(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086619
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】電子ビームを生成するための装置および3D印刷装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/147 20060101AFI20220602BHJP
H01J 1/16 20060101ALI20220602BHJP
H01J 37/06 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
H01J37/147 E
H01J1/16
H01J37/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020198734
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】520471449
【氏名又は名称】リソチェンコ,フィタリーユ
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】リソチェンコ,フィタリーユ
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA35
5C101BB09
5C101DD09
5C101EE22
5C101EE65
(57)【要約】 (修正有)
【課題】長い熱カソードを使用することで大電流を得る一方で偏向ユニットによってビームを点状に形成することによって加速電圧を低下させ高エネルギーX線の発生を抑える。
【解決手段】電子ビーム4を発生させるための装置1は細長いワイヤ状の熱カソードであって、カソード電極2およびアノード電極3の間に熱カソードから放出される電子を加速するために電圧が印加され、アノード電極3の開口部を通過した電子ビーム4は偏向ユニットで偏向されることによって、電子ビーム4の断面は長手方向の伸びが小さくなり横方向の伸びが大きくなるように変えられ、特に長手方向の伸びと横方向の伸びとがほぼ同じになるように変えられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビーム(4)を発生させるための装置(1)であって、
装置(1)の動作中に電子ビーム(4)を出射する、細長いワイヤ状の熱カソードであって、その細長い形状のゆえに、伝播方向に垂直に、細長い線形の断面を有し、長手方向の伸びが横方向よりも明らかに大きい熱カソードと、
カソード電極(2)と、
アノード電極(3)であって、特に、熱カソードから出射される電子ビーム(4)が通過可能である開口部(8)があり、装置の動作中に、カソード電極(2)とアノード電極(3)の間に、熱カソードから放出される電子を加速するために、電圧が印加されるアノード電極(3)と、
アノード電極(3)の開口部を通過して入射された電子ビーム(4)を偏向させることが可能である偏向ユニットであって、電子ビーム(4)の断面は、装置の動作中に、偏向ユニットによって、長手方向の伸びが小さくなり、横方向の伸びが大きくなるように変えられ、特に、長手方向の伸びと横方向の伸びとがほぼ同じになるように、好ましくは、電子ビーム(4)が回転対称な断面を有するように変えられる、偏向ユニットと、を備える装置(1)。
【請求項2】
偏向ユニットが、少なくとも1つの偏向電極(9a,9b,9c,9d;16,16b,16d;17,17a,17c)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
少なくとも1つの偏向電極(9a,9b,9c,9d)は、アノード電極(3)の開口部(8)を通過した電子ビーム(4)が、少なくとも1つの偏向電極(9a,9b,9c,9d)によって反射されるように構成される、および/または装置(1)内に配設されている、ことを特徴とする請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの偏向電極(9a,9b,9c,9d)は、アノード電極(3)に対して負の電位を有し、特にカソード電極(2)と同電位であり、好ましくはカソード電極(2)と同じ電圧源に接続されていることを特徴とする、請求項2または3に記載の装置(1)。
【請求項5】
偏向ユニット、特に少なくとも1つの偏向電極(9a,9b,9c,9d)は、アノード電極(3)の開口部(8)を通過する電子ビーム(4)が複数の部分ビーム(10a,10b,10c,10d)に分割されるように構成されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項6】
複数の部分ビーム(10a,10b,10c,10d)が、作業領域(13)において重なり合うように偏向ユニットが構成されていることを特徴とする、請求項5に記載の装置(1)。
【請求項7】
偏向ユニットは、少なくとも1つの偏向電極(9a,9b,9c,9d)に対して正の電位を有し、少なくとも1つの偏向電極(9a,9b,9c,9d)との相互作用の後に電子を加速することが可能である、少なくとも1つのさらなる電極(11)を備え、さらなる電極(11)は、特に、少なくとも1つの偏向電極(9a,9b,9c,9d)から出射される電子ビーム(4)が通過することが可能である開口部(12)を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項8】
偏向ユニットは、互いに対向する少なくとも2つの偏向電極(16,16b,16d;17,17a,17c)を備え、偏向電極(16,16b,16d;17,17a,17c)は、特に、電子ビーム(4)の伝搬方向において、さらなる電極(11)の後段に配設され、電子ビーム(4)を偏向させるために、互いに対向して配設された少なくとも2つの偏向電極(16,16b,16d;17,17a,17c)の間に、電圧、特に交流電圧を印加することが可能であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
偏向ユニットは、電子ビーム(4)の伝搬方向において、互いに対向する少なくとも2つの偏向電極(16,16b,16d;17,17a,17c)の後段に配設された少なくとも1つのさらなる電極(18)を備え、さらなる電極は、特に、電子ビーム(4)が通過可能である開口部(19)を有していることを特徴とする、請求項8に記載の装置(1)。
【請求項10】
熱カソード、カソード電極(2)およびアノード電極(3)の構造および/または制御が、ピアス電子銃の構造および/または制御に対応していることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項11】
カソード電極(2)は、熱カソードを形成するワイヤの長手方向において、セグメント(7)に分割されていることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項12】
電子ビーム(4)を発生させるための少なくとも1つの装置(1)と、
3D印刷のために電子ビーム(4)に曝される出発材料(20)が供給される、または供給可能な作業領域(13)であって、作業領域(13)は、電子ビーム(4)が出発材料(20)に衝突するように3D印刷装置内に配設されており、特に出発材料(20)は、棒状に構成され、金属からなる、または金属を含む、作業領域(13)とを含む、空間的に広がる製品を製造するための3D印刷装置であって、
電子ビーム(4)を発生させる装置(1)が、請求項1~11のいずれか1項に記載の装置(1)であることを特徴とする、3D印刷装置。
【請求項13】
電子ビーム(4)を発生させるための複数の装置(1)を備え、これらの装置は、3D印刷装置の動作中に、その電子ビーム(4)が異なる方向から出発材料(20)に衝突するように、3D印刷装置内に配設されていることを特徴とする、請求項12に記載の3D印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビームを生成するための装置、および請求項12の前文に従った、空間的に拡張された製品を製造するための3D印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3D印刷に適用可能な電子ビームを発生させるための装置が知られている。その装置の場合、特に、電子ビームが、金属棒材料として形成された出発材料に当たり、それによってその出発材料を局所的に溶融する。したがって、層状に積み重ねて製造すべき対象物を作製するために、予め定められた場所に、出発材料を作業領域内に置いておくことが可能である。
【0003】
原則として、最大100kVの電圧を使用して電子を加速することは不利であることが分かっており、電子が出発物質に当たると、最大100keVのエネルギーのX線が生成される。このX線の遮蔽には、多大な費用を要する。さらにまた、そのような電子ビームの高出力密度は、金属出発材料の部分的な蒸発につながる可能性があるため、問題を引き起こす可能性がある。さらにまた、通常電子ビームを偏向させるために使用される磁石は、作業領域における電子ビームの走査速度を低いものしか許容しない。
【発明の概要】
【0004】
本発明の基礎となる課題は、冒頭で述べたタイプの装置であって、より害の少ないビームを生成する、および/または3D印刷プロセスのために、より適した装置を作成することである。さらにまた、そのような装置を備える、冒頭で述べたタイプの3D印刷装置を提供することである。
【0005】
これは、本発明に従えば、請求項1の特徴を備えた、冒頭で述べたタイプの装置、および請求項12の特徴を備えた、冒頭で述べたタイプの3D印刷装置によって達成される。下位の請求項は、本発明の好ましい実施形態に関する。
【0006】
請求項1に従えば、装置は、
装置の動作中に電子ビームを出射する、細長いワイヤ状の熱カソードであって、その細長い形状のゆえに、伝播方向に垂直に、細長い線形の断面を有し、長手方向の伸びが横方向よりも明らかに大きい熱カソードと、
カソード電極と、
アノード電極であって、特に、熱カソードから出射される電子ビームが通過可能である開口部を有し、装置の動作中に、熱カソードから出射される電子を加速するために、カソード電極とアノード電極の間に電圧が印加されるアノード電極と、
アノード電極の開口部を通過して入射された電子ビームを偏向させることが可能である偏向ユニットであって、電子ビームの断面は、装置の動作中に偏向ユニットによって、長手方向の伸びが小さくなり、横方向の伸びが大きくなるように変えられ、特に、長手方向の伸びと横方向の伸びとがほぼ同じになるように、好ましくは、電子ビームが回転対称な断面を有するように変えられる、偏向ユニットと、を備える。
【0007】
細長い熱カソードを使用することによって、線形断面の電子ビームが生成される。さらにまた、細長い熱カソードを使用することによって、熱カソードから出射される電子ビームの電流は、実質的に点状の熱カソードの場合よりも著しく大きくなる可能性がある。たとえば、1Aの電流に達し得る。これによって、加速電圧をたとえば10kV~15kV低下させることが可能である。その結果、3D印刷の出発材料に電子ビームが当たった場合、高エネルギーのX線ビームがないので、装置の広範なシールドを行う必要がない。それでも、作業領域内の電子ビームは、比較的、点状または回転対称といえるビームに成形されるので、出発物質を効果的に溶融することが可能である。
【0008】
偏向ユニットは、少なくとも1つの偏向電極を含んで構成することが可能である。少なくとも1つの偏向電極は、特に、アノード電極の開口部を通過して入射した電子ビームが少なくとも1つの偏向電極によって反射されるように、構成することが可能である、および/またはそのようになるように装置内に配設することが可能である。磁場による偏向とは対照的に、電極による偏向によって、実質的により電子ビームの著しく高い走査速度が、作業領域で達成される。典型的に適用される偏向電極の構成の場合、偏向電極の容量が非常に小さいので、120kHzまでの偏向周波数を達成可能である。
【0009】
少なくとも1つの偏向電極がアノード電極に対して負の電位を有し、特にカソード電極と同じ電位にあり、好ましくはカソード電極と同じ電圧源に接続されてなる構成としてよい。同じ電圧源に接続することによって、電子が作業領域の方向に加速される前に、偏向電極によって大幅に減速されることを保証可能である。
【0010】
偏向ユニット、特に少なくとも1つの偏向電極は、アノード電極の開口部を通過した電子ビームがいくつかの部分ビームに分割されるように構成することが可能である。特に、複数の部分ビームを作業領域において重ね合わせることが可能である。いくつかの部分ビームに分割し、それらを作業領域において重ね合わせることによって、線形断面の電子ビームを比較的効果的に、回転対称な断面を有する電子ビームに変換することが可能である。
【0011】
偏向ユニットは、少なくとも1つの偏向電極と比較して正の電位を有し、少なくとも1つの偏向電極との相互作用後に電子を加速することが可能である少なくとも1つのさらなる電極を含み、さらなる電極は、特に、少なくとも1つの偏向電極から発する電子ビームが通過することが可能である開口部を有する。このようにして、制動された電極は、さらなる電極の方向に加速されることが可能である。したがって、このさらなる電極は、この加速が、所望の偏向角で起こるように配設されるべきである。
【0012】
偏向ユニットは、少なくとも2つの対向する偏向電極を含み、特に、これらは、電子ビームの伝播方向において、さらなる電極の後段に配設することが可能であり、電子ビームを偏向させるために、電圧、特に交流電圧を、電極間に印加することが可能である。偏向電極を使用して、作業領域における電子ビームのビームプロファイルの成形または均一化を行うことが可能である。特に、交流電圧は、たとえば、最大120kHzの比較的高い周波数を有することが可能であり、したがって、電子ビームまたはそれらの部分ビームは、作業領域において、または出発材料上で、高速で前後に移動することが可能である。出発材料の表面のいくつかの領域を他の領域よりも長く電子ビームにさらすために、交流電圧に適切に影響を与えることが可能である。
【0013】
カソード電極は、熱カソードを形成するワイヤの長手方向でセグメントに分割される構成とすることが可能である。これによって、部分ビームへの細分化を容易にすることが可能である。さらにまた、これによって、装置のモジュール構造が可能となる。なぜなら、カソード電極のいくつかのセグメントをつなぎ合わせることによって、そして熱カソードとして機能するより長いワイヤを使用することによって、ソースを線形電子ビームの長手方向に拡大可能であるからである。
【0014】
請求項12に従えば、電子ビームを生成するための装置は、本発明に従った装置であることが提供される。
【0015】
3D印刷装置は、電子ビームを生成するためのいくつかの装置を備えることができ、これらの装置は、電子ビームが、3D印刷装置の動作中に、異なる方向から出発材料に衝突するように3D印刷装置に配設される。たとえば、装置を出発材料の周りに円形に配設することが可能であり、したがって、電子ビームをすべての側面から同時にそれにぶつけることが可能である。これによって、出発物質が効果的かつ非常に均一に溶融する。
【0016】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図を参照して、好ましい実施形態についての以下の説明に基づいて明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】電子ビームを生成するための発明に従った装置の第1実施形態を備えた、発明に従った3D印刷装置の第1実施形態の斜視図を示し、電子ビームを生成するための装置によって生成される電子ビームが図示されている。
【
図2】
図1に従った本発明に従った3D印刷装置の第1実施形態のさらなる斜視図を示す。
【
図3】電子ビームを生成するための発明に従った装置の第2実施形態を備えた、発明に従った3D印刷装置の第2実施形態の斜視図を示し、装置によって生成される電子ビームが図示されている。
【
図4】
図4は、
図3による発明に従った3D印刷装置の第2実施形態のさらなる斜視図を示す。
【
図5】
図5は、
図3による発明に従った3D印刷装置の第2実施形態のさらなる斜視図を示す。
【
図6】
図6は、電子ビームを生成するための発明に従ったいくつかの装置を備えた、発明に従った3D印刷装置の第3実施形態の概略平面図を示し、装置によって生成された電子ビームが図示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図において、同一または機能的に同一の部品または要素には、同じ参照記号が付されている。図のいくつかには、デカルト座標系が示されている。
【0019】
記載の装置の場合、一部または特にすべての部品を真空中に配設することが可能である。そのために必要なハウジングは図には示されていない。
【0020】
図1および
図2に示される、電子ビームを生成するための本発明に従った装置1の第1実施形態は、熱カソード(図示せず)、カソード電極2およびアノード電極3を含む。これらの部品に関して、装置1は、基本的にピアスタイプの電子銃に対応する。それは、図示された座標系のZ方向において、熱カソードから、またはカソード電極2からアノード電極3への方向に伝播する電子ビーム4を生成することが可能である。
【0021】
熱カソードはワイヤとして構成されており、カソード電極2の参照符号5が付された空洞内に配設されている。熱カソードは、図示されている座標系のY方向に対応する長手方向に延びている。それに対応して、長手方向は、電子ビーム4の伝播方向に対して垂直に配置される。この構成によって、電子ビーム4の線形断面が達成され、線形断面の長手方向は、熱カソード1を形成するワイヤの長手方向に平行に整列される。ワイヤは、たとえば、直径を1mmとし、Y方向の長さが、100mm~160mmとすることが可能である。
【0022】
熱カソードの加熱を導く電流が、熱カソードを通って流れるように電圧手段(図示せず)によって熱カソードに電圧が印加される。この場合、熱カソード1は、少なくとも部分的に、カソード電極2と同じ電位であってよい。
【0023】
カソード電極2は、たとえば、Y方向の長さが80mm~120mmとすることが可能である。カソード電極2は、部分6を有し、これら部分6は、熱カソードから離れて延在し、互いに、110°~150°の角度、たとえば、約135°の角度をなしている。図示される実施形態においては、2つの部分6は、分割され、たとえば、4つの部分7に分割される。
【0024】
分割をしないことも可能であり、または、任意の複数の部分に一回分割することも可能である。
【0025】
アノード電極3は、熱カソードから出射される電子ビーム4が通過することが可能である開口部8を有する。開口部8は、特に、長方形であり、線形断面を有する電子ビーム4の通過を可能にするために、横方向よりも、
図1においてY方向に延びるその長手方向に実質的に大きな寸法を有することが可能である。
【0026】
装置1が動作しているとき、熱カソード1から出てくる電子を加速するために、カソード電極2とアノード電極3との間に電圧が印加される。電圧は、たとえば、10kV~15kVとすることが可能である。この場合、カソード電極2は電圧源(図示せず)の負極に接続され、アノード電極3は正極に接続され、さらにまた、特にアノード電極3は接地に接続することが可能である。
【0027】
装置1は、偏向手段として機能する複数の偏向電極9a,9b,9c,9dをさらに含み、これらは、アノード電極3の後段の電子ビーム4のビーム経路に配設される。図示の実施形態では、4つの偏向電極9a,9b,9c,9dが備えられている。しかしながら、より多くのまたはより少ない偏向電極9a,9b,9c,9dを備えることも可能である。
【0028】
個々の偏向電極9a,9b,9c,9dは、図示の実施形態では棒状に構成され、筒状の横断面を有する。偏向電極9a,9b,9c,9dが異なる形状を有することも可能である。
【0029】
偏向電極9a,9b,9c,9dもまた、1つの負の電位、またはいくつかの異なる負の電位にある。特に、偏向電極9a,9b,9c,9dの1つ、いくつか、またはすべてが、カソード電極2と同じ負の電位にあることが可能である。好ましくは、偏向電極9a,9b,9c,9dの1つ、いくつか、またはすべては、カソード電極2と同じ電圧源の負極に接続される。これによって、電子ビーム4の電子が、偏向電極9a,9b,9c,9dで実質的に失速することを達成することが可能である。
【0030】
電子ビーム4は、たとえば、偏向電極9a,9b,9c,9dによって、約50°~60°偏向される。他の角度で偏向させることも可能である。
【0031】
偏向電極9a,9b,9c,9dは、互いに3次元オフセットされており、特に、アノード電極3から出射する電子ビーム4の伝播方向またはZ方向に、オフセットされている。個々の偏向電極9a,9b,9c,9dの互いに対するこの3次元オフセットによって、電子ビーム4の一部は、電子ビーム4の他の部分よりもよりアノード電極3の近くで偏向される。このようにして、電子ビーム4は、偏向中は、複数の部分ビーム10a,10b,10c,10dに分割される。
【0032】
図1から、
図1の左から右へ、すなわち負のY方向において、第1偏向電極9aおよび第3偏向電極9cが、それぞれ、第2偏向電極9bおよび第4偏向よりもさらに下に配設されていることが分かる。したがって、第2および第4偏向電極9b,9dに入射する電子ビーム4は、第1および第3偏向電極9a,9cに入射する電子ビーム4よりも早く右に偏向される。その結果、第2偏向電極9bおよび第4偏向電極9dによって偏向された、
図1の電子ビーム4の部分ビーム10b,10dは、上方または負のZ方向において、第1偏向電極9aおよび第3偏向電極9cによって偏向される部分ビーム10a,10cから離間されて進む。
【0033】
装置1はさらに、電子ビーム4または部分ビーム10a,10b,10c,10dの伝播方向において、偏向電極9a,9b,9c,9dの後段に、さらなる電極11を含み、該電極11は、電子ビーム4または部分ビーム10a,10b,10c,10dの通過のための開口部12を有する。開口部12も長方形であり、その横方向よりもその長手方向に大きな寸法を有してよい。さらなる電極10は、たとえば、接地接続されており、したがって、偏向電極9a,9b,9c,9dに対して正の電位を有する。したがって、偏向電極において減速された、電子ビーム4または部分ビーム10a,10b,10c,10dの電子は、偏向電極9a,9b,9c,9dによって、さらなる電極11に向かって加速され、開口部12を通過する。
【0034】
電極11の正電位の最大値は、実質的に、開口12の中心に置かれるので、部分ビーム10a,10b,10c,10dは、電極11の開口12の中心に向かってわずかに偏向され、その結果、それらはさらなるビーム経路において互いに近づくことになる。これによって、最終的に、部分ビーム10a,10b,10c,10dは、作業領域13において重ね合わされることになり、そして、その作業領域13において、再び結合された電子ビーム4は、好ましくは、ほぼ回転対称の断面を有することになる。
【0035】
たとえば、作業領域13には、再び結合された電子ビーム4によって溶融することが可能である、3D印刷用の金属製の棒状の出発材料20を配設することができる。
【0036】
図1および
図2に従った実施形態では、さらに複数に分割された偏向電極16b,16d;17a,17cの2つのグループ14,15が、電極11の後段に配設され、これらの電極グループの後段には、開口19を有するさらなる電極18が設けられる。部分ビーム10b,10dは、偏向電極16b,16dの個々の部分の間を通過し、一方、部分ビーム10a,10cは、偏向電極17a,17cの個々の部分の間を通過する。結果として、第1グループ14の偏向電極16b,16dは、部分ビーム10b,10dに作用し、一方、第2グループ15の偏向電極17a,17cは、部分ビーム10a,10cに作用する。
【0037】
偏向電極16b,16d;17a,17cの個々の部分は、
図1および
図2に従った実施形態の場合、互いに向かい合って位置する2つまたは4つのプレートによって形成され、それらの間を、割り当てられた部分ビーム10a,10b,10c,10dが通過する。
【0038】
部分ビーム10a,10b,10c,10dのうちのそれぞれ1つに割り当てられた偏向電極16b,16d;17a,17cそれぞれの部分の間に、電圧、特に交流電圧を印加することが可能である。対応する電圧源は図示されていない。交流電圧は、たとえば、10kHzおよび10kHzを超える、たとえば、120kHzまでの周波数を有することが可能である。
【0039】
偏向電極16b,16d;17a,17cは、作業領域13における電子ビーム4のビームプロファイルを成形または均一化するのに役立つ。特に、偏向電極16b,16d;17a,17cは、交流電圧の周波数が比較的高いので、作業領域13において、または出発材料20上で、部分ビーム10a,10b,10c,10dを、高速で前後に移動させる。特に、出発材料20の表面のいくつかの領域を、他の領域よりも長く電子ビーム4にさらすために、交流電圧を適切に変化させることが可能である。
【0040】
図3~
図5に示される第2実施形態は、電極11,18の開口部12,19が、それらの形状およびサイズに関して、アノード電極3の開口部8に実質的に対応するという点で、第1実施形態とは異なる。
【0041】
また、第2実施形態のカソード2は、第1実施形態のカソード2とは異なる形状である。
【0042】
さらにまた、第2実施形態の偏向電極9a,9b,9c,9dは、第1実施形態の偏向電極9a,9b,9c,9dとは異なる形状である。
【0043】
さらにまた、部分ビーム10a,10b,10c,10dのそれぞれのために、別個の偏向電極16b,16d;17a,17cは、設けられていない。むしろ、グループ14,15のそれぞれにおいては、正確に2つの偏向電極16,17が備えられ、その電極間を、部分ビーム10a,10b,10c,10dのうちの2つがそれぞれ通過する。
【0044】
特に、部分ビーム10b,10dは、第1グループ14の2つの偏向電極16の間を通過して進み、一方、部分ビーム10a,10cは、第2グループ15の2つの偏向電極17の間を通過して進む。結果として、第1グループ14の偏向電極16は、部分ビーム10b,10dに作用し、一方、第2グループ15の偏向電極17は、部分ビーム10a,10cに作用する。
【0045】
図6では、電子ビーム4を生成するための複数の装置1を含む3D印刷装置の実施例が描かれている。装置1は、棒状の出発材料20の周りに円形に配設され、その結果、装置1の電子ビーム4は、3D印刷装置の動作中に異なる各方向から出発材料20に衝突する。
【外国語明細書】