(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086121
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】プロテインの異味異臭改善剤
(51)【国際特許分類】
A23L 27/20 20160101AFI20220602BHJP
A23L 27/21 20160101ALI20220602BHJP
【FI】
A23L27/20 D
A23L27/20 E
A23L27/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197967
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】591011410
【氏名又は名称】小川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡本 亜依
(72)【発明者】
【氏名】高橋 麻衣子
【テーマコード(参考)】
4B047
【Fターム(参考)】
4B047LG08
4B047LG14
(57)【要約】
【課題】乳プロテインの獣臭および植物性プロテインの豆臭といった特有の不快臭に加え、粉っぽい不快な異味を同時に改善する異味異臭改善剤、および当該改善剤によりプロテイン含有飲食品の不快臭および粉っぽい不快な異味を改善する方法、さらに当該方法により不快臭および粉っぽい不快な異味が改善されたプロテイン含有食品を提供することである。
【解決手段】キナ酸およびスピラントールを有効成分とするプロテインの異味異臭改善剤もしくは当該改善剤を含む香料組成物をプロテイン含有飲食品に添加することである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キナ酸およびスピラントールを有効成分とするプロテインの異味異臭改善剤。
【請求項2】
キナ酸/スピラントールの質量部の比率が0.0002~50000000であることを特徴とする請求項1に記載の異味異臭改善剤。
【請求項3】
キナ酸とスピラントールを、キナ酸/スピラントールの質量部の比率が、プロテイン含有固形食品で0.0002~50000000、プロテイン含有液状食品で0.001~10000000となるよう配合することを特徴とする請求項1に記載の異味異臭改善剤。
【請求項4】
プロテインが、乳プロテインおよび/または植物性プロテインである請求項1~3のいずれか一項に記載の異味異臭改善剤。
【請求項5】
植物性プロテインが大豆、エンドウ豆、アーモンド、ヘンプシード、米、小麦、オーツ麦およびココナッツから選択される1種以上である請求項1~4のいずれか一項に記載の異味異臭改善剤。
【請求項6】
乳プロテインがカゼインプロテインおよび/またはホエイプロテインである請求項1~4のいずれか一項に記載の異味異臭改善剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の異味異臭改善剤を含有する香料組成物。
【請求項8】
キナ酸とスピラントールを、キナ酸/スピラントールの質量部の比率が0.0002~50000000となるよう配合することを特徴とする、請求項7に記載の香料組成物。
【請求項9】
キナ酸とスピラントールを、キナ酸/スピラントールの質量部の比率が、プロテイン含有固形状食品で0.0002~50000000、プロテイン含有液状食品で0.001~10000000となるよう配合することを特徴とする、請求項7または8のいずれかに記載の香料組成物。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項に記載の香料組成物を、キナ酸の濃度が0.0001~5000ppm (但し、0.0001ppm、5000ppmは含まない)、スピラントールの濃度が0.001~50000ppb(但し、0.001ppb、50000ppbは含まない)となるよう添加したプロテイン含有飲食品。
【請求項11】
請求項7~9のいずれか一項に記載の香料組成物を、キナ酸の濃度が0.0001~5000ppm (但し0.0001ppm、5000ppmは含まない)、スピラントールの濃度が0.001~50000ppb(但し0.001ppb、50000ppbは含まない)となるよう添加したプロテイン含有固形食品。
【請求項12】
請求項7~9のいずれか一項に記載の香料組成物を、キナ酸の濃度が0.0001~200ppm(但し0.0001ppm、200ppmは含まない)、スピラントールの濃度が0.001~2000ppb(但し0.001ppb、2000ppbは含まない)となるよう添加したプロテイン含有液状食品。
【請求項13】
プロテインが、乳プロテインおよび/または植物性プロテインである請求項10~12に記載のプロテイン含有飲食品。
【請求項14】
植物性プロテインが大豆、エンドウ豆、アーモンド、ヘンプシード、米、小麦、オーツ麦およびココナッツから選択される1種以上である請求項10~13のいずれか一項に記載のプロテイン含有飲食品。
【請求項15】
乳プロテインがカゼインプロテインおよび/またはホエイプロテインであることを特徴とする請求項10~13のいずれか一項に記載のプロテイン含有飲食品。
【請求項16】
請求項7~9のいずれか一項に記載の香料組成物を、キナ酸の濃度が0.0001~5000ppm (但し、0.0001ppm、5000ppmは含まない)、スピラントールの濃度が0.001~50000ppb(但し、0.001ppb、50000ppbは含まない)となるようプロテイン含有飲食品に添加することを特徴とする、プロテインの異味異臭改善方法。
【請求項17】
請求項7~9のいずれか一項に記載の香料組成物を、キナ酸の濃度が0.0001~5000ppm (但し0.0001ppm、5000ppmは含まない)、スピラントールの濃度が0.001~50000ppb(但し0.001ppb、50000ppbは含まない)となるようにプロテイン含有固形食品に添加することを特徴とするプロテインの異味異臭改善方法。
【請求項18】
請求項7~9のいずれかに記載の香料組成物を、キナ酸の濃度が0.0001~200ppm(但し0.0001ppm、200ppmは含まない)、スピラントールの濃度が0.001~2000ppb(但し0.001ppb、2000ppbは含まない)となるようにプロテイン含有液状食品に添加することを特徴とするプロテインの異味異臭改善方法。
【請求項19】
プロテインが、乳プロテインおよび/または植物性プロテインである請求項16~18に記載のプロテインの異味異臭改善方法。
【請求項20】
植物性プロテインが大豆、エンドウ豆、アーモンド、ヘンプシード、米、小麦、オーツ麦およびココナッツから選択される1種以上である請求項16~19のいずれか一項に記載のプロテインの異味異臭改善方法。
【請求項21】
乳プロテインがカゼインおよび/またはホエイプロテインであることを特徴とする請求項16~19のいずれか一項に記載のプロテインの異味異臭改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物性または植物性プロテインの異味異臭改善剤および改善方法、さらに当該改善剤を添加し異味異臭が改善された動物性または植物性プロテイン含有飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテインは近年、重要な栄養素としての認識が進み、スポーツ人口の増加により一般への普及が拡がるのに加え、美容やダイエット、加齢に伴うロコモティブ症候群等の運動器障害の予防等、利用目的も多様化し、需要はより一層拡大している。これを受け、手軽かつ効率的に必要量のプロテインを摂取できるプロテイン含有飲食品のニーズが高まり、複数種類のプロテインを比較的多量に配合したプロテインパウダーやプロテインバー等の商品が多種多様に流通するようになってきている。
【0003】
プロテインはその由来原料から大きく動物性、植物性の2種類に大別される。動物性は乳に含まれるカゼインプロテインやホエイプロテイン、植物性は大豆(ソイ)プロテインやエンドウ豆(ピー)プロテイン、アーモンドプロテイン等が代表的である。
プロテイン含有飲食品は、スポーツ時に必要な筋力の維持増強を目的として摂取するものが主流であるため、ホエイプロテインを配合した商品が大半であるが、昨今は一般消費者の健康や美容への意識の高まりから、植物性プロテインへの注目が集まり、これを配合した商品の市場も大幅に拡大している。
【0004】
一方でプロテインには特有の臭いや異味がある。乳プロテインには獣臭、植物性プロテインにおいては豆臭さや枯草臭等の独特の不快臭がある他、粉っぽい不快な舌触りも共通して有しており、飲食品の風味に悪影響を及ぼし嗜好性を低下させる要因となっているため、こういったプロテインの不快臭や粉っぽい不快な異味を改善する方法が提案されている。尚、本願では「粉っぽい不快な舌触り」は、粉がまとわりつくような重く不快な舌触りを意味し、以降これをプロテインの「異味」と表現する。
【0005】
焙煎大麦抽出物により乳製品の臭みや豆乳の豆臭さを抑制する方法(特許文献1);スクラロースにより小麦粉、大豆粉、米粉、そば粉、ライ麦及びとうもろこし粉等の穀類が持つ粉臭をマスキングする方法(特許文献2);3-メントキシ-1,2-プロパンジオールをはじめとする種々の香料化合物により動植物タンパク質由来の不快臭(メチオナール、2-メチル-3-フランチオール、及びo-アミノアセトフェノンよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物に起因する不快臭)をマスキングする方法(特許文献3);リナロールにより乳タンパク由来のペーパー臭を抑制する方法(特許文献4)が報告されている。また粉っぽさに対しては、リンゴ酸により酸性乳飲料における乳タンパク質由来の粉っぽい後残り感を抑制する方法(特許文献5)が知られている。
【0006】
しかしながら、いずれの方法も不快臭、異味の一部を改善するに留まっており、作用するプロテインの種類も限定的である。さらに、甘味料や香料化合物、酸味料等を有効成分としている点で、それら自身が持つ風味の影響により応用できる飲食品が制限されるという課題もあり、動植物性プロテインのマスキング技術には依然改良の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-191826号公報
【特許文献2】特開2000-152764号公報
【特許文献3】国際公開第2019/39490号公報
【特許文献4】特開2019-41685号公報
【特許文献5】特開2019-41684号公報
【特許文献6】特開2001-321116号公報
【特許文献7】特開2017-23064号公報
【特許文献8】特開2017-23063号公報
【特許文献9】特開2010-4767号公報
【特許文献10】特開2011-45305号公報
【特許文献11】特開2019-187346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、乳プロテインの獣臭および植物性プロテインの豆臭といった特有の不快臭に加え、粉っぽい不快な異味も同時に低減する異味異臭改善剤、並びに、当該改善剤によりプロテイン含有飲食品の不快臭および粉っぽい不快な異味を改善する方法、さらに当該方法により不快臭および粉っぽい不快な異味が改善されたプロテイン含有飲食品の提供を目的とする。
【0009】
本技術によれば、プロテインパウダーやプロテインバー等のプロテイン強化食品や、牛乳や豆乳、アーモンドミルク等、乳プロテインや植物性プロテインを含有する食品を原材料とする一般飲食品等に広く適用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、乳プロテインおよび/または植物性プロテイン含有飲食品にキナ酸およびスピラントールを各々の風味が生じない程度に微量添加するだけで、プロテインに起因する異味異臭が顕著に低減されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は以下を特徴とするものである。
〔1〕キナ酸およびスピラントールを有効成分とするプロテインの異味異臭改善剤。
〔2〕キナ酸/スピラントールの質量部の比率が0.0002~50000000であることを特徴とする上記1に記載の異味異臭改善剤。
〔3〕キナ酸とスピラントールを、キナ酸/スピラントールの質量部の比率が、プロテイン含有固形食品で0.0002~50000000、プロテイン含有液状食品で0.001~10000000となるよう配合することを特徴とする、上記1に記載の異味異臭改善剤。
〔4〕プロテインが、乳プロテインおよび/または植物性プロテインである上記1~3のいずれかに記載の異味異臭改善剤。
〔5〕植物性プロテインが、大豆、エンドウ豆、アーモンド、ヘンプシード、米、小麦、オーツ麦およびココナッツから選択される1種以上である上記1~4のいずれかに記載の異味異臭改善剤。
〔6〕乳プロテインが、カゼインプロテインおよび/またはホエイプロテインである上記1~4のいずれかに記載の異味異臭改善剤。
【0012】
〔7〕上記1~6のいずれかに記載の異味異臭改善剤を含有する香料組成物。
〔8〕キナ酸とスピラントールを、キナ酸/スピラントールの質量部の比率が0.0002~50000000となるよう配合することを特徴とする、上記7に記載の香料組成物。
〔9〕キナ酸とスピラントールを、キナ酸/スピラントールの質量部の比率が、プロテイン含有固形状食品で0.0002~50000000、プロテイン含有液状食品で0.001~10000000となるよう配合することを特徴とする、上記7または8のいずれかに記載の香料組成物。
【0013】
〔10〕上記7~9のいずれかに記載の香料組成物を、キナ酸が0.0001~5000ppm (但し、0.0001ppm、5000ppmは含まない)、スピラントールの濃度が0.001~50000ppb(但し、0.001ppb、50000ppbは含まない)となるよう添加したプロテイン含有飲食品。
〔11〕上記7~9のいずれかに記載の香料組成物を、キナ酸の濃度が0.0001~5000ppm (但し0.0001ppm、5000ppmは含まない)、スピラントールの濃度が0.001~50000ppb(但し0.001ppb、50000ppbは含まない)となるよう添加したプロテイン含有固形食品。
〔12〕上記7~9のいずれかに記載の香料組成物を、キナ酸の濃度が0.0001~200ppm(但し0.0001ppm、200ppmは含まない)、スピラントールの濃度が0.001~2000ppb(但し0.001ppb、2000ppbは含まない)となるよう添加したプロテイン含有液状食品。
〔13〕プロテインが、乳プロテインおよび/または植物性プロテインである上記10~12に記載のプロテイン含有飲食品。
〔14〕植物性プロテインが大豆、エンドウ豆、アーモンド、ヘンプシード、米、小麦、オーツ麦およびココナッツから選択される1種以上である上記10~13のいずれかに記載のプロテイン含有飲食品。
〔15〕乳プロテインが、カゼインプロテインおよび/またはホエイプロテインである上記10~13のいずれかに記載のプロテイン含有飲食品。
【0014】
〔16〕上記7~9のいずれかに記載の香料組成物を、キナ酸の濃度が0.0001~5000ppm (但し、0.0001ppm、5000ppmは含まない)、スピラントールの濃度が0.001~50000ppb(但し、0.001ppb、50000ppbは含まない)となるようプロテイン含有飲食品に添加することを特徴とする、プロテインの異味異臭改善方法。
〔17〕上記7~9のいずれかに記載の香料組成物を、キナ酸の濃度が0.0001~5000ppm (但し0.0001ppm、5000ppmは含まない)、スピラントールの濃度が0.001~50000ppb(但し0.001ppb、50000ppbは含まない)となるようにプロテイン含有固形食品に添加することを特徴とするプロテインの異味異臭改善方法。
〔18〕上記7~9のいずれかに記載の香料組成物を、キナ酸の濃度が0.0001~200ppm(但し0.0001ppm、200ppmは含まない)、スピラントールの濃度が0.001~2000ppb(但し0.001ppb、2000ppbは含まない)となるようにプロテイン含有液状食品に添加することを特徴とするプロテインの異味異臭改善方法。
〔19〕プロテインが、乳プロテインおよび/または植物性プロテインである上記16~18に記載のプロテインの異味異臭改善方法。
〔20〕植物性プロテインが大豆、エンドウ豆、アーモンド、ヘンプシード、米、小麦、オーツ麦およびココナッツから選択される1種以上である上記16~19のいずれかに記載のプロテインの異味異臭改善方法。
〔21〕乳プロテインがカゼインおよび/またはホエイプロテインである上記16~19のいずれかに記載のプロテインの異味異臭改善方法。
【0015】
キナ酸には、苦渋味を抑制する効果(特許文献6)、スピラントールには脂肪族脂肪酸臭の低減効果(特許文献7)や乳脂の後残りを改善する効果(特許文献8)があることが知られている。また、キナ酸とスピラントールの併用効果として、カリウム塩特有のエグ味や金属味等の改善効果(特許文献9)、さらにバニラポリフェノールとの併用で高甘味度甘味料の苦味やエグ味、収れん味の抑制効果(特許文献10)、羅漢果抽出物との併用で青汁の青臭みや苦渋味の低減効果(特許文献11)があることも報告されている。しかし、乳および植物性プロテインの不快臭や、粉っぽい不快な異味を同時に低減する効果があることはこれまで一切知られていなかった。
【発明の効果】
【0016】
本発明の異味異臭改善剤は、乳プロテインに特有の獣臭および植物性プロテインに特有の豆臭に加え、粉っぽい不快な異味も抑制するため、プロテイン含有飲食品の風味を大幅に改善することができる。また、最終飲食品の風味に影響を与えない程度の微量で十分な効果を発揮することから、最終飲食品における多彩な風味付けを可能にし、プロテイン含有飲食品の嗜好性向上にも寄与する。さらに、キナ酸とスピラントールは植物から抽出できる成分であるため、菜食主義等の天然志向の飲食品にも幅広く活用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0018】
〔1〕異味異臭改善剤の有効成分
本発明のプロテインの異味異臭改善剤は、その有効成分としてキナ酸およびスピラントールを含有する。本発明のプロテインの異味異臭改善剤におけるキナ酸/スピラントールの質量部の比率は、プロテイン含有固形食品に使用する場合は0.0002~50000000が好ましく、プロテイン含有液状食品に使用する場合は0.001~10000000が好ましい。
【0019】
(1)キナ酸
キナ酸(1,3,4,5-テトラヒドロキシシクロヘキサン-1-カルボン酸)は、クランベリー果汁等に多く存在する他、クロロゲン酸等のキナ酸誘導体として植物中に広く分布し、植物から抽出等の方法により得ることができる。また、化学的に合成することも可能であり、試薬等として市販されている。本発明においては市販されているキナ酸をそのまま使用することが可能であるが、呈味改善剤として飲食品に使用することを考慮すると、果汁、茶、コーヒー等の可食性植物原料から得られるキナ酸を含有する組成物を使用するのが好ましく、特にキナ酸含有量が多く入手も容易な茶葉やコーヒー豆を原料とするのが好ましい。具体的には茶葉及びコーヒー豆から以下のように得ることができる。
【0020】
(a)茶葉からの抽出方法
原材料の茶葉は、ツバキ科茶の樹(Camellia sinensis var.)の芽、葉、茎であり、品種、産地を問わず使用することができ、また、生であっても、前処理を施したものであってもよい。茶の前処理方法としては不発酵、半発酵、発酵があるが、いずれの処理方法によるものでもよい。不発酵茶としては緑茶(煎茶、玉露、かぶせ茶、番茶、玉緑茶、抹茶、ほうじ茶等)、半発酵茶としてはウーロン茶、包種茶等、発酵茶としては紅茶が挙げられる。いずれの茶葉も原料として使用できるが、キナ酸の収率等の観点から紅茶葉を原料とするのが好ましい。
【0021】
抽出原材料の茶葉を水及び/又は極性有機溶媒を用いて抽出する。極性有機溶媒としてはメタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン等の溶媒が例示され、これらの1種または2種以上の混合物を用いることができ、必要に応じて水との混合形態すなわち水溶液の形で使用される。抽出に用いる溶媒は人体への安全性と取扱性の観点から水またはエタノール、プロパノール、ブタノールのような炭素数2~4の脂肪族アルコールが望ましく、特に水またはエタノールまたはこれらの混合物が最も望ましい。
【0022】
抽出に用いる溶媒の量は任意に選択できるが、一般には茶葉の1~30倍量(質量)が用いられ、好ましくは5~20倍量が用いられる。抽出の温度及び時間は任意に定めることができ、特に限定されるものではないが、10~100℃にて1~12時間、好ましくは1~2時間が適当である。
【0023】
得られた抽出液から不溶物を除去し、必要に応じて濃縮した後、下活性炭、シリカゲル、合成吸着剤に例示される吸着剤に接触させて精製処理を行うことにより、キナ酸を含む液状組成物が得られる。得られた液状組成物はそのまま、もしくは必要に応じ減圧濃縮や凍結乾燥などにより溶媒を除去し、粉末状にして使用することができる。
【0024】
(b)コーヒー豆からの抽出方法
原材料のコーヒー豆は、産地品種により制限されることなく任意の豆を用いることができる。生のコーヒー豆にはキナ酸はクロロゲン酸等の誘導体として多量に含まれているが、焙煎したコーヒー豆には焙煎時にクロロゲン酸類が加水分解されてキナ酸が生じている。従って、原材料が焙煎したコーヒー豆である場合は、焙煎コーヒー豆をそのまま又は粉砕して水及び/又は水溶性溶媒により抽出し、得られた抽出液を茶葉の場合と同様の精製工程に付することにより、本発明の呈味改善剤とすることができる。コーヒー生豆を用いる場合は、生豆の抽出により得られるクロロゲン酸等を含む抽出液を以下のように酵素又はアルカリを用いて加水分解する。
【0025】
(酵素による加水分解)
コーヒー生豆をそのまま又は粉砕して水及び/又は水溶性溶媒により抽出する。水溶性溶媒としてはメタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン等の溶媒が例示され、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができ、必要に応じて水溶液の形で使用される。
【0026】
抽出法は一般に用いられる条件で可能であり、特に限定されるものではないが、抽出溶媒の量はコーヒー豆の1~30倍量が用いられ、好ましくは5~20倍量が用いられる。抽出の温度及び時間は任意に定めることができ、特に限定されるものではないが、50~100℃にて1~24時間、好ましくは2~8時間が適当である。
【0027】
抽出液は不溶物を除去した後、必要に応じて濃縮工程を経て、酵素分解される。得られた抽出液が水抽出液の場合はそのまま、水溶性溶媒を含む場合は濃縮等により水溶性溶媒の量を5%以下にした後、酵素処理を行うことが望ましい。
【0028】
酵素分解にはタンナーゼ又はクロロゲン酸エステラーゼが用いられる。利用できるタンナーゼの種類としては特に限定されるものではなく、麹菌などの糸状菌、酵母、細菌などの微生物、特に Aspergillus属や Penicillium属から産生されるタンナーゼを挙げることができるが、好ましくは Aspergillus属、特に好ましくは Aspergillus oryze から産生されるタンナーゼが用いられる。
【0029】
利用できるクロロゲン酸エステラーゼの種類についても特に限定されるものではなく、Aspergillus属、Penicillium属、Botrytis属などの糸状菌により産生されるものを挙げることができるが、好ましくは Aspergillus属、特に好ましくは Aspergillus japonics や Aspergillus niger から産生されるクロロゲン酸エステラーゼが用いられる。
【0030】
これらの酵素は、市販されており、例えばキッコーマン株式会社の製品により入手することができる。また、これらの酵素は各種の固定化方法により固定化したものを使用することで、更に高い効果を得ることも可能となる。
【0031】
酵素分解の条件は特に限定されるものではないが、好ましくは30~50℃で1~48時間、更に好ましくは35~45℃で2~24時間が適当である。コーヒー豆抽出物を酵素にて加水分解処理し、不溶物を除去後、加水分解処理物を吸着剤と接触させて精製し、キナ酸を含むコーヒー豆加水分解物を得る。これをアンバーライトIR(オルガノ株式会社)のような陽イオン交換樹脂、スチレン-ジビニルベンゼン系合成吸着剤ダイヤイオンHP(三菱化学株式会社)などの吸着剤に接触させ、精製することによりキナ酸を含有する液状組成物を得ることができる。
【0032】
(アルカリによる加水分解)
アルカリ加水分解を行う場合は、コーヒー豆を微粉砕し、これにアルカリ水溶液を加えて60~90℃で10~60分間加熱攪拌する。アルカリ水溶液としては、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの水溶液が用いられ、好ましくは水酸化カルシウムが用いられる。
【0033】
加水分解後、反応液に、塩酸、硫酸、蓚酸、リン酸などの酸を加えて中和処理した後、イオン交換膜電気透析装置にかけ、中和により生成した塩を、陰イオン交換膜分画分子量100~300相当膜もしくは陽イオン交換膜で除去することにより、キナ酸を含有する液状組成物を得ることができる。
【0034】
酵素もしくはアルカリ加水分解により得られたキナ酸含有液状組成物はその
まま、もしくは必要に応じ減圧濃縮や凍結乾燥などにより溶媒を除去し、粉末状にして使用することができる。
【0035】
(2)スピラントール
スピラントール(N-イソブチル-2,6,8-デカトリエンアミド)は、キク科オランダセンニチ(Spilanthes acmella)、キバナオランダセンニチ(Spilanthes acmella var. oleracea)等に含まれる辛味成分である。スピラントールは前記植物から採取、精製することにより得られる他、化学的に合成することも可能である。本発明ではいずれの方法により得られたスピラントールであっても使用でき、また、純度が高いものである必要はない。
【0036】
他の成分の味やにおいが飲食品の香味に影響を与えない場合は、スピラントールを含有する植物の抽出物や精油等を精製することなく使用してもよい。安全性の観点からは食経験のある植物から得られる抽出物又は精油を使用することが好ましく、また、供給、価格等の実用性の観点から、スピラントール含量の多いオランダセンニチ又はキバナオランダセンニチの抽出物又は精油を使用するのが特に好ましい。
【0037】
スピラントールの抽出法を例示すると、オランダセンニチ又はキバナオランダセンニチの花頭を乾燥・粉砕した後、有機溶媒で抽出してスピラントールを含有する抽出液を得る方法が挙げられる。
【0038】
抽出に使用する有機溶媒は特に制限はなく、メタノール、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類を適宜単独で、又は混合して使用することができる。中でも、アルコール類のような極性有機溶媒が好ましく、安全性の観点から特にエタノールが好ましい。
【0039】
得られた抽出液から溶媒を留去すると、スピラントール含有抽出物が得られる。抽出物に含まれているスピラントール以外の成分が飲食品の香味に与える影響が問題となるような場合には、さらに蒸留等の精製方法によりスピラントール含量を高めて使用することが好ましい。精製方法としては分子蒸留、薄膜蒸留、各種クロマトグラフィー等を挙げることができ、これらの精製方法を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、よりスピラントール含量の高い抽出物を得ることができる。
【0040】
〔2〕香料組成物
本発明の異味異臭改善剤は、単独でプロテイン含有飲食品に添加することもできるが、飲食品用の他の香料素材と組み合わせて、プロテインの異味異臭改善剤用の香料組成物として使用することもできる。他の香料素材としては、天然香料、合成香料を問わず広く採用することができ、例えば特許庁公報「周知慣用技術集(香料)第II部 食品用香料」(平成12(2000)年1月14日発行、日本国特許庁)に記載された香料(精油、エッセンス、アブソリュート、エキストラクト、オレオレジン、回収フレーバー、炭酸ガス抽出精油、微生物・酵素フレーバー、加熱調理フレーバー、単離香料、合成香料など)を挙げることができる。
【0041】
本発明の上記有効成分はそのまま、或いは他の香料素材と組み合わせた香料組成物として、必要に応じてエタノール、プロピレングリコール、グリセリン等の溶剤に溶解してプロテインを含有する飲食品に添加できる。さらに、一般的に用いられる乳化剤や賦形剤を添加し常法に従って乳化香料、粉末香料として使用することもできる。
【0042】
上記有効成分のプロテイン含有飲食品への添加の時期は特に制限なく、プロテイン含有飲食品の製造工程の各段階で適宜添加することができる。プロテイン含有飲食品の製造が殺菌工程を含む場合は、一般的には殺菌工程の前に添加するが、上記有効成分又はこれを含む香料組成物を膜濾過等で除菌することにより、殺菌工程の後に添加することもできる。
【0043】
本発明の異味異臭改善剤は他に、酸化防止剤、食塩、糖類、着色料、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、発色剤、pH調整剤など、飲食品に一般的に使用される各種の添加剤を必要に応じて適宜配合しても良い。また、異味異臭改善剤は固形状、液状のいずれの形態でも良い。
【0044】
〔3〕酸化防止剤
本発明に使用される酸化防止剤としては、例えばミックストコフェロール、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、γ-オリザノール、天然抽出抗酸化剤等が例示され、適宜選択して使用される。
【0045】
〔4〕糖類
本発明に使用される糖類としては、スクロース、グルコース、フルクトース、ガラクトースなどが例示され、適宜選択して使用される。
【0046】
〔5〕着色料
本発明に使用される着色料としては、例えば、β-カロチン、アナトー色素、ウコン色素、エビ色素、オキアミ色素、オレンジ色素、クロロフィリン、クロロフィル、コーン色素、ササ色素、イモカロチン、デュナリエラカロチン、ニンジンカロチン、パーム油カロチン、トマト色素、パブリカ色素、ファフィア色素、ヘマトコッカス藻色素、ベニコウジ色素、マリーゴールド色素などが例示され、適宜選択して使用される。
【0047】
〔6〕乳化剤
本発明で用いられる乳化剤は、可食性乳化剤であれば特に限定されることはない。具体的には、アラビアガム、改質アラビアガム、ガティガム、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、有機酸モノグリセリド、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ゼラチン、カゼインナトリウム、レシチン、キサンタンガム、トラガントガム、グァーガム、アルギン酸、エンジュサポニン、オオムギ穀皮抽出物、ダイズサポニン、ステロール、スフィンゴ脂質、ステアロイル乳酸カルシウム、胆汁末、チャ種子サポニン、トマト糖脂質、ビートサポニン、ユッカフォーム抽出物などが例示され、好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、オクテニルコハク酸修飾アラビアガム、ゼラチン、カゼインナトリウム及びレシチンから選ばれる1種又は2種以上が用いられる。
【0048】
〔7〕プロテイン含有飲食品
本発明の異味異臭改善剤は、飲食品中に含有する乳プロテインや植物性プロテインに起因し、その特有の獣臭や豆臭、粉っぽい不快な異味をもたらすようなプロテイン含有飲食品、例えば、栄養補助または強化目的で複数種類のプロテインを比較的多量に配合し風味調整したプロテインバー、プロテイン粉末飲料の他、プロテイン含有量を増加させた清涼飲料やスープ、調理食品および菓子、冷菓等の飲食品に使用できる。
【0049】
また牛乳の代わりに豆乳、アーモンドミルク等の植物性ミルクを使用した飲料やアイスクリーム等の冷菓、大豆等の豆類を原料として製造される代替肉(畜肉の代用品)等の飲食品にも使用することができる。
特に、粉末や顆粒状に加工されたプロテインは特有の獣臭や豆臭、粉っぽい不快な異味がより強く発現するため、これを多く配合しているプロテインバーやプロテイン粉末飲料には本発明の異味異臭改善剤が好適に使用可能である。
【0050】
尚、本願では、プロテイン含有飲食品のうち、飲料(粉末飲料を含む)やスープ、ゼリー等、液状で喫食するものを液状食品とし、ビスケットやシリアルバー、代替肉等、固形で喫食するものを固形食品とする。
【0051】
乳プロテインや植物性プロテインは飲食品に一般に含有されるものであれば特に制限は無いが、本発明の異味異臭改善剤が好適に使用できる乳プロテインとしてはカゼインプロテイン、ホエイプロテイン、植物性プロテインとしてはソイ(大豆)プロテイン、ピー(エンドウ豆)プロテイン、アーモンドプロテイン、ヘンププロテイン、ライスプロテイン、小麦プロテイン、オーツプロテイン、ココナッツプロテイン等が挙げられる。特にホエイプロテイン、ソイプロテイン、ピープロテインには、本発明の異味異臭改善剤が好適に使用可能である。
【0052】
〔8〕プロテイン由来の異味異臭改善方法
本発明のプロテインの異味異臭の改善方法は、プロテイン含有飲食品に本発明の異味異臭改善剤もしくは当該改善剤を含有する香料組成物を添加することを特徴とする。その際、有効成分のキナ酸とスピラントールは含量が過度に低いと十分な効果を発揮できず、一方で過度に含量が高いとそれぞれが持つ風味が飲食品の風味に好ましくない影響を及ぼしてしまうおそれがある。
【0053】
そのため、本発明の異味異臭改善剤もしくはこれを含む香料組成物は、プロテインを含有する固形食品に対しては、キナ酸が0.0001~5000ppm (但し、0.0001ppm、5000ppmは含まない)、スピラントールが0.001~50000ppb(但し0.001ppb、50000ppbは含まない)となるよう添加するのが好ましく、より好ましい濃度はキナ酸が0.001~500ppm、スピラントールが0.01~5000ppbであり、さらに好ましい濃度はキナ酸が2~500ppm、スピラントールが10~5000ppbである。
【0054】
また、プロテインを含有する液状食品に対しては、キナ酸が0.0001~200ppm(但し0.0001ppm、200ppmは含まない)、スピラントールの濃度が0.001~2000ppb(但し0.001ppb、2000ppbは含まない)となるよう調整するのが好ましく、より好ましい濃度はキナ酸が0.001~100ppm、スピラントールが0.01~1000ppbであり、さらに好ましい濃度はキナ酸が2~100ppm、スピラントールが10~1000ppbである。
【0055】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0056】
〔試験例1〕(プロテインの異味異臭の評価)
市販されている粉末のソイプロテイン、ピープロテイン、ホエイプロテイン(固形食品)と、各々を10倍量の水に溶解し液状にしたもの(液状食品)それぞれについて、訓練されたパネラーによる官能評価を行い、ソイプロテイン、ピープロテインは豆臭、粉っぽい不快な異味をもつこと、ホエイプロテインは獣臭、粉っぽい不快な異味をもつことを確認し、これら異味異臭の改善効果を検証した。
【0057】
<1>プロテイン含有固形食品
〔試験例2〕(キナ酸およびスピラントールによる異味異臭改善効果)
プロテイン含有固形食品のモデルサンプルとして、プロテインを約80質量%含有する市販の(a)ソイプロテイン粉末、(b)ピープロテイン粉末(c)ホエイプロテイン粉末を用意し、これらにキナ酸、スピラントールを単独添加したサンプル(比較例1~6)と、両成分を添加したサンプル(実施例1~3)とを調整した。
【0058】
4名の専門のパネリストが官能評価を行い、下記の基準でプロテインの異味異臭の改善効果を評価した。同時にキナ酸、スピラントールの添加による香味の変調などを考慮して、総合的に評価を行った。
(異味異臭の抑制効果の評価)
× 改善効果を感じない
△ 改善効果をほとんど感じない
○ 改善効果を感じる
◎ 改善効果を強く感じる
【0059】
(表1:キナ酸およびスピラントールの併用効果検証結果)
【表1】
評価結果は(a)~(c)いずれのプロテインでも表1の通りとなった。キナ酸、スピラントールは(a)~(c)いずれのプロテイン含有固形食品に対しても、各々単独ではほとんど異味異臭改善効果が無いにも関わらず、両成分を併用した場合には、プロテインの異味異臭が大きく低減することがわかった。
【0060】
〔試験例3〕(キナ酸およびスピラントールの有効濃度)
試験例2と同様に(a)~(c)3種の粉末プロテインをベースとして用意し、それぞれについてキナ酸およびスピラントールの添加濃度が異なるサンプルを調整してプロテイン由来の異味異臭の改善効果を確認した。
【0061】
(表2:キナ酸およびスピラントールの有効濃度検証結果)
【表2】
評価結果は(a)~(c)いずれのプロテインでも表2の通りとなった。本発明の異味異臭改善剤は、(a)~(c)のいずれのプロテイン含有固形食品に対しても、キナ酸が0.0001~5000ppm(但し0.0001ppm、5000ppmは含まない)、スピラントールが0.001~50000ppb(但し0.001ppb、50000ppbは含まない)となるよう添加するのが好ましく、より好ましい濃度はキナ酸が0.001~500ppm、スピラントールが0.001~5000ppb、さらに好ましい濃度はキナ酸が2~500ppm、スピラントールが10~5000ppbであることが確認された。
【0062】
プロテイン1質量%に対する濃度としては、キナ酸が0.125×10-5~62.5ppm(但し0.125×10-5ppm、62.5ppmは含まない)、スピラントールが0.125×10-4~625ppb(但し0.125×10-4ppb、625ppbは含まない)となるよう添加するのが好ましく、より好ましい濃度はキナ酸が0.125×10-4~6.25ppm、スピラントールが0.125×10-3~62.5ppb、さらに好ましい濃度はキナ酸が0.025~6.25ppm、スピラントールが0.125~62.5ppbである。
【0063】
〔試験例4〕(キナ酸およびスピラントールの配合比率)
試験例2、3と同様に(a)~(c)の3種の粉末プロテインをベースとして用い、それぞれについてキナ酸、スピンラトールの最適添加濃度範囲内でキナ酸/スピラントールの比率が異なるサンプルを調整し、プロテイン由来の異味異臭の改善効果を確認した。
【0064】
(表3:キナ酸およびスピラントールの配合比率検証結果)
【表3】
評価結果は(a)~(c)いずれのプロテインでも表3の通りとなった。本発明の異味異臭改善剤におけるキナ酸/スピラントールの比率が0.0002~50000000の範囲内であると、(a)~(c)のいずれのプロテイン含有固形状食品に対しても、十分な異味改善効果が得られることがわかった。
【0065】
<2>プロテイン含有液状食品
〔試験例5〕(キナ酸およびスピラントールによる異味異臭改善効果)
プロテイン含有液状食品のモデルサンプルとして、試験例2~4で使用した(a)ソイプロテイン、(b)ピープロテイン(c)ホエイプロテインの粉末をそれぞれ質量比で10倍量の水に溶解したもの(プロテイン含量は8質量%)を用意し、これらにキナ酸、スピラントールを単独添加したサンプル(比較例9~14)と、両成分を添加したサンプル(実施例10~12)とを調整した。
【0066】
試験例2~4と同様の基準で、4名の専門パネリストによる官能評価を行い、液状のプロテイン含有食品における異味異臭改善効果を評価した。
【0067】
(表4:キナ酸およびスピラントールの併用効果検証結果)
【表4】
評価結果は(a)~(c)いずれのプロテインでも表4の通りとなった。キナ酸、スピラントールは(a)~(c)いずれのプロテイン含有液状食品に対しても、各々単独ではほとんど異味異臭改善効果が無いにも関わらず、両成分を併用した場合には、プロテインの異味異臭が大きく低減することがわかった。
【0068】
〔試験例6〕(キナ酸およびスピラントールの有効濃度)
試験例5と同様の液状プロテインサンプルを用い、キナ酸およびスピラントールの添加濃度が異なるサンプルを調整し、プロテイン由来の異味異臭の改善効果を確認した。
【0069】
(表5:キナ酸およびスピラントールの有効濃度検証結果)
【表5】
評価結果は(a)~(c)いずれのプロテインでも表5の通りとなった。本発明の異味異臭改善剤は、(a)~(c)いずれのプロテイン含有液状食品に対しても、キナ酸が0.0001~200ppm(但し0.0001ppm、200ppmは含まない)、スピラントールの濃度が0.001~2000ppb(但し0.001ppb、2000ppbは含まない)となるよう添加するのが好ましく、より好ましい濃度はキナ酸が0.001~100ppm、スピラントールが0.01~1000ppbであり、さらに好ましい濃度はキナ酸が2~100ppm、スピラントールが10~1000ppbであることが確認された。
【0070】
プロテイン1質量%に対する濃度としては、キナ酸が0.125×10-4~25ppm(但し0.125×10-4ppm、25ppmは含まない)、スピラントールが0.125×10-3~250ppb(但し0.125×10-3ppb、250ppbは含まない)となるよう添加するのが好ましく、より好ましい濃度はキナ酸が0.125×10-3~12.5ppm、スピラントールが0.125×10-2~125ppb、さらに好ましい濃度はキナ酸が0.25~12.5ppm、スピラントールが1.25~125ppbである。
【0071】
〔試験例7〕(キナ酸およびスピラントールの配合比率)
試験例5、6と同様の液状プロテインサンプルを用い、キナ酸、スピントールの最適添加濃度範囲で、キナ酸/スピラントールの比率が異なるサンプルを調整し、プロテイン由来の異味異臭の改善効果を確認した。
【0072】
(表6:キナ酸およびスピラントールの配合比率検証結果)
【表6】
評価結果は(a)~(c)いずれのプロテインでも表6の通りとなり、(a)~(c)いずれのプロテイン含有液状食品に対しても、本発明の異味異臭改善剤におけるキナ酸/スピラントールの比率が0.001~10000000の範囲内であると、十分な異味改善効果を得られることがわかった。
【0073】
また、アーモンドプロテイン、オーツプロテイン、ココナッツプロテインについても試験例2~7と同様に固形食品、液状食品それぞれにおいて、キナ酸とスピラントールの効果、最適濃度、最適比率の検証を行ったところ、いずれのプロテインにおいても、同様の濃度範囲および配合比率で十分な異味異臭改善効果が確認された。
【0074】
〔プロテイン含有飲食品への応用例〕
さらに、種々のプロテイン含有飲食品を以下に示す処方例で作成し、本発明の異味異臭改善剤を添加したもの、および無添加のものを比較し当該改善剤の効果を確認した。
【0075】
〔実施例19〕プロテイン補給食品(粉末飲料)
【表7】
処方例の通り原料を配合、撹拌混合しプロテイン含有粉末飲料を作製し、粉末飲料中のキナ酸濃度が2ppm、スピラントール濃度が10ppbとなるよう本発明の異味異臭改善剤を添加した。当該改善剤無添加の粉末飲料と比べるとホエイプロテインの獣臭も粉っぽい異味も大幅に低減され、喫食に適した風味に改善された。
【0076】
〔実施例20〕プロテイン強化飲料(清涼飲料水)
【表8】
処方例の通り原料を配合、撹拌混合した後、容器に充填し殺菌を行い、プロテイン含有清涼飲料水を作製し、飲料中のキナ酸濃度が2ppm、スピラントール濃度が10ppbとなるよう本発明の異味異臭改善剤を添加した。当該改善剤無添加の清涼飲料水と比べると、ホエイプロテインの獣臭も粉っぽい異味も大幅に低減され、喫食に適した風味に改善された。
【0077】
〔実施例21〕プロテイン強化飲料(ゼリー飲料)
【表9】
処方例の通り原料を配合、飲料中のキナ酸濃度が2ppm、スピラントール濃度が10ppbとなるよう本発明の異味異臭改善剤を添加し撹拌混合した後、容器に充填し殺菌を行い、ゼリー飲料を作製した。当該改善剤無添加のゼリー飲料と比べると、ホエイプロテインの獣臭も粉っぽい異味も大幅に低減され、喫食に適した風味に改善された。
【0078】
〔実施例22〕ソイアイス
【表10】
処方例の通り原料を配合、食品中のキナ酸濃度が2ppm、スピラントール濃度が10ppbとなるよう本発明の異味異臭改善剤を添加し撹拌混合し殺菌した後、エージング、フリージングの工程を経て容器に充填しソイアイスを作製した。当該改善剤無添加のソイアイスと比べると、ソイプロテインの豆臭も粉っぽい異味も大幅に低減され、喫食に適した風味に改善された。
【0079】
〔実施例23〕ソイラテ
【表11】
処方例の通り原料を配合、撹拌混合した後、容器に充填し殺菌を行い、ソイラテを作製した。飲料中のキナ酸濃度が2ppm、スピラントール濃度が10ppbとなるよう本発明の異味異臭改善剤を添加した。当該改善剤無添加のソイラテを比べると、ソイプロテインの豆臭も粉っぽい異味も大幅に低減され、喫食に適した風味に改善された。
【0080】
〔実施例24〕プロテインバー
【表12】
処方例の通り原料を配合、食品中のキナ酸濃度が2ppm、スピラントール濃度が10ppbとなるよう本発明の異味異臭改善剤を添加し、撹拌混合した後、成型、焼成しプロテインバーを作製した。当該改善剤無添加のプロテインバーと
比べると、ソイプロテインの豆臭も粉っぽい異味も大幅に低減され、喫食に適した風味に改善された。
【0081】
〔実施例25〕ソイチョコレート
【表13】
処方例の通り原料を配合し粉砕。加熱しながら撹拌混合した後、食品中のキナ酸濃度が2ppm、スピラントール濃度が10ppbとなるよう本発明の異味異臭改善剤を添加し、成形してソイチョコレートを作製した。当該改善剤無添加の
ソイチョコレートと比べると、ソイプロテインの豆臭も粉っぽい異味も大幅に低減され、喫食に適した風味に改善された。
【0082】
〔実施例26〕ソイビスケット
【表14】
処方例の通り原料を配合し食品中のキナ酸濃度が2ppm、スピラントール濃度が10ppbとなるよう本発明の異味異臭改善剤を添加して撹拌混合した後、型抜き、焼成しソイビスケットを作製した。当該改善剤無添加のソイビスケットと比べると、ソイプロテインの豆臭も粉っぽい異味も大幅に低減され、喫食に適した風味に改善された。
【0083】
〔実施例27〕代替肉
【表15】
処方例の通り原料を配合し食品中のキナ酸濃度が2ppm、スピラントール濃度が10ppbとなるよう本発明の異味異臭改善剤を添加して混合した後、成形、焼成、蒸気での加熱処理を行い、代替肉を精製した。当該改善剤無添加の代替肉と比べると、ソイプロテインの豆臭も粉っぽい異味も大幅に低減され、喫食に適した風味に改善された。