。任意選択で、これをステップb)において洗浄してもよく、その場合、当業者によく知られているあらゆる方法、例えば、ブラッシング、吹き飛ばし、拭き取り(溶媒あり、なし)、すすぎ落とし、及びこれらの任意所望の組合せが使用できる。
【0095】
任意のステップc)において、レリーフ前駆体の裏面が使用する波長を透過させる場合、レリーフ前駆体に、裏面から電磁放射線を広範囲に照射することができる。この照射は、有利には、生成すべきレリーフ構造の固定を達成するために、マスク層とは反対側の放射線感受性層の側から行われる(裏面露光)。この裏面露光は、好ましくは透過性である寸法的に安定した材料、例えばポリマーフィルム、殊にポリエステルフィルムを通して行われる。ここでは、照射される電磁波の波長は、既に先に記載したように、200~2000nmの範囲である。保護層が存在する場合、任意のステップd)において除去してもよく、これは、機械的に行うことも、溶媒、水及び水溶液での処理によって化学的に行うこともできる。保護層は、好ましくは引き剥がされる。ステップb)、c)、及びd)の順序は、所望に応じて変更することができる。ステップe)において、寸法的に安定した材料とは反対側の放射線感受性層の側から層構造に電磁波が照射され、放射線によって誘発される反応が開始される。照射は広範囲に行ってもよく、或いは、誘導レーザービーム又は電磁放射線投影によって小さな領域(事実上点状)で画像転写する方法で行ってもよい。この場合に照射される電磁波の波長は、既に先に記載したように、200~2000nmの範囲である。照射は、連続的に行ってもパルス状で行ってもよく、短期間の連続放射を複数回行ってもよい。ここでの放射強度は、広い範囲にわたって変化させ、後の使用のために放射線感受性層を十分に変化させるのに十分な線量が使用されることを確実にしてもよい。放射線によって誘発される反応は、場合によっては更なる熱処理後に、放射線感受性層の露光領域が安定するように十分に進行させなければならない。放射強度及び線量は、配合物の反応性及び現像の積極性に依存する。放射強度は、1~15000mW/cmの範囲、好ましくは5~5000mW/cmの範囲、特に好ましくは10~1000mW/cmの範囲である。放射線量は、0.3~6000J/cmの範囲、好ましくは3~100J/cmの範囲、特に好ましくは6~20J/cmの範囲である。エネルギー源への露光は、不活性雰囲気、例えば希ガス、CO及び/若しくは窒素中で、又はレリーフ前駆体を損傷しない液体下で行うこともできる。レリーフ構造は、工程f)において、放射線感受性層の少なくとも一部を像様にアブレーションすることによって完成する。これは、機械的方法又は高エネルギー放射線によるアブレーションによって行うことができる。機械的方法の場合、放射線感受性層の特定の領域が少なくとも1つのツールで除去され、その結果、画像転写が達成される。ツールは、コンピューター支援プロセスを使用して制御することができる。高エネルギー放射線によるアブレーションの場合、ビームは、コンピューター支援により放射線感受層の上に誘導され、露光領域の材料が除去される。この場合、照射される電磁波の波長は、500nm~100μmの範囲、好ましくはIR範囲、特に好ましくは500nm~50μmの範囲、特に非常に好ましくは800nm~20μmの範囲である。電磁波の広帯域照射に加えて、対応するフィルター、レーザー又は発光ダイオード(LED)を備えた低圧ランプ、高圧ランプ、蛍光ランプ及び/又はフラッシュランプを使用して生成できる種類の狭帯域又は単色の波長範囲の使用が有利な場合がある。こうした場合、830nm、980nm、1064nm及び10.6μmの領域の波長が個別に、又は組合せとして好ましい。LEDと蛍光ランプ又は蛍光灯を使用し、互いに任意に組み合わせることが好ましい。このプロセスで達成可能なレリーフの深さは、付与される放射線感受性層の層厚により上限が決められ、10~1000μmの範囲、好ましくは20~500μmの範囲、特に好ましくは30~100μmの範囲である。先行するステップの後に、任意選択で、更なる処理ステップ(工程j)を行うことができる。これには、例えば、熱処理、乾燥、電磁放射線での処理、識別特性の取り付け、トリミング、コーティング、及びこれらの任意所望の組合せが含まれる。例えば、反応を開始及び/又は完了させるために、レリーフ構造の機械的及び/又は熱的完全性を高めるために、並びに揮発性構成要素を除去するために、熱処理を利用してもよい。熱処理には、公知の方法、例えば、加熱した気体又は液体による加熱、IR放射、及びこれらの任意の組合せを使用することができる。ここでは、オーブン、ファン、ランプ及びこれらの任意所望の組合せを採用することができる。例えば、レリーフ構造の表面を非粘着性にするために、重合反応及び/又は架橋反応を誘起及び/又は完了させるために、電磁放射線による処理を使用してもよい。この場合、照射される電磁波の波長は、既に先に説明したように、200~2000nmの範囲である。
【実施例0096】
先に記載した本発明を、下記の実施例によって更に説明するが、これらの実施例は、いかなる形でも本明細書に添付された本発明の開示又は請求項の範囲に制限を課すものとして解釈されることを意図していない。それどころか、以下に示す実施例は、当業者に本発明をよりよく理解してもらうために本明細書に存在していると理解すべきである。
【0097】
(実施例1-レリーフ前駆体(RP)に対する効果)
この実施例では、本明細書に記載するような感光性組成物を含むレリーフ前駆体を調査し、強化された特性のいくつかを表1に示している。サンプルP1~P7が示されており、P1は比較例であり、P2~P6は、本明細書に記載するようなコポリマーを含む。より具体的には、前駆体P2a~P4aはコポリマーAを含み、前駆体P5b~P7bはコポリマーBを含む。コポリマーA及びBはどちらも、表1に列挙した通りのwt%濃度で存在する。前記wt%濃度は、レリーフ前駆体の感光層に含まれる感光性組成物の全配合物を基準とする。
【0098】
コポリマーAには、部分的に加水分解されたエチレンビニルアセタートコポリマーを使用した。コポリマーAは、92.0~94.0(mol%)の程度まで加水分解されたコポリマーであり、ブルックフィールド同期モータ回転型で決定した20℃の4%水溶液で測定した粘度が15.5~21.0mPa*sである。前記コポリマーAは、以下に更に記載するNMR法で測定すると、3.4mol%のエチレン反復単位、90.1mol%のビニルアルコール反復単位、及び6.5%のビニルアセタート反復単位を含む。
【0099】
コポリマーBには、部分的に加水分解されたエチレンビニルアセタートコポリマーを使用した。コポリマーBは、98.0~99.0(mol%)の程度まで加水分解されたコポリマーであり、ブルックフィールド同期モータ回転型で決定した20℃の4%水溶液で測定した粘度が3.6~4.4mPa*sである。前記コポリマーBは、以下に更に記載するNMR法で測定すると、7.7mol%のエチレン反復単位、88.9mol%のビニルアルコール反復単位、及び3.4%の以下のビニルアセタート反復単位を含む。
【0100】
実施例からわかるように、特性の向上、例えばカール値の低下が達成される。
【0101】
【表1】
【0102】
サンプルは、下記の通り調製した:
まず、下記を含む比較用の感光性組成物を調製した。45重量部の官能化されたコポリマーを成分Bとして添加した。この官能化されたコポリマーには、メタクリラート官能化ポリビニルアセタートを使用した。前記成分は、国際公開第2018141644A1号に準拠して調製した。コポリマーの組成は、1.8mol%のビニル(メタ)アクリル酸単位、81.0mol%のビニルアルコール単位、及び17.2mol%のビニルアセタート単位である。
【0103】
成分Aとしての、水素結合形成添加剤、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールグラフトコポリマー20重量部。このような成分は、分子量が1000と50000の間のポリエチレングリコールにビニルアセタートをグラフトし、続いて、加水分解度が97%、DIN 53 015に準拠して20℃で測定した粘度が5mPasになるまで加水分解することによって得た。ポリエチレンへのビニルアセタートのグラフトは、例えば独国特許出願公開第2846647号に記載されている。
【0104】
上記構成要素を127重量部の水と63重量部のn-プロパノールとの混合物に85℃の温度で溶解させ、均質になるまで溶液を撹拌した。
【0105】
続いて、33.18重量部のエチレン性不飽和化合物、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルプロパ-2-エノアート(HPPE)を成分Uとして添加した。
次に、下記を溶液に添加した:
1.5重量部の開始剤、ベンジルジメチルケタールを成分Pとして添加した。成分Aとしての更なる添加剤、0.3重量部の熱阻害剤、N-ニトロソシクロヘキシルヒドロキシルアミン、カリウム塩、着色剤としての0.01重量部のサフラニンT(C.I.50240)、及び染料としての0.01部のアクリフラビン(C.I.46000)と共に添加した。溶液を60℃の温度で、均質な感光性溶液が得られるまで撹拌した。次いで、この感光性溶液を使用して、下記の手順に従いレリーフ前駆体を作製した。
【0106】
この感光性溶液を、0.3~5μmの層厚を有するレーザーアブレーション可能なマスク層を事前に予めコーティングした保護カバーフィルム上に流延した。カバーフィルムには、厚さ125μmのポリエチレンテレフタラート(PET)層を使用した。したがって、感光層は、レーザーアブレーション可能なマスク層及びカバー層の上に形成された。次いで、これらの層を寸法的に安定した担体層の上に積層した。後者には、予めコーティングした厚さ250μmのPET担体層を使用した。前記担体層は、独国特許出願公開第3045516号に準拠し、ポリイソシアナート架橋ポリエーテル又はポリエステルコーティングに基づいて作製した。結果として得られた積層された層は、1100μmの全厚を有した。このプレートを乾燥キャビネットにおいて60℃で24時間乾燥させた。
【0107】
こうして、サンプルP1としてのレリーフ前駆体RPを創出した。サンプルP2~P6のレリーフ前駆体は、下記の通り調製した:まず、サンプルP2~P6の感光性組成物を調製した。これは、サンプルP1について先に記載したのと同様に行ったが、成分Aとしてのポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールグラフトコポリマーを、本明細書に記載するような部分的に加水分解されたエチレンビニルアセタートコポリマーと部分的に交換した点が異なる。より具体的には、部分的な交換は、上記のようなコポリマーA及びBと行った。前記成分はどちらも、KURARAYから市販されている。
【0108】
この部分的な交換を行うことで、本明細書に記載するようなコポリマーを含むサンプルP2a~P4a及びP5b~P7bの感光性組成物を創出し、量は、サンプルが前記コポリマーを表2に列挙するようなwt%濃度で含むように交換し、このwt%は、サンプルの感光性組成物の全配合物を基準としたものである。
【0109】
次いで、感光性組成物を上記と同様に使用して、レリーフ前駆体サンプルP2a~P7bを作製した。全サンプルについて、下記の測定及び/又は決定を行った。
【0110】
〔コポリマーA及びBを、1H NMRスペクトルで調査した〕
Bruker400MHz分光計で、核磁気共鳴スペクトルを298Kで記録した。化学シフト(δ)は、溶媒参照からの100万分の1(ppm)ダウンフィールドで報告される。スペクトルは、重水素化DMSO-d中で記録した。反復単位エチレン、ビニルアルコール及びビニルアセタートのmol%比の計算は、δ=1.1~1.85(m、幅、-[-CH2-CH2-]-[-CH2-CH-OH-]-[-CH2-CH-CO-O-CH3-]-)における3種の反復単位全てを有するポリマー骨格に対するδ=1.97(s、幅、3H、CH-CO-O-)におけるビニルアセタート、及びδ=3.52-4.02(m、幅、1H、-CH-OH)におけるビニルアルコールの個々の積分値のNMR統合によって行った。コポリマーAは、3.4mol%のエチレン反復単位、90.1mol%のビニルアルコール反復単位。及び6.5%のビニルアセタート反復単位を含む。コポリマーBは、7.7mol%のエチレン反復単位、88.9mol%のビニルアルコール反復単位、及び3.4%のビニルアセタート反復単位を含む。
【0111】
〔前駆体のカールの測定〕
前駆体のカール現象を、下記の通り調査した:レリーフ前駆体プレートを20×20cmの大きさに切断し、保護箔を除去した。5分の保存期間後、例えば図4A及び4Bに示すように、レリーフ前駆体プレートの4つの角が上方、即ち寸法的に安定した担体層から離れる方向にカールした。最もカールを示した2つの角で、距離を定規で測定し、これらの2つの測定値の算術平均をmm単位で報告した。距離は、例えば、表面40、レリーフ前駆体RP、及び測定した距離dが示されている図4Bに示すように、レリーフ前駆体が置かれている表面と、レリーフ前駆体のそれぞれのカールした角との間の距離であると理解することができる。
【0112】
〔前駆体の柔軟性の測定〕
前駆体の柔軟性を、破断点伸び(eR%)値と、応力-歪み測定によって決定されるN/mm単位の応力σを測定することにより調査した。応力-歪み測定は、未露光サンプルに対して行う。前駆体プレートを室温で一晩保存した後、各サンプルについて、4つの試料を打ち抜き、その試料は、ISO527-2規格に準拠し、Zwick Roell AGのZwick標本形態5Aとしても定義される形状を有していた。応力-歪み測定の前に、カバー箔と担体層を、前記層を引き剥がすことで除去した。ここでは、損傷(亀裂など)及び/又は異物(例えば、気泡、粒子など)の事例がサンプルに存在しないことを確認すべきである。DIN53504に基づく方法に従い、Zwick Roell AG製Zwick Roell72.5機器と、testexpertソフトウェアバージョンV10.0を使用し、プレテンション力0.01MPa及び歪み速度100mm/分で、室温(20℃前後)で測定を行った。サンプルのそれぞれについて、4つの試料を測定する。%単位の破断点伸びeR及びN/mm単位の応力σmaxの算術平均を表1に報告する。
【0113】
〔レリーフ構造の作製のための好適な露光時間の決定〕
好適な露光時間は、下記の方法に従って決定した。レリーフ前駆体プレートの保護カバー箔を除去した後、レーザーアブレーション可能なマスク層をThermoFlexx20(Xeikon)ソフトウェアMultiplate Version3.1.0.48及び下記のパラメータを用いてアブレーションした:波長1064nm、毎秒10回転、レーザー出力18W。レーザーアブレーション中、典型的に使用されるテストモチーフを、2540dpiの解像度を使用してマスク層上に画像転写した。テストモチーフには、段階的な色調値のハーフトーンのくさび状エリア(0.4%刻みの0.4%~2.0%のハーフトーン領域)が含まれており、解像度は146ライン毎インチ(lpi)であった。次いで、アブレーションした前駆体を、TL09チューブを備えたナイロプリント(登録商標)コンビCW35×50(Flint Group)を用いて異なる時間で露光した。次いで、ナイロプリント(登録商標)コンビCW35×50(Flint Group)を用い、ブラシを補助的に使用して水で洗い流し、続いて65℃で15分間の乾燥と、TL09チューブで2分間露光する後露光ステップを行った後、1.2%ハーフトーンスクリーン(146ライン毎インチ(lpi))がエラーなく再現できる露光時間の決定を行った。これらの例では、3分の露光時間が見出され、表1に列挙した実施例に使用した。
【0114】
〔洗い流し時間の決定〕
洗い流し時間は、表1に洗浄時間(分)として表示されている。この値は、下記の方法によって決定される。未露光レリーフ前駆体プレートは、その保護カバー箔を除去し、上記のようにアブレーションし、露光した。露光した前駆体をナイロプリント(登録商標)コンビCW35×50(Flint Group)において、レーザーアブレーション可能なマスク層と未露光感光層が完全に除去されるまでブラシを補助的に使用して水で洗浄した。感光層の完全除去の達成に必要な最小時間を、分単位の洗い流し時間として報告した。
【0115】
洗浄、乾燥及び後露光後、結果として得られたレリーフ構造を調査したが、この調査については、実施例2に更に詳述されている。
【0116】
(実施例2-レリーフ構造(RS)に対する効果)
実施例1に記載したようなサンプルP1~P6から得られたレリーフ構造を更に検査し、それらのそれぞれの特性を表2に示す。
【0117】
【表2】
【0118】
レリーフ構造の柔軟性を、破断点伸び(eR%)値と、応力-歪み測定によって決定されるN/mm単位の応力σを測定することにより調査した。応力-歪み測定は、露光し、洗浄し、乾燥させたサンプルに対して行う。露光、洗い流し、及び乾燥条件は、先に記載したものと同じである。乾燥後、プレートを室温で一晩保存し、各サンプルについて、4つの試料をレリーフ構造プレートから打ち抜き、前記試料は、ISO527-2基準に準拠し、Zwick Roell AGによるZwick標本形態5Aとしても定義される形状を有していた。応力-歪み測定の前に、カバー箔と担体層を、前記層を引き剥がすことにより除去した。ここでは、損傷(亀裂など)及び/又は異物(例えば、気泡、粒子など)の事例がサンプルに存在しないことを確認すべきである。Zwick Roell AG製Zwick Roell72.5機器と、testexpertソフトウェアバージョンV10.0を使用して、DIN53504に基づく方法に準拠し、プレテンション力0.01MPa及び歪み速度100mm/分で、室温(20℃前後)で測定を行った。サンプルのそれぞれについて、4つの試料を測定する。%単位の破断点伸びeR及びN/mm単位の応力σmaxの算術平均を表2に報告する。更に、50%及び100%伸びの時点のN/mm単位のσ50及びσ100の値を表2に示す。
【0119】
レリーフ構造のカールを、20×20cmの大きさのレリーフ構造プレートについて決定した。このために、レリーフ前駆体プレートの保護カバー箔を除去し、レーザーアブレーション可能なマスク層を、ThermoFlexx20(Xeikon)ソフトウェアMultiplate Version3.1.0.4を用い、下記のパラメータでアブレーションした:波長1064nm、毎秒10回転、レーザー出力18W。レーザーアブレーション可能なマスク層が完全に除去されたプレートを、TL09チューブを備えたナイロプリント(登録商標)コンビCW35×50(Flint Group)を使用して、3分間露光した。露光後、プレートのそれぞれを、表1に最小現像時間(分)として列挙した対応する洗い流し時間の間、ブラシを補助的に除去に使った洗い流しに供した。洗い流しは水で行った。その後、レリーフ構造を、ナイロプリント(登録商標)コンビCW35×50(Flint Group)の乾燥機において65℃で15分間乾燥させ、後露光した。次に、担体層を下向きに、露光した感光層を上向きにしてプレートを保存した。この保存は、室温(19~22℃)で1日及び3日間行った。この間、プレートの4つの角が上向きにカールした。最もカールを示した2つの角で距離を測定し、これら2つの測定値の算術平均をmm単位で報告した。距離は、レリーフ構造が置かれている表面とレリーフ構造のそれぞれのカールした角との間の距離であると理解することができる。
【0120】
亀裂開始時の使用継続時間は、下記のように測定される。UV凸版印刷インクUVONOVA(Flint Group)を使用して印刷テストを行った。このテストのため、印刷版を印刷シリンダ上に伸ばし、従来の凸版印刷ユニット(印刷機:Nilpeter-F2400)で印刷した。印刷基材は、Avery Dennison製の片面コーティングを施した「FSC」紙とした。印刷速度は50m/分であった。ハーフトーンスクリーンのサイズは146lpiであった。理想的な色調値の源画(1:1曲線)に対する、特徴的なプリントラインの色調値のゲイン(1%~10%のハーフトーン領域)の測定を行った。印刷テストの結果を表2にまとめる。印刷後、ベタエリアに亀裂がないか印刷版を検査した。複数回のテスト試行で使用継続時間を決定した。前記複数のテスト試行において、パラメータ、例えば印刷速度、印刷圧力、被印刷基材の硬度を変化させた。各サンプルについて、複数のテスト試行中に各サンプルが達成した平均使用継続時間を表す下記の値(-)、(0)、(+)のうちの1つが与えられた。ここでは、(-)は、使用継続時間が短いことを表し、それは、レリーフ構造のメインテナンス及び/又は交換が増えること意味する。値(0)は、大幅とはいえないが、より長い使用継続時間が達成できることを意味する。値(+)は、使用継続時間が大幅に改善されたことを示す。
【符号の説明】
【0121】
1 エネルギー源
2 電磁放射線
11 レーザービーム
22 露光領域
23 レリーフ
32 開口エリア
40 表面
RP レリーフ前駆体
L1 寸法的に安定した担体層
L2 感光層
CL カバー層
OL 任意の層
ML レーザーアブレーション可能なマスク層
RS レリーフ構造
d 距離
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
【外国語明細書】