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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086618
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】着脱装置
(51)【国際特許分類】
   E21F 17/00 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
E21F17/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198733
(22)【出願日】2020-11-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-27
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
(71)【出願人】
【識別番号】391061646
【氏名又は名称】株式会社流機エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 章
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孔明
(57)【要約】
【課題】トンネル工事用機械に測定機器を容易に取り付けたり、取り外したりできるようにする。
【解決手段】測定機器3を支持する支持体4と、前記支持体4の裏側に設けられ、トンネル工事用機械2に付く付着手段10と、前記支持体4の一方側から横方向外側へ延び出た延出体5と、を有する着脱装置1であり、前記延出体5は、前記支持体4に固定された固定部11と、前記固定部11から前記支持体4の横方向外側へ延出する外側部分12と、前記固定部11から前記支持体4の横方向内側へ延出する内側部分13と、を備え、前記付着手段10を介して前記支持体4が前記トンネル工事用機械2に固定された状態で、前記延出体5の前記外側部分12を前記支持体4の表側へ起立させると、前記延出体5の前記内側部分13が前記支持体4の裏側へ倒伏し、前記支持体4の一方側を浮き上がらせて、前記支持体4と前記トンネル工事用機械2の固定が解かれる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル工事用機械に対して測定機器を着脱するための着脱装置であって、
前記測定機器を支持する支持体と、
前記支持体の裏側に設けられ、前記トンネル工事用機械に付く付着手段と、
前記支持体の一方側から横方向外側へ延び出た延出体と、を有し、
前記延出体は、
前記支持体に固定された固定部と、
前記固定部から前記支持体の横方向外側へ延出する外側部分と、
前記固定部から前記支持体の横方向内側へ延出する内側部分と、を備え、
前記付着手段を介して前記支持体が前記トンネル工事用機械に固定された状態で、前記延出体の前記外側部分を前記支持体の表側へ起立させると、前記延出体の前記内側部分が前記支持体の裏側へ倒伏し、前記支持体の一方側を浮き上がらせて、前記支持体と前記トンネル工事用機械の固定を解く構成としたことを特徴とする着脱装置。
【請求項2】
前記延出体の少なくとも前記内側部分の裏側に、前記延出体の前記内側部分の内側先端部よりもさらに横方向内側に延出する延出緩衝材が設けられ、
前記延出体の前記内側部分を前記支持体の裏側へ倒伏した状態で、前記延出体の内側先端部と前記トンネル工事用機械の間に前記延出緩衝材が挟み込まれる構成とした請求項1記載の着脱装置。
【請求項3】
前記延出体は前記測定機器の持ち運びに用いる取っ手である請求項1または2記載の着脱装置。
【請求項4】
前記支持体と前記測定機器の間に複数の球体を内蔵した緩衝体を設けた請求項1~3のいずれか1項に記載の着脱装置。
【請求項5】
前記測定機器の外側に前記測定機器を覆うカバーを設けた請求項1~4のいずれか1項に記載の着脱装置。



















【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル工事用機械に測定機器を取り付けたり、取り外したりするための着脱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事を行う際にトンネル坑内の作業環境を把握するために粉塵計、湿度計、ガス濃度計などが用いられている。トンネル工事の作業者がこれらの機器を手で持って計測していたが、切羽では重機等が稼働していて、計測中に接触事故のリスクが高いため、無人で長時間自動計測する必要性が高まっている。具体的には、2021年4月1日から施行される予定の「ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドライン」では、トンネル切羽の近くで稼働するトンネル工事用機械にこれらの機器を取り付け、トンネル工事のサイクル(一般的に(1)削孔、(2)装薬、(3)発破、(4)ズリ出し、(5)当り取り、(6)一次コンクリート吹付け、(7)支保工建て込み、(8)二次コンクリート吹付け、(9)ロックボルト打設からなる)の全ステップの作業環境の計測を勧奨している。
【0003】
なお、本発明に関する先行技術として、下記特許文献1に開示された発明がある。この発明は車載型作業環境測定システムに関するものである。具体的には、走行および測定が開始されると、3次元ジャイロ、車軸回転センサ、プロペラ風速計、熱線風速計、絶対温度センサ、光透過率視界センサ、粉塵濃度センサ、温度センサ、ガスサンプルチューブからのデータがパソコンに取り入れられる。パソコンは、3次元ジャイロ、 車軸回転センサからのデータを用いて真のトンネル内の測定位置を求め、車軸回転センサ、プロペラ風速計、熱線風速計からのデータを用いて真のトンネル通過風速を求め、モニタ画面上に粉塵、ガス、風速などのトンネル内分布を表示する。このような構成にすることで、広範囲の作業現場の蜜な測定点で、多種類の計測項目を短時間に測定することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-242500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記ガイドラインでは、半月に一回の頻度で、定期的にトンネル坑内の作業環境を計測することを義務付けている。計測で得られたデータから加重時間平均濃度を算出し、その濃度を目標管理濃度(2mg/m3)と突き合わせて、換気設備の改善による対策を講じることになる。
【0006】
計測方法には様々なものが存在する。
(1)定点測定
切羽から10m~50m離れた地点までの範囲で、両端及び中間の左右側壁付近の計6か所で、地上高50cmから150cmまでの位置で測定する。この方法では計測器及び設置治具が6台必要であり、切羽付近では発破飛石・吹付けコンクリート飛散物・漏水の影響や重機との接触損傷のリスクがある。また6点の設置・撤去の手間やデータ分析及びメンテナンスなどコストがかかる。
【0007】
(2)個人サンプラー
作業員2名以上に計測器及ぶデータロガーを装着して計測する。この方法では計測器を装着することによって作業性が悪くなることや、切羽から離脱する場合があることなどの課題がある。
【0008】
(3)切羽で稼働する車両・機械に計測器を2台以上装着
計測器が車両・機械から受ける振動で損傷したり、車両・機械から計測器が脱落したりするリスクがあり対策が必要である。
【0009】
実際に作業環境を計測する際は、上記(1)~(3)のいずれかの方法で行ったり、それらの方法を組み合わせて行ったりする。そして、NATM工法の作業工程1サイクル(4~5時間)を連続して測定し、加重時間平均濃度を算出して、環境・換気設備の良否を評価する。
【0010】
なお、切羽で稼働する車両・機械(トンネル工事用機械ともいう)に計測器を装着する方法では、トンネル工事の各工程で使用するトンネル工事用機械が異なり、使用しないトンネル工事用機械は切羽近傍から後退させ、使用するトンネル工事用機械は切羽近傍へ前進させる。トンネル坑内の作業環境(特に汚染されやすい切羽近傍の作業環境)を正確に把握するためには、切羽近傍に位置するトンネル工事用機械に測定機器を取り付ける必要があるが、前述のように切羽近傍に位置するトンネル工事用機械は頻繁に入れ替わるため、その都度測定機器を異なるトンネル工事用機械に付け替えなければならない。
【0011】
従来はハンディタイプの測定機器を用いていたため、トンネル工事用機械に対して容易に着脱できる測定機器が存在しないという問題がある。
【0012】
前述の先行特許文献1も、トンネル工事用機械に対して容易に着脱できる測定機器を開示したものではない。
【0013】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、トンネル工事用機械に測定機器を容易に取り付けたり、取り外したりできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
(第1の態様)
トンネル工事用機械に対して測定機器を着脱するための着脱装置であって、
前記測定機器を支持する支持体と、
前記支持体の裏側に設けられ、前記トンネル工事用機械に付く付着手段と、
前記支持体の一方側から横方向外側へ延び出た延出体と、を有し、
前記延出体は、
前記支持体に固定された固定部と、
前記固定部から前記支持体の横方向外側へ延出する外側部分と、
前記固定部から前記支持体の横方向内側へ延出する内側部分と、を備え、
前記付着手段を介して前記支持体が前記トンネル工事用機械に固定された状態で、前記延出体の前記外側部分を前記支持体の表側へ起立させると、前記延出体の前記内側部分が前記支持体の裏側へ倒伏し、前記支持体の一方側を浮き上がらせて、前記支持体と前記トンネル工事用機械の固定を解く構成としたことを特徴とする着脱装置。
【0015】
(作用効果)
トンネル工事用機械に測定機器を着脱できるようにするため、本態様では着脱装置に付着手段と延出体を設けた。付着手段は支持体の裏側に設けられており、支持体をトンネル工事用機械に付着させるために用いられる。他方、延出体は支持体の一方側から横方向に延び出ており、トンネル工事用機械から支持体を取り外す際はこの延出体の外側部分を支持体の表側へ起立させる。そうすると、延出体の外側部分の起立に伴って延出体の内側部分が支持体の裏側へ倒伏し、支持体の一方側を浮き上がらせる。このような延出体を設けたため、トンネル工事用機械から測定機器を容易に取り外すことができる。特に、トンネル工事用機械から測定機器が容易に落下しないようにするためには付着手段の付着力を強力にすることが好ましいが、このような強力な付着力を有する付着手段を用いた場合であっても、前述の延出体の作用によってトンネル工事用機械から測定機器を容易に取り外すことができるという利点がある。
【0016】
(第2の態様)
前記延出体の少なくとも前記内側部分の裏側に、前記延出体の前記内側部分の内側先端部よりもさらに横方向内側に延出する延出緩衝材が設けられ、
前記延出体の前記内側部分を前記支持体の裏側へ倒伏した状態で、前記延出体の内側先端部と前記トンネル工事用機械の間に前記延出緩衝材が挟み込まれる構成とした前記第1の態様の着脱装置。
【0017】
(作用効果)
トンネル工事用機械から測定機器を取り外す際は、延出体の内側部分が支持体の裏側へ倒伏した状態になる。延出体の内側部分が倒伏すると、延出体の内側部分の先端部、すなわち延出体の内側先端部がトンネル工事用機械の壁面に当たってその壁面を傷つけるおそれがある。
【0018】
このような問題を解決するために、本態様では延出体の内側部分の裏側に延出緩衝材を設ける構成とした。この延出緩衝材は、延出体の内側先端部よりもさらに横方向内側に延び出ている。そして、延出体の内側部分を支持体の裏側へ倒伏すると、延出体の内側先端部とトンネル工事用機械の間に延出緩衝材が挟み込まれた状態となるため、延出緩衝材の緩衝作用によって、延出体の内側先端部がトンネル工事用機械の壁面を傷つけることを防止できる。
【0019】
(第3の態様)
前記延出体は前記測定機器の持ち運びに用いる取っ手である前記第1または第2の態様の着脱装置。
【0020】
(作用効果)
本態様では、延出体とは別に取っ手(測定機器の持ち運びに用いる取っ手をいう。以下同様。)を設けるのではなく、延出体を取っ手としても機能させることとした。このような構成にすることで、イニシャルコストを低減できることはもちろんのこと、着脱装置全体の重量を減らすことができる。着脱装置は様々なトンネル工事用機械に取り付けたり取り外したりするために頻繁に持ち運ぶことを前提としたものであるため、その重量を軽くできることは大きな利点である。また、着脱装置全体の重量を軽くすることによって、トンネル工事用機械から測定機器を取り外しやすくなる。
【0021】
(第4の態様)
前記支持体と前記測定機器の間に複数の球体を内蔵した緩衝体を設けた前記第1~第3のいずれか1つの態様の着脱装置。
【0022】
(作用効果)
トンネル工事中の坑内の道路は舗装されていない。そのような荒れた状態の道路の上を走行するトンネル工事用機械に測定機器を取り付けた場合、走行中のトンネル工事用機械が揺れる度に測定機器に激しい振動が加わる。本発明者の試算によれば、測定機器にかかる衝撃値(G値)は約3G~5Gにもなる。そのため、長い間トンネル工事用機械に測定機器を取り付けた場合、測定機器が故障するリスクが高いという問題がある。
【0023】
そこで、本態様では支持体と測定機器の間に緩衝体を設ける構成とした。例えば、測定機器を取り付けたトンネル工事用機械がオフロード状態の坑内を移動した場合であっても、この緩衝体を設けたことによって、その衝撃が測定機器に伝わりにくくなるため、測定機器が壊れにくくなるという利点がある。
【0024】
(第5の態様)
前記測定機器の外側に前記測定機器を覆うカバーを設けた前記第1~第4のいずれか1つの態様の着脱装置。
【0025】
(作用効果)
発破時に生じる飛び石やコンクリート吹付け時に生じる跳ね返りコンクリートが測定機器に衝突して損傷するリスクがある。また、トンネル工事中の坑内は防水処理されていないため、漏水によって測定機器に水がかかり故障するリスクもある。
【0026】
そこで、本態様では測定機器を覆うカバーを設けた。カバーを設けたことにより、障害物、例えば発破時に飛散する飛石から測定機器を保護することができる。また、トンネル坑内に水漏れが生じた場合であっても、そのような水から測定機器を保護することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、トンネル工事用機械に測定機器を容易に取り付けたり、取り外したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の好適な実施例に係る着脱装置(測定機器を取り付けた状態)の平面図である。
図2】本発明の好適な実施例に係る着脱装置(測定機器を取り付けた状態)の側面図である。
図3】本発明の好適な実施例に係る着脱装置(測定機器を取り付けた状態)の正面図である。
図4】本発明の好適な実施例に係る着脱装置のヒンジ部分の拡大側面図である。
図5】着脱装置を取り外す過程を示す説明図であり、着脱装置がトンネル工事用機械に付いた状態を示す側面図である。(カバーと測定機器の表示は省略する。図6図7においても同様。)
図6】着脱装置を取り外す過程を示す説明図であり、着脱装置の延出体の外側部分を支持体の表側へ起立させる途中段階の状態を示す側面図である。
図7】着脱装置を取り外す過程を示す説明図であり、着脱装置の延出体の外側部分を支持体の表側へ起立させた後の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る着脱装置1の好適な実施例について、図面を参照しながら説明する。以下の説明及び図面は、本発明の実施形態の一例を示したものにすぎず、本発明の内容をこの実施形態に限定して解釈すべきではない。
【0030】
(トンネル工事用機械2)
トンネル工事用機械2はトンネル工事に用いる機械である。例えば、ホイールジャンボ(主として削孔工程、装薬工程、支保工建て込み工程、ロックボルト打設工程で用いる)、火薬運搬車(主として装薬工程で用いる)、ホイールローダー(主としてズリ出し工程で用いる)、ブレーカー(主として当り取り工程で用いる)、バックホウ(主として当り取り工程で用いる)、吹付けロボット(主として一次吹付け工程や二次吹付け工程で用いる)、ミキサー車(主として一次吹付け工程や二次吹付け工程で用いる)、エレクター(主として支保工建て込み工程で用いる)、モルタル台車(主としてロックボルト打設工程で用いる)などを挙げることができる。トンネル工事用機械2は前述のものに限られず、例えばロードヘッダや高所作業車なども含まれる。
【0031】
(測定機器3)
測定機器3はトンネル坑内の作業環境(主として切羽近傍の環境)を把握するために用いる。例えば、粉塵濃度を計測する粉塵計、温度や湿度を計測する温湿度計(温度計単体や湿度計単体でも良い)、ガス濃度を計測するガス濃度計を挙げることができる。測定機器3は前述のものに限られず、例えば照度計や風速計なども含まれる。
【0032】
(着脱装置1)
本発明に係る着脱装置1を各図に示す。この着脱装置1は前記トンネル工事用機械2に対して前記測定機器3を着脱するために用いるものである。この着脱装置1は測定機器3を支持する支持体4と、この支持体4の一方側から横方向外側に延び出た延出体5とを有する。
【0033】
(支持体4)
支持体4は測定機器3を支持するものである。図示した実施例の支持体4は横置きした板4であり、その板4の中央部分の上に緩衝体7を置き、緩衝体7の上に測定機器3を置くことによって、測定機器3を間接的に支持している。もちろんこのような支持形態に限られるものではない。例えば緩衝体7を省き、板4の中央部分の上に測定機器3を直に置いて、測定機器3を直接的に支持してもよい。そのほか、支持体4を板4にするのではなく、例えば測定機器3を両側から挟み込んで把持する形態にしてもよい。
【0034】
支持体4の材料は特に限定されるものではないが、測定機器3を支持するために一定程度の剛性を備えたものが好ましい。また、付着手段10としてネオジム磁石等の強力な磁力線を発するものを用いた場合は、その磁力線が測定機器の電子回路に影響し、データの信頼性が損なわれることがあるため、磁力線の遮断または減衰をするため、支持体4として鋼板・磁力吸収塗材(フェライト塗装)を用いることが好ましい。磁力線を発しない付着手段10を用いた場合は、支持体4として、例えば金属、木材、プラスチック等を用いてもよい。
【0035】
(緩衝体7)
図示した実施例のように支持体4と測定機器3の間に緩衝体7を設けることが好ましい。支持体4が揺れたときにその振動が測定機器3に伝わりにくくなるからである。前述したように、トンネル工事中のトンネル坑内の路面は、大小様々な石などが散らばったオフロード状態であり、そのような路面の上をトンネル工事用機械2が移動するため、トンネル工事用機械2に装着した測定機器3は揺れやすいという問題がある。一般的に測定機器3は揺れに強い機械ではないため、測定機器3をトンネル工事用機械2に装着した状態で移動すると、測定機器3が故障する確率が高い。このような不具合を防止するためには、支持体4と測定機器3の間に緩衝体7を設けることが有効である。
【0036】
図示した緩衝体7は箱体6の内部に計6個の球体8を収めたものである。この箱体6は球体8が外部へ落下しないように所定の空間内に保持する役割を有している。この箱体6の材料は特に限定されないが、例えばターポリン、ゴム、プラスチック等を用いることができる。箱体6自体が撓む性質を有していることによって、トンネル工事用機械2が揺れた場合であっても、その振動が測定機器3に到達することを防ぐことができる。なお、箱体6の材料は必ずしも撓む性質を有している必要はなく、硬質の材料を用いても良い。ただし、そのような硬質の箱体6を用いた場合は、緩衝体7の緩衝作用を発揮させるため、箱体6の上面と下面を設けずに開放状態とし(側面の枠だけがある状態)、箱体6の内部に収納した球体8が直接測定機器3と板4に接した状態にすることが好ましい。もしくは、箱体6の上面の一部と下面の一部にそれぞれ穴を設け、箱体6の上面に設けた穴から球体8の上部が上方に飛び出るとともに、箱体6の下面に設けた穴からも球体8の下部が下方に飛び出た状態とし、箱体6の内部に収納した球体8が直接測定機器3と板4に接した状態にすることが好ましい。
【0037】
図示した緩衝体7は箱体6の内部に計6個の球体8が設けられているが、この球体8の個数は特に限定されず、5個以下にしたり、7個以上にしたりしてもよい。球体8の個数が多くなるほど、緩衝愛7が振動を和らげる効果が高くなるため好ましい。
【0038】
緩衝体7の緩衝作用を発揮させるため、この球体8に弾力性を持たせることが好ましい。例えば球体8として、ゴムからなるバルーンを用いたり、テニスボールのような球技用のボールを用いたりしてもよい。そのほか、スポンジボール等の公知の材料を用いてもよい。
【0039】
球体8がバルーンからなる場合、その内圧は測定機器3の重量に合わせて調整することが好ましい。例えば、測定機器3の重量が重い場合は測定機器3の重量に耐えるために球体8の内圧を高くし、反対に測定機器3の重量が軽い場合は弾力性を上げるために球体8の内圧を一定程度低くすることが好ましい。
【0040】
球体8は任意の粒径のものを用いることができるが、粒径が大きくなるにつれて緩衝体7の高さが高くなり、緩衝体7の上に載せる測定機器3のバランスが取りづらくなるため、小さな粒径の球体8を用いることが好ましい。具体的には、粒径が80mm以下の球体8を用いることが好ましく、60mm以下の球体8を用いることがより好ましい。なお、球体8の粒径が小さすぎると、振動が加わった際に、その揺れを十分に和らげることができない可能性がある。そのため、球体8の粒径は所定の長さ以上にすることが好ましい。具体的には、粒径が30mm以上の球体8を用いることが好ましく、50mm以上の球体8を用いることがより好ましい。
【0041】
なお、図示した緩衝体7の箱体6はゴムでできているため、各球体8の上部は箱体6の上面の裏側に接しており、各球体8の下面は板4の上面と接している。そして、トンネル工事用機械2が揺れて、支持体4から緩衝体7に揺れが伝わると、緩衝体7の箱体6と球体8がともに撓むことによってその揺れを軽減させ、測定機器3が過度に揺れ動くことを防ぐ。
【0042】
以上の説明においては、箱体6に球体8を収納した緩衝体7を例に説明したが、このような構成の緩衝体7に限られるものではない。例えば、緩衝体7としてバネを用いたり、梱包などに用いられるエアークッション(プチプチ(登録商標)など)を用いたり、小さなエアーバッグ(内部に空気が入ったビニール袋等)が集合したものを用いたり、スポンジ等の公知の材料を用いてもよい。
【0043】
(カバー9)
図示した実施例では緩衝体7の上にカバー9を設けている。そして、このカバー9の中に測定機器3を収納している。カバー9の側壁の一部には貫通孔17が設けられており、測定機器3の一部3Aが貫通孔17を通ってカバー9の外側に突出した状態になっている。カバー9の外側に突出した測定機器3の突出部分3Aは、例えばトンネル抗内を漂う大気中の粉塵等を採取し、その粉塵濃度を測定機器3の本体部分3Bが分析する。
【0044】
以上のように、測定機器3の周囲をカバー9で覆うことによって、発破時の飛石等から測定機器を守ることができるため、測定機器3の故障頻度を低くすることができる。
【0045】
(付着手段10)
支持体4の裏側には支持体4をトンネル工事用機械2に付けるための付着手段10が設けられている。この付着手段10はトンネル工事用機械2に対して繰り返し付け外しできるものであれば特に限定されない。例えば磁石、吸盤、マジックテープなどを用いることができる。例示したもののうちの磁石は、トンネル工事用機械2に付けた後に剥がれづらく、また繰り返し着脱した場合でも付着力が低下しづらいため好ましい。
【0046】
図示した実施例では、付着手段10として磁石10を用いている。この磁石10はトンネル工事用機械2(トンネル工事用機械2の金属部分)に張り付いて、支持体4をトンネル工事用機械2に固定する。測定機器5が落下しないようにするため、この磁石10はトンネル工事用機械2に強く張り付くものが好ましい。ただし、トンネル工事用機械2に張り付く力が強すぎる磁石10を用いると、トンネル工事用機械2から支持体4を取り外しにくくなるため、張り付く力が強すぎるものも好ましくない。また、測定機器3を持ち運びやすくするために、重量が軽い磁石10を用いることが好ましい。以上のことから、磁石10としてネオジム磁石、フェライト磁石などを用いることが好ましい。もちろんこのような磁石10に限られるものではなく、公知の他の磁石を用いても良い。
【0047】
付着手段10の取り付け位置は特に限定されないが、支持体4全体の付着バランスを考慮して配置することが好ましい。そのため、図示した実施例では、支持体4が四角形の板からなるため、その板の四隅に付着手段10を設けることが好ましい。なお、付着手段10の高さが十分でない場合は、支持体4と付着手段10の間にスペーサー18を挟みこませても良い。付着手段10の高さをある程度確保することによって、トンネル工事用機械の表面から受ける熱伝導を少なくすることができる。
【0048】
(延出体5)
図示した実施例では、支持体4の一方側から横方向外側に延び出た延出体5が設けられている。具体的には、支持体4の一方側端部の上に固定部材14(図面に例示したものは蝶番である)の他端部14Aを固定するとともに、スペーサー15を間に挟んでこの固定部材14の一端部14Cを延出体5に固定している。すなわち、上から順番に、固定部材14の一端部14C、スペーサー15、延出体5という順序になるように積層されて固定されている。
【0049】
延出体5のうちの支持体4と固定された部分(図面に例示した態様ではスペーサー15と接している部分)を固定部11といい、その固定部11から支持体4の横方向CD外側へ延出する部分(例えば図2では固定部11よりも右側に位置する部分)を外側部分12といい、その固定部11から支持体4の横方向CD内側へ延出する部分(例えば図2では固定部11よりも左側に位置する部分)を内側部分13という。
【0050】
トンネル工事用機械2に測定機器3を取り付ける際は、トンネル工事用機械2の壁面(上壁面でも側壁面でもよい)に付着手段10をつけることによって、測定機器3をトンネル工事用機械2に固定する。図5に示した例では、トンネル工事用機械2の上壁面(ボンネット部分の壁面)に磁石10をくっつけることによって、測定機器3をトンネル工事用機械2に固定している。この図に示した例では、支持体4がトンネル工事用機械2に固定された状態では、延出体5が横方向に横たわった状態になっている。すなわち延出体5は略水平状態になっている。
【0051】
トンネル工事用機械2から測定機器3を取り外すときは、図6図7に示すように、延出体5の外側部分12を支持体4の表側(図示例では上側)へ起立させると、それと同時に、延出体5の内側部分13が支持体4の裏側(図示例では下側)へ倒伏する。すなわち、延出体5の内側部分13が支持体4の下側へ回り込む。なぜならば、延出体5の外側部分12と内側部分13は繋がっているからである。そうすると、延出体5の内側部分13の内側端部がトンネル工事用機械2の壁面に押し付けられた状態になり、支持体4の一方側端部を浮き上がらせる。図示例では支持体4の一方側端部に磁石10が設けられているが、その磁石10が浮き上がった状態になり、その結果、支持体4とトンネル工事用機械2の固定が解かれる。図示例では支持体4の多端側端部にも磁石10が設けられているが、その磁石10の一方側(図2でいうところの右側)も少し浮いた状態になるため、トンネル工事用機械2から測定機器3を容易に取り外すことができる。
【0052】
トンネル工事用機械2に測定機器3を取り付けた後、その測定機器3が外れて落下しないように、付着手段10として付着力の高いものを用いることが好ましい。このような付着力10が高い付着手段10を設けたとしても、前述のように延出体5を支持体4の表側へ起立させるだけで容易に測定機器3を取り外すことができるという利点がある。
【0053】
なお、図示した延出体5は、固定部材14たる蝶番の軸部14Bを中心にして回転することが可能である。この固定部材14は蝶番に限られるものではなく、延出体5を回転させるものであれば他の部材を用いても良い。例えば、可撓性のゴム、プラスチック、皮革などを用いることもできる。
【0054】
延出体5の回転軸(図示した実施例では蝶番の軸部14Bが回転軸になる)から延出体5の内側部分13の内側端縁までの距離L1は、延出体5の内側部分13の下面からトンネル工事用機械2の接地面までの距離L2よりも長く設定することが好ましい。延出体5の内側部分13を倒伏させたときに、延出体5の内側端部13Aがトンネル工事用機械2の接地面に接することができるようにするためである。なお、前記の延出体5の内側端部13Aがトンネル工事用機械2の接地面に接するとは、延出体5の内側端部13Aがトンネル工事用機械2の接地面に直接接することはもちろんのこと、延出体5の内側端部13Aが延出緩衝材16を介してトンネル工事用機械2の接地面に接することも含む。
【0055】
また、図示した延出体5は支持体4の(高さ方向HDの)下側に設けているが、このような態様に限れるものではない。例えば、延出体5を支持体4と同じ高さに設けたり、延出体5を支持体4よりも高い位置に設けたりしてもよい。延出体5を支持体4と同じ高さ、または支持体4よりも高い位置に設けた場合、トンネル工事用機械2から測定機器3を取り外す際に、延出体5の内側部分13が倒伏してトンネル工事用機械2の壁面に当接できるようにするため、延出体5の内側部分13が回転する際の通り道となる部分に支持体4を設けないことが好ましい。例えば、支持体4の一部に切り欠き部(図示しない)を設け、延出体5の内側部分13がその支持体4の切り欠き部を通ってトンネル工事用機械2の壁面まで倒伏するようにすることが好ましい。
【0056】
なお、図示例の態様の延出体5は板状をしている。この延出体5は取っ手を兼ねている。延出体5として取っ手を用いることで、延出体5を起立させた後、持ち替えることなく、測定機器3つきの着脱装置1をそのまま取り外して持ち運ぶことができるという利点がある。すなわち、延出体5と取っ手を別々のものにした場合は、延出体5を起立させた後に、延出体5から手を離して取っ手に持ち替え、その後に取っ手を持って持ち運ぶ必要があり、動作が煩雑になる。延出体5として取っ手を用いることで、このような煩雑さを解消することができる。延出体5として取っ手を用いることで、前述のようなイニシャルコストの低減、重量の低下等の利点も確保できる。
【0057】
(延出緩衝材16)
延出体5の内側部分13の裏側に、延出体5の内側部分13の内側先端部13Aよりもさらに横方向内側(図2では左側)に延出する延出緩衝材16を設けることが好ましい。この延出緩衝材16は、延出体5の固定部11や外側部分12の裏側にも設けても良いが、少なくとも内側部分13の裏側に設けることが好ましい。
【0058】
図7に示すように、延出体5の内側部分13を支持体4の裏側へ倒伏した状態で、延出体5の内側先端部13Aとトンネル工事用機械2の壁面の間に延出緩衝材16が挟み込まれる構成にすることで、延出体5によってトンネル工事用機械2の壁面が傷つくことを防止できる。
【0059】
このような延出緩衝材16の材料としては、緩衝作用を生じさせるようなものであれば特に限定されず、例えばフッ素樹脂、シリコンゴム(滑り性)などを用いることができる。なお、図2等に示した延出緩衝材16は板状をしている。
【0060】
(その他)
カバー9と緩衝体7の間の固定、緩衝体7と支持体4の間の固定、支持体4とスペーサー18と付着手段10の間の固定、支持体4と固定部材14の間の固定、固定部材14とスペーサー15と延出体5の固定は、ボルトやナット等の公知の連結方法によって固定され、その手法は特に限定されない。また、延出体5と延出緩衝材16の固定方法も特に限定されず、例えば接着剤等の公知の手段によって固定することができる。図3等に示す実施例では、箱体6、支持体4、スペーサー18、付着手段10をネジで連結した態様を示している。また、図4等に示す実施例では、支持体4と固定部材14の他端部14Cをリベット20で連結するとともに、固定部材14の一端部14Cとスペーサー15と延出体5をリベット20で連結するとともに、延出体5と延出緩衝材16を接着剤で接着している。その他の部分の固定方法は表示を省略している。
【符号の説明】
【0061】
1:着脱装置、2:トンネル工事用機械、3:測定機器(計測器)、3A:(測定機器の)突出部分、3B:(測定機器の)本体部分、4:支持体、5:延出体、6:箱体、7:緩衝体、8:球体、9:カバー、10:付着手段、11:固定部、12:外側部分、13:内側部分、13A:延出体の内側先端部、14:固定部材、14A:(固定部材の)他端部、14B:(固定部材の)軸部、14C:(固定部材の)一端部、15:スペーサー、16:延出緩衝材、17:貫通孔、18:スペーサー、19:ネジ、20:リベット、LD:縦方向、CD:横方向、HD:高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7