(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085896
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】成形品取出機及びその作業監視方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20220601BHJP
B29C 45/40 20060101ALI20220601BHJP
B22D 17/32 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C45/40
B22D17/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192751
(22)【出願日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2020197183
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000138473
【氏名又は名称】株式会社ユーシン精機
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】久保 佐内
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AM09
4F202AP10
4F202AP18
4F202CA11
4F202CB01
4F202CM11
4F202CM18
4F202CS10
4F206AM09
4F206AP10
4F206AP18
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM00
4F206JM06
4F206JN41
4F206JP11
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP22
4F206JQ90
4F206JW23
(57)【要約】
【課題】チョコ停が発生したときの作業担当者による対処作業が遅いかまたは不十分なケースを簡易な方法で検出可能な成形品取出機及びその作業監視方法を提供する。
【解決手段】本発明の成形品取出機のサイクルタイム管理部3は、射出成形機から成形品を取り出す1サイクル毎に、サイクルタイムを計測するサイクルタイム計測部5と、目標サイクルタイムを設定して記憶する目標サイクルタイム設定記憶部7と、1サイクル毎に、計測したサイクルタイムと目標サイクルタイムとを比較する比較部9と、比較の結果、計測したサイクルタイムが、目標サイクルタイムを超過していた場合、次サイクル以降、連続して目標サイクルタイムを超過する回数を計測する超過回数計測部11と、連続して目標サイクルタイムを超過する回数がn回(nは1以上の整数)を超えた場合に検知信号を出力する検知信号出力部13を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機から成形品を取り出す1サイクルに要したサイクルタイムを計測するサイクルタイム計測ステップと、
管理者が許容する目標サイクルタイムを設定する目標サイクルタイム設定ステップと、
前記1サイクル毎に、計測した前記サイクルタイムと前記目標サイクルタイムとを比較する比較ステップと、
前記比較の結果、計測した前記サイクルタイムが、前記目標サイクルタイムを超過していた場合、前記計測したサイクルタイムが最初に前記目標サイクルタイムを超過した以降、前記計測したサイクルタイムが連続して前記目標サイクルタイムを超過する回数を計測する超過回数計測ステップと、
前記計測したサイクルタイムが、前記連続して目標サイクルタイムを超過する回数が、n回(nは1以上の整数)を超えた場合に検知信号を出力する出力ステップを有することを特徴とする成形品取出機の作業監視方法。
【請求項2】
射出成形機から成形品を取り出す1サイクルに要したサイクルタイムを計測するサイクルタイム計測ステップと、
管理者が許容する目標サイクルタイムを設定する目標サイクルタイム設定ステップと、
前記1サイクル毎に、計測した前記サイクルタイムと前記目標サイクルタイムとを比較する比較ステップと、
前記比較の結果、計測した前記サイクルタイムが、前記目標サイクルタイムを連続して超過した回数を計測する超過回数計測ステップと、
前記サイクルタイムが前記目標サイクルタイムを連続してm回(mは2以上の整数)超えたか否かを判定し、超えた判定がなされたときに検知信号を出力する出力ステップを有することを特徴とする成形品取出機の作業監視方法。
【請求項3】
前記目標サイクルタイムは、前記成形品取出機の前記管理者だけが設定できる請求項1に記載の成形品取出機の作業監視方法。
【請求項4】
前記超過回数計測ステップにおいて、前記計測したサイクルタイムが連続して前記目標サイクルタイムを前記超過する回数が前記n回に達する前に計測した前記サイクルタイムが前記目標サイクルタイムを下回った場合、前記超過回数計測ステップをリセットする請求項1に記載の成形品取出機の作業監視方法。
【請求項5】
前記検知信号出力後、計測した前記サイクルタイムが前記目標サイクルタイムを下回るまで次の前記検知信号を出力しない請求項1に記載の成形品取出機の作業監視方法。
【請求項6】
前記検知信号が出力されると、前記検知信号を出力する前の前記目標サイクルタイムを下回るサイクルタイム、及び、前記検知信号を出力する前の前記目標サイクルタイムを超過した際のサイクルタイムを記憶する記憶ステップをさらに有する請求項1に記載の成形品取出機の作業監視方法。
【請求項7】
射出成形機から成形品を取り出す1サイクルに要するサイクルタイムの目標サイクルタイムを設定可能なサイクルタイム管理部を有する成形品取出機であって、
前記サイクルタイム管理部は、
前記1サイクル毎に、前記サイクルタイムを計測するサイクルタイム計測部と、
前記目標サイクルタイムを設定して記憶する目標サイクルタイム設定記憶部と、
前記1サイクル毎に、計測した前記サイクルタイムと前記目標サイクルタイムとを比較する比較部と、
前記比較部による比較の結果、計測した前記サイクルタイムが、前記目標サイクルタイムを超過していた場合、最初に前記目標サイクルタイムを超過した以降、前記計測したサイクルタイムが連続して前記目標サイクルタイムを超過する回数を計測する超過回数計測部と、
前記連続して目標サイクルタイムを超過する回数がn回(nは1以上の整数)を超えた場合に検知信号を出力する検知信号出力部とを有することを特徴とする成形品取出機。
【請求項8】
射出成形機から成形品を取り出す1サイクルに要するサイクルタイムの目標サイクルタイムを設定可能なサイクルタイム管理部を有する成形品取出機であって、
前記サイクルタイム管理部は、
前記1サイクル毎に、前記サイクルタイムを計測するサイクルタイム計測部と、
前記目標サイクルタイムを設定して記憶する目標サイクルタイム設定記憶部と、
前記1サイクル毎に、計測した前記サイクルタイムと前記目標サイクルタイムとを比較する比較部と、
前記比較部による比較の結果、計測した前記サイクルタイムが、前記目標サイクルタイムを超過していた場合、前記計測したサイクルタイムが前記目標サイクルタイムを連続して超過する回数を計測する超過回数計測部と、
前記計測したサイクルタイムが前記目標サイクルタイムを連続してm回(mは2以上の整数)超えた場合に、検知信号を出力する検知信号出力部を有することを特徴とする成形品取出機。
【請求項9】
前記サイクルタイム管理部は、少なくとも前記検知信号の発生日時の履歴を記憶する履歴記憶部をさらに備えている請求項7または8に記載の成形品取出機。
【請求項10】
前記目標サイクルタイム設定記憶部は、前記成形品取出機を扱う作業者の管理者のみによって設定可能に構成されている請求項7または8に記載の成形品取出機。
【請求項11】
前記検知信号により駆動されてアラームを出力するアラーム発生器をさらに備えている請求項7または8に記載の成形品取出機。
【請求項12】
前記検知信号が出力されると検知表示を表示する表示部をさらに備えている請求項7または8に記載の成形品取出機。
【請求項13】
前記検知信号出力部は、前記検知信号出力後、計測した前記サイクルタイムが前記目標サイクルタイムを下回るまで次の前記検知信号を出力しない請求項7または8に記載の成形品取出機。
【請求項14】
前記履歴記憶部は、前記検知信号が出力されると、前記検知信号を出力する前の前記目標サイクルタイムを下回るサイクルタイム、及び、前記検知信号を出力する前の前記目標サイクルタイムを超過した際のサイクルタイムを記憶する請求項7または8に記載の成形品取出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機から成形品を取り出す成形品取出機及びその作業監視方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基準時間よりもサイクルタイムが遅延している場合に、異常として報知する製造ラインの装置が知られている(例えば、基板生産ラインに関するものとして特開2013-152973号公報(特許文献1))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サイクルタイムが遅延する理由には様々な理由が考えられるが、短い時間、成形品取出機の停止状態が発生した後に、運転が再開される事象(通称、「チョコ停」(設備の部分的な停止または設備の作用対象の不具合による停止で、短時間に回復できる故障〔JIS Z 8141:2001〕))が発生したときの作業担当者による対処作業が遅いかまたは不十分であることも原因の1つとなり得る。
【0005】
本発明の目的は、チョコ停が発生したときの作業担当者による対処作業が遅いかまたは不十分なケースを簡易な方法で検出可能な成形品取出機及びその作業監視方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の成形品取出機の作業監視方法は、射出成形機から成形品を取り出す1サイクルに要したサイクルタイムを計測するサイクルタイム計測ステップと、管理者が許容する目標サイクルタイムを設定する目標サイクルタイム設定ステップと、1サイクル毎に、計測したサイクルタイムと目標サイクルタイムとを比較する比較ステップと、比較の結果、計測したサイクルタイムが、目標サイクルタイムを超過していた場合、最初に目標サイクルタイムを超過した以降(次サイクル以降)、計測したサイクルタイムが連続して目標サイクルタイムを超過する回数を計測する超過回数計測ステップと、計測したサイクルタイムが連続して目標サイクルタイムを超過する回数を計測する超過回数計測ステップと、連続して目標サイクルタイムを超過する回数がn回(nは1以上の整数)を超えた場合に検知信号を出力する出力ステップとを有する。
【0007】
連続して目標サイクルタイムを超過する回数がn回、すなわち、トータルで2回以上連続でサイクルタイムが目標サイクルタイムを超えるということは、何らかの原因でチョコ停が発生した際の作業担当者による対処作業が遅いか又は不十分であることが推測される。したがって、本発明による検知信号が出力された場合には、検知信号の発生回数や、発生時期を確認することにより、作業担当者による対処作業が適切であるか否かの確認を行うきっかけとすることができ、作業担当者への指導及び教育の必要性を管理者が認識することが可能になる。なお、検知信号が出力された場合、検知信号に基づいて、成形品取出機の運転を停止する動作を行う必要はない。
【0008】
なお、サイクルタイムが目標サイクルタイムを連続してm回(mは2以上の整数)超えたか否かを判定し、超えた判定がなされたときに検知信号を出力する出力ステップを有するようにしても、同様の効果を得られる。
【0009】
目標サイクルタイムは、成形品取出機の管理者だけが設定できるようになっていることが好ましい。誤って、管理者の基準や予定とは異なるタイムを設定してしまう可能性があり、その場合作業監視の目的が達成されなくなるためである。
【0010】
超過回数計測ステップにおいて、計測したサイクルタイムが連続して目標サイクルタイムを超過する回数がn回に達する前に計測したサイクルタイムが目標サイクルタイムを下回った場合、超過回数計測ステップをリセットする。このようにすることで、作業者の対応処理が適切であった場合には、検知信号が出力されなくなり、連続して目標サイクルタイムを超過した場合にのみ、検知信号が出力されるので、管理者に必要以上の判断負担をかけることがない。
【0011】
検知信号出力後、計測したサイクルタイムが目標サイクルタイムを下回るまで次の検知信号を出力しないようにしてもよい。このようにすれば、例えば、先に発生した検知信号と後に発生した検知信号の発生間隔を見ることにより、作業者の対応能力を知ることができ、また管理者が誤って下回ることが困難な目標サイクルタイムを設定してしまったような場合でも、検知信号が連続して出力されることがなくなり、作業担当者の作業を妨げてしまうことがなくなる。
【0012】
検知信号が出力されると、検知信号を出力する前の目標サイクルタイムを下回るサイクルタイム、及び、検知信号を出力する前の目標サイクルタイムを超過した際のサイクルタイムを記憶する記憶ステップをさらに有していてもよい。このようにすれば、検知信号が出力された際のサイクルタイムの履歴だけでなく、サイクルタイムの超過が発生するまでの間に経過した時間(対処作業に要した時間)を管理者が確認することができ、管理者による作業担当者への指導及び教育の必要性の確認に利用することができる。
【0013】
本発明は射出成形機から成形品を取り出す1サイクルに要するサイクルタイムの目標サイクルタイムを設定可能なサイクルタイム管理部を有する成形品取出機としても把握する(または表現する)ことができる。
【0014】
本発明の成形品取出機のサイクルタイム管理部は、1サイクル毎に、サイクルタイムを計測するサイクルタイム計測部と、目標サイクルタイムを設定して記憶する目標サイクルタイム設定記憶部と、1サイクル毎に、計測したサイクルタイムと目標サイクルタイムとを比較する比較部と、比較部による比較の結果、計測したサイクルタイムが、目標サイクルタイムを超過していた場合、最初に目標サイクルタイムを超過した以降(次サイクル以降)、計測したサイクルタイムが連続して目標サイクルタイムを超過する回数を計測する超過回数計測部と、計測した前記サイクルタイムが、連続して目標サイクルタイムを超過する回数が、n回(nは1以上の整数)を超えた連続して目標サイクルタイムを超過する回数がn回(nは1以上の整数)を超えた場合に検知信号を出力する検知信号出力部を有する。
【0015】
なお、サイクルタイム管理部が、比較部による比較の結果、計測したサイクルタイムが、目標サイクルタイムを超過していた場合、計測したサイクルタイムが目標サイクルタイムを連続して超過する回数を計測する超過回数計測部と、計測したサイクルタイムが目標サイクルタイムを連続してm回(mは2以上の整数)超えた場合に、検知信号を出力する検知信号出力部を備えていても、同様の効果を得られる。
【0016】
サイクルタイム管理部は、少なくとも検知信号の発生日時の履歴を記憶する履歴記憶部をさらに備えていてもよい。履歴記憶部は、検知信号が出力されると、検知信号を出力する前の目標サイクルタイムを下回るサイクルタイム、及び、検知信号を出力する前の目標サイクルタイムを超過した際のサイクルタイムを記憶するようになっていてもよい。
【0017】
目標サイクルタイム設定記憶部は、成形品取出機を扱う作業者の管理者のみによって設定可能に構成されていることが好ましい。誤って、管理者の基準や予定とは異なるタイムを設定してしまう可能性があり、その場合作業監視の目的が達成されなくなるためである。
【0018】
検知信号により駆動されてアラームを出力するアラーム発生器をさらに備えていることが好ましい。このようなアラーム発生器があれば、検知信号が出力されたことを管理者が容易に知ることができる。また、検知信号が出力されると検知表示を表示する表示部をさらに備えていてもよい。このようにすれば、表示部を確認することで、検知信号の出力を容易に知ることができる。
【0019】
検知信号出力部は、検知信号出力後、計測したサイクルタイムが目標サイクルタイムを下回るまで次の検知信号を出力しないようになっていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態の成形品取出機が備えている制御装置の主要な構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施の形態の成形品取出機の制御装置の主要部をコンピュータを用いて実現する場合に用いるプログラムのフローチャートを含めた処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】表示部に表示されるポップアップ表示及びワーニングアイコンの一例である。
【
図5】成形品取出機の自動運転中に出力される信号のタイミングチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の成形品取出機及びその作業監視方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態の成形品取出機が備えている制御装置の主要な構成を示すブロック図である。
【0023】
本実施の形態の成形品取出機は、図示しない射出成形機の上、または、射出成形機に隣接して設けられ、射出成形機の金型から成形品を取り出して、ゲートカットを行い、所定の箇所に載置する。成形品取出機の動作は制御装置1により制御される。
【0024】
図1に示すように、制御装置1は、射出成形機から成形品を取り出す1サイクルに要するサイクルタイムの目標サイクルタイムを設定可能なサイクルタイム管理部3を有する。サイクルタイム管理部3は、サイクルタイム計測部5と、目標サイクルタイム設定記憶部7と、比較部9と、超過回数計測部11と、検知信号出力部13と、履歴記憶部15とを備えている。なお、成形品取出機は、ティーチングを行うため、サイクルタイム等の所定の設定を行うため、各種の情報を表示するために、アラーム発生器17と、表示制御部19の制御により表示画面に画面表示を行う表示部21を備えている。
【0025】
サイクルタイム計測部5は、成形品取出機が射出成形機から成形品を取り出す1サイクル毎にサイクルタイムを計測する。サイクルタイム計測部5は、開始信号から時間の計数を開始し終了信号により計数を停止する公知のアナログまたはデジタル式のタイマを利用して実現されている。「サイクルタイム」とは、成形品取出機の場合、待機位置から移動を開始して、成形品を金型から取出し、開放位置で成形品を開放し、最初の待機位置に戻るまでの時間を意味しており、サイクルタイム計測部5は、開始時に射出成形機側から出力される開始信号と、終了時に成形品取出機側で出力される終了信号に基づいて、サイクルタイムを計測している。
【0026】
目標サイクルタイム設定記憶部7は、射出成形機から成形品を取り出す1サイクルに要するサイクルタイムの目標サイクルタイムを設定して記憶している。目標サイクルタイム設定記憶部7には、パスワードが設定されており、成形品取出機の作業担当者は目標サイクルタイムを設定できず、パスワードを知っている管理者のみ設定可能に構成されている。この設定は、表示部21の表示画面に表示した設定画面から行う。
【0027】
比較部9は、1サイクル毎に、サイクルタイム計測部5が計測したサイクルタイムと目標サイクルタイム設定記憶部7に記憶された目標サイクルタイムとを比較する。
【0028】
超過回数計測部11は、比較部9による比較の結果、計測したサイクルタイムが、目標サイクルタイムを超過していた場合、最初に目標サイクルタイムを超過した以降(次サイクル以降)、計測したサイクルタイムが連続して目標サイクルタイムを超過する回数を計測する。超過回数計測部11は、計測回数がn回に達する前に計測したサイクルタイムが目標サイクルタイムを下回った場合、超過回数の計測をリセットする。このようにすることで、作業者の対応処理が適切であった場合には、検知信号が出力されず、連続して目標サイクルタイムを超過した場合にのみ、検知信号が出力されるので、管理者に必要以上の判断負担をかけることがない。
【0029】
検知信号出力部13は、連続して目標サイクルタイムを超過する回数がn回(nは1以上の整数)を超えた場合に検知信号を出力する。本実施の形態では、n=2に設定してあり、トータルで3回連続して計測したサイクルタイムが目標サイクルタイムを超過した場合に検知信号を出力するようになっている。
【0030】
検知信号出力部13は、検知信号出力後、計測したサイクルタイムが目標サイクルタイムを下回るまで検知信号を繰り返し出力しても、また検知信号を出力し続けてもよい。なお検知信号出力部13は、検知信号出力後、計測したサイクルタイムが目標サイクルタイムを下回るまで次の検知信号を出力しないようにしてもよい。このようにすれば、管理者は、例えば、先に発生した検知信号と後に発生した検知信号の発生間隔を見ることにより、作業者の対応能力を知ることができる。
【0031】
本実施の形態では、検知信号によりアラーム発生器17を駆動してアラームを発生するようにしている。なおアラームの発生は、本発明の方法に必須の要件ではない。
【0032】
履歴記憶部15は、検知信号の発生日時の履歴、検知信号を出力する前の目標サイクルタイムを下回るサイクルタイム、及び、検知信号を出力する前の目標サイクルタイムを超過した際のサイクルタイムを記憶している。履歴記憶部15の記憶情報は、管理者によってパスワードを入力することにより、表示部21の表示画面で確認可能になっている。なお履歴記憶部15は、検知信号が出力されると、検知信号を出力する前の目標サイクルタイムを下回るサイクルタイム、及び、検知信号を出力する前の目標サイクルタイムを超過した際のサイクルタイムを記憶するように構成してもよい。このようにすれば、検知信号が出力された際のサイクルタイムの履歴だけでなく、サイクルタイムの超過が発生するまでの間に経過した時間(対処作業に要した時間)を管理者が確認することができ、管理者による作業担当者への指導及び教育の必要性の確認に利用することができる。
【0033】
前述の表示部21の表示画面は、タッチパネルの機能も有しており、成形品取出機の状態やサイクルタイム等を表示する表示画面としてだけでなく、目標サイクルタイムの設定を行う際等に利用する入力部としても機能する。本実施の形態では、検知信号が出力されると、表示部21の表示画面には、検知表示として後述のポップアップ表示PWや、ワーニングアイコンWIが表示される。
【0034】
〔フローチャート〕
図2は、本実施の形態の成形品取出機の制御装置1の主要部をコンピュータを用いて実現する場合に用いるプログラムのフローチャートを含めた処理(方法のステップ)の流れを示すフローチャートである。
【0035】
作業開始に先立って、まずは、成形品取出機のティーチングを行い(ステップST1)、管理者は、許容する目標サイクルタイムを設定する(ステップST2)。
【0036】
自動運転を開始すると(ステップST3)、サイクルタイム計測部5は、1サイクルを終える毎に(ステップST4)、サイクルタイムを計測する(ステップST5)。計測結果が出ると、比較部9が計測したサイクルタイムと目標サイクルタイムとを比較する(ステップST6)。計測したサイクルタイムが目標サイクルタイムを超過していなければ、判定をリセット(超過回数のリセット、及び、検知信号がONになっていた場合には、検知信号の出力をOFF)してステップST3に戻る(ステップST7→ステップST8)。計測したサイクルタイムが目標サイクルタイムを超過していた場合には、検知信号の出力状態を確認する(ステップST7→ステップST9)。検知信号が出力されているON状態の場合にはステップST3に戻る。これは、管理者が誤って下回ることが困難な目標サイクルタイムを設定してしまったような場合に連続して検知信号が出力されないようにするためである。検知信号が出力されていないOFF状態の場合には、超過回数計測部11が、連続して目標サイクルタイムを超過する回数を計測する(ステップST10)。ステップST3乃至ST10を繰り返し(ステップST11)、連続してn回(本実施の形態では、2回、すなわち、トータルで3回)、計測したサイクルタイムが目標サイクルタイムを超過した場合に検知信号を出力する(ステップST12)。検知信号が出力されると、
図3に示すように、表示部21には、ポップアップ表示PW及びワーニングアイコンWIが表示される(ステップST13)。併せて、履歴記憶部15は、検知信号の発生日時の履歴、検知信号を出力する前の目標サイクルタイムを下回るサイクルタイム(すなわち、検知信号出力時の3サイクル前の正常時のサイクルタイム)、及び、検知信号を出力する前の目標サイクルタイムを超過した際のサイクルタイム(本実施の形態では、直近3回分のサイクルタイム)を記憶する。
【0037】
なお、ポップアップ表示PWは、確認したことを示す「OK」ボタンを押すことで表示部21から消すことができるが、ワーニングアイコンWIは、管理者がリセット操作をしない限り表示部21に表示されたままとなる。
【0038】
図4は、履歴を表示部21の表示画面に表示する場合の一例である。この例では、設定してある目標サイクルタイムと、検知信号出力時の3サイクル前の正常時のサイクルタイムと、直近3回分のサイクルタイムとが表示されている。
【0039】
〔タイミングチャートに基づく具体例〕
図5は、成形品取出機の自動運転中に制御装置1内で出力される信号のタイミングチャートの一例である。このタイミングチャートでは、上段から、(a)自動運転が実行されていることを示す信号、(b)1サイクル完了で出力される信号、(c)判定を実行する信号、(d)サイクルタイムが目標サイクルタイムを超過した時に出力される信号(以下、超過信号)、(e)サイクルタイムが目標サイクルタイムを下回った時に出力される信号(以下、正常信号)、(f)検知信号が出力されポップアップ表示を表示する時に出力される信号(以下、ポップアップ信号)、(g)ポップアップ表示を消すボタンを押した時に出力される信号(以下、ポップアップ消去信号)、(h)検知信号が出力されワーニングアイコンを表示する時に出力される信号(以下、ワーニングアイコン信号)を示す。
【0040】
タイミングチャートから、例えば、次の事項を読み取ることができる:
(1)1サイクル完了毎に比較部9が計測したサイクルタイムと目標サイクルタイムとを比較しており、3回連続で(d)超過信号が出力されると、検知信号が出力され(f)ポップアップ信号及び(h)ワーニングアイコン信号が出力される(タイミングT1)
(2)ポップアップ表示は、(g)ポップアップ消去信号が出力されると消えるが(タイミングT2)、(h)ワーニングアイコン信号の出力は継続される
(3)4回連続(d)超過信号が出力された場合には、4回目の場合には、検知信号は出力されず、(f)ポップアップ信号は出力されない(タイミングT3)
(4)検知信号出力後、(e)正常信号が出力されることで(タイミングT4)、判定がリセットされる(
図2のステップST8)。その後、再び3回連続で(d)超過信号が出力されることで、次の検知信号が出力される(タイミングT5)。
【0041】
上記実施の形態は、一例として記載したものであり、その要旨を逸脱しない限り、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0042】
例えば、上記実施の形態では、計測したサイクルタイムが目標サイクルタイムを超過していた場合に、ステップST11で、連続してn回超過した場合に、検知信号を出力している。すなわち、最初に超過した1回は除いて、n=1以上の場合に、連続して超過した、と判定している。これに対して、計測したサイクルタイムが目標サイクルタイムを超過したら、最初に超過した1回も含めて、超過回数を計測して、連続してm回超過した場合、すなわち、m=2以上の場合に、連続して超過したと判定するようにしてもよいのはもちろんである。この場合には、サイクルタイム管理部3の超過回数計測部11が、計測したサイクルタイムが目標サイクルタイムを連続してm回超過したことを計測したときに、検知信号出力13が検知信号を出力すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、チョコ停が発生したときの作業担当者による対処作業が遅いかまたは不十分なケースを簡易な方法で検出可能な成形品取出機及びその作業監視方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 成形品取出機の制御装置
3 サイクルタイム管理部
5 サイクルタイム計測部
7 目標サイクルタイム設定記憶部
9 比較部
11 超過回数計測部
13 検知信号出力部
15 履歴記憶部
17 アラーム発生器
19 表示制御部
21 表示部