(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086200
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】扉止水方法及び装置
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20220602BHJP
E06B 7/22 20060101ALI20220602BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/22 Z
E04H9/14 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198088
(22)【出願日】2020-11-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】591147889
【氏名又は名称】株式会社工業技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】520470017
【氏名又は名称】株式会社翔栄技巧
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100080115
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 和壽
(72)【発明者】
【氏名】岩井 宗一
(72)【発明者】
【氏名】白石 哲靖
【テーマコード(参考)】
2E036
2E139
2E239
【Fターム(参考)】
2E036AA01
2E036BA01
2E036CA01
2E139AA10
2E139AC19
2E239AC04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】洪水などの非常時に建物の室内へ浸水が入り込むのを防止するものであって、扉の全高さにわたり水嵩が上がっても浸水を防止することができる扉止水方法及び装置を提供する。
【解決手段】左右側部と上下部が連続した四角形状の枠体からなり、室内へ浸水による水の浸入可能性のある扉Dの周りを包囲するように建物壁に設置されたシート受け用部材と、このシート受け用部材と縦横の寸法がほぼ等しく形成されてシート受け用部材の上方の壁に巻回状に設置され、巻回方向の外端部が前記シート受け用部材の上部に固着された止水シート5と、前記シート受け用部材の外側の壁に前記扉を挟むように複数個設置されたフック8と、前記止水シートの裏面における前記シート受け用部材と対応する位置に設けられた水密保持部材と、この水密保持部材が設けられた止水シートとシート受け用部材を固定する緊締ベルト10と、を備えている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洪水などの非常時に建物の室内へ浸水が入り込むのを防止するものであって、
左右側部と上下部が連続した四角形状の枠体からなり、室内へ浸水による水の浸入可能性のある扉の周りを包囲するように建物壁に設置されたシート受け用部材と、
このシート受け用部材と縦横の寸法がほぼ等しく形成されてシート受け用部材の上方の建物壁に巻回状に設置された止水シートと、を備え、
前記止水シートは巻回方向の外端部が前記シート受け用部材の上部に固着されており、
非常時に際して、前記止水シートの巻回を解放して引き伸ばし前記シート受け用部材の開口した前面を全面にわたり被覆した後、この止水シートとシート受け用部材を水密保持して固定手段で固定することを特徴とする扉止水方法。
【請求項2】
洪水などの非常時に建物の室内へ浸水が入り込むのを防止するものであって、
左右側部と上下部が連続した四角形状の枠体からなり、室内へ浸水による水の浸入可能性のある扉の周りを包囲するように建物壁に設置されたシート受け用部材と、
このシート受け用部材と縦横の寸法がほぼ等しく形成されてシート受け用部材の上方の壁に巻回状に設置され、巻回方向の外端部が前記シート受け用部材の上部に固着された止水シートと、
前記シート受け用部材の外側の壁に前記扉を挟むように複数個設置されたフックと、
前記止水シートの裏面における前記シート受け用部材と対応する位置に設けられた水密保持部材と、
この水密保持部材が設けられた止水シートとシート受け用部材を固定する手段と、
を備えていることを特徴とする扉止水装置。
【請求項3】
前記シート受け用部材は、断面方形のブロック体からなっている請求項2に記載の扉止水装置。
【請求項4】
前記ブロック体は、硬質塩化ビニール製樹脂からなっている請求項3に記載の扉止水装置。
【請求項5】
前記ブロック体の上下部、及び左右側部に当接して止水シートの端部を押さえるL形アングルを備えている請求項3又は4に記載の扉止水装置。
【請求項6】
前記水密保持部材は、ゴムパッキンからなり、シート受け用部材の寸法に合わせて止水シートの裏面に取り付けられている請求項2ないし5のいずれかに記載の扉止水装置。
【請求項7】
前記アングルは、硬質塩化ビニール製樹脂からなっている請求項5に記載の扉止水装置。
【請求項8】
前記ブロック体の下部は、左右側部、及び上部の幅寸法より長い寸法のプレート状に形成されており、建物壁側に設置された扉枠の高さと同高程度になるように固着され、該下部の上面に左右側部の下面が載るように配置され、左右側部の前面、下部の上面に止水シートが下端部を折り曲げて取り付けられている請求項4に記載の扉止水装置。
【請求項9】
前記固定手段は、ブロック体の左右側部より外側の壁にブロック体の高さ方向に複数段、左右に対となって設置されたフックと、これら左右一対のフック間に介装され、扉の前面に配置される止水シートをブロック体に押さえる緊締バンドと、からなっている請求項2ないし8のいずれかに記載の扉止水装置。
【請求項10】
前記緊締バンドは、荷締め用のナイロンバンドである請求項9に記載の扉止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、扉止水方法及び装置に関し、さらに詳しくは洪水などの非常時に建物の電気室及びポンプ室、エレベーター機械室などの扉周りを簡単かつ迅速に止水し、室内のライフラインを浸水から保護するようにした技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
昨今の異常気象によって予想しえない大量の降雨がもたらされ、それを原因とする河川の氾濫などによる建物への浸水が起こっている。建物にはポンプ・電気室などのライフラインが設けられているが、何の対策もとっていないと浸水した水はこれらの室内へ入り込み、建物全体の電気や水の供給を遮断して、居住者の生活に大きな打撃を与える。
【0003】
このような現況に鑑み、従来から浸水対策のための扉止水装置として、各種のものが提案されてきた。提案されているものとしては、止水板タイプと、止水シートタイプがある。前者は例えば特許文献1に示すものである。これは、建物の屋内側と屋外側とを連通し、かつ扉によって開閉される開口部の幅方向に対応して設けられた一対の縦方立に取り付けられる第1止水板と、第2止水板と、補強部材とを備え、これら止水板等によって建物内への浸水を防止する。
【0004】
しかし、この止水板式のものではある程度の浸水量を抑えることができても浸水が止水板の高さを超えると、止水の役を果たすことができず、浸水を完全に防ぐことはできなかった。しかも、止水板の設置に少なくとも多く(3人以上)の作業者を必要とするし、設置時間も長くかかるという問題があった。
【0005】
また、後者は例えば特許文献2に示すものである。これは、シートの両端、及び心材を保持部材の上端からシート保持部内に挿入し、挿入配置後に下部が床面上に引き出すとともに、上部を吸盤で扉等に吸着するようにして浸水を防止する。
【0006】
しかし、このシート式のものもシートの上端は扉の中間高さ位置にとどまり、浸水を完全に防ぐことはできなかった。
【0007】
前記のように、従来知られているものは止水板タイプであれ、止水シートタイプであれ、開口部のある扉において所定の高さまでの浸水には耐えられるものの、扉の全高にわたり浸水するのを防止し、完全に浸水対策として有効なものではなかった。しかも、設置に際して多くの作業者が必要とし、設置にも時間がかかるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-123989号公報
【特許文献2】特開2015-140563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、発明者等は、既設建物のライフラインを確保するために、電気室及びポンプ室、エレベーター機械室など、様々な室内のほか、窓や換気口への浸水を防ぐことが肝要であることに鑑み、浸水対策として扉全体を止水シートにて被うことに思いをめぐらし、この発明を完成させるに至った。すなわち、この発明は、前記従来の問題を解決し、扉の全高さにわたり水嵩が上がっても浸水を防止することができる扉止水方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、洪水などの非常時に建物の室内へ浸水が入り込むのを防止するものであって、左右側部と上下部が連続した四角形状の枠体からなり、室内へ浸水による水の浸入可能性のある扉の周りを包囲するように建物壁に設置されたシート受け用部材と、このシート受け用部材と縦横の寸法がほぼ等しく形成されてシート受け用部材の上方の建物壁に巻回状に設置された止水シートと、を備え、前記止水シートは巻回方向の外端部が前記シート受け用部材の上部に固着されており、非常時に際して、前記止水シートの巻回を解放して引き伸ばし前記シート受け用部材の開口した前面を全面にわたり被覆した後、この止水シートとシート受け用部材を水密保持して固定手段で固定することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、洪水などの非常時に建物の室内へ浸水が入り込むのを防止するものであって、左右側部と上下部が連続した四角形状の枠体からなり、室内へ浸水による水の浸入可能性のある扉の周りを包囲するように建物壁に設置されたシート受け用部材と、このシート受け用部材と縦横の寸法がほぼ等しく形成されてシート受け用部材の上方の壁に巻回状に設置され、巻回方向の外端部が前記シート受け用部材の上部に固着された止水シートと、前記シート受け用部材の外側の壁に前記扉を挟むように複数個設置されたフックと、前記止水シートの裏面における前記シート受け用部材と対応する位置に設けられた水密保持部材と、この水密保持部材が設けられた止水シートとシート受け用部材を固定する手段と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記シート受け用部材は、断面方形のブロック体からなっている。請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記ブロック体は、硬質塩化ビニール製樹脂からなっている。請求項5に記載の発明は、請求項3又は4において、前記ブロック体の左右側部、及び下部に当接して止水シートの端部を押さえるL形アングルを備えている。請求項6に記載の発明は、請求項2ないし5のいずれかにおいて、前記水密保持部材は、ゴムパッキンからなり、シート受け用部材の寸法に合わせて止水シートの裏面に取り付けられている。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5において、前記アングルは、硬質塩化ビニール製樹脂からなっている。請求項8に記載の発明は、請求項4において、前記ブロック体の下部は、左右側部、及び上部の幅寸法より長い寸法のプレート状に形成されており、建物壁側に設置された扉枠の高さと同高程度になるように固着され、該下部の上面に左右側部の下面が載るように配置され、左右側部の前面、下部の上面に止水シートが下端部を折り曲げて取り付けられている。請求項9に記載の発明は、請求項2ないし8のいずれかにおいて、前記固定手段は、ブロック体の左右縁部より外側の壁にブロック体の高さ方向に複数段、対となって設置されたフックと、これら左右一対のフック間に介装され、扉の前面に配置される止水シートをブロック体に押さえる緊締バンドと、からなっている。請求項10に記載の発明は、請求項9において、前記緊締バンドは、荷締め用のナイロンバンドである。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、前記のようであって、請求項1に記載の発明によれば、左右側部と上下部が連続した四角形状の枠体からなり、室内へ浸水による水の浸入可能性のある扉の周りを包囲するように建物壁に設置されたシート受け用部材と、このシート受け用部材と縦横の寸法がほぼ等しく形成されてシート受け用部材の上方の建物壁に巻回状に設置された止水シートと、を備え、前記止水シートは巻回方向の外端部が前記シート受け用部材の上部に固着されており、非常時に際して、前記止水シートの巻回を解放して引き伸ばし前記シート受け用部材の開口した前面を全面にわたり被覆した後、この止水シートとシート受け用部材を水密保持して固定手段で固定するので、従来の扉止水方法ではできなかった扉の全高さにわたり水嵩が上がっても浸水を防止することができる。また、設置に際しても作業が止水シートの引き出しと固定という簡単なもので済むため、2人以下の作業者でも設置ができる。しかも、非常時のあわただしさの中でも、短時間で設置することができるという優れた効果が期待できる。
【0015】
請求項2ないし10に記載の発明によれば、左右側部と上下部が連続した四角形状の枠体からなり、室内へ浸水による水の浸入可能性のある扉の周りを包囲するように建物壁に設置されたシート受け用部材と、このシート受け用部材と縦横の寸法がほぼ等しく形成されてシート受け用部材の上方の壁に巻回状に設置され、巻回方向の外端部が前記シート受け用部材の上部に固着された止水シートと、前記シート受け用部材の外側の壁に前記扉を挟むように複数個設置されたフックと、前記止水シートの裏面における前記シート受け用部材と対応する位置に設けられた水密保持部材と、この水密保持部材が設けられた止水シートとシート受け用部材を固定する手段と、を備えているので、請求項1に記載の扉止水方法と同様な効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の一実施の形態の扉止水装置の全体を示す概略正面図である。
【
図3】
図1の線A-Aで切断した概略平断面図である。
【
図7】ブロック体の変形例を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、この発明の一実施の形態について説明する。
【0018】
図1において、1は扉止水装置であり、建物の1階、半地下など、浸水の可能性のある室、例えばポンプ室や電気室の外部扉Dの周りに設置されている。扉Dは、その下端位置が床スラブより一段高くなった設計となっている。この例では扉Dは片開き式のものを示したが、両開き式にも適用可能であるし、窓など引き違い扉(サッシを含む)にも適用可能である。
【0019】
扉止水装置1において、扉Dの上方の建物壁にはシート巻回収納庫2がアンカー等により固定状態で設置されている。また、扉Dの外側の建物壁には左右側部と上下部が連続した四角形状の枠体からなるブロック体3が扉Dの周りを包囲するように裏面に塗布した不定形シーリング剤13を介してアンカー等により固定状態で設置されている。ブロック体3は、硬質塩化ビニール樹脂からなり、これを構成する左右側部と上下部の断面寸法はいずれも縦100mm×横100mm程度となっている。これによりブロック体3は、壁面からの突出量が扉Dから離れた所定に定められ、
図2,3からも明らかのように扉ノブよりも外方へ突出する。このブロック体3は、シート受け用部材としての役割を担っている。
【0020】
シート巻回収納庫2内には止水シート巻上装置が設置されている。この巻上装置は巻芯14と、この巻芯の両端部に固定された円形ガイド板16と、建物壁に長さ調整可能にアンカー固定された吊りベルト17と、このベルトの先端に取り付けられたフック18からなっている。ガイド板16の外周縁にはフック掛け穴19が円周方向に等間隔で多数穿設され、この穴に前記フック18が掛け止めされるようになっている。
【0021】
しかして、前記のように設置された巻上装置の巻芯14には止水シート5が巻回され、図示しないバンドで止められ保持されている。止水シート5は、2mm厚程度の塩化ビニール製シートからなり、
図4に示すように、正面視の幅、長さともブロック体3のそれと同じ寸法に形成されている。そして通常時は
図2の実線で示すようにシート巻回収納庫2内の巻芯14に巻回されて保持された状態にあるが、非常時には同図に鎖線で示すように収納庫の下方開口部から手動にて下方へ引き伸ばして取り出し、ブロック体3の開口した前面を全面にわたり被覆することが可能になっている。
【0022】
止水シートにおいて壁側となる背面には水密保持部材としてのゴムパッキン6がブロック体3の寸法に合わせ、ブロック体3とほぼ同形に形成されて接着により固着されている。外端側のゴムパッキン6と接する止水シート5の外端部5aはブロック体3の上部頂面に溶着されている。止水シート5においてこの溶着部から内端側のゴムパッキン6は止水シート5を引き伸ばすと、ブロック体3の左右側部、上下部のそれぞれ前面に合致するよう位置合わせされ、配置されるようになっている。止水シート5の材質については、同効のものでブロック体3と固着が可能であれば、塩化ビニール以外のものでもよい。
【0023】
図1,2において、7は止水シート押え用のL形アングルで、その角部から直角に張り出した両辺の寸法は100mm×50mm程度となっている。このアングル7も、ブロック体3等と同様に硬質塩化ビニール樹脂からなっている。アングル7の内角を形成する片面には滑り止め用ゴム板(図示省略)が取り付けられている。そして、ブロック体3の左右側部と上下部の4か所の角部にそれぞれその内向き角部が当接し合うようにして配置され、取り付けられる。その際、前記ゴム板が止水シート5と当接する形になる。このアングル7を取り付けることにより、止水シート5の上下、左右の弛みや滑りをなくすことが可能になる。
【0024】
8はベルト取付用のステンレス製フックで、ブロック体3の左右縁部より外側の壁にアンカーなどの固定手段にて固定されている。フック8はブロック体3の高さ方向に所定ピッチの間隔で複数段(この例では5段)にわたり、左右に対となって固定される。10は緊締ベルトである。緊締ベルト10は、この例では荷締め用のナイロンバンドからなり、左右に対となった前記フック間にわたり掛け渡されたうえ、長さ調節され、止水シート5に引っ張りテンションをかけ、止水シート5をブロック体3に押圧して固定する。前記フック8と緊締ベルト10で止水シート5の固定手段を構成する。
【0025】
図1,2において、11はシート巻回収納庫2を構成してブロック体3の上方に設置された埃除け用のアルミ製化粧カバーである。
【0026】
次に、上記実施形態の施工手順について説明する。この例では止水シート巻上装置を含むシート巻回収納庫2、ブロック体3、フック8は、非常時を想定して事前に設置しておく。また、シート巻回収納庫2内に収納され巻芯に巻回された止水シートの外端部5aとブロック体3の上部頂面を適宜の加熱手段により溶着しておく。一方、アングル7と、緊締ベルト10は、図示していない収納容器に入れ保管しておき、非常時に現場の扉近くに運びこむ。
【0027】
建物の浸水が起きそうな非常時になったら、作業者は、まずシート巻回収納庫2内の巻上装置のフック18をフック掛穴19から外し、止水シート5を巻芯14ごと下方開口部から扉Dのある下方へ手動にて取り出し、引き伸ばす。そして、止水シート5のこの引き伸ばしにより止水シート5の裏面にあるゴムパッキン6がブロック体3と対応する位置にきたら、位置合わせを行う。これにより、扉Dの前はブロック体3と止水シート5で完全に覆われた状態になる。
【0028】
その後、前記した収納容器に収納しているL形アングル7を取り出し、ブロック体3の左右側部と上下部に当接させ、止水シート5が上下左右に弛みやズレがないようにブロック体3とで挟み込みむとともに、同様に取り出した緊締ベルト10を長さ調節し、ブロック体3の左右にあるフック8に引っ掛け、締め付け固定する。止水シート5は、これによりその四つの縁部がアングル7で補強された状態になり、前記ゴム板で滑りが防止され、しっかり固定される。
【0029】
これにより施工が終了する。
図5,6は施工終了時を示す。
【0030】
前記の施工作業は、シート巻回収納庫2内からの止水シート5の引き伸ばしと、アングル7の取り付け、それと緊締ベルト10掛けだけであり、通常、作業者2人以下で行うことができるとともに、短時間の作業で設置が可能である。しかも、扉Dを全高にわたりシート5で被うので、従来できなかった扉Dの全高にわたる浸水にも十分に対応することができる。また、機械・電気式ではなく、すべて手動で行えるため、非常時でも支障なく対応することができるという利点もある。
【0031】
すなわち、水害による大規模停電によってライフラインが一時停止しても、建物の設備等の損傷を抑えられるため、停電等の復旧後も直ちに使用が可能となる。建物のポンプ室・電気室等は、建物の地階に設置されているケースが多く、洪水等により建物が浸水すると最初に被害に遭いやすいし、浸水の高さも大きくなるが、このような場合でも扉からの浸水を完全に防止することが可能なので、非常に利用価値が高いものとなる。
【0032】
なお、危険がなくなったときは、緊締ベルト10を外すとともに、アングル7を外す。これにより、止水シート5は再び巻芯14に巻回することが可能になるので、巻き取ったうえ、図示しないバンド等で固定する。そして、巻芯14上のガイド板16をシート巻回収納庫2内のフック18に引っ掛ける。これにより、元の状態に復帰させることができる。
【0033】
以上説明したように、この実施の形態の扉止水装置によれば、扉Dの全高を超えるような浸水が起こっても扉Dからの浸水を防ぐことができる。したがって、扉Dの内側にあるポンプ室や電気室をはじめとする室の内部への浸水がなくなり、この技術分野において極めて利用価値の高い扉止水方法ないし設備を提供することができるという優れた効果が期待することができる。
【0034】
図7は、ブロック体の変形例を示す要部拡大図である。このブロック体30は扉Dの下端が床スラブに段差無く位置しているため、その形状が前記したブロック体3とは相違している。すなわち、ブロック体30の下部30aは上部、左右側部とは別体となっており、その寸法は高さが建物壁側に設置された扉枠21と同高程度、幅が上部、左右側部の倍程度(200mm程)となって平面視長方形の肉薄プレート状に形成されている。下部30a以外の上部、左右側部はブロック体3のそれと同じである。この下部3aも
図1で示したブロック体と同様に硬質塩化ビニール樹脂からなっている。
【0035】
ブロック体30の下部30aの上面には左右側部の下面が載置されている。ブロック体30の左右側部の前面、下部30aの上面にはパッキン付き止水シート5が下端部をL字状に折り曲げて取り付けられ、ブロック体30で形成される開口を覆っている。22は止水シート押え用ブロックで、ブロック体30を対角状に半割した三角形形状を呈しており、前記のように配置され止水シート5の下部の折り曲げ部を押さえるように配置される。この押えブロック22は別途床スラブに取り付けた左右一対のフック23に引っ掛けられ緊締ベルト24で長さ調節され、締め付け固定されている。
【0036】
前記のようなブロック体30を用いれば、扉D下部の、床スラブとの間に十分な隙間が無い場合にも支障なく扉止水装置1を設置することができる。また、扉D以外の各種の扉(引き違い扉等)にも対応することが可能となる。
【0037】
図8は窓に適用した例を示す。すなわち、この窓は引き違い扉(アルミ製・ガラス製等)の一種であり、建物の半地下や一階などに設置されるが、このような窓にも適用することが可能である。
【0038】
この実施の形態で示したブロック体3や止水シート5などの構成部材は、あくまでも好ましい一例を示すものであり、その具体的な形状や構造、材質等は特許請求の範囲内で適宜設計変更が可能であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0039】
1 扉止水装置
2 シート巻回収納庫
3,30 ブロック体
30a 下部
5 止水シート
6 ゴムパッキン
7 L形アングル
8 フック
10 緊締ベルト
11 化粧カバー
13 シーリング剤
14 巻芯
16 ガイド板
17 吊りベルト
18 フック
19 フック掛け穴
21 扉枠
22 三角形ブロック
23 フック
24 緊締ベルト
D 扉