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特開2022-8620栄養豊富な発芽性組成物及び芽胞培養方法
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  • 特開-栄養豊富な発芽性組成物及び芽胞培養方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008620
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】栄養豊富な発芽性組成物及び芽胞培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20220105BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C12N1/20 A
C12N1/00 B
C12N1/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021158886
(22)【出願日】2021-09-29
(62)【分割の表示】P 2018550690の分割
【原出願日】2017-04-05
(31)【優先権主張番号】62/318,587
(32)【優先日】2016-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506041682
【氏名又は名称】エヌシーエイチ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】NCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エバレット,ガブリエル,エフ.ケー.
(72)【発明者】
【氏名】グリーンウォルド,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】プルーイット,ジュディ
(72)【発明者】
【氏名】ロスマリン,アマンダ
(72)【発明者】
【氏名】チャーチ,ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】アバーレ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】アボアガイ,ジョージ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA15X
4B065AA17X
4B065AA19X
4B065AA20X
4B065BB02
4B065BB15
4B065BB40
4B065BC03
4B065CA60
(57)【要約】      (修正有)
【課題】栄養-発芽性組成物、及び使用場所で細菌種の芽胞の発芽を増加させる方法を提供する。
【解決手段】細菌種の芽胞の発芽を補助する栄養-発芽性組成物であって、L-アラニン、L-アスパラギン、L-バリン、L-システイン、大豆タンパク質の加水分解物、又はそれらの組合せを含むアミノ酸と、燐酸塩緩衝剤等の緩衝剤と、工業用防腐剤を含み、任意に細菌芽胞を含むことができる。使用場所で細菌種の芽胞の発芽を増加させる方法は、栄養-発芽性組成物及び好ましくは1又は2種以上のバチルス種からなる細菌芽胞を準備することと、使用場所又はその近傍の酸素存在下で、約35℃~60℃の範囲の温度に加熱するステップと、約2~60分の培養時間の間、前記範囲の温度を維持して、活性化細菌を含む発芽した細菌溶液を生成するステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用場所で細菌芽胞を発芽させる方法であって、
栄養-発芽性組成物が含まれない場合、栄養-発芽性組成物及びある細菌種の芽胞を準備するステップと、
前記栄養-発芽性組成物及び芽胞を、約35℃~60℃の温度に加熱するステップと、
約2~60分の培養期間の間、温度を前記温度範囲維持して、発芽した芽胞溶液を生成するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
栄養-発芽性組成物は濃縮された液体の形態であり、
栄養-発芽性組成物に希釈剤を加えるステップと、
培養期間中、希釈された栄養-発芽性組成物と細菌芽胞とを混合するステップと、をさらに含み、
希釈された栄養-発芽性組成物の濃度が、約0.1%~10%である、請求項1の方法。
【請求項3】
温度範囲は、約41℃~44℃である、請求項1の方法。
【請求項4】
発芽した芽胞溶液を使用場所に分配するステップをさらに含み、前記使用場所は、動物の飼料、動物用の水、動物の寝床、植物、池、廃水システム又は排水を含む、請求項3の方法。
【請求項5】
栄養-発芽性組成物は、
L-アミノ酸と、
燐酸塩緩衝剤、HEPES、Tris塩基、又はそれらの組合せを含む1又は2種以上の緩衝剤と、
工業用防腐剤と、
任意選択的にD-グルコース、又は任意選択的にD-フルクトース、又は任意選択的にD-グルコース及びD-フルクトースの両方と、
任意選択的にカリウムイオン源と、を含む、請求項1の方法。
【請求項6】
L-アミノ酸は、L-アラニン、L-アスパラギン、L-バリン、L-システイン、大豆タンパク質の加水分解物、又はそれらの組合せである、請求項5の方法。
【請求項7】
栄養-発芽性組成物は、1又は2種以上のL-アミノ酸を合計で約17.8~89g/L含む、請求項5の方法。
【請求項8】
栄養-発芽性組成物は、バチルス種の芽胞と、任意選択的に発芽阻害剤と、をさらに含む、請求項5の方法。
【請求項9】
発芽阻害剤又は防腐剤は、塩化ナトリウム、D-アラニン、又はそれらの組合せを含む、請求項8の方法。
【請求項10】
栄養-発芽性組成物は、塩化ナトリウムを約29g/L~117g/L含む、請求項9の方法。
【請求項11】
栄養-発芽性組成物は、D-アラニンを約8g/L~116g/L含む、請求項9の方法。
【請求項12】
バチルス種は、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・サブチリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・ポリミキサ、バチルス・チューリンゲンシス、バチルス・メガテリウム、バチルス・コアグランス、バチルス・レンタス、バチルス・クラウジ、バチルス・シルクランス、バチルス・フィルムス、バチルス・ラクティス、バチルス・ラテロスポルス、バチルス・ラエボラクティクス、バチルス・ポリミキサ、バチルス・プミルス、バチルス・シンプレックス、バチルス・スファエリクス又はそれらの組合せである、請求項8の方法。
【請求項13】
バチルス種は、消費する動物の消化管、廃水又は排水ラインの中の有機物の分解を補助する酵素を産生する能力を有する、請求項8の方法。
【請求項14】
酵素は、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、ウレアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、又はそれらの組合せを含む、請求項13の方法。
【請求項15】
栄養-発芽性組成物は、
約8.9~133.5g/Lの1又は2種以上のL-アミノ酸と、
合計で約0.8~3.3g/Lの1又は2種以上の工業用防腐剤と、
合計で約40~126の1又は2種以上の燐酸塩緩衝剤、約15~61g/LのTris塩基若しくは約32.5~97.5g/LのHEPES、又はそれらの組合せと、
任意選択的に約18~54g/LのD-グルコース、D-フルクトース、又はそれらの組合せと、
任意選択的に約7.4~22.2g/LのKClと、を含む濃縮液体である、請求項1の方法。
【請求項16】
栄養-発芽性組成物に希釈剤を加えるステップと、
培養期間中、希釈された栄養-発芽性組成物と細菌芽胞とを混合するステップと、をさらに含む、請求項15の方法。
【請求項17】
希釈された栄養-発芽性組成物の濃度は、約0.1%~10%である、請求項16の方法。
【請求項18】
細菌芽胞の発芽を補助する栄養-発芽性組成物であって、
L-アミノ酸と、
燐酸塩緩衝剤、HEPES、Tris塩基、又はそれらの組合せを含む1又は2種以上の緩衝剤と、
1又は2種以上の工業用防腐剤と、
任意選択的にD-グルコース、又は任意選択的にD-フルクトース、又は任意選択的にD-グルコース及びD-フルクトースの両方と、
任意選択的にカリウムイオン源と、を含む、栄養-発芽性組成物。
【請求項19】
L-アミノ酸は、L-アラニン、L-アスパラギン、L-バリン、L-システイン、大豆タンパク質の加水分解物、又はそれらの組合せである、請求項18の栄養-発芽性組成物。
【請求項20】
1又は2種以上のL-アミノ酸を合計で約17.8~89g/L含む、請求項18の栄養-発芽性組成物。
【請求項21】
バチルス種の芽胞と、任意選択的に発芽阻害剤とをさらに含む、請求項18の栄養-発芽性組成物。
【請求項22】
発芽阻害剤又は防腐剤は、塩化ナトリウム、D-アラニン、メチルクロロイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン、又はそれらの組合せを含む、請求項21の栄養-発芽性組成物。
【請求項23】
塩化ナトリウムを約29g/L~117g/L含む、請求項22の栄養-発芽性組成物。
【請求項24】
D-アラニンを約8g/L~116g/L含む、請求項22の栄養-発芽性組成物。
【請求項25】
バチルス種は、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・サブチリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・ポリミキサ、バチルス・チューリンゲンシス、バチルス・メガテリウム、バチルス・コアグランス、バチルス・レンタス、バチルス・クラウジ、バチルス・シルクランス、バチルス・フィルムス、バチルス・ラクティス、バチルス・ラテロスポルス、バチルス・ラエボラクティクス、バチルス・ポリミキサ、バチルス・プミルス、バチルス・シンプレックス、バチルス・スファエリクス又はそれらの組合せである、請求項21の栄養-発芽性組成物。
【請求項26】
バチルス種は、消費する動物の消化管、廃水又は排水ラインの中の有機物の分解を補助する酵素を産生する能力を有する、請求項21の栄養-発芽性組成物。
【請求項27】
酵素は、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、ウレアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、又はそれらの組合せを含む、請求項26の組成物。
【請求項28】
約8.9~133.5g/Lの1又は2種以上のL-アミノ酸と、
合計で約0.8~3.3g/Lの1又は2種以上の工業用防腐剤と、
合計で約40~126の1又は2種以上の燐酸塩緩衝剤、約15~61g/LのTris塩基若しくは約32.5~97.5g/LのHEPES、又はそれらの組合せと、
任意選択的に約18~54g/LのD-グルコース、D-フルクトース、又はそれらの組合せと、
任意選択的に約7.4~22.2g/LのKClと、を含む濃縮液体である、請求項18の組成物。
【請求項29】
燐酸塩緩衝剤は、約15~30g/Lの燐酸一ナトリウムと、約30~90g/Lの燐酸二ナトリウムとを含む、請求項28の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2016年4月5日に出願された米国仮特許出願第62/318,587号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、栄養-発芽性濃縮組成物、及び発芽する細胞芽胞を使用場所(point of use)で培養する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
芽胞(spore)の発芽は、多段階を生じさせるプロセスであり、芽胞が効果的に目を覚ますか、又は休眠状態から栄養生長状態に復活するプロセスである。第1段階は、芽胞が活性化され、典型的には発芽性物質(germinant)と呼ばれる環境シグナルによって発芽が誘導される。このシグナルは、L-アミノ酸などの栄養物であり得る。栄養を含む発芽性物質は、芽胞の内膜の受容体に結合して、発芽を開始させる。また、糖は、それらのコグネイト受容体に対するL-アミノ酸の結合親和性を増加させることが示されている。
【0004】
発芽シグナルは、次いで、芽胞のコア中にCa2+(CaDPA)と1:1の比で保存されているジピコリン酸(DPA)の放出を生じさせるカスケードを開始する。CaDPAの放出は迅速なプロセスであり、典型的には90%超が2分で完了する。CaDPA放出は、発芽プロセスに関係する芽胞に対する帰還不能点を表す。当該分野では、このステップを「コミットメント(commitment)」ステップと称している。
【0005】
CaDPA放出後、芽胞は一部分が水和され、コアのpHは約8.0に上昇する。次いで、芽胞のコアは膨張し、コルテックス(主にペプチドグリカンからなる)はコア溶菌酵素によって分解される。芽胞は水分を吸収し、その結果、屈折性を喪失する。発芽プロセスの終わり頃にこの屈折性が失われると、芽胞の発芽が、位相差顕微鏡法を用いてモニターされることができる。
【0006】
発芽の第2段階は、発芽後成長(outgrowth)であり、この段階では、芽胞の代謝、生合成、及びDNA複製/修復経路が開始する。発芽後成長期間には幾つかの過程がある。第1の過程は、熟成期として知られており、この期間では、形態学的変化(例えば細胞増殖)は起こらないが、芽胞の分子機構(例えば、転写因子、翻訳機構、生合成機構など)が活性化される。この期間の長さは、芽胞形成の過程で芽胞と共にパッケージングされる初期供給源に基づいて変化し得る。例えば、幾つかのバチルス種(枯草菌を含む)の好ましい炭素源はリンゴ酸塩であり、バチルス芽胞は、典型的には、リンゴ酸塩を豊富に含み、このリンゴ酸は復活プロセス中に用いられる。興味深いことに、リンゴ酸塩プールを利用することができない欠失突然変異体は、野生型芽胞と比較して熟成期間が拡大することを示す。これは、芽胞リンゴ酸塩プールが初期の発芽後成長プロセスを活性化するのに十分であることを表す。また、芽胞は、酸可溶性の小タンパク質を貯蔵する。この小タンパク質は、復活過程の最初の数分間で分解され、タンパク質合成のためのアミノ酸の直接の供給源としての役割を果たす。発芽後成長段階の後、芽胞の再生(revival)が完了し、細胞は栄養成長していると考えられる。
【0007】
芽胞は、熱活性化によって発芽が引き起こされることは知られている。様々なバチルス種の芽胞が菌株の特異的温度で熱活性化されてきた。例えば、枯草菌の芽胞は75℃、30分間で熱活性化され、B.リケニホルミスの芽胞は65℃、20分間で熱活性化される。熱活性化により、芽胞コートタンパク質が一時的に可逆的アンフォールディング(reversible unfolding)を生じることが示されている。熱活性化された芽胞は、L-アラニンなどの栄養発芽性物質(nutrient germinants)が含まれる発芽緩衝剤の中で、さらなる時間発芽することができる。しかしながら、栄養発芽性物質が存在しない場合、芽胞は、それらの加熱前の(pre-heated)非発芽状態に戻る。
【0008】
発芽は、熱活性化が無くても、栄養物を含有する発芽緩衝剤があれば、周囲温度(典型的な室温近く)で起こり得ることは知られているが、このプロセスは通常、熱活性化よりも時間がかかる。例えば、バチルス・リケニホルミス(B. licheniformis)及びバチルス・スブチリス(枯草菌)(B. subtilis)の芽胞は、それぞれ、35℃又は37℃で発芽するが、栄養発芽性物質を含む発芽緩衝剤ではより長い時間(例えば2時間)を要する。さらに、熱活性化されていないバチルス・スブチリスの芽胞は、栄養発芽性物質が無い条件(例えば、CaCl+NaDPA)で長時間かけて発芽したことが知られている。
【0009】
また、芽胞を実験室環境で2段階プロセスで発芽させるために、熱活性化と栄養発芽性物質の使用を組み合わせることも知られている。芽胞は、最初に65~75℃の温度(この具体的温度は種に依存する)で所定時間(例えば30分間)培養することによって熱活性化される。芽胞は、次に、L-アラニン等の栄養発芽性物質を含む緩衝剤に移される。また、米国特許第7,081,361号に開示されているように、ペレット化された栄養物質(砂糖、酵母エキス、及び直接の芽胞発芽剤ではない他の栄養素を含む)、細菌開始物質及び水を、温度が16~40℃、より好ましくは29~32℃に制御された成長チャンバー内に供給し、約24時間かけて成長させることにより、使用場所近くの成長チャンバーの中で細菌を生育することも知られている。
【0010】
ヒト、動物又は植物の消費に使用するためのプロバイオティックスとして、又は水処理施設又は排水ラインに直接投入するために、細菌が消費者/使用者に分配される使用場所で、活性バチルス種を単一工程で生成することにより、芽胞の培養及び活性化を迅速に行う方法の必要性がある。それゆえ、本発明は、単一工程で芽胞を発芽させるための簡単な方法を記載するもので、加熱培養と同時に栄養発芽性濃縮物を使用するものである。
【発明の概要】
【0011】
本発明の好ましい一実施形態に係る栄養-発芽性組成物(nutrient-germinant composition)は、多くのL-アミノ酸の1種又は組合せ、及び任意選択的にD-グルコース(芽胞コート内のコグネイト受容体に対するL-アミノ酸の結合親和性を増加させる)を含み、燐酸塩緩衝剤などの中性緩衝剤、及び商業的に入手可能なKathon/Lingaurd CG(メチルクロロイソチアゾリノン及びメチルイソチアゾリノンを含む活性成分を有する)などの工業用防腐剤(preservative)を含む。本発明の別の好ましい実施形態に係る栄養-発芽性組成物は、L-アミノ酸の1種又はL-アミノ酸の2種以上の組合せ、及び任意選択的にD-グルコース(芽胞コート内のコグネイト受容体に対するL-アミノ酸の結合親和性を増加させる)を含み、HEPESナトリウム塩(芽胞発芽のために適切なpHを提供するための生物学的緩衝剤)、並びに、プロピルパラベン及びメチルパラベンの組合せなどの工業用防腐剤又は他のGRAS(一般的に安全とみなされる)防腐剤を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はまた、塩化カリウム又は燐酸一カリウム又は燐酸二カリウムなどのカリウムイオンの供給源を含む。別の好ましい実施形態では、組成物は、D-グルコースとD-フルクトースの両方を含む。
【0012】
別の好ましい実施形態において、組成物はまた、1又は2種以上のバチルス種の芽胞を含み、前述の組成物成分のいずれかと組み合わせて、NaCl等の発芽阻害剤、工業用防腐剤又はD-アラニンを含む。発芽阻害剤は、栄養-発芽性組成物の中で芽胞が早期に発芽するのを防止する。発芽阻害剤は、NaClなどの芽胞の発芽を防止する化学物質、工業用防腐剤、又はD-アラニンを含むことができる。あるいは、細菌芽胞を別々に提供し、使用場所及び培養時に、本発明に係る栄養-発芽性組成物に添加することができる。
【0013】
別の好ましい実施形態において、本発明に係る栄養発芽性組成物は濃縮された形態であり、使用場所にて、水又は他の希釈剤中で0.01%~10%の濃度に希釈される。濃縮された配合物を使用することにより、出荷、保管、及びパッケージングコストが低減され、使用場所での組成物の投与が容易になる。濃縮組成物は、液体の形態(form)が使用場所での希釈剤との混合が容易で迅速であるので最も好ましいが、ペレット、ブリック又は粉末のような固体形態も使用されることができる。長期保存及び/又は発芽阻害中に、組成物助剤中に一般的な工業用防腐剤を含めることは、組成物が好ましい濃縮形態である場合に特に有用である。
【0014】
別の好ましい実施形態において、本発明は、栄養発芽性組成物を用いて、バチルス種の芽胞を、高温で所定時間(培養期間)、発芽させる方法を含む。前記高温は、好ましくは35~60℃、より好ましくは38~50℃、最も好ましくは41℃~44℃の温度であり、前記培養期間は、用途に応じて、好ましくは2~60分の範囲である。本発明の好ましい組成物に係る濃縮形態の栄養-発芽性組成物は、最も好ましくは、本発明の培養方法に用いられるが、他の栄養-発芽性組成物が用いられることもできる。培養方法は、好ましくは、使用場所又はその近く、即ち、発芽芽胞が使用されるサイト(例えば、動物の給餌、給水又は寝床)若しくは消費されるサイト又はそれらの近くで実施され、発芽した芽胞を使用場所又は消費場所に分配することをさらに含む。本発明に係る好ましい方法は、多量の芽胞、液体(典型的には水)、栄養-発芽性組成物を収容することができるリザーバを有し、培養期間中に混合物を加熱することができるあらゆる培養装置において実施されることができる。最も好ましくは、本発明の方法は、これらの成分を混合することができ、培養期間の終わりに加熱を自動的に停止することができ、芽胞を含むプロバイオティックス又は処理溶液を、使用場所又は消費場所へ自動的に分配することができる装置の中で実施される。好ましい方法は、バッチ工程として、又は連続工程として実施されることができる。本発明の方法では、芽胞の態様は、乾燥粉末形態、液体懸濁液、又は再生された水性混合物等の様々なあらゆる態様が用いられることができる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態は、広範な実用性及び適用性を有し、使用場所でバチルス種の芽胞を迅速に発芽させることができる。好ましい実施形態は、例えば、動物に餌を供給するためのプロバイオティックス、又は廃水システムを処理するための細菌を供給するためのプロバイオティックス、又は排水のメンテナンスのためのプロバイオティックスとして使用するための芽胞の調製に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明は、以下の図面に関連してさらに記載され説明される。
図1】本発明の好ましい実施形態に係る組成物及び方法を用いた細菌スライドの写真を、対照スライドと比較して示す図である。
図2】本発明の好ましい実施形態に係る組成物及び方法を用いた発芽レベルを実証するためのpO試験データを、対照試験と比較して示すグラフである。
図3】本発明の好ましい実施形態に係る組成物及び様々な方法を用いた発芽レベルを実証するためのpO試験データを、対照試験と比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい一実施形態に係る栄養-発芽性組成物は、1又は2種以上のL-アミノ酸、D-グルコース(芽胞コート中でL-アミノ酸のそれらのコグネイト受容体に対する結合親和性を増加させるが、任意選択的である)、D-フルクトース(細菌種に応じて任意選択的)、芽胞発芽のために適切なpHを提供するための生物学的緩衝剤(例えば、HEPESナトリウム塩、燐酸塩緩衝剤、又はTris緩衝剤)、任意選択的なカリウムイオン源(KCl等)、及び工業用防腐剤を含む。別の好ましい実施形態では、組成物は、D-グルコースとD-フルクトースの両方を含む。D-グルコースとD-フルクトースの両方が使用される場合、KCl等のカリウムイオン源を含むことが最も好ましい。D-フルクトースと、D-グルコース及びD-フルクトースと、カリウムイオン源との使用は、当業者に理解されるように、細菌の種に依存する。防腐剤は、比較的中性のpHを有し、前記組成物とpH適合性のものを使用することが好ましい。別の好ましい実施形態において、組成物は、1又は2種以上のバチルス種の芽胞と、1又は2種以上の発芽阻害剤とを含む。あるいは、芽胞は、使用場所で、本発明に係る栄養-発芽性組成物に別途添加されることもできる。別の好ましい実施形態では、組成物は濃縮形態であり、最も好ましくは濃縮された液体であり、使用場所で希釈される。
【0018】
好ましいL-アミノ酸は、L-アラニン、L-アスパラギン、L-バリン、及びL-システインを含む。濃縮組成物のさらなる実施形態において、L-アミノ酸は、大豆タンパク質の加水分解物として準備されることができる。濃縮された状態であるとき、組成物は、上記L-アミノ酸の1又は2種以上の溶液の各々を、好ましくは8.9~133.5g/L、より好ましくは13.2~111.25g/L、最も好ましくは17.8~89g/L含み; D-グルコース(任意選択的)及び/又はD-フルクトース(任意選択的)の各々を、好ましくは18~54g/L、より好ましくは27~45g/L、最も好ましくは30~40g/L含み; KCl(カリウム源として任意選択的に)を、好ましくは7.4~22.2g/L、より好ましくは11.1~18.5g/L、最も好ましくは14~16g/L含み; 燐酸一ナトリウムを、好ましくは10~36g/L、より好ましくは15~30g/L、最も好ましくは20~24g/L含み; 燐酸二ナトリウムを、好ましくは30~90g/L、より好ましくは21.3~75g/L、最も好ましくは28.4~60g/L含み; 1又は2種以上の工業用防腐剤を、最終(合計)重量で、好ましくは0.8~3.3g/L、より好ましくは1.2~2.7g/L、最も好ましくは1.6~2.2g/L含む。組成物は、燐酸一ナトリウム/燐酸二ナトリウム緩衝剤に追加して、又はそれらに代えて、Tris塩基を、好ましくは15~61g/L、より好ましくは24~43g/L、最も好ましくは27~33g/L含むか、又は、HEPES緩衝剤を32.5~97.5g/L、より好ましくは48.75~81.25g/L、最も好ましくは60~70g/L含む。必要に応じて、燐酸一カリウムを、カリウムイオン源として使用されることもでき、使用量は、好ましくは13.6~40.8g/L、より好ましくは20.4~34g/L、最も好ましくは26~29g/Lである。必要に応じて、燐酸二カリウムを、カリウムイオン源として使用されることもでき、使用量は、好ましくは8.7~26.1g/L、より好ましくは13~21.75g/L、最も好ましくは16~19g/Lである。これら成分の量は、より高い濃度では成分の一部が不溶性になり、より低い濃度では芽胞の発芽効果がなくなるため、本発明の重要な特徴である。
【0019】
最も好ましくは、本発明の実施形態に係る栄養-発芽性組成物は濃縮された状態であり、好ましくは、使用場所にて、水又は他の適当な希釈剤中で作業溶液(working solution)に希釈される。希釈は、好ましくは、濃縮物の0.1~10%の範囲であり、残部が水であるが、前記範囲とは別の範囲を用いられることもできる。濃縮された配合物を使用することにより、出荷、保管、及び包装コストが低減され、使用場所での組成物の投与が容易になる。濃縮組成物は、使用場所における希釈剤との混合が容易で迅速である液体の形態であることが最も好ましいが、ペレット、ブリック又は粉末のような固体形態も使用されることができる。長期保存及び/又は発芽阻害中に、組成物助剤中に一般的な工業用防腐剤を含めることは、組成物が好ましい濃縮形態である場合に特に有用である。
【0020】
好ましい一実施形態では、組成物は、好ましくは、1又は2種以上のバチルス芽胞を10%~90重量%含む。好ましいバチルス芽胞として、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・サブチリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・ポリミキサ、バチルス・チューリンゲンシス、バチルス・メガテリウム、バチルス・コアグランス、バチルス・レンタス、バチルス・クラウジ、バチルス・シルクランス、バチルス・フィルムス、バチルス・ラクティス、バチルス・ラテロスポルス、バチルス・ラエボラクティクス、バチルス・ポリミキサ、バチルス・プミルス、バチルス・シンプレックス、及びバチルス・スファエリクス等のバチルス種を挙げることができる。なお、他のバチルス種芽胞を使用できることは、当業者には理解されるであろう。組成物は、最も好ましくは、3~12のバチルス種を含む。あるいは、これらの芽胞は、使用場所にて、栄養-発芽性組成物に別々に添加されることもできる。
【0021】
別の好ましい実施形態において、プロバイオティックスとして使用するための栄養-発芽性組成物は、消費者の消化管内で栄養素の分解を補助する点で、本質的にプロバイオティックである1又は2種以上のバチルス菌株を含む。この菌株は、好ましくは、1又は2種以上の酵素を産生し、前記酵素は、タンパク質を加水分解するプロテアーゼ、デンプンその他の炭水化物を加水分解するアミラーゼ、脂肪を加水分解するリパーゼ、複合糖類中のグリコシド結合の加水分解を補助し、セルロースの分解を補助するグリコシダーゼ、セルロースをグルコースに分解するセルラーゼ、リパーゼ様酵素であるエステラーゼ、及び植物の細胞壁に存在する多糖であるキシランを分解するキシラナーゼである。これら酵素を産生するバチルス菌株は当該分野において広く知られている。あるいは、これらのバチルス菌株は、使用場所で、栄養-発芽性組成物に別々に添加されることができる。
【0022】
別の実施形態において、廃水処理又は排水処理として使用するための栄養-発芽性組成物は、典型的には、廃水及び/又は排水中に存在する有機物の消化に有益な酵素を産生する1又は2種以上のバチルス菌株を含む。バチルス菌株は、好ましくは、1又は2種以上の酵素を産生し、前記酵素は、植物タンパク質及び動物タンパク質を加水分解するプロテアーゼ、デンプンその他の炭水化物を加水分解するアミラーゼ、植物脂肪及び動物脂肪、油及びグリースを加水分解するリパーゼ、複合糖類中のグリコシド結合の加水分解を補助し、セルロースの分解を補助するグリコシダーゼ、セルロースをグルコースに分解するセルラーゼ、リパーゼ様酵素であるエステラーゼ、及びキシラナーゼである。他の酵素についても、同様に産生されることができる。本発明に係る好ましい組成物の中に含めるために選択される特定のバチルス種は、処理される廃水及び/又は排水中に存在する特定種類の有機物を標的とする酵素を特異的に産生するものであってよい。これらの酵素を産生するか、又は特定種類の廃棄物処理を標的とするバチルス菌株は、当技術分野で広く知られている。また、他の選択肢として、これらのバチルス菌株は、使用場所で栄養-発芽性組成物に別々に添加されることできる。
【0023】
芽胞が栄養-発芽性組成物の中に含まれる場合、組成物はまた、1又は2種以上の発芽阻害剤及び/又は防腐剤を含む。好ましい発芽阻害剤又は防腐剤は、NaCl、D-アラニン、又は防腐剤を含む。具体的には、組成物は、高濃度のNaCl、及び/又は、1又は2種以上の化学防腐剤(Linguard ICP又はKathon CG(メチルクロロイソチアゾリノンを約1.15~1.18%と、メチルイソチアゾリノンを約0.35~0.4%含む活性成分を有する))、及び/又は、D-アラニン(公知の競合性発芽抑制剤)を含み、前記NaClの濃度は、29~117g/L、より好ましくは43~88g/L、最も好ましくは52~71g/Lであり、前記化学防腐剤の最終(合計)濃度は、0.8~3.3g/L、より好ましくは1.2~2.7g/L、最も好ましくは1.6~2.2g/Lであり、前記D-アラニンの濃度は、8~116g/L、より好ましくは26~89g/L、最も好ましくは40~50g/Lである。これらの発芽阻害剤又は防腐剤は、芽胞を不活性状態に維持する役割を有し、使用場所でそれらを希釈及び活性化させる前に芽胞が早期発芽するのを防止する。発芽阻害剤の使用が特に好ましいのは、この実施形態による組成物が、本発明の好ましい方法で使用され、使用場所で発芽が起こる場合である。本発明に係る栄養-発芽性組成物は、芽胞組成物又は工業用処理製品の中に一般的に含まれる他の標準的な成分を任意選択的に含むことができ、その成分は、限定するものでないが、活性成分の分散を補助する組成物及び界面活性剤の保存寿命を確保することができる他の防腐剤である。
【0024】
本発明の好ましい一実施形態は、使用場所で芽胞を発芽させる方法であり、前記方法は、芽胞及び栄養素(芽胞及び栄養素は、好ましくは、本発明に係る組成物であるが、別の組成物の中又は別途加えられた要素の中に含まれていてもよい)を含む組成物を準備することと、前記組成物を高温度又はある温度範囲に加熱し、前記組成物を前記温度又は温度範囲内で所定時間(培養期間)維持することと、含み、消費場所近傍の使用場所で発芽させることができるようにしたものである。培養期間中の加熱は、栄養-発芽性組成物の存在下で一回の段階で行われる。この方法はまた、好ましくは、発芽した芽胞を、動物(飼料又は水を介して)、動物の寝床、植物、池、ヒト、廃水システム又は排水に分配するステップを含む。芽胞組成物は、好ましくは35~55℃の温度、より好ましくは38~50℃の温度、最も好ましくは41℃~44℃の温度に加熱される。培養期間は、最終用途に応じて変化し得る。プロバイオティック用途では、培養時間は10分以下であることが好ましい。プロバイオティック用途で最も好ましい培養期間は2~5分である。このようにして、芽胞は完全に発芽してしまう前に動物にリリースされるので、芽胞にとって最も有益な動物の腸管を通して生存する可能性が増す。一方で、廃水に適用される場合、完全に発芽した芽胞が、処理される廃水に確実に送達されるようにするために、20~60分のより長い培養期間を必要とする。廃水処理の場合、培養期間は、最も好ましくは、20~30分である。用途の如何に拘わらす、培養は、エアインキュベータ、ウォーターインキュベータ、又は所定の温度範囲で均一で一定の熱を供給できる他のあらゆるチャンバーの中で行われることができる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態による種々の組成物について、本発明の好ましい方法に従って試験した。組成物、方法及び結果を以下に記載する。
【0026】
<実施例1>
芽胞を発芽させるために、FreeFlow LF-88プロバイオティクス(NCH Corporationから商業的に入手可能な芽胞液体配合物)を約1mlの水道水に加えて、最終濃度を約1×10CFU/mL(CFUはコロニー形成単位を表す)にする。本発明の好ましい実施形態による発芽誘起栄養素濃縮組成物は、L-アラニン(89g/L)、燐酸一ナトリウム(20g/L)、燐酸二ナトリウム(60g/L)及びリンガードCP(合計1.6g/L)を含み、当該組成物を、水及び細菌混合物に添加して、栄養-発芽性組成物の最終濃度を混合物の総重量の4%にした。比較のために、栄養発芽性濃縮組成物は添加せずに、同じ量のFreeFlow LF-88プロバイオティクスと水を用いた陰性対照反応を調製した。両方の混合物(発芽剤と、栄養-発芽性組成物を含まない陰性対照)を混合し、予め培養されたヒートブロックの中で、42℃又は周囲室温(約23℃)で60分間培養した。
【0027】
各反応後の芽胞を、位相差顕微鏡法を用いて観察した。スライドを、標準的な手順を用いて調製した。芽胞はOlympus BX41顕微鏡(100倍油浸対物レンズ)で観察し、cellSens Dimensionソフトウェアパッケージによって制御されたOlympus UC30カメラを用いて画像化した。
【0028】
得られた画像の視野の中で、発芽した芽胞を、総芽胞の百分率として計数した。合計10個の代表的な画像について、各条件(試験混合物)の分析を行なった。発芽した芽胞は水の流入により屈折性を失い、暗い位相であるのに対し、発芽していない芽胞は明るい位相である。
【0029】
図1は、これら試験結果の代表的な画像を示す。画像Aは、本発明の好ましい組成物及び好ましい方法によるもので、栄養-発芽性組成物を用いて発芽され、培養期間中に42℃で加熱された芽胞を表す。黒い斑点は発芽した芽胞を示し、明るい斑点は発芽していない芽胞を示す。画像Bは、本発明の好ましい実施形態に係る栄養-発芽性組成物を用い、周囲温度(23℃)での培養で発芽した芽胞を示す。画像C及び画像Dは、本発明に係る栄養発芽性組成物で処理されなかった対照芽胞で、42℃で培養した対照芽胞と、周囲温度(23℃)で培養した対照芽胞である。
【0030】
図1に示されるように、画像「A」は、発芽した芽胞(黒い斑点)が他の画像よりも有意に多いことを示す。本発明の好ましい実施形態に係る栄養-発芽性組成物を、本発明の好ましい実施形態に係る発芽方法と組み合わせて培養した芽胞は、見かけの発芽効率が96.8%(実施例1、図1A)であることを示した。本発明の好ましい実施形態に係る栄養-発芽性組成物を、本発明の好ましい実施形態による発芽法を使用せずに培養した対照芽胞は、見かけの発芽効率が2.3%(実施例1、図1B)である。同様に、本発明に係る栄養-発芽性組成物を用いずに培養した芽胞は、42℃の培養での見かけ活性化効率は1.2%(実施例1、図1C)であり、23℃での培養での見かけ活性化効率は2.6%(実施例1、図1D)である。本方法の好ましい実施形態によって処理されていない試料中の発芽芽胞が示す僅かな割合の発芽は、FreeFlow LF-88プロバイオティクス溶液中で既に発芽していたものである。この実施例は、本発明の好ましい実施形態に係る栄養-発芽性組成物と培養方法を組み合わせて使用することにより、芽胞の発芽が有意に増加することを示すものである。
【0031】
<実施例2>
実施例1に記載された同じ試験混合物/培養法(同じ栄養-発芽性組成物を使用し、加熱して培養を行なったもの「栄養処理され42℃で培養された芽胞」)と、対照混合物/培養方法(栄養-発芽性組成物を使用せず、加熱せずに培養を行なったもの「栄養処理されずに23℃で培養された芽胞」)を用いて、別の培養試験を繰り返して行なった。異なる点は、本発明の好ましい実施形態に係る試験混合物の効率を対照混合物と比較するために行なったことである。さらに、他の2種類の混合物を試験した。1つは、実施例1の栄養-発芽性組成物を用いたが加熱しないもの(「栄養処理され23℃で培養された芽胞」)であり、もう1つは、栄養-発芽性組成物を使用しないで加熱したもの(「栄養処理されず42℃で培養された芽胞」)である。簡潔に記載すると、好ましい栄養-発芽性組成物で処理した芽胞と処理していない芽胞とを、42℃又は23℃で1時間培養したということである。培養後、各反応液1mLの芽胞を23℃の14K RPMで3分間ペレット化し、Butterfield緩衝液1mLの中で再懸濁した。約6×10CFU(0.02mL)を、0.980mLのDavis最少培地(炭素源として3%グルコース及び微量元素を含む)を過剰のD-アラニンと共に添加した。D-アラニンは、L-アミノ酸培地での発芽の強力な阻害剤である。
【0032】
約1.2x10CFUをPreSens OxoPlateの4つのウェルの各々に加えた。PreSens OxoPlatesは光学酸素センサーを用いるもので、2つのフィルター対(励起540nm、発光650nm:励起540、発光590nm)を使用して、試料の酸素含有量を蛍光測定する。対照は、製造者の記載通りに実施され、測定は、BioTek 800FLx蛍光プレートリーダで行なった。時間点(time points)は、37℃の温度で、24時間に亘って絶えずシェイクしながら10分毎に採取し、データは次の式を用いて処理し、酸素の分圧(pO)を決定した:
【0033】
pO=100[(K/IR)-1(K/K100)-1]
【0034】
発芽した芽胞は、増殖性細胞が代謝成長の一部として酸素を消費する時に分裂し成長を続ける。酸素の消費は、pOの低下によって表される。おそらく、観察される成長は、本発明によって発芽した芽胞の発芽後成長及び栄養生育(vegetative growth)によるものである。これら試験におけるpOレベルを図3に示す。
【0035】
図2に示されるように、本発明の好ましい実施形態に係る試験混合物及び方法(栄養-発芽性組成物と方法の両方を使用して処理された芽胞42℃)は、本発明の好ましい実施形態に係る処理も加熱もされていないか、又は栄養-発芽性組成物による処理と加熱が一緒ではなくどちらか一方のみが行われた対照芽胞混合物よりも4時間早く栄養生育を開始した。実験の対照で観察された生育は、FreeFlow LF-88プロバイオティクス(実施例1参照)に存在する約2%の発芽芽胞を表すと推定される。この実施例では、本発明の好ましい実施形態に係る栄養-発芽性組成物及び培養方法が使用される場合、芽胞の発芽が有意に増加することをさらに示す。
【0036】
<実施例3>
上記実施例1に記載したのと同様の試験及び対照混合物及び培養法を用いて別の培養試験を行なった。簡潔に記載すると、LF-88を約10mLの蒸留水に加えて、最終濃度は約10CFU/mLである。種々の温度で培養した試料は、対照混合物と比べて、本発明の好ましい実施形態に係る試験方法の有効性を示した。反応物は、実施例1に記載された栄養-発芽性組成物(図3の「処理された芽胞」)を準備し、23℃(周囲温度で加熱なし)、32℃、42℃、又は60℃で培養した。対照反応物は、栄養-発芽性組成物を含まない組成物で、周囲室内温度で培養した。培養1時間後、各反応物1mLを、23℃にて14K RPMで3分間ペレット化し、Butterfield緩衝液中で再懸濁させた。約6×10CFU(0.02mL)を0.980mLのDavis最少培地(炭素源として3%グルコースと微量元素を含む)を過剰のD-アラニンと共に添加した。
【0037】
約1.2x10CFUをPreSens OxoPlateの4つのウェルの各々に加えた。対照は、製造者の記載通りに実施され、測定は、2つのフィルター対(励起:540nm、発光:650nm、及び、励起:540、発光:590nm)を使用し、BioTek 800FLx蛍光プレートリーダで行なった。時間点は、37℃の温度で、24時間に亘って絶えずシェイクしながら10分毎に行ない、データを処理して、酸素の分圧(pO)を決定した。これら試験結果のpOレベルは図3に示されている。
【0038】
図3に示されるように、本発明の好ましい実施形態に係る栄養-発芽性組成物及び加熱を用いた培養した芽胞は、対照より数時間前に、栄養生育を開始した。栄養-発芽性組成物で処理されたが加熱されていない芽胞は、対照混合物と同等である。栄養-発芽性組成物で処理された芽胞で、本発明の一実施形態に係る35~55℃の好ましい温度範囲より低い温度(「処理された芽胞32℃」曲線によって表される)で培養された芽胞の栄養生育の開始は、対照よりも早かったが、本発明による好ましい温度範囲内の高温で処理された芽胞よりも早くはなかった。芽胞を栄養-発芽性組成物で処理し、本発明の一実施形態における最も好ましい温度範囲である41℃~44℃の温度で培養した芽胞は、栄養生育の開始が一番早く、対照よりも4時間早く開始し、最も良い結果を示した。前の実施例に見られるように、無処理の対照実験で観察された生育は、FreeFlow LF-88プロバイオティクスに存在する約2%の発芽芽胞であると推定される(実施例1参照)。この実施例はさらに、本発明の好ましい実施形態による栄養-発芽性組成物及び培養方法を使用すると、芽胞の発芽が有意に増加することを示す。
【0039】
当業者であれば、本明細書及び本明細書の好ましい実施形態の説明を読むことにより、本発明の範囲内で装置に改変及び変更を加えることができる。本発明の範囲は、本発明者らが法律的に権利を与えられた添付の特許請求の範囲の最も広い解釈によってのみ制限されるものとする。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2021-10-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌種の芽胞の発芽を補助する栄養-発芽性組成物であって、
L-アラニン、L-アスパラギン、L-バリン、L-システイン、大豆タンパク質の加水分解物、又はそれらの組合せを含むアミノ酸と、
燐酸塩緩衝剤、HEPES、Tris塩基、又はそれらの組合せを含む緩衝剤と、
プロピルパラベン及びメチルパラベン、メチルクロロイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン、又はそれらの組合せを含む工業用防腐剤と、
任意選択的にカリウムイオン源と、
任意選択的に細菌種の芽胞と、を含み、
前記細菌種が、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・サブチリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・ポリミキサ、バチルス・チューリンゲンシス、バチルス・メガテリウム、バチルス・コアグランス、バチルス・レンタス、バチルス・クラウジ、バチルス・シルクランス、バチルス・フィルムス、バチルス・ラクティス、バチルス・ラテロスポルス、バチルス・ラエボラクティクス、バチルス・プミルス、バチルス・シンプレックス、及びバチルス・スファエリクスのうちの一種又は複数種である、栄養-発芽性組成物。
【請求項2】
栄養-発芽性組成物は、
アミノ酸を合計で約8.9~133.5g/Lと、
工業用防腐剤を合計で約0.8~3.3g/Lと、
燐酸塩緩衝剤を合計で約40~126g/L、又はTris塩基を約15~61g/L、又はHEPESを約32.5~97.5g/L、又はそれらの組合せと、
任意選択的に、カリウムイオン源を約7.4~22.2g/Lと、
を含む濃縮された液体である、請求項1に記載の栄養-発芽性組成物。
【請求項3】
栄養-発芽性組成物は、さらに、D-グルコース、又はD-フルクトース、又はそれらの組合せを約18~54g/L含む、請求項1又は2に記載の栄養-発芽性組成物。
【請求項4】
燐酸塩緩衝剤は、約10~36g/Lの燐酸一ナトリウムと、約30~90g/Lの燐酸二ナトリウムとを含む、請求項1乃至3の何れかに記載の栄養-発芽性組成物。
【請求項5】
栄養-発芽性組成物は、フルクトース又はグルコースを含まない、請求項1乃至4の何れかに記載の栄養-発芽性組成物。
【請求項6】
栄養-発芽性組成物中の全ての成分は、GRAS標準に適合する、請求項1乃至5の何れかに記載の栄養-発芽性組成物。
【請求項7】
栄養-発芽性組成物は、カリウムイオン源を含む、請求項1乃至6の何れかに記載の栄養-発芽性組成物。
【請求項8】
栄養-発芽性組成物は、細菌種の芽胞を含む、請求項1乃至7の何れかに記載の栄養-発芽性組成物。
【請求項9】
約29g/L~117g/Lの塩化ナトリウム又は約8g/L~116g/LのD-アラニン又はそれらの組合せを含む発芽阻害剤をさらに含む、請求項8に記載の栄養-発芽性組成物。
【請求項10】
使用場所で細菌種の芽胞の発芽を増加させる方法であって、
請求項1に記載の栄養-発芽性組成物を準備するステップと、
細菌種の芽胞が前記栄養-発芽性組成物の中に含まれない場合は細菌種の芽胞を準備するステップと、
前記栄養-発芽性組成物及び前記芽胞を、使用場所又はその近傍の酸素存在下で、約35℃~60℃の範囲の温度に加熱するステップと、
約2~60分の培養時間の間、前記範囲の温度を維持して、活性化細菌を含む発芽した細菌溶液を生成するステップと、
前記発芽した細菌溶液を前記使用場所に分配するステップと、を含み、
前記使用場所は、動物の飼料、動物用の水、動物の寝床、植物、池、廃水システム又は排水を含み、
前記細菌種が、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・サブチリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・ポリミキサ、バチルス・チューリンゲンシス、バチルス・メガテリウム、バチルス・コアグランス、バチルス・レンタス、バチルス・クラウジ、バチルス・シルクランス、バチルス・フィルムス、バチルス・ラクティス、バチルス・ラテロスポルス、バチルス・ラエボラクティクス、バチルス・プミルス、バチルス・シンプレックス、バチルス・スファエリクス又はそれらの組合せを含む、方法。
【請求項11】
栄養-発芽性組成物は濃縮された液体の形態であり、
前記栄養-発芽性組成物に希釈剤を加え、細菌種の芽胞が前記栄養-発芽性組成物の中に含まれない場合は細菌種の芽胞を加えることにより、希釈された組成物を生成するステップと、をさらに含み、
加熱するステップは、前記希釈された組成物を、使用場所又はその近傍の酸素存在下で、約35℃~60℃の範囲の温度に加熱することを含み、
前記希釈された組成物の濃度が、約0.1%~10%である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
温度は約38℃~50℃の範囲である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
温度は約41℃~44℃の範囲である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項14】
アミノ酸は、L-アラニンである、請求項10乃至13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
栄養-発芽性組成物は、細菌種の芽胞を含み、塩化ナトリウム又はD-アラニン又はそれらの組合せをさらに含む、請求項10乃至14の何れかに記載の方法。
【請求項16】
栄養-発芽性組成物は、約29g/L~117g/Lの塩化ナトリウム又は約8g/L~116g/LのD-アラニン又はそれらの組合せを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
使用場所は池である、請求項10乃至16の何れかに記載の方法。
【請求項18】
栄養-発芽性組成物は、
1又は複数のL-アミノ酸を合計で約8.9~133.5g/Lと、
1又は複数の工業用防腐剤を合計で約0.8~3.3g/Lと、
1又は複数の燐酸塩緩衝剤を合計で約40~126g/L、又はTris塩基を約15~61g/L、又はHEPESを約32.5~97.5g/L、又はそれらの組合せと、
任意選択的に、カリウムイオン源を約7.4~22.2g/Lと、
を含む濃縮された液体である、請求項10乃至17の何れかに記載の方法。
【請求項19】
濃縮された栄養-発芽性組成物は、約8.9~133.5g/LのL-アラニンを含み、希釈された組成物の濃度は、前記濃縮された栄養-発芽性組成物の約4%である、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
栄養-発芽性組成物は、フルクトース又はグルコースを含まない、請求項10乃至19の何れかに記載の方法。
【請求項21】
培養時間は約2~5分であり、及び/又は、芽胞は、栄養-発芽性組成物と共に加熱する前に熱活性化されていない、請求項10乃至20の何れかに記載の方法。
【請求項22】
栄養-発芽性組成物は、カリウムイオン源を含む、請求項10乃至21の何れかに記載の方法。
【外国語明細書】