(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086108
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】巻線端末絡げ装置
(51)【国際特許分類】
H01F 41/076 20160101AFI20220602BHJP
【FI】
H01F41/076
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197949
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】513201125
【氏名又は名称】グッドファーマー技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155882
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100154678
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 博子
(72)【発明者】
【氏名】大川 好久
(72)【発明者】
【氏名】大川 隆
【テーマコード(参考)】
5E002
【Fターム(参考)】
5E002AA18
(57)【要約】
【課題】切断後の巻線端末を端子に絡げる絡げ工程において、巻線端末を把持する把持部がなくても自動化でき、歩留まり率の向上と時間の短縮を実現できる巻線端末絡げ装置を提供する。
【解決手段】巻線端末絡げ装置1は、回転部21を有する装置本体2と、装置本体2に取り付けられる巻線ガイド3と、を備える。巻線ガイド3は、基部41が回転部21に固定されるとともに周方向に回転可能な柱状部4と、柱状部4の端部42から延びるスペーサ5と、スペーサ5の下端に位置するフック6と、を備える。そして、柱状部4の端部42とフック6との間にスペーサ5によって空隙10が形成され、コイル7a、7bの巻線端末71a~71dが空隙10に位置する状態で、巻線ガイド3が回転することによって、巻線端末71a~71dが端子8a~8dの絡げ部81a~81dに絡げられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子の棒状の絡げ部にコイルの巻線端末を絡げる巻線端末絡げ装置であって、
回転部を有する装置本体と、
前記装置本体に取り付けられる巻線ガイドと、
を備え、
前記巻線ガイドは、
基部が前記回転部に固定されるとともに周方向に回転可能な柱状部と、
前記柱状部の端部から延びるスペーサと、
前記スペーサの下端に位置するフックと、
を備え、
前記端部と前記フックとの間に前記スペーサによって空隙が形成され、
前記巻線端末が前記空隙に位置する状態で、前記巻線ガイドが回転することによって、前記巻線端末が前記絡げ部に絡げられる
ことを特徴とする巻線端末絡げ装置。
【請求項2】
前記柱状部は、前記端部に位置する収容部を備え、前記収容部に前記絡げ部を収容可能であり、
前記巻線ガイドは、前記絡げ部の長手方向と直交する方向から前記絡げ部に接近することによって前記絡げ部を前記収容部に収容した後、前記絡げ部を回転中心として回転する
ことを特徴とする請求項1記載の巻線端末絡げ装置。
【請求項3】
前記フックは、離間する一方の端及び他方の端を備え、
前記空隙は、前記端部と前記一方の端との間、及び前記端部と前記他方の端との間の両方に形成される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の巻線端末絡げ装置。
【請求項4】
前記柱状部は、前記端部に向かって周側の外径が小さくなるテーパ部を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の巻線端末絡げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルの巻線端末を端子に絡げる巻線端末絡げ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コイル部品の製造方法として、コイルの巻線をボビン又はコアに巻回する巻回工程、巻線端末の余長部を切断する切断工程、切断後の巻線端末を端子に絡げる絡げ工程、絡げた後の巻線端末と端子のはんだ付けを行うはんだ付け工程の順に行う製造方法が知られている。この製造方法において、絡げ工程を自動化する場合、歩留まり率の向上と時間の短縮が課題となる。
【0003】
特許文献1には、巻線の端部を端子にからげるためのからげ治具が公開されている。特許文献1に記載のからげ治具は、円柱片端面に偏心有底孔と円柱側面の切り欠きと、円柱片端面に設けた横溝と、これに繋がる縦溝と先の切り欠き下端部の半円台に設けられたV溝を備えた構造である。
【0004】
特許文献1に記載のからげ治具を用いるからげ作業では、人手によって、上向きのピン端子の根元の右側にからげ線(=巻線端末)を添わせて水平に延ばしてから、偏心有底孔にピン端子を差し込んで横溝にからげ線を嵌め込んで通した後、からげ線の自由端を持ち上げて縦溝に通し、V溝に密着させて外方に延ばす。この状態が、からげ線を本発明のからげ治具に取り付けた状態である。この状態でからげ治具をピン端子の根元側に押圧しながら、右回りにピン端子を軸に回転する。からげ線の自由端をV溝に密着させて外方に延ばしているので、からげ治具が回転している間、からげ線が縦溝から逃げることがなく、ピン端子にからげ線を十分にからげることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、人手を用いず、特許文献1に記載の技術を絡げ工程の自動化に適用した場合、巻線端末を縦溝に通し、更に切込み幅が狭いV溝に密着させて外方に延ばすことが困難である。仮に、巻線端末を縦溝に通し、V溝に密着させて外方に延ばさなければ、からげ治具が回転している間、巻線端末が途中で縦溝から逃げてしまい、ピン端子にからげ線を十分にからげることができず、歩留まり率が低くなる。一方、巻線端末を縦溝に通し、V溝に密着させて外方に延ばすためには、製造装置に巻線端末を把持する把持部が必要となるが、把持部が所定の位置から移動し、巻線端末を把持するまでの時間が余計にかかってしまう。
【0007】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすることは、切断後の巻線端末を端子に絡げる絡げ工程において、巻線端末を把持する把持部がなくても自動化でき、歩留まり率の向上と時間の短縮を実現できる巻線端末絡げ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するための本発明は、端子の棒状の絡げ部にコイルの巻線端末を絡げる巻線端末絡げ装置であって、回転部を有する装置本体と、前記装置本体に取り付けられる巻線ガイドと、を備え、前記巻線ガイドは、基部が前記回転部に固定されるとともに周方向に回転可能な柱状部と、前記柱状部の端部から延びるスペーサと、前記スペーサの下端に位置するフックと、を備え、前記端部と前記フックとの間に前記スペーサによって空隙が形成され、前記巻線端末が前記空隙に位置する状態で、前記巻線ガイドが回転することによって、前記巻線端末が前記絡げ部に絡げられることを特徴とする巻線端末絡げ装置である。本発明によって、巻線端末を把持する把持部がなくても、絡げ工程を自動化することができ、歩留まり率の向上と時間の短縮の両方を実現することができる。特に、巻線端末が絡げ工程の途中でフックから外れることがなく、歩留まり率が向上する。また、巻線端末を把持する時間が不要なので、絡げ工程の時間を短縮できる。
【0009】
前記柱状部は、前記端部に位置する収容部を備え、前記収容部に前記絡げ部を収容可能であり、前記巻線ガイドは、前記絡げ部の長手方向と直交する方向から前記絡げ部に接近することによって前記絡げ部を前記収容部に収容した後、前記絡げ部を回転中心として回転するようにしても良い。これによって、巻線ガイドの移動中に巻線端末がフックから外れることを防止できるとともに、巻線ガイドと巻線端末との当接箇所が絡げ部に接近した状態で絡げることができるので、歩留まり率が向上する。
【0010】
前記フックは、離間する一方の端及び他方の端を備え、前記空隙は、前記端部と前記一方の端との間、及び前記端部と前記他方の端との間の両方に形成されるようにしても良い。これによって、巻線端末との位置関係に応じて巻線ガイドの移動距離が小さくなるように、巻線端末と近接又は当接させる場所を2箇所から選択できる。従って、単一のコイル部品に対して、複数の巻線端末を、それぞれ異なる端子の絡げ部に絡げる場合であっても、絡げ工程の時間を短縮できる。
【0011】
前記柱状部は、前記端部に向かって周側の外径が小さくなるテーパ部を備えるようにしても良い。これによって、巻線端末が柱状部の端部に引っ掛かることを防止し、空隙内において巻線ガイドと巻線端末とを確実に近接又は当接させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、切断後の巻線端末を端子に絡げる絡げ工程において、巻線端末を把持する把持部がなくても自動化でき、歩留まり率の向上と時間の短縮を実現できる巻線端末絡げ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】巻線端末絡げ装置の動作の流れを示すフローチャート
【
図3】ステップS1~S3における巻線端末絡げ装置の動作を模式的に示す図
【
図4】ステップS4~S6における巻線端末絡げ装置の動作を模式的に示す図
【
図5】ステップS6~S8における巻線端末絡げ装置の動作を模式的に示す図
【
図6】他の実施形態における巻線ガイド3を模式的に示す図
【
図7】他の実施形態における巻線ガイド3を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。巻線端末絡げ装置1は、コイルの巻線端末を端子の棒状の絡げ部に絡げる装置である。
図1に示すように、巻線端末絡げ装置1は、装置本体2と、装置本体2に取り付けられる巻線ガイド3とを備える。装置本体2は、時計回り又は反時計回りに回転する回転部21を有する。回転部21は、図示しないモータ等の回転機構により回転するとともに、三次元方向に移動可能なアームに固定される。
【0015】
巻線ガイド3は、回転部21に固定されることによって、回転部21の回転に伴って周方向に回転する。巻線ガイド3は、基部41及びその反対に位置する端部42を有し、基部41が回転部21に固定されるとともに周方向に回転可能な柱状部4と、柱状部4の端部42から下方に向かって延びるスペーサ5と、スペーサ5の下端に位置するフック6とを備える。柱状部4の端部42とフック6との間には、スペーサ5によって空隙10が形成される。
【0016】
柱状部4は、回転部21の回転軸と一致する回転中心を有するとともに、端部42に位置する収容部44を備える。この実施形態において、柱状部4は中空である円筒形であり、周側43の切り欠き45によって周側43の外側と中空とが連通して開口部となり、収容部44が構成されている。
図3(a)に示す端子8a~8dの絡げ部81a~81dは、後述する
図2に示す処理によって、周側43の外側に衝突せずに、収容部44の開口部としての周側43の切り欠き45から、収容部44内部である周側43の内側に収容される。
【0017】
スペーサ5は、柱状部4の周側43の一部が突出したものであり、柱状部4と同一部材により構成される。スペーサ5及び周側43の切り欠き45は、柱状部4の長手方向の中心軸を介して対向する。
【0018】
フック6は、離間する一方の端61及び他方の端62と、一方の端61及び他方の端62の間を繋ぐ弧状部63とを備える。空隙10は、柱状部4の端部42と一方の端61との間、及び柱状部4の端部42と他方の端62との間の両方に形成される。この実施形態において、フック6は、柱状部4及びスペーサ5と同一部材により構成され、弧状部63の一方の端61から他方の端62までの中心がスペーサ5に連接される。一方の端61と他方の端62との離間部の上部(=図面上方)には、周側43の切り欠き45が位置する。弧状部63の半径は、柱状部4の半径よりも大きい。
【0019】
上記のような巻線ガイド3は、回転部21が回転することによって、柱状部4、スペーサ5及びフック6が一体的に同一の回転中心で回転する。巻線ガイド3は、後述する
図4(b)~
図5(b)に示すように、端子8a~8dの絡げ部81a~81dが収容部44に収容された状態で、絡げ部81a~81dを回転中心とし、絡げ部81a~81dの長手方向を回転軸として、端子8a~8dの絡げ部81a~81dに接触することなく回転する。そして、コイル7a、7bの巻線端末71a~71dが空隙10に位置する状態で、巻線ガイド3が回転することによって、巻線端末71a~71dが絡げ部81a~81dに絡げられる。
【0020】
巻線端末絡げ装置1は、
図2に示すフローチャートに従って動作し、
図3~
図5に示すコイル7a、7bの巻線端末71a~71dを端子8a~8dの絡げ部81a~81dに絡げる装置である。
図3~
図5に示すコイル部品の例では、1個のコア91に2個のコイル7a、7bが巻回されている。
【0021】
コイル部品は、コイル7a、7b、コア91及び筐体92から構成され、位置決め用の治具93に固定されている。巻線端末71a、71bは、コイル7aの巻線の巻き始めと巻き終わりのコア91に巻回されていない部分である。同様に、巻線端末71c、71dは、コイル7bの巻線の巻き始めと巻き終わりのコア91に巻回されていない部分である。コイル7a、7bは、4個の端子8a~8dを有する筐体92に固定されている。端子8a~8dは、Z軸方向に伸びる棒状の絡げ部81a~81dを有する。巻線端末71a~71dは、それぞれ絡げ部81a~81dに絡げられる。
【0022】
巻線端末絡げ装置1の動作を分かり易く説明するために、
図3(a)を除く
図3(b)~
図5(c)では、コイル部品及び治具93の右半分が、端子8a(8c)と端子8b(8d)の間を通る切断面によって切断された状態で図示されている。
【0023】
本発明の実施形態におけるコイル部品の製造工程は、コア91にコイル7a、7bの巻線を巻回する巻回工程、巻線端末71a~71dの余長部を切断する切断工程、余長部が切断された後の巻線端末71a~71dを端子8a~8dに絡げる絡げ工程、絡げた後の巻線端末71a~71dと端子8a~8dのはんだ付けを行うはんだ付け工程を含む。
【0024】
巻回工程は、不図示の巻線巻回装置が行う。巻線端末71a~71dは、巻回工程が終了した段階で、不図示の切断装置によって、端子8a~8dに絡げるために適当な長さを残して、巻線を供給する不図示のノズル等から切断部72a~72dで切り離されている。本発明の実施形態に係る巻線端末絡げ装置1は、
図3(a)に示す状態のコイル部品に対して、絡げ工程を行う。はんだ付け工程は、不図示のはんだ付け装置が行うか、又は手作業によって行う。
【0025】
巻線端末絡げ装置1の回転部21は、不図示のアームに固定されて支持され、回転部21に固定される巻線ガイド3は、アームの移動に伴って、X軸、Y軸及びZ軸の三次元方向に移動可能である。また、回転部21に固定される巻線ガイド3は、Z軸方向の回転軸を中心にしてXY平面にて回転可能である。
【0026】
図3~
図5では、端子8a~8dの絡げ部81a~81dの長手方向をZ軸の方向、すなわち鉛直方向としているが、これに限定されず、絡げ部81a~81dの長手方向が水平方向であっても良いし、その他の方向でも良い。
【0027】
本発明の実施形態における巻線は、コイル7a、7bの占積率の向上が期待できる平角線である。但し、巻線の種類は平角線に限定されず、丸線であっても良いし、巻線の太さも限定されない。尚、柱状部4の端部42とフック6との間、すなわち空隙10は、Z軸方向の距離が、平角線であれば幅、丸線であれば直径よりもやや大きくなるように形成される。
【0028】
次に、
図2~
図5を参照しながら、巻線端末71aを端子8aに絡げる場合を例にして、巻線端末絡げ装置1の動作を説明する。
図2に示す処理は、巻線端末絡げ装置1に内蔵されるコントローラが、予めインストールされるプログラムを実行することによって実現される。そして、巻線端末絡げ装置1の指示により、巻線ガイド3は、後述する移動や回転の動作を行う。巻線端末71aは、巻線ガイド3の移動や回転に伴って塑性変形し、端子8aの絡げ部81aに絡げられる。
【0029】
図3~
図5において、X軸のプラス方向は、巻線端末71aがコイル7aから突出する方向、すなわち紙面の左から右へ向かう方向である。Y軸のプラス方向は、端子8b(8d)から端子8a(8c)へ向かう方向、すなわち紙面の手前側から裏側へ向かう方向である。Z軸のプラス方向は、端子8a~8dの筐体92への固定部から先端へ向かう方向、すなわち紙面の下から上へ向かう方向である。
【0030】
図3(a)に示す通り、初期位置では、巻線端末71aは、XZ平面において0度~90度の範囲内、望ましくは0度~45度の範囲内の所定の方向に突出している。巻線端末71aは、筐体92の内壁に当接するので、筐体92の内壁の形状によって、所定の方向に位置決めが可能である。
【0031】
ステップS1において、巻線ガイド3は、
図3(a)に示す所定の位置に移動する。具体的には、巻線ガイド3は、収容部44の開口部としての周側43の切り欠き45がY軸のマイナス方向に対向している状態で、Y軸のプラス方向からマイナス方向に向かって、巻線端末71aと当接する位置まで移動する。ここで、巻線ガイド3は、柱状部4の端部42とフック6の一方の端61との間の空隙10において巻線端末71aと近接又は当接する。
【0032】
ステップS2において、巻線ガイド3は、
図3(b)に示すように、XY平面上で時計回りに90度回転し、巻線端末71aをスペーサ5に近接又は当接させる。これによって、後述のステップS3及びS4の移動において、巻線端末71aがフック6の一方の端61から外れ難くなり、巻線端末71aを端子8aの絡げ部81aの周辺へ確実に位置決めすることができる。
【0033】
ステップS3において、巻線ガイド3は、
図3(c)に示すように、Z軸のマイナス方向からプラス方向、すなわち紙面の下から上に向かって、巻線ガイド3と巻線端末71aとの近接箇所又は当接箇所が、端子8aの絡げ部81aの高さになるまで移動する。
【0034】
ステップS4において、巻線ガイド3は、
図4(a)に示すように、X軸のプラス方向からマイナス方向に向かって、巻線ガイド3の回転軸RのX座標が端子8aの絡げ部81aの中心のX座標と一致する位置まで移動する。ここで、巻線ガイド3のY座標は、ステップS4の移動において、巻線ガイド3や巻線端末71aが筐体92や治具93と干渉しない位置とする。具体的には、巻線ガイド3や巻線端末71aは、筐体92や治具93よりも、紙面の奥側、すなわちY軸のプラス方向側に位置する。
【0035】
ステップS5において、巻線ガイド3は、
図4(b)に示すように、XY平面上で反時計回りに90度回転した後、Y軸のプラス方向からマイナス方向、すなわち紙面の奥から手前に向かって、巻線ガイド3の回転軸RのY座標が端子8aの絡げ部81aの中心のY座標と一致する位置まで移動する。
【0036】
仮に、巻線ガイド3がZ軸の方向、すなわち端子8aの絡げ部81aの長手方向から絡げ部81aに接近しようとすると、巻線ガイド3が端子8aの上部に移動している間に、巻線端末71aがフック6の一方の端61から外れてしまう。そこで、本実施の形態では、巻線ガイド3は、端子8aの絡げ部81aの長手方向(=
図3~
図5ではZ軸の方向)と直交する方向(=
図3~
図5ではY軸の方向)から絡げ部81aに接近することによって、絡げ部81aを収容部44に収容する。
【0037】
ステップS6において、巻線ガイド3は、
図4(c)~
図5(b)に示すように、端子8aの絡げ部81aを中心として、XY平面上で時計回りに回転する。より具体的には、巻線ガイド3は、巻線端末71aがスペーサ5に近接又は当接している状態で、絡げ部81aの長手方向を回転軸として回転する。これによって、巻線端末71aが絡げ部81aに絡げられる。本実施の形態によれば、巻線端末71aがフック6の一方の端61から外れ難いので、巻線端末71aを確実に絡げ部81aに絡げることができる。
【0038】
ステップS7において、巻線端末絡げ装置1は、巻線端末71aを端子8aの絡げ部81aに絡げために十分な回転数として、予め設定されている所定の回転数に到達したか否か確認する。所定の回転数に到達していない場合(ステップS7のNo)、巻線端末絡げ装置1は、ステップS6の処理を繰り返す。所定の回転数に到達している場合(ステップS7のYes)、巻線端末絡げ装置1は、ステップS8に進む。
【0039】
ステップS8において、巻線ガイド3は、Z軸のマイナス方向からプラス方向、すなわち紙面の下から上に向かって、巻線ガイド3が端子8aよりも高い位置になるまで移動する。
【0040】
以上の処理によって、巻線端末71aは、絡げ不良が発生することなく、端子8aの絡げ部81aに絡げられる。ここで、絡げ不良とは、絡げ後の巻線端末71aが絡げ部81aから外れてしまったり、絡げ部81aへの巻き数が少なくなってしまったりすることである。巻線端末71aが絡げ部81aから外れずに、巻き数が少なくとも2回以上であれば、絡げ工程が良好と言える。
【0041】
前述の説明では、巻線端末71aを端子8aの絡げ部81aに絡げる場合を例にしたが、巻線端末71b~71dを端子8b~8dの絡げ部81b~81dに絡げることも可能である。以下では、各巻線端末71b~71dに対する巻線ガイド3の動作を説明する。
【0042】
巻線端末71bに対しては、ステップS1、S2に代えて、巻線ガイド3は、収容部44の開口部としての周側43の切り欠き45がX軸のマイナス方向に対向している状態で、X軸のプラス方向からマイナス方向に向かって移動する。ここで、巻線ガイド3は、柱状部4の端部42とフック6の他方の端62との間の空隙10において、巻線端末71bと近接又は当接する。次に、巻線ガイド3は、Z軸のマイナス方向からプラス方向に向かって移動し(ステップS3)、X軸のプラス方向からマイナス方向に向かって移動し(ステップS4)、XY平面上で時計回りに90度回転した後、Y軸のマイナス方向からプラス方向に向かって移動し(ステップS5)、端子8bの絡げ部81bを中心として、XY平面上で反時計回りに回転する(ステップS6)。これによって、巻線端末71bが絡げ部81bに絡げられる。
【0043】
巻線端末71cに対しては、巻線ガイド3は、周側43の切り欠き45がY軸のマイナス方向に対向している状態で、Y軸のプラス方向からマイナス方向に向かって、巻線端末71cと当接する位置まで移動する(ステップS1)。ここで、巻線ガイド3は、柱状部4の端部42とフック6の他方の端62との間の空隙10において、巻線端末71cと近接又は当接する。次に、巻線ガイド3は、XY平面上で反時計回りに90度回転し(ステップS2)、Z軸のマイナス方向からプラス方向に向かって移動し(ステップS3)、X軸のマイナス方向からプラス方向に向かって移動し(ステップS4)、XY平面上で時計回りに90度回転した後、Y軸のプラス方向からマイナス方向に向かって移動し(ステップS5)、端子8cの絡げ部81cを中心として、XY平面上で反時計回りに回転する(ステップS6)。これによって、巻線端末71cが絡げ部81cに絡げられる。
【0044】
巻線端末71dに対しては、ステップS1、S2に代えて、巻線ガイド3は、周側43の切り欠き45がX軸のプラス方向に対向している状態で、X軸のマイナス方向からプラス方向に向かって移動する。ここで、巻線ガイド3は、柱状部4の端部42とフック6の一方の端61との間の空隙10において、巻線端末71dと近接又は当接する。次に、巻線ガイド3は、Z軸のマイナス方向からプラス方向に向かって移動し(ステップS3)、X軸のマイナス方向からプラス方向に向かって移動し(ステップS4)、XY平面上で反時計回りに90度回転した後、Y軸のマイナス方向からプラス方向に向かって移動し(ステップS5)、端子8dの絡げ部81dを中心として、XY平面上で時計回りに回転する(ステップS6)。これによって、巻線端末71dが絡げ部81dに絡げられる。
【0045】
以上の通り、本実施の形態における巻線端末絡げ装置1は、巻線端末71a~71dを把持する把持部がなくても、絡げ工程を自動化することができ、歩留まり率の向上と時間の短縮の両方を実現することができる。
【0046】
特に、柱状部4の端部42とフック6との間にスペーサ5を介して空隙10が形成され、コイルの巻線端末71a~71dは空隙10に位置し、巻線ガイド3が回転することにより巻線端末71a~71dを端子8a~8dの絡げ部81a~81dに絡げるので、巻線端末71a~71dが絡げ工程の途中でフック6から外れることがなく、歩留まり率が向上する。また、巻線端末71a~71dを把持する時間が不要なので、絡げ工程の時間を短縮できる。
【0047】
また、柱状部4は、端部42に位置する収容部44を備え、収容部44に絡げ部81a~81dを収容可能であり、巻線ガイド3は、絡げ部81a~81dの長手方向と直交する方向から絡げ部81a~81dに接近することによって絡げ部81a~81dを収容部44に収容した後、絡げ部81a~81dを回転中心として回転する。これによって、巻線ガイド3の移動中に巻線端末71aがフック6の一方の端61又は他方の端62から外れることを防止できるとともに、巻線ガイド3と巻線端末71aとの当接箇所が絡げ部81a~81dに接近した状態で絡げることができるので、歩留まり率が向上する。
【0048】
また、巻線ガイド3のフック6が、離間する一方の端61及び他方の端62を備え、空隙10が、柱状部4の端部42と一方の端61との間、及び柱状部4の端部42と他方の端62との間の両方に形成されるので、巻線端末71a~71dとの位置関係に応じて巻線ガイド3の移動距離が小さくなるように、巻線端末71a~71dと近接又は当接させる場所を2箇所から選択できる。従って、単一のコイル部品に対して、複数の巻線端末71a~71dを、それぞれ異なる端子8a~8dの絡げ部81a~81dに絡げる場合であっても、絡げ工程の時間を短縮できる。
【0049】
図6に他の実施形態における巻線ガイド3を示す。この実施形態では、柱状部4は、端部42に向かって周側43の外径が小さくなるテーパ部46を備えることを特徴とする。その他の構成については、
図1に示した実施形態と同様である。端部42にテーパ部46を設けることによって、
図3(a)に示す動作において、巻線端末71a~71dが柱状部4の端部42に引っ掛かることを防止し、空隙10内において巻線ガイド3と巻線端末71aとを確実に近接又は当接させることができる。
【0050】
図7に他の実施形態における巻線ガイド3を示す。この実施形態では、フック6の一方の端61及び他方の端62の幅寸法すなわち図面上下方向における寸法がその先端に向かって細くなることを特徴とする。その他の構成は
図1に示した実施形態と同様である。このようにフック6の一方の端61及び他方の端62を先細にすることによって、
図3(a)に示す動作において、巻線端末71a~71dが一方の端61又は他方の端62に引っ掛かることを防止し、空隙10内において巻線ガイド3と巻線端末71aとを確実に近接又は当接させることができる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る巻線端末絡げ装置の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0052】
1………巻線端末絡げ装置
2………装置本体
3………巻線ガイド
4………柱状部
5………スペーサ
6………フック
7a、7b………コイル
8a~8d………端子
10………空隙
21………回転部
41………基部
42………端部
43………周側
44………収容部
45………切り欠き
46………テーパ部
61………一方の端
62………他方の端
63………弧状部
71a~71d………巻線端末
72a~72d………切断部
81a~81d………絡げ部
91………コア
92………筐体
93………治具