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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086612
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】パンツタイプ使い捨て水着
(51)【国際特許分類】
   A41D 7/00 20060101AFI20220602BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20220602BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20220602BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
A41D7/00 Z
A61F13/51
A61F13/49 312Z
A61F13/49 400
A61F13/496
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198726
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 悠人
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA19
3B200BB03
3B200BB11
3B200CA03
3B200DA21
(57)【要約】
【課題】腹部の冷え防止性を向上する。
【解決手段】上記課題は外装体12F,12Bにおける少なくとも前側部分は、胴周り領域Tの60%以上の前後方向LDの寸法で、幅方向WD全体にわたる保温層ILを有しており、保温層ILは中空繊維を含む不織布である、ことを特徴とするパンツタイプ使い捨て水着により解決される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴周り方向に連続する筒状の胴周り領域と、胴周り領域の前側部分の下端から股間部を経て胴周り領域の後側部分の下端に至る中間領域と、ウエスト開口と、左右一対の脚開口とを有するパンツタイプ使い捨て水着であって、
少なくとも前記胴周り領域を形成する外装体と、
前記胴周り領域の前側部分から前記股間部を経て前記胴周り領域の後側部分に至るように、前記外装体に取り付けられた内装体と、
前記内装体に内蔵された吸収体とを備え、
前記外装体における少なくとも前側部分は、前記胴周り領域の60%以上の前後方向の寸法で、幅方向全体にわたる保温層を有しており、
前記保温層は、中空繊維を含む不織布である、
ことを特徴とする、パンツタイプ使い捨て水着。
【請求項2】
前記保温層は、繊度0.5~3.0dtex 、及び中空率が10~40%のポリオレフィン系中空繊維からなる目付け10~20g/m2、及び厚み0.1~0.3mmのスパンボンド不織布である、
請求項1記載のパンツタイプ使い捨て水着。
【請求項3】
前記外装体のウエスト部は、幅方向に沿ってかつ互いに間隔を空けて設けられた複数本の細長状のウエスト弾性部材と、ウエスト弾性部材より内側に存在する一層又は複数層のウエスト内側層と、ウエスト弾性部材より外側に存在する一層又は複数層のウエスト外側層とを有しており、
前記ウエスト内側層のすべて及び前記ウエスト弾性部材は、隣接する層に少なくとも幅方向に連続的に接合されており、
前記ウエスト部は、前記ウエスト内側層及び前記ウエスト外側層に収縮皺の無い展開状態と、前記ウエスト弾性部材とともに幅方向に収縮して前記ウエスト内側層及び前記ウエスト外側層に収縮襞が形成された自然長状態との間で変化することが可能であり、
前記ウエスト内側層のうち最も内側に位置する層は、前記保温層であるとともに、着用者の肌に接する面を形成している、
請求項2記載のパンツタイプ使い捨て水着。
【請求項4】
前記外装体における少なくとも前側部分は、前記保温層より内側に、前記保温層の60%以上の前後方向の寸法で、幅方向全体にわたるカバー層を有しており、
前記カバー層は、着用者の肌に接する面を形成しており、
前記カバー層は、中実繊維のみからなる不織布であり、
前記保温層及び前記カバー層はともに疎水性不織布又は撥水性不織布である、
請求項1~3のいずれか1項に記載のパンツタイプ使い捨て水着。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水遊びや水泳等、水中使用に適したパンツタイプ使い捨て水着に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、乳幼児のプール等での使用を前提としたパンツタイプ使い捨て水着(スイミングパンツとも呼ばれている)が市販されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
このようなパンツタイプ使い捨て水着は、外側に非使い捨ての布製水着を重ねて着用するか、又は外側に何も着用しないで使用することを想定している点で、外側に衣服を重ねて着用する使い捨ておむつとは異なる。
【0004】
つまり、使い捨て水着は、アウターが無いか、あるとしても水着のみで使用されるものであるため、使用時には着用者の体温が低下しやすいことはいうまでもない。
【0005】
しかし、乳幼児の使用において腹部を冷やすことは望ましくないにもかかわらず、着用者の腹部の冷えを防止する使い捨て水着は従来提供されていない。これは、使い捨て水着が、非使い捨ての布製水着と同等の物という自然な認識から、その保温性等に着目できなかったことが要因であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-296372号公報
【特許文献2】特開2005-537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、腹部の冷え防止性を向上すること等にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決したパンツタイプ使い捨て水着は以下のとおりである。
<第1の態様>
胴周り方向に連続する筒状の胴周り領域と、胴周り領域の前側部分の下端から股間部を経て胴周り領域の後側部分の下端に至る中間領域と、ウエスト開口と、左右一対の脚開口とを有するパンツタイプ使い捨て水着であって、
少なくとも前記胴周り領域を形成する外装体と、
前記胴周り領域の前側部分から前記股間部を経て前記胴周り領域の後側部分に至るように、前記外装体に取り付けられた内装体と、
前記内装体に内蔵された吸収体とを備え、
前記外装体における少なくとも前側部分は、前記胴周り領域の60%以上の前後方向の寸法で、幅方向全体にわたる保温層を有しており、
前記保温層は、中空繊維を含む不織布である、
ことを特徴とする、パンツタイプ使い捨て水着。
【0009】
(作用効果)
このように、パンツタイプ使い捨て水着の外装体のうち、少なくとも前側部分の大部分に、中空繊維を含む不織布からなる保温層を設けることにより、入水前(使い捨て水着が水に濡れる前)における、着用者の腹部の冷え防止性を向上させることができる。乳幼児が使い捨て水着を使用する状況として、水泳時の使用もあるが、足先だけを水に入れて遊ぶだけの場合も多くあり、本パンツタイプ使い捨て水着は後者の使用における腹部の冷えを防止するのに適している。
【0010】
<第2の態様>
前記保温層は、繊度0.5~3.0dtex 、及び中空率が10~40%のポリオレフィン系中空繊維からなる目付け10~20g/m2、及び厚み0.1~0.3mmのスパンボンド不織布である、
第1の態様のパンツタイプ使い捨て水着。
【0011】
(作用効果)
中空繊維を含む不織布は特に限定されるものではないが、本態様の範囲内のものが好ましい。
【0012】
<第3の態様>
前記外装体のウエスト部は、幅方向に沿ってかつ互いに間隔を空けて設けられた複数本の細長状のウエスト弾性部材と、ウエスト弾性部材より内側に存在する一層又は複数層のウエスト内側層と、ウエスト弾性部材より外側に存在する一層又は複数層のウエスト外側層とを有しており、
前記ウエスト内側層のすべて及び前記ウエスト弾性部材は、隣接する層に少なくとも幅方向に連続的に接合されており、
前記ウエスト部は、前記ウエスト内側層及び前記ウエスト外側層に収縮皺の無い展開状態と、前記ウエスト弾性部材とともに幅方向に収縮して前記ウエスト内側層及び前記ウエスト外側層に収縮襞が形成された自然長状態との間で変化することが可能であり、
前記ウエスト内側層のうち最も内側に位置する層は、前記保温層であるとともに、着用者の肌に接する面を形成している、
第2の態様のパンツタイプ使い捨て水着。
【0013】
(作用効果)
本態様のようなウエスト弾性部材を有するパンツタイプ使い捨て水着では、着用時には収縮皺を有するウエスト部の内面が着用者の肌に接触する。そして、このような収縮皺の存在により、ウエスト部の内面と肌との間には前後方向に連続する隙間が形成されやすくなる。このような隙間は通気性の向上には好ましいが、使い捨て水着においては腹部の冷えが促進されるおそれや、入水後の水の出入り及びそれによる排泄物の漏出が促進されるおそれがあるため、好ましいものではない。
これに対して、ウエスト部の肌接触面を形成するウエスト内側層が、第2の態様の保温層(つまり特定の中空繊維不織布)であると、同程度の中実繊維の不織布と比べて圧縮されやすくなり、肌接触面に形成される収縮皺の凸部がより低くなる(この現象は当初予想していなかったものであり、保温層の利用を研究する中で偶然に発見したものである)ため、肌面の密着性が上がり、腹部の冷え防止性が向上するとともに、入水後の水の出入り及びそれによる排泄物の漏出を抑制することができる。
【0014】
<第4の態様>
前記外装体における少なくとも前側部分は、前記保温層より内側に、前記保温層の60%以上の前後方向の寸法で、幅方向全体にわたるカバー層を有しており、
前記カバー層は、着用者の肌に接する面を形成しており、
前記カバー層は、中実繊維のみからなる不織布であり、
前記保温層及び前記カバー層はともに疎水性不織布又は撥水性不織布である、
第1~3のいずれか1つの態様のパンツタイプ使い捨て水着。
【0015】
(作用効果)
保温性のみを考慮するならば、可能な限り多くの保温層を積層することが望ましいが、同等の目付けで比較すると中空繊維を含む不織布は中実繊維のみからなる不織布よりも保水性が高いため、肌に接する面が中空繊維の不織布で構成されていると、使い捨て水着が水に濡れた後には水に入っていなくても濡れた感じが持続しやすく、この点で保温性が低下したり、着用感が悪化したりするおそれがある。これに対して、本態様のように中実繊維の不織布からなるカバー層を設けると、使い捨て水着が水に濡れた後でも濡れた感じが持続しにくくなるため好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、腹部の冷え防止性を向上できる等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】展開状態のパンツタイプ使い捨て水着の内面を示す、平面図である。
図2】展開状態のパンツタイプ使い捨て水着の外面を示す、平面図である。
図3図1の2-2断面図である。
図4図1の3-3断面図である。
図5】(a)図1の4-4断面図、及び(b)図1の5-5断面図である。
図6】パンツタイプ使い捨て水着の斜視図である。
図7】展開状態のパンツタイプ使い捨て水着の外面を要部のみ示す、平面図である。
図8】(a)図7の4-4断面図、及び(b)図7の5-5断面図である。
図9】(a)図1の4-4断面図、及び(b)図1の5-5断面図である。
図10】ウエスト部の要部を示す断面図である。
図11】熱伝導試験の要領を示す概略図である。
図12】熱伝導試験結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、パンツタイプ使い捨て水着の一例について、添付図面を参照しつつ詳説する。厚み方向に隣接する各構成部材は、以下に述べる固定又は接合部分以外も、必要に応じて公知のおむつと同様に固定又は接合される。断面図における点模様部分は、この固定又は接合手段としてのホットメルト接着剤等の接着剤を示している。ホットメルト接着剤は、スロット塗布、連続線状又は点線状のビード塗布、スパイラル状、Z状、波状等のスプレー塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)等、公知の手法により塗布することができる。これに代えて又はこれとともに、弾性部材の固定部分では、ホットメルト接着剤を弾性部材の外周面に塗布し、弾性部材を隣接部材に固定することができる。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する固定又は接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。厚み方向の液の透過性が要求される部分では、厚み方向に隣接する構成部材は間欠的なパターンで固定又は接合される。例えば、ホットメルト接着剤によりこのような間欠的な固定又は接合を行う場合、スパイラル状、Z状、波状等の間欠パターン塗布を好適に用いることができ、一つのノズルによる塗布幅以上の範囲に塗布する場合には、幅方向に間隔を空けて又は空けずにスパイラル状、Z状、波状等の間欠パターン塗布を行うことができる。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。
【0019】
また、以下の説明における不織布としては、部位や目的に応じて公知の不織布を適宜使用することができる。不織布の構成繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、芯鞘等の複合繊維も含む)の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができ、これらを混合して用いることもできる。不織布の柔軟性を高めるために、構成繊維を捲縮繊維とするのは好ましい。また、不織布の構成繊維は、親水性繊維(親水化剤により親水性となった繊維を含む)であっても、疎水性繊維若しくは撥水性繊維(撥水剤により撥水性となった繊維を含む)であってもよい。また、不織布は一般に繊維の長さや、シート形成方法、繊維結合方法、積層構造により、短繊維不織布、長繊維不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド(エアスルー)不織布、ニードルパンチ不織布、ポイントボンド不織布、積層不織布(スパンボンド層間にメルトブローン層を挟んだSMS不織布、SMMS不織布等)等に分類されるが、これらのどの不織布も用いることができる。
【0020】
図1図6は、パンツタイプ使い捨て水着の一例を示している。本パンツタイプ使い捨て水着は、前身頃Fの少なくとも胴周り領域Tを構成する長方形の前外装体12F、及び後身頃Bの少なくとも胴周り領域Tを構成する長方形の後外装体12Bと、前外装体12Fから股間部を経て後外装体12Bまで延在するように外装体12F,12Bに取り付けられた内装体200とを備えており、前外装体12Fの両側部と後外装体12Bの両側部とが接合されてサイドシール部12Aが形成されることにより、外装体12F,12Bの前後端部により形成される開口が着用者の胴を通すウエスト開口WOとなり、内装体200の幅方向両側において外装体12F,12Bの下縁及び内装体200の側縁によりそれぞれ囲まれる部分が脚を通す脚開口LOとなるものである。内装体200は、尿等の排泄物等を吸収保持する部分であり、外装体12F,12Bは着用者の身体に対して内装体200を支えるための部分である。また、符号Yは展開状態における水着の全長(前身頃Fのウエスト開口WOの縁から後身頃Bのウエスト開口WOの縁までの前後方向長さ)を示しており、符号Xは展開状態における水着の全幅を示している。
【0021】
本パンツタイプ使い捨て水着では、胴周り方向に連続する筒状の胴周り領域Tは、サイドシール部12Aを有する前後方向範囲(ウエスト開口WOから脚開口LOの上端に至る前後方向範囲)として定まる。また、胴周り領域の前側部分の下端から股間部を経て胴周り領域の後側部分の下端に至る中間領域Lは、脚開口LOを形成する部分の前後方向範囲(前身頃Fのサイドシール部12Aを有する前後方向領域と後身頃Bのサイドシール部12Aを有する前後方向領域との間)として定まる。胴周り領域Tは、概念的にウエスト開口の縁部を形成する「ウエスト部」Wと、これよりも下側の部分である「ウエスト下方部」Uとに分けることができる。通常、胴周り領域T内に幅方向WDの伸縮応力が変化する境界(例えば弾性部材の太さや伸長率が変化する)を有する場合は、最もウエスト開口WO側の境界よりもウエスト開口WO側がウエスト部Wとなり、このような境界が無い場合は吸収体56又は内装体200よりもウエスト開口WO側に延び出た部分がウエスト部Wとなる。これらの前後方向長さは、製品のサイズによって異なり、適宜定めることができるが、一例を挙げると、ウエスト部Wは15~40mm、ウエスト下方部Uは65~120mmとすることができる。一方、中間領域Lの両側縁は被着者の脚周りに沿うようにコ字状又は曲線状に括れており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。この結果、展開状態のパンツタイプ使い捨て水着は、全体として略砂時計形状をなしている。
【0022】
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。内装体200は、図3図5に示されるように、着用者の肌に接するトップシート30と、液不透過性シート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えている。符号40は、トップシート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させるために、トップシート30と吸収要素50との間に設けられた中間シート(セカンドシート)を示しており、符号60は、内装体200の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側部から着用者の肌に接するように延び出た起き上がりギャザー60を示している。
【0023】
(トップシート)
トップシート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、有孔プラスチックシートなどを例示することができる。トップシート30の両側部は、吸収要素50の側縁で裏側に折り返しても良く、また折り返さずに吸収要素50の側縁より側方にはみ出させても良い。
【0024】
トップシート30は、裏側の部材に対する位置ずれを防止する等の目的で、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により裏側に隣接する部材に固定することが望ましい。図示例では、トップシート30はその裏面に塗布されたホットメルト接着剤により中間シート40の表面及び包装シート58のうち吸収体56の表側に位置する部分の表面に固定されている。
【0025】
(中間シート)
中間シート40は、トップシート30を透過した排泄液を吸収体70側へ速やかに移動させるため、及び逆戻りを防ぐために、トップシート30の裏面に接合されているものである。中間シート40及びトップシート30間の接合は、ホットメルト接着剤を用いる他、ヒートエンボスや超音波溶着を用いることもできる。
【0026】
中間シート40としては、不織布を用いる他、多数の透過孔を有する樹脂フィルムを用いることもできる。不織布としては、トップシート30と同様の素材を用いることができるが、トップシート30より親水性が高いものや、繊維密度が高いものが、トップシート30から中間シート40への液の移動特性に優れるため好ましい。例えば、中間シート40としては、エアスルー不織布を好適に用いることができる。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは17~80g/m2が好ましく、25~60g/m2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.0~10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0027】
図示例の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の前後方向長さは、内装体200又は吸収要素50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0028】
中間シート40は、裏側の部材に対する位置ずれを防止する等の目的で、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により裏側に隣接する部材に固定することが望ましい。図示例では、中間シート40はその裏面に塗布されたホットメルト接着剤により包装シート58のうち吸収体56の表側に位置する部分の表面に固定されている。
【0029】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができる。液不透過性シート11には、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材を用いることが好ましい。透湿性を有するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性プラスチックフィルムが広く用いられている。この他にも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂又は疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができる。
【0030】
液不透過性シート11は、図示のように吸収要素50の裏側に収まる幅とする他、防漏性を高めるために、吸収要素50の両側を回り込ませて吸収要素50のトップシート30側面の両側部まで延在させることもできる。
【0031】
(起き上がりギャザー)
起き上がりギャザー60は、内装体200の両側部に沿って前後方向LDの全体にわたり延在し、着用者の肌に接して横漏れを防止するために設けられているものであり、一般に立体ギャザーと呼ばれるものがこれに含まれる。
【0032】
図1図3及び図4に示される起き上がりギャザー60はいわゆる立体ギャザーであり、内装体200の側部から表側に起立するものである。この起き上がりギャザー60は、付け根側部分60Bが幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側部分60Aが幅方向外側に向かって斜めに起立するものであるが、これに限定されるものではなく、全体として幅方向中央側に起立する形態等、適宜の変更が可能である。
【0033】
より詳細に説明すると、図示例の起き上がりギャザー60は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のギャザー不織布62を、先端となる部分で幅方向WDに折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状のギャザー弾性部材63を長手方向に沿って伸長状態で、幅方向WDに間隔を空けて複数本固定してなるものである。起き上がりギャザー60のうち先端部と反対側に位置する基端部(幅方向WDにおいてシート折り返し部分と反対側の端部)は、内装体200における液不透過性シート11より裏側の側部に固定された付根部分65とされ、この付根部分65以外の部分は付根部分65から延び出る本体部分66(折り返し部分側の部分)とされている。また、本体部分66は、幅方向中央側に延びる付け根側部分60Bと、この付け根側部分60Bの先端で折り返され、幅方向外側に延びる先端側部分60Aとを有している。この形態は面接触タイプの起き上がりギャザー60であるが、幅方向外側に折り返されない線接触タイプの起き上がりギャザー60も採用することができる。そして、本体部分66のうち前後方向両端部が倒伏状態でトップシート30の側部表面に対して固定された倒伏部分67とされる一方で、これらの間に位置する前後方向中間部は非固定の自由部分68とされ、この自由部分68の少なくとも先端部に前後方向LDに沿うギャザー弾性部材63が伸長状態で固定されている。
【0034】
以上のように構成された起き上がりギャザー60では、ギャザー弾性部材63の収縮力が前後方向両端部を近づけるように作用するが、本体部分66のうち前後方向両端部が起立しないように固定されるのに対して、それらの間は非固定の自由部分68とされているため、自由部分68のみが図3に矢印で示すように身体側に当接するように起立する。特に、付根部分65が内装体200の裏側に位置していると、股間部及びその近傍において自由部分68が幅方向外側に開くように起立するため、起き上がりギャザー60が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。
【0035】
図示例の起き上がりギャザー60のように、本体部分66が、幅方向中央側に延びる付け根側部分60Bと、この付け根側部分60Bの先端で折り返され幅方向外側に延びる先端側部分60Aとからなる屈曲形態では、倒伏部分67で、先端側部分60Aと付け根側部分60Bとが倒伏状態で接合されるとともに、付け根側部分60Bが倒伏状態でトップシート30に接合される。倒伏部分67における対向面の接合には、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤、及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段の少なくとも一方を用いることができる。この場合において、付け根側部分60B及びトップシート30の接合と、先端側部分60A及び付け根側部分60Bの接合とを同じ手段により行っても、また異なる手段により行っても良い。例えば、付け根側部分60B及びトップシート30の接合をホットメルト接着剤により行い、先端側部分60A及び付け根側部分60Bの接合を素材溶着により行うのは一つの好ましい形態である。
【0036】
ギャザー不織布62としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコーンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは10~30g/m2程度とするのが好ましい。ギャザー弾性部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは470~1240dtexが好ましく、620~940dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、150~350%が好ましく、200~300%がより好ましい。また、図示のように、二つに折り重ねたギャザー不織布62の間に防水フィルム64を介在させることもでき、この場合には防水フィルム64の存在部分においてギャザー不織布62を部分的に省略することもできるが、製品の外観及び肌触りを布のようにするためには、図示例のように、少なくとも起き上がりギャザー60の基端から先端までの外面がギャザー不織布62で形成されていることが必要である。
【0037】
起き上がりギャザー60の自由部分に設けられるギャザー弾性部材63の本数は2~6本が好ましく、3~5本がより好ましい。配置間隔60dは3~10mmが適当である。このように構成すると、ギャザー弾性部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にもギャザー弾性部材63を配置しても良い。
【0038】
起き上がりギャザー60の自由部分68では、ギャザー不織布62の内側層及び外側層の貼り合わせや、その間に挟まれるギャザー弾性部材63の固定に、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段の少なくとも一方を用いることができる。ギャザー不織布62の内側層及び外側層の全面を貼り合わせると柔軟性を損ねるため、ギャザー弾性部材63の接着部以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。図示例では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段によりギャザー弾性部材63の外周面にのみホットメルト接着剤を塗布してギャザー不織布62の内側層及び外側層間に挟むことにより、当該ギャザー弾性部材63の外周面に塗布したホットメルト接着剤のみで、ギャザー不織布62の内側層及び外側層へのギャザー弾性部材63の固定と、ギャザー不織布62の内側層及び外側層間の固定とを行う構造となっている。
【0039】
同様に、起き上がりギャザー60に組み込まれる防水フィルム64とギャザー不織布62との固定や、倒伏部分67の固定についても、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤、及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段の少なくとも一方を用いることができる。
【0040】
図示例の起き上がりギャザー60の寸法は適宜定めることができるが、乳幼児用使い捨て水着の場合は、例えば図3に示すように、起き上がりギャザー60の起立高さ(展開状態における本体部分66の幅方向長さ)W2は15~60mm、特に20~40mmであるのが好ましい。また、起き上がりギャザー60をトップシート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離W1は60~190mm、特に70~140mmであるのが好ましい。
【0041】
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の全体を包む包装シート58とを有する。包装シート58は省略することもできる。
【0042】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100~300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30~120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1~16dtex、好ましくは1~10dtex、さらに好ましくは1~5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、2.54cm当たり5~75個、好ましくは10~50個、さらに好ましくは15~50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いることができる。吸収体56中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。
【0043】
吸収体56は長方形形状でも良いが、図8等にも示すように、前後方向中間に、その前後両側よりも幅が狭い括れ部56Nとを有する砂時計形状をなしていると、吸収体56自体と起き上がりギャザー60の、脚周りへのフィット性が向上するため好ましい。
【0044】
また、吸収体56の寸法は排尿口位置の前後左右にわたる限り適宜定めることができるが、前後方向LD及び幅方向WDにおいて、内装体200の周縁部又はその近傍まで延在しているのが好ましい。なお、符号56Xは吸収体56の全幅を示している。
【0045】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、高吸収性ポリマーを含有しないことが望ましいが、含有させることもできる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子54としては、この種の使い捨て水着に使用されるものをそのまま使用でき、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下のものが望ましく、また、180μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
【0046】
高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0047】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0048】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0049】
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。目付けは、5~40g/m2、特に10~30g/m2のものが望ましい。
【0050】
包装シート58の包装形態は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、吸収体56の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻き付け、且つその前後縁部を吸収体56の前後からはみ出させ、巻き重なる部分及び前後はみ出し部分の重なり部分をホットメルト接着剤、素材溶着等の接合手段により接合する形態が好ましい。
【0051】
(外装体)
図示例の外装体12F,12Bは、前身頃Fの少なくとも胴周り領域Tを構成する部分である長方形の前外装体12Fと、後身頃Bの少なくとも胴周り領域Tを構成する部分である長方形の後外装体12Bとからなり、前外装体12F及び後外装体12Bは股間側で連続しておらず、前後方向LDに離間されたものとなっている。この離間距離12dは例えば150~250mm程度とすることができる。また、図7及び図8に示すように、外装体12が、前身頃Fから後身頃Bにかけて股間を通り連続していてもよい。この場合、外装体は胴周り領域及び中間領域を形成するものとなる。
【0052】
図示例では、前外装体12Fよりも後外装体12Bの方が前後方向寸法が長くなっており、前外装体12Fには中間領域Lと対応する部分を有していないが、後外装体12Bは胴周り領域Tから中間領域L側に延び出た臀部カバー部Cを有している。図示しないが、前外装体12Fにも胴周り領域Tから中間領域L側に延び出る鼠蹊カバー部を設けてもよい。また、図示しないが、前外装体12F及び後外装体12Bの両方が胴周り領域Tから中間領域L側に延び出る部分を有しなくてもよい(前外装体12F及び後外装体12B並びにサイドシール部の前後方向の寸法がすべて同じでもよい)。
【0053】
臀部カバー部Cを設ける場合、後外装体12Bの前後方向LDの長さは適宜定めることができるが、例えばサイドシール部12Aの前後方向LDの長さの1.1~1.5倍とすることができる。
【0054】
外装体12F,12Bは、図4及び図5に示されるように、後述する弾性部材15~19の外側及び内側にそれぞれ隣接する外側シート層及び内側シート層がホットメルト接着剤や溶着等の接合手段により接合されたものである。外側シート層及び内側シート層は、図5に示す例や図8に示す例のように2枚のシート材12S,12Bにより形成する他、図9に示すように、一枚のシート材12Sにより形成することもできる。すなわち、後者の場合、外装体12F,12Bの一部又は全部において、ウエスト開口WOの縁(股間側の縁としても良い)で折り返された一枚のシート材12Sの内側の部分及び外側の部分により内側シート層及び外側シート層がそれぞれ形成される。図5に示す例は、前者と後者とを組み合わせたものであり、内側シート層を形成するシート材12Hはウエスト部の下端部までしか延在していないが、外側シート層を形成するシート材12Sは、内側シート層のシート材12Hのウエスト開口WO側を回り込んでその内側に折り返されており、この折り返し部分12rは内装体200のウエスト開口WO側の端部上までを被覆するように延在されている。この場合、ウエスト部Wの大部分において、外側シート層を形成するシート材及び内側シート層を形成するシート材は、共通の一枚のシート材12Sとなり、これ以外の部分においては、別々のシート材12S,12Hとなる。一方、図8に示す例は前者に相当するものであり、内側シート層を形成するシート材12Hはウエスト開口WOの縁までしか延在していないが、外側シート層を形成するシート材12Sは、内側シート層のシート材12Hのウエスト開口WO側の縁を回り込んでその内側に折り返されており、この折り返し部分12rは内装体200のウエスト開口WO側の端部上までを被覆するように延在されている。
【0055】
外側シート層及び内側シート層に用いるシート材12S,12Hとしては、特に限定無く使用できるが不織布が好ましく、不織布を用いる場合、その繊維目付けは10~30g/m2程度とするのが好ましい。
【0056】
(伸縮領域・非伸縮領域)
外装体12F,12Bには、着用者の胴周りに対するフィット性を高めるために、外側シート層及び内側シート層間に弾性部材15~19が設けられ、この弾性部材15~19の伸縮を伴って幅方向WDに弾性伸縮する伸縮領域A2が形成されている。この伸縮領域A2では、自然長の状態では外側シート層、内側シート層、及びこれに接合されたシート層が弾性部材15~19の収縮に伴って収縮し、皺又は襞が形成されており、弾性部材15~19の長手方向に伸長すると、外側シート層、内側シート層、及びこれに接合されたシート層が皺なく伸び切る所定の伸長率まで伸長が可能である。弾性部材15~19としては、糸ゴム等の細長状の弾性部材(図示例)のほか、帯状、網状、フィルム状等、公知の弾性部材を特に限定なく用いることができる。弾性部材15~19としては合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。
【0057】
外装体12F,12Bにおける厚み方向に隣接するシート層の貼り合わせや、その間に挟まれる弾性部材15~19の固定には、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段の少なくとも一方を用いることができる。例えば、弾性部材15~19は伸縮領域における伸縮方向の両端部のみ、外側シート層及び内側シート層に固定したり、弾性部材15~19の通過部分にのみホットメルト接着剤を配置して、外側シート層及び内側シート層への弾性部材15~19の固定と、外側シート層及び内側シート層間の固定とを行ってもよい。ただし、使い捨て水着の場合には、入水後も十分な強度を維持できることが望ましいため、外側シート層及び内側シート層の対向面の一方に面状やスパイラル状にホットメルト接着剤を塗布するとともに、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段により弾性部材15~19の外周面にもホットメルト接着剤を塗布し、外側シート層及び内側シート層の間に挟むことにより、外側シート層及び内側シート層への弾性部材15~19の固定と、外側シート層及び内側シート層の接合とを行うのは好ましい。
【0058】
図示例の弾性部材15~19についてより詳細に説明すると、外装体12F,12Bのウエスト部Wにおける外側シート層及び内側シート層間には、幅方向WDの全体にわたり連続するように、複数のウエスト弾性部材17が前後方向に間隔を空けて取り付けられている。また、ウエスト弾性部材17のうち、ウエスト下方部Uに隣接する領域に配設される1本又は複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。このウエスト弾性部材17としては、太さ155~1880dtex、特に470~1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05~1.5mm2、特に0.1~1.0mm2程度)の糸ゴムを、4~12mmの間隔で3~22本程度設けるのが好ましく、これによるウエスト部Wの幅方向WDの伸長率は150~400%、特に220~320%程度であるのが好ましい。また、ウエスト部Wは、その前後方向LDの全てに同じ太さのウエスト弾性部材17を用いたり、同じ伸長率にしたりする必要はなく、例えばウエスト部Wの上部と下部で弾性部材17の太さや伸長率が異なるようにしてもよい。
【0059】
また、外装体12F,12Bのウエスト下方部Uにおける外側シート層及び内側シート層間には、細長状の弾性部材からなるウエスト下方弾性部材15,19が複数本、前後方向に間隔を空けて取り付けられている。
【0060】
ウエスト下方弾性部材15,19としては、太さ155~1880dtex、特に470~1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05~1.5mm2、特に0.1~1.0mm2程度)の糸ゴムを、1~15mm、特に3~8mmの間隔で5~30本程度設けるのが好ましく、これによるウエスト下方部Uの幅方向WDの伸長率は200~350%、特に240~300%程度であるのが好ましい。
【0061】
また、後外装体12Bの臀部カバー部Cにおける外側シート層及び内側シート層間には、細長状の弾性部材からなるカバー部弾性部材16が取り付けられている。臀部カバー部Cはカバー部弾性部材16により幅方向WD中央側に収縮している。
【0062】
カバー部弾性部材16としては、太さ155~1880dtex、特に470~1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05~1.5mm2、特に0.1~1.0mm2程度)の糸ゴムを設けるのが好ましく、これによる臀部カバー部Cの幅方向WDの伸長率は150~400%、特に250~350%であるのが好ましい。また、カバー部弾性部材16の本数は適宜定めることができるが、3~10本が好ましく、3~5本がより好ましい。
【0063】
他方、前外装体12Fに鼠径カバー部を設ける場合には、臀部カバー部Cと同様にカバー部弾性部材を設けることができる。
【0064】
図示例のウエスト下方部Uや臀部カバー部Cのように、吸収体56を有する前後方向範囲に弾性部材15,16,19を設ける場合には、その一部又は全部において吸収体56の幅方向WDの収縮を防止するために、吸収体56と幅方向WDに重なる部分の一部又は全部を含む幅方向中間(好ましくは内外接合部201,202の全体を含む)が非伸縮領域A1とされ、その幅方向両側が伸縮領域A2とされる。ウエスト部Wは幅方向WDの全体にわたり伸縮領域A2とされるのが好ましいが、ウエスト下方部Uと同様に、幅方向中間に非伸縮領域A1を設けても良い。
【0065】
このような伸縮領域A2及び非伸縮領域A1は、内側シート層と、外側シート層との間に、弾性部材15~17,19を供給し、弾性部材15,16,19を伸縮領域A2における少なくとも伸縮方向の両端部でホットメルト接着剤を介して固定し、非伸縮領域A1となる領域では固定せず、非伸縮領域A1となる領域において、弾性部材15,16,19を加圧及び加熱により幅方向中間の1か所で切断するか、又は多数個所で細かく切断し、伸縮領域A2に伸縮性を残しつつ非伸縮領域A1では伸縮性を殺すことにより構築することができる。前者の場合、図4に示すように、非伸縮領域A1には、伸縮領域A2の弾性部材15,16,19から連続する切断残部が不要弾性部材18として単独で自然長まで収縮した状態で、外側シート層及び内側シート層間に残ることとなり、後者の場合、図示しないが、伸縮領域A2の弾性部材15,16,19から連続する切断残部、及び両方の伸縮領域A2の弾性部材15,16,19と連続しない弾性部材の切断片が不要弾性部材として単独で自然長まで収縮した状態で、外側シート層及び内側シート層間に残ることになる。
【0066】
(カバー不織布)
外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨て水着では、前外装体12F及び後外装体12Bとの間に内装体200が露出するため、内装体200の裏面に液不透過性シート11が露出しないように、前外装体12Fと内装体200との間から、後外装体12Bと内装体200との間にかけて、内装体200の裏面を覆うカバー不織布13を備えていることが好ましい。
【0067】
カバー不織布13に用いる不織布は、例えば外装体12F,12Bの素材と同様のものを適宜選択することができる。
【0068】
カバー不織布13の前後方向範囲は特に限定されず、図2及び図5に示すように、内装体200の前端から後端までの全体にわたり前後方向LDに延在していてもよく、図8に示すように、前外装体12Fと内装体200とが重なる領域の前後方向中間位置から後外装体12Bと内装体200とが重なる領域の前後方向中間位置まで前後方向LDに延在していてもよい。また、図8に示す例の場合、カバー不織布13と前外装体12Fとの重なり部分の前後方向長さ13y、及びカバー不織布13と後外装体12Bとの重なり部分の前後方向長さ13yは適宜定めることができるが、通常の場合それぞれ20~40mm程度とすることができる。
【0069】
カバー不織布13の幅方向範囲は、液不透過性シート11の裏面露出部分を隠しうる範囲とされる。このため、図示例では、左右の起き上がりギャザー60の基端の間に液不透過性シート11が露出するため、少なくとも一方の起き上がりギャザー60の基端部の裏側から他方の起き上がりギャザー60の基端部の裏側までの幅方向範囲を覆うようにカバー不織布13が設けられている。これにより、液不透過性シート11をカバー不織布13と起き上がりギャザー60のギャザー不織布62とで隠蔽することができる。また、カバー不織布13の幅方向両端部が起き上がりギャザー60の基端部の裏側を覆うのではなく、ギャザー不織布62がカバー不織布13の幅方向両端部の裏側を覆うようにしても、カバー不織布13とギャザー不織布62とで液不透過性シート11を隠蔽することは可能である。この場合、カバー不織布13の両側部がギャザー不織布62により覆われるため、カバー不織布13の両側部が液不透過性シート11から剥がれにくくなるという利点がある。
【0070】
カバー不織布13の内面及び外面は、それぞれ対向面にホットメルト接着剤を介して接着することができる。カバー不織布13の固定領域は、カバー不織布13の前後方向全体及び幅方向全体とするほか、一部を非固定とすることもできる。例えばカバー不織布13の幅方向両端部が非固定であると、起き上がりギャザー60の影響で吸収体56の側部がいくらか収縮した状態でもその影響を受けにくくなり、カバー不織布13に皺や折れが形成されにくいという利点がもたらされる。この場合におけるカバー不織布13の幅方向両端部の非固定部分の幅は適宜定めればよいが、例えば3~10mm、好ましくは5~8mmとすることができる。
【0071】
(内外接合部)
内装体200の外装体12F,12Bに対する固定は、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により行うことができる。図示例では、内装体200の裏面、つまりこの場合は液不透過性シート11の裏面及び起き上がりギャザー60の付根部分65に塗布されたホットメルト接着剤を介して外装体12F,12Bの内面に対して固定されている。この内装体200と外装体12F,12Bとを固定する内外接合部201,202は、図2に示すように、両者が重なる領域のほぼ全体に設けることができ、例えば内装体200の幅方向両端部を除いた部分に設けることもできる。
【0072】
(保温層)
外装体12F,12Bは、中空繊維を含む不織布からなる保温層ILを有しており、この保温層ILが少なくとも前身頃Fの胴周り領域Tの60%以上の前後方向LDの寸法で、幅方向WD全体にわたっていると、入水前(使い捨て水着が水に濡れる前)における、着用者の腹部の冷えを抑制することができるため好ましい。保温層ILの前後方向LDの寸法は、胴周り領域Tの前後方向LDの寸法の75%以上であると、より好ましい。
【0073】
図5及び図8に示す例の外装体12F,12Bでは、前身頃Fの胴周り領域Tの60%以上の前後方向LDの寸法で、幅方向WD全体にわたる素材としては、外側シート層及び内側シート層を形成する2枚のシート材12S,12Hが存在する。よって、これらのシート材12S,12Hのいずれか一方又は両方を、中空繊維を含む不織布とすることにより、上述の保温層ILを一層又は二層形成することができる。一方、図9に示す例の外装体12F,12Bを構成するシート材12Sは一枚であるため、そのシート材12Sを中空繊維を含む不織布とすることにより保温層ILを二層形成することができる。保温層ILは、製品外面の一部又は全部を形成していてもよいし、製品内面側及び製品外面側の少なくとも一方において、一部又は全部が他の層により覆われていてもよい。
【0074】
保温性のみを考慮するならば、可能な限り多くの保温層ILを積層することが望ましい。例えば、図示例の場合、外装体12F,12Bを構成するシート材12S,12Hの両方を中空繊維を含む不織布層とすることにより、外装体を構成する不織布層の全てを保温層ILとすることができる。しかし、同等の目付けで比較すると中空繊維を含む不織布は中実繊維のみからなる不織布よりも保水性が高いため、肌に接する面が中空繊維の不織布で構成されていると、使い捨て水着が水に濡れた後には水に入っていなくても濡れた感じが持続しやすく、この点で保温性が低下したり、着用感が悪化したりするおそれがある。同等の目付け・親水性で比較すると中空繊維を含む不織布は中実繊維のみからなる不織布よりも保水性が高いことの理由は定かではないが、おそらく中空繊維の方が表面積が大きいことが原因と考えられ、両者がともに疎水性又は撥水性不織布であっても、中空繊維を含む不織布の方が保水性が高くなる。したがって、保温層ILより内側に、保温層ILの60%以上(より好ましくは75%以上)の前後方向の寸法で、幅方向全体にわたるカバー層CLを設け、このカバー層CLにより着用者の肌に接する面を形成するとともに、このカバー層CLを中実繊維のみからなる不織布により形成すると、使い捨て水着が水に濡れた後でも濡れた感じが持続しにくくなるため好ましい。
【0075】
保温層ILを形成する中空繊維不織布の保温性は適宜定めることができるが、JIS L 1927:2020「繊維製品の接触冷感性評価方法」に準じて測定される最大熱流束(qmax)が0.05~0.08J/cm2sec、特に0.05~0.07J/cm2secであると保温性に優れる(熱伝導性が低い)ため好ましい。最大熱流速は例えばカトーテック社のKES-F7 サーモラボにより測定することができる。
【0076】
中空繊維を含む不織布は、所望の保温性を達成しうる限り、各種特性を調整するために中実繊維が混合されていてもよいが、中空繊維100%(中実繊維含まず)の不織布が軽量性や柔軟性の観点から好適である。
【0077】
中空繊維の中空率は、所望の保温性を達成しうる限り適宜定めることができるが、10~40%であることが好ましく、15~25%であるとより好ましい。中空率が低すぎると保温性を確保しにくくなり、高過ぎると強度が不十分となるおそれがある。なお、中空率は、繊維の切断面を電子顕微鏡により撮像し、得られた画像に基づいて、中空部を含む繊維全体の断面積と、中空部の断面積とを求め、以下の式により算出される値の、繊維100本分の平均値を意味する。
中空率(%) = (中空部の断面積 / 繊維全体の断面積) × 100
【0078】
中空繊維の繊維径は、所望の保温性を達成しうる限り適宜定めることができるが、上述の中空率の場合、平均繊維径は9~23μmであることが好ましく、13~19μmであるとより好ましい。なお、平均繊維径は、中空繊維不織布を光学顕微鏡で観察し、任意に選んだ100本の繊維について測定される繊維径の平均値を意味する。
【0079】
中空繊維の繊度は、所望の保温性を達成しうる限り適宜定めることができるが、ポリオレフィン系繊維の場合、0.5~3.0dtexであることが好ましく、1.0~2.0dtexであるとより好ましい。上述のカバー層CLを設ける場合、中実繊維の繊度は0.5~4.0dtexであることが好ましく、1.0~3.0dtexであるとより好ましい。
【0080】
中空繊維の断面形状は、円形断面であっても、異形断面(C形や、4~8つ程度のフィンを有するもの等)であってもよい。また、中空繊維の中空部は、繊維の外周面に通じる孔を一つ又は多数有していてもよいし、このような開口を有していなくてもよい。さらに、繊維の長さ方向に連続する中空部は、繊維の中心又は偏心位置に一本のみ設けられていても、複数本設けられていてもよい。
【0081】
中空繊維の材質は適宜選択することができるが、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維から、特に限定なく選択することができ、これらを混合して用いることもできる。中空繊維は非捲縮繊維であっても、捲縮繊維であってもよい。また、中空繊維は疎水性繊維若しくは撥水性繊維(撥水剤により撥水性となった繊維を含む)であることが好ましい。保温層ILに用いる中空繊維不織布は、強度の観点からはスパンボンド不織布等の長繊維不織布であることが好ましいが、短繊維不織布であってもよい。中空繊維不織布の繊維の結合(交絡方法)方法は公知のものを特に限定なく用いることができるが、強度の観点から、加熱エンボスやエアスルー等のサーマルボンドが好適である。中実繊維の材質も適宜定めることができ、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維から、特に限定なく選択することができる。
【0082】
中空繊維不織布の目付けは適宜定めることができるが、10~20g/m2であると好ましく、10~18g/m2であるとより好ましい。また、中空繊維不織布の厚みは適宜定めることができるが、0.1~0.3mmであると好ましく、0.15~0.25mmであるとより好ましい。上述のカバー層CLを設ける場合、中実繊維の目付けは適宜定めることができるが、10~30g/m2であると好ましく、15~25g/m2であるとより好ましい。
【0083】
図5図8図9に示す例のウエスト部Wは、ウエスト弾性部材17より内側に存在するウエスト内側層(図5及び図9に示す例では一層、図8に示す例では複数層となっている)と、ウエスト弾性部材17より外側に存在するウエスト外側層(図8及び図9に示す例では一層のみ、図5に示す例では一層の部分と複数層の部分とが存在)とを有し、ウエスト内側層のすべて及びウエスト弾性部材17は、隣接する層に少なくとも幅方向WDに連続的に接合されている。そして、このようなウエスト部Wは、ウエスト内側層及びウエスト外側層に収縮皺の無い展開状態と、ウエスト弾性部材17とともに幅方向WDに収縮してウエスト内側層及びウエスト外側層に収縮襞が形成された自然長状態との間で変化することが可能であり、着用時にはある程度の収縮皺を有するウエスト部Wの内面が着用者の肌に接触する。また、このような構造のウエスト部Wでは、ウエスト部Wの収縮皺は図10に示す形状となる。しかし、このような収縮皺が大きく形成されると、ウエスト部Wの内面と肌との間には前後方向LDに連続する隙間が形成されやすくなり、腹部の冷えが促進されるおそれや、入水後の水の出入り及びそれによる排泄物の漏出が促進されるおそれがある。
【0084】
これに対して、ウエスト内側層のうち最も内側に位置する層が、特に圧縮されやすい特定の中空繊維不織布、すなわち、繊度1.0~2.0dtex 、及び中空率が10~40%のポリオレフィン系中空繊維からなる目付け10~20g/m2、及び厚み0.1~0.3mmのスパンボンド不織布であると、同程度の中実繊維の不織布と比べて圧縮されやすく(例えば圧縮エネルギーWCが0.025~0.040N・cm/cm2程度、特に0.028~0.040N・cm/cm2程度と大きく)なり、ウエスト内側層に形成される収縮皺の凸部がより低くなる。この結果、ウエスト部Wにおける肌面の密着性が上がり、腹部の冷え防止性が向上するとともに、入水後の水の出入り及びそれによる排泄物の漏出を抑制することができる。
【0085】
例えば、図示例では、ウエスト内側層のうち最も内側に位置する層がシート材12Sにより形成されているため、このシート材12Sとして上述の特定の中空繊維不織布を用いることにより、ウエスト内側層に形成される収縮皺の凸部がより低くなる結果、ウエスト部における肌面の密着性が上がるようになる。
【0086】
<効果確認試験>
図1図6に示す構造を有し、外装体12F,12Bの外側に位置するシート材12Sのみ異なる2種類のパンツタイプ使い捨て水着(サンプル1、サンプル2)を作製し、下記の熱伝導試験及びウエスト部の厚み測定を行った。
【0087】
サンプル1は、外装体12F,12Bの外側に位置するシート材12Sとして中空繊維不織布を用いたものであり、サンプル2は、外装体12F,12Bの外側に位置するシート材12Sとして中実繊維不織布を用いた以外は、サンプル1と同様とした。表1に、サンプル1及び2の使い捨て水着で外装体12F,12Bのシート材12Sとして使用したスパンボンド不織布の仕様を示す。サンプル1及び2の使い捨て水着では、外装体12F,12Bの内側に位置するシート材12Hは、繊度2.0dtex、目付け15g/m2、厚み0.18mmのPPスパンボンド不織布(円形断面の中実繊維、捲縮無し)とした。
【0088】
サンプル1及び2のウエスト弾性部材17は、前身頃F及び後身頃Bともに、太さ580dtexのスパンデックスであり、伸長率280%の伸長状態で外側シート層及び内側シート層に対して固定した。また、ウエスト弾性部材17は、前身頃F及び後身頃Bともに、6mmの間隔(最もウエスト開口に近いウエスト弾性部材17とウエスト開口との前後方向の間隔は4mm)で6本設けた。
【0089】
サンプル1及び2のウエスト下方弾性部材15,19及びカバー部弾性部材16は、前身頃F及び後身頃Bともに、太さ430dtexのスパンデックスであり、伸長率300%の伸長状態で外側シート層及び内側シート層に対して固定した。前身頃Fにおけるウエスト下方弾性部材19は、5mmの間隔(最もウエスト開口に近いウエスト下方弾性部材19とウエスト開口との前後方向の間隔は39mm)で18本設けた。後身頃Bにおけるウエスト下方弾性部材15は、5mmの間隔(最もウエスト開口に近いウエスト下方弾性部材15とウエスト開口との前後方向の間隔は39mm)で18本設けた。後身頃Bにおけるカバー部弾性部材16は、10mmの間隔(最もウエスト開口側のカバー部弾性部材16と最もウエスト開口から遠いウエスト下方弾性部材15との前後方向の間隔は5mm)で3本設けた。
【0090】
サンプル1及び2におけるウエスト弾性部材17、ウエスト下方弾性部材15,19、及びカバー部弾性部材16は、その長手方向に連続的に外周面にホットメルト接着剤を0.05g/mの割合で塗布し、外側シート層及び内側シート層に対して固定した。また、ウエスト部Wにおいては、折り返し部分12rを対向面に固定するためのホットメルト接着剤を5g/m2の割合でスパイラルパターンで塗布した。内外接合部202(図2参照)は、内装体200と外装体12F,12Bとが重なる部分のほぼ全体にわたる矩形領域に、3g/m2の割合でシグネチャーパターンでホットメルト接着剤を塗布して形成した。
【表1】
【0091】
(熱伝導試験)
図11に示すように、自然長状態の使い捨て水着サンプル100における前身頃Fと後身頃Bとの間に温度測定センサ101を挟み、前身頃F及び後身頃Bの間の空間とサンプル外部の空間との間でウエスト開口WO及び脚開口LOを通じた空気の出入りがないように、ウエスト開口WO及び脚開口LOをガムテープ102で塞いだ。温度測定センサ101には株式会社ティアンドディの温湿度センサTHA-3001を用い、このセンサを同社のデータロガーTR-72nwに取り付けて測定した。また、温度測定センサ101は、吸収体56及び外装体12Fと重なるように配置(図11参照)した。この状態で、55℃の恒温槽に入れて静置し、温度測定センサによる測定結果を経時的に取得した。
【0092】
(ウエスト部の凹凸観察及び厚み測定)
使い捨て水着サンプルの後外装体12Bを、左右のサイドシール部12Aの幅方向WD中央側に隣接する部位で前後方向LDに沿って切断した後、前外装体12Fを自然長の状態で平坦な面に載置し、ウエスト部Wにおける左右のサイドシール部12A間の幅方向WDの寸法を定規で計測し、第1の寸法とした。続いて、前外装体12Fの左右のサイドシール部12Aをそれぞれ展開状態で引張試験機にセットした一対のつかみ具でつかみ、前外装体12Fが平坦で、かつサイドシール部12Aが互いに平行な状態を維持しつつ、幅方向WDに第1の寸法の2倍(伸長率200%)まで伸長し、この状態で、デジタルマイクロスコープ(例えばキーエンス社製VHX-1000等)を用いて、前外装体12Fの表面に沿い、かつウエスト開口WOの縁に対して直交する方向から、ウエスト開口WOの縁を撮影し、得られた画像に基づいて、ウエスト開口WOの縁の任意の3か所の見かけの厚みを計測し、その平均値をウエスト部Wの厚みとした。
【0093】
(試験結果)
熱伝導試験の測定結果は図12に示すとおりとなった。この結果から、外装体12F,12Bに中空繊維不織布からなる保温層ILを一層有するサンプル1は、中空繊維不織布の層を有しないサンプル2と比較して保温性に優れることが判明した。
【0094】
また、ウエスト部Wの200%伸長時の厚みは、ウエスト部Wの最内面及び最外面に特定の中空繊維不織布の層を有するサンプル1では0.5mmとなり、中空繊維不織布の層を有しないサンプル2では0.7mmとなった。また、ウエスト部Wの150%伸長時の凹凸を目視観察した結果、サンプル1はサンプル2と比較してウエスト部Wの最内面に形成される収縮皺の凸部が明らかに低く(凹部が浅く)なっていることが確認された。
【0095】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
【0096】
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
【0097】
・「表側」とは着用した際に着用者の肌に近い方を意味し、「裏側」とは着用した際に着用者の肌から遠い方を意味する。
【0098】
・「表面」とは部材の、着用した際に着用者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とは着用した際に着用者の肌から遠い方の面を意味する。
【0099】
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
【0100】
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿(尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したもの)49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter-MAX ME-500)でゲル強度を測定する。
【0101】
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0102】
・不織布等(上述のウエスト部を除く)の「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
【0103】
・吸水量は、JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
【0104】
・吸水速度は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
【0105】
・「展開状態」とは、収縮(弾性部材による収縮等、あらゆる収縮を含む)や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
【0106】
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【0107】
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、パンツタイプ使い捨て水着に利用できるものである。
【符号の説明】
【0109】
11…液不透過性シート、12A…サイドシール部、12B…後外装体、12F…前外装体、13…カバー不織布、16…カバー部弾性部材、17…ウエスト弾性部材、18…不要弾性部材、200…内装体、201,202…内外接合部、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、56…吸収体、58…包装シート、60…起き上がりギャザー、60A…先端側部分、60B…付け根側部分、62…ギャザー不織布、67…倒伏部分、68…自由部分、F…前身頃、B…後身頃、A1…非伸縮領域、A2…伸縮領域、C…臀部カバー部、L…中間領域、LD…前後方向、T…胴周り領域、U…ウエスト下方部、W…ウエスト部、WD…幅方向、WO…ウエスト開口、LO…脚開口、IL…保温層、CL…カバー層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12