(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086256
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】車両検出装置、車両検出方法、車両検出システム及び安全柵システム
(51)【国際特許分類】
B61L 23/00 20060101AFI20220602BHJP
B61B 1/02 20060101ALI20220602BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20220602BHJP
G01B 11/26 20060101ALI20220602BHJP
G01S 17/88 20060101ALI20220602BHJP
B61L 3/02 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
B61L23/00 Z
B61B1/02
G01B11/00 B
G01B11/26 Z
G01S17/88
B61L3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198167
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000242600
【氏名又は名称】北陽電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】細田 強
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 雅也
【テーマコード(参考)】
2F065
3D101
5H161
5J084
【Fターム(参考)】
2F065AA01
2F065AA06
2F065AA12
2F065AA31
2F065BB15
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2F065DD04
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2F065JJ19
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2F065LL16
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2F065QQ25
2F065QQ31
3D101AA03
3D101AA05
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3D101AB05
3D101AB06
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5J084AA02
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5J084BA49
5J084BA55
5J084CA14
5J084CA31
5J084EA29
(57)【要約】
【課題】プラットホームに入線する車両の所定位置への停止、扉の開閉などの車両の入線状態を正確に判定する車両検出装置および車両検出方法を提供する。
【解決手段】プラットホームH側に設置され、その設置位置からプラットホームHに入線した車両1を検知する車両検出装置6であって、前記車両1の進行方向に沿って光波を走査し、前記光波及びその反射光に基づいて反射点までの距離、角度及び反射光強度を含む特性信号を出力する光波測距部RSと、前記特性信号のうち前記車両1に付され前記車両の反射面とは反射特性が異なるマーカMに対する特性信号に基づいて前記車両1の入線状態を判定する車両判定部5と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホーム側に設置され、その設置位置からプラットホームに入線した車両の進行方向に沿って光波を走査し、前記光波及びその反射光に基づいて反射点までの距離、角度及び反射光強度を含む特性信号を出力する光波測距部と、
前記特性信号のうち前記車両に付され前記車両の反射面とは反射特性が異なるマーカに対する特性信号に基づいて前記車両の入線状態を判定する車両判定部と、
を備えている車両検出装置。
【請求項2】
前記車両判定部は、前記光波の単位走査周期内における各反射点の特性信号に含まれる距離及び角度が所定の許容範囲で連続し、かつ、反射光強度が前記マーカの反射特性に対応する強度以上で連続する場合に前記マーカを検知し、前記車両の入線状態を判定する請求項1記載の車両検出装置。
【請求項3】
前記車両判定部は、前記特性信号に基づいて検知された前記マーカの位置が複数の走査周期で所定の許容範囲を超えて変動するか否かに基づいて前記車両が走行中か停止したかを判定する請求項2記載の車両検出装置。
【請求項4】
前記車両判定部は、前記特性信号に基づいて前記車両が停止したと判定し、検知した前記マーカの前記車両の進行方向に対する相対位置が所定の許容範囲に入る場合に、前記車両が適正位置に停止したと判定する請求項3記載の車両検出装置。
【請求項5】
前記マーカは、前記車両の前記プラットホーム側において開閉する扉に設けられ、
前記車両判定部は、さらに前記マーカに対する前記特性信号に基づいて検知した前記マーカの位置が連続する複数の走査周期で変動するか否かに基づいて前記扉の開閉状態を判定する請求項2から4の何れかに記載の車両検出装置。
【請求項6】
前記マーカは、前記扉が開放状態では戸袋に遮蔽され、かつ、前記扉が閉止状態では露出する扉の所定の位置に設けられ、
前記車両判定部は、露出された前記マーカを検知する検出状態から前記マーカを検知しない非検出状態に切り替わると前記扉が開放状態にあると判定する請求項5記載の車両検出装置。
【請求項7】
前記車両の扉が両開きである場合に一対の前記マーカが各扉に所定間隔を隔てて付され、前記車両の扉が片開きである場合に一対の前記マーカが前記扉と前記車体表面に所定間隔を隔てて付され、
前記車両判定部は、前記マーカに対する前記特性信号に基づいて、検知した前記一対のマーカの離隔距離が前記所定間隔に維持されていると前記扉が閉止状態にあると判定し、離隔距離が変動していると前記扉が開放または閉止に向けて移動中であると判定し、少なくとも一つのマーカを検知する検出状態からマーカを検知しない非検出状態に切り替わると前記扉が開放状態にあると判定する請求項5記載の車両検出装置。
【請求項8】
プラットホームに入線した車両の進行方向に沿って光波をプラットホーム側の設置位置から走査し、前記光波及びその反射光に基づいて反射点までの距離、角度及び反射光強度を含む特性信号を出力する光波測距ステップと、
前記特性信号のうち前記車両に付され前記車両の反射面とは反射特性が異なるマーカに対する特性信号を抽出する抽出ステップと、
抽出した特性信号に基づいて前記車両の入線状態を判定する車両判定ステップと、
を備えている車両検出方法。
【請求項9】
請求項1から7の何れかに記載の車両検出装置と、
前記車両に付され前記車両の反射面とは反射特性が異なるマーカと、
を備えている車両検出システム。
【請求項10】
前記マーカは、再帰性反射シートにより構成されている請求項9記載の車両検出システム。
【請求項11】
プラットホーム側に設置され、開閉操作可能なゲートを備えた安全柵と、
請求項1から7の何れかに記載の車両検出装置と、
前記車両検出装置からの出力信号に基づいて前記ゲートの開閉を遠隔操作する安全柵制御装置と、を備えている安全柵システム。
【請求項12】
プラットホーム側に設置され、開閉操作可能なゲートを備えた安全柵と、
請求項5から7の何れかに記載の車両検出装置と、
前記車両検出装置により検出された前記扉の開閉状態と前記ゲートの開閉を連動させる連動制御部を含む安全柵制御装置と、
を備えている安全柵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラットホームに入線する列車の車両を検出する車両検出装置、車両検出方法であり、さらに、この車両検出装置を具備する車両検出システム及び安全柵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道のプラットホームには、入線した列車に乗降する乗客の安全を確保するために、プラットホームに開閉自在なゲートが備えられ、プラットホームに入線した列車が停止した後にゲートを開放し、乗客の乗降が終了した後にゲートを閉止する安全柵が設置されている。
【0003】
このような安全柵が設置されたプラットホームでは、列車が停止した後に列車の乗務員が安全柵のゲートを開閉操作する必要がある。車両の扉の開閉操作に加えてこのようなゲートの開閉操作を行なう必要があるため、乗務員の作業負荷を低減させるべく、列車が所定位置に停止したことを検知してゲートを自動開放し、車両の扉が閉まったことを検知してゲートを自動閉止することが望まれている。
【0004】
特許文献1には、停止場に停止して乗客を乗降させる車両の車両扉の開閉状態を検知することを目的とする車両扉開閉検知方法が開示されている。当該車両扉開閉検知方法は、停止場に停止して乗客を乗降させる車両の水平に開閉する車両扉の開閉状態を検知するように、停止場に光波距離計を、車両扉が存在すべき部分全体を横切る車両扉の横幅より長い所定長さの線分に沿って測距するように配設し、測距結果が緩やかなカーブを描く曲線となった場合、車両扉が完全に閉じたとし、測距結果が車両扉の対応領域において急激に大きくなった場合、車両扉が完全に開いたとし、測距結果が車両扉の対応領域の一部の領域において急激に大きくなった場合、車両扉が半閉まりと判定するように構成されている。
【0005】
そして、停止場に光学式センサを車両扉が存在すべき部分全体を横切る細長形状の領域を撮像するように配設し、車両扉の各戸板に複数のサイズの異なるターゲットマークを扉の開閉方向に沿って所定間隔で設け、光学式センサにより撮像された画像に各ターゲットマークが存在するか否かに応じて車両扉の開閉を検知し、光学式センサにより撮像された画像における各戸板に設けられたターゲットマークの間隔が規定よりも広い場合、車両扉が半閉まりと判定するように構成されている。
【0006】
特許文献2には、測距装置と処理装置とを有し、測距装置は、駅のプラットホーム上の所定の位置に、車両連結部の両側の車両の屋根又は側面に向けて設置され、列車の定位置停止位置を含む範囲に放射ビームを最大走査角度で扇状に走査し、最大走査角度の中心をセンサ基準線とした車両連結部の両側の車両のエッジ部までの走査角度と放射ビームの走査開始位置であるセンサ基準位置から車両連結部の両側の車両のエッジ部までの距離を処理装置に出力し、処理装置は、測距装置から入力したエッジ部までの距離と走査角度から列車の定位置停止範囲の列車進行方向の中心である定位置基準位置に対する車両連結部の両側の車両のエッジ部の列車進行方向の位置を算出し、算出した定位置基準位置に対するエッジ部の位置から列車が定位置に在線しているか否を判定する列車停止位置検知装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-264013号公報
【特許文献2】特開2012-046123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された技術では、車両に多数の乗客が乗車している満車状態においては乗客からの反射光の影響を受けて、車両扉が完全に開いたのか、或いは半閉まりなのか、状態を正確に判定することが困難となる虞があった。
【0009】
また、各戸板に設けた複数のサイズの異なる反射式のターゲットマークを光学式センサにより撮像し、ターゲットマークの位置に基づいて車両扉の状態を判定する場合には、光学式センサとしてCCDカメラなどの撮像装置を使用する場合にはターゲットマークへの照度が昼間と夜間で大きく異なるため、撮像画像にターゲットマークが常時良好な状態で撮影されている保証がなく、状態を正確に判定することが困難となる虞があった。
【0010】
特許文献2に開示された技術では、車両連結部の両側の車両のエッジ部の列車進行方向の位置に基づいて列車が定位置に在線しているか否を判定するため、車両間の隙間が全く無いか、隙間の間隔が狭い列車には適用できないという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、上述した従来技術に鑑み、プラットホームに入線する車両の所定位置への停止、扉の開閉などの車両の入線状態を正確に判定する車両検出装置および車両検出方法を提供する点にある。さらには、当該車両検出装置を備えてプラットホームに設置された安全柵のゲートを自動開閉可能な車両検出システム及び安全柵システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明による車両検出装置の第一の特徴構成は、プラットホーム側に設置され、その設置位置からプラットホームに入線した車両の進行方向に沿って光波を走査し、前記光波及びその反射光に基づいて反射点までの距離、角度及び反射光強度を含む特性信号を出力する光波測距部と、前記特性信号のうち前記車両に付され前記車両の反射面とは反射特性が異なるマーカに対する特性信号に基づいて前記車両の入線状態を判定する車両判定部と、を備えている点にある。
【0013】
この構成によれば、光波測距部によってプラットホームに入線した車両の進行方向に沿う方向に光波が繰返し走査され、光波及びその反射光に基づいて反射点までの距離、角度及び反射光強度を含む特性信号が光波測距部から出力される。車両判定部は、光波の走査軌跡に車両に付され車両の反射面とは反射特性が異なるマーカが位置すると、特性信号に含まれる反射強度に基づいてマーカを識別し、そのときの反射点までの距離と角度からマーカの位置及び移動状態が判別できる。そして、マーカの位置及び移動状態に基づいて車両の入線状態が判定される。
【0014】
なお、入線状態とは、たとえば、列車がプラットホームに進入した状態や、列車がプラットホームに進入しつつある状態を意味する。また、列車がプラットホームに進入し、適切な位置に停止した状態や、列車がプラットホームに進入したものの、適切な位置に停車していない状態も意味する。また、マーカが列車の車両の扉に設けられている場合、本実施形態では、列車の車両に設けられているマーカの位置によって車両の扉の開閉状態が特定される。そこで、本実施形態では、上記の入線状態には、このような車両の扉の開閉状態をも含み得る。以下、本実施形態では、入線状態との用語は上記のような意味で使用される。
【0015】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記車両判定部は、前記光波の単位走査周期内における各反射点の特性信号に含まれる距離及び角度が所定の許容範囲で連続し、かつ、反射光強度が前記マーカの反射特性に対応する強度以上で連続する場合に前記マーカを検知し、前記車両の入線状態を判定する点にある。
【0016】
光波の単位走査周期内に存在する複数の反射点の特性信号に含まれる反射光強度がマーカの反射特性に対応する強度以上であればマーカに対する反射点の候補となり得る。そこで、各候補の距離及び角度が所定の許容範囲で連続する場合にマーカを検知して、車両の入線状態を判定できる。
【0017】
同第三の特徴構成は、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、前記車両判定部は、前記特性信号に基づいて検知された前記マーカの位置が複数の走査周期で所定の許容範囲を超えて変動するか否かに基づいて前記車両が走行中か停止したかを判定する点にある。
【0018】
車両判定部は、各走査周期で検知されたマーカの位置が複数の走査周期で所定の許容範囲を超えて変動する場合に車両が走行中であると判定し、所定の許容範囲に収まる場合に車両が停止していると判定する。これにより、車両の移動状態と停止状態とを適正に判定することができる。
【0019】
同第四の特徴構成は、上述した第三の特徴構成に加えて、前記車両判定部は、前記特性信号に基づいて前記車両が停止したと判定し、検知した前記マーカの前記車両の進行方向に対する相対位置が所定の許容範囲に入る場合に、前記車両が適正位置に停止したと判定する点にある。
【0020】
車両判定部は、特性信号に基づいて車両が停止したと判定し、且つ、車両の進行方向に対するマーカの相対位置が所定の許容範囲に収まっている場合に、車両が適正な停止位置で停止したと判定できる。
【0021】
同第五の特徴構成は、上述した第二から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記マーカは、前記車両の前記プラットホーム側において開閉する扉に設けられ、
前記車両判定部は、さらに前記マーカに対する前記特性信号に基づいて検知した前記マーカの位置が連続する複数の走査周期で変動するか否かに基づいて前記扉の開閉状態を判定する点にある。
【0022】
扉が開閉移動すると、扉に付されたマーカも移動する。そのマーカの位置が複数の走査周期で変動する場合に扉が開閉していると判定することができ、そのマーカの位置が複数の走査周期で固定位置にあれば、扉が開閉何れかの位置で停止している、つまり開放状態か閉止状態であると判定することができる。
【0023】
同第六の特徴構成は、上述した第五の特徴構成に加えて、前記マーカは、前記扉が開放状態では戸袋に遮蔽され、かつ、前記扉が閉止状態では露出する扉の所定の位置に設けられ、前記車両判定部は、露出された前記マーカを検知する検出状態から前記マーカを検知しない非検出状態に切り替わると前記扉が開放状態にあると判定する点にある。
【0024】
マーカが扉の開放状態で戸袋に遮蔽され閉止状態で露出する位置に付されているので、扉が閉止状態で露出されたマーカが検出されている状態から、マーカを検知しない非検出状態になると扉が開放状態になったと判定することができる。
【0025】
同第七の特徴構成は、上述した第五の特徴構成に加えて、前記車両の扉が両開きである場合に一対の前記マーカが各扉に所定間隔を隔てて付され、前記車両の扉が片開きである場合に一対の前記マーカが前記扉と前記車体表面に所定間隔を隔てて付され、前記車両判定部は、前記マーカに対する前記特性信号に基づいて、検知した前記一対のマーカの離隔距離が前記所定間隔に維持されていると前記扉が閉止状態にあると判定し、離隔距離が変動していると前記扉が開放または閉止に向けて移動中であると判定し、少なくとも一つのマーカを検知する検出状態からマーカを検知しない非検出状態に切り替わると前記扉が開放状態にあると判定する点にある。
【0026】
車両の扉が両開きである場合、あるいは、片開きである場合の何れでも、扉の開放方向への移動、あるいは扉の閉止方向への移動に伴って一対のマーカの離隔距離が変動する。そのため、車両判定部は、マーカに対する特性信号に基づいて、一対のマーカの離隔距離が所定間隔に維持されていると検知した場合、扉が閉止状態にあると判定する。一方、車両判定部は、上記の特性信号に基づいて、一対のマーカの離隔距離が変動していると検知した場合、扉が開放または閉止に向けて移動中であると判定する。つまり、扉は開閉状態であると判定される。また、少なくとも一つのマーカを検知する検出状態は、つまり、マーカが貼付されている扉が戸袋から完全に露出されている状態である。これに対し、マーカを検知しない非検出状態は、つまり、マーカが貼付されている扉が戸袋に隠れている状態である。よって、車両判定部は、マーカの検出状態から非検出状態に切り替わると、扉が開放状態であると判定することができる。
【0027】
本発明による車両検出方法は、プラットホームに入線した車両の進行方向に沿って光波をプラットホーム側の設置位置から走査し、前記光波及びその反射光に基づいて反射点までの距離、角度及び反射光強度を含む特性信号を出力する光波測距ステップと、前記特性信号のうち前記車両に付され前記車両の反射面とは反射特性が異なるマーカに対する特性信号を抽出する抽出ステップと、抽出した特性信号に基づいて前記車両の入線状態を判定する車両判定ステップと、を備えている点にある。
【0028】
光波測距ステップで得られた特性信号から、抽出ステップで車両に付されたマーカに対する特性信号が抽出されることにより、マーカの動きが車両の動きとして捉えることができ、車両判定ステップでマーカの動きに基づいて車両の入線状態が判定されるようになる。この構成によれば、上記第一の特徴構成と同様の効果を奏する。
【0029】
本発明による車両検出システムの第一の特徴構成は、上述した第一から第七の何れかの特徴構成を備えた車両検出装置と、前記車両に付され前記車両の反射面とは反射特性が異なるマーカと、を備えている点にある。
【0030】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記マーカは、再帰性反射シートにより構成されている点にある。
【0031】
車両検出装置に備えた光波測距部から出力された光波がマーカに当たると、反射光が光波測距部に向けて再帰性反射される。光波測距部で検出される反射光強度は、マーカとは異なる車両の反射面からの反射光と顕著に異なり高い値となるので、マーカの動きを検出することで車両の移動状態が判定できる。
【0032】
本発明による安全柵システムの第一の特徴構成は、プラットホーム側に設置され、開閉操作可能なゲートを備えた安全柵と、上述した第一から第七の何れかの特徴構成を備えた車両検出装置と、前記車両検出装置からの出力信号に基づいて前記ゲートの開閉を遠隔操作する安全柵制御装置と、を備えている点にある。
【0033】
本発明によるホーム安全柵システムの第二の特徴構成は、プラットホーム側に設置され、開閉操作可能なゲートを備えた安全柵と、上述した第五から第七の何れかの特徴構成を備えた車両検出装置と、前記車両検出装置により検出された前記扉の開閉状態と前記ゲートの開閉を連動させる連動制御部を含む安全柵制御装置と、を備えている点にある。
【0034】
連動制御部を介して安全柵のゲートの開閉と車両検出装置により検出されるドアの開閉とが連動するようになる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明した通り、本発明によれば、プラットホームに入線する車両の所定位置への停止、扉の開閉などの車両の入線状態を正確に判定する車両検出装置および車両検出方法を提供することができるようになる。さらには、当該車両検出装置を備えてプラットホームに設置された安全柵のゲートを自動開閉可能な車両検出システム及び安全柵システムを提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1(a),(b),(c)は、それぞれ、本発明に係る自動車両検出装置が適用される列車の車両、およびプラットホーム施設を説明する模式図である。
【
図2】
図2(a),(b),(c),(d)は車両の扉に付されたマーカの位置が扉の開閉により変化する状態説明図である。
【
図3】
図3(a),(b),(c)はプラットホームに入線した車両と安全柵の動作説明図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る車両検出システム及びホーム安全柵システムの機能ブロック構成図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る車両検出装置による車両の停止及び停止位置判定動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明に係る車両検出装置による車両の扉の開閉判定動作を示すフローチャートである。
【
図7】
図7(a),(b),(c)は、それぞれ、本発明に係る車両検出装置が適用される車両及びプラットホーム施設の別実施形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明による車両検出装置、車両検出方法、車両検出システム及び安全柵システムを説明する。
【0038】
[車両検出装置の構成]
図1(a)及び
図3(a),(b),(c)に示すように、鉄道の駅舎に設置されたプラットホームHの線路R側の縁部に、利用者と列車の接触事故などを回避するために安全柵10が設置されている。安全柵10は、車両1の扉に対応する位置にゲートが設けられた柵本体11と、ゲートを開閉する扉12で構成されている。本実施形態では、平面視する
図3(a)~(d)に示すように、扉12は水平移動することでゲートを開閉するように構成されている。但し、本明細書では、例えば柵本体11に柱を設け、この柱にゲートを跨ぐようにして水平方向に複数のワイヤーを設置する。そして、この複数のワイヤーが、柱に沿って昇降移動してゲートを開閉するように構成される扉12であってもよい。なお、扉12は柵本体11に設けられた図示されない電磁式のモータで駆動されるが、油圧による駆動方式であっても空気圧による駆動方式であってもよい。
【0039】
柵本体11のうち車両1への対向面に光波測距部RSが設置され、光波測距部RSから出力される信号に基づいて車両の入線状態、つまりプラットホームHに入線する車両の状態を判定する車両判定部5が設けられている。光波測距部RSと車両判定部5によって本発明の車両検出装置6が構成される。
【0040】
図示していないが、光波測距部RSは、測定用の光波を出力する光源と、光波が物体に当たって反射した反射光を検出する受光素子と、光源と受光素子との間に配置される集光レンズなどの光学系と、光学系を駆動して光波を空間に向けて走査する走査機構と、測距制御部とを備えたLIDAR(Light Detection and Ranging or Laser Imaging Detection and Ranging)が用いられている。光源として近赤外の半導体レーザが用いられ、受光素子としてアバランシェフォトダイオードが用いられている。なお、光源は、近赤外の半導体レーザに限定されず、また、受光素子は、アバランシェフォトダイオードに限定されない。
【0041】
測距制御部は、走査機構を駆動制御するとともに、所定の周期でパルス光を出力するように光源の発光を制御する。また、測距制御部は、パルス光の発光時期と受光部で受光した反射光の検出時期との時間差に基づいて、光波測距部RSが設置された設置位置から物体(本実施形態の場合であれば、列車の車両である)の反射点までの距離を算出する。算出した距離とそのときの走査機構の走査角度から反射点の位置が算出される。測距制御部は、走査機構による光波の走査周期に同期して各反射点に対応する距離、走査角度、反射光の光量つまり反射強度の少なくとも3つの情報を含む信号を特性信号として車両判定部5に出力する。すなわち、光波測距部RSから車両判定装置5に特性信号が出力される。なお、複数の光波測距部RSを用いる場合には、当該特性信号には光波測距部RSを固有に識別するID信号が含まれる。
【0042】
安全柵システムには、車両判定部5から出力される車両1の状態信号に基づいて安全柵10のゲートを開閉制御する安全柵制御装置7が設けられている。車両判定部5から出力される車両1の状態信号には、入線した列車が停止したか否か、正規の停止位置に停止したか否か、列車を構成する車両1に備えた扉2が閉止状態にあるか否か、扉2が開放状態にあるか否か、扉2が開放状態に向けて開放動作中であるか否か、扉2が閉止状態に向けて動作中であるか否かを判定する複数の信号が含まれる。また状態信号には、線路上に列車が存在するか否か、安全柵10と車両1の間に人などの物体が存在するか否かを判定する信号を含んでもよい。
【0043】
なお、上記の「開放状態」とは、扉2が戸袋に完全に退避した状態であり、たとえば、
図2(b)に示す状態である。「閉止状態」とは、扉2が戸袋から完全に露出した状態であり、たとえば、
図2(a)に示す状態である。また、本実施形態では、扉2が閉止状態から開放状態に向けて開放するように動作する状態を「開放動作状態」と称する。さらに、扉2が開放状態から閉止状態に向けて動作する状態を「閉止動作状態」と称する。また、上記の「正規の停止位置」とは、たとえば、乗客が安全に乗降できるような位置に、各車両が位置付けられた状態で、列車がプラットホームHに停車したときの位置である。
図3(b)に、列車が正規の停止位置に位置している状態が示されている。
【0044】
安全柵制御装置7は、上述の状態信号に基づいて入線した列車が正規の位置に停止したと判定すると、扉12を柵本体11の内部の退避位置に移動させてゲートを開放する。また、安全柵制御装置7は、車両1の扉2が開放状態から閉止位置に向けて動作し閉止動作状態になると、扉12を退避位置から進出させてゲートを閉止するように安全柵10に制御信号を出力する。
【0045】
[車両に貼付されるマーカの構成]
図1(b)および(c)は、車両1をその側面側にあたるプラットホームH側から見た斜視図であり、
図2(a),(b),(c),(d)は、車両1の側面の扉2の付近をプラットホームH側から見た図である。
図1(b)に示すように、車両1の側壁にマーカM1が貼付され、プラットホーム側において開閉する両開きの扉2のそれぞれの表面に一対のマーカM2が貼付されている。マーカM1、M2(M)は、再帰性の反射シートにより構成されている。光波測距部RSはマーカM1、M2に対応する高さで車両1の進行方向に沿う方向に光波を繰返し走査し、光波及びその反射光に基づいて反射点までの距離、角度及び反射光強度を含む特性信号を車両判定部5に出力する。符号SLは走査軌跡を示している。
【0046】
図1(b)に示す例では、列車の先頭の車両1の運転室近傍の側壁に、車両1の停止判定及び停止位置判定を行なうためのマーカM1が貼付される。また、先頭車両の前から二つ目の扉2には、扉2の開閉状態を検出する一対のマーカM2が貼付されている。この場合、扉2は互いに反対方向且つ水平方向に開く一対の扉、いわゆる両開きの扉である。一対のマーカM2は、扉2のそれぞれの表面に所定距離だけ離間させて貼付される。以降、本実施形態では、上記マーカM2間における「所定の距離」は、「離隔距離」と称される。
【0047】
そして、
図3(c)に示すように、車両判定部5がマーカM1を検出可能なように、先頭車両2の基準停止位置B1を基準に進行方向に沿う前後の所定領域R1が光波の走査範囲R1となるように光波測距部RS1が設置され、一対のマーカM2を検出可能なように、基準停止位置B1を基準に前から二つ目の扉2の中央位置が含まれるように、同じく走査範囲R1となる一対の光波測距部RS2,RS3が設置されている。なお、
図3(c)において、車両2の進行方向は、紙面右側から左側への方向である。
【0048】
基準停止位置B1とは、先頭の車両1が停止したときの車両先端の停止位置の基準となる位置である。本実施形態では、基準停止位置B1を基準として、停止を許容する停止許容範囲が予め設定されている。運転士は、先頭の車両の先端が停止許容範囲内に停止するように車両を運転操作する。上述した走査範囲R1は、少なくとも停止許容範囲と一致するか、または、停止許容範囲より広い範囲となるように設定されていればよい。
【0049】
図2(a),(b)に示す両開きの扉2の場合、扉2の閉止状態において一対のマーカM2は露出し、扉2の中心を挟んで距離d1離隔した位置となるように貼付されている。そして、扉2が開方向に駆動されて(すなわち、扉2が開放動作状態になる)扉2が戸袋2Aに退避し、最後には扉2が全開して開放状態となる。扉2は、全開して開放状態に移行すると、マーカM2は戸袋2Aで覆われて遮蔽され、光波測距部RSで検出できなくなる。これに対し、扉2が開放状態でない場合(開放動作状態、閉止状態、および閉止動作状態)には、マーカM2は戸袋2Aから露出するため、光波測距装置RSはマーカM2を検出することができる。
【0050】
従って、車両判定部5は、一対のマーカM2の離隔距離、離隔距離の状態変化、及びマーカM2が検知されるか否かに基づいて扉2が閉止状態にあるのか、開放動作状態にあるのか、開放状態にあるのか、閉止動作状態にあるのかを判定できるようになる。
【0051】
図1(c)及び
図2(c),(d)には、扉2が片開きの場合における一対のマーカM2の貼付位置が示されている。片開きの扉2の場合、扉2の閉止状態で一対のマーカM2は、距離d1離隔して扉2と車両1の側壁の双方に貼付されている。そして、扉2が開方向に駆動される(すなわち、扉2が開放動作状態になる)と戸袋2Aに退避し、全開して開放状態になると扉2に貼付されたマーカM2が戸袋2Aで覆われて遮蔽され光波測距部RSで検出できなくなる。従って、一対のマーカM2の離隔距離、離隔距離の状態変化、マーカM2が検知されるか否かに基づいて扉2が閉止状態にあるのか、開放動作状態にあるのか、開放状態にあるのか、閉止動作状態にあるのかを判定できるようになる。
【0052】
車両判定部5は、光波測距部RSから出力される単位走査周期毎の特性信号のうち、車両1に付され車両1の反射面とは反射特性が異なるマーカM1,M2(M)に対する特性信号に基づいて車両の入線状態を判定して、車両の状態信号を安全柵制御装置7に出力する。
【0053】
車両の塗装面などでは光波が拡散反射するため光波測距部RSに備えた受光素子で検出される反射光の光量はそれほど強くない。これに対して、再帰性の反射シートは、光波の照射方向に光を反射するため反射光の光量は拡散反射光と比べて著しく強い値になる。
【0054】
そこで、本実施形態のマーカM1,M2(M)は、再帰性の反射シートにより構成される。光波の走査軌跡に車両1に付され車両1の反射面とは反射特性が異なるマーカM1,M2(M)が位置するか否かが、特性信号に含まれる反射強度に基づいて識別され、そのときの反射点までの距離と角度からマーカM1,M2(M)の位置及び移動状態が判別できる。そして、マーカM1,M2(M)の位置及び移動状態に基づいて車両2の入線状態が判定される。
【0055】
上述した測距制御部、車両判定部5、安全柵制御装置7は何れもマイクロコンピュータ及びメモリを備えた制御回路で構成され、メモリに記憶された制御プログラムがマイクロコンピュータで実行されることにより、其々の機能が発揮される。
【0056】
[マーカの検出]
以下、車両判定部5について詳述する。
各光波測距部RSには、固有に識別するためのIDデータと、光波の走査範囲と、走査範囲内での検出対象領域が事前に設定されている。また、車両判定部5は、プラットホームHにおける車両1の進行方向に沿った各光波測距部RSの設置位置データとともに各IDデータが関連付けて記憶されている。
【0057】
車両判定部5は、特性信号に含まれるID信号により何れの光波測距部RSからの信号であるのかを認識するとともに、光波の単位走査周期内の各反射点の特性信号から、反射光強度がマーカMの反射特性に対応する強度であり、距離及び角度が所定の許容範囲で連続する場合に、マーカMに対する特性信号であると判定する。なおID以外の手段で各光波測距装置RSと各反射特性の対応付けが可能ならば、他の手段で対応付けを行ってもよい。
【0058】
光波の単位走査周期内に存在する複数の反射点の特性信号に含まれる反射光強度がマーカの反射特性に対応する強度であればマーカに対する反射点の候補となる。そして、候補となる反射点までの距離が所定の許容範囲に収まる複数の反射点が走査方向に連続して存在し、各反射点に対する走査角度が所定の許容範囲で連続する場合にマーカに対する特性信号と判定される。つまり、車両判定装置5は、光波の単位走査周期内における各反射点の特性信号に含まれる距離及び角度が所定の許容範囲で連続し、かつ、反射光強度がマーカの反射特性に対応する強度以上で連続する強度特性または強度分布の場合にマーカを検知し、前記車両の入線状態を判定する。例えば照明光や太陽光、或いはそれらの反射光が単発的に受光素子で検出されるようなノイズ光は、このような処理によって排除される。
【0059】
距離の連続性を判断する許容範囲は数ミリメートルから数十ミリメートルの範囲に設定すればよく、走査角度の連続性を判断する許容範囲はマーカMの横幅より僅かに短い値に設定すればよい。例えば車両1の停止を判定するためのマーカM1であれば、車両1の走行速度を加味して走査角度が連続する許容範囲を可変に設定してもよい。
【0060】
例えば、光波の走査方向と車両1の走行方向が同一方向であれば相対的にマーカM1の走査方向長さが長くなり、光波の走査方向と車両1の走行方向が反対方向であれば相対的にマーカM1の走査方向長さが短くなることを考慮するものである。なお、車両1の走行速度は、連続する複数の走査周期でマーカM1の位置を算出することにより把握できる。
【0061】
[車両の停止判定]
車両判定部5は、マーカM1を検知すると列車が入線したと判定し、さらにマーカM1に対する特性信号に基づいて定まるマーカM1の位置が複数の走査周期で所定の許容範囲を超えて変動するか否かに基づいて車両が走行中か停止したかを判定する。車両1が停止したか否かを判定することを目的とするため、所定の許容範囲は、例えば、数ミリメートルから十数ミリメートルの範囲の値に設定することができる。
【0062】
車両判定部5は、各走査周期で判定されたマーカM1の位置が複数の走査周期で所定の許容範囲を超えて変動する場合に車両1が走行中であると判定する。また、車両判定部5は、マーカM1の位置が所定の許容範囲に収まる場合に、車両1が停止していると判定する。これにより、車両1の入線状態、つまり、車両1がプラットホームHに進入または出発しつつある移動状態か、あるいは、プラットホームHに進入に進入して停止した停止状態かを適正に判定することができる。
【0063】
そして、車両判定部5は、車両1が停止したと判定した場合に、車両1の進行方向に対するマーカM1の相対位置が所定の許容範囲に入ると検知する場合に、車両1が正規の適正位置に停止したと判定する。この場合の許容範囲は上述した基準停止位置B1を基準とした停止許容範囲をいう。
【0064】
[扉の開閉判定]
図1(b)及び
図2(a),(b)で説明したように、車両1の扉2が両開きである場合に一対のマーカM2が各扉2に所定間隔d1を隔てて貼付された態様がある。また、
図1(c)及び
図2(c),(d)で説明したように車両1の扉2が片開きである場合に一対のマーカM2が扉2と車体表面に所定間隔d1を隔てて付されている態様がある。何れの態様であっても、車両判定部5は、マーカM2に対する特性信号に基づいて一対のマーカM2の離隔距離が所定間隔d1に維持されていると扉2が閉止状態にあると判定し、離隔距離d1が変動していると扉が開放または閉止に向けて移動中(開放動作状態または閉止動作状態)であると判定し、少なくとも一つのマーカM2が検出状態から非検出状態に切り替わると扉2が開放状態にあると判定することができる。
【0065】
車両1の扉2が両開きである場合、片開きである場合の何れでも、扉2の開放方向への移動、或いは扉2の閉止方向への移動に伴って各マーカM2の離隔距離が変動するからである。
【0066】
つまり、車両判定部5は、マーカM2に対する特性信号に基づいて定まるマーカM2の位置、例えば、光波の走査方向に沿うマーカM2の先端位置、後端位置または中央位置などをマーカM2の位置と定義して、その位置が複数の走査周期で変動するか否かに基づいて扉2の開閉状態を判定することができる。
【0067】
扉2が開閉移動すると、扉2に付されたマーカM2も移動する。そのマーカM2の位置が複数の走査周期で変動する場合に扉が開閉何れかの方向に作動していると判定することができる。また、そのマーカM2の位置が複数の走査周期で変動することがない、つまり、所定の位置に留まっていると検知した場合には、固扉2は、車両の扉が戸袋に完全に収まった状態(開放状態)か、車両の扉が戸袋から完全に露出した状態(閉止状態)であって、開閉何れかの位置で停止している、つまり開放状態か閉止状態であると判定することができる。
【0068】
また両開きの扉2において、双方の扉2に付された一対のマーカM2の隔離距離、及び片開きの扉2において、扉2と側壁とに付された一対のマーカM2の離隔距離が相対的に長くなる場合には、車両判定部5は、扉2が開放方向に向けて移動していると判定する。また、車両判定部5は、一対のマーカM2の離隔距離が相対的に短くなる場合には扉2が閉止方向に向けて移動していると判定する。
【0069】
なお、一対のマーカM2の貼付位置が上述した態様ではなく扉2と側壁に付されている場合では、一対のマーカM2の離隔距離が相対的に短くなる場合には扉2が開放方向に向けて移動していると判定し、一対のマーカM2の離隔距離が相対的に長くなる場合には扉2が閉止方向に向けて移動していると判定する。
【0070】
[安全柵システムの構成]
図4に示すように、上述した光波測距部RSと車両判定部5を備えた車両検出装置6と、車両1に付されたマーカM(M1、M2)によって車両検出システムが構成される。そして、安全柵システムは、車両検出システムと、安全柵制御装置7と、表示部9と、安全柵10とを備えている。
【0071】
列車がプラットホームに入線すると、光波測距部RSによって特性信号が車両判定部5に入力され、車両判定部5でマーカMに対する検知を含む特性信号が検出されて、車両の状態、扉の状態を含む入線状態が判定され、各状態信号が安全柵制御装置7に出力される。表示部9は、プラットホームHの上方に設置された複数の表示装置で構成され、車両判定部5から出力される入線状態を示す信号、安全柵10のゲートの開閉状態、異常警告などが表示される。表示装置は列車の乗務員である運転士や車掌が目視確認できる位置及び駅の管理室に設置されている。
【0072】
安全柵制御装置7は、車両判定部5から出力される車両の入線状態を示す信号により車両が適正位置に停止したと判断すると、安全柵10のゲートを開放すべく扉12を開放制御する。また、車両判定部5から出力される扉状態信号により車両の扉12が閉止動作状態に入ったと判断すると安全柵10のゲートを閉鎖すべく扉12を閉止制御する。
【0073】
安全柵制御装置7は、扉12の開閉状態を監視し、扉12の開閉または開閉作動状態を示す安全柵状態信号を車両判定部5に出力する。安全柵制御装置7は、安全柵状態信号、および、車両判定装置5から出力される車両の入線状態を示す信号、扉の状態信号に基づいて安全柵システムが適正に動作しているか否かを判定する。安全柵制御装置7は、安全柵システムの異常を判定すると、車両判定装置5に異常信号を出力し、表示部9に異常を表示する。
【0074】
例えば、列車がプラットホームHに入線して正規の停止位置に停止したと判定されるまでの間にゲートが開放された場合や、列車が正規の停止位置に停止したと判定された後にゲートが開放されない場合、あるいは、車両1の扉2が閉止状態であると判定された後にゲートが閉止されない場合などに、安全柵制御装置7は、安全柵システムは異常であると判定する。
【0075】
なお
図4では複数の光波測距装置RSに対して車両判定装置が共通で表記されているが、各光波測距装置RSごとに車両判定装置を設けてもよいし、光波測距装置RSと車両判定装置が一つのケーシングに収納されていてもよい。
【0076】
[車両検出システムによる車両の停止・位置判定フロー]
図5に示すように、先ず光波測距部RSの初期設定が行われる。車両が存在しないときの距離画像が背景として登録され、車両の検出範囲が設定される。さらに、車両判定部5から出力される状態信号として、列車がプラットホームHに在線か否かを示す在線検知信号や、車両1の、停止位置が正規の停止位置であるか否かを示す範囲信号、停止したか否かを示す停止信号の各信号がオフ(否)に設定される(SA1)。これらの信号は安全柵制御装置7に入力されて、表示部9に表示される。
【0077】
列車が入線するまでの間は在線検知信号がオフされている(SA2,SA3)。
図3(a)に示すように、列車がプラットホームHに入線すると光波測距部RSにより車両1からの反射光が検知されるようになり、車両判定部5から在線検知信号がオンされる(SA2,SA4)。マーカM1が検知されると(SA5)、列車停止検知モードに入り(SA6)、マーカ1の位置及び移動情報が取得され(SA7)、マーカM1の位置及び移動情報に基づいて車両1に対する停止判定がなされるまでの間は停止信号がオフされる(SA8,SA9)。車両1に対する停止判定がなされると、停止信号がオンされる(SA8,SA10)。なお、マーカM1が検知されるタイミングで在線検知信号がオンされるように構成してもよい。
【0078】
さらにマーカM1の位置に基づいて先頭の車両が停止した位置が、正規の停止位置の許容範囲に収まっているか否かが車両判定部5によって判定される(SA11)。先頭車両が許容範囲に収まっていなければ範囲信号がオフされて(SA13)、ステップSA7に戻る。先頭車両が許容範囲に収まっていれば範囲信号がオンされて(SA12)、許容範囲内に停止したことが車両判定部5に確認されると、扉2の開閉検知モードになる(SA14)。その後、列車が定置停止しているかを繰り返し判断して(SA15)、走行開始したと判断すると在線検知信号、範囲信号、停止信号の各信号がオフされる(SA16)。
図3(b)には先頭車両1が停止位置の許容範囲に停止した状態が示されている。
【0079】
[安全柵システムによる安全柵の扉開閉判定フロー]
先ず初期設定が行われる。安全柵制御装置7では、安全柵10の扉12に対する閉信号がオン、扉閉中信号、扉開信号及び扉開中信号がオフに初期設定される(SB1)。安全柵制御装置7は、車両判定部5からの状態信号に基づいて車両1が停止許容範囲で停止したと判定すると(SB2)、安全柵の扉12の自動開閉モードに入る(SB3)。
【0080】
車両判定部5によって閉止状態にある車両1の扉2に付された一対のマーカM2が検知され(SB4)、扉2の閉止状態を判定する一対のマーカM2の離隔距離が車両判定部5のメモリに記憶され(SB5)、一対のマーカM2の動きに基づいて車両の扉2の開放作動中(開放動作状態)であるか否かの判定が行われる(SB6)。
【0081】
扉2が開放作動中であれば、扉2の状態信号である開放状態を示す開信号はオフされ、開放作動中を示す開中信号がオンされる(SB7)。マーカM2が戸袋2Aに遮蔽されて車両判定部5が認識できない場合、扉2が全開した(開放状態)と判断されて(SB6)、開信号がオンされ、開中信号がオフされる(SB8)。
【0082】
次に、車両判定部5は、マーカM2の検知状態に基づいて扉2が閉止方向へ作動した(閉止動作状態)か否かの判定を行い(SB9)、マーカM2が検知されると開信号がオフされ、扉2の閉止方向への作動中を示す閉中信号がオンされる(SB10)。
【0083】
一対のマーカM2の離隔距離がメモリに記憶された値と等しくなると(SB9)、車両判定部5は、扉2が閉止された(閉止状態)と判断して閉中信号がオフされ閉信号がオンする(SB11)。
【0084】
安全柵制御装置7は、車両判定部5から車両1が許容範囲内で停止した旨の状態信号が入力されると、
図3(c)に示すように、安全柵10の扉12を開放し、車両判定部5から車両1の扉2が開状態から閉状態に移行した旨(閉止動作状態)の状態信号が入力されると安全柵10の扉12を閉止する。
【0085】
以上の通り、本発明による車両検出方法は、ホームに入線した車両を検知する車両検出方法であって、車両の進行方向に沿って光波をプラットホーム側の設置位置から走査し、光波及びその反射光に基づいて反射点までの距離、角度及び反射光強度を含む特性信号を出力する光波測距ステップと、特性信号のうち車両に付され車両の反射面とは反射特性が異なるマーカに対する特性信号を抽出する抽出ステップと、抽出した特性信号に基づいて車両の入線状態を判定する車両判定ステップと、を備えている。
【0086】
また、本発明によるホーム安全柵システムの特徴構成は、プラットホーム側に設置され、開閉操作可能なゲートを備えたホーム安全柵と、上述した車両検出装置と、を備え、車両検出装置からの出力信号に基づいてゲートが遠隔操作されるように構成されている。
【0087】
また、プラットホーム側に設置され、開閉操作可能なゲートを備えたホーム安全柵と、上述した車両検出装置と、を備え、車両検出装置により検出された状態の出力信号に基づいて、車両の扉の開閉状態とゲートの開閉が連動する連動制御部、つまり安全柵制御部を備えている。
【0088】
以下に別実施形態を説明する。
上述した実施形態では、車両1の停止判定を行なうためのマーカM1と、扉2の開閉状態を判定するためのマーカM2を個別に設けているが、扉2の開閉状態を判定するためのマーカM2を車両1の停止判定を行なうためのマーカM1と兼用してもよい。
【0089】
上述した実施形態では、扉2の開閉状態を判定するために扉2などに貼付した一対のマーカM2を二つの光波測距部RSを用いて検出する例を説明したが、一対のマーカM2に双方を常時検出できるほどに光波測距部RSの走査範囲が十分に広い場合には、一つの光波測距部RSを用いることができる。
【0090】
上述した実施形態では、光波測距部RSを安全柵10に設置した例を説明したが、
図7(a),(b)に示すように、プラットホームHの上方空間から車両を俯瞰するような位置に設置してもよく、単一の光波測距部RSで複数のマーカMを検出するように構成してもよい。
【0091】
また、
図7(c)に示すように、扉2が片開きの車両1の場合、車両1の停止判定を行なうためのマーカM1と、扉2の開閉判定を行なうためのマーカM2で車両1の側壁に貼付するマーカM2を兼用するように構成してもよい。
【0092】
上述した実施形態では、車両1の停止判定を行なうためのマーカM1を先頭車両に設けているが、2両目以降の車両に設けてもよい。だたし、停止時の連結部で車両の間隔が異なる場合があるため、先頭車両にマーカM1を設置することが好ましい。
【0093】
上述した実施形態では、車両1の扉2の開閉判定のためのマーカM2及び光波測距部RSを一組設けた例を説明したが、全ての扉に設けてもよく、各車両1の特定の扉2に設けてもよい。何れの場合でも、各光波測距部RSの出力が単一の車両判定部5に入力され、全ての扉2に対する開閉判定が一致することを条件に安全柵制御装置に扉状態信号を出力するように構成することが好ましい。
【0094】
上述した実施形態ではマーカとして再帰性反射シートを用いた例を説明したが、車両の塗装面や窓ガラスのような反射面とは反射特性が異なる部材であれば、再帰性反射シート以外の部材をマーカとして用いてもよい。また異なる幅を有するマーカを用いたり、マーカ内で反射率の異なるパターンを持たせ、その反射特性に基づいて車両種別を判別できるようにしてもよい。
【0095】
上述した実施形態は、何れも本発明の一実施例の説明であり、該記載により本発明の範囲が限定解釈されるものではなく、本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0096】
1:車両
2:扉
5:車両判定部
6:車両検出装置
7:安全柵制御装置(連動制御部)
9:表示部
10:安全柵
11:柵本体
12:扉
RS,RS1,RS2,RS3:光波測距部
M,M1,M2:マーカ
W:車両の窓