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特開2022-85894細胞活性化反応器および細胞活性化方法
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  • 特開-細胞活性化反応器および細胞活性化方法 図1
  • 特開-細胞活性化反応器および細胞活性化方法 図2
  • 特開-細胞活性化反応器および細胞活性化方法 図3
  • 特開-細胞活性化反応器および細胞活性化方法 図4
  • 特開-細胞活性化反応器および細胞活性化方法 図5
  • 特開-細胞活性化反応器および細胞活性化方法 図6A
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  • 特開-細胞活性化反応器および細胞活性化方法 図6C
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  • 特開-細胞活性化反応器および細胞活性化方法 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085894
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】細胞活性化反応器および細胞活性化方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20220601BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20220601BHJP
   C12M 1/42 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12N5/071
C12M1/42
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021192509
(22)【出願日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】63/118,749
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【弁理士】
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】陳 庭軒
(72)【発明者】
【氏名】▲温▼ 國興
(72)【発明者】
【氏名】邱 雅慧
(72)【発明者】
【氏名】周 念慈
(72)【発明者】
【氏名】呂 靜芳
(72)【発明者】
【氏名】陳 振泰
(72)【発明者】
【氏名】陳 廷碩
(72)【発明者】
【氏名】江 佩馨
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA11
4B029AA27
4B029BB11
4B029CC01
4B029CC02
4B029DG10
4B029GB10
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BD14
4B065BD50
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
【目的】細胞活性化反応器および細胞活性化方法を提供する。
【解決手段】細胞活性化反応器は、本体と、回転部と、上カバーと、微多孔膜と、複数のバッフルとを含む。本体は、複数の細胞と複数の磁気ビーズを収容するのに適した収容空間を有する。回転部は、収容空間に設置され、複数のインペラを含む。微多孔膜は、収容空間に設置され、収容空間の複数の貫通孔を覆う。複数のバッフルは、本体に設置され、回転部が回転するよう駆動された時、複数のバッフルと複数のインペラの相互作用により、細胞と磁気ビーズを分離する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖端、側部、および開放端により形成され、複数の細胞と複数の磁気ビーズを含有する細胞培養液を収容するのに適した収容空間を有する本体と、
前記収容空間に設置され、軸芯および複数のインペラを含み、ドライバと連接して回転するよう駆動されるのに適した回転部と、
前記本体の上方に取り外し可能に設置され、前記収容空間の前記開放端を覆い、開口部を有し、前記開口部が前記回転部の位置に対応して設置され、前記回転部の軸芯を前記開口部内に穿設するとともに、前記回転部の軸芯の端部を露出し、前記ドライバが前記端部を介して前記回転部と連接する上カバーと、
前記収容空間の前記閉鎖端に設置され、前記閉鎖端が貫通する複数の貫通孔を有し、複数の前記貫通孔を覆う微多孔膜と、
前記収容空間の前記側部に設置され、前記回転部が回転するよう駆動された時、複数の前記インペラとの相互作用により、前記細胞と前記磁気ビーズを分離する複数のバッフルと、
を含む細胞活性化反応器。
【請求項2】
前記インペラと前記バッフルの間の最小距離が、1mm~8mmである請求項1に記載の細胞活性化反応器。
【請求項3】
前記本体が、円柱状であり、前記本体の軸芯と前記回転部の軸芯が、重なり合い、各前記インペラが、前記回転部の軸芯により前記収容空間の前記側部に向かって延伸して、厚さが漸減する請求項1に記載の細胞活性化反応器。
【請求項4】
各前記バッフルが、前記収容空間の前記側部により前記回転部の軸芯に向かって延伸して、厚さが漸減する請求項1に記載の細胞活性化反応器。
【請求項5】
複数の前記バッフルの数量が、4個以上であり、複数の前記インペラの数量が、4個以上である請求項1に記載の細胞活性化反応器。
【請求項6】
各前記インペラと各前記バッフルの断面形状が、長方形である請求項1に記載の細胞活性化反応器。
【請求項7】
前記回転部と前記収容空間の前記閉鎖端の間の距離が、0.05mm~1mmである請求項1に記載の細胞活性化反応器。
【請求項8】
複数の前記貫通孔の孔径が、0.6mm~1.5mmである請求項1に記載の細胞活性化反応器。
【請求項9】
前記微多孔膜の面積が、324mm2~14400mm2である請求項1に記載の細胞活性化反応器。
【請求項10】
前記本体の下方に設置され、前記本体を持ち上げる下カバーをさらに含み、前記本体が、前記微多孔膜により前記下カバーと連通した請求項1に記載の細胞活性化反応器。
【請求項11】
前記本体の下方に設置された基体をさらに含み、前記下カバーが、前記基体の溝の中に埋め込まれた請求項10に記載の細胞活性化反応器。
【請求項12】
各前記インペラと各前記バッフルの高さが、同じである請求項1に記載の細胞活性化反応器。
【請求項13】
前記細胞培養液の液面高さが、各前記インペラの高さよりも高い請求項1に記載の細胞活性化反応器。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の細胞活性化反応器を使用して、細胞活性化を行う細胞活性化方法であって、
ドライバをプログラム可能に起動し、間欠的に回転部を駆動して回転させることにより、複数の細胞と複数の磁気ビーズを分散させるステップと、
静置して活性化させた後、複数の前記細胞を除去して収集するステップと、
を含む細胞活性化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞活性化反応器および細胞活性化方法に関するものであり、特に、細胞の増殖を増進させる細胞活性化反応器および細胞活性化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細胞培養は、バイオメディカルテクノロジー分野における重要な技術の一つである。近年の熱心な研究および最適化された免疫治療技術では、患者の生物検体からT細胞を分離した後、T細胞に対して培養増幅を行い、T細胞を十分な濃度にした上で免疫治療方法を実施することによって、特定の癌細胞を特異的に攻撃することができ、且つ副作用が少ない。
【0003】
細胞培養過程において(特に、T細胞)、一般的な条件(例えば、安定した細胞培養器に入れる、培養液を添加する)の他に、ノビー(knobby)磁気ビーズにより細胞と接触する表面積をさらに増やして、細胞の活性化を刺激することによって、より良い品質および数量の増幅効果を達成することができる。この技術過程では、磁気ビーズに密着した細胞を互いに分離しなければならず、分離してから細胞を精製することによって、次の段階の増幅培養周期を実行することができる。既存の技術では、一般的に、手動操作で細胞の分離を行うため、作業員は、マイクロピペット(micropipette)とプラスチック容器を使用して、これらの液体を各機器の間に移動させなければならない。しかしながら、手動操作方法によって、細胞のクロスコンタミネーション(交叉汚染)、生物廃棄物感染の懸念、長い操作時間、および高い人件費等の問題が生じる可能性が高いため、細胞培養の研究場所が実験室モードのみに制限される。免疫療法に応用する場合は、価格が高いため、現在の癌治療方法においては普及しない。
【0004】
したがって、細胞を手動で分離する実験方法を改善するとともに、細胞培養プロセスを最適化して細胞培養時間を短縮し、且つ細胞培養品質を向上させることによってコストを下げることが、ますます重要になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、細胞を手動で分離する実験方法を改善して、細胞培養プロセスを最適化し、手動操作ミスを減らし、実験再現性を高めるのに適した細胞活性化反応器および細胞活性化方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の細胞活性化反応器は、本体と、回転部と、上カバーと、微多孔膜(microporous film)と、複数のバッフルとを含む。本体は、閉鎖端、側部、および開放端により形成され、複数の細胞と複数の磁気ビーズを含有する細胞培養液を収容するのに適した収容空間を有する。回転部は、収容空間に設置され、軸芯および複数のインペラを含み、回転部は、ドライバと連接して回転するよう駆動されるのに適している。上カバーは、本体の上方に取り外し可能に設置され、収容空間の開放端を覆い、上カバーは、開口部を有し、開口部は、回転部の位置に対応して設置され、回転部の軸芯を開口部内に穿設するとともに、回転部の軸芯の端部を露出し、ドライバは、端部を介して回転部と連接する。微多孔膜は、収容空間の閉鎖端に設置され、閉鎖端は、貫通する複数の貫通孔を有し、微多孔膜は、複数の貫通孔を覆う。複数のバッフルは、収容空間の側部に設置され、回転部が回転するよう駆動された時、複数のバッフルと回転部の複数のインペラの相互作用により、細胞と磁気ビーズを分離する。
【0007】
本発明の細胞活性化方法は、上述した細胞活性化反応器を使用して、細胞活性化を行う。そのステップは、ドライバをプログラム可能に起動し、間欠的に回転部を駆動して回転させることにより、複数の細胞と複数の磁気ビーズを分散させるステップと、静置して活性化させた後、複数の細胞を除去して収集するステップとを含む。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明の細胞活性化反応器は、本体、回転部、上カバー、微多孔膜、および複数のバッフルを含む。複数のバッフルと回転部の相互作用により、細胞と磁気ビーズを自動的に分離することができる。また、本体の収容空間の閉鎖端にある微多孔膜は、複数の貫通孔を有し、貫通孔を介して気体が収容空間の内外において自律的に交換を行うため、本体の収容空間を酸素豊富環境にすることができる。このようにして、静的細胞培養を行い、細胞を手動で分離する実験方法を改善することができ、同時に、細胞培養プロセスを最適化して、手動操作ミスを減らし、実験再現性を高めることができる。この他、さらに自動化の可能性を高め、定量化プロセスによって細胞生産システムの開発を加速することにより、細胞培養時間を短縮して、細胞培養品質を向上させることができ、且つ周知の技術において比較的高い人件費を減らすことができる。
【0009】
添付図面は、本発明の原理がさらに理解されるために含まれており、本明細書に組み込まれ、且つその一部を構成するものである。図面は、本発明の実施形態を例示しており、説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たしている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の1つの実施形態に係る細胞活性化反応器の部分的構造概略図である。
図2図2は、本発明の1つの実施形態に係る細胞活性化反応器の構造概略図である。
図3図3は、本発明の1つの実施形態に係る細胞活性化反応器の本体と上カバーの接合点の断面概略図である。
図4図4は、図3の切断線L-L’の断面概略図である。
図5図5は、本発明の1つの実施形態に係る細胞活性化反応器の本体と下カバーの接合点の断面概略図である。
図6図6A図6Cは、本発明の1つの実施形態に係る細胞活性化反応器の操作断面図である。
図7図7は、本発明の1つの実施形態の細胞活性化反応器を使用して磁気ビーズ細胞分散試験を行った時の顕微鏡図である。
図8図8は、本発明の1つの実施形態の細胞活性化反応器を使用して磁気ビーズ細胞分散試験を行った時の細胞活性と数量の測定図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
下記の実施形態および添付の図面を組み合わせて、さらに詳細に説明するが、提供する実施形態は、本発明の範囲を制限するためのものではない。また、添付の図面は、単に説明することが目的であり、元の寸法に基づいて作図したものではない。理解しやすいよう、下記の説明において、同じ素子には同一の符号を表示して説明する。また、文中に使用する「含む(包含、包括)」、「有する(具有)」等の用語は、いずれも開放性の用語であり、つまり、「含むが、これに限定されない」を指す。さらに、文中に提示する「上」、「下」等の方向を示す用語は、単に添付の図面中の方向を参照するためのものであり、本発明を限定するためのものではない。また、明細書において提示する数量および形状は、単に本発明を具体的に説明してその内容を理解しやすくするためのものであり、本発明を限定するためのものではない。
【0012】
本文において、「ある数値から別の数値」で表示した範囲は、明細書で当該範囲内の全ての数値を1つ1つ挙げることを回避するための概要的表示方法である。したがって、ある特定数値範囲についての描写は、当該数値範囲内の任意の数値および当該数値範囲内の任意の数値により限定される比較的小さな数値範囲を含むことを意味し、明細書において当該任意の数値および当該比較的小さな数値範囲が明記されていることと同じである。
【0013】
図1は、本発明の1つの実施形態に係る細胞活性化反応器の部分的構造概略図である。図2は、本発明の1つの実施形態に係る細胞活性化反応器の構造概略図である。図3は、本発明の1つの実施形態に係る細胞活性化反応器の本体と上カバーの接合点の断面概略図である。図4は、図3の切断線L-L’の断面概略図である。図5は、本発明の1つの実施形態に係る細胞活性化反応器の本体と下カバーの接合点の断面概略図である。
【0014】
まず、図1を参照すると、細胞活性化反応器の主要構成は、本体10、上カバー20、および下カバー30を含み、上カバー20は、本体10の上方に取り外し可能に設置され、下カバー30は、本体10の下方に設置される。本体10、上カバー20、および下カバー30の材料は、ポリカーボネート(Polycarbonate, PC)を含むことができる。図1および図2を同時に参照すると、図1に示した主要構成の他に、細胞活性化反応器は、さらに、ドライバ40、ホルダ42、および基体50を含むことができる。基体50は、本体10の下方に設置され、下カバー30は、基体50の溝の中に埋め込まれる。ドライバ40は、上カバー20の上方に設置され、ホルダ42は、ドライバ40と基体50を連結して、ドライバ40を上カバー20の上方の位置に維持する。ドライバ40は、モータを含むことができるが、本発明はこれに限定されない。
【0015】
図1図2、および図3を同時に参照すると、本体10は、収容空間12を有し、本体10の収容空間12は、閉鎖端12A、側部12B、および開放端12Cにより形成され、収容空間12は、複数の細胞および複数の磁気ビーズを含む細胞培養液を収容するのに適している。1つの実施形態において、収容空間12のキャビティ体積は、例えば、20mLである。別の実施形態において、収容空間12のキャビティ体積は、10mL~1000mLであってもよい。回転部70は、収容空間12内に設置され、軸芯Aおよび複数のインペラ72を含み、回転部70は、ドライバ40と連接して回転するよう駆動されるのに適している。本実施形態において、上カバー20は、収容空間12の開放端12Cを覆い、上カバー20は、開口部22により回転部70の位置を限定し、且つ回転部70において駆動されて回転した時に、細胞培養液が漏れるのを防ぐことができる。詳しく説明すると、上カバー20は、開口部22を有し、開口部22は、回転部70の位置に対応して設置され、回転部70の軸芯Aは、本体10の外に突出して、開口部22内に穿設されるとともに、回転部70の軸芯Aの端部Mを露出し、それにより、ドライバ40は、端部Mを介して回転部70と連接するため、回転部70をドライバ40により駆動して回転させることができ、回転部70の回転速度は、例えば、0~100rpmであり、且つプログラム可能な回転を行うことができる。複数のバッフル60は、収容空間12の側部12Bに設置され、複数のインペラ72の数量は、複数のバッフル60に対応することができるが、本発明はこれに限定されない。回転部70が回転するよう駆動された時、複数のバッフル60と回転部70の複数のインペラ72の間に比較的狭い間隙があるため、複数のバッフル60と回転部70の複数のインペラ72の相互作用により、細胞と磁気ビーズを分離することができ、且つバッフル60とインペラ72は、流体のせん断力を強化することができる。細胞と磁気ビーズの分離の詳細な操作フローについて、以下、詳しく説明する。
【0016】
図1図2、および図3を同時に参照すると、インペラ72とバッフル60の間の最小距離dは、例えば、1mmである。別の実施形態において、インペラ72とバッフル60の間の最小距離dは、1mm~8mmであってもよい。本実施形態において、本体10は、例えば、円柱状であり、本体10の軸芯と回転部70の軸芯Aは、重なり合ってもよく、各インペラ72は、回転部70の軸芯Aにより収容空間12の側部12Bに向かって延伸して、厚さが漸減し、各バッフル60は、収容空間12の側部12Bにより回転部70の軸芯Aに向かって延伸して、厚さが漸減し、細胞の破裂を減らす。複数のバッフル60の数量は、例えば、4個以上であり、複数のインペラ72の数量は、例えば、4個以上である。図3に示したバッフル60およびインペラ72の数量は、それぞれ6個であるが、本発明はこれに限定されず、また、バッフル60およびインペラ72の数量は、奇数であっても、偶数であってもよい。
【0017】
図1図2図3、および図4を同時に参照すると、回転部70と収容空間12の閉鎖端12Aの間の距離hは、例えば、0.05mm~1mmであり、層流を強化して、流体(すなわち、細胞培養液)に均等なストレスを加えることができる。本実施形態において、インペラ72の断面形状は、例えば、長方形である。
【0018】
図1図2図3図4、および図5を同時に参照すると、注意すべきこととして、図4では、解説の必要に応じて、一部の構成要素のみを示し、且つ各構成要素は、意図として、主に、下記構成要素間の配置関係を表示するが、実際の構成要素の大きさの比率関係を表すものではない。本実施形態において、微多孔膜80は、収容空間12の閉鎖端12Aに設置され、通気性・透水性の薄膜材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene, PTFE)の材料を含む)を使用して製造される。詳しく説明すると、収容空間12の閉鎖端12Aは、上下に貫通する複数の貫通孔14を有し、微多孔膜80は、収容空間12の閉鎖端12Aに設置されるとともに、これらの貫通孔14を覆う。微多孔膜80の厚さは非常に薄いため、収容空間12の閉鎖端12Aは、支持性を有する材料(例えば、PCまたはナイロン(nylon)を含む)を使用して製造することにより、微多孔膜80が収容空間12の細胞培養液を収容することによって陥没するのを防ぐことができる。微多孔膜80とこれらの貫通孔14を設置することにより、気体は、収容空間12の内外において自律的に交換を行うことができるため、細胞培養液を酸素豊富環境に維持することができる。1つの実施形態において、複数の貫通孔14の孔径は、例えば、1.2mmであり、微多孔膜80の面積は、例えば、490.87mm2である。別の実施形態において、貫通孔14の孔径は、0.6mm~1.5mmであってもよく、微多孔膜80の面積は、324mm2~14400mm2であってもよい。
【0019】
1つの実施形態において、下カバー30は、複数のスタンド32を有し、本体10を持ち上げて、これらの貫通孔14を露出することができるため、細胞活性化反応器を静置した時に、十分な空間を保持し、貫通孔14を介して気体が収容空間12に出入りできるようになるため、自律的な酸素豊富環境を収容空間12に提供し、細胞を活性化させることができる。別の実施形態において、細胞活性化反応器は、さらに、本体10の下方に設置された基体50を含むことができ、下カバー30を基体50の溝の中に埋め込むことによって、細胞活性化反応器を静置した時に、さらに安定させることができ、同時に、気体を出入りさせるのに十分な空間を提供することができる。
【0020】
図6A図6Cは、本発明の1つの実施形態に係る細胞活性化反応器の操作断面図である。
【0021】
本発明は、上述した細胞活性反応器を使用して細胞活性化を行う細胞活性化方法も提供する。詳しい操作フローは、図6A図6Cに示した通りである。図6Aを参照すると、細胞培養液100には、複数の細胞102および複数の磁気ビーズ104が含まれる。この時、細胞102と磁気ビーズ104は、緊密に結合され、細胞培養液100中の細胞102の初期量は、例えば、5×105~10×105である。図6Bを参照すると、回転部70がドライバ40と連接して回転するよう駆動された時、複数の回転部70の複数のインペラ72の相互作用により、細胞102と磁気ビーズ104を分離することができる。回転部70がドライバ40により駆動されて回転すると、バッフル60とインペラ72は、せん断力を提供して、細胞102と磁気ビーズ104を分離することができるため、手動ピペットで吸吐を繰り返して細胞分離のプロセスを行う周知の技術と置き換えることができる。1つの実施形態において、ドライバ40は、プログラム可能に起動することができ、例えば、間欠的に回転部70を駆動して回転させることにより、磁気ビーズと細胞の分散を行うことができる。
【0022】
このようにして、図6Cを参照すると、細胞102を磁気ビーズ104と分離することができる。図6A図6Cを参照すると、各インペラ72と各バッフル60の断面形状は、例えば、長方形であり、且つ各インペラ72と各バッフル60の高さは同じであり、細胞培養液100の液面高さは、例えば、各インペラ72の高さよりも高い。
【0023】
以下、実験例により上述した本発明の細胞活性化反応器および細胞活性化方法について詳しく説明する。しかしながら、下記の実験例は、本発明を限定するものではない。
【実施例0024】
実験例
本発明の細胞活性化反応器および細胞活性化方法が細胞と磁気ビーズを有効に分離できることを証明するため、以下、この実験例を特別に行う。
【0025】
実験例1:異なる数のバッフルとインペラの磁気ビーズ細胞分散試験
図7は、本願の1つの実施形態の細胞活性化反応器を使用して磁気ビーズ細胞分散試験を行った時の顕微鏡図である。異なる数のバッフルとインペラを有する細胞活性化反応器をそれぞれ使用して、磁気ビーズ細胞分散試験を行った。細胞の初期量が5×105の状況で、回転部の回転速度を100rpmとして、30秒の回転と30秒の停止を交互に行う条件で、5回行った。その後、顕微鏡を使用して視野の一部を取り、撮影を行った。図7を参照すると、バッフルの数が4個以上で、且つインペラの数が4個以上の時、いずれも磁気ビーズの細胞分散効果が良好で、磁気ビーズと細胞を十分に分離できることがわかった。本実施形態において、6個のバッフルと6個のインペラを使用した時、効果が良好であった。
【0026】
実験例2:磁気ビーズ細胞分散試験の比較
図8は、本発明の1つの実施形態の細胞活性化反応器を使用して磁気ビーズ細胞分散試験を行った時の細胞活性と数量の測定図である。本実施形態において、数量が5×105のT細胞とiKNOBEAD磁気ビーズにより、T細胞と磁気ビーズを緊密に結合した状況で、それぞれ手動ピペット(pipette)と本発明の細胞活性化反応器を使用して、T細胞と磁気ビーズの分離を行った。静置して3日間活性化させた後、磁気ビーズを除去して、T細胞を収集した。その後、実験群において収集したT細胞を細胞活性化反応器の中から取り除き、対照群のT細胞とそれぞれ細胞培養装置の中に静置して4日間培養した後、細胞活性と数量を測定した。図8を参照すると、手動ピペット(図8のピペットに対応する)と比較して、本発明の細胞活性化反応器は、T細胞と磁気ビーズの分散性を良好にし、手動ミスを減らし、再現性を高めることがわかった。
【0027】
以上のように、本発明の細胞活性化反応器は、本体、回転部、上カバー、微多孔膜、および複数のバッフルを含む。複数のバッフルと回転部の相互作用により、細胞と磁気ビーズを自動的に分離することができ、さらに、流体のせん断力と切断の粘性力を強化することができ、バッフルは、流体の対流をさらに加速することができる。また、本体の収容空間の閉鎖端にある微多孔膜は、複数の貫通孔を有し、貫通孔を介して気体が収容空間の内外において自律的に交換を行うため、本体の収容空間を酸素豊富にし、細胞を活性化することができる。このようにして、静的細胞培養を行い、細胞を手動で分離する実験方法を改善することができ、同時に、細胞培養プロセスを最適化して、手動操作ミスを減らし、実験再現性を高めることができる。この他、さらに自動化の可能性を高め、定量化プロセスによって細胞生産システムの開発を加速することにより、細胞培養時間を短縮して、細胞培養品質を向上させることができ、且つ周知の技術において比較的高い人件費を減らすことができる。
【符号の説明】
【0028】
10 本体
100 細胞培養液
102 細胞
104 磁気ビーズ
12 収容空間
12A 閉鎖端
12B 側部
12C 開放端
14 貫通孔
20 上カバー
22 開口部
30 下カバー
32 スタンド
40 ドライバ
42 ホルダ
50 基体
60 バッフル
70 回転部
72 インペラ
80 微多孔膜
A 軸芯
d、h 距離
M 端部

図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
【外国語明細書】