(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086255
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 45/50 20180101AFI20220602BHJP
F21S 41/148 20180101ALI20220602BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20220602BHJP
F21V 31/00 20060101ALI20220602BHJP
F21W 102/10 20180101ALN20220602BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220602BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20220602BHJP
【FI】
F21S45/50
F21S41/148
F21V23/00 140
F21V31/00 250
F21W102:10
F21Y115:10
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198166
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝井 直樹
【テーマコード(参考)】
3K014
【Fターム(参考)】
3K014AA01
(57)【要約】
【課題】灯室内に水が浸入したとしてもなお電子回路の防水性が確保された車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両用灯具200は、光源ユニット10とハウジング11を有するランプボディ1と、ECU110とカバー120を有するECUユニット100と、光源ユニット10とECU110とを接続するケーブル70を有する。灯室Sと収容室Tとが仕切り部13,132によって仕切られており、ケーブル70が挿通される貫通孔82が仕切り部13,132を貫通するように設けられている。仕切り部13,132の上面には、灯室S側に向かって延びる立壁部132が貫通孔82を囲むように設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源ユニットと、光源ユニットを収容するハウジングを有するランプボディと、
光源ユニットと電気的に接続されたECUと、ECUを収容するカバーと、を有するECUユニットと、
前記光源ユニットと前記ECUとを接続するケーブルを有し、
前記ランプボディの下方に前記ECUユニットが設けられ、
前記光源ユニットが収容される灯室と前記ECUが収容される収容室とが、前記ハウジングと前記カバーの少なくとも一方がなす仕切り部によって仕切られており、
前記ケーブルが挿通される貫通孔が前記仕切り部を貫通するように設けられており、
前記仕切り部の上面には、前記灯室側に向かって延びる立壁部が前記貫通孔を囲むように設けられている、車両用灯具。
【請求項2】
前記ケーブルと前記貫通孔の内壁との間には隙間が設けられ、前記灯室と前記収容室とが連通されている、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記ECUは、電子回路と、前記電子回路が搭載される基板を有し、
前記カバーは、前記基板の上面を覆う上カバーと、前記基板の下面を覆う下カバーを有し、
前記上カバーには、下方に突出してその下端部に前記基板が固定されるリブが設けられ、
前記下カバーには、
前記基板を前記リブにねじ止めするねじが当接されるねじ受け部と、
前記ねじ受け部よりも下方に位置して前記基板の下面との間にECU放熱空間を形成する膨出部と、を有する、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記仕切り部の前記上面と前記立壁部とにより水受け部が形成されている、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記仕切り部の前記上面には、下方に向かって窪んだ水受け部が設けられている、請求項1に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などにより、放電バルブを点灯させるための点灯回路ユニットが取り付けられた車両用前照灯が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2000-306424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年は光源としてLEDが採用され、複雑な形状の車両用灯具がデザインされている。車両用灯具の形状、特に、灯室を形成するハウジングの形状が複雑になった結果、従来では十分であった防水性能が、再び問題になって来ている。
そこで本発明は、灯室内に水が浸入したとしてもなお電子回路の防水性が確保された車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係る車両用灯具は、 光源ユニットと、光源ユニットを収容するハウジングを有するランプボディと、
光源ユニットと電気的に接続されたECUと、ECUを収容するカバーと、を有するECUユニットと、
前記光源ユニットと前記ECUとを接続するケーブルを有し、
前記ランプボディの下方に前記ECUユニットが設けられ、
前記光源ユニットが収容される灯室と前記ECUが収容される収容室とが、前記ハウジングと前記カバーの少なくとも一方がなす仕切り部によって仕切られており、
前記ケーブルが挿通される貫通孔が前記仕切り部を貫通するように設けられており、
前記仕切り部の上面には、前記灯室側に向かって延びる立壁部が前記貫通孔を囲むように設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、灯室内に水が浸入したとしてもなお電子回路の防水性が確保された車両用灯具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の第一実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、本実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0009】
また、本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」について適宜言及する。これらの方向は、
図1に示す車両用灯具200が車両に取り付けられた状態で、車両について設定される方向である。ここで、「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。
【0010】
図1は、本実施形態に係る車両用灯具200の断面図である。
図1に示すように車両用灯具200は、ランプボディ1と、ECUユニット100と、ケーブル70を有している。
【0011】
<ランプボディ>
ランプボディ1は、ハウジング11と、アウタカバー12と、光源ユニット10を有している。ハウジング11とアウタカバー12とで形成された灯室S内に光源ユニット10が配置されている。光源ユニット10から出射された光はアウタカバー12を介して灯室Sの外へ出射される。図示した例では、光源ユニット10は、光学ユニット2と、シェード機構3と、レベリング機構4と、スイブル機構5を備えている。
【0012】
光学ユニット2は、光源22と、リフレクタ23と、投影レンズ24と、基台21とを備えている。光源22は、LED素子やLD素子など、光を発する素子である。リフレクタ23は、光源22から出射された光を投影レンズ24に向けて反射させる。投影レンズ24は、光源22からの光を屈折させて灯室Sの外へ出射させる。光源22、リフレクタ23、投影レンズ24は基台21に固定されている。
【0013】
シェード機構3は、遮蔽部材32と、遮蔽部材32を揺動可能に支持するシェード揺動軸部31と、遮蔽部材32を揺動させるシェードモータ33を備えている。遮蔽部材32は、投影レンズ24の後方焦点近傍に配置され、投影レンズ24に入射される光の一部を遮ることにより、所望の配光パターンを形成させる。例えば、シェードモータ33を作動させて遮蔽部材32を光源22からの光の一部を遮る姿勢にさせると、カットオフラインを有するロービーム配光パターンが形成される。また、シェードモータ33を作動させて遮蔽部材32が投影レンズ24に入射させる光を遮らない位置まで遮蔽部材32を揺動させると、ハイビーム配光パターンが形成される。シェード揺動軸部31およびシェードモータ33も基台21に固定されている。
【0014】
スイブル機構5は、光学ユニット2を水平方向に旋回させる機構である。スイブル機構5は、スイブル軸部52と、スイブルモータ51を有している。スイブルモータ51は、スイブル軸部52を鉛直方向に延びる回転軸線回りに旋回させる。スイブル軸部52は光学ユニット2の基台21に固定されている。スイブルモータ51を作動させると、基台21ごと光学ユニット2が水平方向に旋回する。
【0015】
レベリング機構4は、レベリングモータ41と、スクリューロッド42と、ナット43と、支持フレーム44を備えている。光学ユニット2の基台は支持フレーム44に連結されている。支持フレーム44は水平方向に延びるヒンジ軸部45によって回動可能にハウジング11に取り付けられている。レベリングモータ41はスクリューロッド42を回転させる。スクリューロッド42は支持フレーム44に固定されたナット43に噛み合っている。ナット43は支持フレーム44の上部に固定されている。ヒンジ軸部45は支持フレーム44の下部に連結されている。
レベリングモータ41を作動させると、支持フレーム44が水平方向に延びるヒンジ軸部45回りに回動する。これにより、光学ユニット2の光軸Lxを上下方向に移動させることができる。
【0016】
ハウジング11の下部には、第一平坦部13と、第二平坦部14と、段差部15が設けられている。第一平坦部13は第二平坦部14よりも下方に位置している。第一平坦部13と第二平坦部14は段差部15によって接続されている。
第一平坦部13にはハウジング開口16が設けられている。また、ハウジング11の下部には、ハウジング開口16と、第一突起17と、第二突起18が設けられている。第一突起17は、このハウジング開口16の外縁から下方に向かって突出した筒状の部位である。第二突起18は、第一突起17よりも外周側に設けられて下方に向かって突出した筒状の部位である。
【0017】
<ECUユニット>
ECUユニット100は、光源ユニット10と電気的に接続されたECU110(Electronic Control Unit)と、ECU110を収容するカバー120とを備えている。ECUユニット100と光源ユニット10とは、ケーブル70によって接続されている。より詳細には、光源ユニット10の光源22、シェードモータ33、スイブルモータ51、レベリングモータ41がそれぞれ、対応するケーブル70によって、ECUユニット100と電気的に接続されている。
【0018】
図2はECUユニット100を示す部分断面図である。ECUユニット100は、ランプボディ1の下方に設けられている。ECU110は、電子回路111と、電子回路111が搭載される基板112を有している。カバー120は、上カバー130と、下カバー140とで構成されている。電子回路111は、上述した光源ユニット10、シェードモータ33、スイブルモータ51、レベリングモータ41のそれぞれを制御したり、電流を供給したりする。
【0019】
上カバー130は、水平方向に広がり基板112の上面を覆う上カバー本体部131と、上カバー本体部131から上方に向かって突き出した挿入筒部132と、上カバー本体部131の外縁から下方に突出する内筒部133を有している。挿入筒部132がハウジング開口16から灯室S内に突出するように、上カバー130がハウジング11に取り付けられている。挿入筒部132の外周面とハウジング開口16をなす内周面との間には、Oリング81が設けられている(
図1参照)。これにより、ハウジング開口16と挿入筒部132との間から水が灯室S内へ浸入することが防止されている。
【0020】
下カバー140は、水平方向に広がり基板112の下面を覆う下カバー本体部141と、下カバー本体部141から上方に向かって突出する外筒部142を有している。下カバー140の外筒部142は、上カバー130の内筒部133に水密に嵌め込まれている。組み合わされた下カバー140と上カバー130との間に、ECU110が収容される収容室Tが形成されている。
【0021】
光源ユニット10が収容される灯室Sと、ECU110が収容される収容室Tとが、ハウジング11とカバー120の少なくとも一方がなす仕切り部によって仕切られている。図示の例では、灯室Sと収容室Tとがハウジング11の第一平坦部13と、上カバー130の挿入筒部132によって仕切られており、ハウジング11の第一平坦部13および挿入筒部132が仕切り部を構成している。
このようにランプボディ1の灯室SとECUユニット100の収容室Tとが仕切られている。このため、例えば、万一ランプボディ1の光学ユニット10のみが故障し、ECU110が故障していない場合には、光学ユニット10のみを交換して交換コストを低減することができる。
【0022】
図1に示したように、仕切り部には、灯室Sと収容室Tとを貫通する貫通孔82が設けられている。図示の例では、上カバー130の挿入筒部132の内周面が貫通孔82を形成している。ケーブル70はこの貫通孔82を通って光源ユニット10とECU110とを接続している。
この仕切り部の上面には、灯室S側に向かって延びる立壁部(挿入筒部132)が貫通孔82を囲むように設けられている。図示の例では、挿入筒部132がハウジング11の下部の上面よりも灯室S側に突き出している。この挿入筒部132が貫通孔82を囲んでいる。
【0023】
ところで、近年では、ワイドアンドローといった用語に象徴されるように、車両のデザインにおいて、ヘッドランプやリアコンビネーションランプ、ターンシグナルランプといった車両用灯具200をできるだけ車両の左右方向の端部、また、車両の下部に配置されることが増えてきている。また、車両用灯具200にも、上下方向に小さく、左右方向に長くかつ屈曲した形状、といった複雑な形状が求められるようになってきている。さらに、LEDやLDといった小型の光源を多数搭載した車両用灯具200も長細い形状となってきている。車両用灯具200のこういった形状の変遷に伴い、従来では生じにくかったハウジング11を構成する部品の合わせ目や、ハウジング11とアウタカバー12の合わせ目から灯室S内に水が浸入することが懸念されている。
そこで本実施形態の車両用灯具200によれば、万一、灯室S内に水が浸入してしまったとしても、ECUユニット100内に水が浸入することが防止されている。より詳しくは、灯室S内に侵入した水は、仕切り部(ハウジング11の第一平坦部13)の上面に溜まる。しかし、ここに溜まった水は挿入筒部132に妨げられて、貫通孔82に浸入することができない。このため、灯室S内に水が浸入してしまったとしても、ECU110に水がかからないので車両用灯具200の機能を維持させ続けることができる。
【0024】
図1に示したように、ケーブル70と貫通孔82の内壁との間には隙間が設けられ、灯室Sと収容室Tとが連通されている。
本実施形態の車両用灯具200によれば、貫通孔82を介して灯室Sと収容室Tとが連通しており、ECU110を灯室S内の空間も使って放熱させることができ、放熱特性が高められている。なお図示の例とは異なり、ゴムパッキンなどでケーブル70と貫通孔82との間に隙間が生じないように構成してもよい。
【0025】
図2に示したように、本実施形態の車両用灯具200によれば、上カバー130には、下方に突出してその下端部に基板112が固定されるリブ134が設けられている。また、下カバー140には、ねじ受け部143と膨出部144が設けられている。ねじ受け部143には、基板112をリブ134にねじ止めするねじ83が当接される。膨出部144は、ねじ受け部143よりも下方に位置して基板112の下面との間にECU110のための放熱空間を形成する。リブ134は基板112に設けられた孔113を貫通している。リブ134の下面はねじ受け部143に当接している。なお、
図1においては下カバー140のねじ受け部143、膨出部144を省略して描いている。
本実施形態の車両用灯具200によれば、基板112と膨出部144の間に形成された空間に基板112から生じた熱を逃がすことができる。
【0026】
また
図2に示したように、上カバー130のリブ134の先端部には、リブ134よりも小径の小径部135が設けられている。この小径部135は上カバー130のねじ受け部143を貫通している。小径部135の下面にねじ83がねじ込まれている。ねじ83の頭部は、下カバー140のねじ受け部143と小径部135とに接している。下カバー140および基板112はねじ83の頭部とリブ134とに挟まれて固定されている。
このような構成によれば、ねじ83がねじ込まれる小径部135(リブ134)が、直接ねじ83に接触しているため、クリッピングが防止されている。
【0027】
なお、小径部135およびねじ受け部143がねじ83に接触する着座面には、凹凸などの高摩擦部が設けられていることが好ましい。これにより、ねじ83のゆるみを防止できる。
【0028】
図1に示したように、本実施形態の車両用灯具200によれば、仕切り部の上面(ハウジング11の第一平坦部13)と立壁部(挿入筒部132)とにより水受け部Xが形成されている。換言すると、仕切り部の上面には、下方に向かって窪んだ水受け部Xが設けられている。
本実施形態の車両用灯具200によれば、灯室S内に浸入した水が水受け部Xによって受け止められ、収容室T内へ浸入することを抑制できる。
【0029】
また、本実施形態の車両用灯具によれば、筒状の第二突起18の内側にECUユニット100が設けられている。このため、ハウジング11を伝って上方から下方に向かって移動してきた水は、第二突起18を伝って下方へ落ちるので、灯室Sおよび収容室Tへ浸入することがない。
第二突起18は、上カバー130と下カバー140との境界部よりも下方まで延びていることが好ましい。このような構成によれば、第二突起18によって、風などで側方から運ばれてきた水が収容室S内へ浸入することを抑制できる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0031】
1 ランプボディ
2 光学ユニット
3 シェード機構
4 レベリング機構
5 スイブル機構
10 光源ユニット
11 ハウジング
12 アウタカバー
13 第一平坦部(仕切り部)
14 第二平坦部
15 段差部
16 ハウジング開口
17 第一突起
18 第二突起
21 基台
22 光源
23 リフレクタ
24 投影レンズ
31 シェード揺動軸部
32 遮蔽部材
33 シェードモータ
41 レベリングモータ
42 スクリューロッド
43 ナット
44 支持フレーム
45 ヒンジ軸部
51 スイブルモータ
52 スイブル軸部
70 ケーブル
81 Oリング
82 貫通孔
83 ねじ
100 ECUユニット
111 電子回路
112 基板
113 孔
120 カバー
130 上カバー
131 上カバー本体部
132 挿入筒部(立壁部,仕切り部)
133 内筒部
134 リブ
135 小径部
140 下カバー
141 下カバー本体部
142 外筒部
143 ねじ受け部
144 膨出部
200 車両用灯具
Lx 光軸
S 灯室
T 収容室
X 水受け部