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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086028
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】熱拡散シートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20220602BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20220602BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L23/36 M
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197820
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116404
【氏名又は名称】阿波製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】特許業務法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯本 明
(72)【発明者】
【氏名】豊川 裕也
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322EA11
5E322FA04
5E322FA09
5F136BA30
5F136BC07
5F136FA51
5F136FA62
5F136FA63
5F136FA82
5F136FA85
5F136FA88
5F136GA33
(57)【要約】
【課題】熱伝導を維持しながら、可撓性を向上させた熱拡散シート等を提供する。
【解決手段】熱拡散シート20は、外添された樹脂を含む抄紙シートで構成された基材シートを備える、シート状の熱拡散シート20であって、厚さ方向の熱伝導率が、1.00W/m・K以上とする。上記構成により、樹脂を外添することで熱拡散シート20の柔軟性を向上できる。また、基材シートの粉落ちを抑制できる利点も得られる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外添された樹脂を含む抄紙シートで構成された基材シートを備える、シート状の熱拡散シートであって、
厚さ方向の熱伝導率が、1.00W/m・K以上である熱拡散シート。
【請求項2】
請求項1に記載の熱拡散シートであって、
密度が0.2g/cm3~2.0g/cm3である熱拡散シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱拡散シートであって、
JIS L1096:2010ハンドルオメータ法による剛軟度測定値が0.1~13mN/100mmである熱拡散シート。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の熱拡散シートであって、
前記樹脂の含有量を、1~20%としてなる熱拡散シート。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の熱拡散シートであって、
難燃性を備える熱拡散シート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の熱拡散シートであって、
面方向の熱伝導率を、厚さ方向よりも高くしてなる熱拡散シート。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の熱拡散シートであって、
面方向の熱伝導率が、5.00W/m・K以上である熱拡散シート。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の熱拡散シートであって、
前記基材シートが、湿式抄紙シートである熱拡散シート。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の熱拡散シートであって、
前記樹脂が、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリル酸樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の合成樹脂の他に、アクリルニトリルブタジエンゴム、水素化アクリルニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、アクリルニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレーンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フッ化シリコーンゴム、クロロスルフォン化ゴム、エチレン酢ビゴム、塩化ポリエチレン、塩化ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルイソプレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴムのいずれかである熱拡散シート。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の熱拡散シートであって、
前記基材シートが、熱伝導性を有するフィラーと、有機繊維を含んでなる熱拡散シート。
【請求項11】
請求項10に記載の熱拡散シートであって、
前記熱伝導性を有するフィラーが、窒化硼素、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、マグネシア、アルミナシリケート、シリコン、鉄、炭化珪素、炭素、黒鉛、シリカ、アルミニウム、銅、銀、金の少なくともいずれかを含む熱拡散シート。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の熱拡散シートであって、
前記有機繊維が、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリイミド繊維、ポリエチレン繊維、アクリル繊維、炭素繊維、PBO繊維、ポリ酢酸ビニル繊維、レーヨン繊維、ポリビニルアルコール繊維、エチレンビニルアルコール繊維、金属繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、フッ素繊維のいずれかを含む熱拡散シート。
【請求項13】
シート状の熱拡散シートの製造方法であって、
繊維と熱伝導粉末とを水に懸濁して抄紙用スラリーとし、この抄紙用スラリーを湿式抄紙してシート状とした、厚さ方向の熱伝導率を1.00W/m・K以上とする基材シートを準備する工程と、
前記基材シートに、樹脂を外添する工程と、
を含む熱拡散シートの製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の熱拡散シートの製造方法であって、
前記基材シートに樹脂を外添する工程が、含浸又は塗工により行われてなる熱拡散シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱拡散シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発熱体の放熱を促進するための熱拡散シートや放熱シートが、様々な用途で用いられている。例えば、二次電池セルを複数枚積層した車載用や定置用の電源装置においては、充放電によって二次電池セルが発熱することが知られている。このような二次電池セルの放熱性を向上させるために、電池セルの外装缶に熱拡散シートを密着させている。
【0003】
また、CPUやトランジスタ等の半導体素子は、駆動時に発熱するため、このような発熱体を放熱させる放熱フィン等の放熱部材を設けている。発熱体と放熱部材との間に空隙が生じると、空気層が形成されて断熱されてしまう。このため、空隙の生成を抑制して熱結合を向上させるよう、発熱体と放熱部材との間に熱拡散シートを介在させることが行われている。
【0004】
本願出願人は、先に熱伝導率を高めた放熱シートを開発した(特許文献1)。この放熱シートは、繊維と熱伝導粉末とを水に懸濁して抄紙用スラリーとし、この抄紙用スラリーを湿式抄紙してシート状として製造している。
【0005】
しかしながらこの放熱シートは、耐折曲強度を向上させている半面、可撓性や柔軟性に劣るという問題があった。柔軟性が低いと、発熱体や放熱部材の形状や表面状態によっては、これらの間に放熱シートを介在させても、空隙の発生を抑制し難くなって、熱結合を高めることが阻害されることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5165490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その目的の一は、熱伝導を維持しながら、可撓性を向上させた熱拡散シートおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
本発明の第1の形態に係る熱拡散シートによれば、外添された樹脂を含む抄紙シートで構成された基材シートを備える、シート状の熱拡散シートであって、厚さ方向の熱伝導率が、1.00W/m・K以上とすることができる。上記構成により、樹脂を外添することで熱拡散シートの柔軟性を向上できる。また、基材シートの粉落ちを抑制できる利点も得られる。
【0009】
また、本発明の第2の形態に係る熱拡散シートによれば、上記構成に加えて、密度を0.2g/cm3~2.0g/cm3とすることができる。上記構成により、柔軟性や可撓性を担保して、発熱体や放熱部材の接触面や押圧面を適宜変形させて、空気層の形成を避け、優れた熱結合を発揮できる。
【0010】
さらに、本発明の第3の形態に係る熱拡散シートによれば、上記いずれかの構成に加えて、JIS L1096:2010ハンドルオメータ法による剛軟度測定値を0.1~13mN/100mmとすることができる。
【0011】
さらにまた、本発明の第4の形態に係る熱拡散シートによれば、上記いずれかの構成に加えて、前記樹脂の含有量を1~20%とすることができる。
【0012】
さらにまた、本発明の第5の形態に係る熱拡散シートによれば、上記いずれかの構成に加えて、難燃性を備えることができる。
【0013】
さらにまた、本発明の第6の形態に係る熱拡散シートによれば、上記いずれかの構成に加えて、面方向の熱伝導率を、厚さ方向よりも高くすることができる。
【0014】
さらにまた、本発明の第7の形態に係る熱拡散シートによれば、上記いずれかの構成に加えて、面方向の熱伝導率を、5.00W/m・K以上とすることができる。
【0015】
さらにまた、本発明の第8の形態に係る熱拡散シートによれば、上記いずれかの構成に加えて、前記基材シートを、湿式抄紙シートとすることができる。
【0016】
さらにまた、本発明の第9の形態に係る熱拡散シートによれば、上記いずれかの構成に加えて、前記樹脂を、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリル酸樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の合成樹脂の他に、アクリルニトリルブタジエンゴム、水素化アクリルニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、アクリルニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレーンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フッ化シリコーンゴム、クロロスルフォン化ゴム、エチレン酢ビゴム、塩化ポリエチレン、塩化ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルイソプレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴムのいずれかとすることができる。
【0017】
さらにまた、本発明の第10の形態に係る熱拡散シートによれば、上記いずれかの構成に加えて、前記基材シートが、熱伝導性を有するフィラーと、有機繊維を含むことができる。
【0018】
さらにまた、本発明の第11の形態に係る熱拡散シートによれば、上記いずれかの構成に加えて、前記熱伝導性を有するフィラーが、窒化硼素、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、マグネシア、アルミナシリケート、シリコン、鉄、炭化珪素、炭素、黒鉛、シリカ、アルミニウム、銅、銀、金の少なくともいずれかを含むことができる。
【0019】
さらにまた、本発明の第12の形態に係る熱拡散シートによれば、上記いずれかの構成に加えて、前記有機繊維が、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリイミド繊維、ポリエチレン繊維、アクリル繊維、炭素繊維、PBO繊維、ポリ酢酸ビニル繊維、レーヨン繊維、ポリビニルアルコール繊維、エチレンビニルアルコール繊維、金属繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、フッ素繊維のいずれかを含むことができる。
【0020】
さらにまた、本発明の第13の形態に係る熱拡散シートの製造方法によれば、上記いずれかの構成に加えて、シート状の熱拡散シートの製造方法であって、繊維と熱伝導粉末とを水に懸濁して抄紙用スラリーとし、この抄紙用スラリーを湿式抄紙してシート状とした、厚さ方向の熱伝導率を1.00W/m・K以上とする基材シートを準備する工程と、前記基材シートに、樹脂を外添する工程とを含むことができる。これにより、樹脂を外添により設けたことで熱拡散シートの柔軟性を向上できる。また基材シートの粉落ちを抑制できる利点も得られる。
【0021】
さらにまた、本発明の第14の形態に係る熱拡散シートの製造方法によれば、上記に加えて、前記基材シートに樹脂を外添する工程を、含浸又は塗工により行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態1に係る熱伝導シートを用いた放熱装置を示す模式断面図である。
図2】実施形態2に係る断熱シートを用いた電源装置を示す斜視図である。
図3図1の電源装置のII-II線における垂直断面図である。
図4】実施形態2に係る断熱シートを示す拡大模式断面図である。
図5】二次電池セル同士の間を従来の断熱シートで断熱した構成において、ホットスポットが発生した状態を示す模式断面図である。
図6】パウチ型二次電池セル同士の間を実施形態2に係る断熱シートで断熱した構成において、ホットスポットが発生した状態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに限定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
[実施形態1]
【0024】
熱拡散シートは、様々な発熱体の放熱部材として利用することができる。発熱体には、例えば電動自動車やハイブリッド車、電動スクータ、電動カート等の車両の走行用の電源装置に用いられる二次電池セルや、電動工具、コードレス掃除機等の電動機器用、スマートフォンやモバイルブースタ等の携帯型電子機器用の電池パック、あるいはCPUやGPU、DSP、SoC、マイコン等の演算素子、トランジスタ等の駆動素子、LED、O-LED、液晶等の発光素子、ハロゲンランプ等の光源、モータ等の駆動部品等が好適に挙げられる。ここでは、実施形態1として放熱シートを二次電池に適用した例を説明する。ここでは、図1の模式断面図に示すように発熱体HGである二次電池と、放熱器HSである冷却フィンとの間に熱拡散シート20を熱的に結合した放熱装置1000を構成している。
(熱拡散シート20)
【0025】
実施形態1に係る熱拡散シート20は、外添された樹脂を含む抄紙シートで構成された基材シートを備える。この熱拡散シート20は、厚さ方向の熱伝導率が、1.00W/m・K以上である。この構成により、樹脂を外添することで熱拡散シート20の柔軟性を向上できる。また、湿式抄紙において抄紙用スラリーに樹脂を配合する内添法の場合は、水系樹脂しか使用できない上、定着剤などを併用して添加する必要があるため固くなり易いところ、外添とすることでこれらの課題を回避できる。
【0026】
外添方法は既知のものが、すなわち含浸法、カーテンコーター、ブレードコーター、キスコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ファウンテンコーター、スクリーンコーター等が使用できる。中でもシート内部まで樹脂を浸透させる点から、含浸法が好適に使用できる。
【0027】
また熱拡散シートの面方向の熱伝導率を、厚さ方向よりも高くすることが好ましい。これにより、熱を面方向に拡散させ易くして、ホットスポットの発生を阻止、抑制することができる。面方向の熱伝導率は、5.00W/m・K以上とすることが好ましい。また熱拡散シートの面方向の熱伝導率を1000W/m・K以下とすることが好ましい。
【0028】
また熱拡散シートの厚さ方向の熱伝導率を1.00W/m・K以上、好ましくは2.00W/m・K~20.00W/m・K、より好ましくは2.50W/m・K~15.00W/m・Kとする。あるいは熱拡散シートの厚さ方向の熱伝導率を、3.00W/m・K以下としてもよい。
【0029】
このような熱拡散シートは、十分な熱伝導性を発揮させるため、有機繊維や熱伝導性を有するフィラーを含むことが好ましい。有機繊維は、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリイミド繊維、ポリエチレン繊維、アクリル繊維、炭素繊維、PBO繊維、ポリ酢酸ビニル繊維、レーヨン繊維、難燃レーヨン繊維、ポリビニルアルコール繊維、エチレンビニルアルコール繊維、金属繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、フッ素繊維、パラアラミド繊維、パラアラミドパルプ、メタアラミドパルプ、PET繊維、難燃PET繊維のいずれかを利用できる。
【0030】
また熱伝導フィラーには、窒化硼素、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナシリケート、シリコン、鉄、炭化珪素、炭素、黒鉛、シリカ、アルミニウム、銅、銀、酸化アルミニウム、アルミニウム、銅、カーボンナノチューブ等が利用できる。
【0031】
さらに熱拡散シートに、無機繊維を含めてもよい。無機繊維には、カーボン繊維、ガラス繊維、セラミック繊維等が利用できる。また湿式抄紙シートで構成した基材シートは、熱カレンダーロール等による、加圧加工を行ってもよい。これにより内部を緻密化して、熱伝導率を高めることができる。
【0032】
熱拡散シートは、厚さを0.02mm~0.5mm、好ましくは0.03mm~0.4mm、より好ましくは0.03mm~0.3mmとする。
【0033】
さらに、基材シートの粉落ちを抑制できる利点も得られる。特に電子回路等の近傍で使用される熱拡散シートは、粉落ちによる異物で導電性が阻害される、あるいは導電性の粉体による意図しない短絡の発生等の不具合を阻止できる。また携帯型機器の電源のように、携行されて、落下や衝突による衝撃を受ける可能性がある用途、あるいは車両のように振動に晒される用途においても、樹脂を外添して粉落ちし難くした熱拡散シートは、好適に利用できる。
【0034】
熱拡散シートの密度は、0.2g/cm3~2.0g/cm3とすることが好ましい。このように低密度に抑えることで、柔軟性や可撓性を担保して、発熱体や放熱部材の接触面や押圧面を適宜変形させて、空気層の形成を避け、優れた熱結合を発揮できる。例えば、充電や放電により膨張、収縮する二次電池セルのような、発熱体が変形する場合でも、このような変形に対する追従性を高めて優れた熱結合を維持できる。
【0035】
熱拡散シートは、樹脂の含有量を調整することで、難燃性や不燃性を発揮させることができる。具体的には、樹脂の含有量を1%~20%に、好ましくは1~10%に抑えることで、高温に晒されても燃え難く、安全性や信頼性を高めた熱拡散シートを得ることができる。
【0036】
さらに熱拡散シートは、十分な柔軟性を備えている。具体的には、JIS L1096:2010ハンドルオメータ法による剛軟度測定値が0.1~13mN/100mmであることが好ましい。さらに好ましくは、0.1~10mN/100mmとする。剛軟度が13mN/100mmを超えると、発熱体や放熱部材との接触面の追従性が不足する結果として、熱拡散性能が低下する。また、剛軟度が0.1mN/100mmに満たないと、シートの成形、組付け等の作業性が低下する。
(湿式抄紙)
【0037】
基材シートは、繊維と熱伝導フィラーを含む材料を水に懸濁した抄紙スラリーを、ワイヤーメッシュ上で濾水することでシートを得る湿式抄紙法で得ることができる。抄紙機械としては円形又は正方形のバッチ式抄紙機、若しくはワイヤーをベルト状に繋いだ連続式抄紙機が使用できる。連続式抄紙機は既知のものが使用でき、例えば円網式、長網式、短網式、傾斜短網式、ツインワイヤ式等が挙げられる。ワイヤー上で濾水されながらシートを形成することで、黒鉛や六方晶窒化硼素等の扁平形状、又は繊維形状や楕円形状といった非球状の熱伝導フィラーを、シートの面方向に好適に配向させられるため、得られる熱拡散シートの面方向の熱伝導率を、厚さ方向よりも高くすることが容易となる。濾水して得られた湿潤シートに、均一性や密度を高める目的でプレスロールによる加圧加工を施してもよい。湿潤シートの乾燥には、蒸気又は電気を用いたヤンキードライヤ、シリンダードライヤ等が使用できる。
(樹脂)
【0038】
湿式抄紙された抄紙シートに外添する樹脂は、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリル酸樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の合成樹脂の他に、アクリルニトリルブタジエンゴム、水素化アクリルニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、アクリルニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレーンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フッ化シリコーンゴム、クロロスルフォン化ゴム、エチレン酢ビゴム、塩化ポリエチレン、塩化ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルイソプレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴムを使用できる。
[熱拡散シートの製造方法]
【0039】
このような熱拡散シートの製造方法は、繊維と熱伝導粉末とを水に懸濁した抄紙用スラリーを湿式抄紙するものである。また抄紙したシートを、カレンダー、プレス等で高密化してもよい。例えば繊維と熱伝導粉末とを水に懸濁して抄紙用スラリーとし、この抄紙用スラリーを湿式抄紙してシート状とした、厚さ方向の熱伝導率を1.00W/m・K以上とする基材シートを準備する。そして基材シートに、樹脂を外添する。また基材シートに樹脂を外添する工程は、含浸又は塗工により行うことができる。
【0040】
熱拡散シートは、以下のようにして製造される。まず、図3Aに示すように、形状異方性を発揮する黒鉛フィラー11と、有機繊維12を湿式抄紙する。このとき、黒鉛放熱シート1Aの組成は、黒鉛含有量を50~95wt%、有機繊維含有量を5~50wt%とすることが好ましい。ここでは、有機繊維12を湿式抄紙することで、従来のマトリックス樹脂で黒鉛を保持する構成と比べ、より多くの黒鉛を含有させることができるので、熱伝導性の観点から有利となる。また有機繊維12は、パラアラミド繊維、パラアラミドパルプ、メタアラミド繊維、メタアラミドパルプ、ポリフェニレンサルファイド繊維、PET繊維、難燃PET繊維、難燃レーヨン繊維のいずれか一以上を利用できる。
【0041】
次に、図3Bに示すように湿式抄紙されたシート材を、熱プレスする。さらに、熱プレスされたシート材を、所定の大きさにカットして、複数の黒鉛放熱シート1Aを得る。このように、湿式抄紙されたシート材を熱プレスすることで、黒鉛フィラー11同士の接触面積を大きくして熱伝導パスが構成され易くなり、結果としてプレス方向と交差する方向への熱伝導性が向上される。また黒鉛放熱シート1Aの厚さは、プレスにより調整される。なお、基材シート1は、図2Aに示すように、幅(W)を5cm~250cmとし、全長(L)を30cm以上とし、厚さ(t)を、0.05mm~0.5mmとする。基材シート1は、ロール状に巻き取られた原紙を使用する場合、最大で5000m程度のものまで使用できる。
[比較例1~2]
【0042】
比較例1~2、実施例1~2に係る断熱シートを作成した。まず、有機繊維10%、黒鉛粒子90%を混合して抄紙用スラリーを準備し、坪量150g/m2となるよう、熊谷理器製角型シートマシンを用いて比較例1に係る断熱シートを作成した。また、さらに比較例1に係る断熱シートを圧力5MPa、温度180℃、5分間の熱プレスにより高密化して比較例2に係る断熱シートを作成した。
[実施例1~2]
【0043】
一方で、比較例1と同じ条件で抄紙を行い、さらにワイヤーバーコーターによりアクリルシリコーン樹脂をシート重量に対して8%含浸させた実施例1に係る断熱シートを作成した。また、実施例1に係る断熱シートを比較例2と同様の手順で高密化して、実施例2に係る断熱シートを作成した。以上のようにして得られた各断熱シートに対し、性能評価を行った。
(熱伝導率)
熱伝導率について、レーザーフラッシュ法を用いて測定した。この結果を、表1に示す。なお、測定機器には、Netzsch社製熱伝導率測定装置LFA447 NanoFlashを用いた。比較例2、実施例2とも、比較例1、実施例1との比較によれば熱プレスにより高密化することで熱伝導率は13~14倍に上昇した。
(柔軟性)
柔軟性評価試験を行った。ここでは、JIS L1096:2010ハンドルオメータ法による剛軟度測定値を用いた。測定装置は安田精機製作所製ハンドルオメータを用いて、試料受板のクリアランスを30mmとして測定を行った。この結果を、表1に示す。比較例2は、熱プレスにより高密化することで剛軟度が増加し、硬くなったことを示しているが、実施例2は、高密化することで逆に剛軟度が減少し柔軟となった。減少幅は実施例1から実施例2では約42%であり、比較例1から比較例2では約21%の上昇であった。以上の結果から、樹脂を外添することによって、プレスで高密化して熱伝導率を高めつつ、同時に柔軟性も上昇させるという本来なら相反する効果を得られることが確認された。
【0044】
【表1】
[実施形態2]
【0045】
また上述した実施形態に係る熱拡散シートを複数枚積層して、放熱材や断熱材を構成してもよい。この際、熱拡散シートを断熱シートと組み合わせてもよい。例えば、断熱性を有する中間層の両面に、表面層として実施形態に係る熱拡散シートを用いた三層構造の断熱シートを構成することもできる。このような例を、実施形態2に係る断熱シートとして、図2図6に基づいて説明する。
【0046】
断熱シートは、断熱性が求められる用途に適宜利用できる。例えば冷蔵庫や冷凍庫等を断熱する断熱材、建材用の断熱シート等に用いることができる。ここでは、二次電池セルを多数積層して直列や並列に接続した電源装置において、隣接する二次電池セル同士の間に介在されるスペーサとして、断熱シートを用いる例を説明する。このような電源装置は、電気自動車やハイブリッド自動車、電動バス、電車、電動カート等の電動車両の駆動用電源として、あるいは工場や基地局のバックアップ電源用、さらには家庭用の蓄電池として利用される。
【0047】
実施形態2に係る断熱シートを用いた電源装置を、図2の斜視図及び図3の垂直断面図に示す。これらの図に示す電源装置100は、複数の二次電池セル1と、二次電池セル1同士の間に介在される断熱シート10とを備える。このように二次電池セル1と断熱シート10とを交互に積層して、電池積層体を構成している。また電池積層体の側面には、必要に応じて側板2が配置される。側板2は、二次電池セル1の側面と熱的に結合されて、熱伝導により放熱する放熱板として機能する。
(断熱シート10)
【0048】
隣接する二次電池セル1同士の間には、断熱シート10が介在される。断熱シート10は、スペーサやセパレータ等と呼ばれ、隣接する二次電池セル1間を断熱して類焼を防止または抑制するための部材である。また断熱シート10は、その上端や下端、側面などを放熱板などと熱的に結合して、放熱部材として機能させることもできる。例えば電池積層体の上下に放熱フィンを配置し、断熱シートの上下端をそれぞれ放熱フィンと熱結合することができる。
(二次電池セル1)
【0049】
リチウムイオン二次電池などの二次電池セル1は、充電や放電を繰り返すことで、外装材が膨張する。このため断熱シート10は、二次電池セル1との間に隙間を設けて配置することが好ましい
(断熱シート10)
【0050】
断熱シート10の拡大断面図を、図4に示す。この図に示す断熱シート10は、中間層11と、この中間層11を挟むように、両面に積層された表面層12で構成される。
【0051】
これら中間層11と表面層12とで、熱伝導率を異ならせている。具体的には、中間層11の厚さ方向の熱伝導率を、0.50W/m・K以下とし、表面層12の厚さ方向の熱伝導率を1.00W/m・K以上としている。このように絶縁シートを、各表面層12を熱伝導率を高めた放熱層としつつ、間に介在される中間層11を断熱性を高めた断熱層とした多層構造とすることで、ホットスポットの発生を効果的に解消しつつ、類焼防止を図ることが可能となる。
【0052】
ここで表面層として用いる実施形態1に係る熱拡散シートの面方向の熱伝導率は、上述の通り厚さ方向の5倍以上とすることが好ましい。これにより、断熱性能の高い中間層と組み合わせた断熱シートの断熱性能を向上させることができる。この結果、表面層が薄くとも断熱性能に優れた断熱シートを実現できる。
【0053】
従来の断熱シートでは、類焼防止の観点から断熱性能の高い、換言すると熱伝導率の低い材質で構成されていた。この結果、図5の模式断面図に示すように、二次電池セル1の一部が局所的に高温になるホットスポットHSが発生しても、この高熱を断熱シート10Xで熱伝導して放熱することができなかった。この結果、熱の逃げ場のないホットスポットHSが益々高温となって、ついには燃焼して熱暴走する可能性があった。しかしながら断熱シートの熱伝導率を上げると、断熱性能を発揮できなくなって隣接する二次電池セルに高温が伝搬してしまい、類焼の発生を抑制できず、断熱シートの本来の機能を発揮できないという矛盾があった。
【0054】
これに対し本実施形態に係る断熱シート10では、表面層12を熱伝導率を高めた放熱層として、パウチ型二次電池セル1に対向させている。これによって図6の模式断面図に示すように、高い熱伝導性能によってホットスポットHSの熱が表面層12の全面に熱伝導され、ホットスポットHSから熱を奪うことで局所的な高温を抑制して全体の均熱化を図ることができる。その一方で、これら表面層12の間には断熱性能を高めた中間層11を配置することで、隣接する他のパウチ型二次電池セル1への熱伝導を阻止して、類焼の発生を抑制する。このように、断熱シート10を多層構造として、表面層12には放熱機能を付加してホットスポットを抑制し、中間層11には断熱機能を付加して類焼を防止することで、従来実現困難であった、放熱性能と断熱性能という相反する機能を両立させて、安全性を高めている。
(中間層11)
【0055】
中間層11は、厚さ方向の熱伝導率を0.50W/m・K以下、より好ましくは0.01W/m・K~0.30W/m・K、さらに好ましくは0.02W/m・K~0.20W/m・Kとする。このような中間層11は、十分な断熱性能を発揮させるため、繊維、充填材、バインダのいずれかを含むことが好ましい。
【0056】
ここでは、断熱シート10の中間層11は、繊維基材と、充填材と、結合材を含む。好適には、繊維基材として天然パルプと無機繊維、充填材として珪酸塩鉱物、結合材としてゴム組成物を利用できる。具体的には、実施形態2に係る中間層11は、繊維基材として麻パルプとマイクロガラス、充填材としてタルクとセピオライト、結合材としてNBRを含んでいる。
【0057】
繊維基材(基材繊維とも呼ぶ。)は、ガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維などの無機繊維や、あるいは芳香族ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維などの有機繊維が利用できる。ここでは、繊維基材として有機繊維の天然パルプを用いている。天然パルプには麻パルプが好適に利用できる。麻パルプの配合比率は、例えば5重量%~20重量%、好ましくは10重量%とする。
【0058】
また繊維基材として、無機繊維を含めてもよい。無機繊維の配合比率は、5重量%~20重量%、好ましくは8重量%~15重量%とする。実施形態2においては、無機繊維としてマイクロガラスを12重量%添加している。
【0059】
充填材は、無機の充填材が利用できる。無機充填材としては、セピオライト、タルク、カオリン、マイカ、セリサイト等の珪酸塩鉱物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ハードクレー、焼成クレー、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ウォラストナイト、重炭酸ナトリウム、ホワイトカーボン・溶融シリカ等の合成シリカ、珪藻土等の天然シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ガラスビーズ等が挙げられ、これらは単独又は複数を組み合わせて用いられる。これらの無機充填材の添加は、高温雰囲気下の形状維持と断熱性向上といった効果を示す。実施形態2においては、可撓性が高いタルクを用いた。充填材の配合量は断熱シート中、5重量%~65重量%が好ましい。実施形態2においては、充填材として珪酸マグネシウムを用い、タルクを58重量%、セピオライトを14重量%添加している。
【0060】
結合材には、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリル酸樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の合成樹脂の他に、アクリルニトリルブタジエンゴム、水素化アクリルニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、アクリルニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレーンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フッ化シリコーンゴム、クロロスルフォン化ゴム、エチレン酢ビゴム、塩化ポリエチレン、塩化ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルイソプレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等が利用できる。中でも、アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)が、耐水性、耐油性が高い点で好ましい。これらのゴムは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、より高い耐水性、耐油性を目的にアルキルケテンダイマー等のサイズ剤やフッ素系、シリコーン系の撥水剤を組合わせて使用することもできる。結合材にゴム組成物を用いる場合、ゴムの配合量は断熱シート中、5.0~40重量%が好ましい。ここではNBRであるニポール1562を6.0重量%添加している。
【0061】
さらに添加剤として、紙力剤や定着剤、消泡剤等の薬品類を加えている。ここでは紙力剤としてWS4030を0.5重量%、紙力剤としてコーガム15Hを0.3重量%、定着剤として硫酸バンドを1.9重量%、消泡剤としてKM-70を適量添加している。
【0062】
中間層11は、厚さを1mm~5.5mm、好ましくは0.15mm~2mm、より好ましくは0.2mm~1mmとする。この中間層11は、一層で構成する他、層状に構成したガラス繊維層やセラミック繊維層等の無機繊維層を複数層積層して構成してもよい。また無機繊維は、繊維長13mm以上のものが圧縮復元性の観点から好適に使用できる。より好ましくは40mm以上、さらに好ましくは、切断されていない長繊維のものである。
(接着層)
【0063】
中間層11と表面層12とは、接着材で接着される。接着材を硬化させた接着層が、中間層11と表面層12との間に介在される。接着材は、耐熱性に優れた材質が好ましい。このような接着材としては、アクリル系接着材、塩化ビニル系接着材、酢酸ビニル系接着材、ホットメルト等が利用できる。接着剤の形態は液状、スラリー状のほか、ホットメルト接着剤を不織布又は網状に成型した熱融着シート等が利用できる。
【0064】
また断熱シート10の全体の厚さは、0.2mm~6.0mm、好ましくは0.2mm~4.0mm、より好ましくは0.3mm~2.0mmとする。
【0065】
さらに断熱シート10は、柔軟性、可撓性を備えている。これによって、図6の断面図に示すように二次電池セル1が膨張した際、このような二次電池セル1の変形に追従して、密着状態を維持し、空隙の形成によって熱伝導性が低下する事態を回避できる。特に従来の断熱シートは、硬質のものが多く、変形に対する追従性が低いため、接触面に空隙が形成されて空気層による断熱効果のため、熱伝導性が低下することがあった。断熱シートが類焼防止のため断熱性能を発揮させることを目的としている場合は、空気層によって断熱性能が一層向上するため、硬質の断熱シートは却って好都合であった。これに対し本実施形態に係る断熱シート10のように、表面層12は放熱性能を発揮させるためには、このような硬質材よりも、可撓性や柔軟性を有する断熱シート10とすることで、熱伝導率の高い状態を維持して放熱性能を発揮させることができる。
【0066】
また断熱シート10に柔軟性、可撓性を持たせることで、ロール材などの巻取材に巻取可能となり、ロール状での保管、運搬が可能となって、ハンドリング性も向上される。ここでは可撓性を発揮させるため、断熱シート10の片面に外径110mmの円筒を当てて90°折り曲げた際、皺又は割れが生じないこととすることができる。
【0067】
さらに断熱シート10は、耐熱性や難燃性を備えることが望ましい。二次電池セル1が高温になっても、変形や溶融し難い材質とすることで、断熱性能を維持することが可能となる。好ましくは、断熱シート10の溶融温度を400℃以上とする。より好ましくは、600℃以上とする。さらに、JIS L 1091 A-1法(1999)試験における燃焼面積を500mm2以下に抑えることが好ましい。
(断熱シート10の製造法)
【0068】
ここで断熱シート10は、例えばロール状とした中間層11及び表面層12の間に、熱融着シートを挟み込み、2本の熱圧着ロールの間を通過させ接着することで、ロールtoロールの製造が可能である。また、中間層11ないし表面層12の片面あるいは両面に液状の接着剤を塗工し、貼り合わせてもよい。後述する実施例1~4及び比較例1~2では、中間層11と表面層12の間にポリエチレン製熱融着シートを挟み、150℃のホットプレスで、50kPaにて20秒間加圧し接着させた。
【0069】
以上の例では、断熱シート10を、中間層11の両面をそれぞれ単層の表面層12で被覆した三層構造とする構成を説明した。ただ本発明は、このような三層構造に限定するものでなく、例えば表面層を複数層としたり、中間層を複数層とするなど、四層以上の多層構造とすることもできる。あるいは、用途によっては中間層の片面のみに表面層を設けた二層構造としても良い。
【0070】
また図2の例では、二次電池セル1を縦置きの姿勢としているが、二次電池セルを横置きの姿勢とする電源装置においても、断熱シートを同様に適用できることはいうまでもない。
【0071】
さらに断熱シート10は、二次電池セル間の断熱のみならず、複数の二次電池セルで構成された電池モジュール同士の間の断熱に利用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の熱拡散シートは、発熱体の放熱部材として好適に利用できる。このような発熱体としては、車両、電車、船舶などの移動体用の駆動電力を供給する電源装置、アシスト自転車や電動スクータ等の電動二輪車、電動ゴルフカートやドローン、電力貯蔵用システム等に用いられる二次電池、あるいは電動工具やコードレス掃除機等の携帯型電気機器、スマートフォンやモバイルブースタ等の携帯型電子機器用の電池パック等が挙げられる。またコンピュータに内蔵されるCPUやMPU、GPU、SoC等の電子部品やLED、液晶、PDP、EL、携帯電話等の発光素子等の電子部品の放熱シート等としても好適に利用できる。また、車両用のヘッドライト、電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両用の電源として用いられる電池ブロック、半導体駆動素子やMCU等の発熱体とヒートシンクとの間に介在される緩衝シートとしても好適に利用できる。
【符号の説明】
【0073】
1000…放熱装置
100…電源装置
1…二次電池セル
2…側板
10、10X…断熱シート
11…中間層
12…表面層
20…熱拡散シート
HG…発熱体
HS…放熱器
図1
図2
図3
図4
図5
図6