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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086497
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】飛沫感染防止用シールド
(51)【国際特許分類】
   A61G 10/00 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
A61G10/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198542
(22)【出願日】2020-11-30
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】520470615
【氏名又は名称】有限会社サンスバル
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】武田 孝之
(72)【発明者】
【氏名】大山 輝之
(72)【発明者】
【氏名】小野田 堅太
(72)【発明者】
【氏名】金森 一樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 健二
(72)【発明者】
【氏名】鍋田 昌邦
(72)【発明者】
【氏名】水野 久美
【テーマコード(参考)】
4C341
【Fターム(参考)】
4C341JJ01
4C341KK05
4C341LL06
4C341MM01
4C341MS06
4C341MS24
(57)【要約】
【課題】例えば緊急の避難施設等においても、罹患者と外部との簡易的遮断を図ることができ、また組立前の全体重量は軽量でありながら、組立後は充分な強度を有し、運搬・保管・組立性に優れ、且つ使用後の部材の廃棄にあたっては極力、環境負荷を生じさせない、新規な飛沫感染防止用シールドの開発を課題とした。
【解決手段】本発明の飛沫感染防止用シールド1は、自立可能な本数設けられる柱要素2と、これら柱要素2を相互に接続する複数本の横桟要素3とにより立体枠状のフレームFを構成し、このフレームFに対し、その内部を緩遮断するようにシールドシート5を被せたシールドであって、柱要素2と横桟要素3とは、ともに紙製筒体であり、且つ柱要素2を横桟要素3によって相互に接続する接続構造4は、嵌め合い接続であることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立可能な本数設けられる柱要素と、これら柱要素を相互に接続する複数本の横桟要素とにより立体枠状のフレームを構成し、このフレームに対し、その内部を緩遮断するようにシールドシートを被せた飛沫感染防止用シールドであって、
前記柱要素と横桟要素とは、ともに紙製筒体であり、
且つ柱要素を横桟要素によって相互に接続する接続構造は、嵌め合い接続であることを特徴とする飛沫感染防止用シールド。

【請求項2】
前記柱要素は、矩形断面の四角筒状であり、また横桟要素は、円形断面の円筒状であり、
且つこれら柱要素と横桟要素との接続は、柱要素の側面板に円孔状の差し込み孔を設け、この差し込み孔に横桟要素の端部を嵌め込んで接続する構造であることを特徴とする請求項1記載の飛沫感染防止用シールド。

【請求項3】
前記柱要素は、四本適用され、且つそれらは全て同じ寸法に形成され、またこれら柱要素を接続する円筒状の横桟要素も全て同じ寸法に形成され、立体枠状のフレームは、直方体状に構成されていることを特徴とする請求項2記載の飛沫感染防止用シールド。

【請求項4】
前記柱要素は、始発状態でサック貼りされた四枚の側面板が平折り状に折り畳まれた状態であり、側面板の両端に設けられた端部フラップの係合により四角筒状に立体形成される構成であることを特徴とする請求項2または3記載の飛沫感染防止用シールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば仰臥状態の罹患者と外部環境との間を遮断し、罹患者と外部環境との相互の保全を図るための飛沫感染防止用シールドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルスの流行の下、医療機関では種々の対策が採られている。このうち入院している罹患者と、医療スタッフを含む周辺関係者との接近によるウイルス罹患の拡散を防ぐため、ベッド上の罹患者を仕切りシートやボードあるいはカバー等で覆うことが提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
ところで病院などの一定の設備を具えた医療機関では、前述のシートやボード等のシールド部材の設置は、比較的、容易に行える一方、近時多発している災害発生時における避難所等に目を向けると、このような罹患者を受け入れた場合に対応したシールド部材については、未だ適したものがほとんど見当たらない。
また医療機関でアクリルボード等を用いたシールド部材にあっては、使用の都度、充分な消毒の下、再使用しているのが現状であり、そのための手間もかなり要しているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-205069号公報
【特許文献2】特開2011-234867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような背景を認識してなされたものであって、例えば一時的な避難施設等においても、罹患者と外部との簡易的遮断を図ることができ、また組立前の全体重量は軽量でありながら、組立後は充分な強度を有し、更には運搬・保管・組立が極めて容易に行え、なお且つ使用後の部材の廃棄にあたっては極力、環境負荷を生じさせない、新規な飛沫感染防止用シールドの開発を課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
まず請求項1記載の飛沫感染防止用シールドは、
自立可能な本数設けられる柱要素と、これら柱要素を相互に接続する複数本の横桟要素とにより立体枠状のフレームを構成し、このフレームに対し、その内部を緩遮断するようにシールドシートを被せた飛沫感染防止用シールドであって、
前記柱要素と横桟要素とは、ともに紙製筒体であり、
且つ柱要素を横桟要素によって相互に接続する接続構造は、嵌め合い接続であることを特徴として成るものである。
【0006】
また請求項2記載の飛沫感染防止用シールドは、請求項1記載の要件に加え、
前記柱要素は、矩形断面の四角筒状であり、また横桟要素は、円形断面の円筒状であり、
且つこれら柱要素と横桟要素との接続は、柱要素の側面板に円孔状の差し込み孔を設け、この差し込み孔に横桟要素の端部を嵌め込んで接続する構造であることを特徴として成るものである。
【0007】
また請求項3記載の飛沫感染防止用シールドは、請求項2記載の要件に加え、
前記柱要素は、四本適用され、且つそれらは全て同じ寸法に形成され、またこれら柱要素を接続する円筒状の横桟要素も全て同じ寸法に形成され、立体枠状のフレームは、直方体状に構成されていることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項4記載の飛沫感染防止用シールドは、請求項2または3記載の要件に加え、
前記柱要素は、始発状態でサック貼りされた四枚の側面板が平折り状に折り畳まれた状態であり、側面板の両端に設けられた端部フラップの係合により四角筒状に立体形成される構成であることを特徴として成るものである。
そして、これら各請求項記載の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0009】
まず請求項1記載の発明によれば、柱要素と横桟要素とが、ともに紙製の筒体であるため、一基の飛沫感染防止用シールドを組み立てるのに必要な部材を一まとめにした、いわゆるキットとして流通させる際、一キット分が軽量で且つ持ち運び容易となり、緊急避難施設での保管(備蓄)も行い易くなる。また、柱要素及び横桟要素が紙製であることから、使用後に焼却処分する際にも、環境負荷をほとんど掛けずに廃棄することができる。
また、柱要素と横桟要素との接続が、嵌め合い接続であるから、これらを組み立てる際に、工具などを要することがなく、人による手作業で、いつでも、どこでも容易に組み立てることができる。
【0010】
また請求項2記載の発明によれば、柱要素が四角筒状である一方、横桟要素が円筒状であるため、両者の部材の区別が、外観から直ぐに判断でき、部材の選び出しに迷うことがなく、組み付け性が向上する。また、柱要素に形成される差し込み孔、つまり横桟要素を嵌め込むための孔は円形になり、孔形状としての耐久性が向上する。
【0011】
また請求項3記載の発明によれば、柱要素が四本設けられ、立体枠状のフレームが直方体状に構成されるため、フレームとして極めてシンプルな立体形状が得られる。
また、柱要素及び横桟要素は、各部材で全て同じ寸法に形成されるため、部材の共通化が図れ、一キット分の飛沫感染防止用シールドの構成部材が、よりコンパクトにまとまり、運搬性、保管性等の向上に寄与する。逆に言えば、各部材の大きさ・長さが異なっていた場合には、一キット分の部材の荷姿としてコンパクトにまとめづらくなり、運搬や保管も行い難くなる。
また、緊急災害時の使用を想定した場合、事前に訓練などで組み立てを行うことがあり得るが、その場合でも部材の種類毎に寸法が同じであれば、最初の荷姿に戻し易く、部材を紛失してしまう心配も少ない。
【0012】
また請求項4記載の発明によれば、柱要素は、始発状態でサック貼りされた四枚の側面板が平折り状に折り畳まれた状態であるため、始発状態で柱要素は、嵩張ることがなく、一キット分の部材の荷姿として、よりコンパクトに収まり、運搬性・保管性をより一層、向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の飛沫感染防止用シールドの使用状態の一例を示す斜視図である。
図2】立体形成した柱要素の両端部を閉鎖するために、ここに設けられた端部フラップの組み付け手法の一例を示す斜視図である。
図3】飛沫感染防止用シールドのフレームを平面視、台形状に形成した改変例を示す斜視図である。
図4】柱要素と横桟要素との接続を、より強固な状態に嵌合させるようにした二種の改変例を示す説明図である。
図5】柱要素と横桟要素とを全て四角筒状体で形成するようにした改変例と、その場合の強固な接続構造とを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法をも含むものである。
【実施例0015】
本発明の飛沫感染防止用シールド1は、自立可能な本数設けられる柱要素2と、これら柱要素2を相互に接続する複数本の横桟要素3とにより立体枠状のフレームFを構成して成り、このフレームFに対し、その内部を緩遮断するようにシールドシート5を被せたものであって、前記柱要素2と横桟要素3とは、ともに紙製筒体であり、また柱要素2と横桟要素3とを接続する接続構造4は嵌め合い接続であることを特徴とする。ここで上記「緩遮断」については、後述するシールドシート5のところで併せて説明する。
このように柱要素2と横桟要素3とが紙製筒体であるため、飛沫感染防止用シールド1は極めて軽量に構成され、更には使用後の廃棄においても環境にほとんど負荷を掛けずに処分(焼却処分)することができる。しかも、柱要素2と横桟要素3との接続構造4は、嵌め合いであるため、フレームFの組み立てに工具などを必要とせず、容易に組み立てることができる。また、軽量のため持ち運びや収納も容易に行える。
【0016】
また、柱要素2及び横桟要素3は、ともに複数本、設けられるが、各部材とも大きさと長さは各部材ごと全て同じ寸法に形成される。
また飛沫感染防止用シールド1を使用するにあたっては、組み立てられたフレームFの一面から、使用者Mが、自身の身体上部(頭部)を入れるようにするものであり(図1参照)、この面を進入面FFとする。
また、この進入面FFに対向する後方側(奥側)の面を後方面FBとし、進入面FFに向かって右側の面を右面FR、進入面FFに向かって左側の面を左面FLとする。また設置状態においてフレームFの上になる面を上面FUとする。因みに、進入面FFの下部は、横桟要素3が不要となり、これは使用者Mが身体上部(頭部)を進入面FFから入れて、ライイング姿勢をとるためである。
以下、柱要素2、横桟要素3、接続構造4について具体的に説明する。
【0017】
まず柱要素2は、一例として図1に示すように、矩形断面を成す四角筒状の柱状部材であり、流通・保管時の始発状態においては、サック貼りされた四つの側面板21が平折り状に折り畳まれた形態を採る。すなわち柱要素2は、始発状態で四つの側面板21が、折線22を介して連接したブランク形状を成し、このブランク材の連接端に位置する側面板21(端縁)がサック貼りされて成るものである。そして、折り畳み状の柱要素2を柱状に立体形成するには、平折り状の偏平状態から隣接する側面板21同士がほぼ直交状態となるように立ち上げて、全体的に筒状を呈するように立体形成するとともに、一例として図2に示すように、側面板21の両端に設けられた端部フラップ23同士を係合して、上下両端部を閉鎖した四角筒状の柱材たる柱要素2を得るものである。
このように柱要素2は、始発状態において平坦状に折り畳まれた状態で提供されるものであり、このため一基の飛沫感染防止用シールド1を組み立てるのに必要な部材を一まとめにした、いわゆるキットとして流通させる際には、必要な部材を一まとめにした荷姿として、極めてコンパクトになり、持ち運びが極めて行い易く、且つ保管場所も狭いスペースで済み、利便性に優れたものとなる。
【0018】
以下、端部フラップ23について説明する。
端部フラップ23は、上述したように柱要素2の上下両端部に設けられるものであり、本実施例では上端部が、例えば上記図2に示すように、蓋状に閉塞される構造を採るものであって、この上端側では対向的に設けられる一対の折込み内フラップ23aと、これらを内側に押し込む蓋フラップ23bと、この蓋フラップ23bの自由端側に連接状に設けられた差し込みフラップ23cとを具える。
一方、他の端部、本実施では柱要素2の下端部が、一例として閉鎖底部を構成するような構造を採るものであり、端部開口たる矩形の一辺に第一押込みフラップ23dを設け、これに隣接する二辺に中折り込みフラップ23eを対設し、更に残りの辺、すなわち第一押込みフラップ23dに対向する辺に、押えフラップ23fを形成したものである。
もちろん柱要素2の端部フラップ23の構成は、両端部とも同一の構成としてもよいし、また閉鎖するための構成については、他の公知の構成を適用しても構わない。
【0019】
また、この柱要素2には、一例として図2図1に示すように、横桟要素3を接続するための円孔状の差し込み孔25を具えるものであり、このものは接続構造4の一部となる。ここで本実施例では、横桟要素3は、計四本の柱要素2を連設するものであり、フレームFの進入面FF・右面FR・左面FL・後方面FBの上下に二本の柱要素2を配するから、各柱要素2は、上下の各端部において相互に隣接したフレーム内側面に一個所ずつの二個所、上下で総計四個所の差し込み孔25を具える。ここで一本の柱要素2の上部及び下部においてそれぞれ形成される二個所の差し込み孔25は、その高さが異なるように形成されており、これは柱要素2に交差状に嵌め込まれる横桟要素3同士の干渉を避けるためである。
なお、フレームFの進入面FFは、使用者Mが身体上部(頭部)を入れる側であるから、上述したように下部の横桟要素3は不要となる。そのため、進入面FFの下部には、横桟要素3を嵌め込むための差し込み孔25は形成しなくてもよい。もちろん、全ての柱要素2を共通化するためには、不要であっても差し込み孔25を形成しておいても構わない。
【0020】
更に、柱要素2は、その上方にシールドシート5を留め付けるための面ファスナ26の一方の要素片を設けておくものであり、本実施例では各柱要素2の上部外側二個所、総計八個所に、面ファスナ26の一方の要素片が設けられている。具体的には、面ファスナ26の要素片に「A」~「D」のアルファベットが表示されており、これは後述するシールドシート5の留め付け性を向上させるためであり、この表示をシート取り付け表示M1とする。すなわち、本実施例では上記図1に示すように、シート取り付け表示M1たるアルファベットとして、進入面FFを形成する柱要素2の上方二個所に「A」が付され、後方面FBを形成する柱要素2の上方二個所に「B」が付され、右面FRを形成する柱要素2の上方二個所に「C」が付され、左面FLを形成する柱要素2の上方二個所に「D」が付されている。
【0021】
また、各柱要素2において、横桟要素3が嵌め込まれる差し込み孔25の近傍には、「1」~「7」の数字が表示されており、これは横桟要素3の嵌め合いを分かり易くするための表示であり、この表示を嵌め合い表示M2とする。すなわち、柱要素2に横桟要素3を嵌め込む際には、柱要素2の一側面に記載された嵌め合い表示M2たる数字(同じ数字)が向かい合わせになるように、柱要素2を対向配置して、その間に横桟要素3を差し込むものである。
このように本実施例では、アルファベットによるシート取り付け表示M1と、数字による嵌め合い表示M2とを各柱要素2に付すことによって、複数本の柱要素2が全て同じ寸法に形成されていても、嵌め込み時の柱要素2の向きや、柱要素2がフレームFのどこに配置されるのかが、極めて分かり易い構造となっている。
【0022】
次に横桟要素3について説明する。
横桟要素3は、複数立設される柱要素2同士を接続するための部材であり、柱要素2に対し直交状態に配置される、いわゆる横架部材である。
ここで本実施例では、横桟要素3として断面が円形状の円筒部材が適用され、このものの端部31は、切放し状のままとされ、これは端部31が接続状態で柱要素2内に収容されるためである。
そして、複数の横桟要素3も、上述したように大きさ及び長さが、全て同じ状態に形成され、また全てが共通部材として利用される。このため横桟要素3は、特定の柱要素2同士を接続するための専用部材は存在せず、これによってフレームFが組み付けし易い構造となっている。
【0023】
このように本実施例では、柱要素2と横桟要素3とが、各部材で全く同じ寸法に形成されるため、一基の飛沫感染防止用シールド1の部材をまとめてキットで流通させる場合に、その荷姿として、極めてコンパクトな荷姿となり、より一層、運搬や保管などが行い易くなる。また、例えば防災訓練などにおいて実際に組み立てを行った後、再度、元の荷姿に戻す場合でも、一キット分の部材の紛失を防ぐことができる。
【0024】
また柱要素2が角筒体である一方、横桟要素3が円筒体であり、各部材の形状が異なることにより、部材がどちらの要素なのかが一目で分かり(一目瞭然)、より一層、フレームFが組み立て易い構造となっている。
もちろん、このように部材の区別が外観からして明確に判断できる構成は、誰がやっても、換言すれば比較的低学年の児童でも容易に組み立てられる構造であり、緊急避難時を想定したシールド部材としては極めて好ましい構成となっている。
【0025】
そして、このような柱要素2と横桟要素3とを組み付けてフレームFを立体枠状に構成するものであり、以下、この接続構造4とともにフレームFの全体構成について説明する。
柱要素2は、上述したように、始発状態では、偏平状に折り畳まれた状態であるため、これを四角柱状等に立体形成する。これには折り重ね状態の各側面板21を、角筒状を呈するように立体化形成する。その後、側面板21の両端部に設けられた端部フラップ23を組み重ねて、両端部が閉鎖された角筒状の柱要素2を立体形成する。
【0026】
そして、このような角筒状とした柱要素2に対し、各々の差し込み孔25に円筒状の横桟要素3を嵌め込み、結果的に直方体状の枠組を成すフレームFを構成する。ここで、本実施例では、柱要素2には差し込み孔25の近傍に、嵌め合い表示M2としての数字(ここでは上述したように「1」から「7」)が表示されているから、この嵌め合い表示M2が向かい合わせになるように、柱要素2を対向配置し、その間に共通部材である横桟要素3を差し込んで行くことにより、フレームFを容易に組み立てることができる。また、このために、柱要素2がフレームFのどの位置になるのかについて、迷うことなく、フレームFを組み立てて行くことができる。
なお、嵌め合い表示M2は、必ずしも数字である必要はなく、例えば五十音や、イロハ文字等でも構わない。
また、フレームFを立体形成した組立状態で、上述したように使用者Mが身体上部を入れる進入面FFについては、下部に横桟要素3を設けないものである。
【0027】
因みに、フレームFの内側空間は、一例として幅約700mm、奥行約700mm、高さ約750mm程度に形成され、この大きさは、身体上部をフレーム内に収めた使用者Mが、仰臥姿勢をとった状態で、上方に腕を伸ばせる程度の空間であり、圧迫感を受けにくい広さとなっている。
【0028】
そして、このようなフレームFに対し、シールドシート5を被せるようにして、飛沫感染防止用シールド1を構成する。
シールドシート5としては、例えば塩化ビニル製の透明素材が適用でき、厚さ約0.1mmに形成され得る。このシールドシート5は、一例として上記図1に示すように、フレームFの進入面FFから上面FUを経て後方面FBまでをカバーする細長い縦覆いシート51と、フレームFの左面FLと右面FRとを別々にカバーする横覆いシート52とを具える。ここで横覆いシート52を左右で区別する場合には、フレームFの右面FRをカバーするものを52Rとし、左面FLをカバーするものを52Lとする。
なお、各シールドシート5には、上述したように、このものを柱要素2に留め付けるための面ファスナ26の他の要素片が設けられており、この面ファスナ26の要素片近傍にも上記シート取り付け表示M1が表示されている。
【0029】
そのためシールドシート5をフレームFに取り付けるには、柱要素2とシールドシート5とに記されたアルファベット等のシート取り付け表示M1(ここではアルファベット「A」~「D」)を合わせるように留め付けて行くものである。
具体的には、上記のように立体形成されたフレームFに対し、まず縦覆いシート51を前記進入面FFから上面FU、更に対向する後方面FBまで被せながら、同じシート取り付け表示M1を有した面ファスナ26同士を留め付けて行く。すなわち本実施例では、フレームFの進入面FFをカバーする際に、柱要素2と、進入面FFをカバーする縦覆いシート51に付されたシート取り付け表示M1たる「A」を合わせるように留め付けるものである。また、フレームFの後方面FBをカバーする際に、柱要素2と後方面FBをカバーする縦覆いシート51に付されたシート取り付け表示M1たる「B」を合わせるように留め付けるものである。
一方、横覆いシート52R・52Lは、フレームFの右面FR・左面FLを別々に覆うように、それぞれ取り付けて行くものであり、このときも柱要素2の上部と、横覆いシート52R・52Lとに付された同じシート取り付け表示M1たる「C」・「D」を合わせながら留め付けて行く。これによりフレームFは、底面以外の五面が全てのシールドシート5で覆われるようにカバーされる。
なお、シート取り付け表示M1についても、必ずしもアルファベットを用いる必要はなく、嵌め合い表示M2と異なる種々の記号、文字、数字等を適用することができる。
【0030】
このようにして組立完成した飛沫感染防止用シールド1は、適宜のマット等を敷いた床面や簡易ベッド等の載置面Bの上に設置され、使用者MはフレームFの進入面FFから、ここをカバーしている縦覆いシート51の正面下部をめくり上げながら、頭部及び上半身の一部を入れ込むようにして、仰向け等のライイング姿勢をとる。
そして、この状態で一例として上記図1に示すように、進入面FFを覆うシート下部を自らの脚の上に掛けるように斜めに垂らすことで、進入面FFはシートでカバーされ、外部との緩遮断を行い飛沫感染の防止を図る。
【0031】
ここで上述したように縦覆いシート51と横覆いシート52とが分断されていること、また使用状態では進入面FFを覆う縦覆いシート51の正面下部が斜めになることで、縦覆いシート51と横覆いシート52との間に間隙が形成される。またフレームFに対するシールドシート5の留め付けが部分的であるために、フレームFとシールドシート5との間にも間隙が形成される。このためフレームF内の空間は、完全に外部と遮断されることなく、フレームF内の非密閉状態が保たれ、内部に頭部を収めた使用者Mが酸素不足になる心配もないものである。
このように本発明の飛沫感染防止用シールド1は、内部に入った使用者Mを完全に隔離するものではなく、外部と多少の隙間を有して連通した状態となる。すわなち、本発明の飛沫感染防止用シールド1は、シールド内に頭部を収めた使用者Mが咳をしたり、外部に居る医療従事者と会話をしたりする場合の飛沫を主として防ぐものであり、完全にウイルスを遮断するものでない。また、このために「緩遮断」と称している。
なお、シールドとしての使用後は、衛生保全の観点から他の使用者Mへの再使用は好ましくなく、廃棄することとなるが、本発明の飛沫感染防止用シールド1、特にフレームFの構成部材が基本的に易燃物であるため、環境負荷を最小限に抑えた燃焼処分が行い得るものである。
【0032】
〔他の実施例〕
本発明は以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。
まず、上述した基本の実施例では、フレームFを直方体状に形成するものであったが、フレームFは必ずしも直方体状に形成する必要はない。すなわち人の頭部幅は、肩幅より狭いから、これを考慮して、例えば図3に示すように、フレームFを平面視台形(等脚台形)あるいは三角形状に形成することも可能である。
【0033】
また、柱要素2と横桟要素3との接続構造4は、単なる差し込み孔25への嵌め込みによる接続にとどまらず、嵌合状態をより積極的に補強する構造を採ることもできる。具体的には、例えば図4(a)に示すように、柱要素2において差し込み孔25が設けられている側面板21と対向する側面板21に、受けフラップ41をフレーム内側に張り出させるようにすることが可能である。この場合、差し込み孔25から差し込まれた横桟要素3の端部31内に、当該受けフラップ41を折り込んで挿入することにより、折り込み後の受けフラップ41が横桟要素3の端部31に対し内嵌め状に係止するようになり、柱要素2と横桟要素3との接続がより強化される。
また、この際、差し込み孔25に対向する側面板21に、実質的に放射状の分割スリット42が複数形成されることによって、受けフラップ41が構成され、受けフラップ41は、この交差中心を内側に押し込んで横桟要素3との係止が図られる。更に、このとき例えば図4(a)に示すように、分割スリット42を十字状に形成しておくとともに、受けフラップ41の基部側に円弧状などの保形誘導スリット43を形成しておくことが好ましい。これにより受けフラップ41を内側に折曲げたときに折り曲げ部が直線状にならず、折り曲げ状態、すなわち自立状態を現出し易くなるものである。
【0034】
更に、このような接続構造4をより一層、強固なものとするには、一例として図4(b)に示すように、前記横桟要素3の内径より小径の紙管等を用いた内嵌栓44を用意し、前記受けフラップ41を横桟要素3の端部31に押し込んだ後、その内側に更に当該内嵌栓44を圧入することが好ましい。これにより横桟要素3の端部31は、受けフラップ41の内嵌栓44による内拡状態の維持により、より一層、強固に柱要素2と接続される。
なお、このような受けフラップ41の構成は、差し込み孔25側にも適用することができる。
【0035】
更に、上述した基本の実施例では、横桟要素3を円筒状の紙管で形成したが、横桟要素3は、必ずしもこれに限定されるものではない。すなわち、横桟要素3は、例えば図5に示すように、柱要素2と同様に角筒状の紙管で形成することができる。この場合、横桟要素3も始発状態で偏平な折り畳み状態とすることができ、全ての部材をパッケージで市場に提供・流通させる場合、より一層コンパクトな荷姿として提供することができ、保管・収納も行い易くなる。
また、この場合の接続構造4としては、上記図5の部分拡大図に示すように、柱要素2に形成された差し込みスリット45を適用することができる。また横桟要素3の側面に、外方に張り出し得る係止舌片46を形成しておき、嵌め込み前にこれを外方に突出させておき、柱要素2に嵌め込むことで、係止舌片46の自由端を柱要素2の内側に係止させることも可能である。もちろん、接続構造4は、柱要素2の差し込みスリット45と、横桟要素3の係止舌片46とを組み合わせた両者の差し込みによる手法を採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の飛沫感染防止用シールド1は、例えば緊急災害時に不特定多数の避難者を受け入れ得る緊急避難施設での適用が想定されるが、その他にも小規模の医療施設、より詳細には高度な隔離設備を持たない簡易的な医療施設において、新型コロナウイルスのような感染症の罹患が疑われる患者を診察しなければならない場合などに適用できる。なお、この場合、上述したように本飛沫感染防止用シールド1は、あくまでも緩遮断であり、完全にウイルスを遮断するものでないことから、患者を診察する医療従事者も防護服を装着することが好ましい。
また、本発明の飛沫感染防止用シールド1は、夜行フェリーなど、複数の乗客が相部屋で使う船室などにおいて、感染拡大防止策の一環として適用することもできる。このように本発明の飛沫感染防止用シールド1は、新型コロナウイルス等の感染症に感染した罹患またはこのような感染症への罹患が考えられる患者に使用するだけでなく、感染拡大防止策の一環として、感染していない人の使用も想定される。またそのような観点からすれば、就寝時にマスクを装着したままでは息苦しく感じる人にも適用可能である。因みに、シールドシート5をダーク系の布にしたり、あるいは透明のシールドシート5の上にダーク系の布を掛けたりすれば、アイマスク代わりになり、明るい場所でも安眠することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 飛沫感染防止用シールド
2 柱要素
3 横桟要素
4 接続構造
5 シールドシート

B 載置面
F フレーム
FF 進入面
FB 後方面
FR 右面
FL 左面
FU 上面
M 使用者
M1 シート取り付け表示
M2 嵌め合い表示

21 側面板
22 折線
23 端部フラップ
23a 折込み内フラップ
23b 蓋フラップ
23c 差し込みフラップ
23d 第一押込みフラップ
23e 中折り込みフラップ
23f 押えフラップ
25 差し込み孔
26 面ファスナ

31 端部

41 受けフラップ
42 分割スリット
43 保形誘導スリット
44 内嵌栓
45 差し込みスリット
46 係止舌片

51 縦覆いシート
52 横覆いシート
52R 横覆いシート(右側)
52L 横覆いシート(左側)
図1
図2
図3
図4
図5