(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085911
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】冷房付き乗用カート
(51)【国際特許分類】
A63B 55/60 20150101AFI20220602BHJP
【FI】
A63B55/60 E
A63B55/60 F
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197672
(22)【出願日】2020-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】520469228
【氏名又は名称】有限会社MOVE
(74)【代理人】
【識別番号】100166589
【弁理士】
【氏名又は名称】植村 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】田中敏幸
(57)【要約】
【課題】近年激しさを増す日本の酷暑の中、夏場のゴルフが敬遠され、客数も単価も落ちてしまう傾向にある中において、夏場の快適性を高めた冷房付き乗用カートを提供するにある。
【解決手段】搭乗者に向かって冷風を吹き出す冷房装置20を備えるので、夏場における搭乗者の快適性を向上させることができ、更に、冷房装置20を駆動する直流電源としてリチウムバッテリ24を備えると、鉛ディープサイクルバッテリに比較して、大量の電力を賄うことができ、冷房装置を長時間にわたり稼働することが可能となると共に充電が早いため営業使用に適し、特に、冷房装置20を駆動する直流電源が走行用バッテリとして兼用されると、製造コストを抑え、バッテリ搭載スペースを簡単に確保することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭乗者に向かって冷風を吹き出す冷房装置を備えることを特徴とする冷房付き乗用カート。
【請求項2】
請求項1において、前記冷房装置を駆動する直流電源としてリチウムバッテリを備えることを特徴とする冷房付き乗用カート。
【請求項3】
請求項2において、前記直流電源は走行用バッテリとして兼用されることを特徴とする冷房付き乗用カート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、夏場における搭乗者の快適性を高める冷房付き乗用カートに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフをプレイするためには、ゴルフクラブと当該ゴルフクラブを持ち運ぶためのキャディバッグが必要である。
そのため、各ゴルフ場は、ゴルフカートを備えており、ゴルファーは、各自のキャディバッグをゴルフカートに積み、移動の際にはゴルフカートに乗車できるように配慮している。
【0003】
但し、夏場はゴルフカート内の温度が高温となり、不快感が大きくなる。
そのため、特許文献1では、搭乗者に向けてミスト状の水を噴霧するゴルフカートが開示されている。これにより、ゴルフカート内の搭乗者は気化熱が奪われて一定の涼感が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のゴルフカートでは、ミスト状の水分を搭乗者に噴霧するので、ミストによって身体が濡れて不快を感じるという問題、言い換えると、湿度が上がり不快指数が上がるという問題があり、更には、女性の搭乗者は顔に噴霧された水分により化粧が落ちる等の問題があった。
【0006】
従来のゴルフカートにエアコンがない理由としては、以下の点が挙げられる。
(1)エンジンカートの場合
エンジンカートの場合、アクセルを踏み込んだときだけエンジンが稼働する仕組みのため、車のエアコンのようにベルトでコンプレッサを回し続けることができない。
そのため、エンジンカートにエアコンを搭載しても、走行中はエンジンでコンプレッサを回して、エアコンとして機能するが、停車中はコンプレッサを回し続けられないので、エアコンとして機能させることができない。
これでは、走行中よりも停車中が遥かに長いゴルフカートにおいて、搭乗者の快適性を確保できず、エアコンを搭載する意味がない。
なお、ハイブリッド車では、アイドリングストップ時や電気走行時において、エアコンが使用できるようにバッテリでコンプレッサを稼働させている。
【0007】
(2)バッテリカートの場合
エアコンには30A程度の電力を供給する必要があるが、従来使用されている鉛ディープサイクルバッテリの能力では、全く電力不足で使い物にならない。
仮に無理やりつけた場合は、2時間ももたずにバッテリの残量がなくなると共に、過放電によりバッテリ自体の能力が大きく傷つけられるため、商業使用には向かない組み合わせになる。
【0008】
ここで、近年激しさを増す日本の酷暑の中、夏場のゴルフが敬遠され、客数も単価も落ちてしまう傾向にある。
実際に40度近い酷暑の中のプレイは下手をすると熱中症で命に関わることもあり、女性や、年配のプレイヤーを中心に敬遠されるのは仕方がないことだと思える。
ただ、ゴルフ場としては、夏場に顧客が快適にラウンドできれば、それ自体が競合するゴルフ場に対しての優位性となり、少ない需要を一手にすることができるように思える。
【0009】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、夏場における搭乗者の快適性を高めた冷房付き乗用カートを提供することを目的とする。
なお、本発明における「乗用カート」とは、例えば、ゴルフカート、テーマパークで使用されるカート、建築現場や農場で使用される移動及び運搬用のカートおよび野球の試合での投手交代時に使用されるカートも含まれる広い概念である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点における冷房付き乗用カートは、搭乗者に向かって冷風を吹き出す冷房装置を備えることを特徴とする。
【0011】
更に好適には、前記冷房装置を駆動する直流電源としてリチウムバッテリを備えることを特徴とする。
【0012】
更に好適には、前記直流電源は走行用バッテリとして兼用されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、搭乗者に向かって冷風を吹き出す冷房装置を備えるので、夏場における搭乗者の快適性を向上させることができるという効果を奏する。更に、冷房装置を駆動する直流電源としてリチウムバッテリを備えると、鉛ディープサイクルバッテリに比較して、大量の電力を賄うことができ、冷房装置を長時間にわたり稼働することが可能となると共に充電が早いため営業使用に適するという効果を奏する。特に、冷房装置を駆動する直流電源が走行用バッテリとして兼用されると、製造コストを抑え、バッテリ搭載スペースを簡単に確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施例に係る冷房付きゴルフカートの概略斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施例に係る冷房付きゴルフカートを前方からみた斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施例に係る冷房付きゴルフカートにおける座席後方の部分斜視図である。
【
図4】本発明の第1の実施例に係る冷房付きゴルフカートを後方から見た斜視図である。
【
図5】本発明の第2の実施例に係る冷房付きゴルフカートの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施例1]
本発明の第1の実施例に係る冷房付きゴルフカート10を
図1~
図4に示す。
本実施例のゴルフカート10は、屋外で使用され、壁のないゴルフカートという車内で、快適性を感じ、実際に体温を下げる効果があり、ゴルフ1ラウンド(約4時間半)使用でき、商業用として繰り返し使用できる耐久性のある製品であることを目指して構成されたものである。
【0016】
即ち、本実施例のゴルフカート10は、車体本体11と、車体本体11の前部に配置された前輪12と、車体本体11の後部に配置された後輪13と、車体本体11の前後左右に立設された4本の支柱14と、前方の支柱14間に設けられた風防スクリーン15と、後方の支柱14間に設けられた後部隔壁16と、4本の支柱14上端に支えられる天井17と、天井17の下方における車体本体11に配置された運転席及び助手席よりなるベンチ式シート18と、ベンチ式シート18に座った搭乗者(図示省略)が操作するためのハンドル19を備えている。
【0017】
そのため、このゴルフカート10では、搭乗者がハンドル19を操作することにより、前輪12が操舵され、搭乗者がアクセル(図示省略)を踏み込んだ時に、エンジン又はモータ(図示省略)により後輪13が駆動して走行することができる。
【0018】
更に、本発明では、ゴルフカート10内の搭乗者に向かって冷風を吹き出す冷房装置20を備えたことに特徴がある。
ここで、冷房装置20としては、例えば、室内機21と室外機22とからなり、室内機21と室外機22とを2本の冷媒配管23で結合したものが使用できる。
図3、
図4においては、冷媒配管23は省略した。なお、
図4において、室外機22にケーブル40を介して繋がり、その下方に設置されている機器は、100V-200V対応の充電器50である。
【0019】
室内機21は、後部隔壁16の比較的高い位置に前向きに配置される一方、室外機22は、後部隔壁16の後面に後方向きに搭載されている。
特に、室内機21は、吹き出す冷風が、ベンチ式シート18である運転席並びに助手席に座った搭乗者の首部にあたる程度の高さに配置されることが望ましい。
搭乗者に直接的に冷風を当て、壁のないゴルフカート10内でも運転者の体温を効率良く下げ、熱中症を予防するためである。言い換えると、快適性を高めるためである。そのため、冷風として十分な風量を確保することが望ましい。短時間(例えば数分)で吹き出し温度を十分に下げること(例えば3℃)が望ましい。なお、図中では、室外機22はベルト60で後部隔壁16及び2本の支柱14に固定されているが、これは仮止めの状態である。実際には、後部隔壁16から張り出した支持板70にボルト(図示省略)で固定するか、2本の支柱14にステー(図示省略)を付けて直接固定することになる。
【0020】
室内機21には、冷風を吹き出すための吹き出し口25が複数設けてあり、吹き出し口25は冷風の吹き出す方向を上下左右に調整可能となっている。
また、吹き出し口25から吹き出す冷風を自動的に上下左右に振るルーバー(図示省略)を設けても良い。
室内機21の前面には、冷房装置20のON/OFF、吹き出し温度の設定、冷風の風量を調整するためのコントロール26が設けられている。
【0021】
なお、車体本体11を、エンクロージャーと呼ばれるビニールシート(図示省略)で全体的に覆い密閉性を高めると車内を効率的に冷やすことも可能である。但し、ゴルフプレイでカートへの乗り降りの快適性が犠牲となる。
本実施例のゴルフカート10では、ゴルフプレイで乗り降りの快適性を損なわないように、ビニールシートで車体本体11を全体的に覆わないようにしたので、冷房装置20は、エアコンディショナというよりは、クールシャワー又はエアシャワーとして働くことになる。
【0022】
更に、室内機21及び室外機22よりなる冷房装置20を駆動するための直流電源であるリチウムバッテリ24は、ベンチ式シート18の下方における車内床下に搭載されている。
【0023】
従って、リチウムバッテリ24により、室外機22の圧縮機(コンプレッサ)を稼働させることにより、停車中においても、冷房装置20を使用することが可能である。
リチウムバッテリ24は、鉛ディープサイクルバッテリに比較して遥かに大量に電力を賄うことができ、冷房装置20を長時間、例えば、ゴルフ1ラウンド(約4時間半)にわたり稼働することが可能となる。更に、リチウムバッテリ24は、充電も早いため、営業使用に適するものである。
【0024】
リチウムバッテリ24としては、ゴルフカート走行による振動、風雨の天候、ホコリ等に問題なく対応している、例えば、リン酸鉄リチウムイオンバッテリを使用することが望ましい。
本実施例のゴルフカート10がモータで走行するバッテリカートの場合は、電源に関しては、以下の3つのパターンが考えられる。
【0025】
(1)リチウムバッテリ24を走行用の内蔵バッテリ(図示省略)と共用する。但し、走行用の内蔵バッテリは一般的に48V(ボルト)であるので、冷房装置20を48Vに対応させる。
(2)走行用の内蔵バッテリから電力をDCDCコンバータにより24Vに変換して冷房装置20に供給する。
(3)走行用の内蔵バッテリとは別に冷房装置20のためのサブバッテリとしてリチウムバッテリ24を使用する。
つまり、冷房装置20が24V対応のときは、48Vの走行用の内蔵バッテリの他に、24Vのリチウムバッテリ24を冷房専用バッテリとして別積みすることになる。また、本実施例のゴルフカート10がエンジンにより走行するエンジンカートの場合も同様である。
【0026】
冷房装置20は、一般的に家庭に使用されるエアコンと機能的に同様なものであり、特に説明を要しないものであるが、簡単に説明すると以下の通りである。
即ち、冷房装置20は、圧縮機と室外熱交換機とを有する室外機22と、室内熱交換機を有する室内機21とを有し、室内機21と室外機22とは2本の冷媒配管23によって接続されている。
【0027】
この冷房装置20においてゴルフカート10内の冷房を行う際には、一方の冷媒配管23を通じて、室外機22から室内機21に送られた液状の冷媒が、室内機21で気化して車内の空気との間で熱交換が行われる。
そして、他方の冷媒配管23を通じて、気化した冷媒は室外機22に送られ、圧縮機で圧縮された後に放熱されて液体に戻り、再び室内機21に送られるという循環を繰り返す。
【0028】
上記構成を有する本実施例の冷房付きゴルフカート10によれば、搭乗者に向かって冷風を吹き出す冷房装置20を備えているので、夏場における搭乗者の快適性を高めることができる。つまり、酷暑の中でも熱中症を回避してゴルフプレイを堪能することができるのである。この点は、特に女性や年配のプレイヤーにとって重要な事である。そのため、本実施例の冷房付きゴルフカート10を設置したゴルフ場は、他のゴルフ場に対して、快適性という点で優位性となり、夏場における少ない需要を一手に確保することが可能となる。
【0029】
更には、冷房装置20を直流電源であるリチウムバッテリ24で駆動するため、停車時においても、冷房装置20として使用することが可能となり、停車時における快適性を確保することができる。
特に、リチウムバッテリ24は、鉛ディープサイクルバッテリに比較して遥かに大量に電力を賄うことができ、冷房装置20を長時間、例えば、ゴルフ1ラウンド(約4時間半)にわたり稼働することが可能となる。更に、リチウムバッテリ24は、充電も早いため、営業使用に適するものである。
【0030】
また、リチウムバッテリ24を走行用バッテリとして兼用した場合には、1台のバッテリで冷房と走行とが賄えるため、製造コストを抑え、バッテリ搭載スペースを簡単に確保することができる。
【0031】
なお、冷房装置20には、利便性を高めるために、無線で操作するためのリモコンが接続されることが望ましい。例えば、リモコンは、冷房装置のON/OFF、冷風の吹き出し温度を設定し、冷風の風量を調整可能にするものである。更には、外気温の表示や日時を表示できることが望ましい。
また、冷房装置20は、室内機21と室外機22とからなる分離型であったが、後部隔壁16を貫通して両者を結合した一体型とすることも出来る。そうすると、冷媒配管23を省略できる利点がある。
【0032】
[実施例2]
本発明の第2の実施例に係る冷房付きゴルフカート30を
図5に示す。
本実施例の冷房付きゴルフカート30は、前述した実施例の冷房付きゴルフカート10に比較して、室内機21の設置場所を変更したものであり、その他については、前述した実施例と同様であり、同一部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0033】
即ち、本実施例では、室内機31を天井17に設置したものである。室内機31の吹き出し口25からの冷風が搭乗者の首部に向かって吹き付けられる点については前述した実施例の室内機21と同様であり、夏場における快適性についても同様に確保することが可能となる。
【0034】
上記構成を有する本実施例の冷房付きゴルフカート30は、室内機31を天井17に配置したので、前述した実施例の冷房付きゴルフカート10と同様に、搭乗者に向かって冷風を吹き出し、直接に冷やすことができ、夏場における快適性を高めることができる等、前述した実施例と同様な効果を奏する。
【0035】
更に、本実施例のように室内機31を天井17に配置すると、複数列シートを備えた4又は5人乗りのゴルフカートとして好適である。
即ち、天井に設置された室内機31では、前列のシートに座った搭乗者に向かって吹き出す吹き出し口25と、後列のシートに座った搭乗者に向かって吹き出す吹き出し口25を前後に複数設けることができるためである。
【0036】
上記実施例では、ゴルフカートに適用した例について説明したが、本発明は、ゴルフカートに限られず、一般的な乗用カートにも適用可能なものである。
例えば、搭乗者が更に多い乗用カートの場合には、複数の室内機31を天井17に配置することも可能である。室外機22は、複数の室内機31に対応可能とすれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の冷房付き乗用カートは、夏場における快適性を高めた乗用カートとして、広く産業上利用可能なものである。
【符号の説明】
【0038】
10,30 ゴルフカート
11 車体本体
12 前輪
13 後輪
14 支柱
15 風防スクリーン
16 後部隔壁
17 天井
18 ベンチ式シート
19 ハンドル
20 冷房装置
21,31 室内機
22 室外機
23 冷媒配管
24 リチウムバッテリ
25 吹き出し口
26 コントロールパネル
40 ケーブル
50 充電器
60 ベルト
70 支持板
【手続補正書】
【提出日】2022-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭乗者に向かって冷風を吹き出す冷房装置を備える
ことを特徴とする冷房付き乗用カート。
【請求項2】
請求項1において、前記冷房装置を駆動する直流電源としてリチウムバッテリを備える
ことを特徴とする冷房付き乗用カート。
【請求項3】
請求項2において、前記直流電源は走行用バッテリとして兼用される
ことを特徴とする冷房付き乗用カート。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭乗者に向かって冷風を吹き出す冷房装置を備え、
前記冷房装置は、圧縮機、室外熱交換器及び室内熱交換器を有し、
前記圧縮機、前記室外熱交換器及び前記室内熱交換器を冷媒が循環して前記冷風を生成する
ことを特徴とする冷房付き乗用カート。
【請求項2】
請求項1において、前記冷房装置を駆動する直流電源としてリチウムバッテリを備える
ことを特徴とする冷房付き乗用カート。
【請求項3】
請求項2において、前記直流電源は走行用バッテリとして兼用される
ことを特徴とする冷房付き乗用カート。