(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086120
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】ブレーキ制御回路、電磁ブレーキの制御装置、電磁ブレーキの制御システム、電磁ブレーキおよび電磁ブレーキの制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 3/04 20060101AFI20220602BHJP
H02P 15/00 20060101ALI20220602BHJP
F16D 55/06 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
H02P3/04 B
H02P15/00 G
F16D55/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197966
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】593177000
【氏名又は名称】株式会社協和精工
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】竹内 啓佐敏
(72)【発明者】
【氏名】原 公司
(72)【発明者】
【氏名】壬生 喬大
(72)【発明者】
【氏名】高柳 秀明
【テーマコード(参考)】
3J058
5H530
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA78
3J058AA88
3J058BA46
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5H530AA01
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5H530CC20
5H530CC23
5H530CC26
5H530CE02
5H530DD13
5H530DD26
(57)【要約】
【課題】無励磁作動型の電磁ブレーキが解放状態となったときの消費電力を低減することが可能であっても、電力供給開始後、電磁ブレーキのコイルに電圧が印加され始めるまでのタイムラグをなくすことが可能となるブレーキ制御回路を提供する。
【解決手段】ブレーキ制御回路4は、ブレーキ制御回路4への電力供給が開始されると、所定時間、電磁ブレーキを解放状態とする直流電圧であってブレーキ制御回路4への入力電圧である第1の電圧をコイル3に印加し、その後、電磁ブレーキの解放状態を維持する直流電圧である第2の電圧をコイル3に印加するとともに、電力供給開始に同期してコイル3への第1の電圧の印加を開始する。また、ブレーキ制御回路4は、電力供給開始後、所定時間が経過すると、第1の電圧を発生させるための第1駆動信号を停止させるとともに、第1駆動信号が停止する前から、第2の電圧を発生させるための第2駆動信号を生成し始める。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが無励磁状態のときに制動力が作用する制動状態となり、前記コイルが励磁状態のときに制動力が作用しない解放状態となる無励磁作動型の電磁ブレーキを制御するためのブレーキ制御回路において、
前記ブレーキ制御回路への電力供給が開始されると、所定時間、前記電磁ブレーキを前記解放状態とする直流電圧であって前記ブレーキ制御回路への入力電圧である第1の電圧を前記コイルに印加し、その後、前記電磁ブレーキの前記解放状態を維持する直流電圧である第2の電圧を前記コイルに印加するとともに、前記ブレーキ制御回路への電力供給開始に同期して前記コイルへの前記第1の電圧の印加を開始し、
さらに、前記ブレーキ制御回路への電力供給開始後、所定時間が経過すると、前記第1の電圧を発生させるための第1駆動信号を停止させる第1駆動信号停止回路と、前記第2の電圧を発生させるための第2駆動信号を生成する第2駆動信号生成回路とを備え、
前記第2駆動信号生成回路は、前記第1駆動信号が停止する前から前記第2駆動信号を生成し始めることを特徴とするブレーキ制御回路。
【請求項2】
前記第1駆動信号に基づいてオンオフ動作を行う半導体スイッチを備え、
前記半導体スイッチがオン状態になると、前記コイルに電圧が印加され、
前記第1駆動信号は、前記ブレーキ制御回路への入力電圧から直接生成されることを特徴とする請求項1記載のブレーキ制御回路。
【請求項3】
前記半導体スイッチは、前記第1駆動信号と前記第2駆動信号とに基づいてオンオフ動作を行うことを特徴とする請求項1または2記載のブレーキ制御回路。
【請求項4】
前記半導体スイッチは、トランジスタであり、
前記トランジスタのベースには、抵抗とコンデンサとが並列に接続されていることを特徴とする請求項3記載のブレーキ制御回路。
【請求項5】
コイルが無励磁状態のときに制動力が作用する制動状態となり、前記コイルが励磁状態のときに制動力が作用しない解放状態となる無励磁作動型の電磁ブレーキを制御するための電磁ブレーキの制御装置において、
前記コイルに直流電圧を印加するための電力を供給する電源を備え、前記電磁ブレーキが取り付けられるモータを少なくとも非常停止させるときに、前記電磁ブレーキの前記制動状態と前記電磁ブレーキの前記解放状態とが交互に繰り返されるように、前記電源からの電力供給と、前記電源からの電力供給を一時停止する電力供給停止とを交互に繰り返した後、前記電源からの電力供給を停止することを特徴とする電磁ブレーキの制御装置。
【請求項6】
前記モータを少なくとも非常停止させるときに前記電源から電力が供給される時間である電力供給時間と、前記モータを少なくとも非常停止させるときに前記電源からの電力供給が一時停止される時間である電力供給停止時間とが任意に設定可能となっていることを特徴とする請求項5記載の電磁ブレーキの制御装置。
【請求項7】
前記電源からの電力供給のオンオフ動作を行う第2の半導体スイッチを備えることを特徴とする請求項5または6記載の電磁ブレーキの制御装置。
【請求項8】
前記電源は、前記モータの回生電力、および、前記電源が繋がる元電源から供給される電力の少なくともいずれか一方が蓄電される蓄電池を備えることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の電磁ブレーキの制御装置。
【請求項9】
請求項5から8のいずれかに記載の電磁ブレーキの制御装置と、前記電源から電力が供給されるとともに前記コイルに直流電圧を印加するブレーキ制御回路とを備え、
前記ブレーキ制御回路は、前記電源から前記ブレーキ制御回路への電力供給開始に同期して前記コイルへの電圧の印加を開始することを特徴とする電磁ブレーキの制御システム。
【請求項10】
前記ブレーキ制御回路は、前記電磁ブレーキを前記解放状態とする直流電圧であって前記電源から前記ブレーキ制御回路への入力電圧である第1の電圧を発生させるための第1駆動信号に基づいてオンオフ動作を行う半導体スイッチを備え、
前記半導体スイッチがオン状態になると、前記コイルに電圧が印加され、
前記第1駆動信号は、前記電源から前記ブレーキ制御回路への入力電圧から直接生成されることを特徴とする請求項9記載の電磁ブレーキの制御システム。
【請求項11】
請求項1から4のいずれかに記載のブレーキ制御回路、あるいは、請求項9または10に記載のブレーキ制御回路によって直流電圧が印加される前記コイルを備える電磁ブレーキであって、
前記ブレーキ制御回路が実装される制御基板が内蔵されていることを特徴とする電磁ブレーキ。
【請求項12】
コイルが無励磁状態のときに制動力が作用する制動状態となり、前記コイルが励磁状態のときに制動力が作用しない解放状態となる無励磁作動型の電磁ブレーキを制御するための電磁ブレーキの制御方法において、
前記コイルに直流電圧を印加するブレーキ制御回路への電力供給が開始されると、所定時間、前記電磁ブレーキを前記解放状態とする直流電圧であって前記ブレーキ制御回路への入力電圧である第1の電圧を前記コイルに印加し、その後、前記電磁ブレーキの前記解放状態を維持する直流電圧である第2の電圧を前記コイルに印加するとともに、前記ブレーキ制御回路への電力供給開始に同期して前記コイルへの前記第1の電圧の印加を開始し、かつ、
前記ブレーキ制御回路への電力供給開始後、所定時間が経過すると、前記第1の電圧を発生させるための第1駆動信号を停止させるとともに、前記第1駆動信号が停止する前から、前記第2の電圧を発生させるための第2駆動信号を生成し始めることを特徴とする電磁ブレーキの制御方法。
【請求項13】
コイルが無励磁状態のときに制動力が作用する制動状態となり、前記コイルが励磁状態のときに制動力が作用しない解放状態となる無励磁作動型の電磁ブレーキを制御するための電磁ブレーキの制御方法において、
前記電磁ブレーキが取り付けられるモータを少なくとも非常停止させるときに、前記電磁ブレーキの前記制動状態と前記電磁ブレーキの前記解放状態とが交互に繰り返されるように、前記コイルに直流電圧を印加するための電力を供給する電源からの電力供給と、前記電源からの電力供給を一時停止する電力供給停止とを交互に繰り返した後、前記電源からの電力供給を停止することを特徴とする電磁ブレーキの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無励磁作動型の電磁ブレーキを制御するためのブレーキ制御回路および電磁ブレーキの制御装置に関する。また、本発明は、電磁ブレーキの制御装置を備える電磁ブレーキの制御システムに関する。さらに、本発明は、ブレーキ制御回路によって直流電圧が印加されるコイルを備える電磁ブレーキに関する。また、本発明は、無励磁作動型の電磁ブレーキを制御するための電磁ブレーキの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無励磁作動型の電磁ブレーキを有するブレーキ付モータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のブレーキ付モータは、電磁ブレーキのブレーキコイルに電気的に接続される直流電圧制御回路を備えている。直流電圧制御回路の入力側には、直流電圧源が電気的に接続されている。直流電圧制御回路には、リレーが開放されると直流電圧源から電力が供給される。一方、リレーが遮断されると直流電圧源から直流電圧制御回路への電力の供給が停止する。
【0003】
直流電圧制御回路は、基準電圧発生回路とスイッチング信号生成器とゲート駆動回路とスイッチング素子とを備えている。基準電圧発生回路は、ブレーキコイルに実際に印加される直流電圧を制御するための基準電圧を発生させる。スイッチング信号生成器は、基準電圧発生回路の出力を用いてスイッチング信号を生成する。スイッチング素子は、ゲート駆動回路を介して入力されるスイッチング信号に基づいてオンオフ動作を行う。
【0004】
特許文献1に記載のブレーキ付モータでは、電磁ブレーキの制動力が作用している制動状態から電磁ブレーキの制動力が作用していない解放状態に電磁ブレーキが切り替わるときに、直流電圧制御回路に電力が供給される。直流電圧制御回路に電力が供給されると、直流電圧制御回路は、電力供給開始時から始まる第1期間において、固定レベルの第1電圧パターンでブレーキコイルに第1実効電圧を印加し、電磁ブレーキを解放状態とする。その後、直流電圧制御回路は、第1期間に続く第2期間において、矩形パルスが繰り返される第2電圧パターンでブレーキコイルに第2実効電圧を印加し、電磁ブレーキの解放状態を維持する。
【0005】
基準電圧発生回路は、第1期間において、第1電圧パターンを生成するための第1基準電圧を発生させ、第2期間において、第2電圧パターンを生成するための第2基準電圧を発生させる。第2基準電圧は、電磁ブレーキの解放状態を維持できる電圧であり、第1基準電圧より小さくなっている。スイッチング信号生成器は、第1期間において、第1基準電圧に応じたオン固定の第1スイッチング信号を生成し、第2期間において、第2基準電圧に応じてオンオフを繰り返す第2スイッチング信号を生成する。スイッチング素子は、第1期間において、第1スイッチング信号に応じたゲート駆動回路の駆動によってオン状態を維持し、第2期間において、第2スイッチング信号に応じたゲート駆動回路の駆動によってオンオフ動作を行う。
【0006】
特許文献1に記載のブレーキ付モータでは、第2実効電圧が第1実効電圧よりも低くなっているため、解放状態となったときの電磁ブレーキの消費電力を低減することが可能になっている。また、特許文献1に記載のブレーキ付モータでは、電磁ブレーキが解放状態から制動状態に切り替わるときには、直流電圧制御回路への電力の供給が停止する。直流電圧制御回路への電力の供給が停止すると、ブレーキコイルに流れる電流が急速に0になって、電磁ブレーキが制動状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のブレーキ付モータでは、上述のように、解放状態となったときの電磁ブレーキの消費電力を低減することが可能になっている。一方で、このブレーキ付モータの場合、一般に、基準電圧発生回路は論理回路(ロジック回路)で構成されているため、直流電圧制御回路への電力供給開始後、ブレーキコイルに電圧が印加され始めるまでにタイムラグが生じることが本願発明者の検討によって明らかになった。具体的には、直流電圧制御回路への電力供給開始後、直流電圧制御回路の入力電圧が所定値に達して安定するまでは、基準電圧発生回路にリセットがかからず、基準電圧発生回路が第1基準電圧Vf1を生成しないため(すなわち、直流電圧制御回路の入力電圧が安定したところで、基準電圧発生回路が第1基準電圧Vf1の生成を開始するため)、直流電圧制御回路への電力供給開始後、基準電圧発生回路が第1基準電圧Vf1を生成しない未応答時間が発生することが本願発明者の検討によって明らかになった(
図9参照)。
【0009】
また、未応答時間中は、基準電圧発生回路が第1基準電圧Vf1を生成しないため、スイッチング信号生成器も第1スイッチング信号を生成せず(
図9参照)、その結果、スイッチング素子も動作しないことが本願発明者の検討によって明らかになった。また、未応答時間中は、スイッチング素子が動作しないため、直流電圧制御回路への電力供給開始後、ブレーキコイルに電圧が印加され始めるまでに、未応答時間に相当するタイムラグが発生することが本願発明者の検討によって明らかになった(
図9参照)。
【0010】
直流電圧制御回路への電力供給開始後、ブレーキコイルに電圧が印加され始めるまでにタイムラグが発生すると、直流電圧制御回路への電力供給開始後、制動状態の電磁ブレーキが解放状態になるまでの時間が長くなって、ブレーキ付モータを高速な応答で精度良く制御することができなくなる。
【0011】
そこで、本発明の第1の課題は、無励磁作動型の電磁ブレーキが解放状態となったときの消費電力を低減することが可能であっても、電磁ブレーキのコイルに直流電圧を印加するブレーキ制御回路への電力供給開始後、電磁ブレーキのコイルに電圧が印加され始めるまでのタイムラグをなくすことが可能となるブレーキ制御回路および電磁ブレーキの制御方法を提供することにある。また、本発明の第1の課題は、このブレーキ制御回路によって直流電圧が印加されるコイルを備える電磁ブレーキを提供することにある。
【0012】
また、特許文献1に記載のブレーキ付モータは、たとえば、産業用ロボットのアームを駆動させる駆動源として使用されることがある。この場合は、ブレーキ付きモータは、たとえば、減速機を介してアームに連結される。産業用ロボットの動作中に停電等の非常事態が発生したときには、安全確保等のため、ブレーキ付モータを非常停止させて、産業用ロボットを非常停止させる必要がある。特許文献1に記載のブレーキ付モータを非常停止させる場合には、直流電圧制御回路に供給される電力を直ちに遮断してブレーキ付モータを急停止させれば良い。
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載のブレーキ付モータが、たとえば、減速機を介してアームに連結されている場合に、直流電圧制御回路に供給される電力を直ちに遮断してブレーキ付モータを急停止させると、動作中のアームの慣性モーメントの影響で減速機に過剰な負荷が作用して、減速機が破損するおそれがある。
【0014】
そこで、本発明の第2の課題は、電磁ブレーキが取り付けられるモータを非常停止させる場合であっても、モータに連結される減速機等に過剰な負荷が作用するのを抑制することが可能となる電磁ブレーキの制御装置および電磁ブレーキの制御方法を提供することにある。また、本発明の第2の課題は、この電磁ブレーキの制御装置を備えるブレーキ制御システムを提供することにある。さらに、本発明の第2の課題は、ブレーキ制御システムが有するブレーキ制御回路によって直流電圧が印加されるコイルを備える電磁ブレーキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の第1の課題を解決するため、本発明のブレーキ制御回路は、コイルが無励磁状態のときに制動力が作用する制動状態となり、コイルが励磁状態のときに制動力が作用しない解放状態となる無励磁作動型の電磁ブレーキを制御するためのブレーキ制御回路において、ブレーキ制御回路への電力供給が開始されると、所定時間、電磁ブレーキを解放状態とする直流電圧であってブレーキ制御回路への入力電圧である第1の電圧をコイルに印加し、その後、電磁ブレーキの解放状態を維持する直流電圧である第2の電圧をコイルに印加するとともに、ブレーキ制御回路への電力供給開始に同期してコイルへの第1の電圧の印加を開始し、さらに、ブレーキ制御回路への電力供給開始後、所定時間が経過すると、第1の電圧を発生させるための第1駆動信号を停止させる第1駆動信号停止回路と、第2の電圧を発生させるための第2駆動信号を生成する第2駆動信号生成回路とを備え、第2駆動信号生成回路は、第1駆動信号が停止する前から第2駆動信号を生成し始めることを特徴とする。
【0016】
また、上記の第1の課題を解決するため、本発明の電磁ブレーキの制御方法は、コイルが無励磁状態のときに制動力が作用する制動状態となり、コイルが励磁状態のときに制動力が作用しない解放状態となる無励磁作動型の電磁ブレーキを制御するための電磁ブレーキの制御方法において、コイルに直流電圧を印加するブレーキ制御回路への電力供給が開始されると、所定時間、電磁ブレーキを解放状態とする直流電圧であってブレーキ制御回路への入力電圧である第1の電圧をコイルに印加し、その後、電磁ブレーキの解放状態を維持する直流電圧である第2の電圧をコイルに印加するとともに、ブレーキ制御回路への電力供給開始に同期してコイルへの第1の電圧の印加を開始し、かつ、ブレーキ制御回路への電力供給開始後、所定時間が経過すると、第1の電圧を発生させるための第1駆動信号を停止させるとともに、第1駆動信号が停止する前から、第2の電圧を発生させるための第2駆動信号を生成し始めることを特徴とする。
【0017】
本発明では、ブレーキ制御回路への電力供給が開始されると、所定時間、電磁ブレーキを解放状態とする直流電圧である第1の電圧をコイルに印加し、その後、電磁ブレーキの解放状態を維持する直流電圧である第2の電圧をコイルに印加している。そのため、本発明では、無励磁作動型の電磁ブレーキが解放状態となったときの消費電力を低減することが可能になる。また、本発明では、ブレーキ制御回路への電力供給開始に同期してコイルへの第1の電圧の印加を開始するため、ブレーキ制御回路への電力供給開始後、電磁ブレーキのコイルに電圧が印加され始めるまでのタイムラグをなくすことが可能になる。すなわち、本発明では、無励磁作動型の電磁ブレーキが解放状態となったときの消費電力を低減することが可能であっても、ブレーキ制御回路への電力供給開始後、電磁ブレーキのコイルに電圧が印加され始めるまでのタイムラグをなくすことが可能になる。
【0018】
また、本発明のブレーキ制御回路は、ブレーキ制御回路への電力供給開始後、所定時間が経過すると、第1の電圧を発生させるための第1駆動信号を停止させる第1駆動信号停止回路と、第2の電圧を発生させるための第2駆動信号を生成する第2駆動信号生成回路とを備え、第2駆動信号生成回路は、第1駆動信号が停止する前から第2駆動信号を生成し始めている。また、本発明の電磁ブレーキの制御方法では、ブレーキ制御回路への電力供給開始後、所定時間が経過すると、第1の電圧を発生させるための第1駆動信号を停止させるとともに、第1駆動信号が停止する前から、第2の電圧を発生させるための第2駆動信号を生成し始めている。そのため、本発明では、第1の電圧をコイルに印加し終わった直後にコイルに電圧が印加されないといった事態の発生を防止することが可能になり、その結果、電磁ブレーキの誤動作を防止することが可能になる。
【0019】
本発明において、たとえば、ブレーキ制御回路は、第1駆動信号に基づいてオンオフ動作を行う半導体スイッチを備え、半導体スイッチがオン状態になると、コイルに電圧が印加され、第1駆動信号は、ブレーキ制御回路への入力電圧から直接生成される。
【0020】
本発明において、半導体スイッチは、第1駆動信号と第2駆動信号とに基づいてオンオフ動作を行うことが好ましい。このように構成すると、オン状態になるとコイルに電圧が印加される半導体スイッチとして、第1駆動信号に基づいてオンオフ動作を行う半導体スイッチと、第2駆動信号に基づいてオンオフ動作を行う半導体スイッチとが別個に設けられている場合と比較して、ブレーキ制御回路の構成を簡素化して、ブレーキ制御回路のコストを低減することが可能になる。
【0021】
本発明において、半導体スイッチは、トランジスタであり、トランジスタのベースには、抵抗とコンデンサとが並列に接続されていることが好ましい。このように構成すると、第2駆動信号がPWM(Pulse Width Modulation)信号であっても、トランジスタの応答性を高めることが可能になる。
【0022】
また、上記の第2の課題を解決するため、本発明の電磁ブレーキの制御装置は、コイルが無励磁状態のときに制動力が作用する制動状態となり、コイルが励磁状態のときに制動力が作用しない解放状態となる無励磁作動型の電磁ブレーキを制御するための電磁ブレーキの制御装置において、コイルに直流電圧を印加するための電力を供給する電源を備え、電磁ブレーキが取り付けられるモータを少なくとも非常停止させるときに、電磁ブレーキの制動状態と電磁ブレーキの解放状態とが交互に繰り返されるように、電源からの電力供給と、電源からの電力供給を一時停止する電力供給停止とを交互に繰り返した後、電源からの電力供給を停止することを特徴とする。
【0023】
また、上記の第2の課題を解決するため、本発明の電磁ブレーキの制御方法は、コイルが無励磁状態のときに制動力が作用する制動状態となり、コイルが励磁状態のときに制動力が作用しない解放状態となる無励磁作動型の電磁ブレーキを制御するための電磁ブレーキの制御方法において、電磁ブレーキが取り付けられるモータを少なくとも非常停止させるときに、電磁ブレーキの制動状態と電磁ブレーキの解放状態とが交互に繰り返されるように、コイルに直流電圧を印加するための電力を供給する電源からの電力供給と、電源からの電力供給を一時停止する電力供給停止とを交互に繰り返した後、電源からの電力供給を停止することを特徴とする。
【0024】
本発明では、電磁ブレーキが取り付けられるモータを少なくとも非常停止させるときに、電磁ブレーキの制動状態と電磁ブレーキの解放状態とが交互に繰り返されるように、電源からの電力供給と、電源からの電力供給を一時停止する電力供給停止とを交互に繰り返した後、電源からの電力供給を停止している。そのため、本発明では、モータを非常停止させる場合であっても、モータの回転速度を段階的に下げながらモータを停止させることが可能になり、その結果、モータが急停止するのを防止することが可能になる。したがって、本発明では、モータを非常停止させる場合であっても、モータに連結される減速機等に過剰な負荷が作用するのを抑制することが可能になる。
【0025】
本発明において、モータを少なくとも非常停止させるときに電源から電力が供給される時間である電力供給時間と、モータを少なくとも非常停止させるときに電源からの電力供給が一時停止される時間である電力供給停止時間とが任意に設定可能となっていることが好ましい。このように構成すると、電磁ブレーキが取り付けられるモータの用途や使用環境等に応じて、電力供給時間と電力供給停止時間とを設定することが可能になる。また、たとえば、産業用ロボットのアームの駆動源としてモータが使用される場合には、アームを動作させながら、電力供給時間と電力供給停止時間とを調整することが可能になる。
【0026】
本発明において、電磁ブレーキの制御装置は、たとえば、電源からの電力供給のオンオフ動作を行う第2の半導体スイッチを備えている。
【0027】
本発明において、電源は、モータの回生電力、および、電源が繋がる元電源から供給される電力の少なくともいずれか一方が蓄電される蓄電池を備えることが好ましい。このように構成すると、たとえば、停電が発生してモータを非常停止させる場合であっても、蓄電池から供給される電力を利用して、電磁ブレーキの制動状態と電磁ブレーキの解放状態とが交互に繰り返されるように、電力供給と電力供給停止とを交互に繰り返すことが可能になる。
【0028】
本発明の電磁ブレーキの制御装置は、電源から電力が供給されるとともにコイルに直流電圧を印加するブレーキ制御回路を備える電磁ブレーキの制御システムに用いることができる。この電磁ブレーキの制御システムでは、ブレーキ制御回路は、電源からブレーキ制御回路への電力供給開始に同期してコイルへの電圧の印加を開始することが好ましい。このように構成すると、モータを非常停止させるときに電力供給と電力供給停止とが交互に繰り返されても、電力供給開始後、電磁ブレーキのコイルに電圧が印加され始めるまでのタイムラグをなくすことが可能になる。したがって、モータを非常停止させるときに、電力供給状態になってから電力供給停止状態になるまでの時間が短くても、電磁ブレーキを解放状態にすることが可能になり、その結果、電磁ブレーキの制動状態と電磁ブレーキの解放状態とを交互に繰り返させることが可能になる。
【0029】
本発明において、たとえば、ブレーキ制御回路は、電磁ブレーキを解放状態とする直流電圧であって電源からブレーキ制御回路への入力電圧である第1の電圧を発生させるための第1駆動信号に基づいてオンオフ動作を行う半導体スイッチを備え、半導体スイッチがオン状態になると、コイルに電圧が印加され、第1駆動信号は、電源からブレーキ制御回路への入力電圧から直接生成される。
【0030】
本発明のブレーキ制御回路によって直流電圧が印加されるコイルを備える電磁ブレーキには、たとえば、ブレーキ制御回路が実装される制御基板が内蔵されている。この場合には、ブレーキ制御回路が実装される制御基板が別途設けられている場合と比較して、電磁ブレーキの付加価値を高めることが可能になる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明では、無励磁作動型の電磁ブレーキが解放状態となったときの消費電力を低減することが可能であっても、電磁ブレーキのコイルに直流電圧を印加するブレーキ制御回路への電力供給開始後、電磁ブレーキのコイルに電圧が印加され始めるまでのタイムラグをなくすことが可能になる。また、本発明では、電磁ブレーキが取り付けられるモータを非常停止させる場合であっても、モータに連結される減速機等に過剰な負荷が作用するのを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる電磁ブレーキの制御システムの概略構成を説明するためのブロック図である。
【
図2】
図1に示す電磁ブレーキの制御装置およびブレーキ制御回路によって制御される電磁ブレーキの構成を説明するための断面図である。
【
図3】
図2に示す電磁ブレーキの使用例を説明するための概略図である。
【
図4】
図1に示すブレーキ制御回路の一例の回路図である。
【
図5】
図1に示すブレーキ制御回路の機能を説明するための図である。
【
図6】(A)は、
図3に示すモータの通常使用時におけるブレーキ制御回路の作用を説明するための波形図であり、(B)は、
図3に示すモータの非常停止時における電磁ブレーキの制御システムの作用を説明するための波形図である。
【
図7】本発明の他の実施の形態にかかる電磁ブレーキの制御装置の構成を説明するための回路図である。
【
図8】
図7に示す電力オンオフ回路が使用された場合のモータの非常停止時における電磁ブレーキの制御システムの作用を説明するための波形図である。
【
図9】従来技術の問題点を説明するための波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0034】
(電磁ブレーキの制御システムの概略構成および電磁ブレーキの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる電磁ブレーキの制御システム6の概略構成を説明するためのブロック図である。
図2は、
図1に示す電磁ブレーキの制御装置1およびブレーキ制御回路4によって制御される電磁ブレーキ2の構成を説明するための断面図である。
図3は、
図2に示す電磁ブレーキ2の使用例を説明するための概略図である。
【0035】
本形態の電磁ブレーキの制御システム6(以下、「制御システム6」とする。)は、電磁ブレーキ2を制御するためのシステムであり、電磁ブレーキ2を制御するための構成として、電磁ブレーキの制御装置1(以下、「制御装置1」とする。)と、ブレーキ制御回路4とを備えている。電磁ブレーキ2は、無励磁作動型の電磁ブレーキであり、電磁ブレーキ2のコイル3が無励磁状態のときに制動力が作用する制動状態となり、コイル3が励磁状態のときに制動力が作用しない解放状態となる。
【0036】
電磁ブレーキ2は、モータ7に取り付けられて使用される。モータ7は、たとえば、産業用ロボットのアーム8を駆動させる駆動源として使用される。モータ7の出力軸には、減速機9が取り付けられており、モータ7は、減速機9を介してアーム8に連結されている。電磁ブレーキ2は、ボス11を介してモータ7の回転軸に固定される回転板12と、回転板12を挟んで配置される制動板13およびアーマチュア14と、アーマチュア14を回転板12に向かって付勢する圧縮コイルバネ15と、コイル3が巻回されるヨーク16とを備えている。
【0037】
コイル3が無励磁状態のときには、
図2(A)に示すように、圧縮コイルバネ15の付勢力によって制動板13とアーマチュア14との間に回転板12が挟まれており、電磁ブレーキ2が制動状態となる。一方、コイル3が励磁状態になると、
図2(B)に示すように、圧縮コイルバネ15の付勢力に抗してアーマチュア14がヨーク16に吸引されて、回転板12が回転可能な状態となる。すなわち、電磁ブレーキ2が解放状態となる。本形態では、ブレーキ制御回路4が実装される制御基板17が電磁ブレーキ2に内蔵されている。すなわち、電磁ブレーキ2は、ブレーキ制御回路4が実装される制御基板17を備えている。制御基板17は、たとえば、ガラスエポキシ基板等のリジッド基板である。
【0038】
たとえば、産業用ロボットのアーム8を駆動させる駆動源としてモータ7が使用される場合、制御装置1は、産業用ロボットの制御システムに含まれていて、産業用ロボットの制御システムの一部を構成している。制御装置1は、コイル3に直流電圧を印加する電力を供給するための電源5を備えている。電源5は、ブレーキ制御回路4に電力を供給する。具体的には、電源5は、直流電源であり、ブレーキ制御回路4に直流電力を供給する。ブレーキ制御回路4は、コイル3に直流電圧を印加する。
【0039】
電源5は、停電時等の非常時に使用される蓄電池19を備えている。蓄電池19には、モータ7の回生電力が蓄電される。たとえば、後述のようにモータ7を非常停止させる際のモータ7の回生電力が蓄電池19に蓄電される。または、蓄電池19には、電源5が繋がる元電源から供給される電力が蓄電される。あるいは、蓄電池19には、モータ7の回生電力および元電源から供給される電力が蓄電される。
【0040】
制動状態となっている電磁ブレーキ2を解放状態にするときには、電源5からブレーキ制御回路4に電力が供給される。すなわち、制御装置1は、電源5からブレーキ制御回路4に電力を供給する。電源5からブレーキ制御回路4への電力供給が開始されると、ブレーキ制御回路4は、所定時間T1(
図6(A)参照)、電磁ブレーキ2を解放状態とする直流電圧であって電源5からブレーキ制御回路4への入力電圧である第1の電圧をコイル3に印加し、その後、電磁ブレーキ2の解放状態を維持する直流電圧である第2の電圧をコイル3に印加する。第2の電圧の実効値は、第1の電圧の実効値よりも低くなっている。以下、ブレーキ制御回路4の具体的な構成、作用および制御システム6の作用について説明する。
【0041】
(ブレーキ制御回路の構成、作用および電磁ブレーキの制御システムの作用)
図4は、
図1に示すブレーキ制御回路4の一例の回路図である。
図5は、
図1に示すブレーキ制御回路4の機能を説明するための図である。
図6(A)は、
図3に示すモータ7の通常使用時におけるブレーキ制御回路4の作用を説明するための波形図であり、
図6(B)は、
図3に示すモータ7の非常停止時における制御システム6の作用を説明するための波形図である。
【0042】
ブレーキ制御回路4は、第1の電圧を発生させるための第1駆動信号と第2の電圧を発生させるための第2駆動信号とに基づいてオンオフ動作を行う半導体スイッチ23と、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給開始後、所定時間T1が経過すると、第1駆動信号を停止させる第1駆動信号停止回路24と、第2駆動信号を生成する第2駆動信号生成回路25とを備えている。本形態の半導体スイッチ23は、トランジスタである。したがって、以下では、半導体スイッチ23を「トランジスタ23」とする。
【0043】
トランジスタ23は、PNP型のトランジスタである。トランジスタ23のエミッタは、電源5に接続され、トランジスタ23のコレクタは、コイル3の一端に接続されている。トランジスタ23のエミッタと電源5との間、および、トランジスタ23のコレクタとコイル3との間には、抵抗等の電子部品は配置されていない。コイル3の他端は、直接、接地されている。トランジスタ23がオン状態になると、コイル3に電圧が印加され(すなわち、電源5からコイル3に電流が流れ)、トランジスタ23がオフ状態になると、コイル3に電圧が印加されなくなる。トランジスタ23のベースには、抵抗27とコンデンサ28とが並列に接続されている。すなわち、ブレーキ制御回路4は、トランジスタ23のベースに接続される抵抗27と並列にトランジスタ23のベースに接続されるコンデンサ28を備えている。
【0044】
第1駆動信号停止回路24は、コンデンサ30を備えている。第1駆動信号停止回路24には、トランジスタ31が接続されている。トランジスタ31は、NPN型のトランジスタである。トランジスタ31のコレクタは、抵抗27およびコンデンサ28を介してトランジスタ23のベースに接続されている。トランジスタ31のエミッタは、接地されている。トランジスタ31のベースは、コンデンサ30、可変抵抗32およびダイオード33を介して電源5に接続されている。
【0045】
電源5からブレーキ制御回路4への電力供給が開始されると、コンデンサ30に電荷が蓄えられるまでの所定時間T1、電源5からブレーキ制御回路4に供給されてダイオード33、可変抵抗32およびコンデンサ30を流れた電流がトランジスタ31のベースに入力される。本形態では、電源5からブレーキ制御回路4に供給されてダイオード33、可変抵抗32およびコンデンサ30を流れた電流が、第1の電圧を発生させるための第1駆動信号となり、この第1駆動信号がトランジスタ31のベースに入力される。
【0046】
このように、第1駆動信号は、集積回路や論理回路から出力される信号ではなく、電源5からブレーキ制御回路4への入力電圧から直接的に生成された信号である。すなわち、第1駆動信号は、電源5からブレーキ制御回路4への入力電圧から直接生成されている。そのため、第1駆動信号は、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給開始とほぼ同時に生成され始める。より具体的には、第1駆動信号は、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給が開始されると即座に生成され始める。すなわち、第1駆動信号は、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給開始に同期して生成され始める。第1駆動信号は、オンオフのない連続信号(アナログ信号)である。
【0047】
電源5からブレーキ制御回路4への電力供給開始後、所定時間T1が経過してコンデンサ30に電荷が蓄えられると、トランジスタ31のベースに電流が流れ込まなくなる。すなわち、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給開始後、所定時間T1が経過してコンデンサ30に電荷が蓄えられると、第1駆動信号が停止して(すなわち、第1駆動信号停止回路24が第1駆動信号を停止させて)、トランジスタ31のベースに第1駆動信号が入力されなくなる。
【0048】
第2駆動信号生成回路25は、発振回路35を備えている。第2駆動信号生成回路25には、トランジスタ36が接続されている。トランジスタ36は、NPN型のトランジスタである。トランジスタ36のコレクタは、抵抗27およびコンデンサ28を介してトランジスタ23のベースに接続されており、トランジスタ31とトランジスタ36とは、抵抗27およびコンデンサ28を介してトランジスタ23のベースに並列に接続されている。トランジスタ36のエミッタは、接地されている。トランジスタ36のベースは、抵抗37を介して発振回路35に接続されている。
【0049】
発振回路35は、タイマICである。発振回路35は、電源5からブレーキ制御回路4に電力が供給されると、第2の電圧を発生させるための第2駆動信号を生成して出力する。第2駆動信号は、所定の周期でオンオフを繰り返すPWM信号である。第2駆動信号は、トランジスタ36のベースに入力される。発振回路35は、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給が開始された後、ブレーキ制御回路4の入力電圧が所定値に達して発振回路35にリセットがかかると、第2駆動信号を生成して出力する(
図6(A)参照)。
【0050】
発振回路35は、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給開始後、所定時間T1が経過する前から(すなわち、第1駆動信号が停止する前から)第2駆動信号を生成して出力し始める(
図6(A)参照)。すなわち、第2駆動信号生成回路25は、第1駆動信号が停止する前から第2駆動信号を生成し始める。また、発振回路35は、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給が停止するまで、第2駆動信号を生成して出力する。
【0051】
制動状態となっている電磁ブレーキ2を解放状態にするために、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給が開始されると、所定時間T1、トランジスタ31のベースに第1駆動信号が入力されて、トランジスタ31がオン状態になる。トランジスタ31がオン状態になると、トランジスタ23のエミッタからトランジスタ23のベースに電流が流れて、トランジスタ23がオン状態になる。また、トランジスタ23のベースからトランジスタ31に電流が流れるため、第1の電圧がコイル3に印加される。すなわち、ブレーキ制御回路4への入力電圧がそのまま、コイル3に印加される。第1の電圧がコイル3に印加されると、
図6(A)に示すように、コイル3に電圧が連続的に印加されて、電磁ブレーキ2が解放状態になる。
【0052】
上述のように、第1駆動信号は、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給が開始されると即座に生成され始めるため、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給が開始されると、トランジスタ23、31が即座にオン状態となって、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給開始後、即座にコイル3への電圧の印加が開始される。すなわち、ブレーキ制御回路4は、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給開始に同期してコイル3への電圧の印加を開始する。具体的には、ブレーキ制御回路4は、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給開始に同期してコイル3への第1の電圧の印加を開始する。
【0053】
電源5からブレーキ制御回路4への電力供給開始後、所定時間T1が経過すると、トランジスタ31のベースに入力される第1駆動信号が停止して、トランジスタ31がオフ状態になる。上述のように、発振回路35は、第1駆動信号が停止する前から第2駆動信号を生成して出力しているため、所定時間T1が経過する前からトランジスタ36のベースに第2駆動信号が入力されて、トランジスタ36がオン状態になっている。したがって、所定時間T1が経過して、トランジスタ31がオフ状態になっても、トランジスタ23のオン状態は継続する。
【0054】
また、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給開始後、所定時間T1が経過すると、トランジスタ23のベースからトランジスタ31に電流が流れることなく、トランジスタ23のベースからトランジスタ36に電流が流れるため、第2の電圧がコイル3に印加される。第2の電圧がコイル3に印加されると、
図6(A)に示すように、コイル3に電圧が断続的に印加されて、電磁ブレーキ2の解放状態が維持される。このように、トランジスタ23は、第1駆動信号および第2駆動信号の少なくともいずれか一方が出力されていると、オン状態となり、第1駆動信号および第2駆動信号の両方が出力されていないと、オフ状態になる。すなわち、機能的には、ブレーキ制御回路4において、
図5に示すように、トランジスタ23は、並列に入力される第1駆動信号と第2駆動信号とに基づいてオンオフ動作を行う。なお、解放状態となっている電磁ブレーキ2を制動状態にする場合には、制御装置1が、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給を停止する。
【0055】
ここで、本形態では、電磁ブレーキ2が解放状態になっていてモータ7が回転しているときに(すなわち、アーム8が駆動しているときに)、停電等の非常事態が発生して、回転中のモータ7を非常停止させる場合に、制御装置1は、
図6(B)に示すように、電磁ブレーキ2の制動状態と電磁ブレーキ2の解放状態とが交互に繰り返されるように、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給と、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給を一時停止する電力供給停止とを交互に繰り返した後、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給を停止する。電力供給と電力供給停止とが交互に繰り返されると、コイル3に間欠的に電圧が印加され、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給が停止されると、コイル3への電圧の印加が停止される。
【0056】
制御装置1では、モータ7を非常停止させるときに電源5からブレーキ制御回路4に電力が供給される時間である電力供給時間T2と、モータ7を非常停止させるときに電源5からブレーキ制御回路4への電力供給が一時停止される時間である電力供給停止時間T3とが任意に設定可能となっている。また、制御装置1では、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給が完全に停止される前に、ブレーキ制御回路4に電力が供給される回数も任意に設定することが可能になっている。これらの設定は、たとえば、産業用ロボットのオペレータが制御装置1において手動で行う。
【0057】
図6(B)に示す例では、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給が完全に停止される前に、ブレーキ制御回路4への電力供給が3回行われている。また、
図6(B)に示す例では、モータ7の非常停止開始後、電力供給時間T2および電力供給停止時間T3が次第に長くなっている。なお、停電が発生してモータ7を非常停止させる場合には、蓄電池19からブレーキ制御回路4に電力が供給される。
【0058】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、制動状態となっている電磁ブレーキ2を解放状態にするときに、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給が開始されると、ブレーキ制御回路4は、所定時間T1、第1の電圧をコイル3に印加して電磁ブレーキ2を解放状態とし、その後、第1の電圧よりも実効値の低い第2の電圧をコイル3に印加して、電磁ブレーキ2の解放状態を維持している。そのため、本形態では、電磁ブレーキ2が解放状態となったときの消費電力を低減することが可能になる。
【0059】
また、本形態では、ブレーキ制御回路4が、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給開始に同期してコイル3への第1の電圧の印加を開始するため、
図6(A)に示すように、電源5からの電力供給開始後、コイル3に電圧が印加され始めるまでのタイムラグをなくすことが可能になる。すなわち、本形態では、電磁ブレーキ2が解放状態となったときの消費電力を低減することが可能であっても、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給開始後、コイル3に電圧が印加され始めるまでのタイムラグをなくすことが可能になる。
【0060】
本形態では、第2駆動信号生成回路25は、第1駆動信号が停止する前から第2駆動信号を生成し始めている。そのため、本形態では、第1の電圧をコイル3に印加し終わった直後にコイル3に電圧が印加されないといった事態の発生を防止することが可能になる。したがって、本形態では、電磁ブレーキ2の誤動作を防止することが可能になる。また、本形態では、トランジスタ23のベースに接続される抵抗27と並列にコンデンサ28が接続されているため、第2駆動信号がPWM信号であっても、トランジスタ23の応答性を高めることが可能になる。
【0061】
本形態では、モータ7を非常停止させるときに、制御装置1は、電磁ブレーキ2の制動状態と電磁ブレーキ2の解放状態とが交互に繰り返されるように、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給と、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給を一時停止する電力供給停止とを交互に繰り返した後、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給を停止している。そのため、本形態では、モータ7を非常停止させる場合であっても、モータ7の回転速度を段階的に下げながらモータ7を停止させることが可能になり、その結果、モータ7が急停止するのを防止することが可能になる。したがって、本形態では、モータ7を非常停止させる場合であっても、アーム8の慣性モーメントに起因する過剰な負荷が減速機9に作用するのを抑制することが可能になる。
【0062】
また、本形態では、モータ7を非常停止させるときに、電源5からブレーキ制御回路4に電力が供給される電力供給と、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給が一時停止される電力供給停止とが交互に繰り返されているが、本形態では、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給開始後、コイル3に電圧が印加され始めるまでのタイムラグをなくすことが可能になるため、モータ7を非常停止させるときに、電力供給時間T2が短くても、電磁ブレーキ2を解放状態にすることが可能になり、その結果、1/(T2+T3)の動作周波数を高めたリニア制動制御として電磁ブレーキ2の制動状態と電磁ブレーキ2の解放状態とを交互に繰り返させることが可能になる。
【0063】
本形態では、電力供給時間T2と電力供給停止時間T3とが任意に設定可能となっている。そのため、本形態では、モータ7の使用環境等に応じて、電力供給時間T2と電力供給停止時間T3とを設定することが可能になる。また、本形態では、アーム8を動作させながら、電力供給時間T2と電力供給停止時間T3とを調整することが可能になる。
【0064】
本形態では、停電が発生してモータ7を非常停止させる場合に、蓄電池19からブレーキ制御回路4に電力が供給される。そのため、本形態では、停電が発生してモータ7を非常停止させる場合であっても、電磁ブレーキ2の制動状態と電磁ブレーキ2の解放状態とが交互に繰り返されるように、コイル3に間欠的に電圧を印加することが可能になる。また、本形態では、ブレーキ制御回路4が実装される制御基板17が電磁ブレーキ2に内蔵されているため、ブレーキ制御回路4が実装される制御基板が別途設けられている場合と比較して、電磁ブレーキ2の付加価値を高めることが可能になる。
【0065】
(電磁ブレーキの制御装置の変形例)
図7は、本発明の他の実施の形態にかかる制御装置1の構成を説明するための回路図であり、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給のオンオフを高速化させる電力オンオフ回路41が設けられている場合の図である。
図8は、
図7に示す電力オンオフ回路41が使用された場合のモータ7の非常停止時における制御システム6の作用を説明するための波形図である。
【0066】
上述した形態において、制御装置1は、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給のオンオフ制御を行う電力オンオフ回路41を備えていても良い。電力オンオフ回路41は、電源5とブレーキ制御回路4との間に配置されている。電力オンオフ回路41は、2個のトランジスタ42、43を備えている。トランジスタ42は、PNP型のトランジスタであり、トランジスタ42のエミッタは、電源5に接続され、トランジスタ42のコレクタは、ブレーキ制御回路4に接続されている。トランジスタ42がオン状態になると、ブレーキ制御回路4に電力が供給され、トランジスタ42がオフ状態になると、ブレーキ制御回路4への電力供給が停止される。
【0067】
トランジスタ43は、NPN型のトランジスタである。トランジスタ43のコレクタは、抵抗44およびコンデンサ45を介してトランジスタ42のベースに接続されている。トランジスタ43のエミッタは、接地されている。トランジスタ43のベースには、駆動信号が入力される。駆動信号は、たとえば、矩形波状のオンオフ信号である。トランジスタ42は、トランジスタ43のベースに入力される駆動信号に応じて電源5からブレーキ制御回路4への電力供給のオンオフ動作を行う。この変形例におけるトランジスタ42は、第2の半導体スイッチである。
【0068】
制御装置1が電力オンオフ回路41を備えている場合、モータ7を非常停止させるときの、ブレーキ制御回路4の入力電圧等の波形は、
図8に示すような波形となる。モータ7を非常停止させるときの電力供給時間T2と電力供給停止時間T3とは、トランジスタ43のベースに入力される駆動信号に応じて決まる。制御装置1が電力オンオフ回路41を備えている場合には、制御装置1が電力オンオフ回路41を備えていない場合よりも、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給開始後、ブレーキ制御回路4の入力電圧を急激に立ち上げることが可能になるため、コイル3に印加される電圧を急激に立ち上げて、制動状態の電磁ブレーキ2を早期に解放状態とすることが可能になる。したがって、この変形例では、電力供給時間T2がより短くなっても、電磁ブレーキ2を解放状態にすることが可能になり、その結果、1/(T2+T3)の動作周波数をさらに高めたリニア制動制御を実現することが可能になる。
【0069】
(他の実施の形態)
上述した形態において、トランジスタ23は、NPN型のトランジスタであっても良い。この場合には、たとえば、トランジスタ23のコレクタはコイル3の一端に接続され、トランジスタ23のエミッタは接地されている。また、コイル3の他端には電源5が接続されている。トランジスタ23のベースには、たとえば、トランジスタ31のエミッタとトランジスタ36のエミッタとが接続されている。また、トランジスタ23がNPN型のトランジスタである場合には、トランジスタ23のベースに第1駆動信号と第2駆動信号とが直接入力されても良い。
【0070】
上述した形態において、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給開始後、コイル3に電圧が印加され始めるまでにタイムラグが生じるようにブレーキ制御回路4が構成されていても良い。たとえば、上述した特許文献1の直流電圧制御回路のようにブレーキ制御回路4が構成されていても良い。この場合であっても、電力供給時間T2が長ければ、モータ7を非常停止させるときに、電磁ブレーキ2を解放状態にすることが可能になり、その結果、電磁ブレーキ2の制動状態と電磁ブレーキ2の解放状態とを交互に繰り返させることが可能になる。
【0071】
上述した形態において、モータ7を非常停止させるときに、電源5からブレーキ制御回路4への電力供給開始後、所定時間T1を経過した後も、第1の電圧をコイル3に印加し続けて電磁ブレーキ2の解放状態を維持するように、ブレーキ制御回路4が構成されていても良い。
【0072】
上述した形態において、制御システム6は、ブレーキ制御回路4を備えていなくても良い。この場合には、制御装置1からコイル3に直接、電圧が印加される。この場合であっても、モータ7を非常停止させるときに、制御装置1が、電磁ブレーキ2の制動状態と電磁ブレーキ2の解放状態とが交互に繰り返されるように、電源5からコイル3への電力供給と、電源5からコイル3への電力供給を一時停止する電力供給停止とを交互に繰り返した後、電源5からコイル3への電力供給を停止することで、上述した形態と同様に、モータ7を非常停止させる場合であっても、アーム8の慣性モーメントに起因する過剰な負荷が減速機9に作用するのを抑制することが可能になる。
【0073】
上述した形態において、モータ7を急停止させても減速機9が破損するおそれがないのであれば、モータ7を非常停止させるときに、電力供給と電力供給停止とを交互に繰り返すことなく、ブレーキ制御回路4への電力供給を即座に完全停止しても良い。この場合には、電源5は蓄電池19を備えていなくても良い。また、上述した形態において、半導体スイッチ23は、トランジスタ以外の物であっても良い。たとえば、半導体スイッチ23は、高速応答性に優れたMOS-FETまたはサイリスタであっても良い。また、上述した形態において、電磁ブレーキ2が誤動作するおそれがないのであれば、発振回路35は、第1駆動信号が停止するタイミングで、第2駆動信号を生成して出力し始めても良い。
【0074】
上述した形態において、ブレーキ制御回路4は、トランジスタ23に代えて、第1駆動信号に基づいてオンオフ動作を行うトランジスタと、第2駆動信号に基づいてオンオフ動作を行うトランジスタとを個別に備えていても良い。すなわち、ブレーキ制御回路4は、コイル3に接続される半導体スイッチとして、第1駆動信号に基づいてオンオフ動作を行う半導体スイッチと、第2駆動信号に基づいてオンオフ動作を行う半導体スイッチとを個別に備えていても良い。また、上述した形態において、ブレーキ制御回路4が実装される制御基板が電磁ブレーキ2の外部に設置されていても良い。すなわち、電磁ブレーキ2は、ブレーキ制御回路4が実装される制御基板を備えていなくても良い。さらに、上述した形態において、モータ7は、アーム8以外の物を駆動させる駆動源として使用されても良い。
【符号の説明】
【0075】
1 制御装置(電磁ブレーキの制御装置)
2 電磁ブレーキ
3 コイル
4 ブレーキ制御回路
5 電源
6 制御システム(電磁ブレーキの制御システム)
17 制御基板
19 蓄電池
23 トランジスタ(半導体スイッチ)
24 第1駆動信号停止回路
25 第2駆動信号生成回路
27 抵抗
28 コンデンサ
42 トランジスタ(第2の半導体スイッチ)
T1 所定時間
T2 電力供給時間
T3 電力供給停止時間