(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085990
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】紡績機及び紡績方法
(51)【国際特許分類】
D01H 13/00 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
D01H13/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197777
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】目片 努
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056BA05
4L056BG14
4L056CA06
4L056FB17
(57)【要約】
【課題】糸貯留装置よりも糸走行方向上流側で糸の分断が発生したとき、簡単な構成で糸貯留ローラに残っている糸を適切に処理可能にする。
【解決手段】糸貯留装置17は、吸引装置49を備える。糸貯留装置17よりも糸走行方向上流側で紡績糸7の分断が発生した場合に、吸引装置49は、パッケージ9側の紡績糸7のうち糸貯留ローラ41よりも上流側の部分を案内するように作用する。紡績糸7の分断の発生時に、吸引装置49により紡績糸7への作用を行いつつ、巻取装置21で紡績糸7を巻き取る方向である正転方向にパッケージ9を正転させて、糸貯留ローラ41に残っている紡績糸7を糸貯留ローラ41から解舒する。パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tが糸貯留ローラ41から離れてパッケージ9に巻き取られる前のタイミングで、パッケージ9の正転が停止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を供給可能な給糸装置と、
前記給糸装置から供給された糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、
前記給糸装置と前記巻取装置との間に形成される糸走行経路の途中に配置された糸貯留装置と、
を備えた紡績機であって、
前記糸貯留装置は、
前記給糸装置から供給された糸を巻き取って貯留する糸貯留ローラと、
前記糸貯留装置よりも糸走行方向上流側で糸の分断が発生した場合に、前記パッケージ側の糸のうち前記糸貯留ローラよりも上流側の部分を案内又は拘束するように作用する糸作用部と、
を有し、
前記糸の分断の発生時に、前記糸作用部による糸への作用を行いつつ、前記巻取装置で前記糸を巻き取る方向である正転方向に前記パッケージを正転させて、前記糸貯留ローラに残っている糸を前記糸貯留ローラから解舒し、
前記パッケージ側の糸の糸端が前記糸貯留ローラから離れて前記パッケージに巻き取られる前のタイミングで、前記パッケージの正転が停止することを特徴とする紡績機。
【請求項2】
請求項1に記載の紡績機であって、
前記糸作用部は、吸引装置であり、
前記吸引装置は、前記糸貯留ローラに対向する吸引口を有し、前記糸貯留ローラに残っている糸の糸端を前記吸引口で吸引することを特徴とする紡績機。
【請求項3】
請求項2に記載の紡績機であって、
前記糸貯留装置は、糸が前記糸貯留ローラの外周面に巻かれる最上流部分よりも上流側に配置された糸導入部分を備え、
前記給糸装置から供給された糸は、前記糸導入部分を経由して、前記糸貯留ローラの前記最上流部分に導かれ、
前記吸引口は、前記糸導入部分を向くように配置されることを特徴とする紡績機。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の紡績機であって、
前記糸貯留ローラは、上流からの糸を巻き取る方向である正転方向に回転することで、糸を貯留し、
前記糸貯留装置よりも糸走行方向上流側で糸の分断が発生したとき、前記パッケージ及び前記糸貯留ローラのそれぞれの正転が停止され、
前記パッケージ及び前記糸貯留ローラのそれぞれの正転の停止後、前記糸貯留ローラが逆転することを特徴とする紡績機。
【請求項5】
請求項4に記載の紡績機であって、
前記糸貯留ローラの逆転後、前記糸貯留ローラが正転することを特徴とする紡績機。
【請求項6】
請求項5に記載の紡績機であって、
前記糸貯留ローラが逆転するときの回転量と比べて、前記糸貯留ローラが当該逆転の後に正転するときの回転量が少ないことを特徴とする紡績機。
【請求項7】
請求項1に記載の紡績機であって、
前記糸作用部は、前記糸貯留ローラの周囲で空気を噴射する噴射装置であることを特徴とする紡績機。
【請求項8】
請求項1に記載の紡績機であって、
前記糸作用部は、前記パッケージ側の糸のうち前記糸貯留ローラよりも上流側の部分を挟むことを特徴とする紡績機。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載の紡績機であって、
前記糸貯留装置は、
前記糸貯留ローラに対して相対回転し、前記糸貯留ローラから引き出される糸が掛けられる糸掛け部材と、
前記パッケージ側の糸の糸端が前記糸貯留ローラから離れるタイミングよりも後のタイミングである第1タイミングで、前記糸走行経路を前記糸掛け部材から外す糸外し動作を行う糸外し部材と、
を有することを特徴とする紡績機。
【請求項10】
請求項9に記載の紡績機であって、
前記糸外し部材は、前記第1タイミングとは異なる第2タイミングでも前記糸外し動作を行うように構成されており、
前記第1タイミングで行われる前記糸外し動作に関する前記糸外し部材の第1動作量は、前記第2タイミングで行われる前記糸外し動作に関する前記糸外し部材の第2動作量とは異なることを特徴とする紡績機。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の紡績機であって、
前記給糸装置、前記巻取装置、及び前記糸貯留装置は、複数の紡績ユニットのそれぞれに備えられることを特徴とする紡績機。
【請求項12】
請求項11に記載の紡績機であって、
前記複数の紡績ユニットのそれぞれは、前記巻取装置の駆動部を備えることを特徴とする紡績機。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の紡績機であって、
前記複数の紡績ユニットのそれぞれにおいて、前記糸貯留装置は、
前記糸貯留ローラに対して相対回転し、前記糸貯留ローラから引き出される糸が掛けられる糸掛け部材と、
前記パッケージ側の糸の糸端が前記糸貯留ローラから離れるタイミングよりも後で、前記糸走行経路を前記糸掛け部材から外す糸外し動作を行う糸外し部材と、
を有し、
前記複数の紡績ユニットのそれぞれは、前記糸外し部材の駆動部を備えることを特徴とする紡績機。
【請求項14】
糸を供給可能な給糸装置と、
前記給糸装置から供給された糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、
前記給糸装置と前記巻取装置との間に形成される糸走行経路の途中に配置された糸貯留装置と、
を備えた紡績機で実行される紡績方法において、
前記糸貯留装置は、
前記給糸装置から供給された糸を巻き取って貯留する糸貯留ローラと、
前記糸貯留装置よりも糸走行方向上流側で糸の分断が発生した場合に、前記パッケージ側の糸のうち前記糸貯留ローラよりも上流側の部分を案内又は拘束するように作用する糸作用部と、
を有し、
前記糸の分断の発生時に、前記糸作用部による糸への作用が行われつつ、前記巻取装置で前記糸を巻き取る方向である正転方向に前記パッケージが正転させられて、前記糸貯留ローラに残っている糸を前記糸貯留ローラから解舒し、
前記パッケージ側の糸の糸端が前記糸貯留ローラから離れて前記パッケージに巻き取られる前のタイミングで、前記パッケージの正転が停止させられることを特徴とする紡績方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績機及び紡績方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、給糸装置と、巻取装置と、糸貯留装置と、を備える紡績機が知られている。特許文献1は、この種の紡績機である精紡機を開示する。
【0003】
特許文献1の精紡機では、糸貯留装置に糸貯留ローラが設けられている。糸貯留ローラの外周面に糸を巻き付けることで、糸を一時的に貯留することができる。糸貯留ローラよりも下流側には、吸引装置が設けられている。糸貯留装置よりも下流側で糸切れが生じたときには、糸貯留ローラに残っている糸が吸引装置に吸引されて除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の構成は、糸貯留装置よりも下流側で糸切れが生じたときに糸貯留ローラに残っている糸を除去する構成を開示するものに過ぎない。
【0006】
本発明の目的は、糸貯留装置よりも糸走行方向上流側で糸の分断が発生したとき、糸貯留ローラに残っている糸を簡単な構成で適切に処理可能にすることにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の紡績機が提供される。即ち、この紡績機は、給糸装置と、巻取装置と、糸貯留装置と、を備える。前記給糸装置は、糸を供給可能である。前記巻取装置は、前記給糸装置から供給された糸を巻き取ってパッケージを形成する。前記糸貯留装置は、前記給糸装置と前記巻取装置との間に形成される糸走行経路の途中に配置される。前記糸貯留装置は、糸貯留ローラと、糸作用部と、を有する。前記糸貯留ローラは、前記給糸装置から供給された糸を巻き取って貯留する。前記糸作用部は、前記糸貯留装置よりも糸走行方向上流側で糸の分断が発生した場合に、前記パッケージ側の糸のうち前記糸貯留ローラよりも上流側の部分を案内又は拘束するように作用する。前記糸の分断の発生時に、前記糸作用部による糸への作用を行いつつ、前記巻取装置で前記糸を巻き取る方向である正転方向に前記パッケージを正転させて、前記糸貯留ローラに残っている糸を前記糸貯留ローラから解舒する。前記パッケージ側の糸の糸端が前記糸貯留ローラから離れて前記パッケージに巻き取られる前のタイミングで、前記パッケージの正転が停止する。
【0008】
これにより、糸貯留装置よりも糸走行方向上流側で糸の分断が発生したとき、簡単な構成でパッケージ側の糸を適切に処理することができる。
【0009】
前記の紡績機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記糸作用部は、吸引装置である。前記吸引装置は、前記糸貯留ローラに対向する吸引口を有し、前記糸貯留ローラに残っている糸の糸端を前記吸引口で吸引する。
【0010】
これにより、糸貯留ローラに残っている糸の糸端を吸引することによって、当該糸の挙動を安定させることができる。この結果、糸端が糸に絡み付かなくなるので、糸貯留ローラに残っている糸の解舒が行い易くなる。
【0011】
前記の紡績機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記糸貯留装置は、糸が前記糸貯留ローラの外周面に巻かれる最上流部分よりも上流側に配置された糸導入部分を備える。前記給糸装置から供給された糸は、前記糸導入部分を経由して、前記糸貯留ローラの前記最上流部分に導かれる。前記吸引口は、前記糸導入部分を向くように配置される。
【0012】
これにより、糸貯留ローラに残っている糸の糸端を、吸引装置の吸引口によって確実に吸引することができる。
【0013】
前記の紡績機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記糸貯留ローラは、上流からの糸を巻き取る方向である正転方向に回転することで、糸を貯留する。前記糸貯留装置よりも糸走行方向上流側で糸の分断が発生したとき、前記パッケージ及び前記糸貯留ローラのそれぞれの正転が停止される。前記パッケージ及び前記糸貯留ローラのそれぞれの正転の停止後、前記糸貯留ローラが逆転する。
【0014】
これにより、糸貯留ローラに残っている糸の糸端が、糸貯留ローラの逆転によって上流側へ解舒される。従って、吸引装置の吸引口によって糸端をより確実に吸引することができる。
【0015】
前記の紡績機においては、前記糸貯留ローラの逆転後、前記糸貯留ローラが正転することが好ましい。
【0016】
これにより、糸が吸引口に吸引されている状態で糸貯留ローラが正転することで、パッケージと糸貯留ローラとの間で連続している糸による糸貯留ローラへの巻き締め作用を発生させ、糸貯留ローラに残っている糸を糸貯留ローラ上に整然と並べさせることができる。従って、糸貯留ローラに残っている糸を糸貯留ローラからスムーズに解舒することができる。
【0017】
前記の紡績機においては、前記糸貯留ローラが逆転するときの回転量と比べて、前記糸貯留ローラが当該逆転の後に正転するときの回転量が少ないことが好ましい。
【0018】
これにより、糸貯留ローラの逆転時において吸引装置の吸引口に吸引された糸端が、糸貯留ローラの正転時に当該吸引口から抜け出ることを防止することができる。従って、吸引装置による拘束作用を継続することができる。
【0019】
前記の紡績機においては、前記糸作用部は、前記糸貯留ローラの周囲で空気を噴射する噴射装置とすることもできる。
【0020】
これにより、噴射装置による空気の噴射によって糸の該当部分の挙動を実質的に安定させることができる。
【0021】
前記の紡績機においては、前記糸作用部は、前記パッケージ側の糸のうち前記糸貯留ローラよりも上流側の部分を挟むように構成することもできる。
【0022】
これにより、糸作用部で糸の該当部分を拘束することにより、糸の該当部分の挙動を安定させることができる。
【0023】
前記の紡績機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記糸貯留装置は、糸掛け部材と、糸外し部材と、を有する。前記糸掛け部材は、前記糸貯留ローラに対して相対回転する。前記糸掛け部材には、前記糸貯留ローラから引き出される糸が掛けられる。前記糸外し部材は、前記パッケージ側の糸の糸端が前記糸貯留ローラから離れるタイミングよりも後のタイミングである第1タイミングで、前記糸走行経路を前記糸掛け部材から外す糸外し動作を行う。
【0024】
これにより、パッケージ側の糸の糸端が糸貯留ローラから離れるとき、糸端が糸掛け部材に絡まったとしても、他とは異なる糸外し動作によって糸端を糸掛け部材から確実に外すことができる。
【0025】
前記の紡績機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記糸外し部材は、前記第1タイミングとは異なる第2タイミングでも前記糸外し動作を行うように構成される。前記第1タイミングで行われる前記糸外し動作に関する前記糸外し部材の第1動作量は、前記第2タイミングで行われる前記糸外し動作に関する前記糸外し部材の第2動作量とは異なる。
【0026】
これにより、パッケージ側の糸の糸端が糸貯留ローラから離れるとき、糸端が糸掛け部材に絡んでいたとしても、この糸端を糸外し部材により糸掛け部材から外すことができる。
【0027】
前記の紡績機においては、前記給糸装置、前記巻取装置、及び前記糸貯留装置は、複数の紡績ユニットにそれぞれ備えられることが好ましい。
【0028】
これにより、前記給糸装置、前記巻取装置、及び前記糸貯留装置を利用し易くすることができる。
【0029】
前記の紡績機においては、前記複数の紡績ユニットのそれぞれは、前記巻取装置の駆動部を備えることが好ましい。
【0030】
これにより、紡績ユニット毎に巻取装置を独立して駆動及び停止する制御を行うことができる。
【0031】
前記の紡績機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記複数の紡績ユニットのそれぞれにおいて、前記糸貯留装置は、糸掛け部材と、糸外し部材と、を有する。前記糸掛け部材は、前記糸貯留ローラに対して相対回転し、前記糸貯留ローラから引き出される糸が掛けられる。前記糸外し部材は、前記パッケージ側の糸の糸端が前記糸貯留ローラから離れるタイミングよりも後で、前記糸走行経路を前記糸掛け部材から外す糸外し動作を行う。前記複数の紡績ユニットのそれぞれは、前記糸外し部材の駆動部を備える。
【0032】
これにより、従来とは異なり、紡績ユニット毎に糸外しレバーを独立して動作させる制御を行うことができる。
【0033】
本発明の第2の観点によれば、以下の紡績方法が提供される。即ち、この紡績方法は、給糸装置と、巻取装置と、糸貯留装置と、を備える紡績機で実行される。前記給糸装置は、糸を供給可能である。前記巻取装置は、前記給糸装置から供給された糸を巻き取ってパッケージを形成する。前記糸貯留装置は、前記給糸装置と前記巻取装置との間に形成される糸走行経路の途中に配置される。前記糸貯留装置は、糸貯留ローラと、糸作用部と、を有する。前記糸貯留ローラは、前記給糸装置から供給された糸を巻き取って貯留する。前記糸作用部は、前記糸貯留装置よりも糸走行方向上流側で糸の分断が発生した場合に、前記パッケージ側の糸のうち前記糸貯留ローラよりも上流側の部分を案内又は拘束するように作用する。前記糸の分断の発生時に、前記糸作用部による糸への作用が行われつつ、前記巻取装置で前記糸を巻き取る方向である正転方向に前記パッケージが正転させられて、前記糸貯留ローラに残っている糸を前記糸貯留ローラから解舒する。前記パッケージ側の糸の糸端が前記糸貯留ローラから離れて前記パッケージに巻き取られる前のタイミングで、前記パッケージの正転が停止させられる。
【0034】
これにより、糸貯留装置よりも糸走行方向上流側で糸の分断が発生したとき、パッケージ側の糸を適切に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の一実施形態に係る紡績機が備える紡績ユニットの構成を示す側面図。
【
図3】糸貯留装置における糸貯留ローラと吸引装置との位置関係を示す図。
【
図4】パッケージ及び糸貯留ローラの回転状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の一実施形態に係る紡績機について、
図1及び
図2を参照して説明する。以下の説明において、「上流」及び「下流」とは、それぞれ、糸(具体的には、スライバ3、繊維束5、紡績糸7)の走行方向(糸走行方向)における上流及び下流を意味する。
【0037】
紡績機は、少なくとも1つの紡績ユニット1と、図略の機台制御装置と、を備える。機台制御装置は、1又は複数の紡績ユニット1を管理する。紡績ユニット1は、繊維束5をドラフト装置11によって糸走行方向下流側に送り、ドラフト装置11から送られてくる繊維束5を紡績装置13で紡績して紡績糸7を生成し、この紡績糸7を巻取装置21で巻き取ってパッケージ9を形成する。
図5では円筒形状のパッケージ9が図示されているが、紡績機は、紡績糸7が円錐形状のパッケージ9に巻き取られるように構成されていても良い。
【0038】
図1に示すように、1つの紡績ユニット1は、ドラフト装置11と、紡績装置13と、糸監視装置15と、糸貯留装置17と、糸継装置19と、巻取装置21と、を備える。ドラフト装置11、紡績装置13、糸監視装置15、糸貯留装置17、糸継装置19、及び巻取装置21は、糸走行方向において上流側から下流側へ向かって順に配置されている。
【0039】
図2に示すように、紡績ユニット1が備える前述の装置等は、当該紡績ユニット1に設けられたユニットコントローラ(制御装置)25により制御される。なお、紡績ユニット1が備える複数の装置の少なくとも1つは、機台制御装置により制御されても良い。また、所定数の紡績ユニット1毎にユニットコントローラを1つ設けても良い。
【0040】
ドラフト装置11は、図略のケンス等から供給されたスライバ3を引き伸ばす(ドラフトする)ことによって、繊維束5を生成する。ドラフト装置11は、スライバ3を、複数のドラフトローラと、これらに対向する複数の対向ローラと、の間で挟み込みながら、ドラフトローラをドラフト方向に回転させて当該スライバ3を下流側へ搬送して、所定の繊維量(又は太さ)となるまで引き伸ばして繊維束5を生成する。
【0041】
ドラフト装置11は、複数のドラフトローラとして、バックローラ31、サードローラ33、ミドルローラ35、及びフロントローラ37を備える。これらのローラ31、33、35、及び37は、上流側から下流側へ向かって順に配置されている。ミドルローラ35には、ゴム製のエプロンベルト39が巻き掛けられている。各ドラフトローラは、所定の回転速度で回転駆動される。
【0042】
ドラフト装置11のフロントローラ37よりも下流側に、紡績装置13が設けられている。紡績装置13は、ドラフト装置11から供給された繊維束5に撚りを加えて、紡績糸(糸)7を生成する。本実施形態では、紡績装置13として、旋回空気流を利用して繊維束5に撚りを与える空気式の紡績装置が採用されている。
【0043】
紡績ユニット1(紡績機)において、ドラフト装置11及び紡績装置13は、紡績糸7を供給可能な給糸装置23を構成する。給糸装置23で生成された紡績糸7は、給糸装置23から巻取装置21に向かって走行する。給糸装置23と巻取装置21との間には、紡績糸7が走行する糸道(糸走行経路)が形成される。
【0044】
紡績装置13よりも下流側に、糸監視装置15が設けられている。糸監視装置15は、紡績糸7の有無及び品質(太さ及び/又は異物の有無等)を監視する。糸監視装置15では、透過型の光センサによる非接触での監視が行われる。糸監視装置15は、紡績糸7の糸欠陥(例えば、紡績糸7の太さに異常がある箇所)を検出した場合に、糸欠陥検出信号をユニットコントローラ25へ送信する。
【0045】
ユニットコントローラ25は、糸欠陥検出信号を受信した場合、紡績装置13での紡績を停止させることで、紡績糸7を切断する。ユニットコントローラ25は、紡績装置13での紡績を停止させるとき、ドラフト装置11によるドラフト動作を停止させるとともに、巻取装置21による巻取動作と、糸貯留装置17による引出し動作も停止させる。
【0046】
糸監視装置15は透過型の光センサに限らず、例えば静電容量式のセンサで紡績糸7の有無及び品質を監視しても良い。紡績を停止して紡績糸7を切断する構成に代えて、糸監視装置15の近傍に設けられる切断装置により紡績糸7を切断する構成を採用しても良い。
【0047】
糸監視装置15よりも下流側(即ち紡績装置13よりも下流側)に、糸貯留装置17が設けられている。糸貯留装置17は、給糸装置23と巻取装置21との間に形成される糸道(糸走行経路)の途中に配置されている。糸貯留装置17は、糸貯留ローラ41と、糸貯留モータ43と、フライヤー(糸掛け部材)45と、糸検出センサ47と、吸引装置(糸作用部)49と、糸外しレバー(糸外し部材)51を備える。
【0048】
糸貯留ローラ41は、給糸装置23から供給された紡績糸7を巻き取って貯留することができる。紡績糸7は、糸貯留ローラ41の外周面に巻き付けられる状態で貯留される。糸貯留ローラ41は、糸貯留モータ43により正転又は逆転させられる。本実施形態では、紡績装置13と糸貯留装置17の間に公知のデリベリローラ対が設けられていないため、糸貯留装置17が紡績装置13から紡績糸7を引き出す引出し動作を実施する。
【0049】
糸貯留モータ43は、正逆回転が可能な電動モータとして構成されている。糸貯留モータ43は、正転することで糸貯留ローラ41を正転させる。糸貯留モータ43は、逆転することで糸貯留ローラ41を逆転させる。糸貯留モータ43は、紡績ユニット1における正常な紡績の実行時に引出し動作が行われるように、糸貯留ローラ41を正転させる。
【0050】
フライヤー45は、糸貯留ローラ41の下流側端部(先端部)に取り付けられている。フライヤー45は、糸貯留ローラ41から引き出される紡績糸7に接触可能に設けられている。フライヤー45は、糸貯留ローラ41に対して相対回転可能に支持されている。フライヤー45又は糸貯留ローラ41の何れか一方には永久磁石が取り付けられ、他方には磁気ヒステリシス材が取り付けられている。これらの磁気的手段により、フライヤー45が糸貯留ローラ41に対し相対回転するのに抗するトルクが発生する。従って、フライヤー45に紡績糸7が掛けられた状態で、上記のトルクに打ち勝つような力がフライヤー45に加わっている場合(即ち、紡績糸7に所定以上の張力が掛かっている場合)のみ、フライヤー45は糸貯留ローラ41に対して相対的に回転し、糸貯留ローラ41に巻き付けられた紡績糸7を解舒することができる。一方、このトルクに打ち勝つ力がフライヤー45に掛かっていない場合は、糸貯留ローラ41とフライヤー45は一体的に回転し、糸貯留ローラ41に紡績糸7が貯留される。
【0051】
このように、糸貯留装置17は、下流側の紡績糸7の張力が上がると紡績糸7を解舒し、下流側の紡績糸7の張力が下がる(紡績糸7が弛みそうになる)と紡績糸7の解舒を止めるように動作する。これにより、糸貯留装置17は、紡績糸7の弛みを解消して、紡績糸7に適切な張力を付与することができる。また、フライヤー45が前述のように糸貯留装置17と巻取装置21との間の紡績糸7に加わる張力の変動を吸収するように動作することで、当該張力の変動が、紡績装置13から糸貯留装置17までの間の紡績糸7に影響を及ぼすことを防止できる。
【0052】
糸貯留装置17は、このような磁気的手段ではなく、永久磁石の代わりに電磁石を備えていても良い。あるいは、糸貯留装置17は、磁気的手段を備えずに、フライヤー45を回転駆動するモータを備えていても良い。
【0053】
糸検出センサ47は、糸貯留ローラ41の糸貯留量を検出するセンサである。糸検出センサ47は、糸貯留ローラ41の所定の位置の紡績糸7を検出可能に設けられており、当該所定の位置における紡績糸7の有無を検出することで、糸貯留量が所定量以上であるか否かを検出することができる。紡績糸7がパッケージ9に巻き取られているときには、ユニットコントローラ25が、糸検出センサ47の検出結果に応じて巻取装置21の巻取ドラム63の回転速度を制御して、糸貯留ローラ41の糸貯留量が所定の範囲内の量(値)となるように調整する。
【0054】
吸引装置49は、糸貯留ローラ41の軸方向に交差する方向において、糸貯留ローラ41の側方に配置されている。吸引装置49は、中空のパイプ73を備えている。吸引装置49は、負圧源としての図略の吸引源に接続されており、パイプ73内に吸引空気流を発生させることができる。吸引装置49は、糸貯留装置17よりも糸走行方向上流側で(給糸装置23と糸貯留装置17との間で)紡績糸7の分断が発生した場合に、糸貯留ローラ41の周辺で吸引空気流を発生させる。これにより、吸引装置49は、パッケージ9側の紡績糸7のうち糸貯留ローラ41よりも上流側の部分を吸引捕捉することができる。
【0055】
糸外しレバー51は、糸貯留ローラ41の近傍に配置されている。糸外しレバー51は、フライヤー45から紡績糸7(糸走行経路)を外す糸外し動作を行うことができる。糸外しレバー51は、待機位置と糸外し位置との間で移動することができるように、移動可能に設けられている。
図1には、糸外しレバー51が待機位置にある状態が示されるとともに、糸外しレバー51が待機位置から糸外し位置に移動する場合の移動方向が矢印で示されている。糸外しレバー51は、待機位置から糸外し位置に移動する過程で、糸貯留ローラ41よりも下流側の空間を通過する。このとき、フライヤー45に引っ掛かっている紡績糸7があれば、当該紡績糸7に糸外しレバー51が作用して、この紡績糸7がフライヤー45から外れる。
【0056】
本実施形態において、糸外しレバー51は、単錘駆動型に構成されている。即ち、糸外しレバー51は、各紡績ユニット1に設けられており、各糸外しレバー51に対して単独の駆動部(モータ又はエアシリンダ等)が設けられている。従って、糸外しレバー51は、他の紡績ユニット1の糸外しレバー51に対して独立して動作することができる。
【0057】
糸貯留ローラ41よりも下流側には、パッケージ9に巻き取られる紡績糸7を案内するガイド(案内部材)55が設けられている。ガイド55は、糸貯留ローラ41よりも下流側の位置において、紡績糸7の経路を規制することができる。ガイド55は、例えば紡績ユニット1に対して固定的に設けられた板状部材に形成されたU字状又は一部が切り欠かれた丸形状の部分である。
【0058】
ガイド55よりも下流側(即ち糸貯留装置17よりも下流側)には、糸継装置19が設けられている。糸継装置19は、糸走行方向において給糸装置23と巻取装置21との間で紡績糸7の分断が発生したとき、給糸装置23からの紡績糸7と、パッケージ9からの紡績糸7と、を継ぐ糸継処理を行う。本実施形態において、糸継装置19は、空気により発生させた旋回空気流によって糸端同士を撚り合わせるスプライサ装置である。なお、糸継装置19としては、スプライサ装置に代えて、例えば機械式のノッタ等を採用することができる。
【0059】
紡績ユニット1には、案内装置57が設けられている。案内装置57は、紡績糸7が糸貯留装置17よりも上流側で分断された場合に、給糸装置23からの紡績糸7を糸継装置19まで案内する。案内装置57は、その長手方向一端部で回動可能に支持されており、上下方向に回動することができる。案内装置57は、中空状部材を備えており、図略の吸引源に接続されている。案内装置57は、その長手方向他端部に設けられた吸引口59に吸引空気流を発生させることができる。案内装置57は、下方に回動することで、給糸装置23からの紡績糸7の糸端を吸引口59で捕捉することができる。案内装置57は、給糸装置23からの紡績糸7の糸端を捕捉した後、上方に回動することで、この糸端を糸継装置19へ案内することができる。
【0060】
案内装置57により、給糸装置23からの紡績糸7の糸端が糸継装置19に案内される。パッケージ9からの紡績糸7は、後述のとおり、捕捉装置83に捕捉されることで糸継装置19に案内された状態となる。この状態で、糸継装置19が駆動されることによって、給糸装置23からの紡績糸7とパッケージ9からの紡績糸7とが繋がれるように糸継処理が行われる。これにより、紡績ユニット1は、紡績糸7が糸貯留装置17よりも上流側で分断された場合であっても、停止された紡績を再開して糸継処理を行い、給糸装置23からの紡績糸7をパッケージ9に再び巻き取ることができる。
【0061】
糸貯留装置17よりも下流側(本実施形態では糸継装置19の下流側)には、巻取装置21が設けられている。巻取装置21は、給糸装置23から供給された紡績糸7を巻き取ってパッケージ9を形成する。本実施形態では、紡績ユニット1の高さ方向において、巻取装置21は、ドラフト装置11の上流側端部よりも高い位置に設けられている。このように、紡績ユニット1は、糸道が下から上に向かって延びるように設けられるレイアウトを有している。巻取装置21は、クレードルアーム61と、巻取ドラム63と、を備える。
【0062】
クレードルアーム61は、紡績糸7を巻き取るための巻取管67を回転可能に支持することができる。クレードルアーム61は、その根元部分を回動中心として回動可能である。これにより、巻取装置21では、巻取管67に紡績糸7が巻き取られることによりパッケージ9の径が大きくなっても、紡績糸7の巻取りを適切に継続することができる。
【0063】
巻取ドラム63は、図略の巻取ドラム駆動モータがユニットコントローラ25により制御されて、巻取管67又はパッケージ9の外周面に接触した状態で回転する。巻取ドラム63の外周面には図略の綾振溝が形成されており、この綾振溝によって紡績糸7を所定の幅でトラバースすることができる。これにより、巻取装置21は、紡績糸7をトラバースさせながら巻取管67に巻き取って、パッケージ9を形成することができる。
【0064】
本実施形態において、巻取装置21は、単錘駆動型に構成されている。即ち、各紡績ユニット1に設けられた巻取装置21は、単独の駆動部(巻取ドラム駆動モータ)を有し、これにより巻取ドラム63、ひいてはパッケージ9を回転させるように構成されている。巻取装置21は、他の紡績ユニット1の巻取装置21に対して独立してパッケージ9の回転動作を変更することができる。
【0065】
次に、
図3及び
図4を参照して、給糸装置23と糸貯留装置17との間で紡績糸7の分断が発生した場合に行われるパッケージ9側の紡績糸7の処理について説明する。
【0066】
紡績ユニット1による紡績が正常に行われるときには、巻取装置21におけるパッケージ9、及び糸貯留装置17の糸貯留ローラ41は、それぞれ所定方向に回転する。以下の説明では、このときにパッケージ9が回転する方向を正転方向とし、パッケージ9が正転しているということがある。また、このときに糸貯留ローラ41が回転する方向を正転方向とし、糸貯留ローラ41が正転しているということがある。
【0067】
紡績ユニット1において、給糸装置23から紡績糸7が供給されてパッケージ9が正転しているとき、前述のように糸監視装置15の監視結果に応じて紡績糸7が切断されることがある。この場合、糸走行方向において給糸装置23と糸貯留装置17との間で、紡績糸7の分断が発生する。そして、本実施形態では、給糸装置23の供給動作、糸貯留装置17の引出し動作、及び巻取装置21の巻取動作を直ちに停止する。
【0068】
このような紡績糸7の分断が発生した時点では、
図1に鎖線で示すように、パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tは、給糸装置23と糸貯留装置17の間に位置する。本実施形態では、この糸端7tを糸貯留装置17の吸引装置49によって事前に捕捉し(
図3の符号7cを参照)、この状態で、巻取装置21による巻取動作を紡績糸7の分断前よりも遅い速度で行うことにより、糸貯留ローラ41に残っている紡績糸7を糸貯留ローラ41から巻取装置21側へ解舒する。このときの吸引装置49の動作については後述する。
【0069】
糸貯留ローラ41からの紡績糸7の解舒が進行し、やがて、糸貯留ローラ41からの紡績糸7の解舒が完了する。紡績糸7が糸貯留ローラ41から全て解舒されると、その端部は糸貯留ローラ41から離れ、その直後に捕捉装置83によって捕捉され、これに伴う糸経路の変化が検出装置81によって検出される。なお、捕捉装置83及び検出装置81の詳細については後述する。
【0070】
検出装置81が紡績糸7を検出しなくなると、ユニットコントローラ25は、巻取装置21によるパッケージ9の正転を停止させる。この結果、パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tを、糸貯留装置17よりも下流側、かつ、巻取装置21よりも上流側に位置させることができる。
【0071】
これにより、糸走行方向において給糸装置23と糸貯留装置17との間で紡績糸7の分断が発生した場合、パッケージ9側の紡績糸7を簡単な構成で適切に処理することができる。本実施形態では、パッケージ9側の紡績糸7に含まれる糸欠陥を捕捉装置83により紡績糸7から除去することができる。パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tの位置は特に限定されず、糸走行方向において糸貯留装置17と巻取装置21との間の何れの位置でも良い。
【0072】
次に、吸引装置49について詳細に説明する。糸貯留装置17と給糸装置23との間で紡績糸7の分断が発生した場合、給糸装置23の供給動作、糸貯留装置17の引出し動作、及び巻取装置21の巻取動作が直ちに停止する。従って、パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tが糸貯留ローラ41よりも上流側に配置された状態で、パッケージ9側の紡績糸7は、パッケージ9と糸貯留装置17の間で繋がった状態で停止する。続いて、巻取装置21によるパッケージ9の正転が分断前よりも低速で再開され、糸貯留ローラ41から紡績糸7が下流側へ解舒されていく。この解舒動作の過程において、糸貯留ローラ41よりも上流側の糸端7tが吸引装置49により吸引捕捉される。
【0073】
具体的には、ユニットコントローラ25が、吸引装置49で吸引空気流を発生させて、吸引装置49に、糸貯留ローラ41よりも上流側に位置する糸端7tを吸引口71から吸引捕捉させる。これにより、糸貯留ローラ41に残っている紡績糸7が全て下流側に解舒されるまでの間、糸貯留ローラ41の直ぐ上流側の紡績糸7の経路が変化しないように、紡績糸7が案内される。言い換えれば、吸引装置49は紡績糸7の糸端7tがフリーな状態にならないように挙動を制限し、紡績糸7の位置を保持する。
【0074】
図3に示すように、吸引装置49はパイプ73を備える。パイプ73は、長手方向一端部に吸引口71を有し、長手方向他端部で吸引源75と接続されている。吸引口71は、糸貯留ローラ41に向けられている。パイプ73の長手方向途中部に第1バルブ77が設けられている。第1バルブ77の開閉は、ユニットコントローラ25により制御される。第1バルブ77の開閉制御が行われることによって、吸引装置49のパイプ73に吸引空気流を発生又は停止させることができる。吸引空気流が発生すると、糸貯留ローラ41の外周面に吸引力が作用し、当該外周面に巻き付けられた紡績糸7(糸貯留ローラ41に残っている紡績糸7)が吸引口71から吸引される。吸引源75は、例えば、紡績機の機台端部に設けられて、複数の紡績ユニット1で共有される。
【0075】
吸引口71は、糸貯留装置17の糸導入部分79を向くように配置されている。糸導入部分79は、糸貯留ローラ41の外周面のうち、紡績糸7が実質的に巻き始められる直前に位置する領域である。
【0076】
糸導入部分79について詳細に説明する。糸貯留ローラ41は、円筒状の貯留部41aを有しており、この貯留部41aに紡績糸7が螺旋状に巻かれる。
図3では、貯留部41aは外径が一定である円筒状に図示されているが、下流にいくに従って外径が段階的又は直線的に小さくなるテーパ形状を有するように構成されていても良い。パッケージ9が正転して紡績糸7を巻き取るのに伴い、糸貯留ローラ41の貯留部41aにおいては、紡績糸7は螺旋状の経路を上流から下流へ走行する。糸貯留ローラ41の軸は、紡績糸7が巻かれる螺旋軸と一致する。糸貯留ローラ41の軸の両端のうち螺旋の上流側に相当する端部で、糸貯留ローラ41にはテーパ部41bが形成されている。このテーパ部41bが、糸導入部分79に相当する。
【0077】
以下、糸貯留ローラ41の軸方向上流側とは、当該軸方向で前記螺旋の上流側を意味し、軸方向下流側とは、軸方向で螺旋の下流側を意味する。
【0078】
テーパ部41bは、貯留部41aよりも径が大きい略円錐状に形成されている。テーパ部41bの径は、貯留部41aに近づくにつれて小さくなり、貯留部41aと接続する部分において貯留部41aの径と等しくなる。
【0079】
糸導入部分79は、紡績糸7が貯留部41aにおいて整列しつつ巻かれる最上流部分80に比べて、糸貯留ローラ41の軸方向上流側(
図3では下方)に配置されている。糸走行方向の上流側からの紡績糸7は、糸貯留ローラ41の回転によって張力を与えられ、必要に応じて糸導入部分79(テーパ部41b)に接触して案内されながら、最上流部分80に導かれる。
【0080】
紡績糸7を一定の場所に導きながら糸貯留ローラ41を回転させることで、貯留部41aにおいて先行で巻かれた紡績糸7は、後続して巻かれる紡績糸7に押されて、軸方向下流側へ少しずつ移動する。この結果、紡績糸7を、整然と並べた状態で貯留部41aに貯留することができる。
【0081】
図4のタイミングチャートを参照して、糸貯留ローラ41よりも上流側で紡績糸7の分断が発生した場合における、糸貯留ローラ41とパッケージ9の回転制御を具体的に説明する。紡績糸7の分断の発生時、ユニットコントローラ25が、タイミングt1で、パッケージ9の正転と、糸貯留ローラ41の正転と、を停止させる。具体的には、ユニットコントローラ25は、巻取ドラム駆動モータの駆動と、糸貯留モータ43の駆動を停止させる。パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tは、タイミングt1で停止する前の糸貯留ローラ41の正転によって、糸貯留ローラ41に巻き取られる。タイミングt1の時点で、パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tは、最上流部分80の付近に位置する。
【0082】
その後、ユニットコントローラ25が、タイミングt2で、パッケージ9の回転を停止させた状態を維持しつつ、糸貯留ローラ41の逆転を開始させる。糸貯留ローラ41の逆転は、タイミングt3まで継続される。
【0083】
糸貯留ローラ41の逆転により、パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tが吸引装置49に吸引される。これに伴って、紡績糸7は糸貯留ローラ41から上流側へ解舒される。上述したとおり、吸引装置49の吸引口71は、糸導入部分79に対向するように配置されている。従って、糸貯留ローラ41を逆転させる過程で、最上流部分80の付近に位置する糸端7tが吸引口71に吸引され易い。
図3では、吸引装置49に吸い込まれた状態の糸端7tを符号7cで示している。
【0084】
ユニットコントローラ25は、糸貯留ローラ41を所定の回転量だけ逆転させたタイミングt3で逆転を停止させる。
【0085】
糸貯留ローラ41は、逆転の停止と同一のタイミングt3で正転を開始する。糸貯留ローラ41の正転は、タイミングt4まで継続される。正転は、逆転の停止後、所定時間経過してから開始しても良い。
【0086】
タイミングt3からタイミングt4までの糸貯留ローラ41の正転によって、吸引装置49にいったん吸い込まれていた紡績糸7の一部が引き出され、糸貯留ローラ41に巻かれる。吸引装置49の吸引口71は糸導入部分79に向いているので、糸貯留ローラ41の正転に伴って、吸引装置49から引き出された紡績糸7は自然に糸導入部分79から最上流部分80に導かれる。従って、貯留部41aにおいて紡績糸7を良好に整列させることができる。
【0087】
タイミングt3からタイミングt4までにおいて、糸貯留ローラ41は少ししか正転しない。具体的には、紡績糸7の分断後の糸貯留ローラ41の逆転量よりも、当該正転量が少ない。従って、この時点では、パッケージ9側の紡績糸7の糸端7cは、吸引装置49から完全に引き出されることはない。言い換えれば、タイミングt4の時点で、糸端7cは吸引装置49の内部に入ったままである。即ち、この時点で、糸端7cは吸引口71からは出ていない。
【0088】
紡績糸7の一部は糸貯留ローラ41の正転に伴って吸引装置49から引き出されるが、吸引装置49は、この引き出しに抗する向きの吸引空気流を作用させる。従って、吸引装置49は、糸貯留ローラ41に巻き取られる向きに紡績糸7が走行するのに抗する抵抗力を付与する抵抗付与部としても機能している。
【0089】
タイミングt4で糸貯留ローラ41が正転を停止した後、タイミングt5でパッケージ9が正転を開始する。この結果、紡績糸7がパッケージ9側に引っ張られるので、糸貯留ローラ41から紡績糸7が下流側へ解舒される。このとき、上流側の糸端7cは吸引装置49に吸い込まれているので、解舒される紡績糸7への糸端7cの絡み付き等が防止される。従って、糸貯留ローラ41からの紡績糸7の解舒は円滑に行われる。
【0090】
パッケージ9の正転の過程で、糸貯留ローラ41から紡績糸7が全て解舒されるのと殆ど同時に、吸引装置49から糸端7cが引き出され始める。やがて、パッケージ9側の紡績糸7の糸端7cは吸引装置49から抜けて、糸貯留装置17の下流側へ移動する。
【0091】
以下、タイミングt2からタイミングt4に示すような糸貯留ローラ41の逆転と正転の制御の意義について説明する。
【0092】
紡績糸7は、紡績装置13によって撚りを掛けることにより生成される。従って、紡績糸7が分断された場合、糸端7t付近の部分は、撚りのトルクの影響で、一定の方向に変形する傾向がある。
【0093】
タイミングt1の時点では、糸端7tは、
図3の符号7aで示すように、上述の最上流部分80付近でフリーな状態となっている。フリーな状態の糸端7aは、上述のトルクの影響で、貯留部41aに巻かれた状態で残っている紡績糸7に、符号7bで示すように接触する可能性が高い。
【0094】
糸貯留ローラ41に巻かれている紡績糸7に、符号7bで示される状態となっている糸端7tが絡み付くと、テンション変動及び/又は糸切れの原因となる。あるいは、糸貯留ローラ41上の紡績糸7が絡んで塊になって一度に抜けてしまうスラッフィングが起こり、糸貯留ローラ41からの紡績糸7の解舒ミスが発生することがある。
【0095】
糸貯留ローラ41に巻かれている紡績糸7に糸端7aが絡むことを防止する1つの方法として、糸端7aを遠心力で振り回すことも考えられる。このためには、紡績糸7を糸貯留ローラ41から下流へ引き出して解舒する過程で、ある程度の速度で糸貯留ローラ41を正転させれば良い。しかし、糸貯留ローラ41からの紡績糸7を下流側へ解舒する際に糸貯留ローラ41を回転させると、糸貯留ローラ41と巻取装置21との間で、紡績糸7の撚りの強さに意図しない変化が生じてしまう。
【0096】
この点、本実施形態では、まず糸貯留ローラ41を逆転させて、フリーな糸端7aを吸引装置49に捕捉させる。これにより、糸端7aが符号7cで示すように糸貯留ローラ41から離れた状態となる。その後、吸引装置49による紡績糸7の吸引を継続させながら糸貯留ローラ41を少し正転させる。これにより、吸引装置49と糸貯留ローラ41との間における紡績糸7の弛みを解消し、紡績糸7が吸引口71から糸導入部分79を経由して最上流部分80へ導かれた状態になる。また、糸貯留ローラ41の正転により、糸貯留ローラ41の外周面に対する紡績糸7の巻締め作用が発揮される。
【0097】
以上により、糸貯留ローラ41に巻かれている紡績糸7は、貯留部41aにおいて規則的に整列する。従って、糸貯留ローラ41の回転を停止させた状態でパッケージ9を正転させることにより、紡績糸7を綺麗な螺旋状に1巻きずつ解舒して下流側に送ることができる。紡績糸7の最後の1巻きが糸貯留ローラ41から解舒された後に(又は、殆ど同時に)、糸端7cが吸引装置49の吸引口71から抜ける。従って、糸端7tの絡み付きを確実に防止することができる。
【0098】
次に、
図1に示す糸外しレバー51の動作に関する制御について説明する。
【0099】
本実施形態では、糸貯留ローラ41からの紡績糸7の解舒が完了したときに、糸外しレバー51が糸外し動作を行う。以下、この糸外し動作を第1糸外し動作と呼ぶことがある。第1糸外し動作が行われるタイミングは、紡績糸7の糸端7tが糸貯留ローラ41から離れるタイミングよりも後である。第1糸外し動作が行われるタイミングを、第1タイミングと呼ぶことがある。
【0100】
第1糸外し動作について具体的に説明する。ユニットコントローラ25は、糸貯留ローラ41からの紡績糸7の解舒が完了したと判断したとき、パッケージ9の回転が停止するように巻取装置21の制御を行う。パッケージ9の回転停止と概ね同じタイミングで、ユニットコントローラ25は、糸外しレバー51を待機位置から糸外し位置に移動するように糸貯留装置17の制御を行う。
【0101】
糸貯留ローラ41に巻かれていた紡績糸7が完全に解舒された直後、パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tは、糸貯留ローラ41から離れた状態でフライヤー45の近傍を通りながら下流へ通過する。この過程で、フリーである糸端7t又はその近傍部分がフライヤー45に接触して絡む可能性がある。本実施形態では、この場合でも、上記の第1糸外し動作が行われることで、糸端7t又はその近傍部分をフライヤー45から外すことができる。なお、糸外しレバー51の移動タイミングは特に限定されず、糸継装置19で糸継ぎが行われる前のタイミングであればいつでも良い。
【0102】
第1糸外し動作は必ずしも行う必要はない。例えば、フライヤー45に紡績糸7が絡まっていないことを検出するセンサを設け、当該センサが紡績糸7の絡まりを検出した場合にのみ第1糸外し動作を行っても良い。あるいは、第1糸外し動作を省略しても良い。なお、本実施形態では、糸貯留ローラ41から紡績糸7が完全に解舒されたと想定されるタイミングで第1糸外し動作を行っており、糸貯留ローラ41から紡績糸7が実際に解舒されているかは不明である。
【0103】
糸外しレバー51が第1糸外し動作を行う場合の動作ストローク(第1動作量)は、他の場合に糸外しレバー51が後述の第2糸外し動作を行うときの動作ストローク(第2動作量)とは異なる。言い換えれば、フライヤー45に対する糸外し位置が、両者の場合で異なる。
【0104】
他の場合とは、例えば、紡績糸7の分断後の一連の糸継動作において、給糸装置23からの紡績糸7を案内装置57によって糸継装置19に導く場合である。このとき、案内装置57によって案内される紡績糸7は、回転するフライヤー45に引っ掛けられ、糸貯留ローラ41への紡績糸7の巻き付けが開始する。所定量(長さ)の紡績糸7が糸貯留ローラ41に巻き付けられた後、ユニットコントローラ25は、糸外しレバー51を待機位置から糸外し位置へと移動させる。以下、この糸外し動作を第2糸外し動作と呼ぶことがある。これにより、フライヤー45から紡績糸7を外して、紡績開始時に糸貯留ローラ41に巻かれていた紡績糸7を案内装置57により吸引除去できる。その後、糸外しレバー51が再び待機位置へ戻ることにより、紡績糸7は、フライヤー45に引っ掛けられ、糸貯留ローラ41に巻かれる。その後、当該紡績糸7と、既に捕捉装置83により準備されているパッケージ9側の紡績糸7とが、糸継装置19により糸継ぎされる。以下、第2糸外し動作が行われるタイミングを、第2タイミングと呼ぶことがある。第2タイミングは、上述の第1タイミングと異なる。
【0105】
フライヤー45がフリーの糸端7t付近に接触している場合は、紡績糸7の途中部に接触している場合よりも、フライヤー45と紡績糸7との絡み付きが生じ易い。従って、本実施形態では、第1動作量が第2動作量よりも多くなるように設定されている。言い換えれば、第1糸外し動作の場合の糸外し位置は、第2糸外し動作の場合の糸外し位置に比べて、フライヤー45から離れた位置である。これにより、フライヤー45に糸端7tが絡まっていたとしても、糸外しレバー51により糸端7tをフライヤー45から確実に外すことができる。
【0106】
次に、給糸装置23と糸貯留装置17との間で紡績糸7の分断が発生した場合に、糸貯留ローラ41からの紡績糸7の解舒後に行われるパッケージ9側の紡績糸7の糸端の処理について説明する。
【0107】
図5に示すように、紡績ユニット1には、パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tを検出可能な検出装置81が備えられている。検出装置81は、糸貯留ローラ41から解舒された後、糸貯留装置17と巻取装置21との間に位置する糸端7tを検出することができる。本実施形態では、検出装置81は、糸走行方向において、糸貯留ローラ41よりも下流側に配置されたセンサである。検出装置81は、糸走行方向において、巻取装置21に比べて、糸貯留装置17の近くに配置されている。
【0108】
検出装置(センサ)81は、本実施形態では、光学式の反射型センサである。検出装置81の構成は任意であり、例えば、検出装置81は、静電容量型近接センサ又は透過型センサであっても良い。
【0109】
検出装置81は、ガイド55よりも下流側に配置されている。詳細には、検出装置81は、糸走行方向においてガイド55と糸継装置19との間に配置されている。検出装置81は、ガイド55の近傍に配置されている。ガイド55は、検出装置81の近傍で紡績糸7の経路を案内する。
【0110】
紡績糸7が糸貯留ローラ41に巻かれた状態で、ガイド55と巻取装置21との間で紡績糸7が張られている場合には、紡績糸7は、
図5に鎖線で示す紡績糸7の経路(糸走行経路の一部)111に沿って位置する。検出装置81は、紡績糸7の経路111の適宜の位置に対面するように配置され、当該位置に紡績糸7があるか否かを検出する。
【0111】
従って、紡績糸7が給糸装置23と巻取装置21の間で連続状態である場合は、紡績糸7の経路111に沿って位置するため、検出装置81は紡績糸7が存在することを検出する。紡績糸7の分断が発生した後、パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tが検出装置81よりも下流側にある場合は、検出装置81は紡績糸7を検出しない。
【0112】
パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tが検出装置81よりも上流側にある場合でも、紡績糸7が糸貯留ローラ41に巻かれていない場合には、張力を維持できない紡績糸7は経路111から外れて後述の捕捉装置83に吸い込まれるので、検出装置81は紡績糸7を検出しない。このように、紡績糸7の経路111に紡績糸7があるか否かを検出装置81が検出することは、糸貯留ローラ41と巻取装置21の間に糸端7tがあるか否かを検出することと殆ど同じである。
【0113】
なお、検出装置81は、紡績糸7の動きが安定する位置に配置されていれば良い。検出装置81は、例えば、糸貯留ローラ41に対向する位置であって、糸貯留ローラ41の軸方向中央部よりも下流側の領域の何れかの位置に配置されても良いし、吸引装置49の近傍(糸貯留ローラ41の軸方向と交差する方向で当該糸貯留ローラ41と隣り合う位置)に配置されても良い。また、検出装置81が検出するパッケージ9側の紡績糸7の糸端7tとは、紡績糸7において完全に当該紡績糸7が終わる部分のみを指すものではなく、この部分及びその近傍の領域を含むものである。
【0114】
紡績ユニット1には、糸貯留ローラ41よりも下流側で紡績糸7を捕捉する捕捉装置83が備えられている。捕捉装置83は、糸走行方向において糸貯留装置17と巻取装置21との間に配置されている。本実施形態では
図1に示すように、捕捉装置83は、糸走行方向において糸貯留装置17と糸継装置19との間に配置されるとともに、検出装置81の近傍に配置されている。捕捉装置83は、糸走行方向において、巻取装置21に比べて、糸貯留装置17の近くに配置されている。
【0115】
捕捉装置83は、糸貯留装置17よりも糸走行方向上流側で紡績糸7の分断が発生した場合に、パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tを吸引捕捉する。捕捉装置83は、糸端7tを吸引捕捉するとき、糸端7tに関し完全に紡績糸7が終わる部分を最初に吸引しなくても良い。
【0116】
捕捉装置83は、パイプ85を備える。本実施形態では、捕捉装置83は、圧縮空気が供給されることにより吸引空気流を発生させるエアサッカー87を更に備える。
【0117】
パイプ85は、筒形状を有する。パイプ85は、負圧源としての図略の吸引源に接続されている。従って、捕捉装置83は、パイプ85の内部に吸引空気流を発生させることができる。パイプ85の長手方向一端部にエアサッカー87が設けられている。エアサッカー87は、パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tを吸引するための捕捉用開口89を有する。捕捉用開口89は、糸貯留装置17と巻取装置21との間に形成される糸道(
図5の紡績糸7の経路111)に向かって開口するように配置されている。なお、糸道に対する捕捉用開口89の相対位置は、特に限定されず、糸貯留ローラ41よりも下流側であって糸道の近傍であれば良い。本実施形態では、捕捉用開口89は、紡績ユニット1において固定的に設けられている。
【0118】
エアサッカー87には、圧縮空気源91で生成された圧縮空気が供給される。エアサッカー87が圧縮空気を図略の噴射孔から放出することによって、捕捉用開口89には、負圧源による吸引空気流に加えて、追加的な吸引空気流を発生させることができる。エアサッカー87と圧縮空気源91とを接続する圧縮空気の供給経路の途中部には、第2バルブ93が設けられている。第2バルブ93は、エアサッカー87に圧縮空気を供給するか否かを切り替えるための電磁弁である。第2バルブ93の開閉は、ユニットコントローラ25により制御される。第2バルブ93の開閉制御が行われることによって、エアサッカー87(捕捉装置83)における吸引空気流の発生及び停止が切り替えられる。
【0119】
このように、本実施形態では、捕捉装置83は、エアサッカー87を含んで構成されている。これにより、捕捉装置83においては、空気が噴射されることにより生じる空気の流れによって、捕捉用開口89に強力な吸引空気流を発生させ、パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tを吸引して確実に保持することができる。捕捉装置83は、パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tを十分な強さの吸引力で捕捉することができれば良く、必ずしもエアサッカー87を備えなくても良い。
【0120】
捕捉装置83がパッケージ9側の紡績糸7の糸端7tの捕捉のためにエアサッカー87を動作させるタイミングは、特に限定されない。例えば、ユニットコントローラ25は、糸貯留ローラ41に残っている紡績糸7の量が所定量未満になったと判断したタイミングで、エアサッカー87を動作させても良い。糸貯留ローラ41に残っている紡績糸7の量の判断は、糸検出センサ47の検出結果に基づいて行うことができる。
【0121】
本実施形態では、紡績糸7の糸端7tをパッケージ9に巻き取る場合に、ユニットコントローラ25によってパッケージ9の回転が制御される。具体的には、以下のとおりである。パッケージ9の正転によって、上述のように、糸貯留ローラ41から紡績糸7(パッケージ9側の紡績糸7)が下流側へ解舒されていく。糸貯留ローラ41からの紡績糸7の解舒により紡績糸7の糸端7tが糸貯留ローラ41から離れたタイミングの直後に、この紡績糸7の糸端7tは捕捉装置83により捕捉される。この結果、検出装置81が紡績糸7を検出しなくなると、ユニットコントローラ25は、パッケージ9の正転を停止させる。この制御により、パッケージ9の正転を、糸端7tが完全にパッケージ9に巻き取られる前に停止させることができる。
【0122】
パッケージ9は、その後に一時的に逆転する。これにより、パッケージ9から紡績糸7の一部が解舒され、捕捉装置83に吸い込まれる。捕捉装置83に吸い込まれた紡績糸7は、糸継装置19で糸継ぎが行われる過程で廃棄される。パッケージ9をどれだけ逆転させるかは、糸監視装置15が検出した、紡績糸7に含まれる糸欠陥の長さに応じて調整される。これにより、パッケージ9側の紡績糸7に含まれる糸欠陥が短い場合は、パッケージ9の逆転量を少なくすることにより、捕捉装置83で吸引除去される紡績糸7の長さを短くすることが可能となり、廃棄される紡績糸7の量を少なくすることができる。
【0123】
パッケージ9を一時的に逆転するとき、捕捉装置83の吸引力が仮に不十分である場合には、パッケージ9側の紡績糸7が解舒されず、パッケージ9の表面から離れずに貼り付くことがある。この状態でパッケージ9を逆転すると、紡績糸7が通常の方向とは逆向きに巻かれる逆巻きが発生する。逆巻きは、糸継装置19による糸継処理の失敗、及び、パッケージ9の品質低下の原因になる。しかし、本実施形態では、捕捉装置83においてエアサッカー87を動作させることで、捕捉用開口89から紡績糸7を強く吸引して引っ張ることができる。この結果、逆巻きの発生を防止することができる。
【0124】
本実施形態では、糸貯留ローラ41よりも下流側に、第1噴射装置97が設けられている。第1噴射装置97は、紡績糸7の経路111を挟むように捕捉装置83(捕捉用開口89)と対向する位置に配置されている。言い換えると、第1噴射装置97と捕捉装置83(捕捉用開口89)は一直線上に設けられている。従って、第1噴射装置97は、捕捉装置83(捕捉用開口89)に対して空気を噴射することができる。第1噴射装置97から噴射された空気は、捕捉装置83の捕捉用開口89に向かって、
図5の矢印99の方向に流れる。これにより、パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tの近傍部分が捕捉用開口89へ吹き流されるので、捕捉装置83による糸端7tの捕捉をより確実に行うことができる。第1噴射装置97が噴射を行うタイミングは、特に限定されない。このタイミングは、例えば、糸検出センサ47が紡績糸7を検出しなくなったタイミング、即ち糸貯留ローラ41から紡績糸7がなくなりかけるタイミングであっても良いし、捕捉装置83がエアサッカー87を動作させるタイミングであっても良い。
【0125】
第1噴射装置97には、圧縮空気源101で生成された圧縮空気が供給される。第1噴射装置97は、この圧縮空気を噴射孔から糸道(捕捉装置83の捕捉用開口89)に向かって噴射する。第1噴射装置97と圧縮空気源101とを接続する圧縮空気の供給経路の途中部には、第3バルブ103が設けられている。第3バルブ103は、第1噴射装置97に圧縮空気を供給するか否かを切り替えるための電磁弁である。第3バルブ103の開閉は、ユニットコントローラ25により制御される。第3バルブ103の開閉制御が行われることによって、第1噴射装置97における圧縮空気の噴射の実行及び停止が切り替えられる。なお、圧縮空気源101と圧縮空気源91とを別々に設けずに、紡績ユニット1は単一の圧縮空気源から圧縮空気が供給されるように構成されていても良い。
【0126】
本実施形態では、
図1に示すように、第1噴射装置97よりも下流側に、第2噴射装置105が設けられている。第2噴射装置105は、紡績ユニット1又は図略の作業台車に固定的に設けられている。第2噴射装置105は、糸走行方向において糸貯留装置17と巻取装置21との間で紡績糸7の分断が発生した場合に、パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tを捕捉装置83に向かって案内するように圧縮空気を噴射する。第2噴射装置105は、第1噴射装置97と同様に構成することができる。これにより、糸継装置19での糸継ぎの失敗等の理由により、糸貯留装置17よりも糸走行方向下流側で紡績糸7の分断が発生した場合、パッケージ9を逆転させつつ第2噴射装置105から圧縮空気を噴射することにより、パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tを捕捉装置83に捕捉させることができる。その結果、紡績糸7の糸端7tは、糸継装置19により糸継ぎを行うことが可能な位置に案内された状態となる。従って、簡単な構成でパッケージ9側の紡績糸7の処理を行うことができる。第2噴射装置105からの圧縮空気の噴射の開始と同時又はほぼ同時に、巻取装置21によりパッケージ9が逆転させられる。
【0127】
以上に説明したように、本実施形態の紡績機が備える紡績ユニット1は、給糸装置23と、巻取装置21と、糸貯留装置17と、を備える。給糸装置23は、紡績糸7を供給可能である。巻取装置21は、給糸装置23から供給された紡績糸7を巻き取ってパッケージ9を形成する。糸貯留装置17は、給糸装置23と巻取装置21との間に形成される糸道(糸走行経路)の途中に配置される。糸貯留装置17は、糸貯留ローラ41と、吸引装置49と、を有する。糸貯留ローラ41は、給糸装置23から供給された紡績糸7を巻き取って貯留する。吸引装置49は、糸貯留装置17よりも糸走行方向上流側で紡績糸7の分断が発生した場合に、パッケージ9側の紡績糸7のうち糸貯留ローラ41よりも上流側の部分を案内するように作用する。紡績糸7の分断の発生時に、吸引装置49による紡績糸7への作用を行いつつ、巻取装置21で紡績糸7を巻き取る方向である正転方向にパッケージ9を正転させて(
図4のタイミングt5以降)、糸貯留ローラ41に残っている紡績糸7を糸貯留ローラ41から解舒する。パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tが糸貯留ローラ41から離れてパッケージ9に巻き取られる前のタイミングで、タイミングt5から継続しているパッケージ9の正転が停止する。
【0128】
これにより、糸貯留装置17よりも糸走行方向上流側で紡績糸7の分断が発生したとき、簡単な構成でパッケージ9側の紡績糸7を適切に処理することができる。
【0129】
本実施形態の紡績機において、吸引装置49は、糸貯留装置17よりも糸走行方向上流側で紡績糸7の分断が発生した場合に、パッケージ9側の紡績糸7のうち糸貯留ローラ41よりも上流側の部分を案内するように作用する。吸引装置49は、糸貯留ローラ41に対向する吸引口71を有し、糸貯留ローラ41に残っている紡績糸7の糸端7t(7a)を吸引口71で吸引する。
【0130】
これにより、糸貯留ローラ41に残っている紡績糸7の糸端7t(7a)を吸引することによって、当該紡績糸7の挙動を安定させることができる。この結果、糸端7tが紡績糸7に絡み付かなくなるので、糸貯留ローラ41に残っている紡績糸7の解舒が行い易くなる。
【0131】
本実施形態の紡績機において、糸貯留装置17の糸貯留ローラ41は、紡績糸7が糸貯留ローラ41の外周面に巻かれる最上流部分80よりも上流側に配置された糸導入部分79を備える。給糸装置23から供給された紡績糸7は、糸導入部分79を経由して、糸貯留ローラ41の最上流部分80に導かれる。吸引装置49の吸引口71は、糸導入部分79を向くように配置される。
【0132】
これにより、糸貯留ローラ41に残っている紡績糸7の糸端7t(7a)を、吸引装置49の吸引口71によって確実に吸引することができる。
【0133】
本実施形態の紡績機において、糸貯留ローラ41は、上流からの紡績糸7を巻き取る方向である正転方向に回転することで、紡績糸7を貯留する。糸貯留装置17よりも糸走行方向上流側で紡績糸7の分断が発生したとき、パッケージ9及び糸貯留ローラ41のそれぞれの正転が停止される。パッケージ9及び糸貯留ローラ41のそれぞれの正転の停止後、糸貯留ローラ41が逆転する。
【0134】
これにより、糸貯留ローラ41に残っている紡績糸7の糸端7t(7a)が、糸貯留ローラ41の逆転によって上流側へ解舒される。従って、吸引装置49の吸引口71によって糸端7tをより確実に吸引することができる。
【0135】
本実施形態の紡績機において、糸貯留ローラ41の逆転後、糸貯留ローラ41が正転する。
【0136】
これにより、紡績糸7が吸引口71に吸引されている状態で糸貯留ローラ41が正転することで、パッケージ9と糸貯留ローラ41との間で連続している紡績糸7による糸貯留ローラ41への巻締め作用を発生させ、糸貯留ローラ41に残っている紡績糸7を整然と並べさせることができる。従って、糸貯留ローラ41に残っている紡績糸7を糸貯留ローラ41からスムーズに解舒することができる。
【0137】
本実施形態の紡績機において、糸貯留ローラ41が逆転するときの回転量と比べて、糸貯留ローラ41が当該逆転の後に正転するときの回転量が少ない。
【0138】
これにより、糸貯留ローラ41の逆転時において吸引装置49の吸引口71に吸引された糸端7t(7c)が、糸貯留ローラ41の正転時に当該吸引口71から抜け出ることを防止することができる。従って、吸引装置49による案内作用を継続することができる。
【0139】
本実施形態の紡績機において、糸貯留装置17は、フライヤー45と、糸外しレバー51と、を有する。フライヤー45は、糸貯留ローラ41に対して相対回転する。フライヤー45には、糸貯留ローラ41から引き出される紡績糸7が掛けられる。糸外しレバー51は、糸貯留ローラ41からの紡績糸7(パッケージ9側の紡績糸7)の糸端7tが糸貯留ローラ41から離れるタイミングよりも後のタイミングである第1タイミングで、糸走行経路をフライヤー45から外す糸外し動作を行う。
【0140】
これにより、糸貯留ローラ41からの紡績糸7の糸端7tが糸貯留ローラ41から離れるとき、糸端7tがフライヤー45に絡んでいたとしても、この糸端7tを糸外しレバー51によりフライヤー45から外すことができる。
【0141】
本実施形態の紡績機において、糸外しレバー51は、第1タイミングとは異なる第2タイミングでも糸外し動作を行うように構成される。第1タイミングで行われる糸外し動作に関する糸外しレバー51の第1動作量は、第2タイミングで行われる糸外し動作に関する糸外しレバー51の第2動作量とは異なる。
【0142】
これにより、糸貯留ローラ41からの紡績糸7の糸端7tが糸貯留ローラ41から離れるとき、糸端7tがフライヤー45に絡まったとしても、他とは異なる糸外し動作によって糸端7tをフライヤー45から確実に外すことができる。
【0143】
本実施形態の紡績機において、給糸装置23、巻取装置21、及び糸貯留装置17は、複数の紡績ユニット1のそれぞれに備えられる。
【0144】
これにより、給糸装置23、巻取装置21、及び糸貯留装置17を利用し易くすることができる。
【0145】
本実施形態の紡績機において、複数の紡績ユニット1のそれぞれは、巻取装置21の駆動部を備える。
【0146】
これにより、紡績ユニット1毎に巻取装置21を独立して駆動及び停止する制御を行うことができる。
【0147】
本実施形態の紡績機において、複数の紡績ユニット1のそれぞれは、糸外しレバー51の駆動部を備える。
【0148】
これにより、従来とは異なり、紡績ユニット1毎に糸外しレバー51を独立して動作させる制御を行うことができる。
【0149】
本実施形態の紡績方法は、給糸装置23と、巻取装置21と、糸貯留装置17と、を備える紡績ユニット1で実行される。給糸装置23は、紡績糸7を供給可能である。巻取装置21は、給糸装置23から供給された紡績糸7を巻き取ってパッケージ9を形成する。糸貯留装置17は、給糸装置23と巻取装置21との間に形成される糸道(糸走行経路)の途中に配置される。前記の紡績機は、紡績糸7を巻き取る方向である正転方向にパッケージ9を回転させながら紡績を行う。糸貯留装置17は、糸貯留ローラ41と、吸引装置49と、を有する。糸貯留ローラ41は、給糸装置23から供給された紡績糸7を巻き取って貯留することができる。吸引装置49は、糸貯留装置17よりも糸走行方向上流側で紡績糸7の分断が発生した場合に、パッケージ9側の紡績糸7のうち糸貯留ローラ41よりも上流側の部分を案内するように作用する。紡績糸7の分断の発生時に、吸引装置49による紡績糸7への作用が行われつつ、巻取装置21でパッケージ9が正転させられて(
図4のタイミングt5以降)、糸貯留ローラ41に残っている紡績糸7が糸貯留ローラ41から解舒される。パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tが糸貯留ローラ41から離れてパッケージ9に巻き取られる前のタイミングで、タイミングt5から継続しているパッケージ9の正転が停止させられる。
【0150】
これにより、糸貯留装置17よりも糸走行方向上流側で紡績糸7の分断が発生したとき、パッケージ9側の紡績糸7を適切に処理することができる。
【0151】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。上記実施形態と以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0152】
吸引装置49に代えて、糸貯留ローラ41の周囲で空気を噴射する噴射装置(糸作用部)が設けられても良い。この噴射装置は、例えば、前述の最上流部分80における、糸貯留ローラ41の接線方向に空気を噴射するように構成されていても良い。空気の噴射方向は、
図3に示す吸引口71での吸引空気流の向きと一致しても良いし、異なっていても良い。パッケージ9側の紡績糸7のうち、糸貯留ローラ41よりも上流側の部分は、噴射流に沿うように吹き流される。従って、フリーな状態の糸端7aが、既に貯留部41aに巻かれている紡績糸7に対して接触しないようにすることができる。このように、噴射装置は、吸引装置49に比べて緩やかであるが、紡績糸7を実質的に案内することができる。噴射装置から空気を噴射することで、糸貯留ローラ41に巻き取られる向きに紡績糸7が走行するのに抗する抵抗力を付与することもできる。
【0153】
吸引装置49に代えて、パッケージ9側の紡績糸7の糸端7tを挟むことができるように構成された適宜のクランプ装置(糸作用部)が設けられても良い。紡績糸7は、対で配置されたアームの間で挟まれても良いし、対で配置されたローラの間で挟まれても良い。クランプ装置は、紡績糸7を挟むことで、紡績糸7を動かないように拘束することができる。例えば、ローラの軸にダンパーを設けることで、糸貯留ローラ41に巻き取られる向きに紡績糸7が走行するのに抗する抵抗力を付与することもできる。
【0154】
糸作用部としてローラ対を設ける場合、当該ローラ対は、紡績装置13から紡績糸7を引き出す引出し動作を行っても良い。この場合、糸貯留ローラ41は、ローラ対が引き出した紡績糸7を貯留する。
【0155】
吸引装置49に代えて、紡績糸7を引っ掛けるブラシ又は櫛歯等(糸作用部)が設けられても良い。紡績糸7をブラシ等に引っ掛けることで、紡績糸7を動かないように拘束することができる。
【0156】
検出装置81は、糸貯留ローラ41の外周面に対して糸貯留ローラ41の軸方向中央部よりも糸走行方向下流側の端部に設けられ、この端部と対向するように配置されたセンサであっても良い。センサは、糸貯留ローラ41の軸方向中央部よりも糸走行下流側のローラ表面に対向する位置に配置される。この場合、このセンサが糸端7tを検出すると想定されるタイミングよりも前に、糸貯留ローラ41からフライヤー45を介して走行する紡績糸7の糸道を規制手段により規制する構成とすることもできる。規制手段は、例えば、フライヤー45近傍に設けられ、糸貯留装置17のフライヤー45の回転を停止させ得る部材であっても良い。フライヤー45が糸道を規制することで、センサによって糸端7tを安定して検出することができる。
【0157】
検出装置81は、ラインセンサであっても良い。ラインセンサは、糸貯留ローラ41の軸方向に沿って、糸貯留ローラ41と隣り合う位置に配置される。ラインセンサは、貯留部41aの外周面に対向する。ラインセンサは、糸貯留ローラ41の軸方向と平行な方向に並べられた複数の検出素子を備える。ラインセンサは、糸貯留ローラ41の軸方向中央部よりも糸走行方向下流側の領域に含まれる位置を検出可能に設けられている。全ての検出素子が紡績糸7を検出しなくなれば、糸貯留ローラ41の外周面を糸端7tが通過したと判断することができる。
【0158】
検出装置81は、吸引装置49の吸引口71の近傍に設けられたセンサであっても良い。糸貯留ローラ41から紡績糸7が全て解舒されると、糸端7cは吸引口71から引き出される。従って、吸引口71の近傍にセンサを配置することで、糸端7t(7c)を安定して検出することができる。
【0159】
上述の実施形態では、糸監視装置15が糸欠陥を検出した場合、紡績装置13での紡績が停止することで、紡績糸7を切断する。これに代えて、糸貯留装置17よりも上流側に設けられたカッタによって紡績糸7を切断しても良い。
【0160】
紡績ユニット1が複数備えられる場合、各紡績ユニット1に糸継装置19が設けられる構成に代えて、複数の紡績ユニット1に対して走行可能であり、必要に応じて紡績ユニット1に対する作業位置で停止して糸継ぎを行う糸継台車が設けられる構成を採用しても良い。
【0161】
上記の実施形態では、紡績ユニット1は、給糸装置23と巻取装置21との間に形成される糸道が下から上に向かって延びるように設けられるレイアウトを有している。しかし、本発明は、糸道が上から下に向かって延びるレイアウトの紡績ユニット1に適用することもできる。
【0162】
上記の実施形態では、紡績機は、空気紡績機(エアジェット紡績機)であるが、オープンエンド紡績機であっても良い。
【0163】
上記の実施形態では、糸貯留ローラ41から解舒された紡績糸7の糸端7tは捕捉装置83により捕捉されている。しかし、紡績ユニット1は、捕捉装置83を備えていなくても良く、糸端7tが糸貯留ローラ41とパッケージ9の間の任意の位置で停止するように各装置が制御されても良い。
【0164】
捕捉装置83が設けられていない場合、第1噴射装置97及び/又は検出装置81を省略しても良い。捕捉装置83が設けられている場合であっても、第1噴射装置97を省略しても良い。
【0165】
上記の実施形態では、紡績糸7の糸端7tが吸引装置49により吸引捕捉された後、糸貯留ローラ41を正転させているが、当該正転は行わなくても良い。
【0166】
上記の実施形態では、パッケージ9側の紡績糸7は、糸継装置19により給糸装置23から供給される紡績糸7と糸継ぎされている。しかし、分断された紡績糸7は、公知のピーシング方法により、再び連続状態にされても良い。
【0167】
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変形形態をとり得ることは明らかである。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0168】
7 紡績糸(糸)
9 パッケージ
17 糸貯留装置
21 巻取装置
23 給糸装置
41 糸貯留ローラ
45 フライヤー(糸掛け部材)
49 吸引装置(糸作用部)
51 糸外しレバー(糸外し部材)
71 吸引口
79 糸導入部分