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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086418
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】電源装置、電源ユニット、試験装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20220602BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20220602BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20220602BHJP
【FI】
H02M3/28 W
H02M3/28 B
G01R31/28 P
G01R31/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198414
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】今井 祥一朗
【テーマコード(参考)】
2G003
2G132
5H730
【Fターム(参考)】
2G003AA02
2G003AE01
2G003AH04
2G003AH05
2G132AE22
2G132AE27
2G132AG01
2G132AH00
2G132AL09
2G132AL11
5H730AS01
5H730AS02
5H730AS04
5H730BB21
5H730BB85
5H730BB88
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD31
5H730FG24
5H730XC02
(57)【要約】
【課題】セトリング動作を改善した高電圧電源を提供する。
【解決手段】電源装置100は、スタック接続される複数チャンネルの電源ユニット200を備える。電源ユニット200はそれぞれ、正極出力OUTPと負極出力OUTNの間に、制御信号Vctrlに応じた出力電圧Viを発生する出力段210を備える。マスターチャンネルの電流検出器250は、出力段210の出力電流を示す電流検出信号Isを生成する。フィードバックコントローラ240は、電流検出信号Isが目標値Irefに近づくように、制御信号Vctrlを生成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタック接続される複数チャンネルの電源ユニットを備え、
前記複数チャンネルの電源ユニットはそれぞれ、
正極出力および負極出力と、
前記正極出力と前記負極出力の間に、制御信号に応じた出力電圧を発生する出力段と、
を備え、
前記複数チャンネルのひとつであるマスターチャンネルの電源ユニットは、
前記出力段の出力電流を示す電流検出信号を生成する電流検出器と、
前記電流検出信号が目標値に近づくように、前記制御信号を生成するフィードバックコントローラと、
をさらに備え、
全チャンネルの前記出力段は、前記マスターチャンネルの前記フィードバックコントローラが生成する前記制御信号にもとづいて動作することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記複数チャンネルの電源ユニットはそれぞれ、前記出力段の出力電圧を示す電圧検出信号を生成する電圧検出器をさらに備え、
前記マスターチャンネルの電源ユニットは、前記複数チャンネルの残りであるスレーブチャンネルの電源ユニットから前記電圧検出信号を受信し、全チャンネルの前記電圧検出信号にもとづく電圧フィードバック信号を生成する電圧フィードバック信号生成部をさらに備え、
前記マスターチャンネルの前記フィードバックコントローラは、前記電圧フィードバック信号が所定のリミット値を超えるとき、前記電圧フィードバック信号が前記リミット値に近づくように、前記制御信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記マスターチャンネルの電源ユニットは、前記出力段の出力電圧を示す電圧検出信号を生成する電圧検出器をさらに備え、
前記フィードバックコントローラは、前記電圧検出信号が所定のリミット値を超えるとき、前記電圧検出信号が前記リミット値に近づくように、前記制御信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
前記複数チャンネルの電源ユニットは、前記フィードバックコントローラおよび前記電流検出器を備え、同様に構成されており、
各電源ユニットは、マスターモードとスレーブモードが選択可能であり、前記マスターモードに設定されたとき、前記フィードバックコントローラが有効化され、前記スレーブモードに設定されたとき、前記フィードバックコントローラが無効化されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電源装置。
【請求項5】
前記マスターチャンネルは、前記複数チャンネルのうち最上段に位置することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電源装置。
【請求項6】
複数個をスタックして電源装置を構成可能な電源ユニットであって、
正極出力および負極出力と、
前記正極出力と前記負極出力の間に、制御信号に応じた出力電圧を発生する出力段と、
マスターチャンネルに設定されたときにアクティブとなり、前記出力段の出力電流を示す電流検出信号を生成する電流検出器と、
前記マスターチャンネルに設定されたときにアクティブとなり、前記電流検出信号が目標値に近づくように、前記制御信号を生成するフィードバックコントローラと、
前記マスターチャンネルに設定されたとき、他のチャンネルに前記制御信号を送信し、スレーブチャンネルに設定されたとき、前記マスターチャンネルから前記制御信号を受信するインタフェース回路と、
を備えることを特徴とする電源ユニット。
【請求項7】
前記出力段の出力電圧を示す電圧検出信号を生成する電圧検出器をさらに備え、
前記マスターチャンネルに設定されたとき、前記フィードバックコントローラは、全チャンネルの電圧検出信号にもとづく電圧フィードバック信号が所定のリミット値を超えるとき、前記電圧フィードバック信号が前記リミット値に近づくように、前記制御信号を生成することを特徴とする請求項6に記載の電源ユニット。
【請求項8】
前記出力段の出力電圧を示す電圧検出信号を生成する電圧検出器をさらに備え、
前記マスターチャンネルに設定されたとき、前記フィードバックコントローラは、前記電圧検出信号が所定のリミット値を超えるとき、前記電圧検出信号が前記リミット値に近づくように、前記制御信号を生成することを特徴とする請求項6に記載の電源ユニット。
【請求項9】
請求項6から8のいずれかに記載の電源ユニットを複数個、スタック接続して構成される電源装置。
【請求項10】
被試験デバイスに対して電力を供給する請求項1から5、9のいずれかに記載の電源装置を備えることを特徴とする試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスに電源電圧もしくは電源電流を供給する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー化を目的として、高電圧を高速にスイッチングすることで高効率な電力変換が可能なSiC(炭化ケイ素)FET(Field-Effect Transistor)やGaN(窒化ガリウム)HEMT(High Electron Mobility Transistor)などのパワーデバイスの研究開発が盛んになっている。それにともない、高電圧を印加するデバイス試験の需要も増大し、試験時間短縮の要求が強くなっている。それらのデバイス試験においては1000V、デバイスによっては2000Vの高電圧かつ高精度な直流電圧印加が必要である。
【0003】
試験装置用の電源装置の最高出力電圧が、負荷に供給すべき高電圧に満たない場合、複数のチャンネルの電源装置(以下、電源ユニットと称する)を直列接続(以下、スタック接続)する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-138557号公報
【特許文献2】特表2013-535949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1は、高電圧電源100Rのブロック図である。図1を参照すると、高電圧電源100Rは、スタック接続された複数チャンネルCH1~CHNの電源ユニット110_1~110_Nを備える。各チャンネルの電源ユニット110は、一次側Pと二次側Sを有し、一次側Pと二次側Sは、トランスやキャパシタなどのアイソレーションバリア112を介して絶縁されている。複数の電源ユニット110_1~110_Nの一次側Pの接地端子GND同士は、共通に接続される。
【0006】
電源ユニット110の二次側Sには、正極出力OUTPと負極出力OUTNが設けられ、正極出力OUTPと負極出力OUTNの間には、出力段120が設けられる。
【0007】
一般に電源装置は、負荷に定電圧を供給する電圧印加モード(定電圧モード)と、負荷に定電流を供給する電流印加モード(定電流モード)が切りかえ可能である。図1のように、複数の電源ユニット110がスタックされる高電圧電源100Rを、電流印加モードで動作させるケースを考える。ここでは説明の容易化のために、N=2段の電源ユニット110_1,110_2をスタックするものとする。
【0008】
(比較技術1)
比較技術1では、スタックされるすべての電源ユニット110_1,110_2を、目標値(設定値)Irefが等しい電流印加モードで動作させる。この場合、全チャンネルに同じ電流Irefが流れ、理想的には全チャンネルにおいて同じ電流量が検出されるが、実際には検出誤差によって、各電源ユニット110_1,110_2において、目標値Irefからずれた電流Iref+ΔI、Iref+ΔIが検出されうる。この場合、高電圧電源100Rから負荷に供給される電流IOUTは、
OUT=Iref-(ΔI+ΔI)/2
となる。つまり出力電流IOUTは、目標値Irefから、各チャンネルの検出誤差ΔI,ΔIの平均値を減じた電流量となる。
【0009】
図2(a)は、比較技術1に係る高電圧電源の起動時の電圧波形を示す図である。電流の検出誤差ΔI,ΔIの影響で、各チャンネルの電源ユニットの状態は、次のいずれかのどちらかの状態に収束する。
(1) 出力電圧が低下していき、使用可能電圧の下限(使用下限電圧という)に達する。
(2) 出力電圧が上昇していき、使用可能電圧の上限(使用上限電圧という)に達する。
図2(a)では、第1チャンネルの電圧Vが使用下限電圧まで低下し、第2チャンネルの電圧Vが使用上限電圧まで上昇している。
【0010】
つまり、高電圧を生成するために2段の電源ユニットをスタックしたにもかかわらず、使用下限電圧で動作するチャンネルが発生し、結果として、所望の高電圧を生成することができなくなる。つまり、比較技術1は、現実的には採用できない。
【0011】
(比較技術2)
比較技術2では、複数の電源ユニット110のひとつの電流印加モードで、残りを電圧印加モードで動作させる。ここでは、電源ユニット110_1を電流印加モードで、電源ユニット110_2を電圧印加モードで動作させる。電圧印加モードの電源ユニット110_2の電圧設定値(目標値)Vrefは、想定される負荷電圧VOUTHを考慮して適切に規定しておく。
【0012】
図2(b)は、比較技術2に係る高電圧電源の起動時の電圧波形を示す図である。はじめに、電圧印加モードの電源ユニット110_2が先行して起動し、出力電圧Vが電圧設定値Vrefに到達後、電流印加モードの電源ユニット110_1が電流印加を開始する。
【0013】
比較技術2では、電圧印加モードで動作させるチャンネルの電圧設定値Vrefは、負荷に応じて設定する必要がある。たとえば高電圧の負荷に対しては、高い電圧設定値Vrefを設定する必要があるが、別の低耐圧の負荷に変更した場合には、負荷に過電圧が印加されるという問題が生じうる。つまり比較技術2の手法は、汎用性に欠ける。
【0014】
また、電圧印加と電流印加のチャンネルを順に動作させる必要があるため、2段のセトリングとなってしまい、単一チャンネルの場合と同じ起動波形を得ることができず、またセトリング時間が長くなる。
【0015】
本開示の一態様は係る状況においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、セトリング動作を改善した高電圧電源の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示のある態様は電源装置である。この電源装置は、スタック接続される複数チャンネルの電源ユニットを備える。複数チャンネルの電源ユニットはそれぞれ、正極出力および負極出力と、正極出力と負極出力の間に、制御信号に応じた出力電圧を発生する出力段と、を備える。複数チャンネルのひとつであるマスターチャンネルの電源ユニットは、出力段の出力電流を示す電流検出信号を生成する電流検出器と、電流検出信号が目標値に近づくように、制御信号を生成するフィードバックコントローラと、をさらに備える。全チャンネルの出力段は、マスターチャンネルのフィードバックコントローラが生成する制御信号にもとづいて動作する。
【0017】
本開示の別の態様は、電源ユニットである。この電源ユニットは、複数個をスタックして電源装置を構成可能である。電源ユニットは、正極出力および負極出力と、正極出力と負極出力の間に、制御信号に応じた出力電圧を発生する出力段と、マスターチャンネルに設定されたときにアクティブとなり、出力段の出力電流を示す電流検出信号を生成する電流検出器と、マスターチャンネルに設定されたときにアクティブとなり、電流検出信号が目標値に近づくように、制御信号を生成するフィードバックコントローラと、マスターチャンネルに設定されたとき、他のチャンネルに制御信号を送信し、スレーブチャンネルに設定されたとき、マスターチャンネルから制御信号を受信するインタフェース回路と、を備える。
【0018】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0019】
本開示のある態様によれば、スタック段数が多いときのセトリング動作を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】高電圧電源のブロック図である。
図2図2(a)は、比較技術1に係る高電圧電源の起動時の電圧波形を示す図であり、図2(b)は、比較技術2に係る高電圧電源の起動時の電圧波形を示す図である。
図3】実施の形態に係る電源装置を備える試験装置を示すブロック図である。
図4図3の電源装置の起動時の電圧波形および電流波形を示す図である。
図5】実施例1に係る電源装置のブロック図である。
図6】実施例2に係る電源装置のブロック図である。
図7】実施例3に係る電源ユニットのブロック図である。
図8図8(a)、(b)は、マスターモード、スレーブモードにおける図7の電源ユニットの状態を示す図である。
図9】電源ユニットの具体的な構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0022】
一実施形態に係る電源装置は、スタック接続される複数チャンネルの電源ユニットを備える。複数チャンネルの電源ユニットはそれぞれ、正極出力および負極出力と、正極出力と負極出力の間に、制御信号に応じた出力電圧を発生する出力段と、を備える。複数チャンネルのひとつであるマスターチャンネルの電源ユニットは、出力段の出力電流を示す電流検出信号を生成する電流検出器と、電流検出信号が目標値に近づくように、制御信号を生成するフィードバックコントローラと、をさらに備える。全チャンネルの出力段は、マスターチャンネルのフィードバックコントローラが生成する制御信号にもとづいて動作する。
【0023】
この構成によると、複数チャンネルのうちのひとつであるマスターチャンネルにおいてのみ電流測定を行い、電流印加のためのフィードバック制御を行う。そしてマスターチャンネルにおいて得られた制御信号を、他のスレーブチャンネルに送信することで、単一チャンネルの電源装置と同じ動作を実現でき、セトリング動作を改善できる。
【0024】
一実施形態において、複数チャンネルの電源ユニットはそれぞれ、出力段の出力電圧を示す電圧検出信号を生成する電圧検出器をさらに備えてもよい。マスターチャンネルの電源ユニットは、複数チャンネルの残りであるスレーブチャンネルの電源ユニットから電圧検出信号を受信し、全チャンネルの電圧検出信号にもとづく電圧フィードバック信号を生成する電圧フィードバック信号生成部をさらに備えてもよい。マスターチャンネルのフィードバックコントローラは、電圧フィードバック信号が所定のリミット値を超えるとき、電圧フィードバック信号がリミット値に近づくように、制御信号を生成してもよい。これにより、全チャンネルの合計電圧が、所定の上限を超えないように、電圧クランプ動作を実現できる。
【0025】
電圧フィードバック信号は、全チャンネルの電圧検出信号の平均値であってもよい。
【0026】
一実施形態において、マスターチャンネルの電源ユニットは、出力段の出力電圧を示す電圧検出信号を生成する電圧検出器をさらに備えてもよい。フィードバックコントローラは、電圧検出信号が所定のリミット値を超えるとき、電圧検出信号がリミット値に近づくように、制御信号を生成してもよい。この場合、マスターチャンネルの状態をもとに、全チャンネルの電圧クランプ動作を実現できる。
【0027】
一実施形態において、複数チャンネルの電源ユニットは、フィードバックコントローラおよび電流検出器を備え、同様に構成されてもよい。各電源ユニットは、マスターモードとスレーブモードが選択可能であり、マスターモードに設定されたとき、フィードバックコントローラが有効化され、スレーブモードに設定されたとき、フィードバックコントローラが無効化されてもよい。なお、「ある回路ブロックを無効化する」ことは、当該ブロックを動作させない場合のみでなく、動作はさせるが、その出力を遮断あるいはマスクするなどして使用しない場合も含みうる。
【0028】
同じ電源ユニットを複数用意し、接続関係を組み替えて、モードを適切に設定することにより、負荷の個数を変化させたりすることが可能となる。たとえばN個の電源ユニットがある場合に、N個をスタックしてそのうちのひとつをマスターモード、残りをスレーブモードとすれば、1個の負荷に対して電力を供給できる。あるいは、N個すべてをマスターモードとして独立に使用すれば、N個の負荷に対して電力を供給できる。
【0029】
マスターチャンネルは、複数チャンネルのうち最上段に位置してもよい。
【0030】
一実施形態に係る電源ユニットは、複数個をスタックして電源装置を構成可能である。電源ユニットは、正極出力および負極出力と、正極出力と負極出力の間に、制御信号に応じた出力電圧を発生する出力段と、マスターチャンネルに設定されたときにアクティブとなり、出力段の出力電流を示す電流検出信号を生成する電流検出器と、マスターチャンネルに設定されたときにアクティブとなり、電流検出信号が目標値に近づくように、制御信号を生成するフィードバックコントローラと、マスターチャンネルに設定されたとき、他のチャンネルに制御信号を送信し、スレーブチャンネルに設定されたとき、マスターチャンネルから制御信号を受信するインタフェース回路と、を備える。
【0031】
この構成によると、複数チャンネルをスタックした場合に、マスターチャンネルにおいてのみ電流測定を行い、電流印加のためのフィードバック制御を行う。そしてマスターチャンネルにおいて得られた制御信号を、他のスレーブチャンネルに送信することで、単一チャンネルの電源装置と同じ動作を実現でき、セトリング動作を改善できる。また、同じ電源ユニットを複数用意し、接続関係を組み替えて、モードを適切に設定することにより、負荷の個数を変化させたりすることが可能となる。
【0032】
一実施形態において、出力段の出力電圧を示す電圧検出信号を生成する電圧検出器をさらに備えてもよい。マスターチャンネルに設定されたとき、フィードバックコントローラは、電圧検出信号が所定のリミット値を超えるとき、電圧検出信号がリミット値に近づくように、制御信号を生成してもよい。
【0033】
一実施形態において、電源ユニットを複数個、スタック接続して構成されてもよい。
【0034】
(実施形態)
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0035】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0036】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0037】
図3は、実施の形態に係る電源装置100を備える試験装置2を示すブロック図である。試験装置2は、DUT(被試験デバイス)1に電圧信号や電流信号などの試験信号を印加し、DUT1の応答を測定する。DUT1の種類は特に限定されないが、高耐圧パワートランジスタやパワーモジュールなどの1000Vを超えるような高電圧の電圧印加を必要とするデバイス、あるいはそうしたデバイスを含む回路、もしくは回路システムが、本試験装置2の試験対象として好適である。
【0038】
試験装置2は、DUT1に電源信号を供給する電源装置100を備える。本実施形態において、電源信号は、所定の電流量(目標量)に安定化された電流信号IOUTである。なお、図3では、DUT1に直接、電流信号IOUTが供給されているが、その限りでなく、この電流信号IOUTは、DUT1の周辺回路や、DUT1を駆動する回路、DUT1とのインタフェースとなる回路に供給されてもよい。
【0039】
試験装置2は、電源装置100に加えて、電圧センサや電流センサ、信号発生器やドライバ、コンパレータ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータなどを備えるが、それらはDUT1の種類や試験項目に応じており、図3では省略している。
【0040】
電源装置100は、スタック接続される複数Nチャンネル(CH1~CHN)の電源ユニット200_1~200_Nを備える。各電源ユニット200は、正極出力OUTPと負極出力OUTNを有している。電源ユニット200は、図1の電源ユニット110と同様に、絶縁された1次側と2次側を有しているが、図3には二次側の構成のみを示す。負極出力OUTNは、二次側の基準電位(グランド)をなす。
【0041】
i番目(1≦i≦N-1)のチャンネルの電源ユニット110_iの負極出力OUTNは、i+1番目のチャンネルの電源ユニット110_(i+1)の正極出力OUTPと接続される。1番目のチャンネルの電源ユニット110_1の正極出力OUTPは負荷1と接続され、N番目のチャンネルの電源ユニット110の負極出力OUTNは接地される。
【0042】
複数チャンネルの電源ユニット200はそれぞれ、出力段210を備える。i番目(i=1~N)の電源ユニット200_iの出力段210は、制御信号Vctrlに応じて、正極出力OUTPと負極出力OUTNの間に出力電圧Vを発生する。
【0043】
本実施形態において、複数NチャンネルCH1~CHNは、ひとつがマスターチャンネルに、残りがスレーブチャンネルに設定される。その限りでないが、図3では1番目のチャンネルCH1がマスターチャンネルであり、2番目~N番目のチャンネルCH2~CHNがスレーブチャンネルである。
【0044】
マスターチャンネルの電源ユニット200_1は、出力段210に加えて、電流検出器250およびフィードバックコントローラ240を備える。
【0045】
電流検出器250は、出力段210の出力電流IOUTを示す電流検出信号Isを生成する。この電流検出信号Isは、フィードバック信号Ifbとしてフィードバックコントローラ240に入力される。
【0046】
フィードバックコントローラ240には、出力電流IOUTの目標値Irefが入力される。フィードバックコントローラ240は、フィードバック信号Ifbが目標値Irefに近づくように、制御信号Vctrlの信号レベル(大きさ)をフィードバック制御する。フィードバックコントローラ240が生成した制御信号Vctrlは、マスターチャンネルの出力段210に供給される。
【0047】
マスターチャンネルとスレーブチャンネルとの間は、信号の送受信が可能となっている。具体的にはマスターチャンネルの電源ユニット200_1からスレーブチャンネルの電源ユニット200_2~200_Nへは、制御信号Vctrlが送信可能である。
【0048】
スレーブチャンネルCH2~CHNの出力段210は、マスターチャンネルCH1のフィードバックコントローラ240が生成する制御信号Vctrlにもとづいて動作する。
【0049】
以上が電源装置100の構成である。
【0050】
図4は、図3の電源装置100の起動時の電圧波形および電流波形を示す図である。ここではN=2チャンネルの構成について説明する。比較のために、比較技術2の波形を一点鎖線で示す。
【0051】
実線で示すように、本実施形態によれば、複数チャンネルのうちのひとつであるマスターチャンネルにおいてのみ電流測定を行い、電流印加のためのフィードバック制御を行う。そしてマスターチャンネルにおいて得られた制御信号Vctrlを、他のスレーブチャンネルに送信することで、単一チャンネルの電源装置と同じ動作を実現でき、セトリング動作を比較技術2に比べて改善できる。
【0052】
本開示は、図3のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、方法に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や実施例を説明する。
【0053】
(実施例1)
図5は、実施例1に係る電源装置100のブロック図である。この電源装置100は、電圧クランプ機能を有する。複数チャンネルの電源ユニット200_1~200_Nはそれぞれ、電圧検出器220をさらに備える。あるチャンネルCHiの電圧検出器220は、同じチャンネルCHiの出力段210の出力電圧Vを示す電圧検出信号Vsを生成する。スレーブチャンネルCH2~CHNにおいて生成された電圧検出信号Vs~Vsは、マスターチャンネルに送信される。
【0054】
マスターチャンネルCH1の電源ユニット200_1は、電圧フィードバック信号生成部230を備える。電圧フィードバック信号生成部230は、スレーブチャンネルの電源ユニット200_2~200_Nから電圧検出信号Vs~Vsを受信し、全チャンネルCH1~CHNの電圧検出信号Vs~Vsにもとづく電圧フィードバック信号Vfbを生成する。この電圧フィードバック信号Vfbは、フィードバックコントローラ240に供給される。たとえば電圧フィードバック信号Vfbは、全チャンネルの電圧検出信号の単純平均であり、以下の式で表される。
Vfb=Σi=1~N/N …(1)
【0055】
マスターチャンネルCH1のフィードバックコントローラ240は、電圧フィードバック信号Vfbが所定のリミット値Vlimより低い状態では、上述のように、電流フィードバック信号Ifbが目標値Irefに近づくように、制御信号Vctrlを生成する(定電流制御)。一方、電圧フィードバック信号Vfbがリミット値Vlimを超えた状態では、定電流制御が無効となり、電圧フィードバック信号Vfbがリミット値Vlimに近づくように、制御信号Vctrlを生成する(電圧クランプ制御)。
【0056】
式(1)において、Σi=1~Nは、全チャンネルCH1~CHNの生成電圧V~Vの合計電圧、すなわち負荷に供給される高電圧VOUTHである。したがって、式(1)の電圧フィードバック信号Vfbは、Vfb=VOUTH/Nを示すこととなる。電圧クランプが有効になると、電圧フィードバック信号Vfbは、リミット値Vlimと等しくなる。
Vfb=VOUTH/N=Vlim
したがって、電源装置100の出力電圧VOUTHは、Vlim×Nを超えないようにクランプすることができる。
【0057】
なお、複数のチャンネルの電源ユニット200_1~200_Nにバラツキが存在する場合、バラツキを考慮した係数を利用して、重み付け平均を取ってもよい。
【0058】
(実施例2)
図6は、実施例2に係る電源装置100のブロック図である。この電源装置100は、実施例1と同様に、電圧クランプ機能を有する。マスターチャンネルの電源ユニット200_1には、電圧検出器220が設けられる。フィードバックコントローラ240は、電圧検出器220が生成する電圧検出信号Vsが所定のリミット値Vlimより低い状態では、上述のように、電流フィードバック信号Ifbが目標値Irefに近づくように、制御信号Vctrlを生成する(定電流制御)。一方、電圧検出信号Vsがリミット値Vlimを超えた状態では、定電流制御が無効となり、電圧検出信号Vsがリミット値Vlimに近づくように、制御信号Vctrlを生成する(電圧クランプ制御)。
【0059】
全チャンネルの出力段210のゲインのばらつきが無視できる場合、全チャンネルの出力段210の出力電圧V~Vは等しいから、出力電圧VOUTHは、V×Nと近似できる。電圧クランプが有効になると、電圧Vがリミット値Vlimと等しくなるから、出力電圧VOUTHは、Vlim×Nを超えないようにクランプすることができる。実施例2は、電圧クランプ制御にそこまでの精度が要求されない場合に採用してもよい。
【0060】
(実施例3)
マスターチャンネルの電源ユニット200_1と、スレーブチャンネルの電源ユニット200_2~200_Nは、はじめから別々の構成として設計しておいてもよいが、以下で説明するように、同じ構成として、マスターチャンネルとして動作させるときのモードと、スレーブチャンネルとして動作させるときのモードを、切りかえ可能に構成してもよい。
【0061】
図7は、実施例3に係る電源ユニット200のブロック図である。この電源ユニット200は、マスターチャンネル、スレーブチャンネルの両方で使用可能である。電源ユニット200は、出力段210、電圧検出器220、電圧フィードバック信号生成部230、フィードバックコントローラ240、電流検出器250に加えて、モードセレクタ260、マルチプレクサ(スイッチ)270を備える。
【0062】
モードセレクタ260は、マスターチャンネルで使用されるときマスターモード、スレーブチャンネルで使用されるときスレーブモードであることを示すモード制御信号MODEを生成する。モード制御信号MODEは、電圧フィードバック信号生成部230、フィードバックコントローラ240、電流検出器250のイネーブル端子に入力され、これらのブロックは、モード制御信号MODEがマスターモードを示すときにイネーブル、スレーブモードを示すときにディセーブルとなる。
【0063】
マルチプレクサ270のひとつの入力ノードには、同じ電源ユニット200内のフィードバックコントローラ240の出力が接続される。またマルチプレクサ270の別の入力ノードには、別の電源ユニット200において生成された制御信号Vctrlが入力可能となっている。マルチプレクサ270は、モード制御信号MODEがマスターモードを示すときに、同じ電源ユニット200内の制御信号(内部制御信号)Vctrl_intを選択し、スレーブモードを示すときに他の電源ユニット200で生成された外部からの制御信号Vctrl_extを選択する。
【0064】
また電源ユニット200は、その内部で生成した制御信号Vctrl_int、電圧検出信号Vsは、外部に出力可能となっている。また電源ユニット200は、外部で生成された制御信号Vctrl_extおよび電圧検出信号Vsを受信可能となっている。
【0065】
図8(a)、(b)は、マスターモード、スレーブモードにおける図7の電源ユニット200の状態を示す図である。図8(a)、(b)において、ディセーブルとなるブロックや信号線は一点鎖線で示す。
【0066】
図9は、電源ユニット200の具体的な構成例を示すブロック図である。この電源ユニット200は、その制御系がデジタル回路のアーキテクチャで実装され、検出信号や制御信号はデジタル信号である。
【0067】
出力段210は、D/Aコンバータ212およびパワーアンプ214を含む。出力段210は、入力されたデジタルの制御信号Vctrlをアナログの制御信号に変換する。パワーアンプ214は、アナログの制御信号を増幅し、正極出力OUTPに出力する。
【0068】
電圧検出器220は、電圧センスアンプ222とA/Dコンバータ224を含む。電圧センスアンプ222は、2つの出力OUTPTとOUTN間の電圧Vを増幅する。A/Dコンバータ224は、センスアンプ222の出力をデジタルの電圧検出信号Vsに変換する。電圧検出信号Vsはインタフェース回路280を介して他のチャンネルと共有可能となっている。
【0069】
電圧フィードバック信号生成部230は、加減算器232および除算器234を含む。加減算器232は、同じチャンネルおよび他のチャンネルの電圧検出信号Vsを加算する。除算器234は、加減算器232の出力を、チャンネル数Nで除算し、平均値にもとづく電圧フィードバック信号Vfbを生成する。除算器234は、加減算器232の出力に係数1/Nを乗算する係数回路とも把握できる。
【0070】
電流検出器250は、センス抵抗252、センスアンプ254、A/Dコンバータ256を含む。センス抵抗252は、出力段210の出力電流IOUTの経路上に設けられる。センス抵抗252には、出力電流IOUTに比例した電圧降下が発生する。センスアンプ254は、センス抵抗252の電圧降下を増幅する。A/Dコンバータ256は、センスアンプ254の出力をデジタルの電流検出信号Isに変換する。フィードバックコントローラ240には、電流の目標値Irefと、電圧のリミット値Vlimが入力される。
【0071】
加減算器242は、リミット値Vlimと電圧フィードバック信号Vfbの差分(電圧誤差Verr)を生成する。加減算器246は、目標値Irefと電流検出信号Is(Ifb)の差分(電流誤差Ierr)を生成する。
【0072】
セレクタ248は、Vfb<Vlimのときに、電流誤差Ierrを選択し(定電流制御)、Vfb>Vlimのときに、電圧誤差Verrを選択する(電圧クランプ制御)。
【0073】
フィルタ244は、セレクタ248の出力にもとづいて、制御信号Vctrlを生成する。その限りでないが、フィルタ244は、PI(比例積分)制御器やPID(比例積分微分)制御器などで構成することができる。定電流制御では、電流誤差Ierrがゼロに近づくように、制御信号Vctrlのレベルがフィードバックにより調節され、電圧クランプ制御では、電圧誤差Verrがゼロに近づくように、制御信号Vctrlのレベルがフィードバックにより調節される。フィルタ244のパラメータは、定電圧制御と電流クランプ制御とで切りかえてもよい。
【0074】
フィードバックコントローラ240および電圧フィードバック信号生成部230は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)などで構成することができる。
【0075】
インタフェース回路280は、他のチャンネルのインタフェース回路280との間で、電圧検出信号や制御信号Vctrlを送受信可能である。
【0076】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセス、それらの組み合わせには、さまざまな変形例が存在しうる。以下、こうした変形例について説明する。
【0077】
図9では、その制御系がデジタル回路のアーキテクチャで実装される電源ユニット200について説明したが、その限りでなく、制御系をアナログ回路で構成してもよい。
【0078】
実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0079】
1…DUT、2…試験装置、100…電源装置、200…電源ユニット、210…出力段、220…電圧検出器、230…電圧フィードバック信号生成部、240…フィードバックコントローラ、250…電流検出器、260…モードセレクタ、270…マルチプレクサ、280…インタフェース回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9