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特開2022-85874残留応力制御を有するSiCウエハの製造方法
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  • 特開-残留応力制御を有するSiCウエハの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085874
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】残留応力制御を有するSiCウエハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/36 20060101AFI20220601BHJP
   C30B 25/18 20060101ALI20220601BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
C30B29/36 A
C30B25/18
H01L21/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189317
(22)【出願日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】102020000028778
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】591002692
【氏名又は名称】エスティーマイクロエレクトロニクス エス.アール.エル.
【氏名又は名称原語表記】STMicroelectronics S.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100076185
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 正明
(72)【発明者】
【氏名】ルッゲーロ アンツァローネ
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ ラ ヴィア
【テーマコード(参考)】
4G077
5F152
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077AB01
4G077AB09
4G077BE08
4G077DB01
4G077ED06
4G077EE01
4G077EE05
4G077FJ03
4G077HA12
5F152LL02
5F152LM09
5F152LN05
5F152LP05
5F152NN05
5F152NQ02
(57)【要約】
【課題】 残留応力制御を有するSiCウエハを製造する方法を提供する
【解決手段】 SiCウエハを製造する方法が、支持体(58)上に第1SiC層(60)を形成するステップ、該支持体(58)を該第1SiC層(60)から分離するステップ、及び該第1SiC層(60)上に第2SiC層(68)を成長させるステップであって、第1導電型(N)を有しており該第2SiC層(68)内に第1応力を発生させる第1ドーパントの気体相での前駆体を導入すること及び該第1導電型(N)とは反対の第2導電型(P)を有しており該第1応力と反対で且つそれをバランスさせる第2応力を該第2SiC層(68)内に発生させる第2ドーパントの気体相での前駆体を導入することを包含している該成長させるステップ、を有している。従って、該SiCウエハ反りの効果が無い。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の反応室(24)内において行われる複数のステップからなるシリコンカーバイドSiCウエハを製造する方法において、
支持体(58)上にシードSiC層(60)を形成するステップ、
該シードSiC層(60)上に更なるSiC層(68)を成長させるステップであって、第1導電型(N)を有しており且つ該更なるSiC層(68)内に第1応力を発生させるような第1ドーパントの前駆体を気体相で該反応室(24)内に導入するサブステップと、該第1導電型と反対の第2導電型(P)を有しており且つ該第1応力と反対の第2応力を該更なるSiC層(68)内に発生させるような第2ドーパントの前駆体を気体相で該反応室(24)内に導入するサブステップとを包含している該シードSiC層(60)上に更なるSiC層(68)を成長させるステップ、及び
該シードSiC層(60)から該支持体(58)を少なくとも部分的に除去するステップ、
を有している方法。
【請求項2】
該支持体(58)を少なくとも部分的に除去する該ステップが、該反応室(24)内において該支持体(58)を少なくとも部分的に溶融させることによって行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
更に、該反応室(24)内において該支持体(58)の残存部分をエッチングすることによって該支持体(58)の除去を完了するステップを包含している請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該支持体(58)を溶融するステップが、該支持体(58)の溶融温度以上で且つ該シードSiC層(60)の溶融温度未満の温度へ該反応室(24)を加熱することによって行われる請求項1乃至2の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該更なるSiC層(68)の厚さが該シードSiC層(60)の厚さよりも一層大きい請求項1乃至4の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
該シードSiC層(60)の物質が3C-SiCである請求項1乃至5の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
該更なるSiC層(68)の物質が3C-SiCである請求項1乃至6の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
該第1ドーパントの前駆体が窒素Nである請求項1乃至7の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該第2ドーパントの前駆体がトリメチルアルミニウムTMAである請求項1乃至8の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該第2ドーパントの前記前駆体を、該第1ドーパントの該前駆体のsccmで表された流れの0.01%と1%との間の値を有しておりsccmで表された流れで該反応室(24)内に導入させる請求項1乃至9の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
該第1ドーパントの前記前駆体を、該第2ドーパントの夫々の濃度よりも1桁一層大きな該第1ドーパントの濃度を該更なるSiC層(68)内に発生させるために該反応室(24)内に導入させる請求項1乃至10の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
該第1ドーパントの前記前駆体を、2×1019原子数/cmと6×1019原子数/cmとの間の該第1ドーパントの濃度を該更なるSiC層(68)内に発生させるために該反応室(68)内に導入させ、且つ該第2ドーパントの前記前駆体を、1.5×1018原子数/cmと7×1018原子数/cmとの間の該第2ドーパントの濃度を該更なるSiC層(68)内に発生させるために該反応室(24)内に導入させる請求項1乃至11の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
該第1導電型がN型であり、該第2導電型がP型であり、該第1応力が圧縮型であり、且つ該第2応力が引っ張り型である請求項1乃至12の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
該シード層(60)を形成する該ステップが、該第1ドーパントの前記前駆体を気体相で該反応室(24)内へ導入するサブステップと、該第2ドーパントの前記前駆体を気体相で該反応室(24)内へ導入するサブステップとを包含している請求項1乃至13の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
該シードSiC層(60)を成長させるために、該第1ドーパントの気体相での該前駆体及び該第2ドーパントの気体相での該前駆体を、同時的に又は少なくとも部分的に重畳する夫々の時間間隔期間中に該反応室(24)内に導入させる請求項1乃至14の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
該更なるSiC層(68)を成長させるために、該第1ドーパントの気体相での該前駆体及び該第2ドーパントの気体相での該前駆体を、同時的に又は少なくとも部分的に重畳する夫々の時間間隔期間中に該反応室(24)内に導入させる請求項1乃至15の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
該第2物質を成長させる該ステップが、該第1及び第2ドーパントの前記前駆体の存在下においてCVD成長を行うことを包含している請求項1乃至16の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ウエハが6インチの直径を有している請求項1乃至17の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記支持体(58)がシリコン基板である請求項1乃至18の内のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は残留応力の制御を有するSiCウエハの製造プロセスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
知られているように、半導体装置は、典型的に、シリコンウエハ上に製造される。しかしながら、シリコンカーバイド(SiC)ウエハが、少なくとも部分的に、その有利な化学物理的特性のために、ますます普及するようになっている。例えば、SiCは、通常、シリコンよりも一層広いバンドギャップを有している。その結果、比較的小さな厚さであっても、SiCはシリコンよりも一層高いブレークダウン電圧を有しており、従ってパワー装置などの高電圧適用例において有益的に使用することが可能である。
【0003】
シリコンカーバイドは、異なる結晶形式即ちポリタイプで見つけることが可能である。最も一般的なポリタイプは立方体ポリタイプ(3C-SiCポリタイプ)、六角ポリタイプ(4H-SiC及び6H-SiCポリタイプ)、及び菱面体ポリタイプ(15R-SiCポリタイプ)である。これらの中で、現在のところ、3C-SiC立方体ポリタイプが、他のウエハポリタイプと比較してその独特の特性のために、詳細な研究の対象となっている。例えば、通常、3C-SiCウエハはSiO/3C-SiC界面上で一層小さなトラップ密度を有しており且つチャンネル電子の一層大きな移動度を有している。3C-SiCを興味のあるものとしているその他の特性は、オン状態抵抗RONの値が低いことがあり、そのことは650V以上で動作する装置の場合において特に有用である。
【0004】
しかしながら、シリコンカーバイドウエハの製造はシリコンウエハの製造よりも一層複雑であり、且つ3C-SiC基板は現在のところ市販されていない。
【0005】
特に、本発明者は、シリコンカーバイドウエハが反りを発生する傾向があることを見出しており、そのことは、実際に、電子装置を製造することを不安定なものとさせる。この現象は寸法が大きなウエハ、特に6インチを越えるウエハにおいてより顕著である。
【0006】
特許文書EP2782117は、SiC基板と該SiC基板上に形成されており且つP型不純物及びN型不純物を包含しているP型第1SiCエピタキシャル層を包含しているSiCエピタキシャルウエハを記載している。しかしながら、前記した問題は解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許 EP2782117
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的とするところは、既知の技術の欠点を解消し且つ寸法が大きなシリコンカーバイドウエハであっても製造することを可能とするシリコンカーバイドウエハの製造プロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、特許請求の範囲に定義される如く、シリコンカーバイドウエハの製造プロセスが提供される。
【0010】
本発明をより良く理解するために、その実施例について、純粋に非制限的な例として、添付の図面を参照して以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】特に3C-SiCウエハであるシリコンカーバイドウエハの製造プロセス、即ち製造方法の1実施例における或る段階における状態を示した概略断面図。
図2】特に3C-SiCウエハであるシリコンカーバイドウエハの製造プロセス、即ち製造方法の1実施例における或る段階における状態を示した概略断面図。
図3】特に3C-SiCウエハであるシリコンカーバイドウエハの製造プロセス、即ち製造方法の1実施例における或る段階における状態を示した概略断面図。
図4】特に3C-SiCウエハであるシリコンカーバイドウエハの製造プロセス、即ち製造方法の1実施例における或る段階における状態を示した概略断面図。
図5】特に3C-SiCウエハであるシリコンカーバイドウエハの製造プロセス、即ち製造方法の1実施例における或る段階における状態を示した概略断面図。
図6】特に3C-SiCウエハであるシリコンカーバイドウエハの製造プロセス、即ち製造方法の1実施例における或る段階における状態を示した概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1-3のステップ即ち段階は既知のタイプのものであり、ここでは、説明の完全性のために且つ本発明の理解をより良くするために記載する。例えば、これらの処理ステップは米国特許公開番号2020/144047から既知である。
【0013】
図1-6において、シリコンカーバイドウエハの製造プロセス、即ち製造方法が、CVD成長用の装置10を参照して例示されている。装置10は、SiCウエハの成長及びドーピングの化学反応が行われる閉鎖空間を画定している反応室24を有している。装置10は、それ自身既知の態様で、ヒーター(不図示)、インレットダクト16、及びアウトレットダクト18を有している。装置10は、更に、支持体20(「サスセプタ(susceptor)」とも呼称される)及び例えばカップ形状をした収容器22を有している。支持体20及び収容器22は反応室24内に位置されている。ヒーターは、反応室24及び反応室24内に収容されているもの(例えば、支持体20,収容器22、気体、基板、ウエハ、又はその他の物体又は基板)を加熱する形態とされている。インレットダクト16は、装置10外部の環境から反応室24へ向けての流体経路を与えており、反応室24内へ前駆体及び気体を導入するために使用することが可能である。アウトレットダクト18は、反応室24から装置10外側へ向けての流体経路を提供している。それは、反応室24内で形成された反応気体を外部へ排出させるために使用することが可能である。支持体20は反応室24内で収容器22上に配置されている。支持体20は基板又はウエハを受け取り且つそれを反応室24の内側に維持するためのプラットフォームを構成している。特に、後述する如く、シリコン基板はSiCウエハの製造期間中に支持体20上に配置される。
【0014】
上述したタイプの装置又は同様の装置は、例えば、米国特許公開公報2018/090350から既知であり、それは、傾斜した形状を有しているか又は下方に対面した複数のバーによって形成されているサスセプターを記載している。又、特許文書US2020/144047は、装置10と同様で且つ本発明を実施するために使用することが可能なサスセプターが設けられている装置を記載している。
【0015】
詳細には、図1において、ここではシリコン基板である第1物質からなる基板58を反応室24内で且つ支持体20の着座48に精密に位置決めさせる。基板58を着座48内に挿入させる。
【0016】
基板58は脆弱性の特性に適合する可及的に最も小さな厚さを有している。例えば、基板58は、特に、200μmと300μmとの間で少なくとも60-70μmの厚さを有することが可能である。
【0017】
基板58は、通常、結晶性構造を有している。更に、このステップにおいては、反応室24は室温にある。
【0018】
基板58が支持体20に位置決めされると、反応室24を密封し且つヒーターによって第1温度へ加熱される。例えば、該第1温度は450℃乃至550℃の間とすることが可能である。第1圧力レベルも反応室24内に設定するが、例えば、8×10-5barと12×10-5barとの間とすることが可能である。
【0019】
反応室24を該第1温度へ加熱させた後に、それは該第1温度よりも一層高い第2温度とさせる。例えば、該第2温度は1050℃と1150℃との間とすることが可能である。反応室24内に第2圧力レベルも設定するが、それは該第1圧力レベルよりも一層高く、例えば、75mbarと125mbarとの間とすることが可能である。
【0020】
反応室24は本プロセスの残部において該第2圧力レベルに維持される。
【0021】
反応室24を該第2温度へ加熱した後に、基板58を水素(H)内に浸漬させる。該水素はインレットダクト16を介して反応室24内に導入される。更に、インレットダクト16を介して塩化水素(HCl)を反応室24内に導入させることによって、基板58に対して活性化操作を行う。
【0022】
次いで、反応室24を該ヒーターによって該第2温度よりも一層高い第3温度へ加熱させる。例えば、該第3温度は1340℃と1400℃との間とすることが可能である。
【0023】
再度図1を参照して、反応室24が該第3温度とされるか又はそれが該第3温度に到達した後に、カーボンを基礎とした前駆体をインレットダクト16を介して反応室24内に導入させる。該カーボンを基礎とした前駆体は基板58の表面シリコン原子を炭化させて薄いSiC層、特に3C-SiC層、を形成する。1つの例示的な例においては、該薄いSiC層は数ナノメートルの程度の厚さを有している。このステップは「ランプ炭化(ramp carbonization)」とも呼称される。後述するように、この薄いSiC層は更なる一層熱いSiC層(特に、3C-SiCポリタイプのもの)を成長させるためのシードとして作用する。
【0024】
反応室24が該第3温度にある場合に、反応室24内の該カーボンを基礎とした前駆体に対してシリコンを基礎として前駆体を付加させる。その結果、図2に例示した如く、該薄いSiC層からエピタキシャル的に第1SiC層60が成長し始める。このステップは、しばしば、「ヘテロエピタキシャル成長(hetero-epitaxial growth)」として定義される。第1SiC層60は前述したSiCシード層である。
【0025】
次いで、溶融プロセスが実施される。特に、その溶融はインレットダクト16を介して反応室24内にHの流れを維持することによって行われる。溶融期間中、反応室24は該ヒーターによって、基板58の溶融温度以上であって且つ第1SiC層60の溶融温度よりも一層低い第4温度へ加熱される。例えば、該第4温度は1550℃と1650℃との間とすることが可能である。その結果、図3に例示される如く、基板58は溶融し(図3中において符号66で示してある)且つ収容器22に堆積して吸収物質33(例えば、スポンジ状物質)によって回収される。
【0026】
反応室24は、基板58の全てが第1SiC層60から除去されるまで、又は基板58の薄い残留層70が支持体20上に留まる(基板58の残留層70は次いでエッチングプロセスによって除去される)まで、該第4温度に維持させることが可能である。
【0027】
図4において、シリコン及びカーボンを基礎とした前駆体をインレットダクト16を介して反応室24内に導入させる。従って、第1SiC層60が継続して厚さを増加させるか又は第2SiC層68が第1SiC層60上に成長し始める(例えば、CVDプロセスによって)。このステップはしばしば「ホモエピタキシャル成長(homo-epitaxial growth)」と呼称される。該シリコンとカーボンとを基礎とする前駆体は基板58の溶融ステップ期間中に供給させることが可能である。代替的には、該シリコンとカーボンとを基礎とする前駆体は基板58の溶融プロセスが完了した後に供給させる。
【0028】
第2SiC層68が所望の厚さに到達すると、シリコン及びカーボンを基礎とした前駆体の流れが停止される。反応室24内に存在する可能性のある全ての反応気体はアウトレットダクト18を介して反応室24から除去される。
【0029】
図5を参照すると、該SiCウエハが基板58の残留部分70を包含している場合には、それらは第2SiC層68の成長期間中又は該成長の終わりにエッチングプロセスによって除去することが可能である。この場合には、塩酸(HCl)等のエッチング化合物(特に、気体形態で)をインレットダクト16を介して反応室24内に導入させ、それは該残留部分70を除去することによる作用を行い、該除去された残留物はアウトレットダクト18を介して反応室24から排出される。
【0030】
従って、SiCウエハ72が得られる。このSiCウエハ72は2乃至12インチの間、特に6インチ、の直径を有している。
【0031】
SiCウエハ72は、例えば、電子装置の製造用の基板として使用することが可能である(例えば、その上に更なる層を成長させ及び/又はドーパント注入及び活性化、リソグラフィ等のステップを実施することによって)。
【0032】
本発明の一つの側面によれば、図4のステップ期間中で、CVD成長のステップ期間中にSiC層68のドーピングを実施する。本発明のこの側面は図6に例示してあり、それは図4の複製である。
【0033】
ここでのドーピングは、電子部品の形成の爾後のステップの関数としてのウエハ72の電気的固有抵抗の所望の値の設定と製造ステップ終了時にSiCウエハ72に露呈される正味の応力値の規制との二重機能を有している。
【0034】
詳細には、本発明の1実施例において、第2SiC層69のドーピングプロセスは、CVD成長期間中に、一つがN型で一つがP型である2つの異なるドーパント種を同時的に供給することによって実施され、該ドーパント種は、例えば、N型のドーピング用の窒素(N)及びアルミニウム原子によるP型のドーピング用のトリメチルアルミニウム、TMA又はAl(CH,等の気体相における前駆体を使用することによって供給される。これら2つの異なるドーパント種の供給は同時的ではないが、いずれにしても、CVD成長の或る時刻において、両方のドーパント種がこの様なCVD成長に使用される反応室内に存在するような場合もある。同じことがシード層60の形成についてもいえる。
【0035】
本発明者が知得したところによれば、SiCウエハ72におけるN及びPドーパントの濃度(又は、等価的に、反応室内に導入されるドーパント又は前駆体のドーズ)を適切に校正することによって、SiCウエハ72の引っ張り及び圧縮応力を規制することが可能である。実際に、圧縮及び引っ張り応力はSiCウエハ72の表面の画定された面に対して直交する方向に作用し且つ相互に反対の方向に反らせる傾向となる。Nによって行われるN型のドーピングは圧縮方向における応力の規制を可能とし(それは第1方向に作用する)、一方、TMAによって行われるP型のドーピングは引っ張り方向における応力の規制を可能とする(それは該第1方向に対して平行で且つ反対である第2方向に作用する)。
【0036】
本発明者が知得したところによれば、以下のような割合を満足するようなsccm(毎分当たりの標準立方センチメートル)で測定された流れでの気体相における前駆体を反応室24内に導入することによって所望の応力バランスが得られる。SiCウエハ72において得ることが所望されるN型のドーピングの関数として選択された「x」sccmに等しい窒素の流れが与えられた場合に、TMAの流れ「y」はxの値の0.01%と1%との間である。例えば、約2100cmの内部容積を有する反応室24を考えた場合に、xの値はsccmで500と1800との間の範囲である場合があり、且つyの値はsccmで0.1と5との間である場合があり、これらの値は前述した割合を満足するように選択されている。
【0037】
sccmで表される流れの値は、使用される反応室の寸法及びSiCウエハ72のレベルにおける所望のドーパント濃度の関数として異なる場合があることは明らかである。
【0038】
ウエハレベルにおける応力をバランスさせるために、本発明者が検証したところでは、N型ドーパント(N)濃度は1010原子数/cm-1020原子数/cmの範囲内に設定することが可能であり、且つP型ドーパント(Al)濃度は1017原子数/cm-1019原子数/cmの範囲内に設定することが可能である。より詳細には、本発明者が検証したところでは、N型ドーパント濃度が2×1019原子数/cm-6×1019原子数/cmの範囲内であり、且つP型ドーパント濃度が1.5×1018原子数/cm-7×1018原子数/cmの範囲内である場合に実質的に平坦なウエハ72を得ることが可能である。上述した値を使用した場合の応力のバランスは3C-SiCの場合に特に効果的である。
【0039】
一般的に、ドーパント濃度はそのようにして製造されるウエハの電気的条件に従って変化する場合がある。例えば、1018原子数/cmの程度のSiCウエハ72のレベルにおいて測定したN型の正味のドーピングを有するSiCウエハ72を得るために、ウエハ72のレベルにおいて測定したN型ドーパントの濃度は4×1018-1.5×1019原子数/cmの間であり、且つウエハ72のレベルにおいて測定したP型ドーパントの濃度は1017原子数/cmよりも一層高く(例えば、1×1018原子数/cm)且つ1019原子数/cmよりも一層低い(例えば、8×1018原子数/cm)。
【0040】
1実施例において、上述した製造プロセスは同一の反応室24内において行われ、特に製造中の製造物(即ち、SiCウエハ72及び基板58と層60と層68との間での2つまたはそれ以上の積層体によって形成されるその中間製造物)が反応室24から出されること無しに行われている。本発明者が知得したところでは、SiCウエハ72(又はその中間製造物)が製造の中間ステップ期間中に反応室24から出される場合には、ウエハ72(又はその中間製造物)が破損する高い危険性がある。特に、図2乃至4に関連して形成される積層体のいずれかが基板58を除去するステップ(例えば、層剥離プロセスを使用して)を実施するために反応室24から出される場合には、この様な積層体はその除去ステップ期間中に破損するか亀裂を発生させる蓋然性が高い。一方、図3を参照して説明したように、反応室24内で基板58の溶融プロセスを行うことによって、且つ、必要である場合に、図4を参照して説明したエッチングステップによるステップを完了することによって、層60と68とは妥協されることはなく、且つその様にして得られたSiCウエハ72は亀裂又はその他の物理的損傷を示すものではない。
【0041】
最後に、本特許請求の範囲に定義するような本発明の範囲を逸脱すること無しに、本書に記載し且つ例示した装置及び方法に対して種々の変形例及び修正例を構成することが可能であることは明らかである。例えば、本発明は、SiCウエハ上のP型の正味のドーピングを得るため、N型のドーパント種の導入による応力効果のバランス付けのために適用することも可能である。更に、N型のドーピングの場合には、窒素を代替するためのドーパント種、例えばリン(P)を使用することも可能であり、P型のドーピングの場合には、アルミニウムを代替するためのドーパント種、例えばボロン(B)を使用することも可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6