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特開2022-86146通信装置、通信システム、通信方法、および通信プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086146
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】通信装置、通信システム、通信方法、および通信プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 74/04 20090101AFI20220602BHJP
   H04W 76/14 20180101ALI20220602BHJP
   H04W 76/28 20180101ALI20220602BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20220602BHJP
【FI】
H04W74/04
H04W76/14
H04W76/28
H04W92/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198001
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000233778
【氏名又は名称】任天堂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130269
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 盛規
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 翔
(72)【発明者】
【氏名】柴田 崇由
(72)【発明者】
【氏名】宮本 賢
(72)【発明者】
【氏名】井村 慶崇
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA13
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE25
5K067GG03
(57)【要約】
【課題】本技術によれば、いずれかのアクセスポイントに接続している通信装置と当該アクセスポイントには接続していない通信装置との間のデータ通信をより簡素な手順で実現できる構成が要望されている。
【解決手段】アクセスポイントに接続可能な通信装置は、アクセスポイントに接続して、第1の通信チャネルでアクセスポイントとの間でデータ通信を行う処理と、アクセスポイントに対して、データ通信の抑制を通知する処理と、データ通信の抑制の通知後、第2の通信チャネルで予め定められた期間に亘ってデータ通信を行う処理と、第2の通信チャネルでのデータ通信後、第1の通信チャネルでアクセスポイントとの間のデータ通信を再開する処理と、第2の通信チャネルでデータ通信を行う処理を実行するタイミングを決定する処理とを、実行するように構成されている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセスポイントに接続可能な通信装置であって、
前記アクセスポイントに接続して、第1の通信チャネルで前記アクセスポイントとの間でデータ通信を行う処理と、
前記アクセスポイントに対して、データ通信の抑制を通知する処理と、
前記データ通信の抑制の通知後、第2の通信チャネルで予め定められた期間に亘ってデータ通信を行う処理と、
前記第2の通信チャネルでのデータ通信後、前記第1の通信チャネルで前記アクセスポイントとの間のデータ通信を再開する処理と、
前記第2の通信チャネルでデータ通信を行う処理を実行するタイミングを決定する処理とを、実行するように構成されている、通信装置。
【請求項2】
前記データ通信の抑制の通知は、PowerSaveモードの通知を含む、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第2の通信チャネルでデータ通信を行う処理を実行するタイミングは、予め定められた周期毎にランダムに決定される、請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記第2の通信チャネルでデータ通信を行う処理が連続して実行されないように、タイミングが決定される、請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記第2の通信チャネルでのデータ通信中に前記アクセスポイントが前記第1の通信チャネルで前記通信装置に送信すべきデータをバッファリングするときに、前記第2の通信チャネルでのデータ通信後から次の前記第2の通信チャネルでのデータ通信の開始までの間に、当該バッファリングされたデータを受信できるように構成される、請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記予め定められた周期の長さ、および/または、前記予め定められた期間の長さは、通信状況および通信性能の少なくとも一方に応じて調整される、請求項3~5のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記第2の通信チャネルで他の通信装置からデータを受信すると、当該他の通信装置との間で接続を確立する処理をさらに実行するように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記第2の通信チャネルで前記他の通信装置との間でデータ通信を行うタイミングを、前記他の通信装置との間で共有する処理をさらに実行するように構成されている、請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
アクセスポイントに接続可能な通信装置を複数含む通信システムであって、
前記通信装置の各々は、
前記アクセスポイントに接続して、第1の通信チャネルで前記アクセスポイントとの間でデータ通信を行う処理と、
前記アクセスポイントに対して、データ通信の抑制を通知する処理と、
前記データ通信の抑制の通知後、第2の通信チャネルで予め定められた期間に亘ってデータ通信を行う処理と、
前記第2の通信チャネルでのデータ通信後、前記第1の通信チャネルで前記アクセスポイントとの間のデータ通信を再開する処理と、
前記第2の通信チャネルでデータ通信を行う処理を実行するタイミングを決定する処理とを、実行するように構成されている、通信システム。
【請求項10】
アクセスポイントに接続可能な通信装置が実行する通信方法であって、
前記アクセスポイントに接続して、第1の通信チャネルで前記アクセスポイントとの間でデータ通信を行うステップと、
前記アクセスポイントに対して、データ通信の抑制を通知するステップと、
前記データ通信の抑制の通知後、第2の通信チャネルで予め定められた期間に亘ってデータ通信を行うステップと、
前記第2の通信チャネルでのデータ通信後、前記第1の通信チャネルで前記アクセスポイントとの間のデータ通信を再開するステップと、
前記第2の通信チャネルでデータ通信を行う処理を実行するタイミングを決定するステップとを備える、通信方法。
【請求項11】
アクセスポイントに接続可能なコンピュータで実行される通信プログラムであって、前記通信プログラムは前記コンピュータに
前記アクセスポイントに接続して、第1の通信チャネルで前記アクセスポイントとの間でデータ通信を行うステップと、
前記アクセスポイントに対して、データ通信の抑制を通知する処理と、
前記データ通信の抑制の通知後、第2の通信チャネルで予め定められた期間に亘ってデータ通信を行うステップと、
前記第2の通信チャネルでのデータ通信後、前記第1の通信チャネルで前記アクセスポイントとの間のデータ通信を再開するステップと、
前記第2の通信チャネルでデータ通信を行う処理を実行するタイミングを決定するステップとを実行させる、通信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、アクセスポイントに接続可能な通信装置、その通信装置を含む通信システム、その通信装置における通信方法、および、その通信装置を実現するための通信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な無線通信においては、複数の通信装置間で無線ネットワークが構成される。複数の無線ネットワークに跨がる通信に関して、特開2017-191966号公報(特許文献1)は、特定のゲーム装置の間で通信グループを形成して通信を行っている場合であっても、その通信グループからブロードキャストされるフレームを受信できる範囲に存在する他のゲーム装置は、当該通信グループで実行されているゲームアプリケーションの進捗情報などの各種情報を取得することができるゲームシステムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-191966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いずれかのアクセスポイントに接続している通信装置と当該アクセスポイントには接続していない通信装置との間のデータ通信をより簡素な手順で実現できる構成が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある実施の形態に従えば、アクセスポイントに接続可能な通信装置が提供される。通信装置は、アクセスポイントに接続して、第1の通信チャネルでアクセスポイントとの間でデータ通信を行う処理と、アクセスポイントに対して、データ通信の抑制を通知する処理と、データ通信の抑制の通知後、第2の通信チャネルで予め定められた期間に亘ってデータ通信を行う処理と、第2の通信チャネルでのデータ通信後、第1の通信チャネルでアクセスポイントとの間のデータ通信を再開する処理と、第2の通信チャネルでデータ通信を行う処理を実行するタイミングを決定する処理とを、実行するように構成されている。
【0006】
この構成によれば、第1の通信チャネルでアクセスポイントに接続している状態を維持できるように、データ通信の抑制を通知して、第2の通信チャネルでデータ通信を行うため、第1の通信チャネルでの切断および再接続の処理を省略でき、通信にかかる処理を簡素化できる。また、アクセスポイントとの接続が維持されようとするので、データ通信の安定化も確保できる。
【0007】
データ通信の抑制の通知は、PowerSaveモードの通知を含んでいてもよい。この構成によれば、規格に定められた通信手順を利用することで通信処理を実現できるので、汎用的な装置を用いて容易に実現できる。
【0008】
第2の通信チャネルでデータ通信を行う処理を実行するタイミングは、予め定められた周期毎にランダムに決定されてもよい。この構成によれば、予め定められた周期毎に必ず第2の通信チャネルでデータ通信ができるので、第2の通信チャネルでのデータ通信の頻度などの管理を容易化できる。
【0009】
第2の通信チャネルでデータ通信を行う処理が連続して実行されないように、タイミングが決定されてもよい。この構成によれば、通信装置とアクセスポイントとの間の接続を切断する要素を低減できる。
【0010】
通信装置は、第2の通信チャネルでのデータ通信中にアクセスポイントが第1の通信チャネルで通信装置に送信すべきデータをバッファリングするときに、第2の通信チャネルでのデータ通信後から次の第2の通信チャネルでのデータ通信の開始までの間に、当該バッファリングされたデータを受信できるように構成されていてもよい。この構成によれば、アクセスポイントでのバッファ溢れの可能性を低減できる。
【0011】
予め定められた周期の長さ、および/または、予め定められた期間の長さは、通信状況および通信性能の少なくとも一方に応じて調整されてもよい。この構成によれば、例えば、第1の通信チャネルでアクセスポイントと通信装置との間でやり取りされるデータ量などに応じて、第2の通信チャネルでのデータ通信が発生する頻度などを最適化できる。
【0012】
通信装置は、第2の通信チャネルで他の通信装置からデータを受信すると、当該他の通信装置との間で接続を確立する処理をさらに実行するように構成されていてもよい。この構成によれば、第2の通信チャネルにおいて他の通信装置を探索できれば、第1の通信チャネルでのデータ通信を維持しながら、第2の通信チャネルで当該他の通信装置とのデータ通信を行うこともできる。
【0013】
通信装置は、第2の通信チャネルで他の通信装置との間でデータ通信を行うタイミングを、他の通信装置との間で共有する処理をさらに実行するように構成されていてもよい。この構成によれば、いずれかの通信装置を探索できた場合には、互いにタイミングを共有することで、通信装置間の局所的なデータ通信を効率的に行うことができる。
【0014】
別の実施の形態に従えば、アクセスポイントに接続可能な通信装置を複数含む通信システムが提供される。通信装置の各々は、アクセスポイントに接続して、第1の通信チャネルでアクセスポイントとの間でデータ通信を行う処理と、アクセスポイントに対して、データ通信の抑制を通知する処理と、データ通信の抑制の通知後、第2の通信チャネルで予め定められた期間に亘ってデータ通信を行う処理と、第2の通信チャネルでのデータ通信後、第1の通信チャネルでアクセスポイントとの間のデータ通信を再開する処理と、第2の通信チャネルでデータ通信を行う処理を実行するタイミングを決定する処理とを、実行するように構成されている。
【0015】
さらに別の実施の形態に従えば、アクセスポイントに接続可能な通信装置が実行する通信方法が提供される。通信方法は、アクセスポイントに接続して、第1の通信チャネルでアクセスポイントとの間でデータ通信を行うステップと、アクセスポイントに対して、データ通信の抑制を通知するステップと、データ通信の抑制の通知後、第2の通信チャネルで予め定められた期間に亘ってデータ通信を行うステップと、第2の通信チャネルでのデータ通信後、第1の通信チャネルでアクセスポイントとの間のデータ通信を再開するステップと、第2の通信チャネルでデータ通信を行う処理を実行するタイミングを決定するステップとを含む。
【0016】
さらに別の実施の形態に従えば、アクセスポイントに接続可能なコンピュータで実行される通信プログラムが提供される。通信プログラムはコンピュータに、アクセスポイントに接続して、第1の通信チャネルでアクセスポイントとの間でデータ通信を行うステップと、アクセスポイントに対して、データ通信の抑制を通知する処理と、データ通信の抑制の通知後、第2の通信チャネルで予め定められた期間に亘ってデータ通信を行うステップと、第2の通信チャネルでのデータ通信後、第1の通信チャネルでアクセスポイントとの間のデータ通信を再開するステップと、第2の通信チャネルでデータ通信を行う処理を実行するタイミングを決定するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本技術によれば、いずれかのアクセスポイントに接続している通信装置と当該アクセスポイントには接続していない通信装置との間のデータ通信をより簡素な手順で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】関連技術に従う通信システムにおける通信処理の一例を説明するための図である。
図2】本実施の形態に従う通信システムにおける通信処理の概要を説明するための図である。
図3】本実施の形態に従う通信システムに含まれる通信装置のハードウェア構成を示す模式図である。
図4】関連技術に従う通信処理の一例を示すタイムチャートである。
図5図2に示すデータ通信を実現するための通信処理の一例を示すタイムチャートである。
図6】本実施の形態に従う通信システムにおける通信処理のより詳細な手順を説明するための図である。
図7】本実施の形態に従う通信システムにおける探索処理の一例を説明するためのタイムチャートである。
図8】本実施の形態に従う通信システムにおける探索処理後の処理例を説明するためのタイムチャートである。
図9】本実施の形態に従う通信システムにおける通信装置の処理手順を示すフローチャートである。
図10】本実施の形態に従う通信処理における探索処理のタイミング制御の一例を説明するための図である。
図11】本実施の形態に従う通信システムにおける通信装置の機能構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
[A.概要]
まず、本実施の形態に従う通信システム1の概要について説明する。
【0021】
図1は、関連技術に従う通信システムにおける通信処理の一例を説明するための図である。図1には、無線通信により情報をやり取り可能な通信装置100_1A,100_1B,100_2A,100_2B,100_3,・・・と、アクセスポイント200_1,200_2,200_3,・・・とを含む通信システムを例示する。
【0022】
以下の説明では、通信装置100_1A,100_1B,100_2A,100_2B,100_3,・・・を「通信装置100」と総称するとともに、アクセスポイント200_1,200_2,200_3,・・・を「アクセスポイント200」と総称することもある。また、「アクセスポイント」を「AP」と略称することもある。
【0023】
通信装置100の各々は、任意のアクセスポイント200に無線通信により接続可能になっている。
【0024】
無線通信としては、例えば、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11規格に従う無線LAN(Local Area Network)を用いることができる。なお、本明細書において、「IEEE802.11規格」は、狭義のIEEE802.11(1997年策定)だけではなく、IEEE802.11から派生するすべての規格(例えば、IEEE802.11b,IEEE802.11g,IEEE802.11nなど)を包含する用語である。さらに、「IEEE802.11規格」は、今後策定される新たな派生規格についても包含し得る。
【0025】
図1には、IEEE802.11規格において定義されるインフラストラクチャーモード(infrastructure mode)による通信状態の一例を示す。インフラストラクチャーモードにおいては、アクセスポイント200に1または複数の通信装置100が接続する。アクセスポイントに接続する1または複数の通信装置100は、ステーション(STA:station)として動作する。なお、アクセスポイント200は「親機」を意味し、ステーションとして動作する通信装置100は「子機」を意味するとみなすこともできる。
【0026】
なお、図1には、通信装置100とアクセスポイント200とを異なる種類の装置のように描いているが、一つの通信装置100がステーションおよびアクセスポイントのいずれでも機能できるようにしてもよい。
【0027】
以下では、特段の断り書きがない限り、通信装置100は、ステーションとして動作するものとして説明する。
【0028】
インフラストラクチャーモードにおいて、1つのアクセスポイント200と1または複数の通信装置100とは無線ネットワークを構成する。このようなアクセスポイント200を中心とした無線ネットワークは、BSS(basic service set)と称されている。以下の説明においては、「BSS」との用語を「無線ネットワーク」と実質的に同義で用いる。
【0029】
図1に示す例においては、アクセスポイント200_1および通信装置100_1A,100_1BがBSS_1を構成し、アクセスポイント200_2および通信装置100_2A,100_2BがBSS_2を構成し、アクセスポイント200_3および通信装置100_3がBSS_3を構成している。
【0030】
ここで、図1に示す通信システムにおいて、通信装置100_1A,100_1B,100_2A,100_2B,100_3は、互いに近接した位置に存在しており、任意の通信装置100の間で無線信号の送受信が可能であるとする。通信装置100が互いに近接した位置に存在している場合であっても、ある無線ネットワークに属している通信装置100は、他の無線ネットワークに属している通信装置100との間で直接のデータ通信を行うことができない。
【0031】
例えば、アクセスポイント200_3が構成するBSS_3に属している通信装置100_3は、BSS_1に属している通信装置100_1A,100_1BおよびBSS_2に属している通信装置100_2A,100_2Bとは、直接のデータ通信を行うことができない。
【0032】
このように、一般的なIEEE802.11規格のインフラストラクチャーモードでは、任意の通信装置100は、接続先のアクセスポイント200、および、接続先のアクセスポイント200が構成する同一のBSSに属する他の通信装置100との間でのみ、直接のデータ通信を行うことができる。すなわち、任意のアクセスポイント200が構成する無線ネットワークに属している通信装置100は、別のアクセスポイント200が構成する無線ネットワークに属している通信装置100(同じ通信チャネルで通信しているか否かにかかわらず)、および、いずれの無線ネットワークにも属していない通信装置100との間では、直接のデータ通信ができない。
【0033】
図2は、本実施の形態に従う通信システム1における通信処理の概要を説明するための図である。図2を参照して、本実施の形態に従う通信システム1においては、任意のアクセスポイント200が構成する無線ネットワークに属している通信装置100は、別のアクセスポイント200が構成する無線ネットワークに属している通信装置100(同じ通信チャネルで通信しているか否かにかかわらず)、および、いずれの無線ネットワークにも属していない通信装置100との間で直接のデータ通信を実現する。このとき、通信装置100は、属している無線ネットワークを構成するアクセスポイント200との間の通信を維持する。
【0034】
図2に示す例では、通信装置100_3は、アクセスポイント200_3が構成する無線ネットワーク(BSS_3)に属している。BSS_3は、無線チャネルとして6chを使用しているとする。
【0035】
通信装置100_3と近接した位置に存在する通信装置100_1A,100_1Bは、アクセスポイント200_1が構成する無線ネットワーク(BSS_1)に属している。また、通信装置100_3と近接した位置に存在する通信装置100_2A,100_2Bは、アクセスポイント200_2が構成する無線ネットワーク(BSS_2)に属している。BSS_1およびBSS_2は、無線チャネルとして1chを使用しているとする。
【0036】
BSS_3に属している通信装置100_3は、他の無線ネットワーク(BSS)に属しており、また、通信チャネルも異なる、通信装置100_1Bおよび通信装置100_2Bとの間で直接のデータ通信を行うことができる。以下、このようなデータ通信を実現するための通信方法について説明する。
【0037】
[B.ハードウェア構成例]
次に、本実施の形態に従う通信システム1を構成する装置のハードウェア構成の一例について説明する。
【0038】
(b1:通信装置100)
本実施の形態に従う通信システム1に含まれる通信装置100は、どのような装置であってもよいが、一例として、無線通信機能を有するコンピュータとすることができる。通信装置100は、コンピュータの典型例であるゲーム装置とすることができる。ゲーム装置としては、携帯型(あるいは、可搬型)であってもよいし、据置型であってもよい。
【0039】
図3は、本実施の形態に従う通信システム1に含まれる通信装置100のハードウェア構成を示す模式図である。図3を参照して、通信装置100は、コンピュータの一例であり、プロセッサ102と、主記憶部104と、補助記憶部106と、ディスプレイ114と、操作部116と、音声出力部118と、無線通信部120とを含む。これらのコンポーネントは、バス112を介して、互いにデータ通信可能に接続されている。
【0040】
プロセッサ102は、通信装置100が提供する処理を実行するための処理主体(処理手段)である。プロセッサ102は、補助記憶部106に格納されているシステムプログラム108およびアプリケーションプログラム110を読み込んで主記憶部104に展開して、後述するような各種の情報処理を実行する。
【0041】
システムプログラム108は、後述するような各処理を実現するための命令コードを含む。特に、システムプログラム108は、本実施の形態に従う通信プログラムを含む。
【0042】
主記憶部104は、プロセッサ102がアクセス可能な任意の記憶装置(記憶媒体)であり、例えば、DRAM(dynamic random access memory)といった揮発性記憶装置を用いて実装される。
【0043】
補助記憶部106は、例えば、ハードディスクやフラッシュメモリといった不揮発性記憶媒体を用いて実装される。あるいは、補助記憶部106は、例えば、光ディスクおよびカートリッジといった通信装置100に着脱可能な記憶媒体を用いて実装してもよい。この場合、通信装置100と任意の記憶媒体との組合せで通信装置を構成してもよい。
【0044】
ディスプレイ114は、プロセッサ102で実行される情報処理の結果として生成される画像を表示する。ディスプレイ114には、他の装置から受信した画像が表示される場合もある。ディスプレイ114は複数であってもよい。また、1または複数の外部ディスプレイを通信装置100が利用する構成であってもよい。
【0045】
操作部116は、主として、通信装置100のユーザからの操作を受け付ける。操作部116は、例えば、押ボタン、操作レバー、タッチパネル、マウスなどを用いて実装される。操作部116は、通信装置100とは別体の、有線または無線で接続されるゲームコントローラであってもよい。
【0046】
無線通信部120は、他の装置との間で無線信号を介してデータを送受信する。無線通信部120は、例えば、IEEE802.11規格に従う無線LANをサポートする。加えて、無線通信部120は、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、赤外線通信などの通信方式をサポートするようにしてもよい。図3には、無線通信部120のブロックを集合的に描くが、互いに独立した複数の無線通信部120を実装してもよい。また、無線通信部120はプロセッサ102と一体化されていてもよい。
【0047】
無線通信部120には、典型的には、単一のMAC(Media Access Control)アドレスのみが割り当てられている。本実施の形態に従う通信方法においては、単一のMACアドレスの利用が想定されているが、無線通信部120に複数のMACアドレスが割り当てられていてもよい。
【0048】
図3には、通信装置100を一体の装置として描くが、複数の装置の集合体として実装してもよい。すなわち、通信装置100を複数の独立した装置の組合せによって実装してもよい。例えば、プロセッサ102、主記憶部104、補助記憶部106に相当するハードウェアを有する本体装置と、ディスプレイ114、操作部116、音声出力部118に相当するハードウェアを有する端末装置とが別体である構成を採用してもよい。このような構成は、通信装置100ではなく、通信システムと称されてもよい。
【0049】
また、通信装置100において実行される情報処理の少なくとも一部が、ネットワーク(広域ネットワークおよび/またはローカルネットワーク)上に分散配置された1または複数の他の装置によって分散的に実行されるようにしてもよい。
【0050】
(b2:アクセスポイント200)
本実施の形態に従う通信システム1に含まれるアクセスポイント200についても、どのような通信装置であってもよい。例えば、アクセスポイント200は、専用の無線中継器であってもよいし、上述したような通信装置100であってもよい。このような装置自体は、公知であるので、ここでは詳細な説明は行わない。
【0051】
(b3:その他)
通信装置100および/またはアクセスポイント200において実行される処理は、プロセッサがプログラムを実行することで実現されてもよいし、その一部または全部が、SoC(system on chip)、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field programmable gate array)などのハードワイヤード回路により実現されてもよい。ハードワイヤード回路の一部または全部は、無線通信部120に実装されてもよい。
【0052】
[C.通信処理]
次に、本実施の形態に従う通信システム1における通信処理の一例について説明する。
【0053】
図4は、関連技術に従う通信処理の一例を示すタイムチャートである。図4を参照して、通信装置100_1および通信装置100_2は、互いに近接した位置に存在しているが、各々が異なる無線ネットワーク(BSS)に属しているとする。
【0054】
通信装置100_1および通信装置100_2の各々は、インフラストラクチャーモードでの通信(インフラストラクチャー通信300)と、他の通信装置100との間で直接のデータ通信を行うための通信(ローカルマスター通信302およびローカルクライエント通信304)とを所定タイミングで順次切り替える。
【0055】
ローカルマスター通信302およびローカルクライエント通信304では、簡易的なネットワークの親子関係(簡易的なアクセスポイントとクライエントとの関係)を形成して、データ交換する処理が実行される。ローカルマスター通信302およびローカルクライエント通信304は、互いに近接した位置に存在する可能性のある他の通信装置100を探索するための期間であり、探索にかかるデータ(フレーム)の送信および受信を行う。
【0056】
ローカルマスター通信302においては、自装置がマスターとして他の通信装置100に対して存在を示すデータを送信し、ローカルクライエント通信304においては、他の通信装置100から存在を示すデータの受信を待つ。あるタイミングで、一方の通信装置100がローカルマスター通信302を行い、他方の通信装置100がローカルクライエント通信304を行えば、両通信装置100は互いの存在を検知できる。
【0057】
但し、図4に示す通信処理においては、インフラストラクチャー通信300を中断して、ローカルマスター通信302およびローカルクライエント通信304が実行されるため、インフラストラクチャー通信300を再開する場合には、接続先のアクセスポイント200に再接続するための接続認証処理が必要となる。そのため、アクセスポイント200および接続認証処理を担当する認証サーバの負荷が増加し易い。
【0058】
そこで、本実施の形態に従う通信システム1においては、通信装置100は、属している無線ネットワークを構成するアクセスポイント200との間の通信を維持しつつ、他の通信装置100を探索するための通信処理を実行する。
【0059】
図5は、図2に示すデータ通信を実現するための通信処理の一例を示すタイムチャートである。図5を参照して、通信装置100_1および通信装置100_2の各々は、インフラストラクチャーモードでの通信(インフラストラクチャー通信300)を継続しつつ、他の通信装置100との間で直接のデータ通信を行うための通信(探索処理310)を所定タイミングで実行する。
【0060】
探索処理310において、通信装置100の各々は、特定の通信チャネルで、他の通信装置100に向けてデータを送信するとともに、他の通信装置100からのデータの受信を試みる。送受信されるデータは、802.11規格に規定されたアクションフレーム(Action Frame)を用いることができる。あるタイミングで、一方の通信装置100がアクションフレームを送信し、他方の通信装置100が当該アクションフレームを受信できれば、他方の通信装置100は一方の通信装置100の存在を検知できる。同様に、別のタイミングで、他方の通信装置100がアクションフレームを送信し、一方の通信装置100が当該アクションフレームを受信できれば、一方の通信装置100は他方の通信装置100の存在を検知できる。このように、双方向でアクションフレームを送受信できれば、両通信装置100は互いの存在を検知できる。
【0061】
図6は、本実施の形態に従う通信システム1における通信処理のより詳細な手順を説明するための図である。図6を参照して、通信装置100が任意の通信チャネル(以下、「AP接続チャネル」とも称す。)でアクセスポイント200に接続して通信しているとする。通信装置100は、AP接続チャネルにおいて、インフラストラクチャー通信300を行う。より具体的には、インフラストラクチャー通信300は、通信装置100とアクセスポイント200との間のインフラストラクチャーモードに必要なトランザクションを含む。
【0062】
探索処理310において、通信装置100は、使用する通信チャネルを特定の探索のための通信チャネル(以下、「探索チャネル」とも称す。)に変更し、探索用のアクションフレームの送信と探索用のアクションフレームの受信待ちとを行う。
【0063】
探索チャネルは、典型的には、AP接続チャネルとは異なる1つの通信チャネルが予め定められる。但し、探索チャネルとして複数の通信チャネルを定めてもよい。また、探索チャネルは、AP接続チャネルと同じ通信チャネルであってもよい。また、通信装置100の間のデータ通信に用いる通信チャネルを定めておいて、当該定めた通信チャネルを探索チャネルと同様に扱ってもよい。
【0064】
インフラストラクチャー通信300および探索処理310の実行は、管理周期CCT(Concurrent Cycle Time)の単位で管理される。管理周期CCTは、インフラストラクチャー通信300が有効化されている時間の長さ(維持時間IDT(Infra Dwell Time))と、探索処理310が有効化される時間の長さ(探索時間ET(Excursion Time))とを含む。説明の便宜上、通信チャネルの切り替えに要する時間は図示を省略しているが、維持時間IDTおよび/または探索時間ETに含まれることになる。
【0065】
図7は、本実施の形態に従う通信システム1における探索処理の一例を説明するためのタイムチャートである。図7を参照して、複数の通信装置100_1~100_4の各々が探索処理310を実行している例を示す。
【0066】
図7に示すように、本実施の形態に従う通信処理においては、複数の通信装置100の間で探索時間ETが重なっていないと、適切な探索ができない。そのため、管理周期CCTにおける探索時間ETの開始位置(オフセット)がランダムに決定されてもよい。
【0067】
より具体的には、通信装置100の各々は、管理周期CCTを基本サイクルとして、各基本サイクルにおいて、通信チャネルを探索チャネルに切り替えて探索処理310を実行する探索時間ETをランダムに決定する。すなわち、通信装置100の各々は、探索チャネルでデータ通信を行う処理(探索処理310)を実行するタイミングを、予め定められた周期(管理周期CCT)毎にランダムに決定する。
【0068】
いずれか2つの通信装置100の間で探索時間ETが重なると、一方の通信装置100から送信されたアクションフレーム(任意のデータ)を他方の通信装置100が受信できる。例えば、図7に示すタイムチャートの例では、通信装置100_1と通信装置100_2との間でデータ交換330ができている。なお、本実施の形態に従う通信処理においては、アクションフレームを一方的に送信することを基本とするので、データ交換330は、典型的には、一方の通信装置100から送信されたアクションフレームが他方の通信装置100で受信され、かつ、他方の通信装置100から送信されたアクションフレームが一方の通信装置100で受信された場合を意味する。
【0069】
探索時間ETにおいては、探索時間ETの開始タイミングおよび終了タイミングでアクションフレームがそれぞれ送信されるとともに、探索時間ET内の任意のタイミングでもアクションフレームが送信されてもよい。
【0070】
さらに、管理周期CCT、維持時間IDTおよび探索時間ETの長さなどが適切に調整されてもよい。このような調整のいくつかの例については後述する。
【0071】
また、本実施の形態に従う通信処理においては、通信装置100は、属している無線ネットワークを構成するアクセスポイント200との間の通信を維持しつつ、他の通信装置100を探索する。アクセスポイント200との間の通信を維持するために、アクセスポイント200と通信装置100との間の接続が遮断される可能性を低減するための処理が実行される。アクセスポイント200と通信装置100との間の接続が遮断される可能性を低減するための処理の一例として、通信装置100は、通信チャネルを探索チャネルに切り替えて探索処理310を実行する前に、アクセスポイント200に対して、データ通信の抑制を通知する。このようなデータ通信の抑制の通知は、例えば、IEEE802.11規格において規定されたPowerSaveモードの通知を利用することができる。
【0072】
PowerSaveモードの通知は、アクセスポイント200から通知元の通信装置100へのデータ送信を一時停止することを要求するとともに、アクセスポイント200が送信先の通信装置100との接続を切断する条件を変更することを要求する。例えば、アクセスポイント200は、送信先の通信装置100から受信応答(ACK)を受信できなくても、接続状態を維持しようとする。そのため、データ通信の抑制の通知は、通信装置100とアクセスポイント200との接続を切断する条件を緩和するための通知とみなすこともできる。
【0073】
なお、データ送信の一時停止に代えて、アクセスポイント200から通知元の通信装置100へのデータ送信の頻度を低減することを要求するようにしてもよい。
【0074】
再度図6を参照して、通信装置100は、通信チャネルを探索チャネルに切り替えて探索処理310を実行する前に、アクセスポイント200に対して、PowerSaveモードを通知する(PowerSaveモード通知320)。PowerSaveモードの通知に応答して、アクセスポイント200は、通知元の通信装置100に対するデータの送信を抑制する。すなわち、アクセスポイント200に対して、PowerSaveモードを事前に通知しておくことで、アクセスポイント200と通信装置100との接続を維持できるとともに、アクセスポイント200から通信装置100に送信されるデータの損失などを低減できる。
【0075】
また、通信装置100は、探索処理310の終了後、PowerSaveモードの終了を通知する(アクティブ通知322)。これによって、通信装置100とアクセスポイント200との間の定常的なデータ通信を再開できる。
【0076】
探索処理310において、通信装置100間でデータ交換330がなされると、その後の通信装置100間の局所的なデータ通信を実現するための情報を交換してもよい。
【0077】
図8は、本実施の形態に従う通信システム1における探索処理後の処理例を説明するためのタイムチャートである。図8に示す例では、通信装置100_1と通信装置100_2との間のデータ交換330において、通信タイミングの同期情報が交換される。通信タイミングの同期情報は、探索処理310において使用する通信チャネル(探索チャネル)を用いて、通信装置100_1と通信装置100_2との間で局所的なデータ通信を行うためのタイミング情報を含む。
【0078】
通信装置100間で通信タイミングの同期情報を交換することで、通信装置100_1および通信装置100_2は、通信チャネルを探索チャネルに切り替えて局所データ通信332を実行することができる。すなわち、通信タイミングの同期情報は、通信装置100_1および通信装置100_2が局所データ通信332を実行するタイミングを規定する。
【0079】
なお、探索処理310の実行と同様に、局所データ通信332を開始する前においても、各通信装置100は、接続先のアクセスポイント200に対して、PowerSaveモードを通知するようにしてもよい。
【0080】
このように、探索処理310において、互いに近接した位置に存在している通信装置100同士が見つかると、当該通信装置100同士で任意のデータ通信を行うことができる。すなわち、通信装置100は、探索チャネルで他の通信装置100からデータを受信すると、当該他の通信装置100との間で接続を確立する。この場合であっても、通信装置100の各々は、それぞれのアクセスポイント200への接続を維持することができる。
【0081】
なお、通信装置100とアクセスポイント200との接続が維持されるとは、アクセスポイント200から見て、対象の通信装置100との接続(connection)が確立されている状態が続いていることを意味する。IEEE802.11規格では、アクセスポイント200と通信装置100(ステーション)との間の接続シーケンスに応じて遷移するステートマシーンが規定されている。より具体的には、初期状態がステート1であり、認証手続きが成功することで、ステート2を経て、ステート3またはステート4へ到達する。アクセスポイント200のステートマシーンがステート3またはステート4にあれば、アクセスポイント200と通信装置100(ステーション)とが接続されている状態を意味する。したがって、本実施の形態に従う通信システム1において、ある通信装置100とアクセスポイント200との接続を維持することは、アクセスポイント200のステートマシーンがステート3またはステート4を維持することを意味する。上述したように、PowerSaveモードを通知することで、ステート3またはステート4から初期状態のステート1へ戻るための条件が実質的に厳しくなり、ステート3またはステート4に維持されやすくなる。
【0082】
[D.処理手順]
次に、本実施の形態に従う通信処理における通信装置100の処理手順について説明する。
【0083】
図9は、本実施の形態に従う通信システム1における通信装置100の処理手順を示すフローチャートである。図9に示すステップの一部または全部は、通信装置100のプロセッサ102がシステムプログラム108を実行することで実現されてもよい。システムプログラム108は、通信装置100で実行される通信プログラムを含む。
【0084】
図9を参照して、通信装置100は、予め定められた設定、あるいは、ユーザ操作に従って、アクセスポイント200に接続するための処理を実行する(ステップS100)。そして、通信装置100は、アクセスポイント200との間、あるいは、アクセスポイント200を介して他の通信装置100とデータ通信を開始する(ステップS102)。
【0085】
このように、通信装置100は、アクセスポイント200に接続して、任意の通信チャネルであるAP接続チャネルでアクセスポイント200との間でデータ通信を行う。
【0086】
続いて、通信装置100は、探索チャネルでデータ通信を行う処理を実行するタイミングを決定する。より具体的には、通信装置100は、新たな管理周期CCTのタイミングが到来すると、当該新たな管理周期CCTにおける探索処理310の開始タイミングをランダムに決定する(ステップS104)。そして、通信装置100は、決定した開始タイミングが到来したか否かを判断する(ステップS106)。
【0087】
決定した開始タイミングが到来していなければ(ステップS106においてNO)、通信装置100は、アクセスポイント200との間、あるいは、アクセスポイント200を介して他の通信装置100とデータ通信を継続する(ステップS108)。そして、ステップS106以下の処理が繰り返される。
【0088】
一方、決定した開始タイミングが到来していれば(ステップS106においてYES)、通信装置100は、アクセスポイント200に対して、データ通信の抑制を通知する。より具体的には、通信装置100は、アクセスポイント200に対して、PowerSaveモードを通知する(ステップS110)。
【0089】
そして、通信装置100は、通信チャネルを探索チャネルに切り替えて(ステップS112)、探索処理310を実行する(ステップS114)。探索処理310において、通信装置100は、他の通信装置100に向けてアクションフレームを送信するとともに、他の通信装置100からのアクションフレームの受信を試みる。
【0090】
通信装置100は、他の通信装置100からのアクションフレームを受信したか否かを判断する(ステップS116)。他の通信装置100からのアクションフレームを受信していれば(ステップS116においてYES)、通信装置100は、受信したアクションフレームを格納する(ステップS118)。通信装置100は、受信したアクションフレームの送信元である他の通信装置100との間で必要なデータの交換を試みる(ステップS120)。このとき、通信装置100は、探索チャネルで他の通信装置100との間でデータ通信を行うタイミングを、他の通信装置100との間で共有してもよい(上述の図8など参照)。
【0091】
他の通信装置100からのアクションフレームを受信していなければ(ステップS116においてNOの場合)、ステップS118およびS120の処理はスキップされる。
【0092】
そして、通信装置100は、探索処理310の開始から探索時間ETに相当する時間が経過したか否かを判断する(ステップS122)。探索処理310の開始から探索時間ETに相当する時間が経過していなければ(ステップS122においてNO)、ステップS114以下の処理が繰り返される。
【0093】
このように、通信装置100は、PowerSaveモードの通知(データ通信の抑制の通知)後、通信チャネルである探索チャネルで、予め定められた期間である探索時間ETに亘って、データ通信を行う。
【0094】
探索処理310の開始から探索時間ETに相当する時間が経過していれば(ステップS122においてYES)、通信装置100は、探索チャネルでのデータ通信後、AP接続チャネルでアクセスポイント200との間のデータ通信を再開する。より具体的には、通信装置100は、通信チャネルを元の通信チャネル(アクセスポイント200との接続に使用されている通信チャネルであるAP接続チャネル)に切り替えて(ステップS124)、アクセスポイント200に対して、PowerSaveモードの終了を通知する(ステップS126)。
【0095】
そして、通信装置100は、接続中のアクセスポイント200との切断が指示されたか否かを判断する(ステップS128)。接続中のアクセスポイント200との切断が指示されていなければ(ステップS128においてNO)、ステップS104以下の処理が繰り返される。
【0096】
接続中のアクセスポイント200との切断が指示されていれば(ステップS128においてYES)、通信装置100は、接続中のアクセスポイント200から切断するための処理を実行する(ステップS130)。
【0097】
通信装置100の各々は、以上のような処理手順をそれぞれ独立に実行することになる。
【0098】
[E.通信処理の安定化および最適化]
本実施の形態に従う通信処理を安定化および最適化するために、以下のような追加的な処理を採用してもよい。
【0099】
(e1:開始タイミングのオフセット)
図10は、本実施の形態に従う通信処理における探索処理310のタイミング制御の一例を説明するための図である。図10を参照して、探索処理310の開始タイミングをランダムに決定すると、例えば、ある管理周期CCTの最後に探索処理310が実行され、その次の管理周期CCTの先頭で探索処理310が実行されることもある。この場合には、通常の探索処理310の実行に要する時間(探索時間ET)の2倍の時間に亘って、アクセスポイント200から当該通信装置100へのデータ送信ができない。すなわち、通信装置100は、通常の探索時間ETの2倍の時間に亘って、アクセスポイント200からのデータを受信できないことになる。その結果、アクセスポイント200からのデータ受信の遅延、アクセスポイント200へのデータ送信の遅延、アクセスポイント200のバッファ溢れなどが生じ得る。
【0100】
このようなデータ受信ができない期間が長くなると、通信装置100で実行されるアプリケーションへの影響も想定される。そこで、管理周期CCTの先頭および最後には、探索処理310の開始タイミングが設定されないように、管理周期CCTの開始から探索処理310の開始タイミング(探索時間ETの開始)までのオフセットを設定してもよい。
【0101】
例えば、管理周期CCTを500[msec]とし、探索時間ETを50[msec]とした場合、探索時間ETの開始までのオフセットを0~400[msec]の範囲に設定してもよい。あるいは、探索時間ETの開始までのオフセットを100~400[msec]の範囲に設定してもよい。
【0102】
すなわち、管理周期CCTの先頭または最後に、探索処理310を実行できない禁止区間を設定してもよい。この場合、管理周期CCTにおける探索時間ETの開始位置は、設定したオフセットの範囲でランダムに決定されてもよい。このように、探索チャネルでデータ通信を行う処理(探索処理310)が連続して実行されないように、探索処理310の開始タイミングが決定されてもよい。
【0103】
(e2:通信状況/通信性能に応じたパラメータ調整)
本実施の形態に従う通信処理においては、管理周期CCT、維持時間IDTおよび探索時間ETの長さなどのパラメータを適宜最適化できる。通信状況および/または通信性能に応じて、これらの時間を調整してもよい。
【0104】
例えば、アクセスポイント200と通信装置100との間のデータ量が相対的に少ない場合には、管理周期CCTに対する探索時間ETの比率(ET/CCT)を相対的に大きくしてもよい。逆に、アクセスポイント200と通信装置100との間のデータ量が相対的に少ない場合には、管理周期CCTに対する探索時間ETの比率を相対的に小さくしてもよい。例えば、管理周期CCTを500[msec]とし、探索時間ETを50~100[msec]の範囲で適宜変更してもよい。
【0105】
また、通信状況に応じて、管理周期CCTの長さを調整してもよい。例えば、他の通信装置100を探索する必要性が低い場合には、管理周期CCTを相対的に長くしてもよい。逆に、他の通信装置100を探索する必要性が高い場合には、管理周期CCTを相対的に短くしてもよい。管理周期CCTの長さを変えることで、探索処理310の実行頻度を調整できる。
【0106】
このように、管理周期CCT、維持時間IDTおよび探索時間ETの長さなどは、通信状況に応じて調整されてもよい。また、通信性能に応じて、管理周期CCT、維持時間IDTおよび探索時間ETの長さなどを調整してもよい。
【0107】
例えば、通信装置100による探索処理310(探索チャネルでのデータ通信)の実行中において、アクセスポイント200は、AP接続チャネルで通信装置100に送信すべきデータをバッファリングする。そのため、探索時間ETの長さは、本来であれば探索処理310中にアクセスポイント200がAP接続チャネルで通信装置100に送信すべきであったデータ量を、アクセスポイント200がバッファリングできる時間範囲内で設定してもよい。また、隣り合う探索処理310の間隔は、先の探索処理310の終了から次の探索処理310の開始までの間に、先の探索処理310中にアクセスポイント200がバッファリングしたすべてのデータを通信装置100に送信できるような長さに設定してもよい。
【0108】
このようなパラメータ調整を行うことで、通信装置100は、先の探索処理310後から次の探索処理310開始までの間に、アクセスポイント200がバッファリングしたデータを受信できるようになる。この結果、アクセスポイント200のバッファ溢れなどを防止できる。
【0109】
また、アクセスポイント200と通信装置100とのでやり取りされるデータ量の多寡に応じて、管理周期CCT、維持時間IDTおよび探索時間ETの長さなどを、例えばテーブルとして予め定めておいてもよい。あるいは、アクセスポイント200と通信装置100とのでやり取りされるデータ量を予め定められたしきい値と比較し、比較結果に応じて、管理周期CCT、維持時間IDTおよび探索時間ETの長さなどを切り替えるようにしてもよい。あるいは、アクセスポイント200と通信装置100とのでやり取りされるデータ量に応じて、管理周期CCT、維持時間IDTおよび探索時間ETの長さなどを動的に算出するようにしてもよい。
【0110】
複数種類のアプリケーションが実行可能な通信システム1においては、実行中のアプリケーションが通常必要とするデータ量に応じて、管理周期CCT、維持時間IDTおよび探索時間ETの長さなどを切り替えるようにしてもよい。あるいは、実行モード毎に必要とするデータ量が異なるアプリケーションの場合には、現在の実行モードに応じて、管理周期CCT、維持時間IDTおよび探索時間ETの長さなどを切り替えるようにしてもよい。
【0111】
実行中のアプリケーションまたは実行モードにおけるデータ量を逐次算出して、管理周期CCT、維持時間IDTおよび探索時間ETの長さなどを決定してもよいし、アプリケーション毎または実行モード毎に、管理周期CCT、維持時間IDTおよび探索時間ETの長さなどが予め定められていてもよい。
【0112】
(e3:小括)
通信装置100がインフラストラクチャーモードでアクセスポイント200と定常的なデータ通信を行っている状況で、探索処理310をランダムなタイミングおよびランダムな期間に発生させると、意図しないパケットロストおよび通信遅延などが発生し得る。そこで、タイミングおよび期間の長さなどを適切に調整してもよい。
【0113】
例えば、通信装置100で実行されるアプリケーションがゲームである場合には、データ量は少ないものの、より小さい通信遅延が要求されるので、管理周期CCTおよび探索時間ETの長さを相対的に短くすることで、探索処理310の時間を短くできる。
【0114】
[F.機能構成]
次に、本実施の形態に従う通信処理における通信装置100の機能構成について説明する。
【0115】
図11は、本実施の形態に従う通信システム1における通信装置100の機能構成例を示す模式図である。図11に示す機能モジュールの一部または全部は、通信装置100のプロセッサ102がシステムプログラム108を実行することで実現されてもよい。
【0116】
図11を参照して、通信装置100は、機能構成として、メインデータ管理モジュール150と、接続管理モジュール152と、サブデータ管理モジュール154と、探索処理モジュール156と、タイミング決定モジュール158と、通信チャネル選択モジュール160とを含む。また、通信装置100の無線通信部120は、送信回路122と、受信回路124とを含む。
【0117】
メインデータ管理モジュール150は、任意のアプリケーションと他の通信装置100との間のデータのやり取りを管理する。接続管理モジュール152は、アクセスポイント200との接続の確立および切断を管理するとともに、メインデータ管理モジュール150からの指令に従って送信すべきデータ(フレーム)を無線通信部120へ供給し、無線通信部120から供給されるデータ(フレーム)を再構成してメインデータ管理モジュール150へ出力する。
【0118】
サブデータ管理モジュール154は、任意のアプリケーションと探索処理310において探索された任意の通信装置100との間のデータのやり取りを管理する。探索処理モジュール156は、探索処理310の実行を制御する。タイミング決定モジュール158は、探索処理310の実行タイミングを決定し、探索処理モジュール156に通知する。
【0119】
通信チャネル選択モジュール160は、接続管理モジュール152および探索処理モジュール156からの指令に従って、無線通信部120が使用する通信チャネルを切り替える。
【0120】
メインデータ管理モジュール150および接続管理モジュール152は、アクセスポイント200に接続して、AP接続チャネルでアクセスポイント200との間のデータ通信を担当する。また、メインデータ管理モジュール150および接続管理モジュール152は、探索チャネルでのデータ通信後、AP接続チャネルでアクセスポイント200との間のデータ通信を再開する。
【0121】
探索処理モジュール156は、アクセスポイント200に対するデータ通信の抑制の通知(PowerSaveモードの通知)を担当する。サブデータ管理モジュール154および探索処理モジュール156は、PowerSaveモードの通知の後、探索チャネルで探索時間ETに亘ってデータ通信を担当する。
【0122】
このような機能モジュールの組合せによって、本実施の形態に従う通信処理を実現できる。
【0123】
[G.その他の形態]
上述の説明においては、いずれかのアクセスポイント200に接続している通信装置100における通信処理を主として説明したが、いずれかのアクセスポイント200にも接続していない通信装置100においても、同様の探索処理310を実行することができる。すなわち、任意の周期毎に、通信チャネルを探索チャネルに切り替えて探索処理310を実行するようにしてもよい。
【0124】
上述の説明においては、通信装置100が単体で必要な処理を実行する実装例を示すが、これに限らず、必要な処理の全部または一部を通信装置100とは別のコンピューティングリソース(典型的には、クラウド上にあるコンピューティングリソース)を利用して実現してもよい。処理の実行形態については、時代に応じて適切なものを採用すればよい。
【0125】
[H.利点]
本実施の形態に従う通信システム1においては、通信装置100は、AP接続チャネルでアクセスポイント200に接続している状態を維持できるように、PowerSaveモードの通知によりデータ通信の抑制を通知して、探索チャネルで探索処理310を行う。これによって、AP接続チャネルでのアクセスポイント200に対する切断および再接続の処理を省略でき、通信装置100での通信にかかる処理を簡素化できる。
【0126】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0127】
1 通信システム、100 通信装置、102 プロセッサ、104 主記憶部、106 補助記憶部、108 システムプログラム、110 アプリケーションプログラム、112 バス、114 ディスプレイ、116 操作部、118 音声出力部、120 無線通信部、122 送信回路、124 受信回路、150 メインデータ管理モジュール、152 接続管理モジュール、154 サブデータ管理モジュール、156 探索処理モジュール、158 タイミング決定モジュール、160 通信チャネル選択モジュール、200 アクセスポイント、300 インフラストラクチャー通信、302 ローカルマスター通信、304 ローカルクライエント通信、310 探索処理、320 モード通知、322 アクティブ通知、330 データ交換、332 局所データ通信、CCT 管理周期、ET 探索時間、IDT 維持時間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11