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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086307
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20220602BHJP
   A61B 8/00 20060101ALI20220602BHJP
   G01N 29/24 20060101ALI20220602BHJP
   H01L 41/047 20060101ALI20220602BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20220602BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
H04R17/00 330H
A61B8/00
G01N29/24
H01L41/047
H01L41/09
H01L41/113
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198244
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 和人
(72)【発明者】
【氏名】坪井 良樹
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】高木 優
【テーマコード(参考)】
2G047
4C601
5D019
【Fターム(参考)】
2G047CA01
2G047EA11
2G047EA14
2G047GA01
2G047GB21
2G047GB29
2G047GB32
4C601EE10
4C601GB01
4C601GB19
4C601GB24
4C601GB41
5D019AA23
5D019BB02
5D019BB09
5D019BB25
5D019BB28
5D019FF04
5D019FF05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡易な構成で電気的な接続をより確実に確保しやすい超音波トランスデューサを提供する。
【解決手段】超音波トランスデューサTは、圧電体14と、音響伝達部材20及びケース90と、導電層102と、を有する。圧電体14は、一方の主面12B及び他方の主面11Aに第2電極12及び第1電極11を有する。音響伝達部材の一方面には、圧電素子14の一方の主面が接合される。導電層102は、圧電素子14の一方の主面と音響伝達部材との間に配される。第2電極12は、圧電体14の周縁部に設けられる突起部12Dを備える。突起部12Dは、導電層102に接触する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面および他方の主面に電極を有する圧電素子と、
自身の一方面に前記一方の主面が接合される音響伝達部材と、
前記一方の主面と前記音響伝達部材との間に配される導電層と、
を有し、
前記一方の主面の前記電極は、前記圧電素子の周縁部に設けられる突起部を備え、
前記突起部が、前記導電層に接触する
超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記突起部は、前記圧電素子の外縁から内側に離れている
請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記突起部は、前記圧電素子の周縁部の全周に亘って連続している
請求項1又は請求項2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記導電層は、金属箔であり、帯状をなす
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記導電層は、環状に設けられ、
前記導電層と前記突起部との接触部が環状に配される
請求項3に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記導電層は、周方向の一部が欠けた切欠き部を有し、
前記導電層の内側の領域において前記音響伝達部材と前記圧電素子とが接着剤によって接着する
請求項5に記載の超音波トランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、超音波プローブ及びその製造方法の一例が開示されている。特許文献1に開示される超音波プローブは、圧電振動子1を有し、圧電振動子1の表面に設けられた電極6のうち少なくとも一方の電極6が、その電極6が存在する圧電振動子1の表面の端部に存在しないように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-268694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、圧電振動子に設けられた電極の表面と、背面負荷材に設けられた導電体の表面とを接着し、オーミック接合によって電気的な接続を確保する技術が開示されている。しかし、特許文献1の技術は、平坦面同士を接触させる構成であるため、電気的な接続を確実に確保できない懸念がある。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、簡易な構成で電気的な接続をより確実に確保しやすい超音波トランスデューサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つである超音波トランスデューサは、
一方の主面および他方の主面に電極を有する圧電素子と、
自身の一方面に前記一方の主面が接合される音響伝達部材と、
前記一方の主面と前記音響伝達部材との間に配される導電層と、
を有し、
前記一方の主面の前記電極は、前記圧電素子の周縁部に設けられる突起部を備え、
前記突起部が、前記導電層に接触する。
【0007】
上記の超音波トランスデューサは、突起部において導電層との接触圧が高くなるため、一方の主面の電極と導電層との電気的接続が良好になる。
【0008】
上記の超音波トランスデューサにおいて、前記突起部は、前記圧電素子の外縁から内側に離れていてもよい。
【0009】
上記の超音波トランスデューサは、突起部と導電層との接触に起因する応力が圧電素子の外縁に集中することを抑えることができるため、圧電素子の外縁付近に破損が生じることを防ぎやすい。
【0010】
上記の超音波トランスデューサにおいて、前記突起部は、前記圧電素子の周縁部の全周に亘って連続していてもよい。
【0011】
上記の超音波トランスデューサは、圧電素子の周縁部の周方向いずれの位置であっても突起部の接触が可能であるため、導電層が周方向のどの位置に配置されても電気的な接続が図られやすい。
【0012】
上記の超音波トランスデューサにおいて、前記導電層は、金属箔であってもよく、帯状をなしていてもよい。
【0013】
上記の超音波トランスデューサは、帯状の金属箔によって圧電素子を支持することができるため、圧電素子の傾きを抑えやすい。
【0014】
上記の超音波トランスデューサにおいて、前記導電層は、環状に設けられていてもよい。前記導電層と前記突起部との接触部が環状に配されていてもよい。
【0015】
上記の超音波トランスデューサは、突起部と導電層との電気的接続をより一層良好にすることができる。しかも、この超音波トランスデューサは、中央側に導電層又は突起部が存在しない領域を確保することができるため、音響特性の低下を抑えることができる。
【0016】
上記の超音波トランスデューサにおいて、前記導電層は、周方向の一部が欠けた切欠き部を有していてもよい。前記導電層の内側の領域において前記音響伝達部材と前記圧電素子とが接着剤によって接着されていてもよい。
【0017】
上記の超音波トランスデューサは、導電層の内側の領域にて音響伝達部材と圧電素子を接着する場合に、その内側の領域で接着剤の余剰が生じた場合には、切欠き部を介して外側領域に流出させることができる。よって、この超音波トランスデューサは、接着剤が余剰のまま内側に残存することを抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一つである超音波トランスデューサは、簡易な構成で電気的な接続をより確実に確保しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、第1実施形態の超音波トランスデューサを例示する斜視図である。
図2図2は、図1の超音波トランスデューサの一部についての分解斜視図である。
図3図3は、図1の超音波トランスデューサの一部についての断面図である。
図4図4は、図3の断面図の一部を拡大した拡大図である。
図5図5は、第1実施形態の超音波トランスデューサにおいて、包囲部材及び導電性シートに対して圧電素子を分解して示す斜視図である。
図6図6は、第2実施形態の超音波トランスデューサにおいて、包囲部材及び導電性シートに対して圧電素子を分解して示す斜視図である。
図7図7は、第2実施形態の超音波トランスデューサを、図4と同等の位置(中心軸線の位置)で切断した切断面である。
図8図8は、第3実施形態の超音波トランスデューサにおいて、包囲部材及び導電性シートに対して圧電素子を分解して示す斜視図である。
図9図9は、他の実施形態の超音波トランスデューサの例1において、包囲部材及び導電性シートに対して圧電素子を分解して示す斜視図である。
図10図10は、他の実施形態の超音波トランスデューサの例2において、包囲部材及び導電性シートに対して圧電素子を分解して示す斜視図である。
図11図11は、他の実施形態の超音波トランスデューサの例3において、包囲部材及び導電性シートに対して圧電素子を分解して示す斜視図である。
図12図12は、他の実施形態の超音波トランスデューサの例4において、包囲部材及び導電性シートに対して圧電素子を分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
1.超音波トランスデューサTの基本構成
以下の説明は、第1実施形態の超音波トランスデューサTに関する。
図1で示される第1実施形態の超音波トランスデューサTは、医療用または産業用の超音波装置に用いられる。超音波トランスデューサTは、例えば、使い捨て品(ディスポーザブル品)である。超音波トランスデューサTは、超音波を送受信する。
【0021】
図2のように、超音波トランスデューサTは、包囲部材80、圧電素子10、導電性シート102、音響伝達層20、及びケース90を備える。超音波トランスデューサTは、図示が省略された制御装置に電気的に接続され、この制御装置から電気信号を受信し得る。また、超音波トランスデューサTは、上記制御装置に対して電気信号を送信し得る。図2の構成では、音響伝達層20及びケース90が音響伝達部の一例に相当する。
【0022】
以下の説明では、図3のように、圧電体14の厚さ方向が上下方向である。圧電体14の厚さ方向一方側が下方側であり、圧電体14の厚さ方向他方側が上方側である。図3には、超音波トランスデューサTを中心軸線Xに沿って切断した断面が概略的に示される。
【0023】
圧電素子10は、超音波を発生させる素子である。圧電素子10は、圧電体14と第1電極11と第2電極12とを有する。圧電素子10は、所定の厚さの板状をなす。圧電素子10は、上面11Aの外縁及び下面12Bの外縁がいずれも円形であり且つ外周面が円筒面である円板状をなす。圧電素子10は、中心軸線Xを中心とする円柱状である。
【0024】
圧電体14は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等からなる。圧電体14は、所定の厚さの円板状をなす。第1板面(上面)14Aは、圧電体14における厚さ方向一方側の面である。第2板面(下面)14Bは、圧電体14のおける厚さ方向他方側の面である。
【0025】
第1電極11は、圧電体14の第1板面14Aに配置される。第2電極12は、圧電体14の第2板面14Bに配置される。第1電極11及び第2電極12は、金又は銀、銅、錫等の蒸着、メッキ、スパッタリング、ペーストの印刷、焼付け等によって形成された導電性を有する電極層である。第1電極11は、圧電素子10の上面側の電極である。
【0026】
第2電極12は、圧電素子10の下面側の電極である。第2電極12の下面12Bは、圧電素子10の一方の主面(下面)である。圧電素子10の下面(第2電極12の下面12B)は、接着剤120(図4参照)を介して音響伝達層20に固定されている。第1電極11の上面11Aは、圧電素子10の他方の主面(上面)である。上面11Aは、中心軸線Xに対して直交する面である。第1電極11は、圧電体14の第1板面14Aの全体を覆う構成で配置される。第2電極12は、圧電体14の第2板面14Bの全体を覆う構成で配置される。
【0027】
第1電極11は、図示されない導体によって基板110に電気的に接続される。第2電極12は、後述される導電性シート102、導体部88に電気的に接続される。導体部88は、図示されない導体によって上記基板110に電気的に接続される。圧電素子10は、第1電極11及び第2電極12を介して図示が省略された制御装置に対して電気信号を送信する動作を行い得る。また、圧電素子10は、上記制御装置からの電気信号を受信する動作を行い得る。圧電素子10は、第1電極11と第2電極12との間に交流電圧が印加されることに応じて超音波を発生させる。
【0028】
音響伝達層20は、圧電素子10で発生する超音波を伝達する部材である。音響伝達層20は、圧電素子10の下方側に配置されている。音響伝達層20は、円板状である。音響伝達層20の上面は、接着剤120を介して圧電素子10の下面に接着されている。音響伝達層20は、圧電素子10の音響インピーダンスと、音響レンズである底壁91の音響インピーダンスとの中間の大きさの音響インピーダンスを有する。
【0029】
音響伝達層20の一方側の板面である上面(一方面)は、圧電素子10の下面12B(一方の主面)を支持する支持面であり、この下面12Bに接合される面でもあり、包囲部材80の下端部を支持する支持面でもある。音響伝達層20の上面は、外縁が円形状の平坦面である。音響伝達層20の上面の面積は、圧電素子10の下面の面積よりも大きい。音響伝達層20の上面の外径は、圧電素子10の下面の外径よりも大きい。音響伝達層20は、中心軸線Xを中心とする円柱状である。音響伝達層20及び圧電素子10は、中心軸線Xを中心とする同軸の位置関係で積層される。包囲部材80の下端部は、音響伝達層20における圧電素子10の周囲の部分に対して接着剤120によって固定されている。
【0030】
ケース90は、底壁91と周壁92とを有する。底壁91及び周壁92は、同一の材料によって一体に形成されている。底壁91は、略円板状であり、上側から見ると円形状をなしている。底壁91は、ケース90の下面の全体を塞いでいる。ケース90の上端側(底壁91とは反対側)は開口している。ケース90の内部には、圧電素子10、音響伝達層20、包囲部材80などが収容される。
【0031】
ケース90の底壁91は、超音波を集束する音響レンズである。ケース90の底壁91と音響伝達層20とは、接着剤120によって接着されている。ケース90の底壁91及び音響伝達層20は、中心軸線Xを中心とする同軸の位置関係で積層される。ケース90の底壁91と圧電素子10との間に音響伝達層20が介在することによって、超音波が底壁91へ効率良く伝播される。ケース90の周壁92は、底壁91の外縁部の全周に亘って連結され、底壁91から上方に向かって筒状に配されている。周壁92の内周面92Aは、円筒状の内面である。周壁92の上端部には、支持部50(図1)が固定されている。
【0032】
図1に示される支持部50は、蓋部として機能し、ケース90の上端部に形成された開口を塞ぐように配置される。支持部50は、基板110を保持する基板保持部としても機能する。支持部50の詳細は後述される。
【0033】
図4のように、包囲部材80は、圧電素子10の外周側を包囲する部材である。包囲部材80は、圧電素子10の外周面10Aと周壁92の内周面92Aとの間に配置される。包囲部材80は、音響伝達層20の上面に支持された構成で固定される。包囲部材80は、全周にわたり連続した円環状をなしている。図5のように、包囲部材80は、絶縁体部85及び導体部88を有する。絶縁体部85と導体部88はインサート成形によって一体化されている。
【0034】
絶縁体部85は、合成樹脂材料などの絶縁体からなる。絶縁体部85は、包囲部材80の内周側に配置される内側絶縁体部86と、導体部88よりも外側に張り出す張出部87とを備える。内側絶縁体部86は、包囲部材80の内周側の部分を形成する。内側絶縁体部86は、包囲部材80の全周に連続している。張出部87は、包囲部材80の最も外周側の外周縁部に設けられている。張出部87は、包囲部材80の全周に連続している。張出部87は、ケース90を形成する材料よりも柔らかい材料で形成されている。張出部87は、上側から見ると、円環状である。張出部87は、内側絶縁体部86の下端部からフランジ状に張り出しており、ケース90の周壁92側に突出している。
【0035】
導体部88は、金属等の導体からなる。導体部88は、導電性シート102を介して圧電素子10の第2電極12に電気的に接続される。導体部88は、全周に連続した環状をなしている。導体部88は、圧電素子10の外周側を包囲する。導体部88は、絶縁体部85によって、圧電素子10から離間した位置に保持される。導体部88は、第1導電接続部89Aと、第2導電接続部89Bと、埋設部89Cとを備える。第1導電接続部89Aは、絶縁体部85の外周面を覆っている。第1導電接続部89Aは、張出部87の上面87Aよりも上側に位置している。第1導電接続部89Aの外周面は、張出部87の上側の位置で外部に露出している。埋設部89Cは、絶縁体部85の内部に埋設される。埋設部89Cは、第1導電接続部89Aの下端に連なっている。埋設部89Cよりも内周側に絶縁体部85が設けられ、埋設部89Cよりも外周側に張出部87が設けられている。第2導電接続部89Bは、包囲部材80の下面に設けられている。第2導電接続部89Bは、埋設部89Cの下端から外周側に屈曲してなる。第2導電接続部89Bは、張出部87の下側に位置し、外部に露出している。第2導電接続部89Bの上面は、張出部87の下面と同じ高さに位置している。第2導電接続部89Bには、導電性シート102が接触しつつ電気的に接続される。
【0036】
2.電気的接続構成の詳細
図4のように、圧電素子10の一方の主面の一例に相当する下面12Bと、圧電素子10の他方の主面の一例に相当する上面11Aは、圧電体14を挟んで上下に対向する。第2電極12は、一方の主面の電極の一例に相当する。
【0037】
図4図5のように、第2電極12には、突起部12Dが設けられる。突起部12Dは、第2電極12において、圧電素子10の厚さ方向一方側に突出する電極である。突起部12Dは、圧電素子10の周縁部に環状に設けられている。より具体的には、突起部12Dは、圧電素子10の周縁部の全周に亘って円環状に連続している。第2電極12は、突起部12Dよりも中央側(中心軸線X側)において、表面(下面)が平坦な中央側電極部12Cを有する。中央側電極部12Cは、突起部12Dの厚さよりも小さい所定の厚さで形成されている。中央側電極部12Cの外縁は円形状をなしている。突起部12Dは、中央側電極部12Cの表面(下面)よりも厚さ方向一方側(下方側)に突出する構成で設けられている。突起部12Dと中央側電極部12Cとの境界部は、中央側電極部12Cの表面(下面)よりも突起部12Dの表面(下面)のほうが下方側に位置する段差構造をなす。突起部12Dは、中央側電極部12Cを全周に亘って囲み、中央側電極部12Cの周りにおいて環状に凸となる構成で形成されている。突起部12Dの端面(下端面)は、導電性シート102に接触する。
【0038】
図4図5に示される導電性シート102は、導電層の一例に相当する。導電性シート102は、金属材料などの導体がシート状に配置されてなる。導電性シート102は、例えば金属箔である。導電性シート102は、環状に設けられている。導電性シート102は、音響伝達層20の周縁部に沿って配置される。導電性シート102は、接着剤120によって音響伝達層20に接着される。そして、導電性シート102は、圧電素子10の周縁部に沿って配置される。導電性シート102は、突起部12Dに接触する。導電性シート102と突起部12Dとの接触部は、圧電素子10の周縁部に沿って環状に配される。導電性シート102は、周方向の一部が欠けた切欠き部102Aを有する。導電性シート102の内側の領域において音響伝達層20と圧電素子10とが接着剤120によって接着する。具体的には、導電性シート102の内周縁よりも内側の領域において、中央側電極部12Cの表面(下面)と音響伝達層20の表面(上面)とが接着剤120によって接着されている。導電性シート102と第2導電接続部89Bとは、例えば抵抗溶接によって接合されていてもよく、その他の方法で接合又は接触されていてもよい。
【0039】
次の説明は、本実施形態の超音波トランスデューサTの効果の一例に関する。
超音波トランスデューサTは、突起部12Dにおいて導電性シート102との接触圧が高くなるため、第2電極12(一方の主面の電極)と導電性シート102との電気的接続が良好になる。
【0040】
超音波トランスデューサTにおいて、突起部12Dは、圧電素子10の周縁部の全周に亘って連続する。この超音波トランスデューサTは、圧電素子10の周縁部の周方向いずれの位置であっても突起部12Dの接触が可能であるため、導電性シート102が周方向のどの位置に配置されても電気的な接続が図られやすい。
【0041】
超音波トランスデューサTにおいて、導電性シート102は、環状に設けられている。そして、導電性シート102と突起部12Dとの接触部が環状に配されている。この超音波トランスデューサTは、突起部12Dと導電性シート102との電気的接続をより一層良好にすることができる。しかも、この超音波トランスデューサTは、中央側に導電性シート102及び突起部12Dが存在しない領域を確保することができるため、音響特性の低下を抑えることができる。
【0042】
超音波トランスデューサTにおいて、導電性シート102は、周方向の一部が欠けた切欠き部を有している。そして、導電性シート102の内側の領域において音響伝達部材と圧電素子10とが接着剤120によって接着されている。この超音波トランスデューサTは、導電性シート102の内側の領域にて音響伝達部材と圧電素子10を接着する場合に、その内側の領域で接着剤120の余剰が生じた場合には、切欠き部102Aを介して外側領域に流出させることができる。よって、この超音波トランスデューサTは、接着剤120が余剰のまま内側に残存することを抑えることができる。
【0043】
<第2実施形態>
図6には、第2実施形態の超音波トランスデューサTについて、一部が省略された分解斜視図が示される。第2実施形態の超音波トランスデューサTは、第2電極12の代わりに第2電極212が設けられる点、及び第2電極12と導電性シート102との接続構造の代わりに第2電極212と導電性シート102との接続構造が採用されている点以外は、第1実施形態の超音波トランスデューサTと同様の構成をなす。具体的には、第2実施形態の超音波トランスデューサTは、第2電極212の形状及び突起部212D付近の接着剤120の配置以外は、第1実施形態の超音波トランスデューサTと同一の構成をなす。圧電素子210は、突起部12Dに代えて突起部212Dが設けられている点、第2電極212の外側に外側電極部212Eが設けられている点以外は、第1実施形態の圧電素子10と同一の構成をなす。なお、図面及び以下の説明では、超音波トランスデューサTを構成する各部分において、第1実施形態の超音波トランスデューサTと同一の構成をなす部分については、第1実施形態の超音波トランスデューサTと同一の符号が付され、詳細な説明は省略される。
【0044】
図6図7に示されるように、第2実施形態の超音波トランスデューサTでは、第2電極212が圧電素子210の一方の主面の電極の一例に相当する。第2電極212は、金又は銀、銅、錫等の蒸着、メッキ、スパッタリング、ペーストの印刷、焼付け等によって形成された導電性を有する電極層である。第2電極212は、中央側電極部12Cと、突起部212Dと、外側電極部212Eとを有する。
【0045】
図6図7のように、中央側電極部12Cは、第1実施形態における中央側電極部12Cと同様の構成をなす。中央側電極部12Cは、突起部212Dよりも中央側(中心軸線X側)に配置され、表面(下面)が平坦面とされている。中央側電極部12Cは、突起部212Dの最大厚さよりも小さい所定の厚さで形成されている。中央側電極部12Cの外縁は円形状をなしている。突起部212Dは、中央側電極部12Cの表面(下面)よりも厚さ方向一方側(下方側)に突出する構成で設けられている。
【0046】
図6図7のように、突起部212Dは、第2電極212において、圧電素子210の厚さ方向一方側に突出する電極である。突起部212Dの外縁は、周方向全周にわたって圧電素子210の外縁から内側に離れている。突起部212Dは、圧電素子210の周縁部に環状に設けられている。より具体的には、突起部212Dは、圧電素子210の周縁部の全周に亘って円環状に連続している。突起部212Dは、中央側電極部12Cを全周に亘って囲み、中央側電極部12Cの周りにおいて環状に凸となる構成で形成されている。図7のように、中心軸線Xを通る切断面で切断したときの突起部212Dの形状は、中央側電極部12C側から径方向外側となるにつれて下面が次第に下側に位置するように突出し、径方向所定位置において最も下側に位置する頂部が配される。更に、この頂部から径方向外側となるにつれて下面が次第に上側に位置し、径方向の端部で外側電極部212Eに連得する。突起部212Dの突出側の端部(下端部である上記の頂部)は、導電性シート102に接触する。
【0047】
図6図7のように、突起部212Dの外側には、中央側電極部12Cと同程度の厚さの外側電極部212Eが設けられている。外側電極部212Eの厚さは、突起部212Dの最大厚さよりも小さい所定の厚さである。外側電極部212Eは、突起部212Dの周方向全周に亘って突起部212Dを囲むように環状に配置される。なお、外側電極部212Eが省略され、突起部212Dの外側において圧電体14が環状に露出していてもよい。
【0048】
上記の超音波トランスデューサTは、突起部212Dが圧電素子210の外縁(具体的には、圧電体14の外縁)から内側に離れている。この超音波トランスデューサTは、突起部212Dと導電性シート102との接触に起因する応力が圧電素子210の外縁に集中することを抑えることができるため、圧電素子210の外縁付近に破損が生じることを防ぎやすい。
【0049】
<第3実施形態>
図8には、第3実施形態の超音波トランスデューサTについて、一部が省略された分解斜視図が示される。第3実施形態の超音波トランスデューサTは、導電性シート102の代わりに導電性シート302が設けられる点、及び第2電極12と導電性シート102との接続構造の代わりに第2電極12と導電性シート302との接続構造が採用されている点以外は、第1実施形態の超音波トランスデューサTと同様の構成をなす。具体的には、第3実施形態の超音波トランスデューサTは、導電性シート302の形状及び接着剤120の配置以外は、第1実施形態の超音波トランスデューサTと同一の同様をなす。なお、図面及び以下の説明では、超音波トランスデューサTを構成する各部分において、第1実施形態の超音波トランスデューサTと同一の構成をなす部分については、第1実施形態の超音波トランスデューサTと同一の符号が付され、詳細な説明は省略される。例えば、第3実施形態の超音波トランスデューサTの圧電素子10は、第1実施形態の超音波トランスデューサTの圧電素子10と同一の構成をなす。また、図8に示される包囲部材80は、第1実施形態の超音波トランスデューサTの包囲部材80と同一の構成をなす。
【0050】
図8のように、第3実施形態の超音波トランスデューサTでは、導電性シート302は、金属箔であり、帯状をなしている。導電性シート302は、圧電体14の第2板面(図4の第2板面14Bと同様の板面)の方向に沿って所定の向きに直線状且つ長手状に延びる。導電性シート302は、接着剤120によって音響伝達層20に接着される。導電性シート302の長手方向一方側において導電性シート302の端部寄りの位置に突起部12Dの一部が接触するように導電性シート302と圧電素子10とが重ねられる。また、導電性シート302の長手方向他方側において導電性シート302の端部寄りの位置に突起部12Dの一部が接触するように導電性シート302と圧電素子10とが重ねられる。このように、導電性シート302の長手方向の両端部は、第2導電接続部89Bに接触しつつ電気的に接続される。導電性シート302は、帯状であることによって、第2電極12との接圧が増す。導電性シート302の幅は、例えば、突起部12Dの径方向の幅よりも大きい。導電性シート302と第2導電接続部89Bとは、例えば抵抗溶接によって接合されていてもよく、その他の方法で接合又は接触されていてもよい。
【0051】
上記の超音波トランスデューサTは、帯状の金属箔である導電性シート302によって圧電素子10を支持することができるため、圧電素子10の傾きを抑えやすい。
【0052】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0053】
図9図12には、他の実施形態の超音波トランスデューサTの例1~4について、一部が省略された分解斜視図が示される。図9図12に示される例1~例4の超音波トランスデューサTは、導電性シート102の代わりに導電性シート402,502,602,702のいずれかが設けられる点、及び第2電極12と導電性シート102との接続構造の代わりに第2電極12と導電性シート402,502,602,702のいずれかとの接続構造が採用されている点以外は、第1実施形態の超音波トランスデューサTと同様の構成をなす。具体的には、図9図12の超音波トランスデューサTは、導電性シート402,502,602,702の形状及び接着剤120の配置以外は、第1実施形態の超音波トランスデューサTと同一の同様をなす。なお、図面及び以下の説明では、超音波トランスデューサTを構成する各部分において、第1実施形態の超音波トランスデューサTと同一の構成をなす部分については、第1実施形態の超音波トランスデューサTと同一の符号が付され、詳細な説明は省略される。例えば、図9図12に示される圧電素子10は、第1実施形態の超音波トランスデューサTの圧電素子10と同一の構成をなす。図9図12に示される包囲部材80は、第1実施形態の超音波トランスデューサTの包囲部材80と同一の構成をなす。図9に示される例1の超音波トランスデューサTは、導電性シート402が周方向全周に亘って環状に連続している。図9の超音波トランスデューサは、第1実施形態の超音波トランスデューサTにおいて切欠き部102Aの位置にも導電性シート402が配置されている点以外は第1実施形態の超音波トランスデューサTと同一である。図10図11の超音波トランスデューサTでは、導電性シートが複数に分割され、環状に配置されている。図10の超音波トランスデューサTでは、4分割された導電性シート502が断続的に環状に配置されている。図11の超音波トランスデューサTは、2分割された導電性シート602が環状に配置されている。図10図11の超音波トランスデューサでは、分割された導電性シート502,602の端部間の部位が切欠き部の一例に相当する。図12のトランスデューサでは、導電性シート702は、帯状に構成される部位を複数有しており、帯状に構成される各部位において導電性シート702と突起部12Dとが接触する構成をなす。
【0054】
上記の実施形態では、第1電極11は、圧電体14の第1板面14Aの全体を覆う構成で配置されるが、第1電極11は、第1板面14Aの一部を覆う構成で配置されてもよい。上記の実施形態では、第2電極12,212は、圧電体14の第2板面14Bの全体を覆う構成で配置されるが、第2電極12,212は、第2板面14Bの一部を覆う構成で配置されてもよい。
【0055】
上記の実施形態では、ケース90の底壁91は音響レンズである。これに限らず、ケースの底壁は、音響レンズでなくてもよい。
【0056】
上記の実施形態では、音響伝達層20及びケース90の両方が音響伝達部材の一例に相当したが、音響伝達層及びケースの少なくとも一方が音響伝達部材に相当すればよい。例えば、ケースが音響伝達部材として機能しない構成又はケースが存在しない構成で、上記実施形態と同様の音響伝達層が音響伝達部材として機能してもよい。或いは、音響伝達層が存在しない構成で、上記実施形態と同様のケースが音響伝達部材として機能してもよい。
【0057】
上記の実施形態では、導電層として導電性シート102,302,402,502,602が例示され、導電層が接着剤によって音響伝達層20に接合された構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、例えば音響伝達層20の上面にスパッタリングやめっき処理によって導電層(導電膜)が構成され、この導電層によって第2電極と外部の導電体とが電気的に接続されていてもよい。
【0058】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
T…超音波トランスデューサ
10,210…圧電素子
11…第1電極(電極)
11A…上面(他方の主面)
12,212…第2電極(電極)
12B,212B…下面(一方の主面)
12D,212D…突起部
20…音響伝達層(音響伝達部材)
90…ケース(音響伝達部材)
102,302,402,502,602,702…導電性シート(導電層)
102A…切欠き部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12