(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086423
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】モールド変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/32 20060101AFI20220602BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20220602BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
H01F27/32 103
H01F30/10 J
H01F27/28 156
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198421
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】関谷 大毅
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦
(72)【発明者】
【氏名】五百川 純一
(72)【発明者】
【氏名】白畑 年樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊明
【テーマコード(参考)】
5E043
5E070
【Fターム(参考)】
5E043EA04
5E070AA11
5E070AB01
5E070DA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】表面閃絡によるモールド変圧器の故障を未然に防止する。
【解決手段】巻線の周囲が絶縁性の樹脂で覆われているコイル脚(高圧側HC1~HC3、低圧側コイル脚LC1~LC3)を備えたモールド変圧器であって、コイル脚は、前面1と側面2を有する。前面には、巻き始め端子CSとタップ接続端子TCが配置される。巻き始め端子とタップ接続端子との間には、凸部3を有する。凸部は、前面から側面まで延びる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線の周囲が絶縁性の樹脂で覆われているコイル脚を備えたモールド変圧器であって、
前記コイル脚は前面と側面を有し、
前記前面には、
巻き始め端子とタップ接続端子が配置され、
前記巻き始め端子と前記タップ接続端子との間に凸部を有し、
前記凸部は、
前記前面から前記側面まで延びるモールド変圧器。
【請求項2】
請求項1に記載のモールド変圧器において、
前記凸部は、上側から下側に斜めに延びる形状を有するモールド変圧器。
【請求項3】
請求項1に記載のモールド変圧器において、
前記凸部は、前記樹脂層で形成されるモールド変圧器。
【請求項4】
請求項1に記載のモールド変圧器において、
上下に複数の前記凸部が配置されるモールド変圧器。
【請求項5】
請求項1に記載のモールド変圧器において、
前記タップ接続端子は、
接続導体と接続するモールド変圧器。
【請求項6】
請求項1に記載のモールド変圧器において、
前記巻き始め端子は、外部と接続するモールド変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモールド変圧器として特許文献1がある。
【0003】
特許文献1のモールド変圧器は、小型軽量化を目的に、コイル脚の樹脂層の前面部で、巻線の巻始め部とタップ切替部との間に薄肉の切り欠き部を配置した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モールド変圧器は配置場所によって、水滴がモールドコイルに付着する場合がある。
【0006】
特許文献1の構造では、切り欠き部9に付着した水滴は前面の斜めのラインにそって脇に流れる。
【0007】
しかし、万が一、切り欠き部9の上部にある、巻き始め部7が配置された面に水滴がついた場合は、水滴が切り欠きに沿わずに、切り欠き部9を通過して、水滴がタップ端子3aからタップ端子3eに落下してしまう可能性がある。
【0008】
もし、タップ端子3aからタップ端子3eに水滴が落下した状態で、モールド変圧器を運転すると、コイル表面で表面閃絡(フラッシュオーバー)を起こす可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、表面閃絡によるモールド変圧器の故障を未然に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の好ましい一例としては、巻線の周囲が絶縁性の樹脂で覆われているコイル脚を備えたモールド変圧器であって、前記コイル脚は前面と側面を有し、
前記前面には、巻き始め端子とタップ接続端子が配置され、前記巻き始め端子と前記タップ接続端子との間に凸部を有し、前記凸部は、前記前面から前記側面まで延びるモールド変圧器である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表面閃絡によるモールド変圧器の故障を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1のモールド変圧器におけるコイル脚の構造を示す斜視図である。
【
図3】実施例2のモールド変圧器におけるコイル脚の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて実施例を説明する。
【実施例0014】
図1は、実施例1のモールド変圧器におけるコイル脚の構造を示す斜視図である。
図1では、3相モールド変圧器の例を示す。
図2は、
図1のコイル脚を4-4’の線で切断した場合の内部構成図である。
【0015】
本実施例のモールド変圧器のコイル脚は、鉄心脚の周りに、内側から、低圧側コイル脚LC、高圧側コイル脚HCの順に配置される。
図1では、各相毎に、低圧側コイル脚LC1、低圧側コイル脚LC2、低圧側コイル脚LC3、および高圧側コイル脚HC1、高圧側コイル脚HC2、高圧側コイル脚HC3が配置されている。
【0016】
低圧側コイル脚LC1、LC2、LC3および高圧側コイル脚HC1、HC2、HC3の内部には、巻線(コイル)Cが配置される。巻線Cは樹脂で覆われている。また、低圧側コイル脚LC1、LC2、LC3および高圧側コイル脚HC1、HC2、HC3の前面1には、巻き始め端子CSやタップ接続端子TCなどの各端子が樹脂表面に配置される。
【0017】
低圧側コイル脚LC1、LC2、LC3の前面1の上部に、それぞれ低圧側端子LT1、LT2、LT3が設けられ、モールド変圧器の各相が外部と接続している。
【0018】
高圧側コイル脚HC1、HC2、HC3の前面1に、巻き始め端子CS(Coil Start)が配置される巻き始め部、タップ接続端子TC(Tap Connector)及びタップ切替端子TS(Tap Selector)が配置されるタップ切替部が設けられている。巻き始め端子CSは、モールド変圧器の外部と接続される。
【0019】
巻線Cは、巻始め部からその巻き終わりに巻装される。この巻線Cから、タップ電圧に応じた所定の巻回数よりタップ線が引き出され、タップ線はタップ切替部のタップ接続端子TC及びタップ切替端子TSに接続される。
【0020】
巻き始め部は、高圧側コイル脚HC1、HC2、HC3の前面1の上部に配置される。タップ切替部は、高圧側コイル脚HCの前面1の中央に配置されている。本実施例では、タップ接続端子TC(Tap Connector)の下にタップ切替端子TS(Tap Selector)が配置されている。
【0021】
各相の高圧側コイル脚HC1、HC2、HC3のタップ接続端子TCはモールド変圧器の仕様条件に応じて、接続導体CC(Coil Connector)で接続されている。
【0022】
本実施例のモールド変圧器は、巻き始め端子CSとタップ接続端子TCとの間に凸部3が配置されている。凸部3は、モールド樹脂(成形樹脂)で構成され、前面1の左脇および右脇にある側面2まで斜めに伸びている。
【0023】
高圧側コイル脚HC1、HC2、HC3の前面1についた水分のうち、凸部3よりも上についた分は、高圧側コイル脚HC1、HC2、HC3の前面1を伝って落ちて凸部3で止まる。凸部3で止まった水滴は、凸部3に沿って、側面2に向かって上側から下側に斜めに流れる。
【0024】
そのため、凸部3の下にあるタップ接続端子TCとタップ切替端子TSには、凸部3の上からの水滴が落ちてこない。したがって、本実施例のモールド変圧器は、凸部3により高圧側コイル脚での表面閃絡を防ぐことが可能となっている。
【0025】
なお、凸部3は、コイル注型時にあらかじめ、樹脂注型用型面板側にくぼみを設け注型することにより容易に樹脂層として形成可能である。
【0026】
本実施例では、巻き始め端子CSとタップ接続端子TCとの間に凸部3が配置されている。巻き始め端子CSとタップ接続端子TCとの間は、そもそも間隔を広くする必要があり、そのスペースに側面2に向かって上側から下側に斜めに延びる凸部3を形成することできるので、凸部3を形成するために高圧側コイル脚HC1、HC2、HC3を大型化する必要はない。
【0027】
図1に示すように、3相の高圧側コイル脚のうち、正面から見て左右の高圧側コイル脚HC1と高圧側コイル脚HC3では、凸部3は、それぞれの左右の端部に延びており、高圧側コイル脚の外部に水滴を排水できるようになっている。さらに、高圧側コイル脚HC1と高圧側コイル脚HC3では、接続導体CCの横方向にも凸部3を配置できるので、凸部3の傾斜の調整代を大きくできる。
【0028】
また、変形例としては、正面から見て凸部3を山型の形状(両脇の側面2に向かって下がる斜め凸)とすることもできる。そのような形状では、凸部3の斜めの高さを
図1の場合に比べてほぼ半分にできる。また、高圧側コイル脚HC1、HC2、HC3のいずれも同じ形状にできるので製造コストは低減できる。
【0029】
本実施例によれば、モジュール変圧器の上部から雨水などの水滴が落ちる場合においても、タップ接続端子TCに水滴が落ちることを防ぐことができ、モジュール変圧器の表面閃絡を防ぐことが可能となる。