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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086321
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】電子モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/28 20060101AFI20220602BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20220602BHJP
   H01L 23/50 20060101ALI20220602BHJP
   H05K 5/00 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
H01L23/28 J
H01L23/28 A
H01L25/04 C
H01L23/50 N
H05K5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198264
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】池田 康亮
(72)【発明者】
【氏名】三原 沙織
【テーマコード(参考)】
4E360
4M109
5F067
【Fターム(参考)】
4E360GA60
4E360GB99
4E360GC08
4M109AA01
4M109BA02
4M109CA21
4M109DA09
4M109DA10
5F067AA13
5F067AB10
5F067BC07
5F067BC15
(57)【要約】
【課題】設計変更を行った場合でも、設計変更のコストの発生を抑制できる電子モジュールを提供する。
【解決手段】電子モジュールは、封止部100と、前記封止部100内に封止された電子素子200と、前記電子素子200に電気的に接続され、前記封止部100の所定の面に対向する対向部15,25を有する端子部30と、を有している。前記対向部15,25には挿入部60が挿入される挿入孔50が設けられている。前記封止部100には、前記挿入孔50に挿入された挿入部60の先端が収容される溝部160,170が設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止部と、
前記封止部内に封止された電子素子と、
前記電子素子に電気的に接続され、前記封止部の所定の面に対向する対向部を有する端子部と、
を備え、
前記対向部には挿入部が挿入される挿入孔が設けられ、
前記封止部には、前記挿入孔に挿入された挿入部の先端が収容される溝部が設けられる電子モジュール。
【請求項2】
前記溝部は前記封止部の一方側の面で直線状に延びる、請求項1に記載の電子モジュール。
【請求項3】
前記溝部は前記一方側の面の第一端部から、前記第一端部と反対側の第二端部に向かって延びる、請求項2に記載の電子モジュール。
【請求項4】
前記溝部は、前記第一端部から第一距離以内の位置又は前記第一端部から、前記第二端部から第二距離以内の位置又は前記第二端部まで延びる、請求項3に記載の電子モジュール。
【請求項5】
前記端子部は、前記封止部の第三端部から外部に突出する第一端子部と、前記封止部の第四端部から外部に突出する第二端子部と、を有し、
前記溝部は、前記第一端子部の挿入孔に挿入された挿入部の先端が収容される第一溝部と、前記第二端子部の挿入孔に挿入された挿入部の先端が収容される第二溝部と、を有する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項6】
前記端子部の先端部は、本体部と、本体部に設けられた凸部とを有し、
前記凸部に前記挿入孔が設けられている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項7】
封止部はモールド樹脂からなる、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項8】
前記端子部は、前記封止部の側部から突出した基端部と、前記基端部から屈曲し、他方側から一方側に向かって延びる中間部と、前記中間部から屈曲し、前記封止部に一方側の面に対向する位置に位置付けられる先端部とを有し、
前記先端部が前記対向部を有する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項9】
前記封止部の一方側の面及び他方側の面のうちの一方が他方よりも小さくなり、
前記封止部の側面が厚み方向に対して10度以上の角度で傾斜する、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止部及び封止部内に封止された電子素子を有する電子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から樹脂にネジ止め部を設ける態様が知られている。一例として、特許文献1では、端子板の長手方向の一端部と半導体チップとを電気接続した上で、一端部及び半導体チップをモールド樹脂により封止し、端子板の他端部をモールド樹脂の外面から突出させてなる半導体装置であって、モールド樹脂の平坦な第一外面には、端子板の他端部の突出方向の先端をネジにより固定するためのネジ止め部が形成され、端子板の他端部は、第一外面に隣り合うと共に当該第一外面と異なる向きに面する前記モールド樹脂の第二外面から略垂直に突出している半導体装置が開示されている。
【0003】
このような半導体装置において、客先からの要望で端子板の位置を例えば数ミリずらして欲しいとの要望が入ることがある。封止部に孔部を設け、当該孔部にナットを設ける場合には、このようにわずかに位置をずらすのにも設計変更が必要になる。特にトランスファーモールドを採用している場合(モールド樹脂を採用している場合)には、このように端子板の位置をずらすには、金型を新たに生成する必要があるが、金型を作り直すことには非常に高額な費用が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-69666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような点に鑑み、本発明は、設計変更を行った場合でも、設計変更のコストの発生を抑制できる電子モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電子モジュールは、
封止部と、
前記封止部内に封止された電子素子と、
前記電子素子に電気的に接続され、前記封止部の所定の面に対向する対向部を有する端子部と、
を備え、
前記対向部には挿入部が挿入される挿入孔が設けられ、
前記封止部には、前記挿入孔に挿入された挿入部の先端が収容される溝部が設けられてもよい。
【0007】
本発明による電子モジュールにおいて、
前記溝部は前記封止部の一方側の面で直線状に延びてもよい。
【0008】
本発明による電子モジュールにおいて、
前記溝部は前記一方側の面の第一端部から、前記第一端部と反対側の第二端部に向かって延びてもよい。
【0009】
本発明による電子モジュールにおいて、
前記溝部は、前記第一端部から第一距離以内の位置又は前記第一端部から、前記第二端部から第二距離以内の位置又は前記第二端部まで延びてもよい。
【0010】
本発明による電子モジュールにおいて、
前記端子部は、前記封止部の第三端部から外部に突出する第一端子部と、前記封止部の第四端部から外部に突出する第二端子部と、を有し、
前記溝部は、前記第一端子部の挿入孔に挿入された挿入部の先端が収容される第一溝部と、前記第二端子部の挿入孔に挿入された挿入部の先端が収容される第二溝部と、を有してもよい。
【0011】
本発明による電子モジュールにおいて、
前記端子部の先端部は、本体部と、本体部に設けられた凸部とを有し、
前記凸部に前記挿入孔が設けられてもよい。
【0012】
本発明による電子モジュールにおいて、
封止部はモールド樹脂からなってもよい。
【0013】
本発明による電子モジュールにおいて、
前記端子部は、前記封止部の側部から突出した基端部と、前記基端部から屈曲し、他方側から一方側に向かって延びる中間部と、前記中間部から屈曲し、前記封止部に一方側の面に対向する位置に位置付けられる先端部とを有し、
前記先端部が前記対向部を有してもよい。
【0014】
本発明による電子モジュールにおいて、
前記封止部の一方側の面及び他方側の面のうちの一方が他方よりも小さくなり、
前記封止部の側面が厚み方向に対して10度以上の角度で傾斜してもよい。
【発明の効果】
【0015】
封止部の所定の面に挿入孔に挿入された挿入部の先端が収容される溝部が設けられるので、諸事情により設計変更を行った場合でも、設計変更のコストの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は本発明の第1の実施の形態による電子モジュールの斜視図である。
図2図2は本発明の第1の実施の形態による電子モジュールの平面図である。
図3図3は本発明の第1の実施の形態による電子モジュールの側方図である。
図4図4は本発明の第1の実施の形態で用いられる対向部のネジ孔を形成する過程を示した図である。
図5図5は本発明の第1の実施の形態で用いられる対向部を第一方向に沿って見た側方断面図である。
図6図6は本発明の第1の実施の形態による電子モジュールの封止部内の構成を示した平面図である。
図7図7は本発明の第1の実施の形態による電子モジュールの封止部内の構成を示した側方図である。
図8図8は本発明の第1の実施の形態で用いられる対向部を第二方向に沿って見た側方図である。
図9図9は本発明の第1の実施の形態の別の例による電子モジュールの平面図である。
図10図10は本発明の第1の実施の形態のさらに別の例による電子モジュールの封止部内の構成を示した平面図である。
図11図11は封止部の横断面が傾斜している態様を示した側方図である。
図12図12は本発明の第2の実施の形態による電子モジュールの平面図である。
図13図13は本発明の第2の実施の形態の別の例による電子モジュールの平面図である。
図14図14は本発明の第2の実施の形態のさらに別の例による電子モジュールの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の実施の形態
《構成》
本実施の形態において、封止部100の面内方向とは図2における第一方向及び第二方向を含む面内を意味する。当該面内に直交する上下方向は図3における第三方向となる。本実施の形態では、図3における上側を一方側といい、図3における下側を他方側という。
【0018】
図1乃至図3に示すように、本実施の形態による電子モジュールは、封止部100と、封止部100内に封止された電子素子200(図6及び図7参照)と、電子素子200に電気的に接続され、封止部100の所定の面に対向する対向部15,25を有する端子部30と、を有してもよい。本実施の形態における「所定の面」は一方側の面(上面)となっているが、これに限られることはない。一方側の面に対向する対向部15,25にはネジ等の挿入部60が挿入されるネジ孔等の挿入孔50が設けられ(図4参照)、封止部100には、挿入孔50に挿入された挿入部60の先端が内部に位置づけられて収容される溝部160,170が設けられるようにしてもよい(図5及び図8参照)。なお、挿入孔50には必ずしもネジが切られている必要はない。電子素子200は半導体素子であってよく、一例としてはIGBTやMOSFET等のスイッチング素子であってもよい。溝部160,170の深さは例えば2~5mm程度であり、幅方向(面内方向に図2の上下方向)の大きさは例えば2~5mm程度である。なお、ネジ等の挿入部60が用いられるのは例えば300Aといった高電流の場合が多い。その場合には対向部15,25の厚みは一例として0.8mm程度の厚みとなる。
【0019】
溝部160,170は一方側の面においてレール状に設けられてもよく、溝部160,170は封止部100の一方側の面(図3における上面)で直線状に延びてもよい。但し、これに限られることはなく、溝部160,170は一方側の面において蛇行するようにして設けられてもよいし、円形状や正方形の形状で設けられてもよい。溝部160,170が直線状に延びる場合には、図2で示すような平面視において矩形状となってもよいし、長円形状となってもよい。
【0020】
溝部160,170は一方側の面の第一端部110から、第一端部110と反対側の第二端部120に向かって延びてもよい。この場合、平面視において、第一端部110及び/又は第二端部120における側面に直交する方向(図2の第一方向)に沿って、溝部160,170が延在してもよい。図2に示す態様では封止部100の面内の第一方向に沿って溝部160,170が延在しているが、これに限られることはなく、封止部100の面内の第二方向に沿って溝部160,170が延在してもよいし、封止部100の面内の第一方向及び第二方向に対して傾斜する方向で溝部160,170が延在してもよい。
【0021】
図9に示すように、溝部160,170は、第一端部110から第一距離D1以内の位置から、第二端部120から第二距離D2以内の位置まで延びてもよい。この第一距離D1及び第二距離D2は5mm~15mmの範囲となってもよく、より典型的には8mm~12mmの範囲となっている。なお、周りの部品や流れる電流の大きさとの関係もあることから一義的に決まるものではないが、絶縁距離を保つ場合には第一距離D1及び第二距離D2の下限値として5mmを用いてもよい。第一距離D1及び第二距離D2の値は同じ値であってもよいが、異なる値となってもよい。
【0022】
本実施の形態では封止部100が平面視において四角形状となっており、第一端部110と第二端部120とが対向する辺となり、第一端部110と第二端部120との間に第三端部130及び第四端部140が設けられる態様となっている。これら第三端部130と第四端部140とは平面視において対向する辺となっている。
【0023】
端子部30は、封止部100の第三端部130から外部に突出する第一端子部10と、封止部100の第四端部140から外部に突出する第二端子部20とを有してもよい。端子部30は、第一端子部10及び第二端子部20よりも幅の細い第三端子部90を有してもよい。第一端子部10及び第二端子部20は電力を大量に供給することができるフォース端子やパワー端子等からなり、第三端子部90は少量の電力を供給するためのセンス端子や制御端子等からなってもよい。
【0024】
溝部160,170は、第一端子部10の挿入孔50に挿入された挿入部60の先端が内部で位置づけられて収容される第一溝部160と、第二端子部20の挿入孔50に挿入された挿入部60の先端が内部で位置づけられて収容される第二溝部170と、を有してもよい。
【0025】
図3に示すように、端子部30は、封止部100の側部から外方に突出した基端部11,21と、基端部11,21から屈曲し、他方側から一方側に向かって延びる中間部12,22と、中間部12,22から屈曲し、封止部100に一方側の面に向かって延在し、封止部100の一方側の面に対向する位置に位置付けられる先端部13,23とを有してもよい。より具体的には、第一端子部10は、封止部100の側部から外方に突出した第一基端部11と、第一基端部11から屈曲し、他方側から一方側に向かって延びる第一中間部12と、第一中間部12から屈曲し、封止部100に一方側の面に向かって延在し、封止部100の一方側の面に対向する位置に位置付けられる第一先端部13とを有してもよい。第二端子部20は、封止部100の側部から外方に突出した第二基端部21と、第二基端部21から屈曲し、他方側から一方側に向かって延びる第二中間部22と、第二中間部22から屈曲し、封止部100に一方側の面に向かって延在し、封止部100の一方側の面に対向する位置に位置付けられる第二先端部23とを有してもよい。
【0026】
図4に示すように、端子部30の先端部13,23は、本体部16,26と、本体部16,26に設けられた凸部17,27とを有してもよい。凸部17,27内に挿入孔50が設けられてもよい。より具体的には、第一端子部10は、第一本体部16と、第一本体部16に設けられた第一凸部17とを有してもよく、この第一凸部17内に挿入孔50が設けられてもよい。同様に、第二端子部20は、第二本体部26と、第二本体部26に設けられた第二凸部27とを有してもよく、この第二凸部27内に挿入孔50が設けられてもよい。
【0027】
本実施の形態では、先端部13,23が一方側の面に対向する対向部15,25を有している。より具体的には、第一先端部13が第一対向部15を有し、第二先端部23が第二対向部15を有している。そして、第一対向部15及び第二対向部25の各々に挿入孔50が設けられている。
【0028】
封止部100はトランスファーモールドによって形成され、モールド樹脂からなってもよい。但し、これに限られることはなく、封止部100はポッティングによって形成され、ポッティング樹脂からなってもよい。
【0029】
図3に示すように、第三端子部90は、封止部100の側部から突出した第三基端部91、第三基端部91から屈曲し、他方側から一方側に向かって延びる第三延在部92とを有してもよい。
【0030】
第一端子部10、第二端子部20及び第三端子部90のいずれか1つ以上は複数設けられてもよい。図1乃至図3に示す態様では、第一端子部10が1つ設けられ、第二端子部20が2つ設けられ、第三端子部90が9つ設けられている。
【0031】
図6図7及び図10に示すように、電子モジュールは、基板210と、基板210上に設けられ、銅等からなる導電層220と、この導電層220に設けられた電子素子200とを有してもよい。そして、封止部100内において、電子素子200と端子部30とは配線250や接続子等によって電気的に接続されている(図6及び図10参照)。なお、図6に示す態様では、電子素子200のおもて面側(一方側)の電極に接続子260が設けられ、この接続子260が第一端子部10に接続される態様となっている。基板210の裏面には銅板等からなる放熱板290が設けられてもよい(図5参照)。なお、図10では先端部13,23は示していない。
【0032】
《効果》
次に、上述した構成からなる本実施の形態による効果であって、未だ説明していないものについて説明する。
【0033】
封止部100の所定の面に対向する対向部15,25を有する端子部30が設けられ、対向部15,25に挿入部60が挿入される挿入孔50が設けられる態様において、封止部100に挿入孔50に挿入されたネジ等の挿入部60の先端が内部に位置づけられて収容される溝部160,170が設けられる態様を採用した場合には、顧客の要望等といった諸事情により設計変更を行った場合でも、設計変更のコストの発生を抑制できる。つまり、従来では挿入孔に合わせた凹部が形成され、その凹部内にネジ等の挿入部の先端が位置付けられていた。このような態様において、顧客の要望等によって端子部30の位置がわずか数ミリ単位で変更になった場合でも、凹部の位置を変更する必要があるが、このように凹部の位置を変更するには金型を作り直す必要がある。これに対して、本態様によれば、封止部100に溝部160,170が設けられているので、端子部30の位置が溝部160,170の設けられた範囲内で変更された場合には、変更後の端子部30の挿入孔50に挿入されるネジ等の挿入部60の先端は依然として溝部160,170内に位置づけられることになる(図8参照)。このため、封止部100を生成するための金型を作り直す必要がなく、コストが高くなることを抑制できる。なお、端子部30の位置変更の要望は端子部30の幅方向(図2の第一方向)に沿ったケースが多いことから、本態様は、このような発生する可能性の高い変更に対して効果的に対応できる。
【0034】
封止部100がトランスファーモールドによって形成され、モールド樹脂からなる場合には、本実施の形態による効果はさらに高まる。トランスファーモールドで用いられる金型は一般的に非常に高額である。このため、顧客の要望等といった諸事情により設計変更が行われた場合には、従来の態様では非常に高額な追加コストが発生していた。これに対して、本態様によれば、トランスファーモールドにおける金型の作り直しを必要としないことから、追加コストの発生を抑制できる。
【0035】
本態様は、端子部30が、封止部100の側部から突出した基端部11,21と、基端部11,21から屈曲し、他方側から一方側に向かって延びる中間部12,22と、中間部12,22から屈曲し、封止部100に一方側の面に向かって延在する先端部13,23とを有し、先端部13,23が対向部15,25を有する場合に有効である。このような端子部30が設けられている場合には、設計変更によって端子部30の位置がずれることによる問題が顕在化しやすいためである。
【0036】
溝部160,170が封止部100の一方側の面で直線状に延びる場合には、設計変更によって端子部30の位置が直線状にずれた多くの場合において、金型の作り直しが必要なくなる点で有益である。
【0037】
溝部160,170が、第一端部110から第一距離D1だけ離間した位置から第二端部120から第二距離D2だけ離間した位置まで延びる場合には、第一端部110と第二端部120との間の広範な範囲にわたって溝部160,170が設けられることになる。このため、第一端部110側又は第二端部120側に端子部30の位置がずれる設計変更が行われた場合であっても、その概ねにおいて対応することができる。
【0038】
端子部30が、封止部100の第三端部130から外部に突出する第一端子部10と、封止部100の第四端部140から外部に突出する第二端子部20とを有し、溝部160,170が第一端子部10の挿入孔50に挿入された挿入部60の先端が内部で位置づけられて収容される第一溝部160と、第二端子部20の挿入孔50に挿入された挿入部60の先端が内部で位置づけられて収容される第二溝部170とを有する場合には、第一端子部10及び第二端子部20の各々に関して、設計変更による金型の作り直しという問題が発生することを防止できる。
【0039】
端子部30の本体部16,26に凸部17,27が設けられ、凸部17,27内に挿入孔50が設けられる場合には、厚みを持った凸部17,27内に挿入孔50を設けることができる。このような態様を採用する場合には、ナットを設置する必要がなくなる。このため、部品点数を低減することができ、加工費を含めたコストダウンを図ることができる。また、この態様では、ナットを用いる場合よりも厚みを薄くすることができる。図4は一例としてバーリング処理によって凸部17,27及び挿入孔50が形成される態様を示している。図4の左端の状態から真ん中の状態に移る際に本体部16,26に凸部17,27が形成されることになる。そして、図4の真ん中の状態から右端の状態に移る際に挿入孔50にネジが切られることになる。
【0040】
また、このようなバーリング処理を用いることで、端子部30の長手方向(図2の第二方向)における挿入孔50の位置を適宜調整することができる点でも有益である。なお、対向部15,25の厚みが0.8mm程度の厚みとなる場合には、バーリング処理を行うと1.2mm程の凸部17,27が形成されることになる。
【0041】
封止部100の一方側の面(上面)の大きさが他方側の面(下面)の大きさよりも小さくなってもよく、逆に封止部100の他側の面(下面)の大きさが一方側の面(上面)の大きさよりも小さくなってもよい。この際、図11に示すように、封止部100の側面が厚み方向(第三方向)に対して10度以上の角度で傾斜するようにしてもよい(α≧10度となってもよい)。このような態様を採用することで、樹脂によって生成された封止部100を金型からスムーズに抜き出すことができる点で有益である。
【0042】
第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0043】
第1の実施の形態では、第一端部110から第一距離D1だけ離間した位置から、第二端部120から第二距離D2だけ離間した位置まで、溝部160,170が延びる態様を用いて説明したが、これに限られることはない。図12に示すように、溝部160,170が第一端部110から第二端部120まで延びた態様を用いてもよいし、図13に示すように、溝部160,170が第一端部110から第二端部120から第二距離D2だけ離間した位置まで延びた態様を用いてもよいし、図14に示すように、溝部160,170が第一端部110から第一距離D1だけ離間した位置から第二端部120まで延びた態様を用いてもよい。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同じ又は同様の部材等については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
本態様によっても、端子部30の位置変更といった設計変更の必要が生じた場合でも封止部100を生成するための金型を作り直す必要がなく、コストが高くなることを抑制できることを含む、第1の実施の形態で述べたあらゆる効果を達成することができる。
【0045】
上述した各実施の形態の記載及び図面の開示は、請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の形態の記載、変形例の記載又は図面の開示によって請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。また、出願当初の請求項の記載はあくまでも一例であり、明細書、図面等の記載に基づき、請求項の記載を適宜変更することもできる。
【符号の説明】
【0046】
11,21 基端部
12,22 中間部
13,23 先端部
15,25 対向部
16,26 本体部
17,27 凸部
50 挿入孔
60 挿入部
100 封止部
110 第一端部
120 第二端部
130 第三端部
140 第四端部
160 第一溝部
170 第二溝部
200 電子素子
D1 第一距離
D2 第二距離
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